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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102194
(43)【公開日】2023-07-24
(54)【発明の名称】作業装置
(51)【国際特許分類】
   E02F 3/40 20060101AFI20230714BHJP
【FI】
E02F3/40 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022002624
(22)【出願日】2022-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】000150154
【氏名又は名称】株式会社竹内製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【弁理士】
【氏名又は名称】並木 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100218095
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(72)【発明者】
【氏名】西村 綾恭
【テーマコード(参考)】
2D012
【Fターム(参考)】
2D012HA00
(57)【要約】
【課題】リンク機構の第1リンク部材と油圧シリンダとの枢結位置の切換作業を容易に行うことが可能な作業装置を提供する。
【解決手段】チルトバケット70は、アーム34の先端部に上下揺動自在に枢結されるとともに、バケットシリンダ39によりリンク機構80を介して上下揺動される。リンク機構80の第1リンク部材81は、バケットシリンダ39の先端部と枢結することが可能な複数の枢結部を有する。これらの枢結部は、第1リンク部材81がアーム34に対し基準姿勢で位置した状態において、バケットシリンダ39の基端部のアーム34との枢結軸線を中心とする同一円弧上に並ぶように配置される。
【選択図】図24
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下揺動可能なアームと、
前記アームに上下揺動自在に取付け可能な作業用のアタッチメントと、
一端部が前記アームに上下揺動可能に枢結される第1リンク部材と、
前記アタッチメントが前記アームに上下揺動自在に取り付けられた状態において、一端部が前記アタッチメントに他端部が前記第1リンク部材にそれぞれ上下揺動可能に枢結される第2リンク部材と、
基端部が前記アームに先端部が前記第1リンク部材にそれぞれ上下揺動可能に枢結され、前記アタッチメントを前記アームに対して上下揺動させるために伸縮作動するアタッチメント用油圧シリンダと、を有し、
前記第1リンク部材には前記アタッチメント用油圧シリンダの先端部を枢結することが可能な複数の枢結部が設けられ、前記第1リンク部材と前記アタッチメント用油圧シリンダとを、前記複数の枢結部の間で選択的に切り換えて枢結することが可能である作業装置であって、
前記アタッチメントが前記アームに上下揺動自在に取り付けられ、前記第2リンク部材の一端部が前記アタッチメントに他端部が前記第1リンク部材にそれぞれ上下揺動可能に枢結され、前記アタッチメント用油圧シリンダの基端部が前記アームに先端部が前記第1リンク部材の前記複数の枢結部のうちのいずれかにそれぞれ上下揺動可能に枢結された状態において、
前記アタッチメント用油圧シリンダにより前記第1リンク部材を上下揺動させ、前記第1リンク部材を前記アームに対し所定の基準姿勢で位置させることが可能であり、
前記第1リンク部材が前記アームに対し前記基準姿勢で位置した状態において、前記複数の枢結部が、前記アタッチメント用油圧シリンダの基端部の前記アームとの枢結軸線を中心とする同一円弧上に並ぶように配置されていることを特徴とする作業装置。
【請求項2】
前記第1リンク部材には、前記第1リンク部材が前記アームに対し前記基準姿勢で位置したか否かを視認するための姿勢確認用位置合せ部が設けられることを特徴とする請求項1に記載の作業装置。
【請求項3】
前記第1リンク部材が前記アームに対し前記基準姿勢で位置した状態において、前記アタッチメント用油圧シリンダの先端部と1つの前記枢結部との枢結を解除して前記アタッチメント用油圧シリンダを前記枢結軸線まわりに揺動させ、前記アタッチメント用油圧シリンダの先端部が別の前記枢結部と枢結可能な状態で対向したときに、前記第1リンク部材に対する前記アタッチメント用油圧シリンダの揺動を規制する枢結位置合せ用のストッパ部材を有することを特徴とする請求項1もしくは2に記載の作業装置。
【請求項4】
前記ストッパ部材が前記第1リンク部材に取り付け取り外し可能であることを特徴とする請求項3に記載の作業装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業用のアタッチメントを装着可能なアームを有する作業装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地面を掘削したり掘削した土砂等を移動させたりする際に使用されるショベルローダや油圧ショベル(エクスカベータ、バックホー等とも称される)などの作業用車両が広く知られている。このような作業用車両は、走行可能に構成された車両本体に上下揺動可能に設けられたアームを有する作業装置を備えており、アームの先端部に、バケットやチップブレーカ(単に「ブレーカ」とも称する)、オーガ装置などの各種作業用のアタッチメントが着脱可能に構成されている。そして、アタッチメントを作業目的に応じて着脱交換することにより、所定の作業を効率良く行えるようになっている。
【0003】
このような作業装置では、アームの先端部に上下揺動可能に装着されたアタッチメント(例えば、バケット)を、リンク機構を介して油圧シリンダにより上下揺動させるものが知られている(例えば、下記特許文献1を参照)。リンク機構は、一端部がアームに上下揺動可能に枢結された第1リンク部材と、一端部がアタッチメントに他端部が第1リンク部材にそれぞれ上下揺動可能に枢結された第2リンク部材とを有する構成のものが知られている。また、油圧シリンダは、その基端部がアームに上下揺動可能に枢結されるとともに、その先端部が2つのリンク部材の枢結軸上において、リンク機構と枢結される構成のものが知られている。
【0004】
作業装置において、油圧シリンダにより作動するアタッチメントの作動性能、例えば、アタッチメントがバケットの場合におけるバケットの揺動範囲や掘削力等を、作業状況や作業内容等に応じて切り換えたいことがある。従来、第1リンク部材に、油圧シリンダ先端部と枢結可能な枢結部を複数設け、これら複数の枢結部の間で油圧シリンダと第1リンク部材との枢結位置を選択的に切り換えることによって、バケットの作動性能を切り換えるようにした作業装置が知られている(例えば、下記特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-314981号公報
【特許文献2】特開2005-188157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような作業装置では、油圧シリンダと第1リンク部材との枢結位置の切換作業を概ね次のように行っている。まず、或る枢結位置(切換前の枢結位置)における油圧シリンダ先端部と第1リンク部材との枢結を解除する。次に、別の枢結位置(切換後の枢結位置)において油圧シリンダ先端部と第1リンク部材とを枢結するため、切換後の枢結位置に対する油圧シリンダ先端部の位置合わせを行う。この位置合わせは、油圧シリンダを伸縮作動させてその長さを調整しつつ油圧シリンダをその基端部とアームとの枢結軸線まわりに揺動させながら行う。そして、位置合わせが完了した状態で、油圧シリンダ先端部と第1リンク部材とを枢結する。
【0007】
このように作業装置において、油圧シリンダと第1リンク部材との枢結位置を切り換える場合には、油圧シリンダ先端部と切換後の枢結位置との位置合わせを行う必要がある。しかしながら、従来の作業装置では、その位置合せを、油圧シリンダ先端部と第1リンク
部材との枢結を解除した状態で、油圧シリンダを伸縮作動させてその長さを調整しながら行うようになっている。そのため枢結位置の切換作業に手間がかかるという問題がある。
【0008】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、リンク機構の第1リンク部材と油圧シリンダとの枢結位置の切換作業を容易に行うことが可能な作業装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、上下揺動可能なアームと、前記アームに上下揺動自在に取付け可能な作業用のアタッチメント(例えば、実施形態におけるチルトバケット70)と、一端部が前記アームに上下揺動可能に枢結される第1リンク部材と、前記アタッチメントが前記アームに上下揺動自在に取り付けられた状態において、一端部が前記アタッチメントに他端部が前記第1リンク部材にそれぞれ上下揺動可能に枢結される第2リンク部材と、基端部が前記アームに先端部が前記第1リンク部材にそれぞれ上下揺動可能に枢結され、前記アタッチメントを前記アームに対して上下揺動させるために伸縮作動するアタッチメント用油圧シリンダ(例えば、実施形態におけるバケットシリンダ39)と、を有し、前記第1リンク部材には前記アタッチメント用油圧シリンダの先端部を枢結することが可能な複数の枢結部(例えば、実施形態におけるピン枢結孔81d,81e)が設けられ、前記第1リンク部材と前記アタッチメント用油圧シリンダとを、前記複数の枢結部の間で選択的に切り換えて枢結することが可能である作業装置(例えば、実施形態におけるショベル装置30)である。その上で、本発明に係る作業装置は、前記アタッチメントが前記アームに上下揺動自在に取り付けられ、前記第2リンク部材の一端部が前記アタッチメントに他端部が前記第1リンク部材にそれぞれ上下揺動可能に枢結され、前記アタッチメント用油圧シリンダの基端部が前記アームに先端部が前記第1リンク部材の前記複数の枢結部のうちのいずれかにそれぞれ上下揺動可能に枢結された状態において、前記アタッチメント用油圧シリンダにより前記第1リンク部材を上下揺動させ、前記第1リンク部材を前記アームに対し所定の基準姿勢で位置させることが可能であり、前記第1リンク部材が前記アームに対し前記基準姿勢で位置した状態において、前記複数の枢結部が、前記アタッチメント用油圧シリンダの基端部の前記アームとの枢結軸線を中心とする同一円弧上に並ぶように配置されていることを特徴とする。
【0010】
上記作業装置において、前記第1リンク部材には、前記第1リンク部材が前記アームに対し前記基準姿勢で位置したか否かを視認するための姿勢確認用位置合せ部が設けられることが好ましい。
【0011】
上記作業装置において、前記第1リンク部材が前記アームに対し前記基準姿勢で位置した状態において、前記アタッチメント用油圧シリンダの先端部と1つの前記枢結部との枢結を解除して前記アタッチメント用油圧シリンダを前記枢結軸線まわりに揺動させ、前記アタッチメント用油圧シリンダの先端部が別の前記枢結部と枢結可能な状態で対向したときに、前記第1リンク部材に対する前記アタッチメント用油圧シリンダの揺動を規制する枢結位置合せ用のストッパ部材を有することが好ましい。
【0012】
上記作業装置において、前記ストッパ部材が前記第1リンク部材に取り付け取り外し可能であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
上記のように本発明に係る作業装置においては、第1リンク部材がアームに対し基準姿勢で位置した状態において、第1リンク部材の複数の枢結部が、アタッチメント用油圧シリンダの基端部のアームとの枢結軸線を中心とする同一円弧上に並ぶように配置されている。そのため、第1リンク部材がアームに対し基準姿勢で位置した状態において、アタッ
チメント用油圧シリンダの先端部と1つの枢結部との枢結を解除し、アタッチメント用油圧シリンダをアームとの枢結軸線まわりに揺動させることにより、アタッチメント用油圧シリンダの長さを調整することなく、アタッチメント用油圧シリンダの先端部と別の枢結部との位置合わせを行うことができる。したがって、本発明に係る作業装置によれば、アタッチメント用油圧シリンダと第1リンク部材との枢結位置の切換作業を容易に行うことが可能となる。
【0014】
上記の本発明に係る作業装置において、第1リンク部材に、第1リンク部材がアームに対し基準姿勢で位置したか否かを視認するための姿勢確認用位置合せ部が設けられることで、第1リンク部材をアームに対し基準姿勢で位置させることが容易に可能となる。
【0015】
上記の本発明に係る作業装置において、第1リンク部材がアームに対し基準姿勢で位置した状態において、アタッチメント用油圧シリンダの先端部と1つの枢結部との枢結を解除してアタッチメント用油圧シリンダをアームとの枢結軸線まわりに揺動させ、アタッチメント用油圧シリンダの先端部が別の枢結部と枢結可能な状態で対向したときに、第1リンク部材に対するアタッチメント用油圧シリンダの揺動を規制する枢結位置合せ用のストッパ部材を有することで、アタッチメント用油圧シリンダの先端部と別の枢結部との位置合わせを容易に行うことが可能となる。
【0016】
上記の本発明に係る作業装置において、ストッパ部材が第1リンク部材に取り付け取り外し可能であることで、アタッチメント用油圧シリンダと第1リンク部材との枢結位置の切換作業を行うときのみストッパ部材を第1リンク部材に取り付け、切換作業を行わないときはストッパ部材を第1リンク部材から取り外すことができる。そのため、作業時等においてはストッパ部材を第1リンク部材から取り外すことによって、アタッチメント用油圧シリンダの揺動範囲がストッパ部材により制限されることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】ショベル装置を備えた油圧ショベルの斜視図である。
図2】上記油圧ショベルを車両左側から見た側面図である。
図3】上記油圧ショベルの平面図である。
図4】上記油圧ショベルの背面図である。
図5】上記ショベル装置の油圧制御システムの構成を示すブロック図である。
図6】上記ショベル装置のアームおよびバケットシリンダと上記アームに枢結されたチルトバケットとを連結するリンク機構の斜視図である。
図7】上記リンク機構の別の斜視図である。
図8】上記リンク機構の構成を示す分解斜視図である。
図9】上記リンク機構の左第1リンク部材の斜視図である。
図10】上記左第1リンク部材を上記アーム側から見た側面図である。
図11】上記左第1リンク部材を車両前側から見た正面図である。
図12】上記左第1リンク部材を車両左側から見た側面図である。
図13】上記リンク機構の右第1リンク部材の斜視図である。
図14】上記右第1リンク部材を車両右側から見た側面図である。
図15】上記右第1リンク部材を車両前側から見た正面図である。
図16】上記右第1リンク部材を上記アーム側から見た側面図である。
図17】上記リンク機構の第2リンク部材の斜視図である。
図18】上記ショベル装置のバケットシリンダの斜視図である。
図19】上記リンク機構が第1枢結状態にあるときの上記チルトバケットの揺動範囲を示す図である。
図20】上記リンク機構が第2枢結状態にあるときの上記チルトバケットの揺動範囲を示す図である。
図21】上記リンク機構の第1枢結状態から第2枢結状態への枢結位置切換作業を行う前の上記油圧ショベルの状態を例示する図である。
図22】上枢結位置切換作業における最初の手順を例示する図である。
図23】上記枢結位置切換作業における次の手順を例示する図である。
図24】上記枢結位置切換作業におけるさらに次の手順を例示する図である。
図25】上記枢結位置切換作業におけるさらに次の手順を例示する図である。
図26】上記枢結位置切換作業におけるさらに次の手順を例示する図である。
図27】上記枢結位置切換作業におけるさらに次の手順を例示する図である。
図28】上記枢結位置切換作業におけるさらに次の手順を例示する図である。
図29】上記枢結位置切換作業が終了した際の上記リンク機構の状態を例示する図である。
図30】上記枢結位置切換作業が終了した際の上記ショベル装置の状態を例示する図である。
図31】上記枢結位置切換作業終了後の上記油圧ショベルの状態を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。本実施形態では、本発明に係る作業装置の一例として、ホイール式の油圧ショベル(エクスカベータ)に搭載されたショベル装置30について説明する。まず、油圧ショベル1の全体構成について図1図4を参照して説明する。
【0019】
油圧ショベル1は、図1図4に示すように、走行可能に構成された走行体10と、走行体10の上部に水平旋回可能に設けられた旋回体20と、旋回体20の前部に設けられたショベル装置30とを有して構成される。
【0020】
走行体10は、操舵輪となるダブルタイヤ式の左右の前輪12,12および駆動輪となるダブルタイヤ式の左右の後輪13,13を、走行体フレーム11の左右両側にそれぞれ備えて構成されている。走行体フレーム11の下部には、後輪13,13をドライブシャフト14等の動力伝達機構を介して回転駆動する走行モータ(図示略)と、前輪12,12を操舵する操舵シリンダ(図示略)が設けられている。走行体10は、走行モータの回転作動と、操舵シリンダの伸縮作動をそれぞれ制御することにより任意の方向および速度で走行可能である。走行体フレーム11の前部には、ブレード16が上下揺動自在に設けられている。ブレード16は、走行体フレーム11との間に跨設されたブレードシリンダ17を伸縮作動させることにより上下揺動可能に構成されている。走行体フレーム11の後部には、左右のアウトリガ18,18が上下揺動自在に設けられている。アウトリガ18,18は、走行体フレーム11との間に跨設された左右のアウトリガシリンダ19,19を伸縮作動させることにより上下揺動可能に構成されている。
【0021】
走行体フレーム11の上部中央には旋回機構3が設けられている。旋回機構3は、図示を省略するが、走行体フレーム11に固定された内輪と、旋回体20に固定された外輪と、旋回体20に設けられた旋回モータと、旋回体20と走行体10との間での作動油供給を可能とするためのロータリーセンタージョイントとを有している。旋回体20は、旋回機構3を介して走行体フレーム11に水平旋回自在に設けられ、旋回モータを正転または逆転作動させることにより、走行体10に対して左右方向に旋回可能に構成されている。
【0022】
旋回体20は、走行体フレーム11に旋回機構3を介して水平旋回自在に設けられる旋回体フレーム21と、旋回体フレーム21上に設けられるオペレータキャビン25とを有している。旋回体フレーム21の前部には、前方に突出する旋回体側ブラケット22が設けられている。また、旋回体20には、オペレータキャビン25の後側および右側の位置
に、後述するエンジン(図5に「エンジン61」として図示)などを搭載するための搭載室(図示略)が設けられている。この搭載室を形成する後側壁部には、曲面形状のカウンターウエイト27と、縦開き開閉可能な搭載室カバー28とが設けられている。
【0023】
ショベル装置30は、旋回体側ブラケット22に上下軸を中心に左右方向に揺動可能に設けられたショベル側ブラケット31と、ショベル側ブラケット31の上端部に第1枢結ピンP1を介して上下揺動(起伏動)可能に枢結された第1ブーム32と、第1ブーム32の先端部に第2枢結ピンP2を介して上下揺動(屈伸動)可能に枢結された第2ブーム33と、第2ブーム33の先端部に第3枢結ピンP3を介して上下揺動(屈伸動)可能に枢結されたアーム34とを有している。そして、作業用のアタッチメントの一例としてのチルトバケット70が、アーム34の先端部に第4枢結ピンP4を介して上下揺動可能に装着されている。
【0024】
さらに、ショベル装置30は、旋回体フレーム21とショベル側ブラケット31との間に跨設されたスイングシリンダ35と、ショベル側ブラケット31と第1ブーム32との間に跨設された第1ブームシリンダ36と、第1ブーム32と第2ブーム33との間に跨設された左右一対の第2ブームシリンダ37,37と、第2ブーム33とアーム34との間に跨設されたアームシリンダ38と、基端部(シリンダ側端部)が第5枢結ピンP5を介して上下揺動可能にアーム34に枢結されたバケットシリンダ39と、チルトバケット70がアーム34の先端部に上下揺動可能に装着された状態で、アーム34とバケットシリンダ39の先端部とチルトバケット70とを繋ぐように設けられるリンク機構80(詳細後述)とを有している。
【0025】
ショベル側ブラケット31は、スイングシリンダ35を伸縮作動させることにより旋回体側ブラケット22(旋回体フレーム21)に対して左右方向に揺動可能に構成されている。第1ブーム32は、第1ブームシリンダ36を伸縮作動させることによりショベル側ブラケット31に対して上下揺動可能に構成されている。第2ブーム33は、左右の第2ブームシリンダ37,37を伸縮作動させることにより第1ブーム32に対して上下揺動可能に構成されている。アーム34は、アームシリンダ38を伸縮作動させることにより第2ブーム33に対して上下揺動可能に構成されている。チルトバケット70は、バケットシリンダ39を伸縮作動させることによりリンク機構80を介してアーム34に対して上下揺動可能に構成されている。
【0026】
チルトバケット70は、バケット本体71と、バケット本体71を左右方向に揺動可能に保持するバケットブラケット72と、バケット本体71とバケットブラケット72との間に設けられバケット本体71をバケットブラケット72に対して左右方向に揺動させるチルト用油圧アクチュエータ73とを有している。アーム34およびリンク機構80の先端部には、チルトバケット70に替えて、通常のバケット、ブレーカ、圧砕機、カッター、オーガ装置等の各種アタッチメントを上下揺動可能に取り付けることが可能になっている。これらのアタッチメントを装着した場合に、当該アタッチメントを構成する油圧アクチュエータ(チルト用油圧アクチュエータ73も含まれる)に作動油を供給するための油圧ホースを接続可能な複数の接続ポート(図示略)が、アーム34の上面先端部に配設されている。
【0027】
オペレータキャビン25は、略矩形箱状に形成されて内部にオペレータが搭乗可能な操作室を形成し、左側部に横開き開閉可能なキャビンドア26が設けられている。オペレータキャビン25には、図示を省略するが、オペレータが前方側を向いて着座可能なオペレータシートと、走行体10の走行操作(後輪13,13の回転操作)を行う走行操作装置と、走行体10の舵取り操作(前輪12,12の操舵)を行う操舵装置と、ブレード16の作動操作、アウトリガ18,18の作動操作、旋回体20の旋回操作およびショベル装
置30の作動操作を行う作業操作装置(図5に「作業操作装置41」として図示)と、油圧ショベル1における各種の車両情報を表示するディスプレイ装置と、各種の操作スイッチなどが設けられている。
【0028】
走行操作装置は、走行体10の走行操作を行うためにオペレータにより操作される走行操作部材(例えば、後輪13,13の回転操作用の操作ペダルや操作レバー)を備えており、操舵装置は、前輪12,12を操舵するためにオペレータにより操作される操舵部材(例えば、ステアリングホイール)を備えている。作業操作装置は、ブレード16の作動操作、左右のアウトリガ18,18の作動操作、旋回体20の旋回操作およびショベル装置30の作動操作を行うためにオペレータにより操作される作業操作部材(例えば、ブレード16の作動操作用の操作レバー、左右のアウトリガ18,18の作動操作用の操作レバー、旋回体20の旋回操作用の操作レバー、ショベル装置30の作動操作用の操作レバー)を備えている。
【0029】
次に、図5を追加参照して、ショベル装置30を作動させるための油圧制御システム(「ショベル用油圧制御システム」と称する)について説明する。図5は、油圧ショベル1における各油圧アクチュエータのうち、ショベル装置30に関連するスイングシリンダ35、第1ブームシリンダ36、第2ブームシリンダ37,37、アームシリンダ38およびバケットシリンダ39について、それらの油圧制御に関連する構成を概略的に示している。なお、説明の便宜上、ショベル装置30におけるこれらの油圧アクチュエータのことを、ショベル用油圧アクチュエータとも称する。
【0030】
図5に示すように、ショベル用油圧制御システムは、エンジン61と、エンジン61により駆動される作業油圧ポンプ62およびパイロット油圧ポンプ63と、作動油を貯留する作動油タンク64と、作業油圧ポンプ62から吐出されて各ショベル用油圧アクチュエータに供給する作動油の供給方向および供給量を制御する制御バルブユニット65とを有している。また、ショベル用油圧制御システムは、作業操作装置41およびコントローラ50を有して構成されている。
【0031】
制御バルブユニット65は、スイングシリンダ35、第1ブームシリンダ36、第2ブームシリンダ37,37、アームシリンダ38およびバケットシリンダ39のそれぞれに対応した制御バルブを有している。これらの制御バルブのうち、第1ブームシリンダ36、アームシリンダ38およびバケットシリンダ39のそれぞれに対応する制御バルブは、パイロット油圧ポンプ63から作業操作装置41を介して供給されるパイロット油によりスプールの動きが操作されるパイロット操作切換弁である。一方、スイングシリンダ35および第2ブームシリンダ37,37のそれぞれに対応する制御バルブは、コントローラ50からの操作信号により電磁操作されるパイロット弁と、パイロット油圧ポンプ63から作業操作装置41およびパイロット弁を介して供給されるパイロット油によりスプールの動きが操作される主弁とから構成される電磁パイロット切換弁である。
【0032】
作業操作装置41は、パイロット油圧ポンプ63から供給されるパイロット油を、作業操作部材(ショベル装置30の作動操作用の操作レバー)の操作量に応じて、制御バルブユニット65における対応する制御バルブに供給する。また、作業操作装置41は、スイングシリンダ35または第2ブームシリンダ37,37が作動される場合には、作業操作部材の操作量に応じた電気信号をコントローラ50に出力する。コントローラ50は、作業操作装置41からの入力信号に応じて、制御バルブユニット65における対応する制御バルブ(パイロット弁)に作動制御信号を出力し、パイロット弁の動きを制御する。
【0033】
このようにショベル用油圧制御システムでは、作業操作装置41の作業操作部材の操作状態に応じて制御バルブユニット65に供給されるパイロット油によって、またはそのパ
イロット油とコントローラ50から出力される作動制御信号とによって、制御バルブユニット65における対応する制御バルブが作動制御される。そして、この制御バルブの作動制御により、作業油圧ポンプ62から制御バルブユニット65を介して各ショベル用油圧アクチュエータに供給される作動油の方向および流量が制御され、対応するショベル用油圧アクチュエータが伸縮作動し、これによりショベル装置30が作動するようになっている。
【0034】
次に、図6図18を追加参照して、リンク機構80の詳細構成について説明する。図6図8に示すように、リンク機構80は、左右一対の左第1リンク部材81Aおよび右第1リンク部材81Bと、第2リンク部材82とを有して構成される。以下、これらのリンク部材81A,81B,82の構成について説明するが、それに先立ち、バケットシリンダ39の構成について簡単に説明する。なお、左第1リンク部材81Aと右第1リンク部材81Bとを併せて第1リンク部材81(図6および図7を参照)と称する。
【0035】
バケットシリンダ39は、図6および図7に示すように、シリンダチューブ39aとピストンロッド39bとを有して構成される。図18に示すように、シリンダチューブ39aの基端部には、円筒状のピン受部39cが設けられており、このピン受部39cが有するピン枢結孔39dに挿通される第5枢結ピンP5(図6および図7を参照)により上下揺動可能にアーム34に枢結される。図18に示すように、ピストンロッド39bの先端部には、円筒状のピン受部39eが設けられており、このピン受部39eが有するピン枢結孔39fに挿通される第6枢結ピンP6(図6図8を参照)により上下揺動可能に第1リンク部材81(左第1リンク部材81Aおよび右第1リンク部材81B)に枢結される。
【0036】
第2リンク部材82は、図17に示すように、台形状に形成された基部プレート82aと、基部プレート82aの一端部(バケットブラケット72寄りの端部)に設けられる円筒状のピン受け部82cと、基部プレート82aの他端部(第1リンク部材81寄りの端部)に設けられた同じく円筒状のピン受け部82eとを有して構成される。第2リンク部材82は、ピン受け部82cが有するピン枢結孔82dに挿入される第7枢結ピンP7(図6図8を参照)により一端部が上下揺動可能にバケットブラケット72に枢結される。また、第2リンク部材82は、ピン受け部82eが有するピン枢結孔82fに挿入される第8枢結ピンP8(図6図8を参照)により他端部が上下揺動可能に左第1リンク部材81Aおよび右第1リンク部材81Bに枢結される。
【0037】
左第1リンク部材81Aと右第1リンク部材81Bは、左右方向に互いに略鏡像対称となる構成を有しており、各構成要素の機能も略共通している。そこで、左第1リンク部材81Aおよび右第1リンク部材81Bについては、左第1リンク部材81Aを中心に説明し、右第1リンク部材81Bについては補足的に説明する。なお、左第1リンク部材81Aおよび右第1リンク部材81Bにおいて機能的に共通する構成要素については、共通の符号を付している。
【0038】
図9図12に示すように、左第1リンク部材81Aは、一端側(基端側)が幅狭く他端側(先端側)が幅広い形状を有する基部プレート81aを主体として構成されている。基部プレート81aの基端部には、左右方向(基部プレート81aの板厚方向)に貫通する1個のピン枢結孔81bが形成されており、基部プレート81aの先端部には、同じく左右方向に貫通する3個のピン枢結孔81c,81d,81eが形成されている。図8に示すように、ピン枢結孔81bには第9枢結ピンP9が挿通され、ピン枢結孔81cには第8枢結ピンP8が挿通されるようになっている。また、ピン枢結孔81d,81eには、これらのいずれかが選択されて第6枢結ピンP6が挿通されるようになっている。なお、ピン枢結孔81d,81eは所定の位置条件を満足するように配置されている。この位
置条件については詳細後述する。
【0039】
図9に示すように、基部プレート81aの内側面(アーム34の左側面と対向する面)には、ピン枢結孔81cの縁に沿うように円筒状に形成されたピンガイド部81fと、ピン枢結孔81d,81eの縁に沿うように2個の円筒が繋がったような8の字状に形成されたピンガイド部81gとが設けられている。基部プレート81aの外側面(基部プレート81aの内側面の反対側の面)には、図8に示すように、ピン枢結孔81b,81c,81d,81eの各縁に沿うようにそれぞれ円筒状に形成されたピン留め部81h,81i,81j,81kが設けられている。そして、各ピン留め部81h,81i,81j,81kには、ピン枢結孔81b,81c,81d,81eに挿通された枢結ピンが抜け出るのを防止するための抜け止めピン(図示略)を差し込む抜け止めピン孔81m(図11を参照)がそれぞれ設けられている。
【0040】
図9に示すように、左第1リンク部材81Aは、基部プレート81aの先端部に、左右方向に貫通する2個のストッパ挿通孔81p,81qを有している。このストッパ挿通孔81p,81qは、後述の枢結位置切換作業を行う際に、ストッパ部材83(図8を参照)が挿通されるように構成されている。ストッパ部材83は、図8に示すように、互いに平行に延びる2本のストッパ腕部83a,83bと、ストッパ腕部83a,83bの基端部どうしを繋ぐ連結部83cとにより、全体としてU字状に形成されている。ストッパ部材83は、ストッパ腕部83a,83bをストッパ挿通孔81p,81qにそれぞれ挿通して使用される。具体的には、ストッパ腕部83aをストッパ挿通孔81pに挿入し,ストッパ腕部83bをストッパ挿通孔81qに挿入して使用することも、ストッパ腕部83aをストッパ挿通孔81qに挿入し,ストッパ腕部83bをストッパ挿通孔81pに挿入して使用することも可能である。以下では説明の便宜上、ストッパ腕部83aをストッパ挿通孔81pに挿入し、ストッパ腕部83bをストッパ挿通孔81qに挿入して使用することとする。また、ストッパ部材83は、後述の枢結位置切換作業を行う際のみ使用され、それ以外のときはオペレータキャビン25内などの所定の場所に収容される。
【0041】
図10および図12に示すように、左第1リンク部材81Aは、基部プレート81aの基端側の一側縁部が直線状に形成され、この直線状に形成された部分が、姿勢確認用位置合せ部81rとして構成されている。この姿勢確認用位置合せ部81rは、後述の枢結位置切換作業を行う際に、左第1リンク部材81A(第1リンク部材81)がアーム34に対し基準姿勢で位置しているか否かを視認できるように設けられている。基準姿勢とは、第1リンク部材81およびアーム34を基部プレート81aの外側面と垂直な方向(左右方向)から見た状態において、姿勢確認用位置合せ部81rがアーム34の下面34a(図7を参照)と平行となったときの、アーム34に対する第1リンク部材81の姿勢をいう。
【0042】
図13図16に示すように、右第1リンク部材81Bは、左第1リンク部材81Aに対し左右方向に略鏡像対称となる構成を有している。すなわち、右第1リンク部材81Bは、左第1リンク部材81Aの基部プレート81aと鏡像対称の基部プレート81aを主体に構成され、基部プレート81aの基端部には1個のピン枢結孔81bが形成されており、基部プレート81aの先端部には3個のピン枢結孔81c,81d,81eと2個のストッパ挿通孔81p,81qが形成されている。また、図16に示すように、基部プレート81aの内側面(アーム34の右側面と対向する面)には、ピン枢結孔81cの縁に沿うように形成された円筒状のピンガイド部81fと、ピン枢結孔81d,81eのそれぞれの縁に沿うように形成された8の字状のピンガイド部81gとが設けられている。さらに、右第1リンク部材81Bの基部プレート81aの基端側の一側縁部には、直線状に形成された姿勢確認用位置合せ部81rが設けられている。
【0043】
一方、左第1リンク部材81Aでは、基部プレート81aの外側面に円筒状のピン留め部81h,81i,81j,81k(図8を参照)が設けられているのに対し、右第1リンク部材81Bでは、基部プレート81aの外側面にこのような円筒状のピン留め部は設けられていない。この点が、右第1リンク部材81Bと左第1リンク部材81Aとの主な構成の違いとなっている。
【0044】
このように構成された第1リンク部材81(左第1リンク部材81Aおよび右第1リンク部材81B)は、その基端部が第9枢結ピンP9を介してアーム34に上下揺動可能に枢結される。詳細には図8に示すように、アーム34には左右方向に貫通するピン枢結孔34bが形成されており、第9枢結ピンP9は、アーム34の右側面側に配置される右第1リンク部材81Bのピン枢結孔81b、アーム34のピン枢結孔34b、およびアーム34の左側面側に配置される左第1リンク部材81Aのピン枢結孔81bに挿通され、第1リンク部材81をアーム34に枢結する。
【0045】
また、第1リンク部材81は、その先端部が第8枢結ピンP8を介して第2リンク部材82に上下揺動可能に枢結される。詳細には図8に示すように、第8枢結ピンP8は、右第1リンク部材81Bのピン枢結孔81c、第2リンク部材82のピン受け部82eが有するピン枢結孔82f、および左第1リンク部材81Aのピン枢結孔81cに挿通され、第1リンク部材81と第2リンク部材82とを枢結する。
【0046】
さらに、第1リンク部材81は、その先端部が第6枢結ピンP6を介してバケットシリンダ39の先端部に上下揺動可能に枢結される。詳細には図8に示すように、第6枢結ピンP6は、右第1リンク部材81Bのピン枢結孔81d、バケットシリンダ39の先端部にあるピン受部39eのピン枢結孔39f、および左第1リンク部材81Aのピン枢結孔81dに挿通され、第1リンク部材81とバケットシリンダ39の先端部とを枢結することが可能となっている。一方、第6枢結ピンP6は、右第1リンク部材81Bのピン枢結孔81e、バケットシリンダ39の先端部にあるピン受部39eのピン枢結孔39f、および左第1リンク部材81Aのピン枢結孔81eに挿通されて、第1リンク部材81とバケットシリンダ39の先端部とを枢結することも可能となっている。
【0047】
このようにリンク機構80は、バケットシリンダ39の先端部に枢結される第1リンク部材81(左第1リンク部材81Aおよび右第1リンク部材81B)の枢結位置を、第1リンク部材81のピン枢結孔81dの位置とピン枢結孔81eの位置との間で選択的に切り換えることが可能となっている。以下、第1リンク部材81がピン枢結孔81dを介してバケットシリンダ39の先端部に枢結されたときのリンク機構80の枢結状態を第1枢結状態と称し、第1リンク部材81がピン枢結孔81eを介してバケットシリンダ39の先端部に枢結されたときのリンク機構80の枢結状態を第2枢結状態と称する。また、第1枢結状態と第2枢結状態との間で、バケットシリンダ39の先端部と第1リンク部材81との枢結位置を切り換えることを枢結位置切換えと称し、枢結位置切換えを行う作業のことを枢結位置切換作業と称する。
【0048】
ここで、第1枢結状態と第2枢結状態との間で、ショベル装置30におけるチルトバケット70の作動性能がどのように相違するのかについて、図19および図20を追加参照して説明する。図19は、リンク機構80が第1枢結状態にあるときのチルトバケット70の第4枢結ピンP4まわりの揺動範囲を示し、図20は、リンク機構80が第2枢結状態にあるときのチルトバケット70の第4枢結ピンP4まわりの揺動範囲を示している。
【0049】
リンク機構80が第1枢結状態にあるときにバケットシリンダ39が伸縮作動すると、その伸縮作動におけるバケットシリンダ39からの出力が、第1リンク部材81および第2リンク部材82を介してチルトバケット70に第4枢結ピンP4まわりのトルクとして
伝達され、チルトバケット70が第4枢結ピンP4まわりに、図19に示す揺動範囲内において、アーム34に対し上下方向に揺動する。
【0050】
また、リンク機構80が第2枢結状態にあるときにバケットシリンダ39が伸縮作動すると、その伸縮作動におけるバケットシリンダ39からの出力が、同じく第1リンク部材81および第2リンク部材82を介してチルトバケット70に第4枢結ピンP4まわりのトルクとして伝達され、チルトバケット70が第4枢結ピンP4まわりに、図20に示す揺動範囲内において、アーム34に対し上下方向に揺動する。
【0051】
このように、ショベル装置30では、リンク機構80が第1枢結状態にあるとき(バケットシリンダ39の先端部がピン枢結孔82dにおいて第1リンク部材81と枢結されているとき)の方が、リンク機構80が第2枢結状態にあるとき(バケットシリンダ39の先端部がピン枢結孔82eにおいて第1リンク部材81と枢結されているとき)よりもバケットシリンダ39の伸縮作動に応じたチルトバケット70の揺動範囲が広くなるように構成されている。一方、ショベル装置30では、第2枢結状態のときの方が、第1枢結状態のときよりも、バケットシリンダ39を伸長させる際にチルトバケット70に伝達されるトルクが増大し、それによりチルトバケット70による掘削力が増大するように構成されている。
【0052】
次に、図21図31を追加参照して、枢結位置切換作業の手順例について説明する。以下では、リンク機構80の枢結状態を、第1枢結状態から第2枢結状態に切り換える場合の作業手順について説明する。
【0053】
図21は、リンク機構80が第1枢結状態にあるときの油圧ショベル1(ショベル装置30)の状態例を示している。本例では、旋回体20が前方を向き、走行体10が水平な路面GS上に停止している状態を示している。また、本例では、ショベル装置30は、全体として前方を向き、チルトバケット70が路面GSから離れた状態で維持されている。
【0054】
本例の枢結位置切換作業では、図21に示す状態から、バケットシリンダ39を伸縮作動させ、リンク機構80の第1リンク部材81がアーム34に対し基準姿勢で位置するように調整する。すなわち、バケットシリンダ39の伸縮作動により、第1リンク部材81を第9枢結ピンP9まわりにアーム34に対し上下揺動させ、第1リンク部材81の姿勢確認用位置合せ部81rがアーム34の下面34aと平行となるように、アーム34に対する第1リンク部材81の姿勢を調整する(図22を参照)。このときの第1リンク部材81の姿勢調整に伴い、チルトバケット70が第4枢結ピンP4まわりにアーム34に対し上下揺動する。なお、この姿勢調整は、例えば、作業者(オペレータ)が、バケットシリンダ39の伸縮作動に伴う第1リンク部材81の姿勢の状態を視認しつつ行ってもよく、また、オペレータ以外の作業者が、バケットシリンダ39の伸縮作動に伴う第1リンク部材81の姿勢の状態を視認しつつ、それをオペレータに伝えながら行ってもよい。
【0055】
次に、図22に示す状態から、アーム34に対する第1リンク部材81の姿勢を維持したまま(すなわち、バケットシリンダ39は伸縮作動させず)、第1ブームシリンダ36、第2ブームシリンダ37,37およびアームシリンダ38を伸縮作動させる。そして、その伸縮作動により、第1ブーム32、第2ブーム33およびアーム34を上下揺動させて、チルトバケット70(バケット本体71)を、その底面が路面GSに平行な状態で路面GSに近づくように移動させ(図23を参照)、さらに、当該底面を路面GSに当接させる(図24を参照)。すなわち、第1ブームシリンダ36の伸縮作動により、第1ブーム32を第1枢結ピンP1まわりにショベル側ブラケット31に対し上下揺動させ、第2ブームシリンダ37,37の伸縮作動により、第2ブーム33を第2枢結ピンP2まわりに第1ブーム32に対し上下揺動させ、アームシリンダ38の伸縮作動により、アーム3
4を第3枢結ピンP3まわりに第2ブーム33に対し上下揺動させる。そして、これにより、チルトバケット70の底面が路面GSに対し平行な状態で路面GSに当接するようにチルトバケット70を移動させる。このようにチルトバケット70の底面を路面GSに当接させることにより、以下の手順において、バケットシリンダ39と第1リンク部材81との枢結を解除してもチルトバケット70が路面GSに支持されているため上下揺動しないので、第1リンク部材81を基準姿勢のまま維持することができる。
【0056】
次に、図24に示す状態において、第1リンク部材81にストッパ部材83を取り付ける(図24および図25を参照)。先述したように説明の便宜上、ストッパ部材83は、ストッパ腕部83aを第1リンク部材81のストッパ挿通孔81p(図8を参照)に挿入し、ストッパ腕部83bを第1リンク部材81のストッパ挿通孔81q(図8を参照)に挿入して第1リンク部材81に取り付けるとする。
【0057】
第1リンク部材81にストッパ部材83を取り付けた後、第6枢結ピンP6を第1リンク部材81(左第1リンク部材81Aおよび右第1リンク部材81B)のピン枢結孔81dおよびバケットシリンダ39のピン受部39eのピン枢結孔39f(図8を参照)から抜脱する(図25を参照)。これにより、第1リンク部材81とバケットシリンダ39の先端部との枢結が解除される。第1リンク部材81とバケットシリンダ39との枢結が解除されると、バケットシリンダ39は、伸縮作動させなくても第5枢結ピンP5(図24を参照)まわりに上下揺動させることが可能な状態となる。
【0058】
第1リンク部材81とバケットシリンダ39の先端部との枢結を解除した後、バケットシリンダ39を第5枢結ピンP5(図24を参照)まわりに上下揺動させ、バケットシリンダ39の先端部(ピン受部39e)をストッパ部材83のストッパ腕部83aに当接させる。なお、このときのバケットシリンダ39の上下揺動は、作業者が手作業で行う。また、このとき、バケットシリンダ39は伸縮作動させずバケットシリンダ39の長さが変わらないようにする。
【0059】
先に略述したように、第1リンク部材81(左第1リンク部材81Aおよび右第1リンク部材81B)のピン枢結孔81d,81eは、所定の位置条件を満足するように配置されている。その位置条件とは、バケットシリンダ39を伸縮作動させて第1リンク部材81をアーム34に対し基準姿勢で位置させた状態において、ピン枢結孔81dとピン枢結孔81eが、バケットシリンダ39の基端部(ピン受部39c)のアーム34との枢結軸線(ピン枢結孔39dの中心軸線)を中心とする同一円弧上に並ぶというものである。なお、この同一円弧の半径寸法は、第1リンク部材81をアーム34に対し基準姿勢で位置させた状態におけるバケットシリンダ39の両端部の枢結軸線間距離(ピン受部39cのピン枢結孔39dの中心軸線とピン受部39eのピン枢結孔39fの中心軸線との間の距離)に等しい。
【0060】
このように第1リンク部材81のピン枢結孔81d,81eが上記のような同一円弧上に配置されているので、上記のようにピン枢結孔81dにおける第1リンク部材81との枢結を解除したバケットシリンダ39を、第5枢結ピンP5まわりに上下揺動させることにより、バケットシリンダ39の長さ調整を行うことなく、バケットシリンダ39の先端部(ピン受部39eのピン枢結孔39f)と第1リンク部材81のピン枢結孔81eとの位置合わせ(ピン枢結孔39f,81eが互いに対向し、それぞれの中心軸線が一致した状態となるようにする)を行うことができる。
【0061】
また、この位置合わせは、上記のようにバケットシリンダ39を第5枢結ピンP5まわりに上下揺動させ、バケットシリンダ39のピン受部39eをストッパ部材83のストッパ腕部83aに当接させることによって容易に行えるようになっている。具体的には、ス
トッパ部材83のストッパ腕部83aは、バケットシリンダ39を上下揺動させた際に、ピン受部39eのピン枢結孔39fが第1リンク部材81のピン枢結孔81eと対向した状態となったとき、すなわち、両ピン枢結孔39f,81eの位置が整合した状態となったときに、ピン受部39eと当接してバケットシリンダ39の上下揺動を規制するように構成されている。なお、ストッパ部材83のもう一方のストッパ腕部83bは、バケットシリンダ39を上下揺動させた際に、ピン受部39eのピン枢結孔39fが第1リンク部材81のピン枢結孔81dと対向した状態となったとき、すなわち、両ピン枢結孔39f,81dの位置が整合した状態となったときに、バケットシリンダ39のピストンロッド39bと当接してバケットシリンダ39の上下揺動を規制するように構成されている。
【0062】
上記のようにバケットシリンダ39のピン受部39eのピン枢結孔39fと第1リンク部材81のピン枢結孔81eとの位置合わせを行った後、第6枢結ピンP6を第1リンク部材81のピン枢結孔81eおよびバケットシリンダ39のピン受部39eのピン枢結孔39fに挿通する(図27を参照)。これにより、第1リンク部材81とバケットシリンダ39の先端部とが、第1リンク部材81のピン枢結孔81eを介して枢結される。
【0063】
第6枢結ピンP6によりバケットシリンダ39が、ピン枢結孔81eを介して第1リンク部材81に枢結された後、第1リンク部材81からストッパ部材83を取り外す(図28図30を参照)。これにより、リンク機構80の枢結状態を、第1枢結状態から第2枢結状態へ切り換える場合の枢結位置切換作業が完了する。切り換えが完了した油圧ショベル1は、ショベル装置30を作動させてチルトバケット70による掘削作業等を行うことが可能となる(図31を参照)。以上、リンク機構80の枢結状態を、第1枢結状態から第2枢結状態に切り換える場合の枢結位置切換作業の手順例について説明した。リンク機構80の枢結状態を、第2枢結状態から第1枢結状態に切り換える場合の枢結位置切換作業も上述した手順と同様の手順で行うことができるので、詳細説明は省略する。
【0064】
上述のようにショベル装置30によれば、第1リンク部材81をアーム34に対し基準姿勢で位置させた状態に維持することによって、リンク機構80の枢結位置切換作業を行う際の第1リンク部材81とアーム34との枢結位置の調整(位置合わせ)を手作業により容易に行うことができる。そのため、リンク機構80における枢結位置切換作業を容易に行うことが可能となる。
【0065】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、2本のストッパ腕部83a,83bを有するU字状のストッパ部材83を用いているが、他の形状のストッパ部材を用いてもよい。例えば、1本の棒状に形成され、その棒状の部分(「基部」とも称する)がストッパとして機能するストッパ部材を用いてもよい。このような棒状のストッパ部材は、例えば、バケットシリンダ39の先端部(ピン枢結孔39f)と第1リンク部材81のピン枢結孔81eとの位置合わせを行う場合は、基部を第1リンク部材81のストッパ挿通孔81pに挿通して使用される。また、バケットシリンダ39の先端部と第1リンク部材81のピン枢結孔81dとの位置合わせを行う場合は、基部を第1リンク部材81のストッパ挿通孔81qに挿通して使用される。なお、上述したU字状のストッパ部材83や棒状のストッパ部材は、部材断面が円形状に形成されているが、断面L字型などの他の断面形状のストッパ部材を用いてもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、バケットシリンダ39と第1リンク部材81との枢結位置が、ピン枢結孔81dの位置とピン枢結孔81eの位置との2位置とされているが、選択可能な枢結位置を3位置以上設けるようにしてもよい。例えば、バケットシリンダ39の先端部と選択的に枢結可能な3個以上の複数のピン枢結孔を、上述したような同一円弧上に並ぶように第1リンク部材81に設けるようにしてもよい。
【0067】
また、上述の実施形態では、アーム34の先端部に上下揺動自在に装着されるアタッチメントとしてチルトバケット70を用いているが、これに限定されるものではない。アタッチメントとして、通常のバケット、ブレーカ、圧砕機、カッター、オーガ装置等を用いてもよい。上述の実施形態では、本発明を油圧ショベル1が有する作業装置(ショベル装置30)に適用した場合について説明したが、本発明は、油圧ショベル以外の他の作業用車両が有する作業装置についても、あるいは作業用車両が有する作業装置以外の作業装置についても、同様に適用し同様の効果を得ることが可能である。
【符号の説明】
【0068】
1 油圧ショベル
10 走行体
20 旋回体
30 ショベル装置(作業装置)
34 アーム
39 バケットシリンダ(アタッチメント)
39c,39e ピン受け部
39d,39f ピン枢結孔
41 作業操作装置
50 コントローラ
61 エンジン
62 作業油圧ポンプ
63 パイロットポンプ
65 制御バルブユニット
70 チルトバケット
80 リンク機構
81 第1リンク部材
81A 左第1リンク部材
81B 右第1リンク部材
81b,81c,81d,81e ピン枢結孔
81p,81q ストッパ挿通孔
82 第2リンク部材
83 ストッパ部材
83a,83b ストッパ腕部
P3 第3枢結ピン
P4 第4枢結ピン
P5 第5枢結ピン
P6 第6枢結ピン
P7 第7枢結ピン
P8 第8枢結ピン
P9 第9枢結ピン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31