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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102098
(43)【公開日】2023-07-24
(54)【発明の名称】車両用昇降装置
(51)【国際特許分類】
   B66F 7/06 20060101AFI20230714BHJP
   B66F 7/08 20060101ALI20230714BHJP
   B66F 17/00 20060101ALI20230714BHJP
【FI】
B66F7/06 E
B66F7/08 B
B66F17/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022002461
(22)【出願日】2022-01-11
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】000185916
【氏名又は名称】小野谷機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】牧野 智將
(57)【要約】
【課題】 簡素な構成で高い安定性を有し、安全性が向上された車両用昇降装置を提供すること。
【解決手段】 車両が乗載される昇降台2と、床面3に設置される基台4と、基台4に設けられ、昇降台2を上昇および下降させる複数の空気ばね5a~5dと、複数の空気ばね5a~5dに圧縮空気を供給する空気圧源6と、空気圧源6と複数の空気ばね5a~5dとを接続する接続管と、接続管に介在され、空気圧源6の圧縮空気を供給し、または遮断するとともに、複数の空気ばね5a~5dからの戻り空気を排気する切換え部8と、を備える。切換え部8は、接続管内を開放して、圧縮空気を排出可能な操作弁Vmを含む。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が乗載される昇降台と、
床面に設置される基台と、
前記基台に設けられ、前記昇降台を上昇および下降させる複数の空気圧アクチュエータと、
前記複数の空気圧アクチュエータに圧縮空気を供給する空気圧源と、
前記空気圧源と前記複数の空気圧アクチュエータとを接続する接続管と、
前記接続管に介在され、前記空気圧源の圧縮空気を供給し、または遮断するとともに、前記複数の空気圧アクチュエータからの戻り空気を排気する切換え部と、を備え、
前記切換え部は、前記接続管内を開放して、圧縮空気を排出可能な緊急排気弁を含むことを特徴とする車両用昇降装置。
【請求項2】
前記昇降台および前記基台の間に位置し、前記昇降台の前記基台に対する上限位置を規定する、上限位置規定手段を、さらに含むことを特徴とする請求項1に記載の車両用昇降装置。
【請求項3】
前記昇降台に設けられる水準器を、さらに含むことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用昇降装置。
【請求項4】
前記基台の側部から外側方に突出し、前記側部のほぼ全長にわたって延び、外部からの足の侵入を抑制する侵入抑制部材、をさらに含むことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の車両用昇降装置。
【請求項5】
前記複数の空気圧アクチュエータのそれぞれは、空気ばねであることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の車両用昇降装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽自動車および普通四輪自動車などの車両を、タイヤ交換、点検、修理などを行うために床面よりも高い作業位置に上昇させ、その上昇位置から下降させる車両用昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的な従来技術は、たとえば特許文献1に記載されている。この従来技術では、車両を乗載する複数の荷載台を、それぞれに設けた駆動手段によって同調させて昇降させるリフトにおいて、荷載台ごとに設けられた荷載台の下降を阻止する下降止め機構と、各荷載台の偏下降を防止するために、各下降止め機構を荷載台に一体移動可能に設けたラックと、ラックに係合する係止爪と、係止爪をラック側へ付勢するスプリングとから構成し、解除機構を、各係止爪にそれぞれ連結した索条体と、各索条体を介して係止爪をラックから解離する共通のアクチュエータと、アクチュエータに係合して各駆動手段を下降側へ切り換える共通の切換部材とから構成される安全装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平6-76300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の特許文献1に記載される従来技術では、1台の車両を複数の荷載台によって個別に支持するので、各荷載台の偏下降を防止するための下降止め機構が各荷載台に設けられている。そのため、車両からの荷重の片寄りに対し、荷載台の駆動手段によって片寄りが低減する方向に個別に調整しなければならず、部品点数が多く、構成が複雑であり、荷重の片寄りに対する安定性が低いという課題がある。また各荷載台を下降させる際に、荷載台と床面との間に空間ができるため、空間に外部から作業者などが足を侵入させると、下降する荷載台と床面との間に足が挟まれるおそれがあり、安全性の向上が望まれている。
【0005】
本発明の目的は、簡素な構成で高い安定性を有し、安全性が向上された車両用昇降装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車両が乗載される昇降台と、
床面に設置される基台と、
前記基台に設けられ、前記昇降台を上昇および下降させる複数の空気圧アクチュエータと、
前記複数の空気圧アクチュエータに圧縮空気を供給する空気圧源と、
前記空気圧源と前記複数の空気圧アクチュエータとを接続する接続管と、
前記接続管に介在され、前記空気圧源の圧縮空気を供給し、または遮断するとともに、前記複数の空気圧アクチュエータからの戻り空気を排気する切換え部と、を備え、
前記切換え部は、前記接続管内を開放して、圧縮空気を排出可能な緊急排気弁を含むことを特徴とする車両用昇降装置である。
【0007】
また本発明は、前記昇降台および前記基台の間に位置し、前記昇降台の前記基台に対する上限位置を規定する、上限位置規定手段を、さらに含むことを特徴とする。
【0008】
また本発明は、前記昇降台に設けられる水準器を、さらに含むことを特徴とする。
【0009】
また本発明は、前記基台の側部から外側方に突出し、前記側部のほぼ全長にわたって延び、外部からの足の侵入を抑制する侵入抑制部材をさらに含むことを特徴とする。
【0010】
また本発明は、前記複数の空気圧アクチュエータのそれぞれは、空気ばねであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、1つの昇降台を複数の空気圧アクチュエータによって昇降駆動するので、部品点数が削減され、構成を簡素化することができるとともに、昇降台に乗載された車両からの荷重の片寄りがあっても、高い安定性を奏することができる。また切換え部が緊急排気弁を含むので、緊急時に緊急排気弁によって圧縮空気を排気することができ、これによって上昇位置にある昇降台を速やかに下降させ、車両を下限位置まで下降させて、安全を確保することができる。
【0012】
また本発明によれば、昇降台および基台の間に上限位置規定手段が設けられるので、昇降台の上限位置が規定され、昇降台が上限位置で傾斜することが抑制される。
【0013】
また本発明によれば、昇降台には水準器が設けられるので、昇降台の傾斜の有無、または傾斜の程度を作業者が水準器を見て容易に認識することができる。
【0014】
また本発明によれば、基台の側部には、該側部から外側方に突出する侵入抑制部材が、側部のほぼ全長にわたって設けられるので、昇降台と床面との間の空間への外部からの足の侵入を抑制し、安全性を向上することができる。
【0015】
また本発明によれば、複数の空気圧アクチュエータが空気ばねであるので、たとえば空気圧シリンダなどに比べて軽量であり、組立が容易であるので、給油所、自動車整備工場などへの車両用昇降装置の設置が容易であり、汎用性の高い車両用昇降装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態の車両用昇降装置1の正面図である。
図2】車両用昇降装置1の背面図である。
図3】車両用昇降装置1の平面図である。
図4】切換え部8の拡大平面図である。
図5】水準器13およびその付近の拡大した正面図である。
図6】車両用昇降装置1の空気圧回路図である。
図7A】操作ペダル21を上昇位置に操作した状態を示す図である。
図7B】操作ペダル21が中立位置にある状態を示す図である。
図7C】操作ペダルを下降位置に操作した状態を示す図である。
図8】切換え部8付近を拡大した斜視図である。
図9】昇降台2および上限位置規定手段40の分解斜視図である。
図10】基台4および空気ばね5a~5dの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の一実施形態の車両用昇降装置1の正面図である。図2は、車両用昇降装置1の背面図である。図3は、車両用昇降装置1の平面図である。図1は、ジャッキアーム14a,14b;14c,14dを拡げた状態を示し、図2はジャッキアーム14a,14b;14c,14dを縮小した状態を示す。本実施形態の車両用昇降装置1は、車両が乗載される昇降台2と、ほぼ水平な床面3に設置される基台4と、基台4に設けられ、昇降台2を上昇および下降させる複数の空気圧アクチュエータである空気ばね5a~5dと、複数の空気ばね5a~5dに圧縮空気を供給する空気圧源6と、空気圧源6と複数の空気ばね5a~5dとを接続する接続管7と、接続管7に介在され、空気圧源6の圧縮空気を供給し、または遮断するとともに、複数の空気ばね5a~5dからの戻り空気を排気する切換え部8と、を備える。切換え部8は、後述するように接続管7を開放して、圧縮空気を排出可能な緊急排気弁としての操作弁Vmを含む。基台4は、平面視において、昇降台4よりも小さくてもよい。車両用昇降装置1は、基台4の側部9から外側方に突出し、側部9のほぼ全長にわたって延び、たとえば作業者の外部からの足の侵入を抑制する侵入抑制部材10をさらに含んでもよい。
【0018】
本実施形態において車両は、軽自動車、普通乗用車、ミニバン、SUV(Sports Utility Vehicle)車、RV(Recreational Vehicle)車等を想定して説明する。このような車両のタイヤ交換、修理、点検等のために、本実施形態の車両用昇降装置1を好適に用いることができる。
【0019】
車両用昇降装置1は、床面3に固定される4つのシューターとも呼ばれる案内パネル11a~11dと、昇降台2および基台4の間に位置し、昇降台2の基台4に対する上限位置を規定する、上限位置規定手段12とを含む。切換え部8は、接続管7内の圧縮空気を大気開放して、圧縮空気を排出可能な操作弁Vmを含む。昇降台2の側部には、水準器13が設けられる。
【0020】
昇降台2は、平面視において、四辺形の鋼鉄製パネルから成ってもよい。四辺形は、車両用昇降装置1へ進行方向Aに垂直な方向に長手の長方形であってもよい。昇降台2の上面の長手方向両側部には、各一対のジャッキアーム14a,14b;14c,14dがピン15a,15b;15c、15dによって角変位自在に設けられる。各ピン15a,15b;15c,15dは、各ジャッキアーム14a,14b;14c,14dの長手方向一端部を挿通して昇降台2に固定される。各ジャッキアーム14a,14b;14c,14dは、第1アーム部材14a1,14b1;14c1,14d1と、第1アーム部材14a1,14b1;14c1,14d1内に当該第1アーム部材14a1,14b1;14c1,14d1の長手方向に移動自在に挿入される第2アーム部材14a2,14b2;14c2,14d2とを有する。
【0021】
これらの第1アーム部材14a1,14b1;14c1,14d1および各第2アーム部材14a2,14b2;14c2,14d2は、第1アーム部材14a1,14b1;14c1,14d1の長手方向に垂直な断面が四角形の鋼鉄製筒体から成る。各第2アーム部材14a2,14b2;14c2,14d2の長手方向他端部には、乗載する車両の底部に位置する複数のジャッキアップ部を個別に支持する支持具16a,16b,16c,16dが着脱可能に装着される。支持具16a,16b,16c,16dは、硬質ゴムなどの弾発性材料から成るパッド部と、各第2アーム部材14a2,14b2;14c2,14d2の長手方向他端部に設けられる嵌合凹部に嵌合する金属製の嵌合部とを有する。このような支持具16a,16b,16c,16dによって、昇降台2上に搬入された各種の車両を、車種に応じて位置の異なるジャッキアップ部に各パッド部を押し当てて車体を傷付けずに複数点(本実施形態では4)で安定して支持することができる。
【0022】
案内パネル11a~11dは、基台4の進行方向A下流側の側部および進行方向A上流側の側部に、進行方向Aに垂直な方向に間隔をあけて進行方向Aに垂直な軸線(すなわち、各側部の長手方向に平行な軸線)まわりに角変位自在に連結される。このような案内パネル11a~11dは、基台4に隣接する一側部から、基台4に対して進行方向A下流側および進行方向A上流側に最も離れた他側部に向かって厚みが減少する方向に緩やかに傾斜し、これによって進行方向Aに配置される案内パネル11b,11dによって昇降台2上に進入し、作業後に昇降台2上から進行方向A下流側の案内パネル11a,11cによって段差なく円滑に移動することができる。
【0023】
空気ばね5a~5dのそれぞれは、たとえば有効径φ260mm、ストローク最大中心高さ220mmの空気ばねを用いることができる。このような空気ばね5a~5dは、たとえばブリジストン製、産業機械用空気バネ、品番AS22402として商業的に入手可能である。この場合、空気ばね5a~5dのストローク中心高さに対して最大ストロークは、±100mmである。
【0024】
図4は、切換え部8の拡大平面図である。本実施形態の車両用昇降装置1は、経年的劣化によって空気バネ5a~5dが破裂または破損した際に、昇降台2を安全に下降させるための切換え部8を備える。切換え部8は、基板20、第1開閉弁Va、第2開閉弁Vb、第3開閉弁Vc、第4開閉弁Vd、第1総合開閉弁Vab、第2総合開閉弁Vcd、全体開閉弁V0、操作弁Vm、および操作ペダル21、接続管22、圧力計23、コネクタ22a、接続管24、接続管25、接続管26、マニホールド27、マニホールド28、接続管29、接続管30、接続管31、接続管32を備える。
【0025】
コネクタ22aには、空気圧源6の圧縮空気を供給する接続管7が接続され、設定圧力0.5MPa~0.6MPaの圧縮空気が供給される。操作弁Vmの供給孔には接続管22が接続され、操作弁Vmの吐出孔には接続管24が接続される。コネクタ22aには、接続管25が接続され、接続管25は第1総合開閉弁Vabの供給孔に接続される。第1総合開閉弁Vabは、マニホールド28の供給孔に接続され、マニホールド28の一方の吐出孔には第1開閉弁Vaが接続され、マニホールド28の他方に吐出孔には第2開閉弁Vbが接続される。第1開閉弁Vaの吐出孔には接続管29が接続され、第2開閉弁Vbの吐出孔には接続管30が接続される。接続管29は、空気バネ5aに接続され、接続管30は空気バネ5bに接続される。接続管25には、全体開閉弁V0が介在され、接続管25の全体開閉弁V0と第1総合開閉弁Vabとの間には、第2総合開閉弁Vcdが接続される。第2総合開閉弁vcdは、マニホールド27の供給孔に接続される、マニホールド27の一方の吐出孔には、第3開閉弁Vcが接続され、マニホールド27の他方の吐出孔には、第4開閉弁Vdが接続される、第3開閉弁Vcの吐出孔には、接続管31が接続され、第4開閉弁Vdの吐出孔には接続管32が接続される、接続管31は空気バネ5cに接続され、接続管32は空気バネ5dに接続される。
【0026】
一例として、空気バネ5aが経年的劣化等によって破裂した場合、空気ばね5aに接続される第1開閉弁Vaを閉弁し、操作ペダル21を上昇側へ操作すると、正常な3つの空気バネ5b~5dによって昇降台2を上昇させることができる。また、第1開閉弁Va~第4開閉弁Vdのすべてを閉弁することによって、昇降台2の下降を停止し、一定の高さ位置に維持することができる。他の空気バネ5b~5dのいずれかが破裂した場合においても、破裂した空気バネ5b~5dのいずれかに接続される第2~第4開閉弁Vb~Vdのいずれかを閉弁し、破裂していない残余の空気バネ5aおよび5b~5dのいずれかによって昇降台2を一定の高さ位置に支持し、急激に昇降台2上の車両が下降することを抑制することができる。
【0027】
図5は、水準器13およびその付近の拡大した正面図である。昇降台2の進行方向Aに平行な一方の側部には、水準器13が設けられる。この水準器13は、両端が封止された透明な管体に水が封止され、気泡の位置によって傾斜の有無を作業者が視認して確認することができる。このような水準器13によって、昇降台2、したがって昇降台2上の車両が水平か否かを容易に確認することができ、安全性を確保することができる。
【0028】
図6は、車両用昇降装置1の空気圧回路図である。車両用昇降装置1は、前述の切換え部8と、減圧弁Vrと、昇降台2および基台4の間に位置し、昇降台2の基台4に対する上限位置を規定する、上限位置規定手段40と、上限位置規定手段40のロック状態を解除するための一対のロック解除用空気圧シリンダCy1,Cy2と、をさらに含む。
【0029】
図7Aは、操作ペダル21を上昇位置に操作した状態を示す図である、図7Bは、操作ペダル21が中立位置にある状態を示す図である。図7Cは、操作ペダルを下降位置に操作した状態を示す図である。昇降台2を上昇させる際には、操作ペダル21を図7Bに示される中立位置から、作業者が操作ペダル21を踏んで図7Aに示される上昇位置に角変位させることによって、操作弁Vmが閉弁状態から開弁状態へ切り換えられ、空気圧源6から接続管7を経てコネクタ22aに供給された圧縮空気は、接続管22,24から開弁状態にある第1~第4開閉弁Va、Vb、Vc、Vdおよび各接続管25,26,29,31を経て、各空気ばね5a~5dに供給され、昇降台2を上昇させることができる。
【0030】
また、作業者が操作ペダル21を図7Bに示される中立位置から、図7Cに示される下降位置へ角変位させると、各空気バネ5a~5d内の圧縮空気は、各接続管25,26,29,31および第1~第4開閉弁Va、Vb、Vc、Vdを経て、操作弁Vmの排気口から排出され、昇降台2を下降させることができる。
【0031】
図8は、切換え部8付近を拡大した斜視図である。切換え部8は、前述の基板20、第1開閉弁Va、第2開閉弁Vb、第3開閉弁Vc、第4開閉弁Vd、第1総合開閉弁Vab、第2総合開閉弁Vcd、全体開閉弁V0、操作弁Vm、および操作ペダル21、接続管22、圧力計23、コネクタ22a、接続管24、接続管25、接続管26、マニホールド27、マニホールド28、接続管29、接続管30、接続管31および接続管32を収容する、外観が直方体状の金属製ハウジング41を有する。ハウジング41によって、内部に位置する上記の各部材が外部からの基材の接触、当接から保護され、損傷が防がれる。このような切換え部は、基台4の一側部に近接して配設される。
【0032】
図9は、昇降台2および上限位置規定手段40の分解斜視図である。昇降台2は、一対のパネル42a,42bと、各パネル42a,42bを連結する一対の連結部材43a,43bとを有する。一対のパネル42a,42bのそれぞれと基台4との間には、上限位置規定手段40がそれぞれ設けられる。一対の上限位置規定手段40は、同一の構成であるため、重複を避けて一方の上限位置規定手段40の構成について説明する。上限位置規定手段40は、パンタグラフリンク機構を構成する一対のリンク体44a,44bと、各リンク体44a,44bを連結する中心軸部材45と、各リンク体44a,44bの各端部を連結する複数の連結部材46と、中心軸部材45に回動自在に連結されるロック用枠体47と、ロック用枠体47を一方向にばね付勢する引張りばね48と、前述のロック解除用空気圧シリンダCy1,Cy2とを有する。図9では、図解を容易にするため、連結部材46の一部だけが示されている。
【0033】
一対のリンク体44a,44bのそれぞれは、第1リンク部材48a、第2リンク部材48b、第3リンク部材48c、第4リンク部材48d、および第1リンク部材48aと第2リンク部材48bとをX字状に連結し、かつ第3リンク部材48cと第4リンク部材48dとをX字状に連結する前述の中心軸部材45を有する。ロック用枠体47は、中心軸部材45の第1リンク部材48aおよび第2リンク部材48bの組と、第3リンク部材48cおよび第4リンク部材48dの組との間に位置し、中心軸部材45の軸線まわりに回転自在に連結される。ロック用枠体47は、一対の枠部材49a,49bと、各枠部材の49a,49bの各一端部を連結する枠部材49cと、各枠部材49a,49bの各他端部を連結する枠部材49dとを有する。各枠部材49a,49bの各一端部を連結する一方の枠部材49cには、引張りばね48の一端部が掛止められ、引張りばね48の他端部は基台4の所定部位に掛止められる。引張りばね48のばね力によって、ロック用枠体47は、他方の枠部材49dがロック解除用空気圧シリンダCy1,Cy2に近接する方向にばね付勢される。
【0034】
図10は、基台4および空気ばね5a~5dの分解斜視図である。なお、同図において、図解を容易にするため、空気バネ5c,5dは省力されている。基台4は、一対のベースプレート50a,50bと、各ベースプレート50a,50bを連結する一対の連結部材50c,50dとを有する。一方のベースプレート50aには、空気バネ5a,5bが搭載され、他方のベースプレート50bに空気バネ5c,5dが搭載される。また、各ベースプレート50a,50bの外側方に配置される側部には、前述の侵入抑制部材10がそれぞれ設けられる。侵入抑制部材10は、3つの直方体状の枠状体10a,10b,10cから成る。これらの枠状体10a,10b,10cは、たとえば構造用鋼材を所定長さに切断し、枠状に溶接して連結された構成であってもよい。各枠状体10a,10b,10cは、ボルトによって各ベースプレート50a,50bの外側方に配置される側部に該側部のほぼ全長にわたって固定される。このような侵入抑制部材10によって、作業者の足が外部から昇降台2と基台4との間に侵入して、下降する昇降台2と基台4との間に挟まれてしまうことが抑制され、安全性が向上する。
【0035】
各ベースプレート50a,50bの長手方向一端部寄りの部位には、各一対のチェーン51a,51b;51c,51dの一端部が固定される、各一対のチェーン51a,51b;51c,5dの他端部は、昇降台2の各パネル42a,42bの長手方向一端部寄りの部位に固定される。これらのチェーン51a,51b;51c,51dによって昇降台2の上限位置が規定される、上昇時にほぼ水平に位置決めすることができる。このようなチェーン51a,51b;51c,51dは、前述の上限位置規定手段40の一部を構成してもよい。
【0036】
本実施形態によれば、1つの昇降台2を複数の空気バネ5a~5dによって昇降駆動するので、部品点数が削減され、構成を簡素化することができるとともに、昇降台2に乗載された車両からの荷重の片寄りがあっても、高い安定性を奏することができる。また基台4の側部には、該側部から外側方に突出する侵入抑制部材10が、側部のほぼ全長にわたって設けられるので、昇降台2と床面3との間の空間への外部から作業者の足の挿入を抑制し、安全性を向上することができる。
【0037】
また、昇降台2および基台4の間に上限位置規定手段40が設けられるので、昇降台2の上限位置が規定され、昇降台2が上限位置で傾斜することが抑制される。
【0038】
また、切換え部8が緊急排気弁である操作弁Vmを含むので、緊急時に操作弁Vmによって圧縮空気を排気することができ、これによって上昇位置にある昇降台2を速やかに下降させ、車両を下限位置まで下降させて、安全を確保することができる。
【0039】
また、昇降台2には水準器13が設けられるので、昇降台2の傾斜の有無、または傾斜の程度を作業者が水準器13を見て容易に認識することができる。
【0040】
また、複数の空気空気圧アクチュエータとして空気ばね5a~5dを用いるので、たとえば空気圧シリンダなどに比べて軽量であり、組立が容易であるので、給油所、自動車整備工場などへの車両用昇降装置1の設置が容易であるとともに保守管理も容易であり、汎用性の高い車両用昇降装置1を提供することができる。
【0041】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、また、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、改良等が可能である。上記各実施形態をそれぞれ構成する全部または一部を、適宜、矛盾しない範囲で組み合わせ可能であることは、言うまでもない。
【符号の説明】
【0042】
1 車両用昇降装置
2 昇降台
3 床面
4 基台
5a~5d 空気ばね
6 空気圧源
7,24,25,26,29,30,31,32 接続管
8 切換え部
9 側部
10 侵入抑制部材
14a,14b;14c,14d ジャッキアーム
14a1,14b1;14c1,14d1 第1アーム部材
14a2,14b2;14c2,14d2 第2アーム部材
15a,15b;15c、15d ピン
16a,16b,16c,16d 支持具
20 基板
21 操作ペダル
22 接続管
23 圧力計
22a コネクタ
27,28 マニホールド
40 上限位置規定手段
41 ハウジング
42a,42b パネル
43a,43b 連結部材
44a,44b リンク体
46 連結部材
47 ロック用枠体
48a 第1リンク部材
48b 第2リンク部材
48c 第3リンク部材
48d 第4リンク部材
45 中心軸部材
49a,49b 枠部材
50a,50b ベースプレート
51a,51b;51c,51d チェーン
Cy1,Cy2 ロック解除用空気圧シリンダ
Va 第1開閉弁
Vb 第2開閉弁
Vc 第3開閉弁
Vd 第4開閉弁
Vab 第1総合開閉弁
Vcd 第2総合開閉弁
V0 全体開閉弁
Vm 操作弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10