(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102110
(43)【公開日】2023-07-24
(54)【発明の名称】非水電解質蓄電素子
(51)【国際特許分類】
H01M 10/058 20100101AFI20230714BHJP
H01M 50/103 20210101ALI20230714BHJP
H01M 50/131 20210101ALI20230714BHJP
H01M 50/449 20210101ALI20230714BHJP
H01M 50/451 20210101ALI20230714BHJP
H01M 50/119 20210101ALI20230714BHJP
H01M 50/414 20210101ALI20230714BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20230714BHJP
【FI】
H01M10/058
H01M50/103
H01M50/131
H01M50/449
H01M50/451
H01M50/119
H01M50/414
H01M50/443 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022002475
(22)【出願日】2022-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(74)【代理人】
【識別番号】100139354
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 昌子
(72)【発明者】
【氏名】中野 史也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 祥太
【テーマコード(参考)】
5H011
5H021
5H029
【Fターム(参考)】
5H011AA03
5H011AA09
5H011CC06
5H011KK00
5H011KK01
5H021CC02
5H021CC04
5H021EE02
5H021EE21
5H021HH03
5H029AJ01
5H029AJ12
5H029AK01
5H029AK03
5H029AK05
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM05
5H029AM07
5H029AM12
5H029AM16
5H029BJ02
5H029DJ02
5H029DJ04
5H029HJ04
5H029HJ12
5H029HJ20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】良好な放熱性と電極体の良好な絶縁性とを兼ね備える非水電解質蓄電素子を提供する。
【解決手段】非水電解質蓄電素子は、正極8、負極9、及び樹脂製の基材層11を有するセパレータ10を有する電極体1と、上記電極体1を収容する容器2とを備え、上記容器2を形成する部材の熱伝導率が、10W/m・K以上50W/m・K以下であり、上記電極体1が、上記正極8及び上記負極9を含まない一重又は二重以上に積層された上記セパレータ10から構成される最外部13を有し、上記最外部13における上記基材層11の合計の平均厚さが、0.015mm以上0.045mm以下である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、負極、及び樹脂製の基材層を有するセパレータを有する電極体と、
上記電極体を収容する容器と
を備え、
上記容器を形成する部材の熱伝導率が、10W/m・K以上50W/m・K以下であり、
上記電極体が、上記正極及び上記負極を含まない一重又は二重以上に積層された上記セパレータから構成される最外部を有し、
上記最外部における上記基材層の合計の平均厚さが0.015mm以上0.045mm以下である非水電解質蓄電素子。
【請求項2】
上記容器を形成する部材の平均厚さが0.5mm以上1.0mm以下である請求項1に記載の非水電解質蓄電素子。
【請求項3】
上記最外部の平均厚さが、0.020mm以上0.060mm以下である請求項1又は請求項2に記載の非水電解質蓄電素子。
【請求項4】
上記セパレータが無機粒子層をさらに有し、上記電極体の外面に上記無機粒子層が配置される請求項1、請求項2又は請求項3に記載の非水電解質蓄電素子。
【請求項5】
上記容器を形成する部材が、ステンレスである請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の非水電解質蓄電素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質蓄電素子に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車等の車両、家電製品、携帯電話等の様々な機器に、充放電可能な非水電解質蓄電素子(非水電解質二次電池、非水電解質キャパシタ等)が使用されている。非水電解質蓄電素子としては、正極と負極とがセパレータを介して巻回又は積層されてなる電極体が非水電解質と共に容器に収容された構造を有するものが一般的である(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非水電解質蓄電素子においては、電極体とこれを収容する容器との間の絶縁性、又は複数の電極体が容器内に収容されている場合の電極体間の絶縁性等を考慮して、電極体の最外部に一重又は二重以上に積層されたセパレータを配置することが通常行われる。一方、非水電解質蓄電素子に用いられる容器としては、アルミニウム製の容器が一般的であるが、強度等を考慮してステンレス製の容器を採用することも検討されている。ここで、アルミニウムの熱伝導率は200W/m・K程度であるのに対し、ステンレスの熱伝導率は20W/m・K程度と非常に低い。このように熱伝導率が低い部材から形成された容器を備える非水電解質蓄電素子の場合、容器表面からの放熱が生じ難く、充放電等によって非水電解質蓄電素子の容器内部で生じる熱が容器内部にこもり易くなる。非水電解質蓄電素子の容器内部に熱がこもり温度が上昇すると、非水電解質蓄電素子の劣化等を引き起こすため好ましくない。
【0005】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、熱伝導率が低い部材から形成された容器を備える非水電解質蓄電素子であって、良好な放熱性と電極体の良好な絶縁性とを兼ね備える非水電解質蓄電素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る非水電解質蓄電素子は、正極、負極、及び樹脂製の基材層を有するセパレータを有する電極体と、上記電極体を収容する容器とを備え、上記容器を形成する部材の熱伝導率が、10W/m・K以上50W/m・K以下であり、上記電極体が、上記正極及び上記負極を含まない一重又は二重以上に積層された上記セパレータから構成される最外部を有し、上記最外部における上記基材層の合計の平均厚さが、0.015mm以上0.045mm以下である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一側面によれば、熱伝導率が低い部材から形成された容器を備える非水電解質蓄電素子であって、良好な放熱性と電極体の良好な絶縁性とを兼ね備える非水電解質蓄電素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、非水電解質蓄電素子の一実施形態を示す透視斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1の非水電解質蓄電素子のI-I矢視模式的断面図である。
【
図4】
図4は、非水電解質蓄電素子を複数個集合して構成した蓄電装置の一実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
初めに、本明細書によって開示される非水電解質蓄電素子の概要について説明する。
【0010】
本発明の一側面に係る非水電解質蓄電素子は、正極、負極、及び樹脂製の基材層を有するセパレータを有する電極体と、上記電極体を収容する容器とを備え、上記容器を形成する部材の熱伝導率が、10W/m・K以上50W/m・K以下であり、上記電極体が、上記正極及び上記負極を含まない一重又は二重以上に積層された上記セパレータから構成される最外部を有し、上記最外部における上記基材層の合計の平均厚さが、0.015mm以上0.045mm以下である。
【0011】
当該非水電解質蓄電素子は、熱伝導率が低い部材から形成された容器を備える非水電解質蓄電素子であって、良好な放熱性と電極体の良好な絶縁性とを兼ね備える。このような効果が生じる理由としては定かではないが、以下の理由が推測される。従来、非水電解質蓄電素子には、セパレータとして、樹脂製の基材層のみからなるものか、このような基材層と無機粒子層とからなるものが一般的に用いられている。通常、樹脂製の基材層の熱伝導率は、おおよそ0.01W/m・K以上1W/m・K以下の範囲であり、無機粒子層の熱伝導率はおおよそ5W/m・K以上50W/m・K以下の範囲であり、樹脂製の基材層の熱伝導率が相対的に非常に低い。また、通常、電極体に含浸している非水電解質の熱伝導率は、非水電解質が非水電解液である場合、組成によっても異なるがおおよそ0.1W/m・K以上0.3W/m・K以下の範囲程度であると考えられる。従って、電極体の放熱性は、一重又は二重以上に積層されたセパレータから構成される電極体の最外部における基材層の厚さが大きく影響する。当該非水電解質蓄電素子においては、電極体の最外部における基材層の合計の平均厚さが0.045mm以下であるため、電極体内部で発熱した場合、電極体の最表面にまで熱が伝導し易く、容器を形成する部材の熱伝導率が低いにも拘らず、良好な放熱性を発揮することができる。また、当該非水電解質蓄電素子によれば、電極体の最外部における基材層の合計の平均厚さが0.015mm以上であり、十分な厚さを有するため、電極体が容器等の他の部材に対して良好な絶縁性を発揮することができる。
【0012】
「容器を形成する部材」について、容器が複数の部材から形成されている場合、質量基準で最も多く使用されている部材とする。例えば容器が角型又は円筒型である場合、側壁を形成する部材が、通常、質量基準で最も多く使用されている部材である。すなわち、「容器を形成する部材」は、例えば側壁を形成する部材とすることができる。
「熱伝導率」は、300Kにおける値とする。
「最外部における基材層の合計の平均厚さ」は、電極体の最外部においてセパレータが最も多く積層された部分での平均厚さとする。すなわち、例えば最外部において、セパレータが二重に積層された部分と、セパレータが三重に積層された部分とがある場合、三重に積層された部分における平均厚さを「最外部における基材層の合計の平均厚さ」とする。後述する「最外部の平均厚さ」についても同様に、電極体の最外部においてセパレータが最も多く積層された部分での平均厚さとする。また、「平均厚さ」とは、任意の5ヶ所において測定される厚さの平均値である。
【0013】
上記容器を形成する部材の平均厚さが、0.5mm以上1.0mm以下であることが好ましい。このような場合、容器の十分な強度と良好な放熱性との両立を図ることなどができる。
「容器を形成する部材の平均厚さ」について、容器に蓋部及び底部がある形状の場合、この蓋部及び底部については考慮しない。すなわち、例えば、角型又は円筒型の容器である場合、「容器を形成する部材の平均厚さ」は、側壁の平均厚さである。
【0014】
上記最外部の平均厚さが、0.020mm以上0.060mm以下であることが好ましい。最外部の平均厚さが上記範囲内であることにより、放熱性と電極体の絶縁性とをより高めることができる。
【0015】
上記セパレータが無機粒子層をさらに有し、上記電極体の外面に上記無機粒子層が配置されることが好ましい。電極体の外面に無機粒子層が配置されている場合、電極体の容器への挿入が容易になり、製造効率が高まる。また、電極体の外面に、熱伝導率が基材層の熱伝導率よりも一般的に高い無機粒子層が配置されていることにより、電極体内部で発生し、電極体の最表面に伝導した熱が容器へ伝導し易くなり、放熱性がより高まる傾向にある。
【0016】
上記容器を形成する部材が、ステンレスであることが好ましい。このような場合、容器の強度が高まり、容器の膨張及びその他の変形等が抑制される。すなわち、当該非水電解質蓄電素子の容器を形成する部材がステンレスである場合、当該非水電解質蓄電素子は、良好な放熱性と、電極体の良好な絶縁性と、容器の高い強度とをバランスよく兼ね備えることができる。
【0017】
本発明の一実施形態に係る非水電解質蓄電素子、蓄電装置、非水電解質蓄電素子の製造方法、及びその他の実施形態について詳述する。なお、各実施形態に用いられる各構成部材(各構成要素)の名称は、背景技術に用いられる各構成部材(各構成要素)の名称と異なる場合がある。
【0018】
<非水電解質蓄電素子>
図1から3に示す本発明の一実施形態に係る非水電解質蓄電素子100は、電極体1と、図示しない非水電解質と、これらを収容する容器2とを備える。非水電解質蓄電素子100は、非水電解質蓄電素子の一例である非水電解質二次電池である。この実施形態では、電極体1は、後に詳述するように、正極と負極とセパレータとを備えた扁平状の巻回型の電極体である。電極体1は、該電極体1の巻回軸方向に直交する一の方向において、両端の2つのR部(湾曲部)と、該2つのR部に挟まれた平面部とを備えている。なお、他の実施形態として、積層型の電極体を備える非水電解質蓄電素子であってもよい。積層型の電極体は、複数の正極と、複数の負極と、複数のセパレータとが、正極と負極との各間にセパレータが介在するように積層されてなる電極体である。通常、巻回型の電極体である場合、その構造上、内部に熱がこもりやすい傾向にある。従って、巻回型の電極体を備える非水電解質蓄電素子に本発明の一態様を適用した場合、良好な放熱性と電極体の良好な絶縁性とを兼ね備えるという効果が特に顕著に得られる。非水電解質の少なくとも一部は、電極体1を構成する正極、負極及びセパレータに含浸した状態で存在する。非水電解質蓄電素子100は、正極接続部材3、正極外部端子4、負極接続部材5及び負極外部端子6をさらに備える。電極体1の正極は、正極接続部材3を介して正極外部端子4と電気的に接続されている。電極体1の負極は、負極接続部材5を介して負極外部端子6と電気的に接続されている。
【0019】
(電極体)
電極体1は、
図3に示すように、正極8、負極9及びセパレータ10を有し、正極8と負極9とは、セパレータ10を介して重ね合わされている。電極体1は、帯状の正極8と帯状の負極9とが帯状のセパレータ10を介して重ね合わされた状態で巻回されてなる扁平状の巻回型の電極体である。セパレータ10は、樹脂製の基材層11と無機粒子層12との2層構造を有する。基材層11は、樹脂を主成分とする層である。また、無機粒子層12は、無機粒子を主成分とする層である。主成分とは、含有量が50質量%以上の成分をいう。なお、正極8及び負極9は、それぞれ層構造を有することが一般的であるが、
図3においては、正極8及び負極9の層構造は省略して図示している。また、隣り合う正極8、負極9及びセパレータ10のそれぞれの間、並びに電極体1と容器2との間は、通常、接触しているが、
図3においては、離間させて図示している。
【0020】
電極体1は、
図3に示すように、正極8及び負極9を含まない二重に積層されたセパレータ10から構成される最外部13を有する。すなわち、巻回型の電極体1においては、製造過程における巻回の最終段階において、正極8及び負極9を挟まない状態でセパレータ10のみを巻回することで、最外部13が形成される。巻回型の電極体1においては、最外部13は、セパレータ10のみが巻回されてなる外周部と称してもよい。換言すれば、最外部13とは、電極体1における外側の部分又は外周の部分であって、正極8と負極9とに挟まれていないセパレータ10のみから構成される部分である。
図3とは異なる形態において、最外部13は、一重のセパレータ10で構成されていてもよく、三重以上に積層されたセパレータ10で構成されていてもよい。好ましい一態様では、電極体の最外部13においてセパレータが最も多く積層された部分は、電極体1の平面部とR部との境界を起点として該境界から平面部側に向かって平面部の全長の少なくとも1/3(例えば1/2、典型的には2/3、例えば4/5)までの部分であってもよく、平面部の全長にわたる部分であってもよい。
【0021】
最外部13におけるセパレータ10の基材層11の合計の平均厚さは、0.015mm以上0.045mm以下である。
図3の形態においては、最外部13におけるセパレータ10の基材層11の合計の平均厚さは、2つの基材層11の合計の平均厚さ(T
S1+T
S2)である。この平均厚さの上限は、0.040mmが好ましく、0.035mm、0.030mm又は0.025mmであってもよい。最外部13におけるセパレータ10の基材層11の合計の平均厚さを上記上限以下とすることで、良好な放熱性を発揮することができる。一方、この平均厚さの下限は、0.020mmであってもよく、0.030mmであってもよい。最外部13におけるセパレータ10の基材層11の合計の平均厚さを上記下限以上とすることで、電極体1が容器等の他の部材に対して良好な絶縁性を発揮することができる。最外部13におけるセパレータ10の基材層11の合計の平均厚さは、セパレータ10の基材層11自体の厚さ、及び最外部13におけるセパレータ10の積層数(巻回数)等によって調整することができる。
【0022】
最外部13の平均厚さ(TA)としては、0.020mm以上0.060mm以下が好ましい。この平均厚さの上限は、0.055mmがより好ましく、0.050mm、0.045mm、0.040mm、0.035mm又は0.030mmがよりさらに好ましい場合もある。最外部13の平均厚さを上記上限以下とすることで、放熱性をより良好にすることができる。一方、最外部13の平均厚さの下限は、0.025mmであってもよく、0.030mmであってもよく、0.035mm、0.040mm又は0.045mmであってもよい。最外部13の平均厚さを上記下限以上とすることで、電極体1の絶縁性をより良好にすることができる。最外部13の平均厚さは、セパレータ10自体の厚さ、及び最外部13におけるセパレータ10の積層数(巻回数)等によって調整することができる。
【0023】
最外部13におけるセパレータ10の積層数(巻回数)としては、1以上であれば特に限定されないが、2以上5以下が好ましい。また、この上限は、4、3又は2がより好ましい場合がある。積層数を2以上とすることで、絶縁性等がより良好になる傾向がある。また、積層数を上記上限以下とすることで、界面熱抵抗を低減し、放熱性をより高めることができる。最外部13におけるセパレータ10の積層数は、電極体の最外部においてセパレータが最も多く積層された部分での積層数である。
【0024】
セパレータ10の基材層11の1層の平均厚さとしては、例えば4μm以上30μm以下が好ましく、8μm以上20μm以下がより好ましい。セパレータ10の無機粒子層12の1層の平均厚さとしては、1μm以上15μm以下が好ましく、2μm以上10μm以下がより好ましい。セパレータ10における基材層11の1層の平均厚さに対する無機粒子層12の1層の平均厚さの比(無機粒子層の1層の平均厚さ/基材層の1層の平均厚さ)としては、例えば、1/9から5/5の範囲とすることが好ましく、2/8から4/6の範囲とすることがより好ましい。
【0025】
図3に示されるように、本実施形態においては、電極体1の外面に無機粒子層12が配置されている。すなわち、セパレータ10の無機粒子層12が外側になるように巻回されて電極体1が形成されている。電極体1の外面に無機粒子層12が配置されていることにより、製造の際、電極体1の容器2への挿入が容易になり、製造効率が高まる。また、電極体1の外面に一般的に熱伝導率が高い無機粒子層12が配置されていることにより、放熱性がより高まる傾向にある。
【0026】
(容器)
容器2は、電極体1を収容し、内部に非水電解質が封入される密閉容器である。容器2を形成する部材の熱伝導率は、10W/m・K以上50W/m・K以下であり、15W/m・K以上40W/m・K以下であってもよく、20W/m・K以上30W/m・K以下であってもよい。当該非水電解質蓄電素子100においては、このような熱伝導率が低い部材から容器2が形成されているにもかかわらず、良好な放熱性を有し、電極体の内部での温度上昇を原因とする劣化等が抑制される。
【0027】
容器2を形成する部材は、上記範囲の熱伝導率を有し、非水電解質を封入できるシール性及び電極体1を保護できる強度を備えるものであれば、例えば樹脂であってもよく、金属であってもよい。この部材としては、特に優れた強度を有する点などからステンレスが好ましい。ステンレスとしては、JIS規格に規定されるSUS304、SUS430等が例示できる。ステンレスの熱伝導率は種類によって異なるが、通常、10W/m・K以上50W/m・K以下の範囲である。なお、蓋部等、容器2の一部においては、熱伝導率が10W/m・K以上50W/m・K以下の範囲ではない他の部材が用いられていてもよい。
【0028】
容器2を形成する部材の平均厚さ(
図3におけるT
B)としては特に限定されず、例えば0.1mm以上3.0mm以下であってもよいが、0.5mm以上1.0mm以下であることが好ましい。容器2を形成する部材の平均厚さ(T
B)を上記範囲内とすることで、容器2の十分な強度と良好な放熱性との両立を図ることなどができる。放熱性をより高める等の点からは、容器2を形成する部材の平均厚さ(T
B)は、0.8mm以下であってもよく、0.6mm以下であってもよい。なお、
図1から3に示す実施形態の非水電解質蓄電素子100における容器2を形成する部材の平均厚さ(T
B)は、容器2の側壁の平均厚さを指す(
図2、3参照)。
【0029】
なお、放熱性等の観点から、電極体1と容器2とは、直接接している、又は他の部材(例えば絶縁シート等)を介して接していることが好ましい。
【0030】
以下、本発明の一実施形態に係る非水電解質蓄電素子を構成する各部材について詳説する。
【0031】
(正極)
正極は、正極基材と、当該正極基材に直接又は中間層を介して配される正極活物質層とを有する。
【0032】
正極基材は、導電性を有する。「導電性」を有するか否かは、JIS-H-0505(1975年)に準拠して測定される体積抵抗率が107Ω・cmを閾値として判定する。正極基材の材質としては、アルミニウム、チタン、タンタル、ステンレス鋼等の金属又はこれらの合金が用いられる。これらの中でも、耐電位性、導電性の高さ、及びコストの観点からアルミニウム又はアルミニウム合金が好ましい。正極基材としては、箔、蒸着膜、メッシュ、多孔質材料等が挙げられ、コストの観点から箔が好ましい。したがって、正極基材としてはアルミニウム箔又はアルミニウム合金箔が好ましい。アルミニウム又はアルミニウム合金としては、JIS-H-4000(2014年)又はJIS-H4160(2006年)に規定されるA1085、A3003、A1N30等が例示できる。
【0033】
正極基材の平均厚さは、3μm以上50μm以下が好ましく、5μm以上40μm以下がより好ましく、8μm以上30μm以下がさらに好ましく、10μm以上25μm以下が特に好ましい。正極基材の平均厚さを上記の範囲とすることで、正極基材の強度を高めつつ、非水電解質蓄電素子の体積当たりのエネルギー密度を高めることができる。
【0034】
中間層は、正極基材と正極活物質層との間に配される層である。中間層は、炭素粒子等の導電剤を含むことで正極基材と正極活物質層との接触抵抗を低減する。中間層の構成は特に限定されず、例えば、バインダ及び導電剤を含む。
【0035】
正極活物質層は、正極活物質を含む。正極活物質層は、必要に応じて、導電剤、バインダ、増粘剤、フィラー等の任意成分を含む。
【0036】
正極活物質としては、公知の正極活物質の中から適宜選択できる。リチウムイオン二次電池用の正極活物質としては、通常、リチウムイオンを吸蔵及び放出することができる材料が用いられる。正極活物質としては、例えば、α-NaFeO2型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物、スピネル型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物、ポリアニオン化合物、カルコゲン化合物、硫黄等が挙げられる。α-NaFeO2型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物として、例えば、Li[LixNi(1-x)]O2(0≦x<0.5)、Li[LixNiγCo(1-x-γ)]O2(0≦x<0.5、0<γ<1、0<1-x-γ)、Li[LixCo(1-x)]O2(0≦x<0.5)、Li[LixNiγMn(1-x-γ)]O2(0≦x<0.5、0<γ<1、0<1-x-γ)、Li[LixNiγMnβCo(1-x-γ-β)]O2(0≦x<0.5、0<γ、0<β、0.5<γ+β<1、0<1-x-γ-β)、Li[LixNiγCoβAl(1-x-γ-β)]O2(0≦x<0.5、0<γ、0<β、0.5<γ+β<1、0<1-x-γ-β)等が挙げられる。スピネル型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物として、LixMn2O4、LixNiγMn(2-γ)O4等が挙げられる。ポリアニオン化合物として、LiFePO4、LiMnPO4、LiNiPO4、LiCoPO4、Li3V2(PO4)3、Li2MnSiO4、Li2CoPO4F等が挙げられる。カルコゲン化合物として、二硫化チタン、二硫化モリブデン、二酸化モリブデン等が挙げられる。これらの材料中の原子又はポリアニオンは、他の元素からなる原子又はアニオン種で一部が置換されていてもよい。これらの材料は表面が他の材料で被覆されていてもよい。正極活物質層においては、これら材料の1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0037】
正極活物質は、通常、粒子(粉体)である。正極活物質の平均粒径は、例えば、0.1μm以上20μm以下とすることが好ましい。正極活物質の平均粒径を上記下限以上とすることで、正極活物質の製造又は取り扱いが容易になる。正極活物質の平均粒径を上記上限以下とすることで、正極活物質層の電子伝導性が向上する。なお、正極活物質と他の材料との複合体を用いる場合、該複合体の平均粒径を正極活物質の平均粒径とする。「平均粒径」とは、JIS-Z-8825(2013年)に準拠し、粒子を溶媒で希釈した希釈液に対しレーザ回折・散乱法により測定した粒径分布に基づき、JIS-Z-8819-2(2001年)に準拠し計算される体積基準積算分布が50%となる値を意味する。
【0038】
粉体を所定の粒径で得るためには粉砕機や分級機等が用いられる。粉砕方法として、例えば、乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、ジェットミル、カウンタージェットミル、旋回気流型ジェットミル又は篩等を用いる方法が挙げられる。粉砕時には水、あるいはヘキサン等の有機溶剤を共存させた湿式粉砕を用いることもできる。分級方法としては、篩や風力分級機等が、乾式、湿式ともに必要に応じて用いられる。
【0039】
正極活物質層における正極活物質の含有量は、50質量%以上99質量%以下が好ましく、70質量%以上98質量%以下がより好ましく、80質量%以上95質量%以下がさらに好ましい。正極活物質の含有量を上記の範囲とすることで、正極活物質層の高エネルギー密度化と製造性を両立できる。
【0040】
導電剤は、導電性を有する材料であれば特に限定されない。このような導電剤としては、例えば、炭素質材料、金属、導電性セラミックス等が挙げられる。炭素質材料としては、黒鉛、非黒鉛質炭素、グラフェン系炭素等が挙げられる。非黒鉛質炭素としては、カーボンナノファイバー、ピッチ系炭素繊維、カーボンブラック等が挙げられる。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等が挙げられる。グラフェン系炭素としては、グラフェン、カーボンナノチューブ(CNT)、フラーレン等が挙げられる。導電剤の形状としては、粉状、繊維状等が挙げられる。導電剤としては、これらの材料の1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、これらの材料を複合化して用いてもよい。例えば、カーボンブラックとCNTとを複合化した材料を用いてもよい。これらの中でも、電子伝導性及び塗工性の観点よりカーボンブラックが好ましく、中でもアセチレンブラックが好ましい。
【0041】
正極活物質層における導電剤の含有量は、1質量%以上10質量%以下が好ましく、3質量%以上9質量%以下がより好ましい。導電剤の含有量を上記の範囲とすることで、非水電解質蓄電素子のエネルギー密度を高めることができる。
【0042】
バインダとしては、例えば、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリル、ポリイミド等の熱可塑性樹脂;エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム等のエラストマー;多糖類高分子等が挙げられる。
【0043】
正極活物質層におけるバインダの含有量は、1質量%以上10質量%以下が好ましく、3質量%以上9質量%以下がより好ましい。バインダの含有量を上記の範囲とすることで、正極活物質を安定して保持することができる。
【0044】
増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース等の多糖類高分子が挙げられる。増粘剤がリチウム等と反応する官能基を有する場合、予めメチル化等によりこの官能基を失活させてもよい。増粘剤を使用する場合、正極活物質層における増粘剤の含有量は、5質量%以下、さらには1質量%以下とすることが好ましい。ここで開示される技術は、正極活物質層が増粘剤を含まない態様で好ましく実施され得る。
【0045】
フィラーは、特に限定されない。フィラーとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、二酸化ケイ素、アルミナ、二酸化チタン、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、アルミノケイ酸塩等の無機酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、炭酸カルシウム等の炭酸塩、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、硫酸バリウム等の難溶性のイオン結晶、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の窒化物、タルク、モンモリロナイト、ベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビン、セリサイト、ベントナイト、マイカ等の鉱物資源由来物質又はこれらの人造物等が挙げられる。フィラーを使用する場合、正極活物質層におけるフィラーの含有量は、5質量%以下、さらには1質量%以下とすることが好ましい。ここで開示される技術は、正極活物質層がフィラーを含まない態様で好ましく実施され得る。
【0046】
正極活物質層は、B、N、P、F、Cl、Br、I等の典型非金属元素、Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Zn、Ga、Ge、Sn、Sr、Ba等の典型金属元素、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Zr、Nb、W等の遷移金属元素を正極活物質、導電剤、バインダ、増粘剤、フィラー以外の成分として含有してもよい。
【0047】
(負極)
負極は、負極基材と、当該負極基材に直接又は中間層を介して配される負極活物質層とを有する。中間層の構成は特に限定されず、例えば上記正極で例示した構成から選択することができる。
【0048】
負極基材は、導電性を有する。負極基材の材質としては、銅、ニッケル、ステンレス、ニッケルメッキ鋼、アルミニウム等の金属又はこれらの合金、炭素質材料等が用いられる。これらの中でも銅又は銅合金が好ましい。負極基材としては、箔、蒸着膜、メッシュ、多孔質材料等が挙げられ、コストの観点から箔が好ましい。したがって、負極基材としては銅箔又は銅合金箔が好ましい。銅箔の例としては、圧延銅箔、電解銅箔等が挙げられる。
【0049】
負極基材の平均厚さは、2μm以上35μm以下が好ましく、3μm以上30μm以下がより好ましく、4μm以上25μm以下がさらに好ましく、5μm以上20μm以下が特に好ましい。負極基材の平均厚さを上記の範囲とすることで、負極基材の強度を高めつつ、非水電解質蓄電素子の体積当たりのエネルギー密度を高めることができる。
【0050】
負極活物質層は、負極活物質を含む。負極活物質層は、必要に応じて導電剤、バインダ、増粘剤、フィラー等の任意成分を含む。導電剤、バインダ、増粘剤、フィラー等の任意成分は、上記正極で例示した材料から選択できる。
【0051】
負極活物質層は、B、N、P、F、Cl、Br、I等の典型非金属元素、Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Zn、Ga、Ge、Sn、Sr、Ba等の典型金属元素、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Zr、Ta、Hf、Nb、W等の遷移金属元素を負極活物質、導電剤、バインダ、増粘剤、フィラー以外の成分として含有してもよい。
【0052】
負極活物質としては、公知の負極活物質の中から適宜選択できる。リチウムイオン二次電池用の負極活物質としては、通常、リチウムイオンを吸蔵及び放出することができる材料が用いられる。負極活物質としては、例えば、金属Li;Si、Sn等の金属又は半金属;Si酸化物、Ti酸化物、Sn酸化物等の金属酸化物又は半金属酸化物;Li4Ti5O12、LiTiO2、TiNb2O7等のチタン含有酸化物;ポリリン酸化合物;炭化ケイ素;黒鉛(グラファイト)、非黒鉛質炭素(易黒鉛化性炭素又は難黒鉛化性炭素)等の炭素材料等が挙げられる。これらの材料の中でも、黒鉛及び非黒鉛質炭素が好ましい。負極活物質層においては、これら材料の1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0053】
「黒鉛」とは、充放電前又は放電状態において、X線回折法により決定される(002)面の平均格子面間隔(d002)が0.33nm以上0.34nm未満の炭素材料をいう。黒鉛としては、天然黒鉛、人造黒鉛が挙げられる。安定した物性の材料を入手できるという観点で、人造黒鉛が好ましい。
【0054】
「非黒鉛質炭素」とは、充放電前又は放電状態においてX線回折法により決定される(002)面の平均格子面間隔(d002)が0.34nm以上0.42nm以下の炭素材料をいう。非黒鉛質炭素としては、難黒鉛化性炭素や、易黒鉛化性炭素が挙げられる。非黒鉛質炭素としては、例えば、樹脂由来の材料、石油ピッチまたは石油ピッチ由来の材料、石油コークスまたは石油コークス由来の材料、植物由来の材料、アルコール由来の材料等が挙げられる。
【0055】
ここで、「放電状態」とは、負極活物質である炭素材料から、充放電に伴い吸蔵放出可能なリチウムイオンが十分に放出されるように放電された状態を意味する。例えば、負極活物質として炭素材料を含む負極を作用極として、金属Liを対極として用いた半電池において、開回路電圧が0.7V以上である状態である。
【0056】
「難黒鉛化性炭素」とは、上記d002が0.36nm以上0.42nm以下の炭素材料をいう。
【0057】
「易黒鉛化性炭素」とは、上記d002が0.34nm以上0.36nm未満の炭素材料をいう。
【0058】
負極活物質は、通常、粒子(粉体)である。負極活物質の平均粒径は、例えば、1nm以上100μm以下とすることができる。負極活物質が炭素材料、チタン含有酸化物又はポリリン酸化合物である場合、その平均粒径は、1μm以上100μm以下であってもよい。負極活物質が、Si、Sn、Si酸化物、又は、Sn酸化物等である場合、その平均粒径は、1nm以上1μm以下であってもよい。負極活物質の平均粒径を上記下限以上とすることで、負極活物質の製造又は取り扱いが容易になる。負極活物質の平均粒径を上記上限以下とすることで、負極活物質層の電子伝導性が向上する。粉体を所定の粒径で得るためには粉砕機や分級機等が用いられる。粉砕方法及び粉級方法は、例えば、上記正極で例示した方法から選択できる。負極活物質が金属Li等の金属である場合、負極活物質層は、箔状であってもよい。
【0059】
負極活物質層における負極活物質の含有量は、60質量%以上99質量%以下が好ましく、90質量%以上98質量%以下がより好ましい。負極活物質の含有量を上記の範囲とすることで、負極活物質層の高エネルギー密度化と製造性を両立できる。
【0060】
(セパレータ)
セパレータは、樹脂製の基材層を有する。セパレータとして、例えば、基材層のみからなるセパレータ、基材層の一方の面又は双方の面に無機粒子とバインダとを含む無機粒子層が形成されたセパレータ等を使用することができる。セパレータの基材層の形状としては、例えば、織布、不織布、多孔質樹脂フィルム等が挙げられる。これらの形状の中でも、強度の観点から多孔質樹脂フィルムが好ましく、非水電解質の保液性の観点から不織布が好ましい。セパレータの基材層の材料としては、シャットダウン機能の観点から例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンが好ましく、耐酸化分解性の観点から例えばポリイミドやアラミド等が好ましい。セパレータの基材層として、これらの樹脂を複合した材料を用いてもよい。基材層に用いられる樹脂の熱伝導率は、通常、0.01W/m・K以上1W/m・K以下の範囲内である。基材層における樹脂の含有量としては、例えば80質量%以上100質量%以下であり、90質量%以上又は99質量%以上であってもよい。基材層には、例えば無機粒子等の樹脂以外の成分が含有されていてもよい。
【0061】
無機粒子層に含まれる無機粒子は、大気下で室温から500℃に加熱したときの質量減少が5%以下であるものが好ましく、大気下で室温から800℃に加熱したときの質量減少が5%以下であるものがさらに好ましい。また、無機粒子は、通常、非導電性の粒子である。無機粒子を形成する無機化合物としては、例えば、酸化鉄、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、アルミノケイ酸塩等の酸化物;窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の窒化物;炭酸カルシウム等の炭酸塩;硫酸バリウム等の硫酸塩;フッ化カルシウム、フッ化バリウム、チタン酸バリウム等の難溶性のイオン結晶;シリコン、ダイヤモンド等の共有結合性結晶;タルク、モンモリロナイト、ベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビン、セリサイト、ベントナイト、マイカ等の鉱物資源由来物質又はこれらの人造物等が挙げられる。無機化合物として、これらの物質の単体又は複合体を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらの無機化合物の中でも、非水電解質蓄電素子の安全性の観点から、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、又はアルミノケイ酸塩が好ましい。無機粒子層に用いられる無機粒子の熱伝導率は、通常、5W/m・K以上50W/m・K以下の範囲内である。無機粒子層における無機粒子の含有量としては、50質量%以上99質量%以下が好ましく、70質量%以上97質量%以下がより好ましい。
【0062】
無機粒子層は、通常、バインダをさらに含む。無機粒子層におけるバインダとしては、正極活物質層のバインダとして例示したもの等を用いることができる。無機粒子層におけるバインダの含有量としては、例えば1質量%以上50質量%以下が好ましく、3質量%以上30質量%以下がより好ましい。
【0063】
セパレータの空孔率は、強度の観点から80体積%以下が好ましく、放電性能の観点から20体積%以上が好ましい。ここで、「空孔率」とは、体積基準の値であり、水銀ポロシメータでの測定値を意味する。
【0064】
(非水電解質)
非水電解質としては、公知の非水電解質の中から適宜選択できる。非水電解質には、非水電解液を用いてもよい。非水電解液は、非水溶媒と、この非水溶媒に溶解されている電解質塩とを含む。
【0065】
非水溶媒としては、公知の非水溶媒の中から適宜選択できる。非水溶媒としては、環状カーボネート、鎖状カーボネート、カルボン酸エステル、リン酸エステル、スルホン酸エステル、エーテル、アミド、ニトリル等が挙げられる。非水溶媒として、これらの化合物に含まれる水素原子の一部がハロゲンに置換されたものを用いてもよい。
【0066】
環状カーボネートとしては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、クロロエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)、スチレンカーボネート、1-フェニルビニレンカーボネート、1,2-ジフェニルビニレンカーボネート等が挙げられる。これらの中でもECが好ましい。
【0067】
鎖状カーボネートとしては、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジフェニルカーボネート、トリフルオロエチルメチルカーボネート、ビス(トリフルオロエチル)カーボネート等が挙げられる。これらの中でもEMCが好ましい。
【0068】
非水溶媒として、環状カーボネート又は鎖状カーボネートを用いることが好ましく、環状カーボネートと鎖状カーボネートとを併用することがより好ましい。環状カーボネートを用いることで、電解質塩の解離を促進して非水電解液のイオン伝導度を向上させることができる。鎖状カーボネートを用いることで、非水電解液の粘度を低く抑えることができる。環状カーボネートと鎖状カーボネートとを併用する場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートとの体積比率(環状カーボネート:鎖状カーボネート)としては、例えば、5:95から50:50の範囲とすることが好ましい。
【0069】
電解質塩としては、公知の電解質塩から適宜選択できる。電解質塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、オニウム塩等が挙げられる。これらの中でもリチウム塩が好ましい。
【0070】
リチウム塩としては、LiPF6、LiPO2F2、LiBF4、LiClO4、LiN(SO2F)2等の無機リチウム塩、リチウムビス(オキサレート)ボレート(LiBOB)、リチウムジフルオロオキサレートボレート(LiFOB)、リチウムビス(オキサレート)ジフルオロホスフェート(LiFOP)等のシュウ酸リチウム塩、LiSO3CF3、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2、LiN(SO2CF3)(SO2C4F9)、LiC(SO2CF3)3、LiC(SO2C2F5)3等のハロゲン化炭化水素基を有するリチウム塩等が挙げられる。これらの中でも、無機リチウム塩が好ましく、LiPF6がより好ましい。
【0071】
非水電解液における電解質塩の含有量は、20℃1気圧下において、0.1mol/dm3以上2.5mol/dm3以下であると好ましく、0.3mol/dm3以上2.0mol/dm3以下であるとより好ましく、0.5mol/dm3以上1.7mol/dm3以下であるとさらに好ましく、0.7mol/dm3以上1.5mol/dm3以下であると特に好ましい。電解質塩の含有量を上記の範囲とすることで、非水電解液のイオン伝導度を高めることができる。
【0072】
非水電解液は、非水溶媒と電解質塩以外に、添加剤を含んでもよい。添加剤としては、例えば、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t-ブチルベンゼン、t-アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の芳香族化合物;2-フルオロビフェニル、o-シクロヘキシルフルオロベンゼン、p-シクロヘキシルフルオロベンゼン等の前記芳香族化合物の部分ハロゲン化物;2,4-ジフルオロアニソール、2,5-ジフルオロアニソール、2,6-ジフルオロアニソール、3,5-ジフルオロアニソール等のハロゲン化アニソール化合物;ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水グルタコン酸、無水イタコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物;亜硫酸エチレン、亜硫酸プロピレン、亜硫酸ジメチル、メタンスルホン酸メチル、ブスルファン、トルエンスルホン酸メチル、硫酸ジメチル、硫酸エチレン、スルホラン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、テトラメチレンスルホキシド、ジフェニルスルフィド、4,4’-ビス(2,2-ジオキソ-1,3,2-ジオキサチオラン)、4-メチルスルホニルオキシメチル-2,2-ジオキソ-1,3,2-ジオキサチオラン、チオアニソール、ジフェニルジスルフィド、ジピリジニウムジスルフィド、1,3-プロペンスルトン、1,3-プロパンスルトン、1,4-ブタンスルトン、1,4-ブテンスルトン、パーフルオロオクタン、ホウ酸トリストリメチルシリル、リン酸トリストリメチルシリル、チタン酸テトラキストリメチルシリル、モノフルオロリン酸リチウム、ジフルオロリン酸リチウム等が挙げられる。これら添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0073】
非水電解液に含まれる添加剤の含有量は、非水電解液全体の質量に対して0.01質量%以上10質量%以下であると好ましく、0.1質量%以上7質量%以下であるとより好ましく、0.2質量%以上5質量%以下であるとさらに好ましく、0.3質量%以上3質量%以下であると特に好ましい。添加剤の含有量を上記の範囲とすることで、高温保存後の容量維持性能又はサイクル性能を向上させたり、安全性をより向上させたりすることができる。
【0074】
非水電解質には、固体電解質を用いてもよく、非水電解液と固体電解質とを併用してもよい。
【0075】
固体電解質としては、リチウム、ナトリウム、カルシウム等のイオン伝導性を有し、常温(例えば15℃から25℃)において固体である任意の材料から選択できる。固体電解質としては、例えば、硫化物固体電解質、酸化物固体電解質、酸窒化物固体電解質、ポリマー固体電解質等が挙げられる。
【0076】
硫化物固体電解質としては、リチウムイオン二次電池の場合、例えば、Li2S-P2S5、LiI-Li2S-P2S5、Li10Ge-P2S12等が挙げられる。
【0077】
本発明の実施形態に係る非水電解質蓄電素子の形状については特に限定されるものではない。非水電解質蓄電素子は、例えば、
図1等に示した角型電池の他、円筒型電池、扁平型電池、コイン型電池、ボタン型電池等であってもよい。
【0078】
(用途)
本実施形態の非水電解質蓄電素子は、熱伝導率が低い部材から形成された容器を備える非水電解質蓄電素子であって、良好な放熱性と電極体の良好な絶縁性とを兼ね備える。特に、容器を形成する熱伝導率が低い部材がステンレスである場合、当該非水電解質蓄電素子は、強度等にも優れる。従って、当該非水電解質蓄電素子は、出力が高く電極体の内部での温度上昇が生じ易く且つ容器等の耐久性が要求される用途に特に好適に用いることができる。このような用途としては、例えば電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)等の自動車用電源等が挙げられる。
【0079】
<蓄電装置>
本実施形態の非水電解質蓄電素子は、EV、HEV、PHEV等の自動車用電源、パーソナルコンピュータ、通信端末等の電子機器用電源、又は電力貯蔵用電源等に、複数の非水電解質蓄電素子1を集合して構成した蓄電ユニット(バッテリーモジュール)として搭載することができる。この場合、蓄電ユニットに含まれる少なくとも1つの非水電解質蓄電素子に対して、本発明の技術が適用されていればよい。
【0080】
図4に、電気的に接続された2つ以上の非水電解質蓄電素子100が集合した蓄電ユニット200をさらに集合した蓄電装置300の一例を示す。蓄電装置300は、2つ以上の非水電解質蓄電素子100を電気的に接続するバスバ(図示せず)、2つ以上の蓄電ユニット200を電気的に接続するバスバ(図示せず)等を備えていてもよい。蓄電ユニット200又は蓄電装置300は、1つ以上の非水電解質蓄電素子の状態を監視する状態監視装置(図示せず)を備えていてもよい。
【0081】
蓄電ユニット200又は蓄電装置300においては、各非水電解質蓄電素子が拘束されていない形態であってもよく、また、各非水電解質蓄電素子が離間して配置されている形態であってもよい。このような場合、各非水電解質蓄電素子の放熱性がより高まる。また、このような形態の場合、通常、各非水電解質蓄電素子の膨張が生じ易いが、ステンレス製の容器を用いることで、各非水電解質蓄電素子の膨張も抑制することができる。一方、各非水電解質蓄電素子が拘束され、また、各非水電解質蓄電素子が接触した状態で配置された蓄電ユニット200又は蓄電装置300に本発明の技術を適用することもできる。
【0082】
<非水電解質蓄電素子の製造方法>
本実施形態の非水電解質蓄電素子の製造方法は、公知の方法から適宜選択できる。当該製造方法は、例えば、電極体を準備することと、非水電解質を準備することと、電極体及び非水電解質を容器に収容することと、を備える。電極体を準備することは、正極及び負極を準備することと、セパレータを介して正極及び負極を積層又は巻回することにより電極体を形成することとを備える。
【0083】
非水電解質を容器に収容することは、公知の方法から適宜選択できる。例えば、非水電解質に非水電解液を用いる場合、容器に形成された注入口から非水電解液を注入した後、注入口を封止すればよい。
【0084】
<その他の実施形態>
尚、本発明の非水電解質蓄電素子は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えてもよい。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成又は周知技術に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。また、ある実施形態の構成に対して周知技術を付加することができる。
【0085】
上記実施形態では、非水電解質蓄電素子が充放電可能な非水電解質二次電池(例えばリチウムイオン二次電池)として用いられる場合について説明したが、非水電解質蓄電素子の種類、形状、寸法、容量等は任意である。本発明は、種々の二次電池、電気二重層キャパシタ又はリチウムイオンキャパシタ等のキャパシタにも適用できる。
【0086】
上記実施形態では、セパレータが樹脂製の基材層と無機粒子層とを有する形態を中心に説明したが、セパレータは基材層のみからなるものであってもよい。なお、このような場合、最外部における基材層の合計の平均厚さは、最外部の平均厚さと等しい。セパレータは、基材層の両面に無機粒子層が積層された3層構造のもの等であってもよい。容器と電極体との間には、絶縁シート等が配置されていてもよい。また、容器内に複数(例えば2から4個)の電極体が収容された非水電解質蓄電素子であってもよい。ここに開示される技術によると、容器内に複数の電極体が収容された非水電解質蓄電素子において、良好な放熱性を確保しつつ、各電極体間を簡易かつ適切に絶縁し得る点で特に技術的価値が高い。
【実施例0087】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0088】
[実施例1]
(正極の作製)
正極活物質であるLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2、導電剤であるアセチレンブラック(AB)、バインダであるポリフッ化ビニリデン(PVDF)及び分散媒であるN-メチルピロリドン(NMP)を用いて正極合剤ペーストを調製した。なお、正極活物質、導電剤及びバインダの質量比率は93:4:3(固形分換算)とした。正極基材としてのアルミニウム箔の表面に正極合剤ペーストを塗布し、乾燥させた。その後、ロールプレスを行い、正極基材の表面に正極活物質層が積層された正極を得た。
【0089】
(負極の作製)
負極活物質である黒鉛、バインダであるスチレンブタジエンゴム(SBR)、増粘剤であるカルボキシメチルセルロース(CMC)及び分散媒である水を用いて負極合剤ペーストを調製した。なお、負極活物質、バインダ及び増粘剤の質量比率は、97:2:1(固形分換算)とした。負極基材としての銅箔の表面に負極合剤ペーストを塗布し、乾燥させた。その後、ロールプレスを行い、負極基材の表面に負極活物質層が積層された負極を得た。
【0090】
(非水電解質の調製)
エチレンカーボネート及びエチルメチルカーボネートを体積比率30:70で混合した溶媒に、1.2mol/dm3の濃度でLiPF6を溶解させ、非水電解質を調製した。
【0091】
(非水電解質蓄電素子の組み立て)
上記正極、上記負極及びセパレータを用い、扁平状の巻回型の電極体を作製した。セパレータには、ポリオレフィン製微多孔膜である基材層(平均厚さ8μm)と無機粒子層(平均厚さ6μm)とを有する2層構造のセパレータを用いた。なお、巻回により電極体を作製する際の最後にセパレータのみを2周巻き、基材層の合計の平均厚さが0.0160mmである最外部を形成した。この電極体をステンレス製の角型容器(熱伝導率24W/m・K、側壁の平均厚さ0.60mm)に収容し、上記非水電解質を注入することによって、実施例1の非水電解質蓄電素子を得た。なお、絶縁性の評価のため電極体を2つ作製した。また、放熱性の評価のため、1つの電極体の最内周部に熱電対を挿入し、これを容器に収容し、非水電解質蓄電素子を組み立てた。
【0092】
[実施例2]
セパレータとして、ポリオレフィン製微多孔膜である基材層(平均厚さ10μm)と無機粒子層(平均厚さ4μm)とを有する2層構造のセパレータを用い、巻回により電極体を作製する際の最後にセパレータのみを2周巻いたこと以外は実施例1と同様にして実施例2の非水電解質蓄電素子を得た。
【0093】
[実施例3、比較例1、2]
巻回により電極体を作製する際の最後のセパレータの巻回数を変更し、基材層の合計の平均厚さが表1に記載の値である最外部を形成したこと以外は実施例2と同様にして、実施例3及び比較例1、2の各非水電解質蓄電素子を得た。
【0094】
[参考例1]
容器をアルミニウム製の角型容器(熱伝導率190W/m・K、側壁の平均厚さ0.65mm)に変更したこと以外は実施例2と同様にして、参考例1の非水電解質蓄電素子を得た。
【0095】
[参考例2]
セパレータとして、ポリオレフィン製微多孔膜である基材層(平均厚さ13.2μm)と無機粒子層(平均厚さ5.8μm)とを有する2層構造のセパレータを用い、巻回により電極体を作製する際の最後のセパレータの巻回数を変更し、基材層の合計の平均厚さが表1に記載の値である最外部を形成したこと以外は参考例1と同様にして、参考例2の非水電解質蓄電素子を得た。
【0096】
なお、表1には、得られた各非水電解質蓄電素子における電極体の最外部の平均厚さもあわせて示す。
【0097】
[評価]
(絶縁性)
得られた各非水電解質蓄電素子に備わる電極体について、以下の要領で絶縁性を評価した。2つの電極体を重ね合わせ、それぞれの電極体の最外周の電極間に100Vの電圧を印加した。電圧を印加した状態において電極体間が絶縁しているものをA、絶縁していないものをBとした。結果を表1に示す。
【0098】
(放熱性:非水電解質蓄電素子の内外の温度差)
得られた各非水電解質蓄電素子について、以下の要領で放熱性を評価した。充電状態とした非水電解質蓄電素子に対し25℃において3Cの電流で放電をした。放電中における、熱電対が挿入された非水電解質蓄電素子内部の電極体最内周部の最大到達温度(放電中の最大温度)と、非水電解質蓄電素子外部温度との温度差を非水電解質蓄電素子の内外の温度差とした。結果(非水電解質蓄電素子の内外の温度差)を表1に示す。
【0099】
【0100】
比較例2の非水電解質蓄電素子は、電極体の最外部における基材層の合計の平均厚さが0.045mmを超えており、放熱性評価において電極体最内周部の温度が大きく上昇し、放熱性が悪かった。一方、比較例1の非水電解質蓄電素子は、電極体の最外部における基材層の合計の平均厚さが0.015mm未満であり、電極体の絶縁性が不十分であった。これらに対し、電極体の最外部における基材層の合計の平均厚さが0.015mm以上0.045mm以下である実施例1から3の各非水電解質蓄電素子は、良好な放熱性と電極体の良好な絶縁性とを兼ね備えることができた。
なお、熱伝導率が高いアルミニウム製の容器が用いられた参考例1、2の非水電解質蓄電素子においては、電極体の最外部における基材層の合計の平均厚さに関わらず、放熱性が悪くなるという現象は確認できなかった。放熱性が悪くなり、電極体の内部の温度が上昇し易くなるという現象は、容器を形成する部材の熱伝導率が低い場合にのみ生じる特有の課題であることが確認できる。