IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 古河ロックドリル株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-穿孔制御装置 図1
  • 特開-穿孔制御装置 図2
  • 特開-穿孔制御装置 図3
  • 特開-穿孔制御装置 図4
  • 特開-穿孔制御装置 図5
  • 特開-穿孔制御装置 図6
  • 特開-穿孔制御装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102126
(43)【公開日】2023-07-24
(54)【発明の名称】穿孔制御装置
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/00 20060101AFI20230714BHJP
【FI】
E21D9/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022002512
(22)【出願日】2022-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】594149398
【氏名又は名称】古河ロックドリル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 翔
(72)【発明者】
【氏名】今里 真之
(72)【発明者】
【氏名】宮越 征一
(72)【発明者】
【氏名】大洞 健治
(72)【発明者】
【氏名】鐘築 遥
(72)【発明者】
【氏名】林 洪鑾
(72)【発明者】
【氏名】▲ぬで▼島 秀一
(57)【要約】
【課題】ガイドシェル退避時に、セントラライザ等の突設部と支保工との干渉を防止または抑制し得る穿孔制御装置を提供する。
【解決手段】穿孔制御装置20は、ガイドシェル13の穿孔時の姿勢を制御する穿孔姿勢管理部21を備える。穿孔姿勢管理部21は、最も切羽側に位置する支保工Tの端部の位置である端部情報を取得する位置情報取得部22と、端部情報に基づいて、該端部情報の座標を含むトンネル横断面を仮想切羽面として設定するとともに、該仮想切羽面上に外周孔の穿孔開始点を設定する穿孔開始点設定部23と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドシェルの穿孔開始時の姿勢を管理する穿孔姿勢管理部を備える穿孔制御装置であって、
前記穿孔姿勢管理部は、
トンネル前後方向において実切羽よりも後退した位置での一の座標を端部情報として取得する位置情報取得部と、
前記端部情報に基づいて、該端部情報の座標を含むトンネル横断面を仮想切羽面として設定するとともに、該仮想切羽面上に外周孔の穿孔開始点を設定する穿孔開始点設定部と、
を有することを特徴とする穿孔制御装置。
【請求項2】
前記端部情報は、最も切羽側に位置する支保工の切羽側端部の位置である請求項1に記載の穿孔制御装置。
【請求項3】
前記穿孔開始点設定部は、
前記ガイドシェルの姿勢情報を取得し、該姿勢情報に基づいて、前記ガイドシェルに装備されたセントラライザ等の突設部が前記最も切羽側に位置する支保工に干渉しない周孔姿勢が確保されるように前記穿孔開始点での姿勢を設定する請求項2に記載の穿孔制御装置。
【請求項4】
前記突設部が前記支保工に干渉する可能性がある外周孔を特定外周孔と呼ぶとき、
前記穿孔開始点設定部は、
予め設定されている穿孔位置情報に登録されている複数の外周孔のいずれかを選択する選択情報が入力されたときに、当該選択情報が入力されている外周孔を前記特定外周孔として認定し、前記仮想切羽面の位置で前記穿孔開始点を設定する請求項2または3に記載の穿孔制御装置。
【請求項5】
前記穿孔開始点設定部は、
前記特定外周孔の選択情報が取得されたときに、当該特定外周孔に限って、前記仮想切羽面の位置で前記穿孔開始点を設定する請求項4に記載の穿孔制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穿孔制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、穿孔誘導ナビゲーション装置や全自動穿孔誘導装置などの穿孔制御装置では、以下の2通りのいずれかの位置を穿孔開始点に設定し、この穿孔開始点に基づいてガイドシェルを設置して穿孔作業を行っている。
1) 実切羽に着岩した位置(例えば、特許文献1参照)
2) 実切羽を通る一の平面(例えば、特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭55-24237号公報
【特許文献2】特許第6677567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、掘進中のトンネルにおいて、切羽付近の壁面では、支保工を建て込むことでトンネル断面の安定化を図っている。上述した、従来設定している穿孔開始点での穿孔処理は、図6に模式図を示すように、ガイドシェルを着岩しないと穿孔を開始しないプログラムとなっている。
しかし、着岩状態で穿孔を行うと、既に設置された支保工Tよりも奧側(切羽K側)に、ロッド16先端のビット17が位置するため、穿孔開始点にガイドシェル13を設置後、ドリフタ15を駆動して穿孔作業を終了するまではよいものの、ガイドシェル13の退避時には、図7に干渉状態のイメージを示すように、ガイドシェル13のセントラライザ18等の突設部が支保工Tに引っかかる等の干渉が生じるおそれがある。そのため、従来の穿孔開始点の設定による穿孔制御であると、全自動穿孔には適さないことがある。
【0005】
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、ガイドシェル退避時に、セントラライザ等の突設部と支保工との干渉を防止または抑制し得る穿孔制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る穿孔制御装置は、ガイドシェルの穿孔開始時の姿勢を管理する穿孔姿勢管理部を備える穿孔制御装置であって、前記穿孔姿勢管理部は、トンネル前後方向において実切羽よりも後退した位置での一の座標を端部情報として取得する位置情報取得部と、前記端部情報に基づいて、該端部情報の座標を含むトンネル横断面を仮想切羽面として設定するとともに、該仮想切羽面上に外周孔の穿孔開始点を設定する穿孔開始点設定部と、を有することを特徴とする。
本発明の一態様に係る穿孔制御装置において、前記端部情報は、最も切羽側に位置する支保工の切羽側端部の位置であることは好ましい。
【0007】
ここで、本発明の一態様に係る穿孔制御装置において、前記穿孔開始点設定部は、前記ガイドシェルの姿勢情報を取得し、該姿勢情報に基づいて、前記ガイドシェルに装備されたセントラライザ等の突設部が前記最も切羽側に位置する支保工に干渉しない周孔姿勢が確保されるように前記穿孔開始点での姿勢を設定する構成とすることができる。
また、本発明の一態様に係る穿孔制御装置において、前記突設部が前記支保工に干渉する可能性がある外周孔を特定外周孔と呼ぶとき、前記穿孔開始点設定部は、予め設定されている穿孔位置情報に登録されている複数の外周孔のいずれかを選択する選択情報が入力されたときに、当該選択情報が入力されている外周孔を前記特定外周孔として認定し、前記仮想切羽面の位置で前記穿孔開始点を設定する構成とすることができる。
また、本発明の一態様に係る穿孔制御装置において、前記穿孔開始点設定部は、前記特定外周孔の選択情報が取得されたときに、当該特定外周孔に限って、前記仮想切羽面の位置で前記穿孔開始点を設定する構成とすることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る穿孔制御装置によれば、ガイドシェル退避時に、セントラライザ等の突設部と支保工との干渉を防止または抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一態様に係る穿孔制御装置を備えるドリルジャンボの一実施形態を説明する側面図である。
図2図1の穿孔制御装置で実行される穿孔制御処理のフローチャートである。
図3】本発明の一態様に係る穿孔制御装置によるトンネルの施工例を表す側面図であって、同図では、穿孔開始点の設定の状態を示している。
図4】本発明の一態様に係る穿孔制御装置によるトンネルの施工例を表す側面図であって、同図では、周孔の穿孔状態を示している。
図5】本発明の一態様に係る穿孔制御装置によるトンネルの施工例を表す側面図であって、同図では、周孔の穿孔を終えてガイドシェルが退避する状態を示している。
図6】従来の穿孔制御による穿孔開始点でのトンネルの施工を表す側面図であって、同図では、穿孔開始点の設定の状態を示している。
図7】従来の穿孔制御による穿孔開始点でのトンネルの施工を示す側面図であって、同図では、周孔の穿孔を終えてガイドシェルが退避する状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。なお、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。
【0011】
図1に示すように、本実施形態の穿孔制御装置20は、穿孔ナビゲーション装置または全自動穿孔誘導装置を構成する装備であって、切羽Kに対して装薬孔を自動穿孔するための全自動型のドリルジャンボ10等の作業用車両に用いられ、これによって穿孔に係る自動制御が可能に構成される。
本実施形態のドリルジャンボ10は、走行台車11と、走行台車11に設けられて油圧駆動される複数の可動部を有するブーム12と、ブーム12先端に装着されたガイドシェル13と、チャージングケージ14と、を備える。ブーム12は、ドリルジャンボ10のオペレータの操作若しくは穿孔制御装置20の指令に応じて、ガイドシェル13の位置および姿勢を変更可能に構成される。
【0012】
ガイドシェル13には、ガイドシェル13上を前進後退可能に移動するドリフタ15が設けられている。ガイドシェル13はドリフタ15を進退駆動する送り機構を備える。ドリフタ15は、公知の打撃機構と回転機構(いずれも図示略)を備える。ドリフタ15の先端には、ビット17を装着したロッド16が設けられ、ガイドシェル13の先端部には、ロッド16を案内可能にセントラライザ18が突設されている。
本実施形態のドリルジャンボ10は、各駆動部それぞれに姿勢および向きに関する情報を取得可能な複数の姿勢検出センサ19を備える。さらに、穿孔制御システムの装備として、トンネル用総合測量システム40が、別途にトンネル坑内でのドリルジャンボ10の後方に設けられる。
【0013】
トンネル用総合測量システム40は、トンネル坑内に設置されるトータルステーション41と、演算制御部42とを有する。トータルステーション41は、ドリルジャンボ10の走行台車11本体の位置や方向、およびトンネルの壁面や切羽Kの位置を計測可能になっている。なお、トンネル用総合測量システム40としては、例えば、特許第3418682号公報で開示されたものを用いることができる。
【0014】
ここで、本実施形態の穿孔制御装置20は、図1に示すように、ガイドシェル13の穿孔開始時の姿勢を管理する穿孔姿勢管理部21と、穿孔姿勢管理部21で管理された姿勢にて、他の自動穿孔処理全体を制御する穿孔制御部24と、を機能ブロックとして備えている。
詳しくは、穿孔制御装置20は、コンピュータを含む情報処理装置であり、CPUや、CPUの制御プログラム等を格納する記憶装置32、ドリルジャンボ10の各種の駆動部や上記複数の姿勢検出センサ19を含む外部装置に対してデータの入出力を媒介するインターフェース等を備える。本実施形態では、後述する「穿孔位置情報」は記憶装置32に登録されている。
【0015】
これらはデータを転送するための信号線であるバスで相互にかつデータ授受可能に接続され、CPUは、所定のプログラムを起動させ、そのプログラムに従って穿孔制御処理を実行可能になっている。
本実施形態の穿孔制御装置20は、例えば、ドリルジャンボ10の自動制御を管理する管理室に設置される。そして、穿孔制御装置20には、オペレータが操作する操作パネル30やモニター31等が付設されており、管理室内でオペレータによる監視および必要な操作が可能になっている。本実施形態では、後述する「端部情報」は、オペレータが操作パネル30から穿孔制御装置20に入力される。
【0016】
図1にブロック図を併記するように、本実施形態の穿孔制御装置20は、穿孔姿勢管理部21と、穿孔制御部24と、を機能的ブロックとして備える。穿孔姿勢管理部21は、トンネル前後方向において実切羽Kよりも後退した位置での一の座標を端部情報として取得する位置情報取得部22と、位置情報取得部22で取得された位置情報に基づいて仮想切羽面F1を設定する穿孔開始点設定部23と、を有する。
特に、本実施形態の穿孔開始点設定部23は、仮想切羽面F1の位置でガイドシェル13に装備されたセントラライザ18等の突設部が支保工Tに干渉しない周孔姿勢が確保される穿孔開始点P0を設定可能に構成される。
【0017】
より詳しくは、穿孔制御装置20で穿孔制御処理が実行されると、図2に示すように、ステップS100に移行し、本実施形態では、上記位置情報として、最も切羽K側に位置する支保工Tの切羽側端部の位置である端部情報が入力されているか否かが監視される。
本実施形態では、操作パネル30から端部情報が入力されていればステップS110に移行し、そうでなければステップS100で待機する。ステップS110では、端部情報に基づいて、この端部情報の座標を含むトンネル横断面を仮想切羽面F1として設定して、ステップS120に移行する。
本実施形態では、穿孔制御装置20は、ドリルジャンボ10に装備された複数の姿勢検出センサ19から取得される姿勢および向きに関する情報から、ガイドシェル13先端やビット17先端の随時の位置情報を生成可能になっている。よって、入力されたときの端部情報の座標を含むトンネル横断面を仮想切羽面F1として容易に設定できる。
【0018】
ステップS120では、ドリルプランとして、予め設定されている穿孔位置情報に登録されている複数の外周孔のいずれかを選択する選択情報が入力されているか否かを監視し、選択情報が入力されていればステップS130に移行し、そうでなければステップS200に移行する。ステップS200では、例えば従来同様の、実切羽面F0にて穿孔開始点を設定するなど、通常姿勢を姿勢制御データとして設定し、ステップS160に移行する。
【0019】
これに対し、ステップS130では、予め設定されている穿孔位置情報が参照される。ガイドシェルに装備されたセントラライザ等の突設部が支保工Tに干渉する可能性がある外周孔を特定外周孔と呼ぶとき、本実施形態では、記憶装置32の穿孔位置情報リストに登録されており、現在選択状態にある穿孔対象が特定外周孔であるか否かが判定される。穿孔対象が特定外周孔であればステップS140に移行し、そうでなければ上記ステップS200に移行する。
【0020】
ステップS140では、仮想切羽面F1の位置で穿孔開始点P1を設定し、続くステップS150では、上記突設部が、切羽Kの周壁面の閉合部Hに建て込まれた複数の支保工のうち、最も切羽側に位置する支保工Tに干渉しない姿勢を確保可能な周孔姿勢を穿孔開始点P1での姿勢制御データ(姿勢制御情報)として生成してこれを設定し、ステップS160に移行する。
【0021】
ここで、姿勢制御データの生成に際しては、穿孔制御装置20の穿孔姿勢管理部21(穿孔開始点設定部23)から、送信要求信号がンネル用総合測量システム40の演算制御部42に送信される。
本実施形態では、演算制御部42は、穿孔姿勢管理部21から送信要求信号が送信されると、トータルステーション41に対して、姿勢演算に必要な演算用情報を測定させるとともに、トータルステーション41で測定された演算用情報を穿孔姿勢管理部21に送信する。
【0022】
そして、送信された演算用情報が穿孔姿勢管理部21で取得されると、穿孔姿勢管理部21は、端部情報に基づいて設定した仮想切羽面F1にて、その取得した演算用情報と相対情報取得部19で取得した相対情報とからガイドシェル13の姿勢情報を取得し、この取得された姿勢情報に基づいて、当該穿孔開始点P1でのドリルジャンボ10およびブーム12等の各部の上記姿勢制御情報を生成する。なお、演算制御部42は、予めトータルステーション41で測定された演算用情報を記憶装置等に格納しておき、必要に応じて格納されている演算用情報を参照するようにしてもよい。
【0023】
ステップS160では、穿孔制御部24が、上記生成された姿勢制御情報に基づく姿勢にて、必要な穿孔処理の実行によって現在選択状態にある穿孔対象にて穿孔を行う。続くステップS170では、穿孔制御部24が、必要な穿孔作業が終了したか否かを、例えばフィーダの油圧モータに付設された圧力センサの圧力情報等に基づいて判定する。
必要な穿孔作業が終了していればステップS180に移行し、そうでなければステップS160の処理を続行する。ステップS180では、穿孔制御部24により、ガイドシェルの退避処理が実行される。
続くステップS190では、予め設定されている穿孔位置情報のリストから次の穿孔対象が参照される。次の穿孔対象があれば再びステップS130に戻り、リストから次の穿孔対象が無くなれば当該穿孔制御処理を終えて制御を主処理に戻すように構成されている。
【0024】
次に、自動穿孔作業が可能な本実施形態の穿孔制御装置20を用いて外周孔を穿孔する手順、および本実施形態の穿孔制御装置20の作用効果について説明する。
本実施形態のドリルジャンボ10で穿孔作業が行なわれると、穿孔制御装置20では上記穿孔制御処理が実行される。
【0025】
本実施形態のドリルジャンボ10では、図3に示すように、穿孔制御装置20は、実切羽面F0ではなく、実切羽面F0に一番近い支保工Tの前端面の位置に仮想切羽面F1の位置を設定する。この仮想切羽F1の設定作業は、まず、オペレータがブーム12を駆動してビット17を当該支保工Tに対向するように位置決めする。
オペレータは、その位置が仮想切羽面F1として設定すべき位置として適当であると判断したら、その位置を、最も切羽側に位置する支保工Tの端部の端部情報として、操作パネル30から穿孔制御装置20に入力する。
【0026】
穿孔姿勢管理部21では、位置情報取得部22がその入力された端部情報を取得し(ステップS100)、穿孔開始点設定部23は、取得された位置情報に基づいて、端部情報の座標を含むトンネル横断面を仮想切羽F1に設定する(ステップS110)。
そして、穿孔姿勢管理部21は、穿孔制御装置20の上記記憶装置32に予め入力されている穿孔位置データ(ドリルプラン)を参照し、特定外周孔として選択されていれば(ステップS120-130)、仮想切羽F1にて穿孔開始点P1を設定する(ステップS140)。穿孔開始点P1は、例えばビット17の先端の位置が穿孔開始点P1に一致するように設定する。
【0027】
さらに、穿孔開始点P1での周孔姿勢制御は、上述したガイドシェル13の姿勢情報に基づき、ブーム12の姿勢およびガイドシェル13の姿勢がセントラライザ18等の突設部が支保工Tに干渉しない周孔姿勢に位置決めされる(ステップS150)。次いで、その周孔姿勢においてドリフタ15に打撃・回転・送りを与えて所期の穿孔が行なわれる(ステップS160-170)。このように、本実施形態では、特定外周孔の場合、仮想切羽面F1にガイドシェル13を設置し、ガイドシェル13が着岩状態でなくとも穿孔を開始可能としている。
そして、外周孔を穿孔した後に、ガイドシェル13が退避される(ステップS180)。以下、穿孔制御装置20の上記記憶装置等に予め入力されている穿孔位置データ(ドリルプラン)に基づき、必要な穿孔が順次に行なわれる(ステップS190でのYES)。
【0028】
図4は、ドリフタ15によって外周孔を穿孔した状態を示しており、ガイドシェル13およびこれに装備されたセントラライザ等の突設部を含む各種構成部材が支保工Tに接触していないことが見て取れる。
また、図5は、外周孔を穿孔した後に、ガイドシェル13が退避する状態を示しており、同図においても、ガイドシェル13の各種構成部材が支保工Tに接触していないことが見て取れる。
【0029】
このように、穿孔ナビゲーション装置または全自動穿孔誘導装置を用いた穿孔作業において、本実施形態の穿孔制御装置20は、穿孔開始点設定部23が、端部情報を含むトンネル横断面を仮想切羽面F1として設定し、支保工Tに干渉する可能性がある外周孔として選択された特定外周孔の穿孔作業では、仮想切羽面F1の位置で穿孔開始点P1を設置して当該特定外周孔の穿孔を制御させる。
これにより、本実施形態の穿孔制御装置20によれば、穿孔開始点を設定する際に、穿孔姿勢管理部21が、ガイドシェル13に装備されたセントラライザ等の突設部が支保工に干渉しない干渉回避姿勢(周孔姿勢)となるように、支保工の端部(切羽側)の位置に穿孔開始点P0を設定できる。そのため、ガイドシェル13の退避時に、セントラライザ等の突設部が支保工Tに引っかからないように穿孔できる(干渉回避姿勢での穿孔機能)。
【0030】
また、本実施形態の穿孔制御装置20では、自動穿孔作業において、穿孔開始点設定部23は、支保工に干渉する可能性がある外周孔として選択された特定外周孔の穿孔作業に限って、仮想切羽面F1の位置で穿孔開始点P0を設置して当該特定された外周孔の穿孔を制御する。
これにより、本実施形態の穿孔制御装置20によれば、特定外周孔の穿孔作業に限って、干渉回避姿勢穿孔機能を選択的に発揮できる。そのため、支保工に干渉する可能性がある外周孔での干渉を確実に回避しつつも、干渉のおそれの無い他の穿孔作業での穿孔効率を向上させる上で好適である(特定外周孔の選択穿孔機能)。
【0031】
また、本実施形態の穿孔制御装置20によれば、穿孔開始点設定部23は、予め設定されている穿孔位置情報(ドリルプラン)に登録されている複数の外周孔のいずれかを選択する外周孔選択情報が入力されたときに、当該選択された外周孔を特定外周孔に設定できる。
これにより、本実施形態の穿孔制御装置20によれば、複数の外周孔のうちから、特定の外周孔のみを特定外周孔としてドリルプランに事前に入力できる。そのため、干渉回避姿勢穿孔機能を適用するかしないかの設定を、ドリルプランを用いて容易に設定可能とする上で好適である(特定外周孔の設定機能)。
【0032】
以上、本発明に係る穿孔制御装置について実施形態を例に説明したが、本発明に係る穿孔制御装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能なことは勿論である。
例えば、上記実施形態では、端部情報の入力に際し、オペレータが目視で判りやすくするために、ガイドシェル先端やビット先端等の目視可能な部位を支保工Tに近づけて端部情報を設定(入力)する例を示したが、これに限定されるものではない。
【0033】
つまり、仮想切羽面F1の設定は、仮想切羽面F1を設定するトンネル横断面の位置を含むトンネル前後方向での一の座標を入力するのみで足りる。よって、仮想切羽面F1の面上であれば端部情報を入力する位置が支保工Tから離れていてもかまわない。
なお、支保工内側の輪郭座標自体は、予め、穿孔位置情報と共に記憶装置32にインプットされている。ガイドシェル先端を支保工Tに近づけてオペレータが入力することで支保工内側の輪郭座標をインプットするものではない。
【0034】
また、仮想切羽面F1の設定自体は、トンネル前後方向において実切羽よりも後退した位置であれば、任意の位置にて入力可能である。また、その入力はオペレータが操作パネル30から数値を入力してもよいし、上記実施形態のように、ガイドシェル先端若しくはビット先端を仮想切羽面F1に設定すべき箇所に位置させて、その状態で操作パネル30の入力ボタンをオペレータが押すことで穿孔制御装置20にインプットするように構成できる。
【符号の説明】
【0035】
10 ドリルジャンボ
11 走行台車
12 ブーム
13 ガイドシェル
14 チャージングケージ
15 ドリフタ
16 ロッド
17 ビット
18 セントラライザ
19 姿勢検出センサ(相対情報取得部)
20 穿孔制御装置
21 穿孔姿勢管理部
22 位置情報取得部
23 穿孔開始点設定部
24 穿孔制御部
30 操作パネル
31 モニター
32 記憶装置
40 トンネル用総合測量システム
41 トータルステーション
42 演算制御部
T 支保工
F0 実切羽面
F1 仮想切羽面
P1 穿孔開始点
K 切羽
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7