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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102096
(43)【公開日】2023-07-24
(54)【発明の名称】水耕栽培装置
(51)【国際特許分類】
   A01G 31/00 20180101AFI20230714BHJP
   A01G 31/04 20060101ALI20230714BHJP
【FI】
A01G31/00 601B
A01G31/00 612
A01G31/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022002459
(22)【出願日】2022-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100120592
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 崇裕
(74)【代理人】
【識別番号】100184712
【弁理士】
【氏名又は名称】扇原 梢伸
(74)【代理人】
【識別番号】100192223
【弁理士】
【氏名又は名称】加久田 典子
(72)【発明者】
【氏名】篠田 萌子
(72)【発明者】
【氏名】童 阿瑪
(72)【発明者】
【氏名】久保田 洋
(72)【発明者】
【氏名】横山 茂輝
(72)【発明者】
【氏名】繁泉 恒河
(72)【発明者】
【氏名】原澤 悠
(72)【発明者】
【氏名】織邊 尚子
【テーマコード(参考)】
2B314
【Fターム(参考)】
2B314MA33
2B314MA39
2B314MA40
2B314ND10
2B314PB45
2B314PB60
2B314PB64
2B314PD43
2B314PD70
(57)【要約】
【課題】デッドスペースを活用して効率よく水耕栽培を行うことができる装置の提供。
【解決手段】水耕栽培装置1は、例えば、ラック10と、容器20と、ライト30と、水槽40と、連結管50と、トレイ60と、肥料ケース70とで構成され、容器20及びその収容物が載置されるラック10は、締結部品を用いることなくキッチンの吊り戸棚KSに容易に固定される。容器20は手前側に開閉機構を有しており、水槽40を収容したままの状態で、植物の手入れや収穫、トレイ60の出し入れ等が可能である。水槽40の一側端部には、屈曲方向を変更可能に設けられた連結管50が水密に固定されており、屈曲方向を変更することで水槽40への給水や水槽40からの排水を容易に行うことができる。水槽40の端部には、固形肥料を収容する肥料ケース70が配置され、肥料ケース70から水中に肥料が供給されるため、肥料を溶かした溶液を別途作成し供給する必要がない。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物を着水させる水槽と、
前記水槽が載置される台部と、キッチンの吊り戸棚の底板に掛けられる腕部とを有し、前記腕部を介して前記吊り戸棚に支持されるラックと、
管状をなし、一端部が前記水槽に固定され他端部が前記水槽に給水するための管を連結しうる、屈曲方向を変更可能な連結管と、
前記水槽の端部に配置されて固形の肥料を収容する、底部に孔を有した肥料ケースと
を備えた水耕栽培装置。
【請求項2】
請求項1に記載の水耕栽培装置において、
前記連結管は、
前記水槽に給水する場合には上方に屈曲した状態とされる一方、前記水槽から排水する場合には下方に屈曲した状態とされることを特徴とする水耕栽培装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の水耕栽培装置において、
手前側に開閉可能な機構を有し、前記水槽の上方の空間を区画する容器をさらに備えた水耕栽培装置。
【請求項4】
請求項3に記載の水耕栽培装置において、
前記容器は、
少なくとも手前側が透明な素材で形成されていることを特徴とする水耕栽培装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の水耕栽培装置において、
前記肥料ケースは、
底面に孔を有する下部と、収容する前記肥料を略一定の時間毎に前記下部に供給する上部とを有しており、前記孔が前記水槽の水面に対向する位置に配置されることにより、前記上部から前記下部に供給される前記肥料を前記孔から水に投入することを特徴とする水耕栽培装置。
【請求項6】
請求項1から4のいずれかに記載の水耕栽培装置において、
前記肥料ケースは、
底面に孔を有しており、前記孔が前記水槽の水面に着水可能な位置に配置されることにより、収容する前記肥料を水に溶出させることを特徴とする水耕栽培装置。
【請求項7】
請求項6に記載の水耕栽培装置において、
前記肥料ケースは、
底面に複数の孔を有した略円筒状の容器部と、前記容器部の底面に対向する面に複数の孔を有した前記容器部の底部を覆う底蓋部とを有しており、前記底蓋部を前記容器部の周方向に回転させることにより、前記容器部の底面が有する複数の孔の開放度合いを変更可能であること特徴とする水耕栽培装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水耕栽培装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、室内で土を使わずに植物を栽培することができる家庭用の水耕栽培装置が知られている(例えば、特許文献1及び2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4-161107号公報
【特許文献2】特開2015-181352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術においては、厨房装置に設けられた支柱内の多目的に利用可能な空間に植物栽培装置が配設されている。植物栽培装置をこのような空間に配設すると、植物栽培装置に対する水の供給や交換の度に水がこぼれないように注意しながら植物栽培装置を支柱内から出し入れしなければならず、非常に手間がかかる。
【0005】
また、特許文献2に記載の技術においては、キッチンの背面側上部に設けられた容器の上部を囲うように栽培スペースが形成され、栽培容器に水耕溶液を供給するための設備や機構がキッチンの内部スペースに配設されて、水耕溶液の循環路が形成されている。このような構成によれば、機構により水耕溶液を循環させることができるため、水耕溶液の供給や交換等の手間を省くことができると推測される。しかしながら、この場合には、水耕溶液を供給するための設備や機構の配設にある程度のスペースが要求され、キッチンの広さによっては配設自体が困難であり、配設できたとしても、これによりキッチンの内部スペースが専有されることから、そのスペースをキッチン本来の目的に利用することができなくなる。
【0006】
そこで、本発明は、デッドスペースを活用して効率よく水耕栽培を行うことができる装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明は以下の水耕栽培装置を採用する。なお、以下の括弧書中の文言はあくまで例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0008】
すなわち、本発明の水耕栽培装置は、植物を着水させる水槽と、水槽が載置される台部と、キッチンの吊り戸棚の底板に掛けられる腕部とを有し、腕部を介して吊り戸棚に支持されるラックと、管状をなし、一端部が水槽に固定され他端部が水槽に給水するための管を連結しうる、屈曲方向を変更可能な連結管と、水槽の端部に配置されて固形の肥料を収容する、底部に孔を有した肥料ケースとを備えている。
【0009】
この態様の水耕栽培装置によれば、ラックが腕部を有しているため、腕部をキッチンの吊り戸棚の底板に載せるようにして奥側にスライドさせることによりラックを底板に容易に固定させることができる。また、連結管が水槽に固定されているため、キッチンにある水道の蛇口との間を管(ホース等)で連結することにより、水槽への給水を容易に行うことができる。さらに、水槽の端部に肥料ケースが配置されているため、底部の孔を介して肥料の水への供給を容易に行うことができる。
【0010】
好ましくは、上述した水耕栽培装置において、連結管は、水槽に給水する場合には上方に屈曲した状態とされる一方、水槽から排水する場合には下方に屈曲した状態とされる。
【0011】
この態様の水耕栽培装置によれば、給水時には連結管が上方に屈曲した状態とされるため、端部に連結される管を通して水を重力に逆らうことなく水槽内に流し込むことができ、給水を容易に行うことができる。また、排水時には連結管が下方に屈曲した状態とされるため、下方に位置するシンクに水槽内の水を落下させてそのまま排水溝に流すことができ、排水を容易に行うことができる。
【0012】
より好ましくは、上述した水耕栽培装置において、手前側に開閉可能な機構を有し、水槽の上方の空間を区画する容器をさらに備えている。また、容器は、少なくとも手前側が透明な素材で形成されている。
【0013】
この態様の水耕栽培装置によれば、容器が手前側に開閉可能な機構を有しているため、手前側を開放することにより、容器から水槽を取り出すことなく栽培する植物の手入れや収穫等を行うことができる。また、容器の少なくとも手前側が透明な素材で形成されているため、容器を開放することなく植物の生育状況を外部から確認することができる。
【0014】
さらに好ましくは、上述した水耕栽培装置において、肥料ケースは、底面に孔を有する下部と、収容する肥料を略一定の時間毎に下部に供給する上部とを有しており、孔が水槽の水面に対向する位置に配置されることにより、上部から下部に供給される肥料を孔から水に投入する。或いは、肥料ケースは、底面に孔を有しており、孔が水槽の水面に着水可能な位置に配置されることにより、収容する前記肥料を水に溶出させる。
【0015】
この態様の水耕栽培装置によれば、固形肥料が定期的に底面の孔から水に投入されたのち徐々に溶出するか、或いは、底面の孔を通して固形肥料が浸水して徐々に溶出するため、固形肥料を溶かした溶液を別途作成して水に供給する手間を省くことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、デッドスペースを活用して効率よく水耕栽培を行うことができる装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】使用状態における水耕栽培装置1を示す斜視図である。
図2】ラック10を示す斜視図である。
図3】ラック10の取り付け態様を説明する連続図である。
図4】容器20を示す斜視図である。
図5】容器20が有する開閉機構の第1態様を説明する連続図である。
図6】容器20が有する開閉機構の第2態様を説明する連続図である。
図7】容器20が有する開閉機構の第3態様を説明する連続図である。
図8】水槽40に連結管50が固定された状態を示す斜視図及び平面図である。
図9】トレイ60を示す斜視図及び平面図である。
図10】水槽40及びトレイ60を示す垂直断面図(図9中のX-X線に沿う断面図)である。
図11】連結管50の使用態様を説明する図である。
図12】肥料ケース70の第1態様を説明する図である。
図13】肥料ケース70の第2態様を説明する図である。
図14】肥料ケース70の第3態様を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。以下の実施形態では、水耕栽培装置の好適な一例を挙げているが、本発明の形態は例示のものに限定されない。
【0019】
〔水耕栽培装置の構成〕
図1は、使用状態における水耕栽培装置1を示す斜視図である。説明の便宜のため、図1においては、水耕栽培装置1を構成する一部の部品を簡略化して示している。また、発明の理解を容易とするために、容器20の内部の様子を実線で表している。
【0020】
水耕栽培装置1は、例えば、ラック10と、容器20と、ライト30と、水槽40と、連結管50と、トレイ60と、肥料ケース70とで構成される。ラック10は、容器20及びその収容物を載せる台であり、キッチンの吊り戸棚KSの底板に取り付けられて吊り戸棚KSに支持される。容器20は、水槽40を収容してその上方の空間を区画する。図示を省略しているが、容器20の手前側には開閉可能な機構が設けられており、手前側を開放することで、収容物を手前側に取り出すことができる。ライト30は、容器20の上部に設けられ、植物に向けて光を照射する。
【0021】
連結管50は、屈曲方向を変更可能に設けられた管状の部材であり、その一端部が水槽40の一側端部に水密に固定されて、水槽40への給水時や水槽40からの排水時に用いられる。水槽40は、複数の孔が穿孔されたトレイ60がセットされて、連結管50を介して水が供給された状態で、トレイ60の植物栽培孔を通して植物を直接又は培地を介して間接的に着水させる。トレイ60は、植物栽培孔の他に、水中に固形肥料を供給するための肥料供給孔を端部に有している。そして、肥料供給孔に近接する水槽40の端部には、固形肥料を収容する肥料ケース70が配置されており、肥料ケース70から水中に肥料が供給される。
【0022】
なお、容器20の開閉機構や連結管50の使用態様、肥料ケース70の構造(肥料の供給方法)の詳細については、別の図面を参照しながら詳しく後述する。
【0023】
〔ラック〕
図2は、ラック10を示す斜視図である。
ラック10は、容器20及びその収容物が載置される略矩形の台部11と、台部11の四隅から上方に延びる4本の垂直フレーム12と、4本の垂直フレームを水平方向につなぐ水平フレーム13と、手前側の2本の垂直フレーム12及び水平フレーム13の各端部に接続して上方に起立する起立板14と、起立板14の左右の上端部から奥側に向かって90度屈曲して延びる2本の腕部15とを有している。
【0024】
水平フレーム13と腕部15との間隔Hは、ラック10が取り付けられることとなる標準的なキッチンの吊り戸棚KSの底板の厚みより若干大きく形成されている。間隔Hをこのような大きさとすることにより、ラック10を吊り戸棚KSに安定して固定させることができる。また、ラック10には、使用状態では水や植物が入った水槽40やこれらを収容する容器20が載置されるため、使用状態における水耕栽培装置1の総重量は相当な大きさとなる。そのため、ラック10は、強度が高くて軽い素材(例えば、炭素繊維やアルミ等)で形成されている。
【0025】
図3は、ラック10の取り付け態様を説明する連続図である。このうち、(A)は、ラック10がキッチンの吊り戸棚KSに取り付けられる前の状態を示しており、(B)は、取り付けられた状態を示している。上述したように、間隔Hは底板FPの厚みより若干大きく形成されているため、腕部15を底板FPの上に載せるようにしてラック10を奥側にスライドさせることができる。起立板14が底板FPの前端に接触すると、ラック10は完全に押し込まれた状態となって底板FP(吊り戸棚KS)に固定される。また、この状態のラック10を手前側にスライドさせれば、ラック10を吊り戸棚KSから取り外すことができる。このように、本実施形態においては、ネジ等の締結部品を用いることなく、ラック10を吊戸棚KSに対して容易に着脱することができる。
【0026】
なお、取り付け時に底板FPの表面を傷つけたり、取り付け後にラック10が滑ったりするのを防ぐために、腕部15の底面及びこれに対向する水平フレーム13の上面に、ビニールやポリエステル等で形成されたシートを貼付してもよいし、腕部15の底面又はこれに対向する水平フレーム13の上面に、滑り止め機能を有するゴム等を設けてもよい。または、ラック10をより確実に固定させるために、締結部品を用いて固定させる構造としてもよい。
【0027】
〔容器〕
図4は、容器20を示す斜視図である。
容器20は、水槽40を受け入れる水槽受け21と、水槽受け21の上部に固定されて水槽40の上方の空間を区画する透明ケース22とを有する。透明ケース22は、内部空間、すなわち植物の栽培空間の気温や湿度を保って急激な変化を防ぐことができるとともに、虫や異物等が入り込むのを防ぐことができる。水槽受け21は、水槽40から水がこぼれるケース等に備え、その影響を受けにくい素材(例えば、樹脂等)で形成されている。また、透明ケース22は、透明な素材で形成されており、栽培している植物の生育状況を外部から確認することができる。
【0028】
なお、図示を省略しているが、水槽受け21及び透明ケース22には、両者を簡便に嵌合させるための構造(位置決め穴、位置決め突起等)が設けられており、透明ケース22を上方から被せるようにして水槽受け21に対し容易に固定させることできる。
【0029】
透明ケース22の天井面の手前側には、ライト30が設けられている。ライト30は、LEDを内蔵しており、植物の生育に適した(光合成に有効な)波長の光を植物に向けて照射する。なお、ライト30の配設位置は、図示の例に限定されない。例えば、ライト30が透明ケース22の天井面の奥側に設けられてもよいし、透明ケース22の内側の背面又は側面の最上部に設けられてもよいし、或いは、透明ケース22の外側に設けられてもよい。
【0030】
透明ケース22は、その右側面の手前側下部に逆U字状の切欠き23を有している。切欠き23は、水槽40に固定された連結管50を通すために設けられている。また、上述したように、容器20の手前側には開閉可能な機構が設けられているが、図2には、その一例として、透明ケース22の手前側に扉24が設けられている。扉24は、下端部を手前側に引き上げることで開放される。なお、本実施形態においては、容器20の開閉機構として3つの態様を想定しており、利用者が水耕栽培装置1の導入時にいずれかの態様を自由に選択できるようにしている。
【0031】
〔容器の開閉機構〕
図5から図7は、容器20が有する開閉機構の3つの各態様を説明する連続図である。なお、発明の理解を容易とするために、これらの図においては容器20の細部及びライト30の図示を省略している。以下、各態様について順を追って説明する。
【0032】
図5は、容器20が有する開閉機構の第1態様を示している。第1態様は、扉24をスライドさせて容器20の上側に収納する、スライド式の開閉機構である。
【0033】
第1態様においては、扉24の下端部を手前側に引き上げると、上端部を軸として扉24が手前側に開く(図5中(A))。扉24を手前側に90度持ち上げると、透明ケース22の上側端部に設けられた不図示の案内部に扉24が案内され、透明ケース22の上面に沿って扉24を奥側に押し込むことが可能となる(図5中(B))。そして、扉24を奥まで押し込むと、扉24が透明ケース22の上側に収納されて完全に開放された状態となる(図5中(C))。また、これらの手順を逆方向に実施することにより、扉24を閉鎖することができる。このように、第1態様は、簡易な機構により扉24全体を収納可能な点において優位性がある。
【0034】
図6は、容器20が有する開閉機構の第2態様を示している。第2態様は、透明なシート25がローラーパイプ26に巻き取られる、ロール式の開閉機構である。
【0035】
第2態様においては、透明なシート25が透明ケース22の手前側を覆って閉鎖する(図6中(A))。シート25の下端部には把手27が設けられており、シート25が透明ケース22の手前側を覆った状態で把手27を下側に引くと、ローラーパイプ26内のスプリングが作用してシート25が徐々に巻き取られることで、手前側が徐々に開放される(図6中(B))。シート25全体がローラーパイプ26に巻き取られると、完全に開放された状態となる(図6中(C))。また、この状態で把手27を下側に引いてシート25をローラーパイプ26から引き出すことにより、手前側を再び閉鎖することができる。このように、第2態様は、開閉する上で周囲の空間の制約を受けない点において優位性がある。
【0036】
なお、上記の例においては、シート25の開閉(巻き取りや引き出し)を手動で行っているが、これに代えて、自動で開閉する機構としてもよい。また、シート25の周囲及び透明ケース22の手前側の縁部(シート25の周囲が接する部位)にマグネットを貼付して、シート25と透明ケース22との間に隙間が生じないようにしてもよい。
【0037】
図7は、容器20が有する開閉機構の第3態様を示している。第3態様は、扉を左右に開くことが可能な、左右開放式の開閉機構である。水耕栽培装置1の設置場所において左右の空間に余裕があれば、第3態様も選択候補となりうる。
【0038】
第3態様においては、透明ケース22の手前側に左扉28及び右扉29が設けられている(図7中(A))。いずれか一方の扉(図示の例では左扉28)を開くと、手前側が半分開放され(図7中(B))、さらに他方の扉(図示の例では右扉29)を開くと、手前側が完全に開放される(図7中(C))。一部の植物を手入れする際や、肥料ケース70への固形肥料の補充等を行う際には、手前側を完全に開放する必要はない。したがって、第3態様は、一方の扉だけを開いて所望の作業を実施することができる点において優位性がある。
【0039】
〔水槽〕
図8は、水槽40に連結管50が固定された状態を示す斜視図及び平面図である。
水槽40は、幅方向に長尺な形状をなしており、その内壁には、周方向の全域にわたって段部42が形成されている。段部42は、水槽40にセットされるトレイ60の下降を規制するために設けられており、その内周長は縁部41の内周長より一回り小さい。
【0040】
また、水槽40の幅方向における一側端部(図示の例では右側端部)の手前側には、連結管50が固定されている。連結管50は、水漏れを防止するために、水槽40との間に例えば環状のパッキンを挟んで固定端51が水槽40に対し水密に固定されている。図示を省略しているが、水槽40における固定端51が固定された位置の奥側は、内部まで貫通しており、連結管50(出入端52)を介して水槽40への給水や水槽40からの排水を行うことができる。
【0041】
〔トレイ〕
図9は、トレイ60を示す斜視図及び平面図である。
【0042】
図9中(A):トレイ60の斜視図である。トレイ60は、幅方向に長尺な平板状の部材に、複数の植物栽培孔61及び1つの肥料供給孔62が穿孔されてなる。また、トレイ60の幅方向における両端部には、把手63が設けられている。把手63は、伸縮可能な機構を有する棒状の部材であり、不使用時には先端部のみが突出しており他の部位は機構内に収納されているが(図中の実線)、使用時には先端部を引っ張ることで上方に伸長させることができ(図中の2点鎖線)、伸長させた把手63を持ち上げることで、トレイ60を容易に出し入れがすることができる。
【0043】
図9中(B):トレイ60の平面図である。トレイ60は、2列に整列した複数の植物栽培孔61を有している。図示の例においては、植物栽培孔61が5個ずつ2列に整列しているが、植物栽培孔61の列数や各列における植物栽培孔61の個数はこれに限定されない。また、トレイ60は、その手前側の一端部(図示の例では右端部手前側)に肥料供給孔62を有している。
【0044】
図9中(C):トレイ60が水槽40にセットされた状態を示す斜視図である。トレイ60は、水槽の縁部41の内周長よりやや小さい外周長を有しており、水槽40の内壁との間にほとんど隙間が生じない状態でセットされる。トレイ60をこのような大きさとすることにより、使用状態におけるトレイ60ひいては植物の位置を安定させることができる。
【0045】
図10は、水槽40及びトレイ60を示す垂直断面図(図9中のX-X線に沿う断面図)である。なお、(B)及び(C)は使用状態を示しており、実際には植物栽培孔61に植物や培地がセットされているが、それらの図示を省略している。
【0046】
図10中(A):水槽40を示す垂直断面図である。上述したように、水槽40の内壁には段部42が形成されている。段部42は、例えば、水槽40の深さの略半分に相当する高さを有している(床面43から段部42の上面までの高さと、段部42の上面から縁部41の上面までの高さは、略同一である)。なお、段部42の高さは上記の例に限定されず、さらに高くしてもよい。
【0047】
図10中(B):水槽40にトレイ60がセットされ水LQが満たされた状態を示す垂直断面図である。水槽40に水LQが満たされると、トレイ60は浮力により水面に浮かぶ。なお、実際の使用状態においては、植物栽培孔61に植物や培地がセットされるため、植物の生育状況によってはその重み等を受けてトレイ60が水面より下降する場合もありうる。
【0048】
図10中(C):植物により水LQが徐々に吸い上げられて水位が徐々に低下すると、トレイ60は水面とともに下降する。しかしながら、水位が段部42の上面より低くなると、トレイ60は段部42の上面に規制されて段部42の高さの位置に留まる。これにより、水位が一定の高さより低下した場合でも、植物の根が伸びることが可能な空間を確保することができる。
【0049】
〔連結管〕
図11は、連結管50の使用態様を説明する図である。
連結管50は、屈曲方向を変更可能な管状の部材であり、本実施形態においては、自在に折り曲げ可能な柔軟性を有した部材(例えば、ステンレスの部材で編み込んだブレードで外側が囲まれたフレキシブルチューブ(いわゆるブレードフレキ)や、蛇腹状に形成された部位を有するパイプ等)が採用されている。連結管50は、水槽40への給水時や水槽40からの排水時に、その屈曲方向を変えて用いられる。
【0050】
図11中(A):水槽40への給水時における連結管50の使用態様を示している。給水時には、連結管50を上方に屈曲させて出入端52を上向きにし、ホースHSの一端を出入端52に接続するとともに他端をキッチンにある水道の蛇口に接続した上で蛇口をひねることにより、連結管50を介して水道水を水槽40に供給することができる。水槽40に水が満たされたら、ホースHSを取り外し、連結管50を上向きにしたまま維持すれば、水がこぼれることはない。なお、連結管50を誤って下向きにするケースに備えて、出入端52に栓を設け、給水を行わない間は出入端52を栓で塞いでもよい。
【0051】
図11中(B):水槽40からの排水時における連結管50の使用態様を示している。排水時には、連結管50を下方に屈曲させて出入端52を下向きにする。水耕栽培装置1の下方にはキッチンのシンクが位置しているため、出入端52を下向きにすることにより、連結管50を介して水槽40に貯められている水をシンクに向けて排出して、そのまま排水溝に流すことができる。なお、シンクが水耕栽培装置1の真下に位置していない場合や、シンクと水耕栽培装置1との距離が大きく(排水位置が高く)水が周囲に飛び散る虞がある場合等には、排水用ホースを出入端52に接続して排水を行ってもよい。
【0052】
このように、水耕栽培装置1においては、水槽40を容器20から取り出すことなく、連結管50の屈曲方向を変更することにより、水槽40への給水や水槽40からの排水を容易に行うことができる。
【0053】
なお、本実施形態においては、折り曲げ可能な柔軟性を有した部材を連結管50に採用しているが、これに代えて、学校の水飲み場等で多く採用されている、いわゆる万能ホーム水栓が有する弧状に屈曲した吐出口を連結管50に採用してもよい。この場合には、水槽40に対して連結管50を回転可能に固定させ、給水時には管を上向きに回転させ、排水時には管を下向きに回転させることで、上記の例と同様に給水や排水を容易に行うことができる。
【0054】
〔肥料ケース〕
図12から図14は、肥料ケース70に関する3つの各態様を説明する図である。なお、使用状態を示す斜視図においては、発明の理解を容易とするために、肥料ケース70の内部の様子を実線で表すとともに、容器20の図示を省略している。また、肥料ケース70及び縁部41(水槽40)には、肥料ケースを簡便に固定させるための構造(位置決め溝、爪部、爪受け部等)が設けられているが、これらの図示も省略している。以下、各態様について順を追って説明する。
【0055】
図12は、第1態様の肥料ケース70を説明する図である。第1態様の肥料ケース70においては、収容された固形肥料が定期的に1つずつ水中に投入される。
【0056】
図12中(A):第1態様の肥料ケース70を示す斜視図である。第1態様の肥料ケース70は、固形肥料の収容部71a及びその蓋部71bを含む上部71と、上部71の下側に位置し、円筒状に形成された下部72と、上部71と下部72との間に回転可能に設けられ、固形肥料と略同一の径を有する落下孔73aが穿孔された回転板73とを有している。固形肥料は、蓋部71bを上に開けて収容部71aに整列した状態で収容される。収容部71aは上部71の底面を貫通して形成されており下端が孔となっているが、落下孔73aが収容部71aの直下に位置しない間は、固形肥料は回転板73により落下が規制される。
【0057】
図12中(B):回転板73の平面図である。図示を省略しているが、回転板73は、略一定の速度で回転するための電池式又はぜんまい式による機構を有している。回転板73が略一定の速度で回転することにより、落下孔73aの位置は略一定の速度で変化し、略一定の時間毎に収容部71aの直下に位置する。そして、落下孔73aが収容部71aの直下に位置すると、回転板73による固形肥料の規制が解除され、これに伴って収容部71aに収容されている固形肥料が1つ落下孔73aを通過して落下する。なお、固形肥料が1つ落下する間にも回転板73は回転し続けており、直ぐに回転板73により規制される状態に戻るため、固形肥料が複数個連続して落下することはない。
【0058】
図12中(C):使用状態における第1態様の肥料ケース70を示す斜視図である。上述したように、下部72は円筒状に形成されており、上下が開放されているため、落下孔73aを通過した固形肥料は、さらに下部72の底孔72aを通過し、肥料ケース70の下方に位置する肥料供給孔62に落下して、水中に投入される。投入された固形肥料は、その後徐々に水に溶出して水中を漂っていき、いずれ水槽40全域に行き渡る。
【0059】
図13は、第2態様の肥料ケース70を説明する図である。第2態様の肥料ケース70においては、収容された固形肥料が手動で1つずつ水中に投入される。
【0060】
図13中(A):第2態様の肥料ケース70を示す斜視図である。第2態様の肥料ケース70は、固形肥料の収容部74a及びその蓋部74bを含む筒体74と、筒体74の底部側面に設けられた押込部75と、筒体74の底部側面における押込部75に対向する位置に設けられた押出孔76とを有している。固形肥料は、蓋部71bを上に開いて収容部71aに整列した状態で収容される。第1態様とは異なり、収容部74aの下端は筒体74の床面から固形肥料1個分の厚みより大きい間隔を空けた高さに位置しており、また、筒体74の底は完全に塞がれている。
【0061】
押込部75の奥側には、収容部74aに収容された固形肥料を1つ押し出すための押出板75aが設けられており、筒体74の床面には、押出板75aの移動を案内するガイド溝75bが設けられている。また、押込部75の下側には不図示のバネがあり、その一端部が押込部75に係合し、他端部が筒体74の床面端部に係合している。押込部75を指で押し込むと、押出板75aがガイド溝75bに沿って奥側に移動するとともにバネが伸長し、この状態で押込部75から指を離すと、バネの付勢力により押込部75が元の位置に復帰する。
【0062】
図13中(B):使用状態における第2態様の肥料ケース70を示す斜視図である。説明の便宜のため、ここでは水槽40の図示を省略している。押出孔76を指で押し込むと、押出板75aが奥側に移動し、これに伴い一番下の固形肥料が奥側に押し込まれて押出孔76から押し出され、肥料ケース70に近接する位置にある肥料供給孔62に落下して、水中に投入される。投入された固形肥料は、その後徐々に水に溶出して水中を漂っていき、いずれ水槽40全域に行き渡る。
【0063】
なお、上記の構造は、あくまで第2態様の肥料ケース70の一例として示したものであり、これに限定されず、何らかの操作を手動で行うことにより、固形肥料を1つずつ押し出すことができる構造であればよい。例えば、押込部75に上述した機構(押出板75a、ガイド溝75b)を設けずに単なる孔とし、この孔に指を挿し込んで一番下の固形肥料を直接押し込むことで、押出孔76から押し出してもよい。
【0064】
また、図13には肥料ケース70が配置される水槽40の位置が図示されていないが、肥料ケース70は、水槽40の端部のうち容器20が有する開閉機構と干渉しない位置に設ければよく、肥料供給孔62は、肥料ケース70の配設位置に合わせてトレイ60の適切な位置に穿孔すればよい。また、図示の例においては、筒体74が円筒状に形成されているが、これに限定されず、例えば、角筒状に形成されてもよい。
【0065】
図14は、肥料ケース70の第3態様を説明する図である。第3態様の肥料ケース70は、肥料供給孔62にセットされてその底部が水槽40の水面に着水する。これにより、収容された固形肥料が徐々に水に溶出する。
【0066】
図14中(A):第3態様の肥料ケース70を示す分解斜視図である。説明の便宜のため、ここでは肥料ケース70を上下逆さまに図示している。第3態様の肥料ケース70は、円筒状に形成された収容筒77と、収容筒77の底部を覆う底蓋78とを有している。固形肥料は、収容筒77の上部に設けられた蓋部77bを開くと現れる開口から内部に収容される。収容筒77の底面には、周方向に略等間隔で複数の底孔77aが穿孔されている。また、底蓋78には、複数の底孔77aに対応する位置に、底孔77aと略同一の径を有した複数の蓋孔78aが周方向に略等間隔で穿孔されている。そして、底蓋78の縁部には、外方に突出した突起78bが周方向の全域にわたって設けられている。
【0067】
図14中(B):第3態様の肥料ケース70を示す底面図である。底蓋78と収容筒77とは、その周方向に対して相互に回転可能に設けられている。底蓋78及び収容筒77のうち一方を他方に対して回転させることにより、底孔77aと蓋孔78aとの重なり具合を変化させることができ、これにより肥料ケース70底部の開口を開閉する(開放度合いを変化させる)ことができる。
【0068】
図14中(C):使用状態における第3態様の肥料ケース70を示す正面図である。なお、実際には手前側に水槽40の壁部が存在するが、説明の便宜のため、ここでは敢えて水槽40を図示していない。上述したように、第3態様においては、肥料ケース70が肥料供給孔62にセットされるため、肥料供給孔62が他の態様におけるものよりも大きく形成されている。固形肥料を収容した肥料ケース70の底蓋78を肥料供給孔62に挿入すると、突起78bが肥料供給孔62の上端縁に係合して肥料ケース70の落下が規制されるため、底蓋78が着水した状態で肥料ケース70がトレイ60に対して固定される。
【0069】
肥料ケース70には、蓋孔78a及び底孔77aを介して内部に水が入り込む。肥料ケース70に水が入り込むと、固形肥料が浸水して徐々に肥料が水に溶出し、溶出した肥料が底孔77a及び蓋孔78aを介して水槽40内に流出して水LQを徐々に漂っていき、いずれ水槽40全域に行き渡る。トレイ60に肥料ケース70が固定された状態で収容筒77を底蓋78に対して回転させる(或いは、肥料ケース70をトレイ60から取り出して底蓋78を収容筒77に対して回転させる)と、肥料ケース70底部の開放度合いが変化するため、溶出した肥料の流出度合い、ひいては水LQに対する養分濃度を調整することができる。
【0070】
上述した実施形態によれば、以下のような優位性が得られる。
(1)キッチンの吊り戸棚の底板にラック10が取り付けられて、水耕栽培装置1が吊り戸棚の下方という通常は使用されないデッドスペースに設置されるため、テーブルや棚等の他の目的で使用可能なスペースを専有することなく、デッドスペースを活用して水耕栽培を行うことができる。
【0071】
(2)吊り戸棚KSの床板FPに腕部15を載せるようにして奥側にスライドさせるだけでラック10が床板FPに固定され、また、この状態のラック10を手前側にスライドさせるだけで、床板FPからラック10を取り外せるため、締結部品を用いることなくラック10の着脱(取り付け、取り外し)を容易に行うことができる。
【0072】
(3)容器20が手前側に開閉機構を有しているため、容器20から水槽40を取り出すことなく、植物の手入れや収穫、トレイ60の出し入れ等を行うことができる。また、水槽40の上方の空間が透明ケース22で区画されるため、栽培空間の保温や保湿を行いながら虫や異物等が入り込むのを防ぐことができる上に、植物の生育状況を外部から確認することができる。
【0073】
(4)連結管50が屈曲方向を変更可能な状態で水槽40に対して水密に固定されているため、水槽40を容器20から取り出すことなく、状況に応じて連結管50の屈曲方向を変更することにより、水漏れを確実に防ぎながら水槽40への給水や水槽40からの排水を容易に行うことができるため、水耕栽培を行う上で生じる水周りの手間を大幅に低減することができる。
【0074】
(5)肥料ケース70が水槽40の端部に設けられ、肥料ケース70に収容された固形肥料が自動で定期的に(又は手動で)1つずつ水中に投入されたのち徐々に溶出するか、或いは、浸水した固形肥料が徐々に溶出するため、固形肥料を溶かした溶液を別途作成して供給する手間を省くことができる。
【0075】
本発明は、上述した実施形態に制約されることなく、種々に変形して実施することができる。
【0076】
上述した実施形態においては、水槽40が容器20に収容された状態でラック10に載置されているが、容器20を用いずに、水槽40を直接ラック10に載置してもよい。或いは、容器20のうち水槽受け21を用いずに、水槽40を直接ラック10に載置して、その上から透明ケース22のみを被せてもよい。
【0077】
上述した実施形態においては、透明ケース22全体が透明な素材で形成されているが、これに代えて、手前側のみを透明な素材で形成してもよい。このような構成によっても、植物の育成状況を透明ケース22を通して外部から確認することができる。
【0078】
その他、実施形態において図示とともに挙げたものはいずれも、飽くまで好ましい一例であり、本発明の実施に際して適宜に変形が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0079】
1 水耕栽培装置
10 ラック
20 容器
30 ライト
40 水槽
50 連結管
60 トレイ
70 肥料ケース
KS キッチンの吊り戸棚
FP 吊り戸棚の床板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図13
図14