(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102168
(43)【公開日】2023-07-24
(54)【発明の名称】溶銑容器用不焼成れんがの製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 35/043 20060101AFI20230714BHJP
C04B 35/101 20060101ALI20230714BHJP
B22D 41/02 20060101ALI20230714BHJP
F27D 1/00 20060101ALI20230714BHJP
【FI】
C04B35/043
C04B35/101
B22D41/02 A
F27D1/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022002581
(22)【出願日】2022-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】000170716
【氏名又は名称】黒崎播磨株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】弁理士法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高原 信作
(72)【発明者】
【氏名】高柳 有策
【テーマコード(参考)】
4K051
【Fターム(参考)】
4K051AA06
4K051AB03
4K051AB05
4K051BE03
(57)【要約】
【課題】溶銑予備処理条件が過酷な操業で使用されても耐食性及び容積安定性(残存膨張性)に優れる溶銑容器用不焼成れんがの製造方法を提供する。
【解決手段】耐火原料配合物に有機バインダーを添加して混練し成形後、800℃以下で熱処理する溶銑容器用不焼成れんがの製造方法である。耐火原料配合物は、マグネシアを30~87質量%、粒度1mm以上5mm未満のろう石、珪石、及び溶融シリカのうち1種以上を合計で5~30質量%、黒鉛を5~18質量%、アルミニウム及び/又はアルミニウム合金を合計で0.1~5質量%含有すると共に、粒度1mm未満のろう石、珪石、及び溶融シリカのうち1種以上の含有率が合計で5質量%以下(0を含む)、炭化珪素の含有率が20質量%以下(0を含む)である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐火原料配合物に有機バインダーを添加して混練し成形後、800℃以下で熱処理する溶銑容器用不焼成れんがの製造方法であって、
耐火原料配合物は、マグネシアを30~87質量%、粒度1mm以上5mm未満のろう石、珪石、及び溶融シリカのうち1種以上を合計で5~30質量%、黒鉛を5~18質量%、アルミニウム及び/又はアルミニウム合金を合計で0.1~5質量%含有すると共に、粒度1mm未満のろう石、珪石、及び溶融シリカのうち1種以上の含有率が合計で5質量%以下(0を含む)、炭化珪素の含有率が20質量%以下(0を含む)である、溶銑容器用不焼成れんがの製造方法。
【請求項2】
耐火原料配合物は、アルミナを45質量%以下(0を含まない)の範囲で含有する、請求項1に記載の溶銑容器用不焼成れんがの製造方法。
【請求項3】
耐火原料配合物中のマグネシアの含有率が50~80質量%である、請求項1又は請求項2に記載の溶銑容器用不焼成れんがの製造方法。
【請求項4】
耐火原料配合物中の粒度1mm以上5mm未満のろう石、珪石、及び溶融シリカのうち1種以上の含有率が合計で10~20質量%である、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の溶銑容器用不焼成れんがの製造方法。
【請求項5】
耐火原料配合物中のマグネシアが天然マグネシアである、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の溶銑容器用不焼成れんがの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混銑車や溶銑鍋等の溶銑を運搬又は貯蔵する溶銑容器、特に溶銑鍋の内張材として好適な溶銑容器用不焼成れんがの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、溶銑予備処理操業は定常化され、高炉樋、混銑車、溶銑鍋、あるいは溶銑予備処理専用炉等において、脱珪、脱燐、脱硫等が分担されて行われ、しかも処理条件が耐火物にとって過酷になってきている。例えば近年の溶銑予備処理には、ミルスケール、石灰、ソーダ灰等の溶銑予備処理材が大量使用されることがあるため、処理後はスラグの塩基度(CaO/SiO2)が、従来の1.1~1.2程度から1.1~4の広範囲になっている。
【0003】
通常、溶銑鍋の内張材としては、加熱冷却に伴う熱衝撃に対応する容積安定性が特に重要であることから、従前より例えば特許文献1に開示されているように、アルミナ・炭化珪素・炭素系の不焼成れんがを基本に、冷却時の目地開きを回避するために残存膨張性を付与する目的で珪石等の残存膨張性原料が添加された不焼成れんがが使用されている。冷却時に目地開きが生じると稼働時に溶銑浸入を生じやすいからである。ところが、溶銑予備処理材を大量投入したり処理温度が高い場合等の過酷な操業の比率が高い場合には、従来のアルミナを主体としたアルミナ・炭化珪素・炭素系の不焼成れんがでは耐用性の低下が問題となってきている。
【0004】
また、一部の溶銑鍋での溶銑予備処理の過酷な操業では、溶鋼鍋で使用されているマグネシアカーボンれんがを部分的に使用して耐用性を確保しているが、溶鋼鍋と同様に稼働前の加熱(予熱)でれんがを膨張させ目地を閉じて目地への溶銑浸入を防いでおり、溶銑鍋の操業としては設備的に特別な操業となり大幅なコストアップの問題がある。
【0005】
一方、特許文献2には、アルミナ質材料30~90%、炭素質材料3~30%、粒径1mm以下のAl2O3-MgO系スピネル質材料5~50%、ガラス質材料を外掛けで0.1~5%含む配合物に炭素系結合剤を添加して混練、成形、乾燥する炭素含有耐火物の製造方法が開示されている。しかし、この製造方法で得られる耐火物は、特にスラグに対する耐食性が依然として不十分であることと、加熱冷却に伴う熱衝撃に対応する容積安定性が不十分で目地溶損が先行する問題がある。
【0006】
また、特許文献3には、アルミナ、マグネシア、ろう石、カーボンを主原料とし、製品の化学成分がAl2O3:50~85wt%、MgO:20wt%以下、SiO2:3~25wt%、C:3~20wt%、その他の成分が10wt%以下である炭素含有不焼成耐火れんが開示されている。しかし、この特許文献3のれんがでも依然として耐食性が不十分であり、溶銑鍋では十分な耐用性改善効果が得られない問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2021-4160号公報
【特許文献2】特開平9-25160号公報
【特許文献3】特開平6-293560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、溶銑予備処理条件が過酷な操業で使用されても耐食性及び容積安定性(残存膨張性)に優れる溶銑容器用不焼成れんがの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、マグネシアを30~87質量%と、粒度1mm以上5mm未満のろう石、珪石、及び溶融シリカのうち1種以上を合計で5~30質量%とを組み合わせ、しかも黒鉛を含有する耐火原料配合物を使用することで、従来のアルミナ・炭化珪素・炭素系の不焼成れんがと比較して耐食性が大幅に向上し、しかも残存膨張性に優れる溶銑容器用不焼成れんがが得られることを知見した。
【0010】
すなわち、本発明の一観点によれば、次の溶銑容器用不焼成れんがの製造方法が提供される。
耐火原料配合物に有機バインダーを添加して混練し成形後、800℃以下で熱処理する溶銑容器用不焼成れんがの製造方法であって、
耐火原料配合物は、マグネシアを30~87質量%、粒度1mm以上5mm未満のろう石、珪石、及び溶融シリカのうち1種以上を合計で5~30質量%、黒鉛を5~18質量%、アルミニウム及び/又はアルミニウム合金を合計で0.1~5質量%含有すると共に、粒度1mm未満のろう石、珪石、及び溶融シリカのうち1種以上の含有率が合計で5質量%以下(0を含む)、炭化珪素の含有率が20質量%以下(0を含む)である、溶銑容器用不焼成れんがの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、溶銑予備処理条件が過酷な操業で使用されても耐食性及び容積安定性(残存膨張性)に優れる溶銑容器用不焼成れんがの製造方法を提供することができる。これにより、溶銑容器(溶銑予備処理容器)の耐用性を向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明において、マグネシアは塩基度の高いスラグに対してアルミナやスピネルよりも耐食性に優れている点から30~87質量%使用する。耐火原料配合物中のマグネシアの含有率が30質量%未満では十分な耐食性が得られず、87質量%を超えると耐熱衝撃性が低下したり十分な残存膨張性が確保できなくなる。耐食性及び耐熱衝撃性の高レベルでの両立を図るには、耐火原料配合物中のマグネシアの含有率を50~80質量%とすることができる。
【0013】
マグネシアとしては耐火物の原料として使用されているものを使用することができ、電融マグネシア、焼結マグネシアあるいは天然のマグネサイトを熱処理した天然マグネシア等を使用することができる。特に溶銑鍋は、溶銑の温度がほとんどの場合1400℃前後と溶鋼鍋の1600℃前後と比較すると低いため、天然マグネシアでも従来のアルミナ・炭化珪素・炭素系の不焼成れんが以上の耐用性を示すことができる。このため、コスト面を優先する場合には天然マグネシアを使用することができる。ここで天然マグネシアとは、地中から採掘されたマグネサイトを熱処理して得られるマグネシアのことであり、焼結マグネシアや天然マグネシアクリンカーと称されることもある。
【0014】
本発明において、ろう石、珪石、及び溶融シリカのうち1種以上は、耐熱衝撃性と残存膨張性を付与することを目的に使用する。ろう石、珪石、及び溶融シリカは800℃~1300℃の範囲ではマグネシアよりも熱膨張率が小さいため、使用中に膨張差によって粗粒の周囲に空隙が生じる。この空隙のため熱応力を緩和することができ、耐熱衝撃性向上に寄与する効果が得られる。このため本発明では、アルミナやスピネルと比較して熱膨張率の大きいマグネシアを主原料として使用していても、従来のアルミナ・炭化珪素・炭素系の不焼成れんがと同等の耐熱衝撃性を得ることができる。
【0015】
また、珪石(石英)は加熱されることでα石英からβ石英への相転移を経て、高温でのクリストバライトへの変態やブローチングによる高熱膨張と高残存膨張性により、れんがの目地開き防止効果が期待できる。
さらに、ろう石は石英とパイロフィライトの集合体で、石英が半分から多いもので70質量%程度あり、パイロフィライトも1200℃以上でムライトとクリストバライトに変化して体積膨張し残存膨張性に寄与する。
また、溶融シリカは加熱されると、1200℃以上でクリストバライト化して膨張し残存膨張性に寄与する。
【0016】
本発明では耐火原料配合物中に、ろう石、珪石、及び溶融シリカのうち1種以上を合計で5~30質量%含有する。その含有率が5質量%未満では得られたれんがの残存膨張が小さく使用時の目地開き防止効果が小さくしかも耐熱衝撃性も不十分となり、30質量%を超えると耐食性が低下する。残存膨張性及び耐食性をさらに向上させたい場合には、その含有率を10質量%以上20質量%以下とすることもできる。
【0017】
本発明において、ろう石、珪石、及び溶融シリカとしては、基本的に粒度1mm以上のものを使用する。その理由は、マグネシア及び黒鉛を主体とするれんが中において、ろう石、珪石、又は溶融シリカを含有するとSiO2量が増加するため耐食性が低下する問題があるところ、ろう石、珪石、及び溶融シリカの粒度が大きいほど耐食性の低下を抑制することができるためである。
【0018】
さらに、本発明の溶銑容器用不焼成れんがは主としてマトリックス部に黒鉛を含有しており、粒度1mm未満の微粒のろう石、珪石、又は溶融シリカの膨張はこのマトリックス部に一部が吸収されるため、れんが全体としては十分な残存膨張効果が得られないことになる。これに対して、粒度1mm以上の粗粒は、その粗粒及びマグネシアの粗粒と接する部分が多いこと、さらには粗粒どうしの距離が近いことからろう石、珪石、又は溶融シリカの膨張は黒鉛の多いマトリックス部にほとんど吸収されることなく、れんが全体を膨張させることができる。
【0019】
以上より、本発明では耐火原料配合物中に、粒度1mm以上5mm未満のろう石、珪石、及び溶融シリカのうち1種以上を合計で5~30質量%又は10質量%以上20質量%以下含有することとした。なお、粒度1mm未満のろう石、珪石、及び溶融シリカのうち1種以上の含有率は合計で5質量%以下であれば悪影響を少なくすることができるが、5質量%を超えると耐食性の低下が顕著となる。そのため、本発明では粒度1mm未満のろう石、珪石、及び溶融シリカのうち1種以上の含有率は5質量%以下(0を含む)とする。粒度1mm未満のろう石、珪石、及び溶融シリカのうち1種以上の含有率は2質量%以下(0を含む)であることが好ましい。
【0020】
アルミナは骨材の一部としてマグネシアと併用でき、マグネシアよりも熱膨張率が小さいため耐熱衝撃性向上の効果があること、及びマグネシアやシリカとの反応でスピネルやムライト生成による膨張効果があることから、45質量%以下で含有することができる。
【0021】
黒鉛は、耐熱衝撃性を確保するために使用し、具体的には耐火原料配合物100質量%中に占める割合で5~18質量%の含有率で使用する。その含有率が5質量%未満では耐熱衝撃性が不十分となり、18質量%を超えると稼働中の強度発現が抑制され、内部亀裂の発生や耐摩耗性の低下を生じ、耐食性も低下する。黒鉛としては、鱗状黒鉛等、耐火物の原料として通常使用されているものを使用することができ、粒度0.5mm未満のものを好適に使用することができる。
【0022】
アルミニウム及び/又はアルミニウム合金は酸化防止及び強度付与のために耐火原料配合物100質量%中に占める割合で、合量として0.1~5質量%の含有率で使用する。その含有率が0.1質量%未満では耐酸化性及び強度不足のため十分な耐食性が得られず、5質量%を超えると過度の焼結効果により耐熱衝撃性の低下を生じ、亀裂・剥離の懸念が増大する。
【0023】
本発明の耐火原料配合物には、アルミニウム及び/又はアルミニウム合金を使用しているため酸化防止効果を有しているが、さらに酸化防止効果を高めたい場合、あるいは耐熱衝撃性を高めたい場合には、炭化珪素を耐火原料配合物100質量%中に占める割合で20質量%以下の含有率で使用することができる。その含有率が20質量%を超えると耐食性が低下する。炭化珪素の含有率は10質量%以下(0を含む)であることが好ましい。炭化珪素としては、SiC含有率が85質量%以上のもので、粒度0.3mm未満のものを好適に使用することができる。
【0024】
なお、本発明の耐火原料配合物には、上記以外で耐火物に汎用されている耐火原料として、アルミニウム又はアルミニウム合金以外の金属、炭化硼素、ガラス粉末、カーボンブラック及びピッチ粉末のうち1種又は2種以上を耐火原料配合物100質量%中に占める割合で、合量として5質量%以下の含有率で使用することができる。
【0025】
ここで、本発明でいう粒度とは、粒子を篩いで篩って分離したときの篩い目の大きさのことであり、例えば粒度1mm未満のろう石とは、篩い目が1mmの篩いを通過するろう石のことで、粒度1mm以上のろう石とは、篩い目が1mmの篩い目を通過しないろう石のことである。
【0026】
本発明の溶銑容器用不焼成れんがは、上述の耐火原料配合物にフェノール樹脂等の有機バインダーを添加して混練し、成形後に熱処理することで得られる。ここで、有機バインダーは成形後及び熱処理後の強度を得るため、さらには使用中の受熱によってカーボンボンドを形成するため等の公知の目的で使用し、一般的な不焼成れんがで使用されている公知な有機バインダーを混練時に製造条件に合わせて一般的な割合で添加することができる。具体的には耐火原料配合物100質量に対して外掛けで1~5質量%の範囲とすることができる。同様に熱処理温度も通常の有機バインダーを使用した不焼成れんがの公知の熱処理温度の範囲内であれば問題なく採用することができる。具体的には160℃以上800℃以下とすることができる。
【実施例0027】
表1に、耐火原料配合物中のそれぞれの原料の含有率(質量%)と評価結果を示している。それぞれの耐火原料配合物に、有機バインダーとしてフェノール樹脂を耐火原料配合物100質量%に対して外掛けで適量(2~4質量%)添加して、混練後にフリクションプレスで230×114×100mmのれんが形状に成形し、250℃で熱処理することで各実施例及び各比較例のれんがを得た。
なお、表1において、天然マグネシアは天然のマグネサイトを熱処理した焼結マグネシア(MgO含有率が95質量%)を、電融アルミナはAl2O3含有率が97質量%のものを使用し、珪石(石英)はSiO2含有率が97質量%のものを使用した。また、ろう石としては、石英含有率が50質量%でAl2O3含有率が17質量%の低アルカリろう石を使用し、溶融シリカとしてはSiO2含有率が99質量%のものを使用し、炭化珪素としてはSiC含有率が90質量%のものを使用した。さらに、鱗状黒鉛としては固定炭素が85質量%のものを使用した。
【0028】
得られた各実施例及び各比較例のれんがについて、残存膨張率を測定し、耐食性及び耐熱衝撃性を評価した。
残存膨張率は、直径50mm×高さ50mmの円柱試料を用い、0.2MPaの荷重下で1400℃×3時間保持の熱処理前後の試料の高さの変化から測定した。
耐食性は、上底45×下底105×高さ60×長さ120mmの台形れんが形状の試料を用い、回転スラグ浸食試験法により、1500℃×1時間浸食を5回繰り返し、試験前後の試料中心線厚さの差異(mm)から浸食量(mm)を求めた。浸食剤としては銑鉄とCaO/SiO2の比であるC/S=1.0のスラグの場合と、銑鉄とC/S=4.0のスラグの場合とで実施した。表1において耐食性は比較例1の浸食量(mm)を100として指数で表示した。この浸食指数が小さいほど耐食性に優れるということである。
耐熱衝撃性の評価においては、40×40×190mmの大きさの試料を、800℃×3時間還元焼成の後、1500℃の溶銑に180秒浸漬後、10分間空冷の熱衝撃を5回繰り返す試験を行い、亀裂・剥落の状態を観察した。表中で、「◎」は試験後に亀裂・剥落がなかったもの、「〇」は軽微な亀裂・剥落が発生したもの、「△」は中程度の亀裂・剥落が発生したもの、「×」は大きな亀裂・剥落が発生したものである。
なお、総合的な合否については、◎:非常に優れている、○:優れている、×:劣っている、の3段階で評価した。具体的には、表2に示す基準で判定した。
【0029】
【0030】
【0031】
実施例1から実施例6は耐火原料配合物中のマグネシアの含有率が異なる場合であるが、本発明の範囲内であり、残存膨張性、耐食性及び耐熱衝撃性に優れる結果となった。
これに対して比較例1はマグネシアの含有率が20質量%と本発明の下限値を下回っており耐食性が不十分となった。
比較例2はマグネシアの含有率が95質量%と本発明の上限値を上回っており、その分珪石及び黒鉛の含有率が低くなっているため、残存膨張性及び耐熱衝撃性が不十分となっている。
【0032】
実施例7から実施例10は珪石の含有率が異なる場合であるが、本発明の範囲内であり良好な結果となった。
これに対して比較例3は珪石の含有率が本発明の下限値を下回っており、残存膨張性が不十分となった。
比較例4は珪石の含有率が本発明の上限値を超えており、耐食性が不十分となった。
比較例5は粒度1mm未満の珪石のみを使用した例であるが、耐食性が不十分となった。
【0033】
実施例11は粒度1mm未満の珪石を5質量%含有しているが、本発明の範囲内であり良好な結果となった。
これに対して比較例6は粒度1mm未満の珪石を10質量%含有しているため、耐食性が不十分となった。
実施例12はろう石を、実施例13は珪石とろう石を、及び実施例14は溶融シリカをそれぞれ含有する場合であるが、本発明の範囲内であり良好な結果となっている。
【0034】
実施例15及び実施例16はアルミニウムの含有率が異なり、またピッチ及び炭化硼素を含有する場合であるが、本発明の範囲内であり良好な結果となっている。
比較例7はアルミニウムを含有しない場合であり、耐食性が低下した。
比較例8はアルミニウムの含有率が本発明の上限値を超えており、耐熱衝撃性が不十分となった。
【0035】
実施例17から実施例19は炭化珪素を含有する場合であるが、本発明の範囲内であり良好な結果となった。
これに対して比較例9は炭化珪素の含有率が本発明の上限値を超えており、耐食性が不十分となった。
また、比較例10は黒鉛の含有率が本発明の上限値を超えており、耐食性が不十分となった。
【0036】
実施例3と比較例1のれんがを溶銑鍋の側壁のスラグラインにライニングして使用したところ、実施例3のれんがをライニングした側壁は、比較例1のれんがをライニングした側壁に比べて、その寿命が約1.4倍になることを確認した。