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特開2023-102191液化ガス容器の製造方法、及び液化ガス容器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102191
(43)【公開日】2023-07-24
(54)【発明の名称】液化ガス容器の製造方法、及び液化ガス容器
(51)【国際特許分類】
   B29D 22/00 20060101AFI20230714BHJP
   F17C 3/08 20060101ALI20230714BHJP
【FI】
B29D22/00
F17C3/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022002616
(22)【出願日】2022-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】518128883
【氏名又は名称】株式会社SPACE WALKER
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 睦也
(72)【発明者】
【氏名】米本 浩一
【テーマコード(参考)】
3E172
4F213
【Fターム(参考)】
3E172AA03
3E172AA06
3E172AB01
3E172AB04
3E172AB11
3E172AB12
3E172AB15
3E172BA01
3E172BA06
3E172BB03
3E172BB12
3E172BB17
3E172BC03
3E172BC08
3E172CA22
3E172DA04
4F213AA37
4F213AA39
4F213AG03
4F213AG07
4F213AH55
4F213WA16
4F213WA38
4F213WA53
4F213WA67
4F213WB01
4F213WB11
(57)【要約】
【課題】軽量、かつ断熱性に優れた液化ガス容器を得る。
【解決手段】繊維強化樹脂製の外側容器18と、外側容器18の内部に配置され、ガスバリア性を有し、繊維強化樹脂で形成され、液化水素LGを貯蔵する内側容器14と、内側容器14に設けられ内側容器14に液化水素LGを出入りさせる口部が形成されたボス16と、内側容器14を外側容器18に対して浮かせて支持することで内側容器14と外側容器18との間に真空断熱空間20を形成する支持部材18と、を有する液化ガス容器10。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボスを備えた内側容器の外面に第1の離型膜を形成する第1の離型膜形成工程と、
前記第1の離型膜の外側に、溶剤によって溶解可能な樹脂製の外側マンドレル層を形成する外側マンドレル層形成工程と、
前記外側マンドレル層の外面に、第2の離型膜を形成する第2の離型膜形成工程と、
前記第2の離型膜の外側に、前記ボスに設けられている支持部材と接合するように外側繊維強化樹脂層を設ける外側容器形成工程と、
前記外側マンドレル層を前記溶剤によって溶解除去する外側マンドレル層溶解工程と、 を有する液化ガス容器の製造方法。
【請求項2】
前記内側容器と外側容器との間の空間を真空にする真空工程を備えている、
請求項1に記載の液化ガス容器の製造方法。
【請求項3】
前記内側容器を形成する工程として、
溶剤によって溶解可能な樹脂製の内側マンドレルの外面にボスを設けると共に、第3の離型膜を形成する第3の離型膜形成工程と、
前記第3の離型膜の外表面に前記ボスと接合するように内側繊維強化樹脂層を設ける内側容器形成工程と、
前記内側マンドレルを前記溶剤によって溶解除去する内側マンドレル溶解工程と、
をさらに有する、請求項1または請求項2に記載の液化ガス容器の製造方法。
【請求項4】
前記内側マンドレル、及び前記外側マンドレル層は、発泡スチロールで形成されている、
請求項3に記載の液化ガス容器の製造方法。
【請求項5】
前記外側容器形成工程は、前記ボスに前記支持部材を接合する接合工程を含んでいる、請求項1~請求項4の何れか1項に記載の液化ガス容器の製造方法。
【請求項6】
繊維強化樹脂製の外側容器と、
前記外側容器の内部に配置され、ガスバリア性を有し、繊維強化樹脂で形成され、液化ガスを貯蔵する内側容器と、
前記内側容器に設けられ前記内側容器に前記液化ガスを出入りさせる口部が形成されたボスと、
前記内側容器を前記外側容器に対して浮かせて支持することで前記内側容器と前記外側容器との間に真空断熱空間を形成する支持部材と、
を有する液化ガス容器。
【請求項7】
前記支持部材は、前記内側容器の前記ボスに固定され、前記ボスを介して前記内側容器を前記外側容器に対して浮かせて支持している、
請求項6に記載の液化ガス容器。
【請求項8】
前記支持部材は、前記真空断熱空間に繋がる吸引口を備えている、
請求項6または請求項7に記載の液化ガス容器。
【請求項9】
前記内側容器は、前記繊維強化樹脂の内部にガスバリア層が挟まれている、
請求項6~請求項8の何れか1項に記載の液化ガス容器。
【請求項10】
前記ガスバリア層は、板状の結晶構造を持つ粘土鉱物が一方向に配向し且つ緻密に積層されている、
請求項9に記載の液化ガス容器。
【請求項11】
前記内側容器は、液化水素を貯蔵する、
請求項6~請求項10の何れか1項に記載の液化ガス容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化ガス容器の製造方法、及び液化ガス容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスを貯蔵するガス容器が種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013―227997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のガス容器は、繊維強化樹脂で形成された容器本体を備え、容器本体の内面がガスバリア層を備えた樹脂被膜で覆われており、金属製の容器に比較して軽量化が図られている。
このような構造のガス容器では、断熱性が考慮されていないため、低温の液化ガスを貯蔵するには向いていない。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、軽量、かつ断熱性に優れた液化ガス容器を製造するための液化ガス容器の製造方法、及び液化ガス容器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の液化ガス容器の製造方法は、ボスを備えた内側容器の外面に第1の離型膜を形成する第1の離型膜形成工程と、前記第1の離型膜の外側に、溶剤によって溶解可能な樹脂製の外側マンドレル層を形成する外側マンドレル層形成工程と、前記外側マンドレル層の外面に、第2の離型膜を形成する第2の離型膜形成工程と、前記第2の離型膜の外側に、前記ボスに設けられている支持部材と接合するように外側繊維強化樹脂層を設ける外側容器形成工程と、前記外側マンドレル層を前記溶剤によって溶解除去する外側マンドレル層溶解工程と、を有する。
【0007】
請求項1に記載の液化ガス容器の製造方法では、第1の離型膜形成工程で、ボスを備えた内側容器の外面に第1の離型膜が形成される。
【0008】
外側マンドレル層形成工程では、第1の離型膜の外側に、溶剤によって溶解可能な樹脂製の外側マンドレル層が形成される。
【0009】
第2の離型膜形成工程では、外側マンドレル層の外面に、第2の離型膜が形成される。
外側容器形成工程では、第2の離型膜の外側に、ボスに設けられている支持部材と接合するように外側繊維強化樹脂層が設けられる。この外側繊維強化樹脂層は、内側容器の外側に設けられる外側容器となる。
【0010】
外側マンドレル層溶解工程では、外側マンドレル層が溶剤によって溶解除去される。これにより、内側容器と外側容器との間に空間を形成することができる。
なお、この空間は、内部の空気を吸引して真空断熱空間とすることができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の液化ガス容器の製造方法において、前記内側容器と外側容器との間の空間を真空にする真空工程を備えている。
【0012】
請求項2に記載の液化ガス容器の製造方法では、真空工程で、内側容器と外側容器との間の空間を真空にすることができ、これにより、内側容器と外側容器との間の空間を真空断熱空間とすることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の液化ガス容器の製造方法において、前記内側容器を形成する工程として、溶剤によって溶解可能な樹脂製の内側マンドレルの外面にボスを設けると共に、第3の離型膜を形成する第3の離型膜形成工程と、前記第3の離型膜の外表面に前記ボスと接合するように内側繊維強化樹脂層を設ける内側容器形成工程と、前記内側マンドレルを前記溶剤によって溶解除去する内側マンドレル溶解工程と、をさらに有する。
【0014】
請求項3に記載の液化ガス容器の製造方法では、第3の離型膜形成工程で、内側容器を形成する工程として、溶剤によって溶解可能な樹脂製の内側マンドレルの外面にボスを設けると共に、第3の離型膜を形成する。
内側容器形成工程では、第3の離型膜の外表面にボスと接合するように内側繊維強化樹脂層を設ける。この内側繊維強化樹脂層が、内側容器となる。
内側マンドレル溶解工程では、内側マンドレルを溶剤によって溶解除去する。これにより、内部が中空となった内側容器が形成される。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の液化ガス容器の製造方法において、前記内側マンドレル、及び前記外側マンドレル層は、発泡スチロールで形成されている。
【0016】
請求項4に記載の液化ガス容器の製造方法では、発泡スチロールは、発泡していないスチロールに比較して、溶剤によって迅速に溶解することができる。また、スチロールは、他の合成樹脂に比較して、溶剤によって溶解しやすい。このため、発泡スチロールで形成された内側マンドレル、及び外側マンドレル層を、溶剤を用いて迅速に溶融して除去することができ、液化ガス容器の生産効率を高めることができる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項1~請求項4の何れか1項に記載の液化ガス容器の製造方法において、前記外側容器形成工程は、前記ボスに前記支持部材を接合する接合工程を含んでいる。
【0018】
請求項5に記載の液化ガス容器の製造方法では、外側容器形成工程の接合工程で、ボスに支持部材を接合することができる。
【0019】
請求項6に記載の液化ガス容器は、繊維強化樹脂製の外側容器と、前記外側容器の内部に配置され、ガスバリア性を有し、繊維強化樹脂で形成され、液化ガスを貯蔵する内側容器と、前記内側容器に設けられ前記内側容器に前記液化ガスを出入りさせる口部が形成されたボスと、前記内側容器を前記外側容器に対して浮かせて支持することで前記内側容器と前記外側容器との間に真空断熱空間を形成する支持部材と、を有する。
【0020】
請求項6に記載の液化ガス容器では、内側容器に液化ガスを貯蔵することができる。内側容器に設けられたボスの口部を介して液化ガスを内側容器内に入れることができ、また、内側容器に入れた液化ガスを口部を介して取り出すことができる。
【0021】
内側容器と外側容器との間には、真空断熱空間が設けられているので、外側容器から内側容器に熱が伝わり難く、低温の液化ガスを貯蔵するのに好適な構造となっている。この内側容器と外側容器とは、支持部材のみで連結されており、内側容器と外側容器との物質を介した熱の伝達経路は最小限に抑えられているため、高い断熱性能が得られる。
また、内側容器と外側容器は、共に繊維強化樹脂で形成されており、内側容器と外側容器との間に断熱材等を設けていないので、内側容器と外側容器を金属で形成したり、内側容器と外側容器との間に断熱材を設けた場合に比較して液化ガス容器を軽量化できる。
【0022】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の液化ガス容器において、前記支持部材は、前記内側容器の前記ボスに固定され、前記ボスを介して前記内側容器を前記外側容器に対して浮かせて支持している。
【0023】
請求項7に記載の液化ガス容器では、内側容器の荷重が、ボス、及び支持部材を介して外側容器で支持される。
【0024】
請求項8に記載の発明は、請求項6または請求項7に記載の液化ガス容器において、前記支持部材は、前記真空断熱空間に繋がる吸引口を備えている。
【0025】
請求項8に記載の液化ガス容器では、吸引口に、配管等を介して真空ポンプを接続し、内側容器と外側容器との間の空間に介在する空気を吸引し、内側容器と外側容器との間の空間を真空断熱空間とすることができる。
【0026】
請求項9に記載の発明は、請求項6~請求項8の何れか1項に記載の液化ガス容器において、前記内側容器は、前記繊維強化樹脂の内部にガスバリア層が挟まれている。
【0027】
請求項9に記載の液化ガス容器では、繊維強化樹脂の内部に挟まれたガスバリア層で、液化ガスが気化したガスの透過を抑制し、真空断熱空間にガスが進入して真空断熱空間の真空度が低下することを抑制できる。
また、液化ガスがガスバリア層に直接的に接触しないので、液化ガスとの接触によるガスバリア層の劣化や損傷を抑制することができる。
【0028】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の液化ガス容器において、前記ガスバリア層は、板状の結晶構造を持つ粘土鉱物が一方向に配向し且つ緻密に積層されている。
【0029】
請求項10に記載の液化ガス容器では、ガスバリア層が、板状の結晶構造を持つ粘土鉱物が一方向に配向し且つ緻密に積層された構造とされているため、ガスバリア層は、金属で形成した場合と同等のガスバリア性が得られると共に、軽量化を図ることができる。
【0030】
請求項11に記載の発明は、請求項6~請求項10の何れか1項に記載の液化ガス容器において、前記内側容器は、液化水素を貯蔵する。
【0031】
請求項11に記載の液化ガス容器では、内側容器で液化水素を貯蔵することができる。
【発明の効果】
【0032】
以上説明したように、本発明の液化ガス容器の製造方法によれば、軽量、かつ断熱性に優れた液化ガス容器を効率的に製造することができる、という優れた効果を有する。
【0033】
また、本発明の液化ガス容器は、軽量、かつ断熱性に優れており、液化ガスを貯蔵するのに好適に使用することができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の第1の実施形態に係る液化ガス容器を示す軸線に沿った断面図である。
図2】口金、及び支持部材の分解した状態を示す軸線に沿った断面図である。
図3】支持部材を示す平面図である。
図4】(A)~(C)は高圧ガス容器の製造工程を示す説明図であり、(D)は内側マンドレルと内側容器の一部を示す断面図である。
図5】内側マンドレルを溶解している状態を示す内容器の断面図である。
図6】離型膜を形成した内側容器を示す側面図である。
図7】外側マンドレル層を設けた内側容器を示す断面図である。
図8】離型膜を形成した内側容器を示す側面図である。
図9】外側マンドレル層の外側に形成された外側容器を示す側面図である。
図10】外側マンドレル層を溶解している状態を示す容器の断面図である。
図11】(A)は第2の実施形態に係る液化ガス容器を示す軸線に沿った断面図であり、(B)は軸方向から見たバッフルの平面図である。
図12】(A)は第2の実施形態に係る液化ガス容器の製造途中を示す軸線に沿った断面図であり、(B)~(D)は、スペーサーのバリエーションを示す平面図である。
図13】(A)は第3の実施形態に係る液化ガス容器を示す軸線に沿った断面図であり、(B)は軸方向から見たバッフルの平面図である。
図14】第4の実施形態に係る液化ガス容器を示す軸線に沿った断面図である。
図15】第4の実施形態に係る液化ガス容器を示す軸線に対して直角な断面図である。
図16】他の実施形態に係る支持部材を備えた液化ガス容器を示す軸線に対して直角な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
[第1の実施形態]
図1図10を用いて、本発明の第1の実施形態に係る液化ガス容器10について説明する。
(全体構成)
図1に示すように、本実施形態の液化ガス容器10は、繊維強化樹脂製の外側容器12と、外側容器12の内部に配置され、液化ガスの一例としての液化水素LGを貯蔵可能する繊維強化樹脂製の内側容器14と、内側容器14に設けられ液化ガスの出し入れを行う一対のボス16と、内側容器14を外側容器12に対して浮かせて支持する一対の支持部材18等を含んで構成されており、内側容器14と外側容器12との間に真空断熱空間20が形成されている。
【0036】
(内側容器)
本実施形態の内側容器14は、一定径に形成された筒部14Aの両端部に鏡部14Bが一体的に形成されており、各々の鏡部14Bの中央にボス16が設けられている。
【0037】
本実施形態の内側容器14は、一例として、CFRP(炭素繊維強化樹脂)で形成されており、図4(D)に示すように、CFRP層22の内部にはガスバリア層24が埋設されている。
【0038】
CFRP層22は、一例として、一般的に知られているフィラメントワインディング法で形成したり、プリプレグを用いて形成することができる。
【0039】
CFRP層22において用いられるマトリックス樹脂は、特に限定されないが、具体例として、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂、シアン酸エステル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、フェノキシ樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、マレイミド樹脂とシアン酸エステル樹脂の予備重合樹脂、ビスマレイミド樹脂、アセチレン末端を有するポリイミド樹脂及びポリイソイミド樹脂、ナジック酸末端を有するポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂を挙げることができる。これらは1種又は2種以上の混合物として用いることもできる。中でも、耐熱性、弾性率、耐薬品性に優れたエポキシ樹脂やビニルエステル樹脂が、特に好ましい。これらの熱硬化性樹脂には、硬化剤、硬化促進剤以外に、通常用いられる着色剤や各種添加剤等が含まれていてもよい。
【0040】
また、本発明において用いられるマトリックス樹脂のうち熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリアミド、芳香族ポリエステル、芳香族ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、ポリアリーレンオキシド、熱可塑性ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリ乳酸なる群から選ばれた1種若しくは2種以上の樹脂が挙げられる。また、用途によっては、一部熱硬化性樹脂と混合して用いることもできる。中でも、耐熱性、弾性率、耐薬品性に優れたポリアミド樹脂やアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂が、特に好ましい。これらの熱可塑性樹脂には、通常用いられる着色剤や各種添加剤等が含まれていても良い。
【0041】
プリプレグの製造法は特に限定されないが、公知の方法、例えば、シート状の炭素繊維強化材に、溶融した熱可塑性樹脂を含浸させる方法(溶融含浸法)、パウダー化した熱可塑性樹脂を流動床法や懸濁法によって塗布・融着させる方法、熱可塑性樹の溶液を繊維強化材に含浸させた後、溶媒を除去する方法を採用することができる。好ましいのは、溶融含浸法であり、中でも、フィルム状の樹脂と繊維強化材を重ね合わせて供給し、連続的にベルトの間で加熱・加圧して樹脂を溶融すると共に強化繊維に含浸させる方法である。これらの熱可塑性樹脂は、プリプレグ中の樹脂含量として10~90質量%、より好ましくは20~60質量%の範囲で用いられる。
【0042】
(ガスバリア層)
本実施形態のガスバリア層24は、主体が粘土層からなり、その基本構成は、厚さ約1nm、粒子径約1μm、アスペクト比約300程度の天然又は合成の膨潤性粘土の結晶、あるいは膨潤性粘土を有機化処理した有機化粘土の結晶が約70質量%以上と、分子の大きさ数nm以下の天然又は合成の低分子・高分子の有機添加物が約30質量%以下の構成からなる。ここで有機化処理とは、シリル化処理あるいは有機イオン交換処理を意味し、本実施形態においては、かくして得られたものも粘土鉱物に含むものとする。
【0043】
この粘土層は、層状結晶を、同じ向きに配向させて重ねて緻密に積層することで作製される。得られた粘土層は、粘土層の膜厚が3~100μmであり、ガスバリア性能は、粘土層の厚さ30μmで酸素透過度0.1cc/m/24hr/atm未満、水素透過度0.1cc/m/24hr/atm未満であり、面積は100×40cm以上に大面積化することが可能であり、粘土層に対して、垂直方向の直流電気抵抗は1メガΩ以上である。
【0044】
粘土としては、天然、あるいは合成物、好ましくは、天然スメクタイト及び合成スメクタイトの何れか、あるいは有機化粘土又はそれらの混合物を用い、これを、溶媒に加え、希薄で均一な分散液を調製する。粘土として、雲母、バーミキュライト、モンモリロナイト、鉄モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト及びノントロナイトからなる群のうちの一種以上を用いることができる。粘土分散液の濃度は、好適には0.5~15質量%、より好ましくは、1~10質量%である。
【0045】
次に、固体状又は液体状の有機添加物を、粘土分散液に加え、均一な分散液を調製する。有機添加物としては、粘着粘土膜のフレキシビリティー、あるいは機械的強度を向上させる、粘土と均一に混合するものであれば、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、グリセリン等の低分子化合物、デキストリン、澱粉、ゼラチン、寒天、小麦粉、グルテン等の天然物、後述のマトリックス樹脂として用いられる熱硬化性や熱可塑性樹脂を用いることができる。特に、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニル樹脂、シリコン樹脂が好ましい。有機添加物の添加の割合は、粘土鉱物に対して3~30質量%、好ましくは4~20質量%である。粘土分散液と有機添加物を混合する順序は、溶剤に粘土を加えた後に有機添加物を加えることも可能であり、その逆も可能である。また、粘土分散液と有機添加物溶液を別々に作製しておき、両者を混合することも可能である。
【0046】
粘土層の作製方法としては、例えば、分散液である液体を基材(CFRP層22)の上でゆっくりと蒸発させ、膜状に成形する。乾燥は、例えば、強制送風式オーブン中で30~100℃の温度条件下、好ましくは30~50℃の温度条件下で、10分間~半日間程度、好ましくは10分間~5時間、乾燥して粘土層が得られる。
【0047】
(外側容器)
図1に示すように、外側容器12は、内側容器14の外側に間隔を開けて配置されている。外側容器12は、一例として、内側容器14と同様のCFRPで形成されているがガスバリア層24は設けられていない。
(ボス)
ボス16は、内側容器14の長手方向両端側に設けられている。図1に示すように、図面下側のボス16と図面上側のボス16とは同一構成であるので、代表して上側のボス16について説明する。
【0048】
図1、及び図2に示すように、本実施形態のボス16は、一例としてアルミニウム、またはアルミニウ合金でリング状に形成されている。ボス16は、一定外径の本体部16Aを備え、本体部16Aの内側容器側の端部には、内側容器14の鏡部14Bの内面形状に沿って湾曲した外フランジ16Bが一体的に形成されている。
【0049】
本体部16Aの外周面、及び外フランジ16Bに、内側容器のCFRP層22が接着されている。なお、外フランジ16Bは、必要に応じて設ければよく、無くてもよい。
【0050】
本体部16Aには、大径孔26が形成されており、大径孔26の底部26Aに口部の一例としての小径孔28が形成されている。
【0051】
本体部16Aの上端(内側容器側とは反対側の端部)には、内周側に、後述する支持部材18を取り付けるための複数の螺子孔30が、周方向に等間隔で形成されている。
【0052】
本体部16Aの上端には、螺子孔30よりも外周側に、Oリング溝32が形成されている。Oリング溝32には、Oリング34が嵌め込まれている。Oリング34は、液化水素等の低温でもシール性が得られる公知の極低温用のものが使用されている。
【0053】
大径孔26の環状の底部26Aには、内周側にOリング溝36が形成されており、Oリング溝36の外周側に、複数の螺子孔38が周方向に等間隔で形成されている。Oリング溝36には、Oリング40が嵌め込まれている。
【0054】
大径孔26の内部には、アルミニウム、またはアルミニウム合金で構成された円板状の内蓋42が配置されている。内蓋42の中央には、後述する配管90を接続する継手43が取り付けられており、内蓋42の外周側には、ボス16の螺子孔38と対向する位置に、貫通孔44が形成されている。
【0055】
内蓋42は、貫通孔44を貫通させたボルト46をボス16の螺子孔38に締め付けることでボス16に固定され、小径孔28を塞いでいる。また、内蓋42と大径孔26の底部26Aとの間の隙間は、Oリング40によってシールされている。
【0056】
(支持部材)
次に、ボス16に取り付けられている支持部材18について説明する。
本実施形態の支持部材18は、一例としてアルミニウム、またはアルミニウム合金でリング状に形成されている。
【0057】
図2、及び図3に示すように、支持部材18は、ボス16と接続する内リング48と、内リング48の外側に設けられ外側容器12に取り付けられる外リング50と、内リング48と外リング50とを連結する連結部51とを備えている。
本実施形態の連結部51は、図2,3に示すように、幅広、かつ肉厚の柱状に形成され、周方向に等間隔で3か所設けているが、連結部51の形状、及び数は必要に応じて変更可能である。連結部51と連結部51との間の円弧形状の開口部分は、後述する発泡スチロール製の外側マンドレル層86を溶解するための溶剤を流し込む入口、及び発泡スチロールを溶解した後の溶剤を排出させるための出口となる。
【0058】
内リング48の上面には、外周側にOリング溝52が形成されており、Oリング溝52の内周側に、複数の螺子孔54が周方向に等間隔で形成されており、螺子孔54よりも内周側には、複数の貫通孔56が周方向に等間隔で形成されている。Oリング溝52には、Oリング58が嵌め込まれている。
【0059】
内リング48は、ボス16の上面に配置されており、内リング48の貫通孔56を貫通させたボルト60をボス16の上端に形成された螺子孔30に締め付けることで、内リング48がボス16に固定されている。内リング48とボス16との間の隙間は、Oリング34によってシールされている。
【0060】
外リング50は、一定外径の本体部50Aを備え、本体部50A下端(外側容器側)には、外側容器12の鏡部12Bに沿って湾曲した外フランジ50Bが形成されている。本体部50Aの外周面、及び外フランジ50Bには、外側容器12が接着されている。なお、外フランジ50Bは、必要に応じて設ければよく、無くてもよい。
【0061】
外リング50の上端には、内周側にOリング溝61が形成されており、Oリング溝61の外周側に、複数の螺子孔62が周方向に等間隔で形成されている。Oリング溝61には、Oリング64が嵌め込まれている。
【0062】
内リング48の上端、及び外リング50の上端は、同一平面上にあり、これらの上部には、一例としてアルミニウム、またはアルミニウム合金で構成されたリング状の外蓋66が配置されている。
【0063】
外蓋66には、内リング48の螺子孔54に対向する位置に貫通孔68が形成されており、外リング50の螺子孔62に対向する位置に貫通孔70が形成されている。
【0064】
外蓋66の貫通孔68を貫通させたボルト72を内リング48の螺子孔54に締め付けると共に、外蓋66の貫通孔70を貫通させたボルト74を外リング50の螺子孔62に締め付けることで、外蓋66が支持部材18に固定されている。また、外蓋66と内リング48との間の隙間はOリング58でシールされ、外蓋66と外リング50との間の隙間はOリング64でシールされている。
【0065】
外蓋66には、吸引口の一例としての継手76が取り付けられている。
継手76には、真空ポンプ(図示せず)に接続された配管78が着脱可能とされており、内部には逆止弁(図示せず)が内蔵されている。逆止弁は、内側容器14と外側容器12との間の空間内の空気を容器外へ吸引する際には開状態となり、容器外から該空間内へ進入しようとする空気の流れは阻止するようになっている。なお、逆止弁に代えて、開閉弁を設けてもよい。
【0066】
なお、本実施形態の液化ガス容器10は、ボス16、及び支持部材18を、グラスウール、ロックフール等の無機繊維系や、ポリスチレンフォーム、ウレタンフォーム、フェノールフォーム、発泡スチロール等の発泡樹脂系の断熱材79で覆ってもよい。本実施形態の液化ガス容器10において、断熱材79の種類は特に問わない。
【0067】
ボス16、及び支持部材18を断熱材79で覆うことで、外界の熱が支持部材18、及びボス16に伝達することが抑制され、外界の熱が支持部材18、及びボス16を介して液化水素ガスに伝達することが抑制される。
【0068】
(液化ガス容器の製造方法)
次に、本実施形態の液化ガス容器10の製造工程(1)~(10)を図4乃至図10にしたがって説明する。
(1) 図4(A)に示すように、内側容器14の内部空間と同一形状とされた、円柱状の内側マンドレル80を、溶解可能な樹脂の一例としての発泡スチロールで形成し、長手方向両端部にボス16を接着剤等で仮止めする。
【0069】
(2) 図4(B)に示すように、内側マンドレル80の表面に内側マンドレル80とCFRPとの固着を防止するための離型剤を塗布し、離型剤を固化させて内側マンドレル80の表面に離型膜82を形成する。離型剤としては、一例として、シリコーン系シール材、ニトフィックス(株式会社アクシスの極低温用接着剤の商品名)などを用いることができる。離型膜82は、本発明の第3の離型膜に相当する。
【0070】
(3) 図4(C),(D)に示すように、内側マンドレル80の離型膜82の表面、及びボス16の外フランジ16Bを覆うように、内側のCFRP層22、ガスバリア層24、及び外側のCFRP層22を順に形成し、内側容器14を形成する。なお、CFRPが接触するボス16の外周面、及び外フランジ16Bには、CFRPとの接着強度を増すために、レーザー加工、サンドブラスト、エッチングなどの公知の粗面化処理を行い、表面に微小な凹凸を形成して表面を粗面化することが好ましい。
外フランジ16BとCFRPとを接着する場合の接着剤は、本実施形態では、液化水素LGの温度で接着強度が低下しないもの、言い換えれば液化水素LGの温度で必要な接着強度を確保できるものを選択して使用する。
【0071】
(4) 図5に示すように、内側容器14を縦に配置し、上側のボス16から発泡スチロールを溶解させる溶剤(樹脂を溶解する薬剤を含んでいてもよい)を流し込み、内側マンドレル80を溶解させ、発泡スチロールを溶かした後の溶剤Sを、下側のボス16を介して外部に排出する。これにより、中空の内側容器14が完成する。
溶剤Sとしては、アセトン、スチレン、トルエン、ベンジン、リモネン等の公知のものを適宜選択して使用することができる。
【0072】
(5) 図6に示すように、内側容器14の外面に離型剤を塗布し、離型剤を固化させて内側容器14の外面に離型膜84を形成する。この離型膜84は、本発明の第1の離型膜に相当する。
【0073】
(6) 図7に示すように、ボス16に支持部材18を取り付け、その後、内側容器14の離型膜84を覆うように、発泡スチロールで一定厚さの外側マンドレル層86を形成する。外側マンドレル層86は、真空断熱空間20と同一形状に形成される。
【0074】
(7) 図8に示すように、外側マンドレル層86の表面に、外側マンドレル層86とCFRPとの固着を防止するための離型剤を塗布し、離型剤を固化させて離型膜88を形成する。この離型膜88は、本発明の第2の離型膜に相当する。
【0075】
(8) 図9に示すように、外側マンドレル層86の離型膜88の表面、及び支持部材18の外フランジ50Bを覆うようにCFRPを形成する。なお、CFRPが接触する支持部材18の外フランジ50B、及び支持部材18の外リング50の外周面には、CFRPとの接着強度を増すために、レーザー加工などで、表面に微小な凹凸を形成することが好ましい。
【0076】
(9) 図10に示すように、支持部材18の内リング48と外リング50との間の隙間から発泡スチロールを溶解させる溶剤を流し込み(矢印B参照))、外側マンドレル層86を溶解させ、発泡スチロールを溶かした溶剤Sを、下側の支持部材18の内リング48と外リング50との間の隙間を介して外部に排出する。これにより、内側容器14と外側容器12との間に真空断熱空間20となる空間が形成される。
【0077】
(10) ボス16に内蓋42を取り付け、ボス16と支持部材18に外蓋66を取り付け、その後、外蓋66の継手76に図示しない真空ポンプに接続された配管78を接続し、内側容器14と外側容器12との間の空間を真空にすることで、該空間を真空断熱空間20とすることができ、これにより、液化ガス容器10が完成する。
なお、必要に応じてボス16、及び支持部材18を断熱材79で覆う。
【0078】
(作用、効果)
本実施形態の液化ガス容器10では、一例として、上側のボス16の継手43に配管90を接続し、下側のボス16の継手43に配管92を接続し、上側の配管90から液化水素を容器内に流入させ、下側の配管92から容器内の液化水素を排出することができる。
【0079】
本実施形態の液化ガス容器10では、内側容器14と外側容器12との間に、真空断熱空間が設けられているので、外側容器12から内側容器14に熱が伝わり難く、低温の液化ガス、一例として、液化水素を貯蔵するのに好適な構造となっている。
【0080】
内側容器14と外側容器12とは、支持部材18とボス16のみで連結されており、内側容器14と外側容器12との物質を介した熱の伝達経路は最小限に抑えられているため、高い断熱性能が得られる。
【0081】
内側容器14と外側容器12は、共に繊維強化樹脂であるCFRPで形成されており、内側容器14と外側容器12との間には断熱材等を設けていないので、内側容器14と外側容器12を金属で形成したり、内側容器14と外側容器12との間に断熱材を設けた場合に比較して液化ガス容器10を軽量化できる。
【0082】
本実施形態の液化ガス容器10では、内側容器14を構成するCFRP層22の内部に挟まれたガスバリア層24で、水素ガスの透過を抑制し、真空断熱空間20に水素ガスが進入して真空断熱空間20の真空度が低下することを抑制できる。
【0083】
また、内側容器14に貯蔵した液化水素がガスバリア層24に直接的に接触しないので、液化水素との接触によるガスバリア層24の劣化や損傷を抑制することができる。
【0084】
本実施形態のガスバリア層24は、板状の結晶構造を持つ粘土鉱物が一方向に配向し且つ緻密に積層された構造とされているため、金属で形成した場合と同等のガスバリア性が得られると共に、軽量化を図ることができる。
【0085】
外蓋66には、逆止弁が内蔵された継手76が取り付けられているので、何らかの原因で真空断熱空間20の真空度が低下した場合に、継手76に配管78を介して真空ポンプを接続し、真空断熱空間内に介在する気体を吸引し、真空断熱空間20の真空度を上げることができる。
【0086】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態に係る液化ガス容器94について説明する。なお、第1の実施形態と同様の構成については同一符号を付し、その説明は省略する。
【0087】
図11(A)、(B)に示すように、本実施形態の液化ガス容器94は、内部に液化水素LGのスロッシング(液面揺動)を抑制するバッフル96を備えている。
なお、本実施形態の液化ガス容器94は、バッフル96以外の構成は、第1の実施形態の液化ガス容器10と基本的には同様な構成であるが、比較的大型に形成されているものである。一例として、液化ガス容器94としては、ボス16、及び支持部材18を、外側容器12、及び内側容器14に対して相対的に大径にすると共に、小径孔28をマンホールのように大径とし、作業員が内部に入れる程度の大きさに形成することができる。
【0088】
図11(A)に示すように、本実施形態の液化ガス容器94では、内側容器14と外側容器12との間にはリング状のスペーサー98が介在しており、内側容器14は、ボス16、支持部材18、外蓋66、及びスペーサー98によって外側容器12に支持されている。なお、図11(A)では、離型膜について図示を省略している。
【0089】
下側の内蓋42には、バッフル96が取り付けられている。図11(A),(B)に示すように、バッフル96は、円筒状の本体96Aを備え、本体96Aの外周面には、軸方向から見て円弧状に形成された翼部96Bがヒンジ100を介して複数取り付けられている。本体96A、及び翼部96Bには、各々複数の孔102が形成されている。
【0090】
翼部96Bは、本体96Aの外周面と同様の曲率半径で湾曲しており、液化ガス容器94の内部に挿入する際には、2点鎖線で示す様に翼部96Bを本体96Aの外周面に接するように折り畳むことが可能となっている。
【0091】
図11(B)の二点鎖線で示すように、翼部96Bを折り畳んだ状態のバッフル96の直径dは、ボス16の小径孔28の内径Dよりも小さい。したがって、バッフル96は、翼部96Bを折り畳んでボス16の小径孔28を介して内側容器14の内部に挿入することができる。
【0092】
内側容器14にバッフル96を挿入した後、図11(B)の実線で示すように、内側容器14の内部で翼部96Bを開くことができる。なお、翼部96Bは、開いた状態で動かないように、接着、溶接、ねじ止め、その他の手段で本体96Aに固定する。
【0093】
図11(A)に示すように、液化水素LGの液面Lsの上に空間(気相部)Sがある場合、液化ガス容器94が搬送中に揺れると液面Lsが揺動する場合があるが、本実施形態の液化ガス容器94では、内側容器14の内部にバッフル96が設けられているため、液面Lsの揺動、即ちスロッシングを抑制することができる。
【0094】
本実施形態の液化ガス容器94を製造するにあたっては、図12(A)に示すように、内側容器14の外側にスペーサー98を取り付けて外側マンドレル層86を形成する。なお、スペーサー98には、外側マンドレル層86を溶解する溶剤、及び溶解した外側マンドレル層86を流すために、図12(A)に示すように複数の孔98Aを形成したり、図12(B)に示すように、外周に切欠98Bを形成したり、図12(C)に示すように、内周に切欠98Cが形成されている。なお、図示は省略するが、スペーサー98を周方向に複数に分割してもよい。
【0095】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態に係る液化ガス容器94について説明する。なお、本実施形態は、第2の実施形態の変形例であり、第2の実施形態と同一構成については同一符号を付し、その説明は省略する。
【0096】
図13(A),(B)に示すように、本実施形態の液化ガス容器94では、第2の実施形態とは形状の異なるバッフル104が設けられている。
バッフル104は、断面十字形状の柱104Aと、柱104Aの側部に固定された複数の翼部104Bとを備えている。
【0097】
バッフル104の最大幅Lは、ボス16の小径孔28の内径Dよりも小さい。したがって、バッフル104は、ボス16の小径孔28を介して内側容器14の内部に挿入することができる。なお、翼部104Bには、複数の孔106が形成されている。
【0098】
本実施形態の液化ガス容器94も、内側容器14の内部にバッフル104が設けられているため、液面Lsの揺動、即ちスロッシングを抑制することができる。
なお、ボス16の小径孔28が小さい場合は、柱104Aと翼部104Bとを分解した状態で液化ガス容器94の内部に搬入し、内部で柱104Aに翼部104Bを取り付けるようにしてもよい。
【0099】
[第4の実施形態]
次に、本発明の第4の実施形態に係る液化ガス容器94について説明する。なお、本実施形態も、第2の実施形態の変形例であり、第2の実施形態と同一構成については同一符号を付し、その説明は省略する。
【0100】
図14、及び図15に示すように、本実施形態の液化ガス容器94では、内側容器14の内周面に、複数のリングバッフル108が軸方向に間隔を開けて取り付けられている。
【0101】
本実施形態のリングバッフル108の外径dは、ボス16の小径孔28の内径Dよりも大きい。したがって、リングバッフル108は、内側容器14に挿入する前は、一例として、図15に2点鎖線で示すように、2分割(なお、3分割以上であってもよい)された状態であり、小径孔28から挿入可能に分割したリングバッフル108を内側容器14の内部でリング状に接合し、かつ内側容器14の内周面に接合している。
本実施形態の液化ガス容器94は、一例として、内部に作業員が入れる程度の比較的大型のものであり、分割したリングバッフル108は、作業員が内部で内側容器14に組み付けることができる。
【0102】
本実施形態の液化ガス容器94では、内側容器14の内周部にリングバッフル108が設けられているため、液面Lsの揺動、即ちスロッシングを抑制することができる。
【0103】
なお、第2実施形態~第4実施形態では、内側容器14の外周と外側容器12の内周とをリング状のスペーサー98で繋げて内側容器14を支持するようにしたが、図16に示すように、円柱状など、複数のブロック状の支持部材110で内側容器14の外周と外側容器12の内周とを繋げて内側容器14を支持するようにしてもよい。
【0104】
[その他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0105】
上記実施形態では、内側マンドレル80、及び外側マンドレル層86を発泡スチロールで形成し、発泡スチロールを溶剤で溶かしたが、内側マンドレル80、及び外側マンドレル層86は、溶剤で溶ける材料であればよく、塩化ビニールなど、スチロール以外の樹脂で形成されていてもよく、溶剤で溶け易ければ発泡していなくてもよい。
【0106】
上記実施形態では、液化ガス容器10が筒状に形成されていたが、液化ガス容器10の形状は筒状に限らず、球形等、他の形状であってもよい。
【0107】
上記実施形態では、筒状に形成された液化ガス容器10の両端部にボス16、及び支持部材18が設けられていたが、ボス16、及び支持部材18の数は必要(使用形態)に応じて増減でき、少なくとも一つあればよく、場合によっては3つ以上設けてもよい。
【0108】
上記実施形態では、内側容器14を外側容器12に対して浮かせて支持するために環状の支持部材18をボス16に取り付けたが、支持部材18の形状は環状に限らず、また支持部材18は、内側容器14を外側容器12に対して浮かせて支持できればボス16以外の部位に取り付けられていてもよく、内側容器14に直付けされていてもよい。
【0109】
上記実施形態では、ボス16、及び支持部材18をアルミニウム、またはアルミニウム合金で構成したが、液化ガスの貯蔵に適していれば、ボス16、及び支持部材18は、他の金属材料で構成してもよく、金属材料よりも熱伝導率の低いセラミックや合成樹脂等の非金属材料で構成してもよい。
【0110】
上記実施形態では、繊維強化樹脂としてCFRP(炭素繊維強化プラスチック)を用いたが、必要に応じてGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)、AFRP(アラミド繊維強化プラスチック)等、CFRP以外の公知のものを用いてもよい。
【0111】
液化ガス容器10は、図1に示すように、鉛直の姿勢で使用することに限らず、水平で使用してもよく、傾斜させて使用してもよい。図1に示す構造の液化ガス容器10を水平または傾斜させて使用する場合には、容器内に容器の底(容器内で最も低い部分)に届く配管を配し、該配管を継手43に接続すれば、配管92を用いて容器内の液化ガスを吸引することができる。
【0112】
液化ガス容器10を水平や傾斜した姿勢で使用する場合、内側容器14に多量の液化ガスを貯蔵する場合は、図1に示すように、内側容器14の両端を外側容器12に対して両持ちで支持することが好ましい。
【0113】
上記実施形態では、内側マンドレル80を溶解した後、別工程で外側マンドレル層86を溶解したが、内側マンドレル80を外側マンドレル層86と同じ工程(上記(9)の工程)で溶解してもよく、内側マンドレル80の溶解工程、及び外側マンドレル層86の溶解工程の順番は、必要に応じて適宜変更することができる。
【0114】
離型膜82、離型膜84、及び離型膜88は、マンドレルを溶解する際に溶剤で除去されてもよい。
【0115】
上記実施形態では、ガスバリア層24が粘土層を主体とするものであったが、ガスバリア層24は、繊維強化樹脂よりもガスバリア性がよければ、合成樹脂、金属等の粘土以外の物質で形成されていてもよい。
【0116】
上記実施形態では、内側マンドレル80を用いて内側容器14を形成していたが、内側容器14は、内側マンドレル80を用いない他の方法で形成してもよい。
【0117】
上記実施形態では、外蓋66には継手76が取り付けられていたが、継手76は必要に応じて設ければよく、外側容器12と内側容器14との間の空間から空気を吸引可能する吸引口(孔)が形成されていればよい。空気を吸引した後に、外蓋66に形成した吸引口(孔)を塞ぐようしてもよい。
【0118】
液化ガス容器10は、液化水素に限らず、液化ヘリウム、液化窒素、液化酸素、LNG(液化天然ガス)等の液化水素以外の液化ガスや、液化ガス以外の各種液体を貯蔵することもできる。
【0119】
上記液化ガス容器10、液化ガス容器94は、一例として、直径及び長さが数百ミリ程度の比較的小型のものから、数メートル~数十メートルの比較的大型のものが想定される。
【0120】
また、大型の液化ガス容器94の場合、バッフル96、バッフル104、リングバッフル108、スペーサー98等を用いることが好ましい。さらに、外側容器12、内側容器14には、必要に応じて軸方向に延びる竜骨状(リブ状)の補強を設けてもよい。
【符号の説明】
【0121】
10 液化ガス容器
12 外側容器
14 内側容器
16 ボス
18 支持部材
20 真空断熱空間
24 ガスバリア層
76 継手(吸引口)
80 内側マンドレル
82 離型膜(第3の剥離膜)
84 離型膜(第1の剥離膜)
86 外側マンドレル層
88 離型膜(第2の剥離膜)
94 液化ガス容器
LG 液化水素(液化ガス)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16