(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102224
(43)【公開日】2023-07-24
(54)【発明の名称】排気マフラーの接続構造
(51)【国際特許分類】
F01N 13/08 20100101AFI20230714BHJP
【FI】
F01N13/08 F
F01N13/08 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022002662
(22)【出願日】2022-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】000175766
【氏名又は名称】三恵技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109243
【弁理士】
【氏名又は名称】元井 成幸
(72)【発明者】
【氏名】石川 正純
【テーマコード(参考)】
3G004
【Fターム(参考)】
3G004AA01
3G004BA04
3G004BA07
3G004DA11
3G004FA07
3G004FA08
(57)【要約】
【課題】排気マフラーへの振動伝達を抑制して耐熱性樹脂の排気マフラーの破損を防止することができる排気マフラーの接続構造を提供する。
【解決手段】耐熱性樹脂等で形成された排気マフラーの接続構造1であって、自動車に設置される上流側の金属製の排気管4と耐銅害性等の軟質高分子材料で形成された接続管3とが固定され、接続管3と排気マフラー2の排気導入管21とが固定され、排気管4と排気導入管21とが管軸方向に35mm以上の間隔を開けて離間配置されている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車に設置される上流側の金属製の排気管と軟質高分子材料で形成された接続管とが固定され、
前記接続管と排気マフラーの前記排気管よりも強度の低い材料で形成された排気導入管とが固定され、
前記排気管と前記排気導入管とが管軸方向に35mm以上の間隔を開けて離間配置されていることを特徴とする排気マフラーの接続構造。
【請求項2】
前記排気マフラーが耐熱性樹脂で形成され、
前記接続管が耐銅害性の軟質高分子材料で形成されていることを特徴とする請求項1記載の排気マフラーの接続構造。
【請求項3】
前記排気マフラーの前記耐熱性樹脂がポリプロピレンであることを特徴とする請求項2記載の排気マフラーの接続構造。
【請求項4】
前記軟質高分子材料が、シリコンゴム、フッ素ゴム、若しくはEPDM、若しくはアロイ樹脂であることを特徴とする請求項1~3記載の排気マフラーの接続構造。
【請求項5】
前記接続管に蛇腹状周壁が形成されていることを特徴とする請求項1~4の何れかに記載の排気マフラーの接続構造。
【請求項6】
前記排気マフラーが略水平に広がる扁平形状で形成されて自動車の床下に設置され、
前記排気導入管が扁平筒状で形成されており、
前記接続管の上流端部が前記排気管の略円筒形の下流端部に対応する略円筒形状で形成され、
前記接続管の下流端部が前記排気導入管の略扁平筒形の上流端部に対応する略扁平筒形状で形成されていることを特徴とする請求項1~5の何れかに記載の排気マフラーの接続構造。
【請求項7】
前記排気導入管の上流端部に外方へ突出する抜止凸部が周方向に形成され、
前記排気導入管の上流端部が前記接続管の下流端部に内挿されて前記抜止凸部が前記接続管の下流端部で覆われて引っ掛かるようにして、前記接続管と前記排気導入管が固定されていることを特徴とする請求項1~6の何れかに記載の排気マフラーの接続構造。
【請求項8】
前記排気導入管の上流端部が前記接続管の下流端部に内挿され、前記接続管と前記排気導入管とが締結バンドで前記接続管の外側から締め付けられて固定されていることを特徴とする請求項1~7の何れかに記載の排気マフラーの接続構造。
【請求項9】
前記締結バンドの締付箇所に対応する位置の前記排気導入管の内側に強度保持カラーが係着されていることを特徴とする請求項8記載の排気マフラーの接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気マフラーの接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の内燃機関で発生する排気を外部に排出する排気マフラーは、流通する排気が高温であるため、ステンレス鋼のような耐熱性の金属で形成されるのが一般的であるが、特許文献1のように耐熱性樹脂で排気マフラーを形成することも可能である。特許文献1の排気マフラーは、耐熱性樹脂又は耐熱性樹脂と無機物質との混合物で形成されるマフラー本体の内側面に耐熱材の層状構成物を付設して構成されている。
【0003】
更に、特許文献1には、排気マフラーに用いられる耐熱性樹脂として、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂及び熱硬化型ポリカルボジイミド樹脂中から選択された少なくとも1種の熱硬化性樹脂、又は、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、熱可塑性フッ素樹脂、ポリスルフォン樹脂及びポリフェニレンエーテル樹脂の中から選択された少なくとも1種の熱可塑性樹脂、が用いられることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、耐熱性樹脂の排気マフラーの強度は、金属製の排気マフラーの強度よりも低くなることが多いが、耐熱性樹脂の排気マフラーを上流側の排気管に直接接続すると、上流側の排気管を介してエンジンの振動が伝達され、この振動が加わることで耐熱性樹脂の排気マフラーが破損してしまうことも懸念される。また、通常の金属製の排気マフラーよりも強度が低い金属材料で排気マフラーを形成した場合にも同様の問題が発生する。
【0006】
また、耐熱性樹脂の排気マフラーの場合、ポリプロピレン、ABS樹脂、ポリエチレンのような金属イオンによる劣化特性を持つ樹脂は金属イオンとの接触により、いわゆる銅害を生じ、酸化が促進されるという別の問題もある。銅害による樹脂の酸化は温度が高温になるとより促進され、樹脂の強度は短時間で大幅に低下してしまう。そのため、耐熱性樹脂で形成された排気マフラーを使用する場合、上流側の金属製の排気管との接続部分において、銅害が発生し、耐熱性樹脂の排気マフラーの強度が低下してしまう。
【0007】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであって、排気マフラーへの振動伝達を抑制し、強度の低い材料で形成された排気マフラーの破損を防止することができる排気マフラーの接続構造を提供することを目的とする。また、本発明の他の目的は、耐熱性樹脂で形成された排気マフラーの銅害による強度低下を防止することができる排気マフラーの接続構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の排気マフラーの接続構造は、自動車に設置される上流側の金属製の排気管と軟質高分子材料で形成された接続管とが固定され、前記接続管と排気マフラーの前記排気管よりも強度の低い材料で形成された排気導入管とが固定され、前記排気管と前記排気導入管とが管軸方向に35mm以上の間隔を開けて離間配置されていることを特徴とする。
これによれば、排気管と排気導入管を軟質高分子材料の接続管を介して接続し、且つ排気管と排気導入管とが35mm以上の間隔を開けて離間配置される長さの接続管とすることにより、自動車のエンジンから伝わる排気管からの振動を接続管で大幅に吸収、低減し、排気マフラーへの振動伝達を抑制して、排気管よりも強度の低い材料で形成された排気マフラーの排気導入管の破損を防止することができる。
【0009】
本発明の排気マフラーの接続構造は、前記排気マフラーが耐熱性樹脂で形成され、前記接続管が耐銅害性の軟質高分子材料で形成されていることを特徴とする。
これによれば、上流側の金属製の排気管と耐熱性樹脂の排気マフラーの排気導入管とを耐銅害性の軟質高分子材料の接続管を介して接続し、排気管と排気導入管とを管軸方向に35mm以上の間隔を開けて離間配置することにより、耐熱性樹脂で形成された排気マフラーの銅害による強度低下を防止することができる。また、排気管と排気導入管を軟質高分子材料の接続管を介して接続し、且つ排気管と排気導入管とが35mm以上の間隔を開けて離間配置される長さの接続管とすることにより、自動車のエンジンから伝わる排気管からの振動を接続管で大幅に吸収、低減し、排気マフラーへの振動伝達を抑制して耐熱性樹脂の排気マフラーの破損を防止することができる。
【0010】
本発明の排気マフラーの接続構造は、前記排気マフラーの前記耐熱性樹脂がポリプロピレンであることを特徴とする。
これによれば、自動車部品として高頻度で使用される汎用プラスチックのポリプロピレンを耐熱性樹脂として用いることで排気マフラーの製造コストの低減を図ることができる。また、耐酸性・耐アルカリ性で吸水しにくい排気マフラーとすることができ、凝縮水等の影響を受けにくい排気マフラーを得ることができる。また、ポリプロピレンは割れにくいため、耐熱性樹脂の排気マフラーの破損を防止することができる。
【0011】
本発明の排気マフラーの接続構造は、前記軟質高分子材料が、シリコンゴム、フッ素ゴム、若しくはEPDM、若しくはアロイ樹脂であることを特徴とする。
これによれば、軟質高分子材料の接続管に銅害、酸化劣化が生ずることを確実に防止することができる。
【0012】
本発明の排気マフラーの接続構造は、前記接続管に蛇腹状周壁が形成されていることを特徴とする。
これによれば、接続管の蛇腹状の周壁により、自動車のエンジンから伝わる排気管からの振動をより大きく吸収、低減し、排気マフラーへの振動伝達をより確実に抑制することができる。また、接続管の蛇腹状の周壁で排気を乱流化し、上流側の金属製の排気管で発生した金属イオンを乱流拡散することができ、耐熱性樹脂の排気マフラーとする場合に、高濃度の金属イオンが耐熱性樹脂の排気マフラーにおける特定の局所領域に付着することを確実に防止することができる。
【0013】
本発明の排気マフラーの接続構造は、前記排気マフラーが略水平に広がる扁平形状で形成されて自動車の床下に設置され、前記排気導入管が扁平筒状で形成されており、前記接続管の上流端部が前記排気管の略円筒形の下流端部に対応する略円筒形状で形成され、前記接続管の下流端部が前記排気導入管の略扁平筒形の上流端部に対応する略扁平筒形状で形成されていることを特徴とする。
これによれば、接続管を介して略円筒形の排気管と略扁平筒形の排気導入管を接続することにより、自動車の床下に設置される排気マフラーを略水平に広がる扁平形状とすることができ、車両の床下における排気マフラーの設置スペースの高さを抑制し、車両の低床化を促進することができる。従って、車両の昇降性の改善、より広い車内空間の確保、車両重心を下げることによる走行安定性や乗り心地の改善を図ることができる。更に、車両の床下における排気マフラーの設置スペースの高さを抑制できることから、空気抵抗を減らして自動車の空力特性を改善することができる。
【0014】
本発明の排気マフラーの接続構造は、前記排気導入管の上流端部に外方へ突出する抜止凸部が周方向に形成され、前記排気導入管の上流端部が前記接続管の下流端部に内挿されて前記抜止凸部が前記接続管の下流端部で覆われて引っ掛かるようにして、前記接続管と前記排気導入管が固定されていることを特徴とする。
これによれば、軟質高分子材料の接続管と排気マフラーの排気導入管との固定では、軟質高分子材料の接続管の排気導入管からの抜けが発生する可能性があり、特に軟質高分子材料の接続管と耐熱性樹脂の排気マフラーの排気導入管との固定では、軟質高分子材料の接続管の膨張等によって排気導入管の抜けが発生する可能性があるが、排気導入管の抜止凸部を軟質高分子材料の接続管で覆って引っ掛けるように固定することにより、排気導入管が接続管から抜けることを確実に防止することができる。また、抜止凸部は排気導入管の軸方向における局所領域に形成されることから、抜止凸部以外の排気導入管の外周面の外側に挿入用の隙間を確保することができ、排気導入管の上流端部を接続管の下流端部にスムーズに内挿することができる。
【0015】
本発明の排気マフラーの接続構造は、前記排気導入管の上流端部が前記接続管の下流端部に内挿され、前記接続管と前記排気導入管とが締結バンドで前記接続管の外側から締め付けられて固定されていることを特徴とする。
これによれば、柔らかい軟質高分子材料の接続管と耐熱性樹脂等で形成された排気導入管を簡単に固定することができると共に、軟質高分子材料の接続管の柔らかさと締付バンドの締め付けを利用して排気導入管と接続管のシール性を向上し、排気導入管と接続管の隙間から排気が漏れることを確実に防止することができる。また、締付バンドによる締付箇所に対応する位置に排気導入管の抜止凸部がある場合には、排気導入管と軟質高分子材料の接続管の締め代を局所的に増加させ、抜止凸部を軟質高分子材料の接続管に食い込ませ、抜止め性及びシール性をより一層向上することができる。また、締付バンドの締付固定によって接続構造を簡便化することができ、組立性の向上、接続部品の部品点数の低減を図ることができる。
【0016】
本発明の排気マフラーの接続構造は、前記締結バンドの締付箇所に対応する位置の前記排気導入管の内側に強度保持カラーが係着されていることを特徴とする。
これによれば、締結バンドで締め付けを行う際に、排気導入管の強度が不足すると締結荷重で排気導入管が変形し、排気漏れや排気導入管の破損が懸念されるが、締結バンドの締付箇所に対応する位置の排気導入管の内側に強度保持カラーを係着することにより、排気導入管の変形を確実に防止し、排気導入管の変形に起因する排気漏れや排気導入管の破損を防止することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の排気マフラーの接続構造によれば、排気マフラーへの振動伝達を抑制し、金属製の排気管よりも強度が低い耐熱性樹脂或いは金属材料等の強度の低い材料で形成された排気マフラーの破損を防止することができる。また、耐熱性樹脂の排気マフラーを用いる場合には、耐熱性樹脂で形成された排気マフラーの銅害による強度低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明による実施形態の排気マフラーの接続構造で接続される排気マフラーを下側から視た斜視図。
【
図2】本発明による実施形態の排気マフラーの接続構造を下側から視た斜視図。
【
図3】実施形態の排気マフラーの接続構造の平面図。
【
図4】実施形態の排気マフラーの接続構造の側面図。
【
図7】実施形態の変形例の排気マフラーの接続構造を下側から視た斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔実施形態の排気マフラーの接続構造〕
本発明による実施形態の排気マフラーの接続構造1は、自動車のエンジンから排出される排気が流通する上流側の金属製の排気管4に、耐熱性樹脂で形成された排気マフラー2の排気導入管21とを、耐銅害性の軟質高分子材料の接続管3を介して接続するものであり、上流側の排気管4、耐熱性樹脂の排気マフラー2、軟質高分子材料の接続管3のいずれも自動車の床下に設置される(
図2参照)。
【0020】
本実施形態における排気マフラー2は、
図1に示すように、排気系の上流側から順に間隔を開けて配置された排気導入管21、排気管22、排気管23と、排気系の上流側から順に間隔を開けて配置された第1サイレンサー24、第2サイレンサー25、第3サイレンサー26とから構成されている。第1サイレンサー24は排気導入管21と排気管22との間に配置され、第2サイレンサー25は、排気管22と排気管23との間に配置されており、第3サイレンサー26は排気管23の後側に配置されて排気マフラー3の後端部に設けられている。第1サイレンサー24、第2サイレンサー25、第3サイレンサー26のそれぞれの内部には、膨張室として機能する膨張空間が設けられている。
【0021】
排気導入管21、排気管22、排気管23と、第1サイレンサー24、第2サイレンサー25、第3サイレンサー26は、それぞれ略水平に広がる扁平筒状或いは扁平形状で形成されており、排気マフラー2は全体として略水平に広がる扁平形状で形成されている。更に、排気導入管21の略扁平筒形の上流端部211には、外方へ突出する抜止凸部212が周方向に形成されており、図示例では、排気導入管21の縦断面視で略山形に折り曲がるように形成され且つ排気導入管21の周方向に連設された抜止凸部212が形成されている(
図1、
図5、
図6参照)。また、図示例の排気導入管21の周方向に周設された凸条の抜止凸部212は1条であるが、排気導入管21の軸方向に間隔を開けて複数条の凸条の抜止凸部212を設けることも可能である。
【0022】
排気マフラー2には、第1サイレンサー24の上側、排気管22の上側、第3サイレンサー26の上側から、それぞれ排気マフラー2の幅方向両側の側方に突出するようにして、取付板部27・27が延設されている。本例の取付板部27は細長板状で形成されており、各取付板部27の先端近傍に形成されている取付孔にネジ、ボルト等の別部材の留め具101が挿通され、留め具の先端部を自動車の床下に設置された被取付部材に埋め込むようにして固定され、排気マフラー2が自動車の床下に設置される。
【0023】
排気マフラー2の全体は耐熱性樹脂で形成されている。排気マフラー2を構成する耐熱性樹脂には、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、或いはABS樹脂など適用可能な範囲で適宜の耐熱性樹脂を用いることが可能であるが、ポリプロピレンとすると好適である。排気マフラー2を形成する際には、例えばポリプロピレン等の同一材料の耐熱性合成樹脂で全体を構成する各構成部材を射出成形等で一体形成する、或いはポリプロピレン等の同一材料の耐熱性合成樹脂で所要の構成部材を射出成形等で一体形成すると共にその他の構成部材を溶着する構成とすると良好である。
【0024】
上流側の排気管4は、ステンレス鋼等の金属材料によって全体として略円筒形状で形成されており、その下流端部41も略円筒形で形成されている。好適には、金属製の排気管4よりも上流側の自動車の排気経路に、冷却水との熱交換を行う熱交換器或いは排熱回収装置等の排気冷却装置を設け、排気管4に温度を低下させた排気を流通させると、耐熱温度が低い材料が適用可能となり、排気マフラー2の材料として適用可能な耐熱性樹脂の種類や、接続管4の材料として適用可能な耐銅害性の軟質高分子材料の種類の自由度を高めることができる。
【0025】
耐銅害性の軟質高分子材料の接続管3は、
図2~
図6に示すように、その上流端部31が上流側の金属製の排気管4の略円筒形の下流端部41に対応する略円筒形状で形成されていると共に、その下流端部32が排気導入管21の略扁平筒形の上流端部211に対応する略扁平筒形状で形成されている。接続管3には蛇腹状周壁33が形成されており、本例では接続管3の全長の略半分~2/3程度の長さの蛇腹状周壁33が接続管4の下流端部32に寄った中間部に形成され、略扁平筒状の蛇腹状周壁33が形成されている。
【0026】
図示例の接続管3の長さは、耐熱性樹脂の排気マフラー2の銅害防止と振動伝達抑制の観点から、上流側の金属製の排気管4と接続管3を固定し、接続管3と排気マフラー2の排気導入管21とを固定した状態で、上流側の金属製の排気管4と排気マフラー2の排気導入管21とを管軸方向に35mm以上の間隔を開けて離間配置した状態とするために、41mm以上とすることが好ましい。
【0027】
接続管3の材料である耐銅害性の軟質高分子材料には、適用可能な範囲で適宜の軟質高分子材料を用いることが可能であるが、例えばシリコンゴム、フッ素ゴム、若しくはEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)、若しくは耐銅害性のアロイ樹脂を用いると、軟質高分子材料の接続管3に銅害、酸化劣化が生ずることを確実に防止することができて好適である。また、接続管3の材料である耐銅害性の軟質高分子材料には、(1)耐熱性:熱交換器或いは排熱回収装置を排気経路に設置した場合にも排気管4に流通する排気温度は150℃近くになることから耐熱温度150℃以上であること、(2)耐酸性:排気経路には強酸性の凝縮水が発生することから、pH1.0でも腐食、劣化しないこと、(3)耐寒性:寒冷地での外気中での使用も想定されることから、-40℃の温度でも劣化しないこと、(4)対候性:大気中で使用されることから、オゾン、水、及び油脂に対して劣化せずに耐性を有すること、(5)気密性:排気を漏らさない気密性を有すること、(6)耐屈曲性:耐熱性樹脂の排気マフラー2への振動伝達を遮断し、振動が加えられることから、例えば振幅40mmの振動による軸ズレを吸収できるような所要の耐屈曲性を有すること、の(1)~(6)の条件を充足するものを用いると好適である。
【0028】
上流側の金属製の排気管4と耐銅害性の軟質高分子材料の接続管3との固定では、
図5及び
図6に示すように、上流側の金属製の排気管4の下流端部41が接続管3の上流端部31に内挿され、換言すれば、排気管4の下流端部41に接続管3の上流端部31が外挿される。排気管4の略円筒形の下流端部41にも、外方へ突出する抜止凸部411が周方向に形成されており、図示例では、排気管4の縦断面視で略山形に折り曲がるように形成され且つ排気管4の周方向に連設された抜止凸部411が形成されている。また、図示例の排気管4の周方向に周設された凸条の抜止凸部411は1条であるが、排気管4の軸方向に間隔を開けて複数条の凸条の抜止凸部411を設けることも可能である。
【0029】
排気管4の下流端部41の抜止凸部411は、接続管3の上流端部31に内挿された状態で軟質高分子材料の接続管3の上流端部31で覆われて引っ掛かる。そして、抜止凸部411の軸方向の前端から後端までに亘るように接続管4の外側に締付バンド51が配置され、締付バンド51で接続管3の外側から締め付けられることにより、上流側の金属製の排気管4と軟質高分子材料の接続管3が固定されている。即ち、排気管4の下流端部41の抜止凸部411は、軟質高分子材料の接続管3の上流端部31で覆われて引っ掛かるようにして、締付バンド51で締付固定して接続されている。
【0030】
排気マフラー2の排気導入管21と耐銅害性の軟質高分子材料の接続管3との固定では、排気マフラー2の排気導入管21の上流端部211が接続管3の下流端部32に内挿され、換言すれば、排気導入管21の上流端部211に接続管3の下流端部32が外挿される。排気導入管21の上流端部211は、略扁平筒形に形成され、外方へ突出する抜止凸部212が周方向に形成されており、接続管3の下流端部32は略扁平筒形の上流端部211に対応する略扁平筒形状になっている。
【0031】
排気導入管21の上流端部211の抜止凸部212は、接続管3の下流端部31に内挿された状態で軟質高分子材料の接続管3の下流端部32で覆われて引っ掛かる。そして、抜止凸部212の軸方向の前端から後端までに亘るように接続管4の外側に締付バンド52が配置され、締付バンド52で接続管3の外側から締め付けられることにより、排気導入管21と軟質高分子材料の接続管3が固定されている。即ち、排気導入管21の上流端部211の抜止凸部212は、軟質高分子材料の接続管3の下流端部32で覆われて引っ掛かるようにして、締付バンド52で締付固定して接続されている。
【0032】
更に、本実施形態では、締結バンド52の締付箇所に対応する位置の排気導入管21の内側に、耐熱性樹脂の排気導入管21の強度を補強するための強度保持カラー6が配置されている。強度保持カラー6には、外方に突出する周状又は点状の係合部61が周方向に形成されており、抜止凸部212の内側の凹部に係合部61が係合されて、強度保持カラー6が排気導入管21の上流端部211の所定位置に位置決めされ、この位置で強度保持カラー6が排気導入管21の内側に係着されている。強度保持カラー6には、締付バンド52による締付力に耐えられる圧環強度を有するものが用いられる。
【0033】
本実施形態の排気マフラーの接続構造によれば、上流側の金属製の排気管4と耐熱性樹脂の排気マフラー2の排気導入管21とを耐銅害性の軟質高分子材料の接続管3を介して接続し、排気管4と排気導入管21とを管軸方向に35mm以上の間隔を開けて離間配置することにより、耐熱性樹脂で形成された排気マフラー2の銅害による強度低下を防止することができる。また、排気管4と排気導入管21を軟質高分子材料の接続管3を介して接続し、且つ排気管4と排気導入管21とが35mm以上の間隔を開けて離間配置される長さの接続管3とすることにより、自動車のエンジンから伝わる排気管4からの振動を接続管3で大幅に吸収、低減し、排気マフラー2への振動伝達を抑制して耐熱性樹脂の排気マフラー2の破損を防止することができる。
【0034】
また、接続管3の蛇腹状周壁33により、自動車のエンジンから伝わる排気管4からの振動をより大きく吸収、低減し、排気マフラー2への振動伝達をより確実に抑制することができる。また、接続管3の蛇腹状周壁33で排気を乱流化し、上流側の金属製の排気管4で発生した金属イオンを乱流拡散することができ、高濃度の金属イオンが耐熱性樹脂の排気マフラー2における排気導入管21等の特定の局所領域に付着することを確実に防止することができる。
【0035】
また、接続管3を介して略円筒形の排気管4と略扁平筒形の排気導入管21を接続することにより、自動車の床下に設置される排気マフラー2を略水平に広がる扁平形状とすることができ、車両の床下における排気マフラー2の設置スペースの高さを抑制し、車両の低床化を促進することができる。従って、車両の昇降性の改善、より広い車内空間の確保、車両重心を下げることによる走行安定性や乗り心地の改善を図ることができる。更に、車両の床下における排気マフラー2の設置スペースの高さを抑制できることから、空気抵抗を減らして自動車の空力特性を改善することができる。
【0036】
また、軟質高分子材料の接続管3と耐熱性樹脂の排気マフラー2の排気導入管21との固定では、軟質高分子材料の接続管3の膨張等によって排気導入管21の抜けが発生する可能性があるが、排気導入管21の抜止凸部212を軟質高分子材料の接続管3で覆って引っ掛けるように固定することにより、排気導入管21が接続管3から抜けることを確実に防止することができる。更に、抜止凸部212は排気導入管21の軸方向における局所領域に形成されることから、抜止凸部212以外の排気導入管21の外周面の外側に挿入用の隙間を確保することができ、排気導入管21の上流端部211を接続管3の下流端部32にスムーズに内挿することができる。また、排気管4の抜止凸部411によっても、軟質高分子材料の接続管3と上流側の金属製の排気管4に対して同様の効果を得ることができる。
【0037】
また、締付バンド52により、柔らかい軟質高分子材料の接続管3と耐熱性樹脂の排気導入管21を簡単に固定することができる。また、軟質高分子材料の接続管4の柔らかさと締付バンド52、51の締め付けを利用して排気導入管21と接続管3のシール性、排気管4と接続管3のシール性を向上し、排気導入管21と接続管3の隙間、排気管4と接続管3の隙間から排気が漏れることを確実に防止することができる。更に、締付バンド52、51による締付箇所に対応する位置に排気導入管21の抜止凸部212、排気管4の抜止凸部411を設けることにより、排気導入管21、排気管4と軟質高分子材料の接続管3の締め代を局所的に増加させ、抜止凸部212、411を軟質高分子材料の接続管3に食い込ませ、抜止め性及びシール性をより一層向上することができる。また、締付バンド52、51の締付固定によって接続構造を簡便化することができ、組立性の向上、接続部品の部品点数の低減を図ることができる。
【0038】
また、締結バンド52で締め付けを行う際に、耐熱性樹脂の排気導入管21の強度が不足すると締結荷重で排気導入管21が変形し、排気漏れや排気導入管21の破損が懸念されるが、締結バンド52の締付箇所に対応する位置の排気導入管21の内側に強度保持カラー6を係着することにより、排気導入管21の変形を確実に防止し、排気導入管21の変形に起因する排気漏れや排気導入管21の破損を防止することができる。
【0039】
また、排気マフラー2を構成する耐熱性樹脂をポリプロピレンとする場合には、自動車部品として高頻度で使用される汎用プラスチックのポリプロピレンを用いることで排気マフラー2の製造コストの低減を図ることができる。更に、耐酸性・耐アルカリ性で吸水しにくい排気マフラー2とすることができ、凝縮水等の影響を受けにくい排気マフラー2を得ることができる。更に、ポリプロピレンは割れにくいため、耐熱性樹脂の排気マフラー2の破損を防止することができる。
【0040】
〔本明細書開示発明の包含範囲〕
本明細書開示の発明は、発明として列記した各発明、実施形態の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な内容を本明細書開示の他の内容に変更して特定したもの、或いはこれらの内容に本明細書開示の他の内容を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な内容を部分的な作用効果が得られる限度で削除して上位概念化して特定したものを包含する。そして、本明細書開示の発明には下記変形例や追記した内容も含まれる。
【0041】
例えば上記実施形態の排気マフラーの接続構造1では、接続管3の中間部に蛇腹状周壁33を形成したが、
図7に示す変形例の排気マフラーの接続構造1aにおける耐銅害性の軟質高分子材料の接続管3aのように、蛇腹状周壁33に相当する部位を凹凸のない平坦な周壁34aで形成することも可能である。
【0042】
また、上記実施形態における排気導入管21の抜止凸部212、金属製の排気管4の抜止凸部411は、それぞれ縦断面視で略山形に折曲がる形状で周設したが、排気導入管21の抜止凸部の形状や金属製の排気管4の抜止凸部の形状は本発明の趣旨の範囲内で適宜であり、例えば頂部の両側で傾斜する略山形状の他に、縦断面視で管中央部側の片側で或いは管端部側の片側で傾斜する略山形に折曲がる形状や、それぞれの略山形状で内側に凹部がない形状や、それぞれの略山形状が管軸方向に複数条で並設された形状等とすることが可能である。
【0043】
また、本発明の排気マフラーの接続構造における排気マフラーは、耐熱性樹脂の排気マフラーに限定されず、金属材料で形成された排気マフラーとすることも可能であり、金属製の排気管よりも強度の低い材料で形成された適宜の排気マフラー或いは排気マフラーの排気導入管とすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、自動車の内燃機関の排気を排出する排気マフラーの接続構造として利用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1、1a…排気マフラーの接続構造 2…排気マフラー 21…排気導入管 211…上流端部 212…抜止凸部 22、23…排気管 24…第1サイレンサー 25…第2サイレンサー 26…第3サイレンサー 27…取付板部 3、3a…接続管 31…上流端部 32…下流端部 33…蛇腹状周壁 34a…周壁 4…排気管 41…下流端部 411…抜止凸部 51、52…締付バンド 6…強度保持カラー 61…係合部 101…留め