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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023010216
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】X線測定装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/205 20180101AFI20230113BHJP
   G01N 23/2055 20180101ALI20230113BHJP
【FI】
G01N23/205
G01N23/2055
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021114197
(22)【出願日】2021-07-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100176072
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 功
(74)【代理人】
【識別番号】100169225
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 明
(72)【発明者】
【氏名】中原 良太
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001AA07
2G001BA25
2G001BA29
2G001CA01
2G001CA07
2G001HA13
2G001JA07
2G001KA07
2G001LA02
2G001SA29
(57)【要約】
【課題】目標からずれた位置関係での測定となることを抑制する。
【解決手段】コイルばね20にX線を照射し、回折されたX線を測定する測定装置10を備えるX線測定装置1であって、コイルばね20の表面位置を検出する形状センサ16と、表面位置と基準位置との位置ずれ量を取得する取得部30と、位置ずれ量に基づき、測定装置10の測定位置又は測定速度を補正する補正部32と、コイルばね20を回転させると共に回転軸方向Aに測定装置10を移動させながら測定させ、移動の際、補正部32によって補正された補正結果に基づいて測定装置10を移動させる制御部36と、を備える。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物に向けてX線を照射し、前記測定対象物にて回折されたX線を測定する測定部を備えるX線測定装置であって、
前記測定対象物の表面位置を検出する検出部と、
前記表面位置と予め定められた基準位置との位置ずれ量を取得する取得部と、
前記位置ずれ量に基づき、前記測定部の測定位置又は測定速度を補正する補正部と、
前記測定対象物を回転させると共に前記測定対象物が回転する回転軸に沿った方向に前記測定部を移動させながら測定させ、前記移動の際、前記補正部によって補正された補正結果に基づいて前記測定部を移動させる制御部と、を備える、
X線測定装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記測定対象物を回転させながら、前記回転軸の周方向の複数の回転角における複数の前記表面位置を検出し、
前記取得部は、前記検出部により検出された複数の前記表面位置について、前記回転角に紐付けられた複数の前記位置ずれ量を取得し、
前記補正部は、前記回転角に紐付けられた複数の前記位置ずれ量に基づき、前記回転角における前記測定位置又は前記測定速度を補正する、
請求項1に記載のX線測定装置。
【請求項3】
前記取得部は、前記回転軸に交差する方向での前記表面位置と前記基準位置との差分を算出することにより、前記回転軸に交差する方向での前記位置ずれ量を取得し、
前記補正部は、前記回転軸に交差する方向での前記位置ずれ量に基づき、前記測定位置を補正し、
前記制御部は、前記補正部によって補正された前記測定位置となるように、前記測定部を移動制御する、
請求項1又は2に記載のX線測定装置。
【請求項4】
前記取得部は、前記回転軸に沿った方向での前記表面位置と前記基準位置との差分を算出することにより、前記回転軸に沿った方向での前記位置ずれ量を取得し、
前記補正部は、前記回転軸に沿った方向での前記位置ずれ量に基づき、前記測定速度を補正し、
前記制御部は、前記補正部によって補正された前記測定速度となるように、前記測定部を移動制御する、
請求項1~3の何れか一項に記載のX線測定装置。
【請求項5】
前記測定対象物は、弾性体である、
請求項1~4の何れか一項に記載のX線測定装置。
【請求項6】
測定対象物に向けてX線を照射し、前記測定対象物にて回折されたX線を測定する測定部と通信可能なコンピュータを、
前記測定対象物の表面位置を検出する検出手段、
前記表面位置と予め定められた基準位置との位置ずれ量を取得する取得手段、
前記位置ずれ量に基づき、前記測定部の測定位置又は測定速度を補正する補正手段、
前記測定対象物を回転させると共に前記測定対象物が回転する回転軸に沿った方向に前記測定部を移動させながら測定させ、前記移動の際、前記補正手段によって補正された補正結果に基づいて前記測定部を移動させる制御手段、
として機能させるためのプログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線測定装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、X線を用いて測定対象物を測定するX線測定装置が知られている。例えば、下記特許文献1には、X線測定装置において、直線状の測定対象物に沿って、測定部を回転させながら移動させることで、測定対象物の全周を測定する技術が記載されている。また、下記特許文献2には、X線測定装置において、測定対象物の厚み方向の変位量を測定するために、測定対象物及び測定部を相対回転させる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-154627号公報
【特許文献2】特開2006-317465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記各特許文献に記載の技術では、例えば測定対象物がコイルばね等の弾性体である場合に、弾性力や振動等の影響により、測定対象物と測定部との相対距離が変動し、目標からずれた位置関係での測定となってしまう可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は、目標からずれた位置関係での測定となることを抑制することができるX線測定装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一態様に係るX線測定装置は、測定対象物に向けてX線を照射し、前記測定対象物にて回折されたX線を測定する測定部を備えるX線測定装置であって、前記測定対象物の表面位置を検出する検出部と、前記表面位置と予め定められた基準位置との位置ずれ量を取得する取得部と、前記位置ずれ量に基づき、前記測定部の測定位置又は測定速度を補正する補正部と、前記測定対象物を回転させると共に前記測定対象物が回転する回転軸に沿った方向に前記測定部を移動させながら測定させ、前記移動の際、前記補正部によって補正された補正結果に基づいて前記測定部を移動させる制御部と、を備える。
【0007】
本発明の第二態様に係るX線測定装置では、前記検出部は、前記測定対象物を回転させながら、前記回転軸の周方向の複数の回転角における複数の前記表面位置を検出し、前記取得部は、前記検出部により検出された複数の前記表面位置について、前記回転角に紐付けられた複数の前記位置ずれ量を取得し、前記補正部は、前記回転角に紐付けられた複数の前記位置ずれ量に基づき、前記回転角における前記測定位置又は前記測定速度を補正する。
【0008】
本発明の第三態様に係るX線測定装置では、前記取得部は、前記回転軸に交差する方向での前記表面位置と前記基準位置との差分を算出することにより、前記回転軸に交差する方向での前記位置ずれ量を取得し、前記補正部は、前記回転軸に交差する方向での前記位置ずれ量に基づき、前記測定位置を補正し、前記制御部は、前記補正部によって補正された前記測定位置となるように、前記測定部を移動制御する。
【0009】
本発明の第四態様に係るX線測定装置では、前記取得部は、前記回転軸に沿った方向での前記表面位置と前記基準位置との差分を算出することにより、前記回転軸に沿った方向での前記位置ずれ量を取得し、前記補正部は、前記回転軸に沿った方向での前記位置ずれ量に基づき、前記測定速度を補正し、前記制御部は、前記補正部によって補正された前記測定速度となるように、前記測定部を移動制御する。
【0010】
本発明の第五態様に係るX線測定装置では、前記測定対象物は、弾性体である。
【0011】
本発明の第六態様に係るプログラムは、測定対象物に向けてX線を照射し、前記測定対象物にて回折されたX線を測定する測定部と通信可能なコンピュータを、前記測定対象物の表面位置を検出する検出手段、前記表面位置と予め定められた基準位置との位置ずれ量を取得する取得手段、前記位置ずれ量に基づき、前記測定部の測定位置又は測定速度を補正する補正手段、前記測定対象物を回転させると共に前記測定対象物が回転する回転軸に沿った方向に前記測定部を移動させながら測定させ、前記移動の際、前記補正手段によって補正された補正結果に基づいて前記測定部を移動させる制御手段、として機能させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、目標の位置関係からずれた測定となることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第一実施形態に係るX線測定装置の全体構成の一例を示す図である。
図2】コンピュータの機能構成の一例を示すブロック図である。
図3】検出部による表面位置の検出点が、コイルばねの回転に伴い回転軸方向に移動することについて概念的に説明する図である。
図4】記憶部が記憶する検出点に関するデータテーブルの一例を示す図である。
図5】検出点の基準位置からの位置ずれについて概念的に説明する図である。
図6】コンピュータによる制御の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第一実施形態>
以下、添付図面を参照して、本発明の第一実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一要素又は同一機能を有する要素には可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0015】
<全体構成>
図1は、第一実施形態に係るX線測定装置の全体構成の一例を示す図である。図1に示すように、X線測定装置1は、例えば、測定部として測定装置10と、ロボット12と、回転機構14と、形状センサ16と、コンピュータ18と、を備える。
【0016】
測定装置10は、測定対象物としてのコイルばね20に向けてX線を照射し、測定対象物にて回折されたX線を測定する。コイルばね20は、螺旋状の弾性体であって、例えばN回巻きの直線形の圧縮コイルばねである。測定装置10は、例えば1枚当たり任意の露光時間(数mms~100mms程度)で回折環画像を取得する。
【0017】
ロボット12は、例えば、6軸垂直多関節ロボットであり、測定装置10を移動させる移動機構である。ロボット12は、測定装置10の検出センサと測定対象物との相対距離を調整する。また、ロボット12は、測定対象物の測定面に沿った平面内の位置を調整する。また、ロボット12は、測定対象物の測定面に対するX線の照射角等を調整する。
【0018】
回転機構14は、コイルばね20の両端を回転軸方向Aで挟持可能な一対の保持部材22と、保持部材22に固定され保持部材22を介してコイルばね20を回転させる回転モータ24と、を有する。回転モータ24は、回転モータ24の回転角を検出してエンコーダ値としてコンピュータ18に送信するエンコーダ26を有する。
【0019】
形状センサ16は、表面形状を計測するセンサであって、測定対象物としてのコイルばね20の表面位置を検出する。形状センサ16は、例えばコイルばね20における表面上の検出点であって、形状センサ16に対し最短距離となる検出点の位置を、コイルばね20の表面位置として検出する。
【0020】
形状センサ16は、例えば、レーザ光17をコイルばね20に照射して、コイルばね20からの反射光を測定し、形状センサ16からコイルばね20までの距離を計測する。形状センサ16は、計測した距離に基づき、表面位置を検出する。形状センサ16は、不図示の移動機構等によって回転軸方向Aに移動することにより、検出範囲をレーザ光17の照射範囲よりも拡張可能とされている。なお、例えばレーザ光17の照射範囲にコイルばね20の全体が含まれる場合には、形状センサ16は、回転軸方向Aに移動可能とされていなくてもよい。
【0021】
コンピュータ18は、測定装置10、ロボット12、回転機構14、及び形状センサ16のそれぞれに通信可能に接続されている。コンピュータ18は、CPU(Central Processing Unit)やメモリ等を備えた汎用的なコンピュータで構成されている。後述するコンピュータ18の各機能は、CPUの制御のもとで、メモリに記憶されているプログラムを実行し、X線測定装置1が備える各構成を動作させることで実現される。
【0022】
図2は、コンピュータ18の機能構成の一例を示すブロック図である。図2に示すように、コンピュータ18は、機能的には、検出部30と、取得部32と、補正部34と、制御部36と、応力算出部38と、記憶部40と、を有する。
【0023】
検出部30は、形状センサ16及び回転機構14の動作を制御する。これにより、検出部30は、コイルばね20を回転させながら、回転軸の周方向の複数の回転角における複数の表面位置を検出する。図3は、検出部30による表面位置の検出点42が、コイルばね20の回転に伴い回転軸方向Aに移動することについて概念的に説明する図である。図3に示すように、コイルばね20の回転に伴い、検出点42が、回転軸方向Aに移動する。検出部30は、検出点42がコイルばね20の一端から他端に到達するまで表面位置を検出する。
【0024】
検出部30は、表面位置として、例えば高さ方向Zの座標軸上の位置(以下、単に「高さ位置」ともいう。)を取得する。高さ方向Zは、回転軸に直交する方向である。なお、高さ方向Zは回転軸に必ずしも直交していなくてもよく、回転軸に交差する方向を含む。また、検出部30は、エンコーダ26からエンコーダ値を取得し、取得した高さ位置と紐付けて、記憶部40が記憶するデータテーブル50(図4参照)に格納する。
【0025】
ここで、コイルばね20の弾性力や振動等により、検出点42の高さ位置が、規格上のコイルばね20の高さ位置からずれる場合がある。規格上のコイルばね20の高さ位置は、規格上のコイルばね20が取ると想定される高さ位置であって、コイルばね20の幅の設計値等に基づき予め設定されている。図5は、検出点42の基準位置からの位置ずれについて概念的に説明する図である。図5に示すように、規格上のコイルばね20の高さ位置を基準位置Zとした場合に、検出点42の高さ位置(Z0,Z1,・・・,Z)が基準位置Zからずれている。検出点42の高さ位置(Z0,Z1,・・・,Z)は、X線測定開始後の撮像x回目(x=0,1,・・・,n)の各回転角と同じ各回転角での検出点42の高さ位置を示す。
【0026】
取得部32は、検出部30により検出された複数の高さ位置(Z0,Z1,・・・,Z)について、回転角に紐付けられた複数の位置ずれ量を取得する。取得部32は、データテーブル50を参照し、エンコーダ値(e0,e1,・・・,e)毎に、高さ位置(Z0,Z1,・・・,Z)と基準位置Zとの差分を算出することにより、高さ方向Zでの複数の位置ずれ量(Z-Z0,Z-Z1,・・・,Z-Z)を取得する。取得部32は、取得した位置ずれ量を、対応するエンコーダ値に紐付けて、データテーブル50に格納する。
【0027】
補正部34は、取得部32により取得された高さ方向Zでの位置ずれ量に基づき、測定装置10の測定位置を補正する。測定装置10の測定位置は、例えば、コイルばね20に対する測定装置10の相対的な位置である。補正部34は、回転角に紐付けられた複数の位置ずれ量に基づき、当該回転角における測定位置を補正する。
【0028】
制御部36は、X線測定時における測定装置10、ロボット12、及び回転機構14の動作を制御する。これにより、制御部36は、コイルばね20を回転させると共に回転軸方向Aに沿って測定装置10を移動させながらX線を測定させる。制御部36は、コイルばね20の回転に伴い、回転軸の周方向の複数の回転角における複数の測定位置で、測定装置10にX線を測定させる。
【0029】
また、制御部36は、X線測定時に回転軸方向Aに沿って測定装置10を移動させる際、補正部34によって補正された補正結果に基づいて測定装置10を移動させる。例えば、制御部36は、測定装置10の各測定位置が、補正部34により補正された各測定位置になるように、ロボット12を制御する。制御部36は、X線測定の結果得られた回折環画像を、例えば記憶部40に記憶する。
【0030】
応力算出部38は、記憶部40に記憶された各回折環画像に基づき、例えばcоsα法を用いてコイルばね20の残留応力値を算出する。なお、応力算出部38は、算出した残留応力値を記憶部40に記憶してもよいし、コンピュータ18が備える不図示の出力部に出力してもよい。
【0031】
記憶部40は、上記の各機能部により取得された情報や、予め設定された情報を記憶する。図4は、記憶部40が記憶する検出点42に関するデータテーブル50の一例を示す図である。図4に示すように、データテーブル50には、回転モータ24の回転角を示すエンコーダ値に紐付けられて、検出点42の高さ位置、基準位置、及び位置ずれ量が格納されている。
【0032】
<コンピュータ18による制御フロー>
次に、図6を参照して、コンピュータ18による制御フローについて説明する。図6は、コンピュータ18による制御の流れの一例を示すフローチャートである。なお、以下のステップの順番は、適宜、変更することができる。以下の処理は、コイルばね20の両端を回転機構14に取り付け、コイルばね20の一端を形状センサ16側に向けた位置を初期位置として位置調整した後、開始される。
【0033】
(ステップSP10)
検出部30は、コイルばね20を回転させながらコイルばね20の表面位置を検出する。そして、処理は、ステップSP12の処理に移行する。
【0034】
(ステップSP12)
検出部30は、表面位置の検出点42がコイルばね20の一端から他端に到達したか否かを判定する。当該判定が否定判定された場合には、ステップSP10の処理を続ける。当該判定が肯定判定された場合には、処理は、ステップSP14の処理に移行する。
【0035】
(ステップSP14)
検出部30は、表面位置として、高さ位置を取得する。また、検出部30は、当該高さ位置を検出した時のエンコーダ値を取得する。検出部30は、取得した情報を互いに紐付けてデータテーブル50に格納する。そして、処理は、ステップSP16の処理に移行する。
【0036】
(ステップSP16)
取得部32は、ステップSP14の処理において格納したデータテーブル50を参照し、各エンコーダ値に紐付けられた高さ位置と基準位置Zとの差分をそれぞれ算出することにより、高さ方向Zでの位置ずれ量を算出する。そして、処理は、ステップSP18の処理に移行する。
【0037】
(ステップSP18)
補正部34は、ステップSP16の処理で算出した位置ずれ量に基づき、当該位置ずれ量に紐付けられたエンコーダ値が示す回転角での測定位置を補正する。続いて、補正部34は、各測定位置を当該補正した位置とする位置補正プログラムを作成する。そして、処理は、ステップSP20の処理に移行する。
【0038】
(ステップSP20)
制御部36は、測定装置10によるX線測定を開始させる。これにより、測定装置10がコイルばね20にX線照射を開始する。当該X線照射は、コイルばね20の一端を測定装置10側に向けた位置を初期位置として位置調整した後、開始される。そして、処理は、ステップSP22の処理に移行する。
【0039】
(ステップSP22)
制御部36は、ステップSP10での回転と同様の設定でコイルばね20を回転させると共に回転軸方向Aに測定装置10を移動させながらX線を測定させる。このX線測定時において、制御部36は、ステップSP18で作成した位置補正プログラムに従ってロボット12を動作させる。そして、処理は、ステップSP24の処理に移行する。
【0040】
(ステップSP24)
制御部36は、回転軸方向Aの移動に伴い、測定装置10が所定位置に到達したか否かを判定する。具体的には、制御部36は、測定装置10が照射するX線の測定点が、コイルばね20の一端から他端に到達したか否かを判定する。当該判定が否定判定された場合には、ステップSP22の処理を続行する。当該判定が肯定判定された場合には、X線の測定を終了し、ステップSP26の処理に移行する。
【0041】
(ステップSP26)
応力算出部38は、ステップSP24の処理で測定した結果に基づき、コイルばね20の残留応力等を取得する。そして、図6に示す一連の処理を終了する。
【0042】
<効果>
上記実施形態に係るX線測定装置1は、測定対象物としてのコイルばね20に向けてX線を照射し、コイルばね20にて回折されたX線を測定する測定装置10を備えるX線測定装置1であって、コイルばね20の表面位置として高さ位置を検出する検出部30と、高さ位置と予め定められた基準位置との位置ずれ量を取得する取得部32と、位置ずれ量に基づき、測定装置10の測定位置を補正する補正部34と、コイルばね20を回転させると共に回転軸方向Aに測定装置10を移動させながら測定させ、移動の際、補正部34によって補正された補正結果に基づいて測定装置10を移動させる制御部36と、を備える。
この構成によれば、コイルばね20の弾性力や振動等により、コイルばね20の高さ位置が基準位置からずれた場合に、その位置ずれ量に基づき、位置ずれ量を無くす方向に測定装置10の測定位置を補正することができる。これにより、コイルばね20の高さ位置が基準位置からずれた場合であっても、コイルばね20と測定装置10との相対距離が変化しないように測定装置10を移動させることができる。したがって、当初の目標の位置関係からずれた測定となることを抑制することができる。
【0043】
また、上記実施形態に係るX線測定装置1では、検出部30は、コイルばね20を回転させながら、回転軸の周方向の複数の回転角における複数の高さ位置を検出し、取得部32は、検出部30により検出された複数の高さ位置について、回転角に紐付けられた複数の位置ずれ量を取得し、補正部34は、回転角に紐付けられた複数の位置ずれ量に基づき、当該回転角における測定位置を補正する。
この構成によれば、コイルばね20を回転させることにより、複数の回転角における複数の高さ位置を検出することができる。当該複数の高さ位置が基準位置からずれた場合であっても、その位置ずれ量に基づき、位置ずれ量を無くす方向に測定装置10の測定位置を補正することができる。
【0044】
また、上記実施形態に係るX線測定装置1では、取得部32は、高さ位置と基準位置との差分を算出することにより、高さ方向Zでの位置ずれ量を取得し、補正部34は、高さ方向Zでの位置ずれ量に基づき、測定位置を補正し、制御部36は、補正部34によって補正された測定位置となるように、測定装置10を移動制御する、
この構成によれば、高さ方向Zでの位置ずれがあった場合に、上記効果を好適に奏する。
【0045】
また、上記実施形態に係るX線測定装置1では、測定対象物は、弾性体である。
この構成によれば、弾性力や振動等の影響により、測定対象物の表面位置の位置ずれが生じ易いので、位置ずれ量に基づく測定位置の補正がより効果的となる。
【0046】
<第二実施形態>
次に、第二実施形態に係るX線測定装置について説明する。第二実施形態に係るX線測定装置は、第一実施形態に係るX線測定装置1と同様の各構成を備え、位置ずれ量を、高さ方向Zではなく回転軸方向Aでの位置ずれ量とする点で第一実施形態と異なる。以下、異なる点について説明する。
【0047】
第二実施形態において、検出部30は、形状センサ16により検出された表面位置として、回転軸方向Aの座標軸上の位置を取得する。また、検出部30は、取得した回転軸方向Aの座標軸上の位置とエンコーダ値とを互いに紐付けて、記憶部40が記憶するデータテーブルに格納する。
【0048】
取得部32は、記憶部40が記憶するデータテーブルを参照し、回転軸方向Aの座標軸上の位置と基準位置との差分を算出することにより、回転軸方向Aでの位置ずれ量を取得する。ここでの基準位置は、回転軸方向Aでの基準位置である。
【0049】
補正部34は、取得部32によって取得された回転軸方向Aでの位置ずれ量に基づき、測定装置10の測定速度を補正する。測定装置10の測定速度は、例えば、測定装置10の回転軸方向Aでの移動速度である。
【0050】
制御部36は、X線測定時に回転軸方向Aに沿って測定装置10を移動させる際、測定装置10の測定速度が、補正部34により補正された測定速度となるように、ロボット12を制御する。
【0051】
<効果>
以上、第二実施形態に係るX線測定装置では、取得部32は、回転軸方向Aでの表面位置と基準位置との差分を算出することにより、回転軸方向Aでの位置ずれ量を取得し、補正部34は、回転軸方向Aでの位置ずれ量に基づき、測定速度を補正し、制御部36は、補正部34によって補正された測定速度となるように、測定装置10を移動制御する。
この構成によれば、例えばコイルばね20の巻きの強さにばらつきがある場合等、回転軸方向Aでの検出点42の位置ずれがあった場合に、その位置ずれ量に基づき、位置ずれ量を無くすように、測定装置10の測定速度を補正することができる。これにより、実際のコイルばね20の回転軸方向Aでの表面位置に対応した位置関係での測定が可能となる。したがって、第二実施形態においても、第一実施形態と同様の効果を奏する。
【0052】
<変形例>
本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。すなわち、上記の実施形態に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。また、上記の実施形態及び後述する変形例が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【0053】
例えば、コイルばね20の表面位置の検出、測定装置10の測定位置や測定速度の補正、X線測定の処理を同じタイミングで行ってもよい。また、測定対象物は例えば筒状の物体でもよく、非弾性体でもよい。また、測定対象物を回転させずに表面位置を検出してもよい。また、複数の位置ずれ量でなく、一つの位置ずれ量に基づき、測定装置10の測定位置を補正してもよい。
【0054】
また、コンピュータ18は、記憶部40や応力算出部38を備えていなくてもよい。例えば、記憶部40が記憶する各情報を外部の記憶手段に記憶させたり、外部の情報処理装置等に測定結果を出力し、当該情報処理装置等において測定対象物の残留応力値を算出してもよい。
【0055】
また、本発明は、コンピュータ18やサーバ等の情報処理装置を、検出手段としての検出部30、取得手段としての取得部32、補正手段としての補正部34、及び制御手段としての制御部36等として機能させるためのプログラムであってもよい。当該プログラムにおいても、上記実施形態と同様の効果を奏する。また、当該プログラムは、コンピュータ18の内部に配置された記憶手段に記憶されてもよく、ネットワークで測定装置10及びロボット12に接続された記憶手段に記憶されてもよい。また、当該プログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供してもよく、インターネット等のネットワーク経由でインストールする形式で提供してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1:X線測定装置、10:測定装置(測定部)、20:コイルばね(測定対象物)、30:検出部、32:取得部、34:補正部、36:制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6