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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102223
(43)【公開日】2023-07-24
(54)【発明の名称】排気路構造
(51)【国際特許分類】
   F01N 13/00 20100101AFI20230714BHJP
   F01N 13/08 20100101ALI20230714BHJP
【FI】
F01N13/00 B
F01N13/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022002661
(22)【出願日】2022-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】000175766
【氏名又は名称】三恵技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109243
【弁理士】
【氏名又は名称】元井 成幸
(72)【発明者】
【氏名】石川 正純
【テーマコード(参考)】
3G004
【Fターム(参考)】
3G004AA01
3G004DA01
3G004DA23
3G004FA01
(57)【要約】
【課題】車両の床下における設置スペースの高さを抑制することができると共に、内部に発生した凝縮水に対する必要な排水を確実に行うことができる。
【解決手段】車両100の床下スペースに設置される排気路構造であり、排気管21、22、23と、途中に配置されるサイレンサー31、32とから排気路1が構成され、排気路1の全体の下端が略水平に延在され、排気路1の下側に、排気路1の後端部まで延設され且つ排気路1の後端部に向かって底部41が下方に漸次傾斜する傾斜排水路4が形成され、サイレンサー31、32の内部から傾斜排水路4に凝縮水を導出する毛細管部5が設けられる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の床下スペースに設置される排気路構造であって、
排気管と、途中に配置されるサイレンサーとから排気路が構成され、
前記排気路の全体の下端が略水平に延在され、
前記排気路の下側に、前記排気路の後端部まで延設され且つ前記排気路の後端部に向かって底部が下方に漸次傾斜する傾斜排水路が形成され、
前記サイレンサーの内部から前記傾斜排水路に凝縮水を導出する毛細管部が設けられていることを特徴とする排気路構造。
【請求項2】
前記毛細管部が、前記サイレンサーの底板の後端付近から前記サイレンサーの下流側の前記排気管の内部を通り、前記下流側の排気管から前記傾斜排水路に導かれるように湾曲して設置されていることを特徴とする請求項1記載の排気路構造。
【請求項3】
前記サイレンサーの前記底板が、前記毛細管部の凝縮水の導入端部に向かって下方に傾斜して形成されていることを特徴とする請求項2記載の排気路構造。
【請求項4】
防食処理が施された筒状保持材に毛細管現象を発生させる毛細管材が内装されて前記毛細管部が形成され、
前記筒状保持材の内径が前記毛細管材の外径より大きく形成され、
前記筒状保持材の内部に設けられた係止部で前記毛細管材が係止保持されていることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の排気路構造。
【請求項5】
前記筒状保持材が、熱伝導率が16W/m・K以上の高熱伝導性を有することを特徴とする請求項4記載の排気路構造。
【請求項6】
前記排気管と前記傾斜排水路との間に連通されて凝縮水を前記排気管から前記傾斜排水路に排出する排水孔が形成されていることを特徴とする請求項1~5の何れかに記載の排気路構造。
【請求項7】
前記排気路の全体が略水平に広がる扁平形状で形成されていることを特徴とする請求項1~6の何れかに記載の排気路構造。
【請求項8】
前記排気路と前記傾斜排水路とが耐熱プラスチックで形成されていることを特徴とする請求項1~7の何れかに記載の排気路構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の床下スペースに取り付けられる排気路構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の内燃機関で発生する排気を外部に排出する排気路構造が知られている。排気路構造は、例えば円筒状の排気管と、排気管より大径のサブサイレンサーと、排気管より大径のメインサイレンサー及びその後側のテールエンドで構成され、排気管は、その前端部が触媒コンバータ等の被取付部材に取り付けられると共に、その後端部がメインサイレンサーに取り付けられ、排気路の途中にはサブサイレンサーが配置される。そして、特許文献1の図2のように、自動四輪車等の車両の床下スペースに取り付けられて用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-76537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両の昇降性の改善、より広い車内空間の確保、車両重心を下げることによる走行安定性や乗り心地の改善の観点から、車両の低床化が求められているが、他方において、車両の床下スペースはハイブリッド車のバッテリー等の部品が追加される傾向があり、車両の床下スペースは手狭になってきている。そのため、排気路構造には、車両の床下における設置スペースの高さを抑制し、車両の低床化を促進できる構造が求められている。
【0005】
また、近年では、ハイブリット車のように気筒が停止する車両や、排熱回収器が設けられた車両が使用されているが、このような車両では排気路を流通する排気の温度が低下する。排気の低温化すると、排気路を流れる水蒸気が水滴化して凝縮水となり、排気路の内部に停留し、蓄積してしまう。このような凝縮水は、凍結して排気路を閉塞したり、腐食させる原因となるため、排水することが必要となる。
【0006】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであって、車両の床下における設置スペースの高さを抑制することができると共に、内部に発生した凝縮水に対する必要な排水を確実に行うことができる排気路構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の排気路構造は、車両の床下スペースに設置される排気路構造であって、排気管と、途中に配置されるサイレンサーとから排気路が構成され、前記排気路の全体の下端が略水平に延在され、前記排気路の下側に、前記排気路の後端部まで延設され且つ前記排気路の後端部に向かって底部が下方に漸次傾斜する傾斜排水路が形成され、前記サイレンサーの内部から前記傾斜排水路に凝縮水を導出する毛細管部が設けられていることを特徴とする。
これによれば、排気路の下端を略水平に延在することにより、車両の床下における設置スペースの高さを抑制し、車両の低床化を促進することができる。また、内部が区画されて凝縮水が溜まりやすいサイレンサーから毛細管部で傾斜排水路に凝縮水を導出することにより、排気路の内部に発生した凝縮水に対する必要な排水を確実に行うことができる。従って、凝縮水の凍結による排気路の閉塞や、この閉塞に起因するエンジンの始動不能を回避することができ、又、排気路が金属で形成されている場合には、排気路の腐食を防止することができる。また、傾斜排水路を排気路の後端部まで延設することにより、仮に毛細管部の設置箇所から傾斜排水路に排気が漏れ出た場合にも、排気路の後端部に対応する位置まで導くことができ、車両下回りに排出された排気が車室内に侵入する危険性を無くすことができる。また、凝縮水を排水する傾斜排水路を排気路と別経路とし、排気で高温になる排気路から低温の傾斜排水路に熱毛管現象で凝縮水を導出することにより、排出される高温の排気をエネルギー源として有効利用し、別途にエネルギーを供給せず能動的且つ確実に凝縮水を排水することができる。
【0008】
本発明の排気路構造は、前記毛細管部が、前記サイレンサーの底板の後端付近から前記サイレンサーの下流側の前記排気管の内部を通り、前記下流側の排気管から前記傾斜排水路に導かれるように湾曲して設置されていることを特徴とする。
これによれば、サイレンサーの外壁に貫通孔を形成せずにサイレンサー内部の凝縮水を傾斜排水路に導くことができ、サイレンサーの所要の消音性能を確実に得ることができる。また、毛細管部が上側に凸で湾曲するように設置されることから、毛細管部の設置状態を安定させることができる。また、熱毛管現象とサイフォンの原理でサイレンサーの後端壁を乗り越えさせて凝縮水を傾斜排水路に導出し、確実に排水することができる。
【0009】
本発明の排気路構造は、前記サイレンサーの前記底板が、前記毛細管部の凝縮水の導入端部に向かって下方に傾斜して形成されていることを特徴とする。
これによれば、サイレンサーの内部において毛細管部の導入端部に凝縮水を効率的に集め、凝縮水の残量がより少なるように排水することができる。
【0010】
本発明の排気路構造は、防食処理が施された筒状保持材に毛細管現象を発生させる毛細管材が内装されて前記毛細管部が形成され、前記筒状保持材の内径が前記毛細管材の外径より大きく形成され、前記筒状保持材の内部に設けられた係止部で前記毛細管材が係止保持されていることを特徴とする。
これによれば、筒状保持材に毛細管材を内装して毛細管部を構成することにより、サイレンサーの内部から傾斜排水路に凝縮水を導出する毛細管部を安定した状態で設置することができる。また、筒状保持材に防食処理を施すことにより、筒状保持材及び毛細管部の寿命の長期化を図ることができる。また、筒状保持材の内径を毛細管材の外径より大きく形成することにより、凝縮水が凍結して体積膨張した際に、筒状保持材が圧迫されることを回避することができる。
【0011】
本発明の排気路構造は、前記筒状保持材が、熱伝導率が16W/m・K以上の高熱伝導性を有することを特徴とする。
これによれば、高熱伝導性の筒状保持材に毛細管材を内装することにより、毛細管部の内部或いは毛細管材の内部で凝縮水が凍結した場合に、凍結した凝縮水を排気の高温エネルギーを利用して融解し、傾斜排水路に導出して排水することができる。
【0012】
本発明の排気路構造は、前記排気管と前記傾斜排水路との間に連通されて凝縮水を前記排気管から前記傾斜排水路に排出する排水孔が形成されていることを特徴とする。
これによれば、サイレンサー以外の排気管の箇所に凝縮水が生じた場合にも、排水孔を介して傾斜排水路にスムーズに排出し、排水することができる。
【0013】
本発明の排気路構造は、前記排気路の全体が略水平に広がる扁平形状で形成されていることを特徴とする。
これによれば、車両の床下における設置スペースの高さを抑制しつつ、排気管に必要とされる内断面積や、サイレンサーに必要とされる内断面積をより確実に得ることができる。
【0014】
本発明の排気路構造は、前記排気路と前記傾斜排水路とが耐熱プラスチックで形成されていることを特徴とする。
これによれば、金型形状を調整して自在な形状の排気路構造を容易に製造することができ、排気路構造の形状の自由度を高めることができる。また、金属材で形成された排気路構造よりも軽量になることから、排気路構造の共振周波数を高周波数化することができ、共振の振動で排気路構造が劣化、破損することを防止できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の排気路構造によれば、車両の床下における設置スペースの高さを抑制することができると共に、内部に発生した凝縮水に対する必要な排水を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明による実施形態の排気路構造を下側から視た斜視図。
図2】実施形態の排気路構造の平面図。
図3】実施形態の排気路構造の側面図。
図4】実施形態の排気路構造を車両に取り付けた状態の底面図。
図5図2のA-A断面図。
図6】(a)は図5のB部拡大図、(b)は図5のC部拡大図。
図7】(a)、(b)はサイレンサーの底板を傾斜させた変形例の排気路構造における図6(a)、(b)に相当する拡大図。
図8】排気管と傾斜排水路との間に排水孔を形成した変形例の排気路構造における排気管部分の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔実施形態の排気路構造〕
本発明による実施形態の排気路構造は、図1図6に示すように、車両100の床下スペースに設置されるものであり、排気系の上流側から順に間隔を開けて配置された排気管21、22、23と、排気系の上流側から順に間隔を開けて配置された第1サイレンサー31、第2サイレンサー32、第3サイレンサー33とから排気路1が構成されている。第1サイレンサー31は、排気管21と排気管22との間に配置されて排気路1の途中に設けられ、第2サイレンサー32は、排気管22と排気管23との間に配置されて排気路1の途中に設けられている。第3サイレンサー33は、排気路1の後端部に配置されている。
【0018】
排気管21、22、23と、第1サイレンサー31、第2サイレンサー32、第3サイレンサー33は、それぞれ略水平に広がる扁平形状で形成されており、排気路1の全体は略水平に広がる扁平形状或いは扁平筒状で形成されている。そして、排気管21、22、23と、第1サイレンサー31、第2サイレンサー32、第3サイレンサー33とから構成される排気路1の全体の下端は、略水平に延在するように設けられている。本実施形態では、排気管22、23と、第2サイレンサー32、第3サイレンサー33は、後述する傾斜排水路4の底部41より上側に配置され、第1サイレンサー31の下端は、傾斜排水路4の底部41の前端と略同一高さとなるように形成されている。
【0019】
排気路1の下側には、排気路1の後端部まで延設され且つ排気路1の後端部に向かって底部41が下方に漸次傾斜する傾斜排水路4が排気路1と別経路で形成されており、本実施形態では、第1サイレンサー31の後端から第3サイレンサー33の後端まで延びるように傾斜排水路4が形成されている。傾斜排水路4の底部41の勾配或いは底部41の傾斜面である内側底面の勾配は、傾斜排水路4内の凝縮水をスムーズに後方移動させるために、傾斜排水路4の全長に亘って1/100以上とすることが好ましい。
【0020】
本実施形態では、排気路1と傾斜排水路4との間は、後述する毛細管部5が設けられる箇所だけで連通しており、毛細管部5の設置箇所以外では、排気路1の底部隔壁11で隔絶されている。
【0021】
排気路1と傾斜排水路4、或いは排水路1と傾斜排水路4とから構成される排気路構造は、排気温度に耐えられる耐熱プラスチックで形成すると好適であり、150℃以上の耐熱温度を有する耐熱プラスチックで形成するとより好適であるが、アルミニウム又は黄銅等の金属材で形成してもよく、又、排気路1と傾斜排水路4のいずれか一方を耐熱プラスチック、他方を金属で形成してもよい。
【0022】
排水路1と傾斜排水路4とから構成される排気路構造をポリプロピレン等の耐熱プラスチックで形成する場合、例えば排気路1の所定高さ位置で上下に2分割した半体を形成し、後述する毛細管部5を必要に応じて折り曲げながらスリーブ付貫通孔12、13に嵌め込む等で固着すると共に、毛細管部5を必要に応じて折り曲げながらスリーブ付貫通孔14、15に嵌め込む等で固着した後、上側半体と下側半体を溶着或いは接着等で固着すると、毛細管部5を容易且つ確実に所定位置に取り付けることができ、製造効率向上を図れて好適である。
【0023】
尚、排水路1と傾斜排水路4とから構成される排気路構造を左右に2分割した半体を耐熱プラスチックで形成し、スリーブ付貫通孔12、13の半体やスリーブ付貫通孔14、15の半体に毛細管部5を圧入して仮嵌着する等で仮固着した後に、左側半体と右側半体を溶着或いは接着等で固着する構成、或いは傾斜排水路4の底部41以外の排気路構造本体と別部材の底部41を耐熱プラスチックで形成し、毛細管部5を排気路構造本体のスリーブ付貫通孔12、13とスリーブ付貫通孔14、15にそれぞれ嵌め込む等で固着した後に、別部材の傾斜排水路4の底部41を溶着或いは接着等で固着する構成としてもよい。
【0024】
また、排気路1と傾斜排水路4のいずれか一方又は双方を金属で形成する場合にも、上記と同様の上下半体の製造工程、左右半体の製造工程或いは別部材の傾斜排水路4の底部41の製造工程により、毛細管部5をスリーブ付貫通孔12、13やスリーブ付貫通孔14、15に固着した後、上下半体の固着、左右半体の固着、或いは別部材の傾斜排水路4の底部41の固着を接着或いは溶接等で行うとよい。
【0025】
排気管21の前側には、上流側に向かって略円筒状に漸次変形された接続管部211が排気管21に連設され、接続管部211の前端には取付フランジ212が設けられている。取付フランジ212には周方向に間隔を開けて挿通穴が形成されている。また、排気路1に接続される略管状の被接続部材200の後端部にもフランジが設けられ、このフランジにも周方向に間隔を開けて挿通穴が形成されている。排気路1と車両100側の被接続部材200は、挿通穴の位置を合わせて取付フランジ212とフランジを当接し、連通する挿通穴にボルトを挿通してボルト締め、ナット締結する等により固定、接続される。被接続部材200は、本発明の趣旨の範囲内で適宜であり、例えば排熱回収装置若しくはこれの下流側に固定接続された下流管等とすることが可能である。
【0026】
第1サイレンサー31は、サブサイレンサーに相当し、排気路1の途中で且つ排気路1の上流付近に設けられている。第1サイレンサー31は、略水平に広がる扁平筒状で前端面と後端面を閉塞した形状で形成されており、内部は空洞になっている。第1サイレンサー31の略扁平筒状の内側管部311の上面と下面には貫通孔群312がそれぞれ形成されており、内側管部311の内部空間314と、第1サイレンサー31の筐体313と内側管部311との間の周状の外部空間315とが貫通孔群312によって連通されている。外部空間315は、排気を膨張させる扁平筒状の連続空間になっている。
【0027】
第1サイレンサー31には、第1サイレンサー31の内部から傾斜排水路4に凝縮水を導出する毛細管部5が設けられている。毛細管部5は、防食処理が施された筒状保持材51に、毛細管現象を発生させる毛細管材52が内装されて形成されている。筒状保持材51の内径は毛細管材52の外径より僅かに大きく形成され、筒状保持材51の内部に設けられた係止爪等の係止部53で毛細管材52が係止保持されている。
【0028】
筒状保持材51は、熱伝導率が16W/m・K以上の高熱伝導性の材料で形成すると好適であり、例えば表面に防食処理が施されたアルミニウム、オーステナイト系ステンレスのようなステンレス等の金属材を用いると良好であり、又、毛細管部5を折り曲げながら排気路構造に組み付ける場合にはアルミニウム等の曲げやすい材料を用いると良好である。また、毛細管材52には、例えばガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維等の繊維材、或いは撚り線、或いは珪藻土、発泡樹脂、発泡ゴム等の多孔質材等を用いると良好である。
【0029】
第1サイレンサー31に設けられる毛細管部5は、第1サイレンサー31の底板316の後端付近或いは下側の後端壁317の付近から、第1サイレンサー31の下流側の排気管22の内部を通り、下流側の排気管22から傾斜排水路4に導かれるように湾曲して設置されている。毛細管部5の凝縮水の導入端部54は第1サイレンサー31の底板316の後端付近に配置され、導出端部55は例えば傾斜排水路4の底部41付近に配置される。毛細管部5は、第1サイレンサー31の内側管部311に形成されたスリーブ付貫通孔12と、下流側の排気管22に形成されたスリーブ付貫通孔13に挿通され、且つスリーブ付貫通孔12、13のスリーブに圧入するように嵌め込まれて嵌着されている。尚、毛細管部5の固定の仕方は嵌着以外にも外周を接着するなど適用可能な範囲で適宜である。
【0030】
第2サイレンサー32は、サブサイレンサーに相当し、排気路1の途中で且つ排気路1の長手方向の中間位置よりやや上流付近に設けられ、第1サイレンサー31の下流側に第1サイレンサー31と離間して配置されている。第2サイレンサー32の略扁平筒状の内側管部321の上面と下面には貫通孔群322がそれぞれ形成されており、内側管部321の内部空間324と、第2サイレンサー32の筐体323と内側管部321との間の周状の外部空間325とが貫通孔群322によって連通されている。外部空間325は、排気を膨張させる扁平筒状の連続空間になっている。
【0031】
第2サイレンサー32にも、第2サイレンサー32の内部から傾斜排水路4に凝縮水を導出する上記と同一構成の毛細管部5が設けられている。第2サイレンサー32に設けられる毛細管部5は、第2サイレンサー32の底板326の後端付近或いは下側の後端壁327の付近から、第2サイレンサー32の下流側の排気管23の内部を通り、下流側の排気管23から傾斜排水路4に導かれるように湾曲して設置されている。毛細管部5の凝縮水の導入端部54は第2サイレンサー32の底板326の後端付近に配置され、導出端部55は例えば傾斜排水路4の底部41付近に配置される。毛細管部5は、第2サイレンサー32の内側管部321に形成されたスリーブ付貫通孔14と、下流側の排気管23に形成されたスリーブ付貫通孔15に挿通され、且つスリーブ付貫通孔14、15のスリーブに圧入するように嵌め込まれて嵌着されている。尚、第2サイレンサー32に設けられる毛細管部5も、固定の仕方は嵌着以外にも適用可能な範囲で適宜である。
【0032】
第3サイレンサー33は、メインサイレンサーに相当し、排気路1の後端部において、幅方向に略テーパ状に広がると共に高さ方向に幅方向よりも小さい傾斜角度で略テーパ状に拡がって形成されている。第3サイレンサー33にも、後端よりも上流側の位置まで略扁平筒状の内側管部が内装され、内側管部の上面と下面に形成された貫通孔群が、内側管部の内部空間と、内側管部の外側にある膨張室として機能する周状の外部空間とを連通している(図示省略)。
【0033】
排気路1の幅方向の両側には取付板部6・6が上側から側方に突出して延設されている。本例の取付板部6は細長板状で形成され、その先端近傍には取付孔61が形成されている。耐熱プラスチックで排気路1を形成する場合、取付板部6を接着等で所定部位に固着することも可能であるが、例えば排気路1或いはその構成部分に取付板部6も一体的に設けると好適であり、例えばポリプロピレン等の同一材料の耐熱性合成樹脂で射出成形等で一体形成するとよい。取付板部6・6は排気管路2の長手方向に間隔を開けて複数箇所に設置され、図示例では排気管路2の長手方向に間隔を開けて3箇所に取付板部6・6が設置されている。
【0034】
一体的に形成された排気路1と傾斜排水路4は、取付板部6の先端近傍の取付孔61にネジ、ボルト等の留め具を挿通し、留め具の先端部を被取付部材101に埋め込むように固定して、車両100の床下スペースに取り付けられる。このように取り付けられた排気路1及び傾斜排水路4では、傾斜排水路4が排気路1の下側に配置され、且つ車両100の後方に向かって傾斜排水路4の底部41が下方に傾斜するように設けられる。
【0035】
本実施形態の排気路構造によれば、排気路1の下端を略水平に延在することにより、車両100の床下における設置スペースの高さを抑制し、車両100の低床化を促進することができる。また、内部が区画されて凝縮水が溜まりやすい、排気路1の途中に設けられる第1サイレンサー31、第2サイレンサー32から毛細管部5で傾斜排水路4に凝縮水を導出することにより、排気路1の内部に発生した凝縮水に対する必要な排水を確実に行うことができる。従って、凝縮水の凍結による排気路1の閉塞や、この閉塞に起因するエンジンの始動不能を回避することができ、又、排気路1が金属で形成されている場合には、排気路1の腐食を防止することができる。
【0036】
また、傾斜排水路4を排気路1の後端部まで延設することにより、仮に毛細管部5の設置箇所から傾斜排水路4に排気が漏れ出た場合にも、排気路1の後端部に対応する位置まで導くことができ、車両下回りに排出された排気が車室内に侵入する危険性を無くすことができる。また、凝縮水を排水する傾斜排水路4を排気路1と別経路とし、排気で高温になる排気路1から低温の傾斜排水路4に熱毛管現象で凝縮水を導出することにより、排出される高温の排気をエネルギー源として有効利用し、別途にエネルギーを供給せず能動的且つ確実に凝縮水を排水することができる。
【0037】
また、毛細管部5を、サイレンサー31、32の底板の後端付近からサイレンサー31、32の下流側の排気管22、23の内部を通り、下流側の排気管22、23から傾斜排水路4に導くように湾曲して設置することにより、サイレンサー31、32の筐体313、323の外壁に貫通孔を形成せずにサイレンサー31、32内部の凝縮水を傾斜排水路4に導くことができ、サイレンサー31、32の所要の消音性能を確実に得ることができる。また、毛細管部5が上側に凸で湾曲するように設置されることから、毛細管部5の設置状態を安定させることができる。また、熱毛管現象とサイフォンの原理でサイレンサーの後端壁を乗り越えさせて凝縮水を傾斜排水路4に導出し、確実に排水することができる。
【0038】
また、筒状保持材51に毛細管材52を内装して毛細管部5を構成することにより、第1サイレンサー31、第2サイレンサー32の内部から傾斜排水路4に凝縮水を導出する毛細管部5を安定した状態で設置することができる。また、筒状保持材51に防食処理を施すことにより、筒状保持材51及び毛細管部5の寿命の長期化を図ることができる。また、筒状保持材51の内径を毛細管材52の外径より大きく形成することにより、凝縮水が凍結して体積膨張した際に、筒状保持材51が圧迫されることを回避することができる。
【0039】
また、筒状保持材51を熱伝導率が16W/m・K以上の高熱伝導性の材料で形成し、この高熱伝導性の筒状保持材51に毛細管材52を内装することにより、毛細管部5の内部或いは毛細管材52の内部で凝縮水が凍結した場合に、凍結した凝縮水を排気の高温エネルギーを利用して融解し、傾斜排水路4に導出して排水することができる。
【0040】
また、排気路1の全体を略水平に広がる扁平形状で形成することにより、車両100の床下における設置スペースの高さを抑制しつつ、排気管21、22、23に必要とされる内断面積や、サイレンサー31、32、33に必要とされる内断面積をより確実に得ることができる。また、排気路1と傾斜排水路4とを耐熱プラスチックで形成する場合には、金型形状を調整して自在な形状の排気路構造を容易に製造することができ、排気路構造の形状の自由度を高めることができると共に、金属材で形成された排気路構造よりも軽量になることから、排気路構造の共振周波数を高周波数化することができ、共振の振動で排気路構造が劣化、破損することを防止できる。
【0041】
〔本明細書開示発明の包含範囲〕
本明細書開示の発明は、発明として列記した各発明、実施形態の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な内容を本明細書開示の他の内容に変更して特定したもの、或いはこれらの内容に本明細書開示の他の内容を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な内容を部分的な作用効果が得られる限度で削除して上位概念化して特定したものを包含する。そして、本明細書開示の発明には下記変形例や追記した内容も含まれる。
【0042】
例えば図7に示すように、サイレンサー31、32の底板316、326を、毛細管部5の凝縮水の導入端部54に向かって下方に傾斜して形成すると、サイレンサー31、32の内部において毛細管部5の導入端部54に凝縮水を効率的に集め、凝縮水の残量がより少なるように排水することができて好適である。底板316、326の傾斜は、毛細管部5の導入端部54に対応する位置が最も低くなるように傾斜させるとよく、例えば毛細管部5の導入端部54が後端壁317、327付近でサイレンサー31、32の幅方向の略中央に位置する場合、底板316、326を後端に向かって漸次下方に傾斜させると共に、サイレンサー31、32の幅方向の両端から中央に向かって漸次下方に傾斜させるとよい。
【0043】
また、図8に示すように、毛細管部5とは別に、凝縮水を排気管22又は排気管23又は排気管22、23の双方から傾斜排水路4に排出する排水孔16を、排気管22、23と傾斜排水路4との間に連通して形成すると、サイレンサー31、32以外の排気管22、23の箇所に凝縮水が生じた場合にも、排水孔16を介して傾斜排水路4にスムーズに排出し、排水することができて好適である。
【0044】
また、本発明の排気路構造において、排気路を構成する排気管や途中に配置されるサイレンサーの個数は適宜であり、又、排気路を構成する排気管や、途中に配置されるサイレンサーの構成は適用可能な範囲で適宜である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、自動車の内燃機関が排出する排気の排気路構造として利用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1…排気路 11…底部隔壁 12、13、14、15…スリーブ付貫通孔 16…排水孔 21、22、23…排気管 211…接続管部 212…取付フランジ 31…第1サイレンサー 311…内側管部 312…貫通孔群 313…筐体 314…内部空間 315…外部空間 316…底板 317…後端壁 32…第2サイレンサー 321…内側管部 322…貫通孔群 323…筐体 324…内部空間 325…外部空間 326…底板 327…後端壁 33…第3サイレンサー 4…傾斜排水路 41…底部 5…毛細管部 51…筒状保持材 52…毛細管材 53…係止部 54…導入端部 55…導出端部 6…取付板部 61…取付孔 100…車両 101…被取付部材 200…被接続部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8