(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102173
(43)【公開日】2023-07-24
(54)【発明の名称】高炉樋補修における高炉樋プレキャストブロックのライニング方法、及び高炉樋ライニング構造
(51)【国際特許分類】
C21B 7/14 20060101AFI20230714BHJP
F27D 1/16 20060101ALI20230714BHJP
F27D 1/06 20060101ALI20230714BHJP
F27D 1/04 20060101ALI20230714BHJP
F27D 3/14 20060101ALI20230714BHJP
F27D 1/00 20060101ALI20230714BHJP
【FI】
C21B7/14 304
F27D1/16 F
F27D1/16 Q
F27D1/06
F27D1/04 Z
F27D3/14 A
F27D1/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022002589
(22)【出願日】2022-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100187702
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 律生
(74)【代理人】
【識別番号】100162204
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100202441
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 純
(72)【発明者】
【氏名】宮本 翔生
【テーマコード(参考)】
4K015
4K051
4K055
【Fターム(参考)】
4K015EC10
4K051AA01
4K051AB00
4K051BB00
4K051BB02
4K051EA03
4K051LC00
4K051LF01
4K051LF06
4K055AA01
4K055JA01
(57)【要約】
【課題】高炉樋補修において、ウェアライニングとしてのプレキャストブロックを短時間でライニング可能な新たな方法を開示する。
【解決手段】高炉樋補修における高炉樋プレキャストブロックのライニング方法であって、ウェアライニングの少なくとも一部を除去してパーマライニングを露出させること、前記パーマライニングと前記高炉樋プレキャストブロックとの間に隙間が生じるように、前記パーマライニングの露出面の上に、支持部を介して前記高炉樋プレキャストブロックを設置すること、及び、前記隙間の少なくとも一部に流し込み材を充填すること、を含む、ライニング方法。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉樋補修における高炉樋プレキャストブロックのライニング方法であって、
ウェアライニングの少なくとも一部を除去してパーマライニングを露出させること、
前記パーマライニングと前記高炉樋プレキャストブロックとの間に隙間が生じるように、前記パーマライニングの露出面の上に、支持部を介して前記高炉樋プレキャストブロックを設置すること、及び、
前記隙間の少なくとも一部に流し込み材を充填すること、
を含む、ライニング方法。
【請求項2】
前記支持部としてスパイクれんがが用いられ、
前記スパイクれんがが、前記パーマライニングの前記露出面の上に設置され、
前記高炉樋プレキャストブロックが、前記スパイクれんがの上に設置される、
請求項1に記載のライニング方法。
【請求項3】
少なくとも前記流し込み材を充填する際、ブロック固定化具によって前記高炉樋プレキャストブロックを固定すること、
を含む、請求項1又は2に記載のライニング方法。
【請求項4】
高炉樋ライニング構造であって、少なくとも、パーマライニング、支持部、高炉樋プレキャストブロック、及び、流し込み材を有し、
前記支持部が、前記パーマライニングの上に位置し、
前記高炉樋プレキャストブロックが、前記支持部の上に位置し、
前記流し込み材が、前記パーマライニングと前記高炉樋プレキャストブロックとの間の少なくとも一部に充填されている、
高炉樋ライニング構造。
【請求項5】
前記支持部が、スパイクれんがを含む、
請求項4に記載の高炉樋ライニング構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、高炉樋補修における高炉樋プレキャストブロックのライニング方法、及び高炉樋ライニング構造を開示する。
【背景技術】
【0002】
高炉樋のライニングとしてプレキャストブロックが採用されている。高炉樋プレキャストブロックに関する技術として、例えば、特許文献1には、高炉鋳床の施工前に、コンクリートブロック、耐火断熱材及び耐火材(ウェアライニング)を一体化しておくことで、高炉鋳床の施工工期を短縮する技術が開示されている。また、特許文献2には、高炉樋の側壁にプレキャストブロックを内張りすることで、樋の寿命を延長させる技術が開示されている。また、特許文献3及び4には、溶銑樋やノロ樋等の溝状の溶湯通路をプレキャストブロックで構成する技術が開示されており、例えば、プレキャストブロックを配置した際の目地を鈍角にすることによって目地の溶損を防止する技術等が開示されている。また、特許文献5には、高炉樋内にプレキャストブロックを設置する際、プレキャストブロックを吊り下げ、且つ、樋内面の部材とブロックとの間隙に流し込み材を充填することで、高炉樋の内張りを効率よく施工する技術が開示されている。さらに、特許文献6には、ウェア材とバック材とを有する高炉樋において、バック材として少なくとも3層構造のプレキャストブロックを採用することで、漏銑事故の主因である耐火物ライニング内に発生する亀裂が鉄皮まで達するのを防止する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-323865号公報
【特許文献2】特開昭59-185710号公報
【特許文献3】特許第6057653号公報
【特許文献4】特許第6057654号公報
【特許文献5】特開昭59-143006号公報
【特許文献6】特開2011-219806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プレキャストブロックは、通常の枠掛け流し込み型のライニングと比較して、耐損傷性等に優れる。例えば、高炉樋のウェアライニングとしてプレキャストブロックを採用することで、高炉樋の寿命が高まり易い。このような利点から、高炉樋補修において古いウェアライニングを新たなウェアライニングに置き換える際、新たなウェアライニングとしてプレキャストブロックが採用される場合がある。しかしながら、高炉樋補修においてプレキャストブロックをライニングする際には、通常の枠掛け流し込み施工と比較して、ブロック位置決め作業や設置面の平滑出しなどの手間が増え、施工時間が長時間となり易い。この点、高炉樋補修において、ウェアライニングとしてのプレキャストブロックを短時間でライニング可能な新たな方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願は上記課題を解決するための手段の一つとして、
高炉樋補修における高炉樋プレキャストブロックのライニング方法であって、
ウェアライニングの少なくとも一部を除去してパーマライニングを露出させること、
前記パーマライニングと前記高炉樋プレキャストブロックとの間に隙間が生じるように、前記パーマライニングの露出面の上に、支持部を介して前記高炉樋プレキャストブロックを設置すること、及び、
前記隙間の少なくとも一部に流し込み材を充填すること、
を含む、ライニング方法
を開示する。
【0006】
本開示のライニング方法においては、
前記支持部としてスパイクれんがが用いられてもよく、
前記スパイクれんがが、前記パーマライニングの前記露出面の上に設置されてもよく、
前記高炉樋プレキャストブロックが、前記スパイクれんがの上に設置されてもよい。
【0007】
本開示のライニング方法は、
少なくとも前記流し込み材を充填する際、ブロック固定化具によって前記高炉樋プレキャストブロックを固定すること、
を含んでいてもよい。
【0008】
本願は上記課題を解決するための手段の一つとして、
高炉樋ライニング構造であって、少なくとも、パーマライニング、支持部、高炉樋プレキャストブロック、及び、流し込み材を有し、
前記支持部が、前記パーマライニングの上に位置し、
前記高炉樋プレキャストブロックが、前記支持部の上に位置し、
前記流し込み材が、前記パーマライニングと前記高炉樋プレキャストブロックとの間の少なくとも一部に充填されている、
高炉樋ライニング構造
を開示する。
【0009】
本開示の高炉ライニング構造においては、前記支持部が、スパイクれんがを含むものであってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本開示のライニング方法によれば、高炉樋補修において、ウェアライニングとしてのプレキャストブロックを精度よく短時間でライニング可能である。また、本開示の高炉樋ライニング構造によれば、例えば、高炉樋の寿命を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示のライニング方法の流れの一例を示している。
【
図2】本開示のライニング方法の流れの一例を示している。
【
図3】プレキャストブロックの外観形状の一例を概略的に示している。
【
図4】比較例に係るライニング方法の流れを示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.高炉樋補修における高炉樋プレキャストブロックのライニング方法
図1及び2に示されるように、本開示のライニング方法は、高炉樋補修における高炉樋プレキャストブロックのライニング方法であって、ウェアライニング10の少なくとも一部を除去してパーマライニング20を露出させること(工程S1)、パーマライニング20と高炉樋プレキャストブロック40との間に隙間50が生じるように、パーマライニング20の露出面20aの上に、支持部30を介して高炉樋プレキャストブロック40を設置すること(工程S2)、及び、隙間50の少なくとも一部に流し込み材60を充填すること(工程S3)、を含む。
【0013】
1.1 工程S1
図2(A)及び(B)に示されるように、工程S1においては、ウェアライニング10の少なくとも一部を除去してパーマライニング20を露出させる。
【0014】
ウェアライニング10は、高炉樋のウェアライニングとして公知ものであってよい。ウェアライニング10は、例えば、プレキャストブロックにより構成されたものであってもよいし、枠掛け流し込み施工等によってパーマライニング20の上で成形されたものであってもよい。ウェアライニング10は、高炉樋の使用時、溶銑や溶滓といった溶融物と接触し、溶融物による浸食作用等によって徐々に損傷し得る。本開示のライニング方法は、損傷したウェアライニング10の少なくとも一部を除去して、プレキャストブロック40に置き換える技術といえる。除去対象であるウェアライニング10と、新たに設置されるプレキャストブロック40とは、互いに同じ材質からなるものであってもよいし、異なる材質からなるものであってもよい。
【0015】
ウェアライニング10の除去は、公知の方法によって行われればよい。例えば、ウェアライニング10を機械又は手作業にて斫ることで、ウェアライニング10の少なくとも一部を除去することができる。ウェアライニング10の除去は、パーマライニング20の少なくとも一部が露出するまで行われればよい。言い換えれば、工程S1においては、パーマライニング20の一部が露出するように、ウェアライニング10の一部が除去されれば十分であり、ウェアライニング10のすべてを除去する必要はない。ウェアライニング10をすべて除去した場合でも本開示のライニング方法を適用することは可能であるものの、その分、施工時間が長くなる。
【0016】
パーマライニング20は、ウェアライニング10よりも樋内部側(溶融物との接触部分とは反対側)に配置されるもので、例えば、公知の耐火材や断熱材からなるものであってよい。パーマライニング20は、高炉樋の最初の施工時やウェアライニング10の施工時に水平出しや平滑出し等が既になされたものといえる。そのため、本開示のライニング方法においては、パーマライニング20の表面の一部を露出させるだけで、露出させた当該表面20aが水平や平行等の基準面として機能し得る。すなわち、プレキャストブロック40を設置するにあたって、設置面の平滑出しや平行出し等を新たに行う必要がなく、これにより施工時間を短縮することができる。尚、パーマライニング20以外の部分(例えば、残存するウェアライニングやパーマライニングよりも下の金枠等)を基準面として機能させることもあり得るが、施工時間の短縮効果や湯漏れの抑制効果等は、パーマライニング20を基準面として機能させる場合に最も高くなるものと考えられる。パーマライニング20を露出させる部分の位置や大きさは、基準面として適切で、後述の支持部30を安定して設置可能であり、且つ、支持部30を介してプレキャストブロック40を安定して配置することが可能な位置や大きさであればよい。例えば、本開示のライニング方法においては、プレキャストブロック40の重心が取れ、且つ、支持部30の圧縮強度を超えないように、支持部30の位置や数を決定し、当該位置や数に応じて、パーマライニング20の露出面20aの位置や大きさを決定してもよい。
【0017】
1.2 工程S2
図2(C)及び(D)に示されるように、工程S2においては、工程S1にて露出させたパーマライニング20の露出面20aの上に、支持部30を介してプレキャストブロック40を設置する。ここで、パーマライニング20とプレキャストブロック40との間には、隙間50が生じる。
【0018】
支持部30は、プレキャストブロック40を設置するための足として機能するものである。支持部30の形状や大きさは、プレキャストブロック40の形状等に応じて適宜決定されればよい。例えば、支持部30は、
図2(C)及び(D)に示されるように、パーマライニング20と接触する第1面と、プレキャストブロック40と接触する第2面とを有し、第1面と第2面との間に高さを有するものであってよい。或いは、後述するように、第2面はプレキャストブロック40と一体であってもよい。ここで、第1面と第2面とは、ともに実質的に平滑であってもよいし、平滑でなくてもよく、また、第1面と第2面とが実質的に互いに平行であってもよいし、平行でなくてもよい。第1面や第2面の形状(上面形状)は、特に限定されるものではなく、矩形であっても、円形であっても、その他の形状であってもよい。支持部30の高さも特に限定されるものではない。支持部30は、流し込み材60を適切に充填可能な隙間50を形成できればよく、例えば、50mm以上、55mm以上、60mm以上又は65mm以上の高さを有するものであってもよい。支持部30の材質も特に限定されず、例えば、公知の耐火物からなるものであってもよい。特に、支持部30の圧縮強度が高いほど、支持点の数を減容させることができ、すなわち、パーマライニング20の露出面20aの面積を減少させることができ、施工時間的には有利となるものと考えられる。支持部30の圧縮強度は、例えば、10MPa以上、20MPa以上、30MPa以上又は40MPa以上であってもよい。
【0019】
本開示のライニング方法においては、パーマライニング20を基準面として、ここに寸法が決まった足としての支持部30を設置し、その上にプレキャストブロック40を配置してもよい。この際、パーマライニング20と支持部30との間には、モルタルやパッチング材等の中間材を挟み込んでもよい。これにより、パーマライニング20と支持部30との間の隙間を抑制しつつ、支持部30をパーマライニング20の上に一層適切に設置することができる。中間材の形状は特に限定されず、例えば、シート状又は層状の中間材が採用されてもよい。
【0020】
支持部30は、プレキャストブロック40とは別体のものであってもよい。例えば、
図2(C)及び(D)に示されるように、支持部30としてスパイクれんがが用いられてもよい。この場合、スパイクれんがが、パーマライニング20の露出面20aの上に設置され、高炉樋プレキャストブロック40が、スパイクれんがの上に設置され得る。或いは、支持部30は、後述のプレキャストブロック40と一体であってもよい。例えば、プレキャストブロック40の設置前に、プレキャストブロック40に対して支持部30としてのスパイクれんが等が予め固定されていてもよいし、或いは、プレキャストブロック40の製造時(プレキャスト時)に、当該ブロックの一部に、支持部30としての足が形成されてもよい。施工の自由度を高める観点等からは、支持部30として、プレキャストブロック40とは別体のもの(例えば、スパイクれんが)が用いられることが好ましい。
【0021】
高炉樋プレキャストブロック40は、高炉樋補修後に新たなウェアライニングとして機能し得る。プレキャストブロック40の形状や大きさは、スパイクれんが30に設置された際に隙間50を生じさせ得る程度の形状や大きさで、且つ、高炉樋のウェアライニングとして適切な形状や大きさであればよい。プレキャストブロック40は、高炉樋の使用時に溶銑や溶滓といった溶融物の流路として機能する凹部(溝)41を有するものであってよい。凹部(溝)41の形状や大きさは特に限定されるものではない。プレキャストブロック40の材質も特に限定されるものではなく、公知の耐火物からなるものであってよい。
【0022】
本開示のライニング方法においては、支持部30とプレキャストブロック40との寸法を予め固定できることから、支持部30の上にプレキャストブロック40を配置するだけで、プレキャストブロック40の位置決めが完了する。すなわち、プレキャストブロック40を設置する際の位置出し等が不要であり、施工時間を短縮することができる。上述の通り、支持部30とプレキャストブロック40とは別体であってもよく、この場合、支持部30とプレキャストブロック40との間に、モルタルやパッチング材等の中間材を挟み込んでもよい。これにより、支持部30とプレキャストブロック40との間の隙間を抑制しつつ、プレキャストブロック40を支持部30の上に一層適切に配置することができる。中間材の形状は特に限定されず、例えば、シート状又は層状の中間材が採用されてもよい。
【0023】
一つのプレキャストブロック40を設置するための支持部30の数は、特に限定されるものではなく、一つであっても複数であってもよい。支持部30の形状及び大きさ、並びに、プレキャストブロック40の形状及び大きさ等に応じて、適切な数の支持部30がパーマライニング20の上の適切な位置に設置されればよい。
【0024】
パーマライニング20と高炉樋プレキャストブロック40との間に生じる隙間50の大きさや形態は、工程S1の後に残存するウェアライニング10の形態、支持部30の形状や大きさ、プレキャストブロック40の形状や大きさ等によって定まるものであり、特に限定されるものではない。ただし、隙間50が小さ過ぎると、ここに流し込み材60を流し込んで充填することが難しくなることから、隙間50は流し込み材60を充填可能な程度の大きさを有し得る。尚、パーマライニング20の表面にウェアライニング10が残存している部分においては、パーマライニング20とプレキャストブロック40との間であってウェアライニング10とプレキャストブロック40との間に隙間50が生じ得る。
【0025】
1.3 工程S3
図2(E)に示されるように、工程S3においては、工程S2において生じさせた隙間50の少なくとも一部に流し込み材60を充填する。
【0026】
流し込み材60は、例えば、隙間50に流し込まれる程度の流動性を有し、且つ、隙間50に充填された後に乾燥・固化して耐火物となり得るものであればよい。流し込み材60は、ウェアライニング10或いはプレキャストブロック40と同様の材質からなるものであってもよい。流し込み材60が隙間50の少なくとも一部に充填されることで、高炉樋の使用時にプレキャストブロック40が万が一破損したとしても、溶融物を流し込み材60で止めることができ、溶融物の系外への漏出を抑制し易い。
【0027】
流し込み材60の隙間50への充填は、公知の流し込み施工によって行われればよい。隙間50に対する流し込み材60の充填率も特に限定されるものではなく、高い充填率とすればよい。
【0028】
1.4 その他の工程
本開示のライニング方法は、上記の工程S1~S3に加えて、その他の工程を有していてもよい。例えば、
図2(E)及び(F)に示されるように、本開示のライニング方法は、少なくとも流し込み材60を充填する際、ブロック固定化具70によって高炉樋プレキャストブロック40を固定すること、を含むものであってもよい。ブロック固定化具70は、流し込み材60を充填する際のプレキャストブロック40の位置ズレ、浮上、及び/又は、倒れ等を防止できるようなものであればよく、その具体的な形態は特に限定されない。例えば、
図2(E)及び(F)に示されるように、ブロック固定化具70として中子を採用してもよい。すなわち、本開示のライニング方法は、高炉樋プレキャストブロック40の凹部(溝)41に中子を設置すること、及び、流し込み材60を充填した後、高炉樋プレキャストブロック40の凹部41から中子を除く(離脱させて取り去る)ことを含むものであってもよい。この場合、
図2(E)に示されるように、中子は、プレキャストブロック40に形成された凹部(溝)41と対応する凸形状を有するものであってもよい。また、中子70は、例えば、プレキャストブロック40に形成された凹部(溝)41を適切な方向(例えば、支持部30に向かう方向)に押さえつけるものであってもよい。これにより、プレキャストブロック40の浮上を抑えることができる。また、中子70が系外に固定されたものである場合、中子70によるプレキャストブロック40の位置ズレ抑制効果も期待できる。
【0029】
尚、本開示のライニング方法において、上記の工程S2における支持部30やプレキャストブロック40の設置の順序は、
図2(C)及び(D)に示されるような順序に限定されるものではない。例えば、上述のように、高炉樋プレキャストブロック40の下部に支持部30を予め形成又は固定しておき、パーマライニング20の露出面20aの上に支持部30をプレキャストブロック40ごと設置してもよい。ただし、設置の自由度や作業性等を考慮した場合、
図2(C)及び(D)に示されるように、パーマライニング20の露出面20aの上にスパイクれんがのような支持部30を設置した後に、支持部30の上にプレキャストブロック40を設置することが好ましい。また、工程S1と工程S2とについても、その順序は
図2(A)~(D)に示されるような順序に限定されるものではない。例えば、工程S1と同時進行で工程S2を行ってもよい。
【0030】
2.高炉樋ライニング構造
本開示の技術は、上記したライニング方法としての側面のほか、高炉樋ライニング構造としての側面も有する。すなわち、
図2(F)に示されるように、本開示の高炉樋ライニング構造は、少なくとも、パーマライニング20、支持部30、高炉樋プレキャストブロック40、及び、流し込み材60を有する。ここで、支持部30は、パーマライニング20の上に位置し、高炉樋プレキャストブロック40は、支持部30の上に位置し、流し込み材60は、パーマライニング20と高炉樋プレキャストブロック40との間の少なくとも一部に充填されている。各々の構成については上述した通りであり、ここでは詳細な説明を省略する。
【0031】
3.効果
以上の通り、工程S1~S3を備えるライニング方法によって、
図2(F)に示されるような高炉樋ライニング構造が得られる。従来技術に対する本開示の技術による有利な効果については、例えば、以下の通りである。
【0032】
まず、ウェアライニングとしてプレキャストブロックを用いることで、溶銑や溶滓といった溶融物に対する耐損傷性が高まり、高炉樋の寿命を高めることができる。この点、枠掛け流し込み型のウェアライニングではなく、プレキャストブロックを採用する優位性がある。
【0033】
一方で、ウェアライニングとしてプレキャストブロックを採用する場合、ブロックの位置決め作業や設置面の平滑出しなどの手間が増え、作業負荷が高くなり易く、施工時間が長時間となり易い。これに対し、本開示のライニング方法は、例えば大型のプレキャストブロックであっても簡便且つ短時間にライニング可能な方法であり、日々の短時間の高炉樋補修にも実用面で耐え得る方法といえる。プレキャストブロックを用いた従来技術に対する優位性についてさらに説明すると以下の通りである。
【0034】
例えば、特許文献1(特開2004-323865号公報)に開示された技術においては、ウェアライニングだけでなくパーマライニング等も一体化されることが前提であり、当該技術を適用するためには、樋を丸ごと交換する必要がある。当該技術は、高炉改修等のタイミングでは有効であるが、日々の補修の視点で見ると、施工が大掛かりになり過ぎ、樋を丸ごと交換するために種々の解体作業が必要となって施工時間が長時間となる虞もある。これに対し、本開示のライニング方法によれば、このような大掛かりな施工は不要である。
【0035】
また、特許文献2(特開昭59-185710号公報)に開示された技術においては、中子にプレキャストブロックを固定して、プレキャストブロックを宙吊りにする必要がある。この場合、中子にプレキャストブロックを固定するために専用の保治具が必要となる。これに対し、本開示のライニング方法によれば、支持部の上にプレキャストブロックを配置するだけでよく、中子にプレキャストブロックを固定する必要もなく、専用の保持具も不要といえる。
【0036】
また、特許文献3(特許第6057653号公報)に開示された技術においては、パーマライニングに対して直接プレキャストブロックを連続的に並べて設置しているものと認められるが、具体的な施工方法については不明である。仮に、パーマライニングに対して直接プレキャストブロックを並べる場合、上述の通り、パーマライニングの平滑出し等が必要となり、施工時間が長時間となり易い。また、プレキャストブロックを設置するためにパーマライニング面を完全に出すまでウェアライニングを除去する必要があり、解体重機の打撃によるパーマライニングの損傷等も懸念され、場合によってはパーマライニングの補修も必要となる。加えて、パーマライニングもプレキャストブロックも定型であるため、その接触面が完全には一致せず、隙間が出来ることで湯漏れが懸念される。特許文献4(特許第6057654号公報)に開示された技術においても同様の懸念がある。これに対し、本開示のライニング方法によれば、このような懸念が生じ難い。
【0037】
また、特許文献5(特開昭59-143006号公報)に開示された技術においては、高炉樋内にプレキャストブロックを設置して流し込み材を充填する際、プレキャストブロックの位置ズレを抑えつつ、プレキャストブロックを吊り下げ続ける必要があり、作業負荷が大きい。これに対し、本開示のライニング方法においては、支持部の上にプレキャストブロックを配置するだけで自ずとプレキャストブロックの位置決めがなされ、その後に流し込み材を充填してもプレキャストブロックの位置ズレが生じ難いことから、作業負荷が小さい。
【0038】
さらに、特許文献6(特開2011-219806号公報)に開示された技術においては、大樋パーマライニングに大型のプレキャストブロックが使用され、且つ、レベル出し(平行出し)にスタンプ材が使用されており、スタンプ材の上に重量物である大型のプレキャストブロックを設置することとなるため、プレキャストブロックを設置した際にプレキャストブロックの沈み込みなどが生じ、位置精度が悪化し易い。加えて、スタンプ材表面の凹凸部によって、プレキャストブロックとスタンプ材との間に隙間ができ、溶融物の漏れに繋がる虞もある。これに対し、本開示のライニング方法によれば、パーマライニングの露出面の上に支持部を介してプレキャストブロックが設置されることで、プレキャストブロックの沈み込みの懸念がなく、また、隙間に流し込み材が充填されることで、溶融物の漏れも生じ難い。
【実施例0039】
以下、実施例を示しつつ、本開示の技術についてさらに詳細に説明するが、本開示の技術は以下の実施例に限定されるものではない。
【0040】
1.プレキャストブロックの準備
下記に示される材質及び性状を有するプレキャストブロックを用意した。
図3にプレキャストブロックの外観形状の一例を概略的に示す。
【0041】
(プレキャストブロックの材質及び性状)
・ 化学成分:Al2O3 68質量%、SiC 20質量%、SiO2 5質量%、C 2質量%、及び残部
・ 見掛け気孔率(110℃×24時間):11.7%
・ 嵩比重(110℃×24時間):2.94
・ 圧縮強度(110℃×24時間):22MPa
・ 線変化率(1000℃×3時間):+0.01
・ 線変化率(1500℃×3時間):+0.13
【0042】
2.従来のライニング方法(比較例)
高炉スラグ樋(排滓樋)の補修に際して、プレキャストブロックを部分的に適用するにあたって、従来のライニング方法の施工時間を評価した。
図4に、比較例に係るプレキャストブロックのライニング方法の流れを概略的に示す。比較例においては、
(1)まず、
図4(A)及び(B)に示されるように、施工予定場所の樋を約2000mmの範囲で解体し、清掃を行った。
(2)次に、
図4(C)に示されるように、底面にスタンプ施工を行い、底面の水平出しを行うとともにスタンプ材による湯漏れ防止構造を形成した。
(3)続いて、
図4(D)に示されるように、複数のプレキャストブロックの上に中子を静置したうえで、中子とプレキャストブロックを固定した。
(4)その後、
図4(E)に示されるように、プレキャストブロックを中子ごと樋内に設置したうえで、
図4(F)に示されるように、プレキャストブロックと樋解体面との間の隙間に流し込み材を充填し、養生したうえで、脱枠及び乾燥を行った。
【0043】
上記の流れでプレキャストブロックのライニングを行った結果、比較例に係るライニング方法においては56時間程度の施工時間を要した。
【0044】
3.本開示の方法(実施例)
比較例に係るライニング方法では、プレキャストブロックの形状が変えられないため、底面にスタンプ材を施工することで稼働面のレベル(位置)を合わせる必要があるほか、プレキャストブロック設置位置精度を出すために、スタンプ材施工及びレベル出し(水平出し)が必要となり、この点で特に施工時間がかかることが分かった。そこで、プレキャストブロックの形状が変えられないことを逆手に取り、既に基準面が決まっているパーマライニングを基準として、プレキャストブロックを設置する方法について検討した。この際、パーマライニングとプレキャストブロックとを直接接触させてしまうと、パーマライニングとプレキャストブロックとの間で微小な凹凸による隙間が生じ、湯漏れのリスクを抱えることとなる。そこで、パーマライニングの上に、支持部としての定型のスパイクれんがを設置し、この上にプレキャストブロックを設置することで、パーマライニングとプレキャストブロックとの間に意図的に隙間を生じさせ、この隙間に対して後から流し込み材を充填して隙間を解消する方式とすることで、湯漏れ防止構造を実現可能であると考えた。このような方法によれば、スタンプ材施工や平行出し等の時間が省略可能と考えられる。
【0045】
上記の検討をふまえ、
図1及び2に示されるような流れで、実施例に係るプレキャストブロックのライニングを実施した。具体的には、
(1)まず、
図2(A)及び(B)に示されるように、施工予定場所におけるウェアライニングの一部を斫って、パーマライニングを露出させた。この際、プレキャストブロックとウェアライニング残材が干渉しない範囲で、スパイクれんが設置位置のみパーマライニングを露出させるものとした。
(2)次に、
図2(C)に示されるように、パーラライニングの露出部分にスパイクれんがを設置した。この際、パーマライニングとスパイクれんがとの間にモルタルを敷き隙間が生じないようにした。また、スパイクれんがの設置位置をあらかじめ決定しておき、プレキャストブロックをスパイクれんがの上に置くだけで位置出しが完了できるようにした。
(3)続いて、
図2(D)に示されるように、スパイクれんがの上にプレキャストブロックを設置した。
(4)その後、
図2(E)及び(F)に示されるように、プレキャストブロックの凹部(溝)に中子を設置したうえで、プレキャストブロックとパーマライニングとの間の隙間に流し込み材を充填し、養生したうえで、脱枠及び乾燥を行った。
【0046】
上記の流れでプレキャストブロックのライニングを行った結果、実施例に係るライニング方法においては50時間程度の施工時間で済み、比較例に係るライニング方法に対して施工時間を6時間程度短縮することができた。このような施工時間の短縮効果は、高炉樋の種類(溶銑樋、排滓樋等)によらず、また、樋の断面形状や長手形状(直線部、屈曲部等)によらず同様に発揮された。また、実施例に係るライニング方法は、例えば、高炉操業中の他の高炉樋を使用している間に実施及び完了可能であった。
【0047】
尚、スタンプ材の平行出し等の時間を省略するという観点からは、定型のプレキャストブロックを採用せずに、枠掛け流し込み型のウェアライニングを採用することもあり得る。しかしながら、枠掛け流し込み型のウェアライニングは、プレキャストブロックからなるウェアライニングと比較して、溶銑や溶滓といった溶融物に対する耐損傷性に劣る。そのため、枠掛け流し込み型のウェアライニングを採用した場合、高炉樋寿命が短くなり、補修頻度が増加して、長期的に見た場合に作業負荷が大きくなる虞がある。この点、多少の施工時間の長時間化には目をつぶってでも、ウェアライニングとしてプレキャストブロックを採用する意義があるところ、本開示の技術により、施工時間を短縮することができる。すなわち、本開示の技術によれば、高炉樋補修においてウェアライニングとしてプレキャストブロックを施工する場合の欠点を解消することが可能といえる。