(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102172
(43)【公開日】2023-07-24
(54)【発明の名称】通信コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/6473 20110101AFI20230714BHJP
【FI】
H01R13/6473
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022002588
(22)【出願日】2022-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】000227995
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクスジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094330
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 正紀
(72)【発明者】
【氏名】吉村 健太郎
【テーマコード(参考)】
5E021
【Fターム(参考)】
5E021FA03
5E021FA09
5E021FA14
5E021FC23
5E021FC40
5E021LA01
5E021LA10
5E021LA11
(57)【要約】
【課題】コンタクトの折り曲げ部分を覆う部材を備えた、通信性能を維持しつつ小型化に適した構造の通信コネクタを提供する。
【解決手段】通信コネクタは、コンタクト51と樹脂体52が一体成型されたコンタクト成型体50を備えている。コンタクト成型体50を構成する樹脂体52は、第1樹脂部52aと第2樹脂部52bとに分かれていて、その途中には、コンタクトが剥き出しのままになっている第2コンタクト部51bが存在する。このコンタクト成型体50は一体成型の後で、第2コンタクト部51bで折り曲げられる。カバー部材60は、この剥き出しになっている第2コンタクト部51bの凸に湾曲した領域を覆い、インピーダンスを整合する役割を担っている。このカバー部材60は、第2樹脂部52bに係止されるとともに第1樹脂部52aの後端部に形成された段部54の上に載る庇部63を備えている。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に延びる第1コンタクト部と、該第1コンタクト部の後端部から延長して下方に向って湾曲した第2コンタクト部と、該第2コンタクト部の下端部から延長して下方に延びる第3コンタクト部とを有するコンタクト、前記コンタクトの前記第1コンタクト部を取り巻き該第1コンタクト部に貼りついて該第1コンタクト部を支持する第1樹脂部、および前記コンタクトの前記第3コンタクト部を取り巻き該第3コンタクト部に貼りついて該第3コンタクト部を支持する第2樹脂部を備えたコンタクト成型体と、
前記第2樹脂部に係止されるとともに前記第1樹脂部の後端部の上に載り、前記第2コンタクト部の凸に湾曲した領域を覆う、樹脂製のカバー部材とを備えたことを特徴とする通信コネクタ。
【請求項2】
前記第1樹脂部が、該第1樹脂部の後端部に高さを減じた段部を有し、前記カバー部材が該段部の上に載る庇部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の通信コネクタ。
【請求項3】
前記カバー部材が、前記第2コンタクト部の側面を覆う第1覆い部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の通信コネクタ。
【請求項4】
前記第2樹脂部が、前記第1樹脂部の後端部と前記カバー部材の前記第1覆い部を横から覆う第2覆い部を有することを特徴とする請求項1から3のうちのいずれか1項に記載の通信コネクタ。
【請求項5】
前記コンタクト成型体が、互いに離間して互いに平行に延びるように配置された2本の前記コンタクトを備え、
前記第1樹脂部が、2本の前記コンタクトどうしの間に、各々のコンタクトとの間に樹脂部分を残して後端に開いた窪み部を有し、
前記カバー部材が、前方に突き出て前記窪み部に入り込む凸部を有することを特徴とする請求項1から4のうちのいずれか1項に記載の通信コネクタ。
【請求項6】
前記コンタクト成型体と前記カバー部材とに加え、さらに、
前記第1コンタクト部および前記第1樹脂部を取り巻き前後方向に延びて前方に開口した導電性の筒状部材と、
前記コンタクト成型体、前記カバー部材、および前記筒状部材を収容し、前方に相手コネクタの挿し込みを受ける嵌合開口が形成された樹脂ハウジングとを有することを特徴とする請求項1から5のうちのいずれか1項に記載の通信コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信信号を中継する通信コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
コネクタの構造によっては、そのコネクタに、途中で直角に折れ曲がった形状のコンタクトであってそのコンタクトがインサートモールドによって樹脂体で保護されたコンタクト成型体モールドが内蔵される。この場合に、コンタクトを最終形態に折り曲げてからインサートモールドすると、直角に曲がった形状を有することから、搬送時の荷姿(フープ)が大きくなり(かさ高となり)、搬送時に折れ等の破損の危険性が増す。
【0003】
これを解決するために、折り曲げる前の直線状あるいは平板状のコンタクトを使い、そのコンタクトの、最終的に水平に延びる部分と垂直に延びる部分とを互いに分離された樹脂でインサート成形して折り曲げる部分を樹脂からは剥き出しのままの成型体とし、搬送後にそのコンタクトを折り曲げることで、目的の形状のコンタクト成型体とすることが行われる。
【0004】
この場合、コンタクトの折り曲げた部分は樹脂には覆われておらず、剥き出しのままとなっている。すなわち、その部分は直接に空気にさらされることにより周囲の誘電比率が低くなってインピーダンスの不整合が生じ、良好な通信特性の維持が困難となるおそれがある。
【0005】
特許文献1には、コンタクトの折り曲げ部分を誘電体等で覆うことが開示されている。そして、特許文献1には、この部分を誘電体等で覆うとインピーダンスを制御するのに役立つことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上掲の特許文献1の構造の場合、コンタクトの折り曲げ部分の長さが長く、この部分を覆う誘電体等は、コンタクトの、水平に延びる部分を覆う樹脂と垂直に延びる部分を覆う樹脂との双方に係止されていて、小型化には適さない構造となっている。
【0008】
近年、通信コネクタによって中継される信号が益々高周波化されてきており、それに伴って、許容されるコンタクトの長さも益々短くなり、樹脂部分を含めたコンタクト成型体も益々小型化されてきている。このためコンタクトの折り曲げ部分を覆う部材も必然的に益々小型化される必要がある。ただし、如何に小型化されても、この部材は、折り曲げ部分のインピーダンスを有効に制御する構造であって、かつ、容易に確実に装着することが可能な構造である必要がある。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑み、コンタクトの折り曲げ部分を覆う部材を備えた、通信性能を維持しつつ小型化に適した構造の通信コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する本発明の通信コネクタは、
前後方向に延びる第1コンタクト部と、第1コンタクト部の後端部から延長して下方に向って湾曲した第2コンタクト部と、第2コンタクト部の下端部から延長して下方に延びる第3コンタクト部とを有するコンタクト、そのコンタクトの第1コンタクト部を取り巻き第1コンタクト部に貼りついて第1コンタクト部を支持する第1樹脂部、および、そのコンタクトの第3コンタクト部を取り巻き第3コンタクト部に貼りついて第3コンタクト部を支持する第2樹脂部を備えたコンタクト成型体と、
上記第2樹脂部に係止されるとともに第1樹脂部の後端部の上に載り、第2コンタクト部の凸に湾曲した領域を覆う、樹脂製のカバー部材とを備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明の通信コネクタは、上記のカバー部材が、第2樹脂部に係止されて第1樹脂部の後端部の上に載る構造を有し、通信性能を維持しつつ小型化に適した構造となっている。
【0012】
ここで、本発明の通信コネクタにおいて、上記第1樹脂部が、その第1樹脂部の後端部に高さを減じた段部を有し、カバー部材がその段部の上に載る庇部を備えることが好ましい。
【0013】
第1樹脂部に段部を形成しカバー部材に庇部を形成して段部に庇部を載せる構造とすることで、コンタクト成型体とカバー部材とからなる構造体の高さを抑えることができる。
【0014】
また、本発明の通信コネクタにおいて、カバー部材が、第2コンタクト部の側面を覆う第1覆い部を有することが好ましい。
【0015】
カバー部材が、第1覆い部を有すると第2コンタクト部の側面が覆われ、カバー部材が第2コンタクト部の凸に湾曲した領域のみを覆う構造を有する場合と比べ、第2コンタクト部のインピーダンスをより高精度に整合させることができる。
【0016】
また、カバー部材が第1覆い部を有する場合に、さらに、上記第2樹脂部が、第1樹脂部の後端部とカバー部材の第1覆い部を横から覆う第2覆い部を有することがさらに好ましい。
【0017】
第2樹脂部が上記の第2覆い部を有する構造の場合、第1樹脂部の後端部とカバー部材の第1覆い部との接触部分が塞がれることになり、より高精度なインピーダンス整合に寄与する。
【0018】
また、本発明の通信コネクタにおいて、
上記コンタクト成型体が、互いに離間して互いに平行に延びるように配置された2本のコンタクトを備え、
上記第1樹脂部が、2本のコンタクトどうしの間に、各々のコンタクトとの間に樹脂部分を残して後端に開いた窪み部を有し、
上記カバー部材が、前方に突き出て上記窪み部に入り込む凸部を有することが好ましい。
【0019】
互いに平行に延びる2本のコンタクトが備えられている場合に、上記の窪み部と凸部を形成しておいて窪み部に凸部を挿し込む構造とすることにより、2本のコンタクトどうしを直線的に結ぶ空気の経路が塞がれ、より高精度なインピーダンス整合に寄与することができる。
【0020】
ここで、本発明の通信コネクタは、 前記コンタクト成型体と前記カバー部材とに加え、さらに、
上記第1コンタクト部および上記第1樹脂部を取り巻き前後方向に延びて前方に開口した導電性の筒状部材と、
上記コンタクト成型体、上記カバー部材、および上記筒状部材を収容し、前方に相手コネクタの挿し込みを受ける嵌合開口が形成された樹脂ハウジングとを有する構造を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0021】
以上の本発明によれば、通信性能を維持しつつ小型化に適した構造の通信コネクタが実現する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態としての通信コネクタの斜視図である。
【
図2】
図1に示した通信コネクタの分解斜視図である。
【
図3】
図1に示した通信コネクタの、嵌合開口側から眺めた正面図(A)と、
図3(A)に示した矢印A-Aに沿う断面図(B)である。
【
図4】一体成型直後の形態のコンタクト成型体を示した斜視図である。
【
図5】一体成型直後の形態のコンタクト成型体の平面図(A)と、
図5(A)に示した矢印B-Bに沿う断面図(B)である。
【
図6】コンタクトを折り曲げた後のコンタクト成型体の平面図(A)と側面図(B)である。
【
図7】コンタクト成型体とカバー部材の分解斜視図(A)と、コンタクト成型体にカバー部材を装着した状態の斜視図(B)である。
【
図9】カバー部材が装着された状態のコンタクト成型体の側面図である。
【
図10】
図9に示した矢印C-Cに沿う断面図(A)と、
図10(A)に示した円R1の部分の拡大図(B)である。
【
図11】カバー部材が装着された状態のコンタクト成型体の平面図である。
【
図12】
図11に示した矢印D-Dに沿う断面図(A)と、
図12(A)に示した円R2の部分の拡大図(B)である。
【
図13】
図11に示した矢印E-Eに沿う断面図(A)と、
図13(A)に示した円R3の部分の拡大図(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態としての通信コネクタの斜視図である。ここで、
図1(A),(B)は、互いに異なる向きから眺めた斜視図である。
【0025】
また、
図2は、
図1に示した通信コネクタの分解斜視図である。
【0026】
さらに、
図3は、
図1に示した通信コネクタの、嵌合開口側から眺めた正面図(A)と、
図3(A)に示した矢印A-Aに沿う断面図(B)である。
【0027】
図2に示すように、この通信コネクタ10は、絶縁性の樹脂ハウジング20、導電性の接地片30、導電性の筒状部材40、コンタクト成型体50、および、樹脂製のカバー部材60から構成されている。
【0028】
樹脂ハウジング20には、その前方に嵌合開口21が形成されている。この嵌合開口21には、不図示の相手コネクタが挿し込まれる。また、この樹脂ハウジング20には、その上面に、嵌合開口21につながるロック孔22が形成されている。嵌合開口21に相手コネクタが挿し込まれると、その相手コネクタのロック部がこのロック孔22に入り込み、相手コネクタの不用意な抜けが防止される。
【0029】
また、接地片30には、この通信コネクタ10が取り付けられる装置の筐体(不図示)に接して、この通信コネクタ10のグランド電位を装置筐体のグランド電位と同一の電位に保つ役割を担っている。
【0030】
また、筒状部材40には、コンタクト成型体50の、後述する第1コンタクト部51aおよび第1樹脂部52aが挿し込まれる。筒状部材40は、そのコンタクト成型体50の挿し込まれた部分をシールドする役割を担っている。
【0031】
また、コンタクト成型体50は、導電性のコンタクト51と、そのコンタクト51に一体成型された樹脂体52とからなる部品である。コンタクト51は、嵌合開口21から挿し込まれた相手コネクタのコンタクトと接触して信号を中継する役割を有する。この実施形態では、コンタクト51は、互いに離間して互いに平行に延びるように2本配置されていて、それら2本のコンタクト51で差動信号の伝送が中継される。このコンタクト51は、
図3(B)、あるいは後述する
図10(A)に示されている通り、途中で湾曲していて、前後方向に延びる部分と、上下方向に延びる部分とを有する。ここでは、コンタクト51の前後方向に延びる部分を第1コンタクト部51aと称し、その第1コンタクト部51aの後端部から延長して下方に向って湾曲した部分を第2コンタクト部51bと称し、さらに、その第2コンタクト部51bの下端部から延長して下方に延びる部分を第3コンタクト部51cと称する。また、そのコンタクト51に一体成型された樹脂体52は、第1樹脂部52aと第2樹脂部52bとに分かれている。第1樹脂部52aは、コンタクト51の、前後方向に延びる第1コンタクト部51aを取り巻きその第1コンタクト部51aに貼りついてその第1コンタクト部51aを支持している。また、第2樹脂部52bは、コンタクト51の、上下方向に延びる第3コンタクト部51cを取り巻きその第3コンタクト部51cに貼りついてその第3コンタクト部51cを支持している。このように、コンタクト51の第1コンタクト部51aおよび第3コンタクト部51cは、それぞれ第1樹脂部52aおよび第2樹脂部52bで支持されているが、湾曲した形状の第2コンタクト部51bは第1樹脂部52aおよび第2樹脂部52bのいずれにも覆われず、第2コンタクト部51bが剥き出しとなっている。
【0032】
カバー部材60は、コンタクト51の、剥き出しとなっている第2コンタクト部51bを凸に湾曲した側から覆って、インピーダンスの整合を担う部品である。
【0033】
ここで、コンタクト成型体50の製造方法について説明する。
【0034】
図4は、一体成型直後の形態のコンタクト成型体を示した斜視図である。
【0035】
また、
図5は、一体成型直後の形態のコンタクト成型体の平面図(A)と、
図5(A)に示した矢印B-Bに沿う断面図(B)である。
【0036】
なお、これら
図4、
図5に示すコンタクト成型体50は、
図3(B)等に示した最終形態とは異なっており、また、ここではまだ、キャリア70につながっている。ただし、ここでは、最終形態前であっても、最終形態と同じく、コンタクト成型体50と称する。コンタクト成型体50の各部の名称についても同様である。
【0037】
これら
図4、
図5に示すように、コンタクト51は、第2コンタクト部51bを折り曲げる前の段階で樹脂と一体成型される。こうすることで、このコンタクト成型体50を運搬する際の荷姿(フープ)が低背化され、搬送時の折れ等の破損の懸念が低減化する。
【0038】
図6は、コンタクトを折り曲げた後のコンタクト成型体の平面図(A)と側面図(B)である。
【0039】
このコンタクト成型体50は、
図5(B)に示すように、第2コンタクト部51bが剥き出しとなっていて、その第2コンタクト部51bで折り曲げることが可能となっている。そこで、第2コンタクト部51bは、通信コネクタ10の組立時に折り曲げられる。
【0040】
図7は、コンタクト成型体とカバー部材の分解斜視図(A)と、コンタクト成型体にカバー部材を装着した状態の斜視図(B)である。
【0041】
また、
図8は、カバー部材の斜視図である。ここで、
図8(A),(B)は、カバー部材を互いに異なる向きから眺めた斜視図である。
【0042】
コンタクト51の第2コンタクト部51bは、コンタクト成型体50のみの単体では樹脂には覆われずに剥き出しの状態となっている。そこで、
図8に示す形状のカバー部材60が用意され、剥き出しの第2コンタクト部51bにあてがわれる。
【0043】
図9は、カバー部材が装着された状態のコンタクト成型体の側面図である。
【0044】
また、
図10は、
図9に示した矢印C-Cに沿う断面図(A)と、
図10(A)に示した円R1の部分の拡大図(B)である。
【0045】
さらに、
図11は、カバー部材が装着された状態のコンタクト成型体の平面図である。
【0046】
また、
図12は、
図11に示した矢印D-Dに沿う断面図(A)と、
図12(A)に示した円R2の部分の拡大図(B)である。
【0047】
さらに、
図13は、
図11に示した矢印E-Eに沿う断面図(A)と、
図13(A)に示した円R3の部分の拡大図(B)である。
【0048】
【0049】
カバー部材60には、
図8に示すように、2つの窪み部61が形成されている。これら2つの窪み部61には、
図10に示すように、2本のコンタクト51の第2コンタクト部51bが1本ずつ収容される。
【0050】
また、このカバー部材60には、その両側面に、このカバー部材60をコンタクト成型体50に固定するためのロック突起62が形成されている。これらのロック突起62は、コンタクト成型体50の第2樹脂部52bに設けられたロック穴53(
図12、
図13参照)に入り込み、これによりカバー部材60がコンタクト成型体50に固定される。カバー部材60がコンタクト成型体50に固定されると、カバー部材60、コンタクト51の、剥き出しとなっている第2コンタクト部51bを凸に湾曲した側から覆い、インピーダンスの整合を図っている。
【0051】
また、このカバー部材60には、庇のように前方に突き出た庇部63が形成されている。一方、コンタクト成型体50の第1樹脂部52aの後端部には、高さを減じた段部54(
図10参照)が形成されていて、カバー部材60の庇部63は、その段部54の上に載るように配置される。
【0052】
このように、このカバー部材60は、第1樹脂部52aと第2樹脂部52bとの双方に固定されるのではなく、第2樹脂部52bにのみ固定され、第1樹脂部52aには、その段部54にカバー部材60の庇部63が載る構造としている。この構造を採用したことにより、第1樹脂部52aと第2樹脂部52bとの双方に固定される構造のカバー部材を採用した場合よりも、小型のコンタクト成型体50および小型の通信コネクタ10に適した構造となっている。
【0053】
また、カバー部材60の庇部63が第1樹脂部52aの段部54の上に載る構造としていることから、カバー部材60と第1樹脂部52aとの間の隙間が直線的ではなく鉤型となり、直線的にすき間が開いてインピーダンスが部分的に大きく不整合となることが防止されている。
【0054】
さらに、このカバー部材は、2つの窪み部61の脇に第1覆い部64が設けられている。これらの第1覆い部64は、
図12に示すように、第2コンタクト部51bの側面を覆っている。
【0055】
カバー部材60が、第1覆い部64を有すると、すなわち、カバー部材60の第1覆い部64で第2コンタクト部51bの側面を覆うと、カバー部材60が第2コンタクト部51bの凸に湾曲した領域のみを覆う構造を有する場合と比べ、第2コンタクト部51bのインピーダンスをより高精度に整合させることができる。
【0056】
また、コンタクト成型体50を構成する第2樹脂部52bは、
図12に示すように、第2覆い部55を有する。この第2覆い部55は、第1樹脂部52aの後端部52bとカバー部材60の第1覆い部64を横から覆っている。
【0057】
第2樹脂部52bがこの第2覆い部55を有しているため、第1樹脂部52aの後端部52bとカバー部材60の第1覆い部64との接触部分が塞がれる。すなわち、コンタクト50の第2コンタクト部51bの側面についても、外部にまで直線的に開いた隙間の形成が防止されることになり、より高精度なインピーダンス整合に寄与している。
【0058】
また、本実施形態の通信コネクタ10の場合、コンタクト成型体50が、
図12に示すように、互いに離間して互いに平行に延びるように配置された2本のコンタクト51を備えている。
【0059】
また、
図12に示すように、そのコンタクト成型体50を構成している第1樹脂部52aが、2本のコンタクト51どうしの間に窪み部56が形成されている。この窪み部56は、各々のコンタクト51との間に樹脂部分を残して後方に開いている。そして、カバー部材60には、前方に突き出てその窪み部56に入り込む凸部65が形成されている。
【0060】
これにより、2本のコンタクト51どうしの間に直線的に開いた隙間の形成が防止され、この点も、より高精度なインピーダンス整合に寄与している。
【0061】
なお、ここでは、コンタクト51を2本備えて差動信号を中継する通信コネクタ10を例に挙げて説明したが、本発明の通信コネクタは、コンタクトの本数を問うものではなく、また、差動信号の中継を担う通信コネクタである必要もなく、コンタクトの数は1本であってもよく、あるいは3本以上備えられていてもよい。
【符号の説明】
【0062】
10 通信コネクタ
20 樹脂ハウジング
21 嵌合開口
22 ロック孔
30 接地片
40 筒状部材
50 コンタクト成型体
51 コンタクト
51a 第1コンタクト部
51b 第2コンタクト部
51c 第3コンタクト部
52 樹脂体
52a 第1樹脂部
52b 第2樹脂部
53 ロック穴
54 段部
55 第2覆い部
56 窪み部
60 カバー部材
61 窪み部
62 ロック突起
63 庇部
64 第1覆い部
65 凸部
70 キャリア