(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102238
(43)【公開日】2023-07-24
(54)【発明の名称】圧力エネルギー回収に基づく水素ガスと天然ガスとの混合輸送と分離装置及び方法
(51)【国際特許分類】
C01B 3/56 20060101AFI20230714BHJP
B01D 53/22 20060101ALI20230714BHJP
B01D 53/047 20060101ALI20230714BHJP
C01B 3/00 20060101ALI20230714BHJP
C10L 3/10 20060101ALN20230714BHJP
【FI】
C01B3/56 Z
B01D53/22
B01D53/047
C01B3/00 Z
C10L3/10
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022032686
(22)【出願日】2022-03-03
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-06-05
(31)【優先権主張番号】202210028111.8
(32)【優先日】2022-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】522085127
【氏名又は名称】広東省▲チン▼一能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】GuangDong QingYi Energy Technology Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】Rm. 201, Bldg. A, No. 1, Qianwan 1st Rd., Qianhai Shenzhen-Hong Kong Cooperation Zone, Shenzhen, Guangdong, China
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】余華杰
(72)【発明者】
【氏名】尹建雲
【テーマコード(参考)】
4D006
4D012
4G140
【Fターム(参考)】
4D006GA41
4D006JA51Z
4D006JA52Z
4D006JA53Z
4D006JA67Z
4D006PA01
4D006PB18
4D006PB66
4D006PB68
4D006PC80
4D012CA07
4D012CB16
4D012CD07
4D012CH03
4D012CK10
4G140AB01
4G140FA04
4G140FB05
4G140FC01
4G140FC03
4G140FE01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】システム運転のためのエネルギー消費を低減させる、水素ガスと天然ガスとの混合輸送と分離装置及び方法を提供する。
【解決手段】装置は、水素ドープ天然ガス管路1、圧力エネルギー回収システムと、分離システム7と、昇圧システムと、を備え、方法は、水素ドープ天然ガスを圧力エネルギー回収システムに流入させるステップと、低圧水素ドープ天然ガスを分離システムに流入させ、分離を行った後に、水素濃度が低い天然ガスと高濃度水素ガスを形成するステップと、それぞれ第1天然ガスバッファタンク9と第1水素ガスバッファタンク8に流入させ、続いて、圧力エネルギー回収システムにそれぞれ返送するステップと、それぞれ昇圧システムに流入させるステップと、それぞれ水素ガスユーザ側と天然ガスユーザ側に流入させるか又は水素ドープ天然ガス管路に返送するステップと、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力エネルギー回収に基づく水素ガスと天然ガスとの混合輸送と分離装置であって、水素ドープ天然ガス管路と、圧力エネルギー回収システムと、分離システムと、昇圧システムと、を備え、圧力エネルギー回収システムは、膨張機、第1天然ガス圧縮機及び第1水素ガス圧縮機で構成され、膨張機上に給気口、排気口、給水口及び排水口が設けられ、第1天然ガス圧縮機上に給気口、排気口、給水口及び排水口が設けられ、第1水素ガス圧縮機上に給気口、排気口、給水口及び排水口が設けられ、膨張機とアシストモータが組み立てられ、第1天然ガス圧縮機と第1水素圧縮機は、並列接続されるようにアシストモータと組み立てられ、分離システムは、分離装置、第1水素ガスバッファタンク及び第1天然ガスバッファタンクで構成され、分離装置に、給気口、水素ガス出口及び天然ガス出口が設けられ、第1水素ガスバッファタンク上に給気口及び排気口が設けられ、第1天然ガスバッファタンク上に給気口及び排気口が設けられ、昇圧システムは、第2天然ガス圧縮機及び第2水素ガス圧縮機で構成され、第2天然ガス圧縮機上に給気口及び排気口が設けられ、第2水素ガス圧縮機上に給気口及び排気口が設けられ、水素ドープ天然ガス管路の排気口は、メインバッファタンクの入口に連通し、メインバッファタンクの出口は、膨張機の給気口に連通し、膨張機の排気口は、分離装置の給気口に連通し、分離装置の水素ガス出口は、第1水素ガスバッファタンクの給気口に連通し、分離装置の天然ガス出口は、第1天然ガスバッファタンクの給気口に連通し、第1水素ガスバッファタンクの排気口は、第1水素ガス圧縮機の給気口に連通し、第1天然ガスバッファタンクの排気口は、第1天然ガス圧縮機の給気口に連通し、第1水素ガス圧縮機の排気口は、第2水素ガスバッファタンクの給気口に連通し、第1天然ガス圧縮機の排気口は、第2天然ガスバッファタンクの給気口に連通し、第2水素ガスバッファタンクの排気口は、第2水素ガス圧縮機の給気口に連通し、第2天然ガスバッファタンクの排気口は、第2天然ガス圧縮機の給気口に連通し、第2水素ガス圧縮機の排気口は、水素ガスユーザ側に連通するか又は水素ドープ天然ガス管路に連通し、第2天然ガス圧縮機の排気口は、水素ドープ天然ガス管路に連通するか又は天然ガスユーザ側に連通することを特徴とする、圧力エネルギー回収に基づく水素ガスと天然ガスとの混合輸送と分離装置。
【請求項2】
前記膨張機の排水口は、貯水タンクの給水口に連通し、貯水タンクの排水口は、水ポンプを有する管路を介して、同時に第1天然ガス圧縮機及び第1水素ガス圧縮機の給水口に連通し、第1天然ガス圧縮機の排水口及び第1水素ガス圧縮機の排水口は同時に管路を介して膨張機の給水口に連通することを特徴とする
請求項1に記載の圧力エネルギー回収に基づく水素ガスと天然ガスとの混合輸送と分離装置。
【請求項3】
前記分離装置は、膜分離装置であり、又は、圧力変動吸着装置であり、又は、膜分離-圧力変動吸着装置であることを特徴とする
請求項1に記載の圧力エネルギー回収に基づく水素ガスと天然ガスとの混合輸送と分離装置。
【請求項4】
圧力エネルギー回収に基づく水素ガスと天然ガスとの混合輸送と分離方法であって、請求項1に記載の装置を用いて、
水素ドープ天然ガス管路内の水素ドープ天然ガスをメインバッファタンクに流入させ、メインバッファタンク内の水素ドープ天然ガスを膨張機に流入させ、膨張機により排圧を行った後に低圧水素ドープ天然ガスを形成し、圧力エネルギー回収装置は、起動からスムーズな運転まで、開始段階と安定化段階の2つの段階に分けられ、開始段階では、水素ドープ天然ガスが膨張機に入り、アシストモータにより、圧力エネルギー回収システムのために主な動力を提供し、ガス膨張により放出されたエネルギーにより、一部の動力を提供し、ガス膨張プロセスにおいて、アシストモータにより提供される動力を次第に低減させるように制御し、ガス膨張により提供される動力を次第に増加させ、膨張機のタービンホイールの回転数が安定状態になった後、安定化段階に入り、この場合、アシストモータは、膨張機のタービンホイールの回転数を正常な作動区間に維持するのみに用いられるステップ(1)と、
低圧水素ドープ天然ガスを分離装置に流入させ、分離を行った後に、水素ガス出口と天然ガス出口からそれぞれ排出し、それぞれ、水素濃度が低い天然ガスと高濃度水素ガスを形成し、前記水素濃度が低い天然ガスにおける水素ガスの体積濃度≦3%であり、前記高濃度水素ガスの水素ガス体積濃度≧80%であるステップ(2)と、
水素濃度が低い天然ガスと高濃度水素ガスをそれぞれ第1天然ガスバッファタンクと第1水素ガスバッファタンクに流入させ、続いて、それぞれ第1天然ガス圧縮機と第1水素ガス圧縮機に流入させ、1回目の圧縮を行った後に、一次圧縮天然ガスと一次圧縮水素ガスをそれぞれ形成するステップ(3)と、
一次圧縮天然ガスと一次圧縮水素ガスをそれぞれ第2天然ガスバッファタンクと第2水素ガスバッファタンクに流入させ、続いて、それぞれ第2天然ガス圧縮機と第2水素ガス圧縮機に流入させ、2回目の圧縮を行った後に、二次圧縮天然ガスと二次圧縮水素ガスを形成するステップ(4)と、
二次圧縮天然ガスと二次圧縮水素ガスをそれぞれ天然ガスユーザ側と水素ガスユーザ側に流入させるか又は水素ドープ天然ガス管路に返送するステップ(5)と、により行うことを特徴とする、圧力エネルギー回収に基づく水素ガスと天然ガスとの混合輸送と分離方法。
【請求項5】
ステップ(3)において、膨張機のタービンホイールの回転数が安定状態になった後、ガスが膨張機内で膨張する時、膨張機のタービンホイールを動かして回転させ、膨張機のタービンホイールが回転する時、回転軸を動かして回転させ、第1天然ガス圧縮機と第1水素ガス圧縮機のために機械的エネルギーを提供することを特徴とする
請求項4に記載の圧力エネルギー回収に基づく水素ガスと天然ガスとの混合輸送と分離方法。
【請求項6】
ステップ(3)において、貯水タンクと組み立てられる水ポンプを起動し、貯水タンク内の冷却水を第1天然ガス圧縮機と第1水素ガス圧縮機に流入させ、第1天然ガス圧縮機と第1水素ガス圧縮機が作動する時に発生する熱エネルギーは、冷却水により吸収され、熱エネルギーを吸収する冷却水を膨張機に流入させ、膨張機の作動により発生する余冷と熱交換し、冷却水を再び形成して貯水タンクに返送し、該過程において、第1天然ガス圧縮機と第1水素ガス圧縮機から発生する熱エネルギーは、膨張機から発生する冷エネルギーと中和することを特徴とする
請求項4に記載の圧力エネルギー回収に基づく水素ガスと天然ガスとの混合輸送と分離方法。
【請求項7】
ステップ(1)において、水素ドープ天然ガス管路内の水素ドープ天然ガスの圧力≦10MPaであることを特徴とする
請求項4に記載の圧力エネルギー回収に基づく水素ガスと天然ガスとの混合輸送と分離方法。
【請求項8】
ステップ(1)において、膨張機が排圧した後に形成される低圧水素ドープ天然ガスの圧力≦4MPaであることを特徴とする
請求項4に記載の圧力エネルギー回収に基づく水素ガスと天然ガスとの混合輸送と分離方法。
【請求項9】
ステップ(3)において、一次圧縮天然ガスの圧力は、水素ドープ天然ガスの圧力の50~95%であり、一次圧縮水素ガスの圧力は、水素ドープ天然ガスの圧力の50~95%であることを特徴とする
請求項4に記載の圧力エネルギー回収に基づく水素ガスと天然ガスとの混合輸送と分離方法。
【請求項10】
ステップ(3)において、膨張機の排圧時に、機械的エネルギーを回収し、回収された機械的エネルギーを第1天然ガス圧縮機と第1水素ガス圧縮機の機械的エネルギーとし、機械的エネルギーの回収率は、50~95%であることを特徴とする
請求項4に記載の圧力エネルギー回収に基づく水素ガスと天然ガスとの混合輸送と分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー技術分野に属し、特に圧力エネルギー回収に基づく水素ガスと天然ガスとの混合輸送と分離装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水素エネルギーは、世界中で継続的に国々からの支持を受けている。現在では、日本、オーストラリア、ドイツ、イタリアなどの先進国はいずれも水素ドープ天然ガスを積極的に検討している。天然ガス業界への水素エネルギーの応用は、トレンドになっていると言える。しかしながら、現在では、水素ガスを天然ガスから分離するいくつかの方法は、それぞれ、深冷分離、膜分離、PSAプロセスである。例えば、公開番号CN101535174Aの特許出願では、PSAプロセスを用いる水素ガスの分離方法及び分離装置が開示されている。そのプロセス過程において、吸着工程と脱着工程を含むサイクルを繰り返して行う。上記吸着工程において、混合ガスを吸着塔に導入し、吸着剤により該混合ガスにおける不要なガスを吸着し、該吸着塔から、水素ガス濃度が高い製品ガスを導出する。上記脱着工程において、不要なガスを吸着材料から脱着させ、該吸着塔から導出する。公開番号CN 108147365 Aの特許出願に開示されている分離方法は、本質的には膜分離方法を用いる。これは、膜材料の選択透過性を利用して水素ガス分離の目的を達成する。
【0003】
上記いくつかの水素ガスプロセス手段において、一般的には、エネルギー消費が高く、投資が大きいという欠点がある。深冷分離プロセスにおいて、大量のガスを液化する必要があり、PSAプロセスにおいて、加圧と減圧を繰り返して行う必要があり、膜分離プロセスにおいて、高濃度の加圧ガスに対して、その運転のためのエネルギー消費は、これらの方法のうち、最も低いが、ガスが加圧ガスではないと、圧力を提供するために圧縮機を用いる必要がある。
【0004】
以上のいくつかの分離手段の運転のためのエネルギー消費が高いことは、水素ドープ天然ガスの分離への応用の重要な制約要因の1つである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在の水素ガスと天然ガスとの混合輸送技術の以上の欠点に対して、本発明は、圧力エネルギー回収モジュール、膜分離モジュール及び昇圧モジュールを用いて、水素ドープ天然ガスの排圧による圧力エネルギーを機械的エネルギーに変換し、分離後の水素ガス/天然ガスの加圧のために動力を提供し、圧力エネルギーを回収し、システム運転のためのエネルギー消費を低減させる圧力エネルギー回収に基づく水素ガスと天然ガスとの混合輸送と分離装置及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の圧力エネルギー回収に基づく水素ガスと天然ガスとの混合輸送と分離装置は、水素ドープ天然ガス管路と、圧力エネルギー回収システムと、分離システムと、昇圧システムと、を備え、圧力エネルギー回収システムは、膨張機、第1天然ガス圧縮機及び第1水素ガス圧縮機で構成され、膨張機上に給気口、排気口、給水口及び排水口が設けられ、第1天然ガス圧縮機上に給気口、排気口、給水口及び排水口が設けられ、第1水素ガス圧縮機上に給気口、排気口、給水口及び排水口が設けられ、膨張機とアシストモータが組み立てられ、第1天然ガス圧縮機と第1水素圧縮機は、並列接続されるようにアシストモータと組み立てられ、分離システムは、分離装置、第1水素ガスバッファタンク及び第1天然ガスバッファタンクで構成され、分離装置に、給気口、水素ガス出口及び天然ガス出口が設けられ、第1水素ガスバッファタンク上に給気口及び排気口が設けられ、第1天然ガスバッファタンク上に給気口及び排気口が設けられ、昇圧システムは、第2天然ガス圧縮機及び第2水素ガス圧縮機で構成され、第2天然ガス圧縮機上に給気口及び排気口が設けられ、第2水素ガス圧縮機上に給気口及び排気口が設けられ、水素ドープ天然ガス管路の排気口は、メインバッファタンクの入口に連通し、メインバッファタンクの出口は、膨張機の給気口に連通し、膨張機の排気口は、分離装置の給気口に連通し、分離装置の水素ガス出口は、第1水素ガスバッファタンクの給気口に連通し、分離装置の天然ガス出口は、第1天然ガスバッファタンクの給気口に連通し、第1水素ガスバッファタンクの排気口は、第1水素ガス圧縮機の給気口に連通し、第1天然ガスバッファタンクの排気口は、第1天然ガス圧縮機の給気口に連通し、第1水素ガス圧縮機の排気口は、第2水素ガスバッファタンクの給気口に連通し、第1天然ガス圧縮機の排気口は、第2天然ガスバッファタンクの給気口に連通し、第2水素ガスバッファタンクの排気口は、第2水素ガス圧縮機の給気口に連通し、第2天然ガスバッファタンクの排気口は、第2天然ガス圧縮機の給気口に連通し、第2水素ガス圧縮機の排気口は、水素ガスユーザ側に連通するか又は水素ドープ天然ガス管路に連通し、第2天然ガス圧縮機の排気口は、水素ドープ天然ガス管路に連通するか又は天然ガスユーザ側に連通する。
【0007】
上記装置において、膨張機の排水口は、貯水タンクの給水口に連通し、貯水タンクの排水口は、水ポンプを有する管路を介して、同時に第1天然ガス圧縮機及び第1水素ガス圧縮機の給水口に連通し、第1天然ガス圧縮機の排水口及び第1水素ガス圧縮機の排水口は同時に管路を介して膨張機の給水口に連通する。
【0008】
上記装置において、分離装置は、膜分離装置であり、又は、圧力変動吸着装置であり、又は、膜分離-圧力変動吸着装置である。
【0009】
本発明の圧力エネルギー回収に基づく水素ガスと天然ガスとの混合輸送と分離方法は、下記ステップにより行われる。
【0010】
(1)水素ドープ天然ガス管路内の水素ドープ天然ガスをメインバッファタンクに流入させ、メインバッファタンク内の水素ドープ天然ガスを膨張機に流入させ、膨張機により排圧を行った後に低圧水素ドープ天然ガスを形成し、圧力エネルギー回収装置は、起動からスムーズな運転まで、開始段階と安定化段階の2つの段階に分けられ、開始段階では、水素ドープ天然ガスが膨張機に入り、アシストモータにより、圧力エネルギー回収システムのために主な動力を提供し、ガス膨張により放出されたエネルギーにより、一部の動力を提供し、ガス膨張プロセスにおいて、アシストモータにより提供される動力を次第に低減させるように制御し、ガス膨張により提供される動力を次第に増加させ、膨張機のタービンホイールの回転数が安定状態になった後、安定化段階に入り、この場合、アシストモータは、膨張機のタービンホイールの回転数を正常な作動区間に維持するのみに用いられる。
【0011】
(2)低圧水素ドープ天然ガスを分離装置に流入させ、分離を行った後に、水素ガス出口と天然ガス出口からそれぞれ排出し、それぞれ、水素濃度が低い天然ガスと高濃度水素ガスを形成し、前記水素濃度が低い天然ガスにおける水素ガスの体積濃度≦3%であり、前記高濃度水素ガスの水素ガス体積濃度≧80%である。
【0012】
(3)水素濃度が低い天然ガスと高濃度水素ガスをそれぞれ第1天然ガスバッファタンクと第1水素ガスバッファタンクに流入させ、続いて、それぞれ第1天然ガス圧縮機と第1水素ガス圧縮機に流入させ、1回目の圧縮を行った後に、一次圧縮天然ガスと一次圧縮水素ガスをそれぞれ形成する。
【0013】
(4)一次圧縮天然ガスと一次圧縮水素ガスをそれぞれ第2天然ガスバッファタンクと第2水素ガスバッファタンクに流入させ、続いて、それぞれ第2天然ガス圧縮機と第2水素ガス圧縮機に流入させ、2回目の圧縮を行った後に、二次圧縮天然ガスと二次圧縮水素ガスを形成する。
【0014】
(5)二次圧縮天然ガスと二次圧縮水素ガスをそれぞれ天然ガスユーザ側と水素ガスユーザ側に流入させるか又は水素ドープ天然ガス管路に返送する。
【0015】
上記ステップ(3)において、膨張機のタービンホイールの回転数が安定状態になった後、ガスが膨張機内で膨張する時、膨張機のタービンホイールを動かして回転させ、膨張機のタービンホイールが回転する時、回転軸を動かして回転させ、第1天然ガス圧縮機と第1水素ガス圧縮機のために機械的エネルギーを提供する。
【0016】
上記ステップ(3)において、貯水タンクと組み立てられる水ポンプを起動し、貯水タンク内の冷却水を第1天然ガス圧縮機と第1水素ガス圧縮機に流入させ、第1天然ガス圧縮機と第1水素ガス圧縮機が作動する時に発生する熱エネルギーは、冷却水により吸収され、熱エネルギーを吸収する冷却水を膨張機に流入させ、膨張機の作動により発生する余冷と熱交換し、冷却水を再び形成して貯水タンクに返送し、該過程において、第1天然ガス圧縮機と第1水素ガス圧縮機から発生する熱エネルギーは、膨張機から発生する冷エネルギーと中和する。
【0017】
上記ステップ(1)において、水素ドープ天然ガス管路内の水素ドープ天然ガスの圧力≦10MPaである。
【0018】
上記ステップ(1)において、膨張機が排圧した後に形成される低圧水素ドープ天然ガスの圧力≦4MPaである。
【0019】
上記ステップ(3)において、一次圧縮天然ガスの圧力は、水素ドープ天然ガスの圧力の50~95%であり、一次圧縮水素ガスの圧力は、水素ドープ天然ガスの圧力の50~95%である。
【0020】
上記ステップ(3)において、膨張機の排圧時に、機械的エネルギーを回収し、回収された機械的エネルギーを第1天然ガス圧縮機と第1水素ガス圧縮機の機械的エネルギーとし、機械的エネルギーの回収率は、50~95%である。
【0021】
上記ステップ(4)において、二次圧縮天然ガスの圧力は、水素ドープ天然ガスの圧力の1.1~1.2倍であり、二次圧縮水素ガスが水素ドープ天然ガス管路に返送される時、その圧力は、水素ドープ天然ガスの圧力の1.1~1.2倍であり、二次圧縮水素ガスが水素ガスユーザ側に流入する時、その圧力は、ユーザの要件に応じて設定される。
【発明の効果】
【0022】
本発明の方法は、圧力エネルギー回収に基づく水素ガスと天然ガスとの混合輸送と分離プロセスに基づくものである。圧力エネルギー回収を利用しないプロセスのエネルギー消費が、圧力エネルギー回収を利用するプロセスよりもはるかに高い。圧力エネルギー回収装置の熱平衡システムを利用して、圧力エネルギー装置の膨張及び圧縮により発生する熱により、装置自体の熱平衡を行う。本発明の方法のエネルギー消費が低く、圧力エネルギーの回収を実現させ、それを圧縮機の機械的エネルギーに変換し、水素ガス分離のためのエネルギー消費を大幅に低減させる。現在の水素ガス輸送手段(チューブトレーラー、液体水素タンクローリー)に比べて、水素ドープ天然ガスの輸送ターミナルで分離を行い、大規模な水素ガスを低いコストで輸送することを実現させる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の圧力エネルギー回収に基づく水素ガスと天然ガスとの混合輸送と分離装置の構造を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本願の目的、技術的解決手段及び利点をより明確にするために、以下、図面及び実施例を参照しながら、本発明を更に詳しく説明する。ここで記述される具体的な実施例は、本発明の解釈するためのものだけであり、本発明を限定するものではないことが理解されるべきである。なお、以下に記述される本発明の各実施形態に係わる技術特徴が互いに矛盾しない限り、相互に組み合わせても良い。
【0025】
本発明の実施例における膜分離装置は、文献『33万トン/年間のドライガスからの水素抽出のための新たなプロセスの工学用途の検討』(温霜)に記載の水素ガス分離膜システムに基づくものであり、その主な機能は、水素ガスと原料ガスとの分離であり、水素ガス濃度が異なる原料ガスに対して分離を行い、高濃度水素ガスを得ることができる。
【0026】
本実施例における圧力変動吸着装置は、公開番号CN101535174Aの特許出願『水素ガスの分離方法及び分離装置』に記載の技術的解決手段に基づくものであり、その主な機能は、水素ガスと原料ガスとの分離であり、異なる加圧吸着と減圧脱着のサイクルを利用して、水素ガスの分離を実現させる。
【0027】
本発明の実施例における膜分離-圧力変動吸着装置は、文献『膜分離とPSA結合プロセスの、ある千万トン精製所における水素ガス回収装置への応用及び運転状況に関する分析』(于永洋)に基づくものであり、そのプロセスにおいて、膜分離装置は、水素ガスの能力を担い、圧力変動吸着装置は、水素ガスの精製を担い、分離により高純度の水素ガスを得ることを実現させる。
【0028】
本発明の実施例における冷却水の温度は常温であり、熱エネルギーを吸収する冷却水の温度は、≦35℃である。
【0029】
本発明の実施例における安定状態は、膨張機の作動パラメータが正常値範囲内にあることである。
【0030】
実施例1
圧力エネルギー回収に基づく水素ガスと天然ガスとの混合輸送と分離装置の構造は、
図1に示すように、水素ドープ天然ガス管路1と、圧力エネルギー回収システムと、分離システムと、昇圧システムと、を備え、
圧力エネルギー回収システムは、膨張機3、第1天然ガス圧縮機4及び第1水素ガス圧縮機5で構成され、膨張機3上に膨張機の給気口17、膨張機の排気口18、膨張機の給水口及び膨張機の排水口が設けられ、第1天然ガス圧縮機4上に第1天然ガス圧縮機の給気口19、第1天然ガス圧縮機の排気口20、第1天然ガス圧縮機の給水口及び第1天然ガス圧縮機の排水口が設けられ、第1水素ガス圧縮機5上に第1水素ガス圧縮機の給気口21、第1水素ガス圧縮機の排気口22、第1水素ガス圧縮機の給水口及び第1水素ガス圧縮機の排水口が設けられ、
膨張機3とアシストモータ27が組み立てられ、第1天然ガス圧縮機4と第1水素圧縮機5は、並列接続されるようにアシストモータ27と組み立てられ、分離システムは、分離装置7、第1水素ガスバッファタンク8及び第1天然ガスバッファタンク9で構成され、
分離装置7に、給気口、水素ガス出口及び天然ガス出口が設けられ、第1水素ガスバッファタンク8上に給気口及び排気口が設けられ、第1天然ガスバッファタンク9上に給気口及び排気口が設けられ、昇圧システムは、第2天然ガス圧縮機12及び第2水素ガス圧縮機13で構成され、第2天然ガス圧縮機12上に第2天然ガス圧縮機の給気口23及び第2天然ガス圧縮機の排気口24が設けられ、第2水素ガス圧縮機上に第2水素ガス圧縮機の給気口25及び第2水素ガス圧縮機の排気口26が設けられ、
水素ドープ天然ガス管路1の排気口は、メインバッファタンク2の入口に連通し、メインバッファタンク2の出口は、膨張機の給気口17に連通し、膨張機の排気口18は、分離装置7の給気口に連通し、分離装置7の水素ガス出口は、第1水素ガスバッファタンク8の給気口に連通し、分離装置7の天然ガス出口は、第1天然ガスバッファタンク9の給気口に連通し、
第1水素ガスバッファタンク8の排気口は、第1水素ガス圧縮機の給気口21に連通し、第1天然ガスバッファタンク9の排気口は、第1天然ガス圧縮機の給気口19に連通し、
第1水素ガス圧縮機の排気口22は、第2水素ガスバッファタンク10の給気口に連通し、第1天然ガス圧縮機の排気口20は、第2天然ガスバッファタンク11の給気口に連通し、第2水素ガスバッファタンク10の排気口は、第2水素ガス圧縮機の給気口25に連通し、第2天然ガスバッファタンク11の排気口は、第2天然ガス圧縮機の給気口23に連通し、第2水素ガス圧縮機の排気口26は、水素ガスユーザ側に接続される管路15に連通するか又は水素ドープ天然ガス管路1に連通し、第2天然ガス圧縮機の排気口24は、天然ガスユーザ側に接続される管路14に連通し、
膨張機3の排水口は、貯水タンク6の給水口に連通し、貯水タンク6の排水口は、水ポンプ16を有する管路を介して、同時に第1天然ガス圧縮機4及び第1水素ガス圧縮機5の給水口に連通し、第1天然ガス圧縮機4の排水口及び第1水素ガス圧縮機5の排水口は同時に管路を介して膨張機3の給水口に連通し、
分離装置7は、膜分離装置である。
【0031】
方法は、以下のステップにより行われる。
水素ドープ天然ガス管路内の水素ドープ天然ガスをメインバッファタンクに流入させ、メインバッファタンク内の水素ドープ天然ガスを膨張機に流入させ、膨張機により排圧を行った後に低圧水素ドープ天然ガスを形成し、圧力エネルギー回収装置は、起動からスムーズな運転まで、開始段階と安定化段階の2つの段階に分けられ、開始段階では、水素ドープ天然ガスが膨張機に入り、アシストモータにより、圧力エネルギー回収システムのために主な動力を提供し、ガス膨張により放出されたエネルギーにより、一部の動力を提供し、ガス膨張プロセスにおいて、アシストモータにより提供される動力を次第に低減させるように制御し、ガス膨張により提供される動力を次第に増加させ、膨張機のタービンホイールの回転数が安定状態になった後、安定化段階に入り、この場合、アシストモータは、膨張機のタービンホイールの回転数を正常な作動区間に維持するのみに用いられ、
低圧水素ドープ天然ガスを分離装置に流入させ、分離を行った後に、水素ガス出口と天然ガス出口からそれぞれ排出し、それぞれ、水素濃度が低い天然ガスと高濃度水素ガスを形成し、前記水素濃度が低い天然ガスにおける水素ガスの体積濃度は、3%であり、前記高濃度水素ガスの水素ガス体積濃度は、80%であり、
水素濃度が低い天然ガスと高濃度水素ガスをそれぞれ第1天然ガスバッファタンクと第1水素ガスバッファタンクに流入させ、続いて、それぞれ第1天然ガス圧縮機と第1水素ガス圧縮機に流入させ、1回目の圧縮を行った後に、一次圧縮天然ガスと一次圧縮水素ガスをそれぞれ形成し、膨張機のタービンホイールの回転数が安定状態になった後、ガスが膨張機内で膨張する時、膨張機のタービンホイールを動かして回転させ、膨張機のタービンホイールが回転する時、回転軸を動かして回転させ、第1天然ガス圧縮機と第1水素ガス圧縮機のために機械的エネルギーを提供し、貯水タンクと組み立てられる水ポンプを起動し、貯水タンク内の冷却水を第1天然ガス圧縮機と第1水素ガス圧縮機に流入させ、第1天然ガス圧縮機と第1水素ガス圧縮機が作動する時に発生する熱エネルギーは、冷却水により吸収され、熱エネルギーを吸収する冷却水を膨張機に流入させ、膨張機の作動により発生する余冷と熱交換し、冷却水を再び形成して貯水タンクに返送し、該過程において、第1天然ガス圧縮機と第1水素ガス圧縮機から発生する熱エネルギーは、膨張機から発生する冷エネルギーと中和する。
一次圧縮天然ガスと一次圧縮水素ガスをそれぞれ第2天然ガスバッファタンクと第2水素ガスバッファタンクに流入させ、続いて、それぞれ第2天然ガス圧縮機と第2水素ガス圧縮機に流入させ、2回目の圧縮を行った後に、二次圧縮天然ガスと二次圧縮水素ガスを形成し、
二次圧縮天然ガスと二次圧縮水素ガスをそれぞれ天然ガスユーザ側と水素ガスユーザ側に流入させるか又は水素ドープ天然ガス管路に返送し、
水素ドープ天然ガス管路内の水素ドープ天然ガスの圧力は、10MPaであり、その成分は、体積パーセントによれば、H2 10%、CH4 90%を含有し、
低圧水素ドープ天然ガスの圧力は、4Mpaであり、
一次圧縮天然ガスの圧力は、水素ドープ天然ガスの圧力の95%であり、一次圧縮水素ガスの圧力は、水素ドープ天然ガスの圧力の95%であり、
膨張機の排圧時に、機械的エネルギーを回収し、回収された機械的エネルギーを第1天然ガス圧縮機と第1水素ガス圧縮機の機械的エネルギーとし、機械的エネルギーの回収率は、95%であり、
二次圧縮天然ガスの圧力は、水素ドープ天然ガスの圧力の1.1倍であり、二次圧縮水素ガスが水素ドープ天然ガス管路に返送される時、その圧力は、水素ドープ天然ガスの圧力の1.1倍であり、二次圧縮水素ガスが水素ガスユーザ側に流入する時、その圧力は、ユーザの要件に応じて設定される。本実施例の装置及び方法によれば、熱交換後の総パワーは、65kwであり、それと同時に、10MPaから4MPaまで排圧する時に発生する圧力エネルギーが浪費される。
【0032】
実施例2
圧力エネルギー回収に基づく水素ガスと天然ガスとの混合輸送と分離装置の構造は、実施例と同様であり、その相違点は、
分離装置7が圧力変動吸着装置であることであり、
方法は、実施例1と同様であり、その相違点は以下のとおりである。
(1)水素濃度が低い天然ガスにおける水素ガスの体積濃度は2%であり、前記高濃度水素ガスの水素ガス体積濃度は85%である。
(2)水素ドープ天然ガス管路内の水素ドープ天然ガスの圧力は、9MPaである。
(3)膨張機が排圧した後に形成される低圧水素ドープ天然ガスの圧力は、4.5MPaである。
(4)一次圧縮天然ガスの圧力は、水素ドープ天然ガスの圧力の80%であり、一次圧縮水素ガスの圧力は、水素ドープ天然ガスの圧力の80%である。
(5)機械的エネルギーの回収率は、80%である。
(6)二次圧縮天然ガスの圧力は、水素ドープ天然ガスの圧力の1.2倍であり、二次圧縮水素ガスが水素ドープ天然ガス管路に返送される時、その圧力は、水素ドープ天然ガスの圧力の1.2倍である。
【0033】
実施例3
圧力エネルギー回収に基づく水素ガスと天然ガスとの混合輸送と分離装置の構造は、実施例1と同様であり、その相違点は、
分離装置7が膜分離-圧力変動吸着装置であることであり、
方法は、実施例1と同様であり、その相違点は以下のとおりである。
(1)水素濃度が低い天然ガスにおける水素ガスの体積濃度は2%であり、前記高濃度水素ガスの水素ガス体積濃度は85%である。
(2)水素ドープ天然ガス管路内の水素ドープ天然ガスの圧力は、8MPaである。
(3)膨張機が排圧した後に形成される低圧水素ドープ天然ガスの圧力は、3MPaである。
(4)一次圧縮天然ガスの圧力は、水素ドープ天然ガスの圧力の50%であり、一次圧縮水素ガスの圧力は、水素ドープ天然ガスの圧力の50%である。
(5)機械的エネルギーの回収率は、50%である。
(6)二次圧縮天然ガスの圧力は、水素ドープ天然ガスの圧力の1.2倍であり、二次圧縮水素ガスが水素ドープ天然ガス管路に返送される時、その圧力は、水素ドープ天然ガスの圧力の1.2倍である。
【符号の説明】
【0034】
1 水素ドープ天然ガス管路、2 メインバッファタンク、3 膨張機、4 第1天然ガス圧縮機、5 第1水素ガス圧縮機、6 貯水タンク、7 分離システム、8 第1水素ガスバッファタンク、9 第1天然ガスバッファタンク、10 第2水素ガスバッファタンク、11 第2天然ガスバッファタンク、12 第2水素ガス圧縮機、13 第2天然ガス圧縮機、14 天然ガスユーザ側に接続される管路、15 水素ガスユーザ側に接続される管路、16 水ポンプ、17 膨張機の給気口、18 膨張機の排気口、19 第1天然ガス圧縮機の給気口、20 第1天然ガス圧縮機の排気口、21 第1水素ガス圧縮機の給気口、22 第1水素ガス圧縮機の排気口、23 第2天然ガス圧縮機の給気口、24 第2天然ガス圧縮機の排気口、25 第2水素ガス圧縮機の給気口、26 第2水素ガス圧縮機の排気口、27 アシストモータ