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特開2023-102240浴室用定量噴射型エアゾールおよび有害物防除方法
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  • 特開-浴室用定量噴射型エアゾールおよび有害物防除方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102240
(43)【公開日】2023-07-24
(54)【発明の名称】浴室用定量噴射型エアゾールおよび有害物防除方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 25/06 20060101AFI20230714BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20230714BHJP
   C09K 3/30 20060101ALI20230714BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20230714BHJP
   A01N 31/08 20060101ALI20230714BHJP
   A01N 33/12 20060101ALI20230714BHJP
   A01N 43/40 20060101ALI20230714BHJP
   A61L 2/22 20060101ALI20230714BHJP
   A61L 9/14 20060101ALI20230714BHJP
【FI】
A01N25/06
C09K3/00 S
C09K3/30 A
A01P3/00
A01N31/08
A01N33/12 101
A01N43/40 101K
A61L2/22
A61L9/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043065
(22)【出願日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】P 2022002619
(32)【優先日】2022-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000100539
【氏名又は名称】アース製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 優八
(72)【発明者】
【氏名】田中 智一
【テーマコード(参考)】
4C058
4C180
4H011
【Fターム(参考)】
4C058AA07
4C058AA23
4C058BB07
4C058JJ12
4C058JJ24
4C180AA02
4C180AA03
4C180AA07
4C180AA16
4C180AA17
4C180AA19
4C180CB01
4C180EA06X
4C180EB03X
4C180EB06X
4C180EB07X
4C180EB08X
4C180EB12X
4C180EB15X
4C180EB17X
4C180EB21X
4C180EB29X
4C180EB42X
4C180EC01
4C180GG07
4C180MM10
4H011AA02
4H011AA03
4H011BB03
4H011BB04
4H011BB09
4H011BC01
4H011DA21
4H011DB05
4H011DD05
4H011DE16
4H011DG03
(57)【要約】
【課題】本発明は、噴射時の薬剤臭や刺激を抑えつつ、浴室内の隙間空間に対しても適切な量の防除成分を付着させることのできる、浴室用定量噴射型エアゾールを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、耐圧容器と、前記耐圧容器に充填されたエアゾール組成物とを有し、1回の噴射操作で一定量のエアゾール組成物を噴射する定量噴射型エアゾールであって、前記エアゾール組成物が防除成分を含む原液と噴射剤とを含み、1回の噴射量が0.6~0.9mLである、浴室用定量噴射型エアゾールに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐圧容器と、前記耐圧容器に充填されたエアゾール組成物とを有し、1回の噴射操作で一定量のエアゾール組成物を噴射する定量噴射型エアゾールであって、
前記エアゾール組成物が防除成分を含む原液と噴射剤とを含み、
1回の噴射量が0.6~0.9mLである、浴室用定量噴射型エアゾール。
【請求項2】
耐圧容器に防除成分を含む原液と噴射剤とを含むエアゾール組成物が充填された定量噴射型エアゾールを用いて、1回の噴射操作での噴射量が0.6~0.9mLとなるように前記エアゾール組成物を噴射する、浴室での有害物防除方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室用定量噴射型エアゾールおよび有害物防除方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有効成分となる薬剤を含む原液と噴射剤とを含むエアゾール組成物を、1回の噴射操作で一定量噴射する定量噴射型エアゾールが知られている。定量噴射型エアゾールは1回の噴射操作で所定量の薬剤が吐出されるので、使用者による操作方法の差、すなわち噴射ボタンの押し下げ方法や押し下げ量等の差が生じにくく、効果のバラツキが少ないという利点がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、難揮散性殺虫化合物を含む原液と、噴射剤とからなるエアゾール組成物が充填され、原液は、エアゾール組成物中、40容量%以下となるよう含まれ、1回あたりの噴射量が0.1~1.0mLである、害虫防除用定量噴射型エアゾールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-99575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、定量噴射型エアゾールとしては、主に殺虫目的で、居室内や屋外で防除成分を噴射する態様のものがよく知られている。一方、カビや細菌等の除菌目的で、浴室で防除成分を噴射する態様のものはあまり知られていない。浴室は湿度や温度が比較的高く、また、石鹸、垢等の栄養源が豊富であり、さらに、掃除が行き届きにくいことも相まって、カビや細菌等が繁殖しやすい環境である。
カビや細菌などが繁殖した状態では、不衛生であり、人体に対する影響も懸念される。また、浴室には暖房機や乾燥機等の空調機器が備え付けられていることも多く、空気の流れに沿ってカビや細菌等が舞い散ることで、一層人体にとって悪影響を与えうる。さらに、当該空調機器にカビや細菌等が繁殖すると故障の原因ともなりうる。そのため、浴室において、カビや細菌等を防除する要望は高い。
【0006】
しかしながら、通常浴室には、狭い空間内に、石鹸、桶等の物品や手すり等の構造物を含む種々の物体が存在し、また窓、浴槽エプロン、排水口のように隙間を有する構造も多いため、物体と物体との間に形成される隙間空間が生じやすい。そのような浴室内の隙間空間に繁殖したカビや細菌などに対して、定量噴射型エアゾールにより防除成分を有効に適用することは難しい。また、浴室内は湿度が高いため、噴射した防除成分が水分と接触することで、自重により落下しやすくなり、所望の箇所へ防除成分が行きわたりにくくなるという問題も考えられる。
一方で、そのようなカビや細菌等に対して防除成分を行きわたらせるために、噴射量を多くすると、浴室の壁面、天井面等の噴射の対象面において液だれが生じ、防除成分が所望の箇所にとどまらずに流れてしまい、かえって所望の場所へ防除成分が行きわたりにくくなるという問題も懸念される。さらに、狭小空間である浴室においては、噴射された防除成分の跳ね返り、舞い散りが生じ、使用者にとって薬剤臭や刺激を感じやすくなり、人体にとって悪影響となりうる。そのため、人体にとって毒性の強い防除成分を使用する際には、マスクやゴーグル等を使用するなどが必要となり、手間がかかる。
【0007】
このように、浴室においてカビや細菌等の防除を目的として、定量噴射型エアゾールを用いるには、上記のような種々の問題があり、従来の定量噴射型エアゾールでは、上記問題を解決するのに十分ではなかった。すなわち、噴射時の薬剤臭や刺激を抑えつつ、浴室内の隙間空間に対しても適切な量の防除成分を付着させることのできる浴室用の定量噴射型エアゾールはこれまで実現されていなかった。
【0008】
そこで、本発明は、噴射時の薬剤臭や刺激を抑えつつ、浴室内の隙間空間に対しても適切な量の防除成分を付着させることのできる、浴室用定量噴射型エアゾールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、浴室という狭小かつ隙間空間の多い環境下で、特に細菌等の有害物に対して、適切な量の防除成分を作用させるとともに、噴射時の薬剤臭や刺激を抑えることのできる定量噴射型エアゾールを提供すべく鋭意検討を重ねた。その結果、1回の噴射量を特定範囲に限定した定量噴射型エアゾールによれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下の(1)および(2)を特徴とする。
(1)耐圧容器と、前記耐圧容器に充填されたエアゾール組成物とを有し、1回の噴射操作で一定量のエアゾール組成物を噴射する定量噴射型エアゾールであって、
前記エアゾール組成物が防除成分を含む原液と噴射剤とを含み、
1回の噴射量が0.6~0.9mLである、浴室用定量噴射型エアゾール。
(2)耐圧容器に防除成分を含む原液と噴射剤とを含むエアゾール組成物が充填された定量噴射型エアゾールを用いて、1回の噴射操作での噴射量が0.6~0.9mLとなるように前記エアゾール組成物を噴射する、浴室での有害物防除方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の浴室用定量噴射型エアゾール及び有害物防除方法によれば、狭小かつ隙間空間の多い浴室において、噴射時の薬剤臭や刺激を抑えつつ、物体と物体との間に形成される隙間空間に対しても適切な量の防除成分を付着させ、細菌等の有害物に対する防除効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施例における隙間空間への噴射試験系を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態についてさらに詳しく説明する。
なお、本明細書において、「防除」とは、予防、駆除、又はその両方を含む。対象を「防除」するとは、例えば、対象の生育又は繁殖を抑制すること(予防)、対象を駆除することの少なくとも1つを意味する。より具体的には、細菌、カビ、ダニ等の微小生物を殺菌、駆除すること、細菌、カビ等の微小生物の増殖を抑制すること等を含み、いわゆる殺菌、抗菌、防カビ、抗カビ、除菌、害虫防除等の概念を含む。
【0014】
<浴室用定量噴射型エアゾール>
本発明の浴室用定量噴射型エアゾール(以下、単に定量噴射型エアゾールともいう)は、耐圧容器と、前記耐圧容器に充填されたエアゾール組成物とを有し、1回の噴射操作で一定量のエアゾール組成物を噴射するものであって、前記エアゾール組成物が防除成分を含む原液と噴射剤とを含み、1回の噴射量が0.6~0.9mLであることを特徴とする。
【0015】
本発明の定量噴射型エアゾールにおいては、1回の噴射量が0.6~0.9mLであることが重要である。本発明者らは、エアゾール組成物の1回の噴射量を0.6~0.9mLという限定された範囲に設定することによって、狭小かつ隙間空間の多い浴室において、噴射時の薬剤臭や刺激を抑えつつ、物体と物体との間に形成される隙間空間に対しても適切な量の防除成分を付着させることができることを見出したものである。
【0016】
上記理由は明らかでないが、以下のように推察される。
すなわち、エアゾール組成物の1回の噴射量を0.6~0.9mLという極めて限定された範囲に調整することによって、浴室内の隙間空間に対して十分な量の防除成分を付着させることができ、なおかつ、噴射対象面において液だれが生じず、エアゾール組成物が所望の箇所にとどまることで防除成分が行きわたりやすくなる。また、エアゾール組成物の1回の噴射量を0.6~0.9mLに調整することで、噴霧物が対象面から飛散することなく、防除成分の付着性を高めることができる。さらには、湿度が高い浴室内において、噴射されたエアゾール組成物が水分と接触しにくくなり、自重により落下することなく所望の箇所へ防除成分が行きわたりやすい。
また、狭小空間である浴室において、エアゾール組成物の1回の噴射量を0.6~0.9mLという極めて限定された範囲に調整することによって、噴射されたエアゾール組成物の跳ね返り、舞い散りが生じにくく、使用者にとって薬剤臭や刺激を感じにくくなり、人体に対する悪影響が少ない。
以上のように、エアゾール組成物の1回の噴射量を0.6~0.9mLという極めて限定された範囲に調整することによって、噴射時の薬剤臭や刺激を抑えつつ、隙間空間に対しても適切な量の防除成分を付着させることができるため、狭小かつ隙間空間が多く、湿度が高い浴室での使用に好適である。
【0017】
本発明の定量噴射型エアゾールにおいて、1回の噴射量は、0.6~0.9mLが好ましく、0.7~0.9mLがより好ましく、0.75~0.85mLがさらに好ましく、0.78~0.82mLが特に好ましい。1回の噴射量が、0.6mL未満であると、狭小かつ隙間空間の多い浴室において、物体と物体との間に形成される隙間空間に対して適切な量の防除成分を付着させることができないおそれがある。また、1回の噴射量が、0.9mL超であると、狭小かつ隙間空間の多い浴室において、噴射時の薬剤臭や刺激を抑えられないおそれがあり、また、噴射されたエアゾール組成物の跳ね返り、舞い散りにより隙間空間に対して適切な量の防除成分を付着させることができないおそれもある。
【0018】
本発明において、エアゾール組成物の1回の噴射量を調整する方法は特に制限されないが、例えば、後述するようにエアゾールバルブの定量室(ハウジング)の大きさを調節する方法やエアゾール組成物が一定時間噴射できるような仕組みを用いる方法が挙げられる。
【0019】
以下、本発明の定量噴射型エアゾールの各成分について詳細に説明する。
【0020】
(エアゾール組成物)
本発明におけるエアゾール組成物は、防除成分を含む原液と噴射剤とを含む。
(原液)
本発明のエアゾール組成物を構成する原液は、少なくとも有効成分としての防除成分を含有する。ここで防除成分とは、定量噴射型エアゾールを使用した際に、有害物を防除する作用を発揮するものをいう。ここで、本発明における有害物とは、有害微小生物及び/又は有害微小物質を含むものであり、人体にとって有害な微小生物または微小物質を意味する。
上記有害微小生物としては、例えば、細菌、カビ、酵母、ウイルス、ダニ、及び花粉等の人体にとって有害な生物又は生物由来のものを意味する。なかでも、本発明の定量噴射型エアゾールにおいては、細菌、カビ、酵母、ウイルス、ダニの少なくともいずれか1つの有害微小生物を防除対象とするのが、本発明の効果を十分発揮できるという観点から好ましい。
また、有害微小物質とは、ハウスダスト、PM2.5、及び黄砂等の人体にとって有害な非生物又は非生物由来のものが挙げられる。
【0021】
本発明における防除成分としては、例えば、エタノール、ヒノキチオール、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-(4-チアゾリル)ベンゾイミダゾール、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、トリホリン、p-クロロメタキシレノール、グルコン酸クロルヘキシジン、ポリリジン、キトサン、テトラヒドロリナロール、ジアルキルジメチルアンモニウムクロライド、イソプロピルメチルフェノール(IPMP)、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ビス型第四級アンモニウム塩、塩素化イソシアヌル酸塩、塩化セチルピリジニウム、チモール、トリクロサン、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、4-クロロ-3,5-ジメチルフェノール、オルトフェニルフェノール、3-ヨード-2-プロピル-N-ブチルカルバメート(IPBC)、モノカプリン、モノカプリリン、テブコナゾール、ペルメトリン、ピレトリン、アレスリン、フタルスリン、レスメトリン、フラメトリン、フェノトリン、エムペントリン、プラレトリン、シフェノトリン、イミプロトリン、トランスフルトリン、メトフルトリン、ジメフルトリン、メパフルトリン等のピレスロイド系化合物;フェニトロチオン、ジクロルボス、クロルピリホスメチル、ダイアジノン、フェンチオン等の有機リン系化合物;カルバリル、プロポクスル等のカーバメイト系化合物;メトプレン、ピリプロキシフェン、メトキサジアゾン、フィプロニル、アミドフルメト、ブロフラニリド等の化合物;ハッカ油、オレンジ油、ウイキョウ油、ケイヒ油、チョウジ油、テレビン油、ユーカリ油、ヒバ油、ジャスミン油、ネロリ油、ペパーミント油、ベルガモット油、ブチグレン油、レモン油、レモングラス油、シナモン油、シトロネラ油、ゼラニウム油、シトラール、l-メントール、酢酸シトロネリル、シンナミックアルデヒド、テルピネオール、ノニルアルコール、cis-ジャスモン、リモネン、リナロール、1,8-シネオール、ゲラニオール、α-ピネン、p-メンタン-3,8-ジオール、オイゲノール、酢酸メンチル、チモール、安息香酸ベンジル、サリチル酸ベンジル等の各種精油成分;プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル類;アジピン酸ジブチル等の二塩基酸エステル類等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。防除成分の種類は、防除対象とする有害物の種類に合わせて適宜選択すればよい。
【0022】
本発明における防除成分の含有量は、原液中0.01~70質量/容量%(w/v%)であることが好ましい。防除成分が原液中に0.01質量/容量%以上であることで、浴室内の隙間空間に対しても適切な量の防除成分を付着させ、十分な防除成分の効果を得ることができる。また、70質量/容量%以下であると、噴射時の薬剤臭や刺激を抑えることができ、また生産適性が向上する。防除成分の含有量は、下限は0.1質量/容量%以上であることがより好ましく、0.3質量/容量%以上がさらに好ましく、また上限は65質量/容量%以下がより好ましく、50質量/容量%以下がさらに好ましい。
【0023】
本発明における原液は、防除成分の他にも、本発明の効果を損なわない範囲で、芳香成分、消臭成分等を含んでいてもよい。
【0024】
芳香成分は、香気を発する成分である。芳香成分としては、例えば、上記した精油成分の他に、アニス油、ラベンダー油、ローズ油、ローズマリー油、グレープフルーツ油等の天然香料;カンフェン、p-シメン、シトロネロール、ネロール、ベンジルアルコール、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、クマリン、シネオール等の合成香料等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0025】
消臭成分は、臭気を消すことができる成分である。消臭成分としては、例えば、緑茶エキス、柿タンニン、ラウリル酸メタクリレート、安息香酸メチル、フェニル酢酸メチル、ゲラニルクロトレート、ミリスチン酸アセトフェノン、酢酸ベンジル、プロピオン酸ベンジル、銀等の臭気成分を吸着する成分や、上記した芳香成分のような臭気成分をマスキングする成分等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0026】
また、本発明における原液には、原液の粘度を調整するためや、生産適性を向上するため、防除対象に対する防除成分の浸透性を上げるため等の目的のために溶剤を含有することができる。このような溶剤としては、例えば、上記したグリコールエーテル類や、炭化水素系溶剤、アルコール系溶剤、芳香族系溶剤、エステル系溶剤等が挙げられる。また、水や界面活性剤の使用もできる。
【0027】
炭化水素系溶剤としては、例えば、パラフィン系炭化水素やナフテン系炭化水素等の脂肪族炭化水素が挙げられ、JIS 1号灯油等の灯油が好ましい。具体的にはノルマルパラフィン、イソパラフィン等が挙げられる。ノルマルパラフィンとしては、炭素数が8~16のものが代表的で、例えば、中央化成株式会社製のネオチオゾール、JXTGエネルギー株式会社製のノルマルパラフィンMA等が挙げられる。イソパラフィンとしては、炭素数が8~16のものが代表的で、例えば、出光興産株式会社製のIPクリーンLX、スーパーゾルFP25等が挙げられる。
【0028】
アルコール系溶剤としては、例えば、エタノール、プロパノール等の低級アルコール、グリセリン、エチレングリコール等の多価アルコール等が挙げられる。
芳香族系溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等が挙げられる。
エステル系溶剤としては、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、パルミチン酸イソプロピル等が挙げられる。
【0029】
溶剤の含有量は、原液中30~99.99質量/容量%(w/v%)であることが好ましい。溶剤が原液中に30質量/容量%以上であることで、噴射時の薬剤臭や刺激を抑えることができ、また生産適性を向上させることができる。また、99.99質量/容量%以下であると、浴室内の隙間空間に対しても適切な量の防除成分を付着させ、十分な防除成分の効果を担保できる。溶剤の含有量は、下限は35質量/容量%以上であることがより好ましく、50質量/容量%以上がさらに好ましく、また上限は99.9質量/容量%以下がより好ましく、99.5質量/容量%以下がさらに好ましい。
【0030】
また、本発明における原液には、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分を含有させることができる。その他の成分としては、例えば、防腐剤、pH調整剤、紫外線吸収剤、無機物、界面活性剤、溶解助剤等が挙げられる。
【0031】
本発明における原液の20℃における比重は、0.65~1.00が好ましく、0.70~0.95がより好ましく、0.75~0.90がさらに好ましい。原液の20℃における比重は噴射粒子の沈降速度に影響するところ、当該比重が上記範囲であることにより、浴室内の隙間空間に対しても適切な量の防除成分を付着させ、十分な防除成分の効果を得ることができる。また、噴射時の薬剤臭や刺激を抑えることができる。
【0032】
エアゾール組成物中の原液の含有量は、定量噴射型エアゾールの使用目的や噴射剤との組み合わせに応じて適宜変更可能であり、特に限定されないが、例えば、エアゾール組成物中に1~60容量%とすることができる。エアゾール組成物中に原液が1容量%以上であると、浴室内の隙間空間に対しても適切な量の防除成分を付着させ、十分な防除成分の効果を得ることができる。また、60容量%以下であると、原液を噴霧粒子として噴射することができるので、例えば室内で使用した場合に、原液による家具、床、壁等の汚染を少なくできる。また、噴射時の薬剤臭や刺激を抑えることができる。原液の含有量は、エアゾール組成物中、下限は3容量%以上であることがより好ましく、5容量%以上がさらに好ましく、また、上限は55容量%以下であることがより好ましく、50容量%以下がさらに好ましい。
【0033】
(噴射剤)
噴射剤は、上記原液を噴射するための媒体であり、原液とともに耐圧容器に加圧充填される。
噴射剤としては、例えば、プロパン、プロピレン、n-ブタン、イソブタン等の液化石油ガス(LPG)やジメチルエーテル(DME)等の液化ガス、炭酸ガス、窒素ガス、圧縮空気等の圧縮ガス、HFC-152a、HFC-134a、HFO-1234yf、HFO-1234ze等のハロゲン化炭素ガス等の1種又は2種以上を用いることができる。使用する噴射剤は、原液との相溶性やエアゾールバルブ等の容器部材に合わせて適宜選択すればよい。
【0034】
エアゾール組成物中の噴射剤の含有量は、定量噴射型エアゾールの使用目的や原液との組み合わせに応じて適宜変更可能であり、特に限定されないが、例えば、エアゾール組成物中に40~99容量%とすることができる。エアゾール組成物中に噴射剤が40容量%以上であると、原液を噴霧粒子として噴射することができるため防除成分がより拡散しやすくなり、浴室内の隙間空間に対しても適切な量の防除成分を付着させることができ、また、防除成分の効果が持続しやすくなる。また、噴射剤が99容量%以下であると、十分な防除成分の効果を得ることができる。噴射剤の含有量は、エアゾール組成物中、下限は50容量%以上であることがより好ましく、70容量%以上がさらに好ましく、また、上限は97容量%以下がより好ましく、95容量%以下がさらに好ましい。
【0035】
なお、エアゾール組成物中の原液と噴射剤の体積比(液ガス比)は、1:99~70:30であることが好ましく、3:97~50:50がより好ましい。このような体積比とすることで、浴室内の隙間空間に対しても適切な量の防除成分を付着させ、十分な防除成分の効果を得ることができる。また、噴射時の薬剤臭や刺激を抑えることができる。
【0036】
(定量噴射型エアゾール)
本発明の定量噴射型エアゾールは、上記エアゾール組成物がエアゾール用の耐圧容器に充填され、該耐圧容器がエアゾールバルブによりその開口を閉止されることにより構成される。
【0037】
なお、定量噴射型エアゾールとは、1回の噴射操作で一定量のエアゾール組成物を噴射するエアゾールである。定量噴射型エアゾールは、エアゾールバルブに取り付けられた噴射部材(以下、噴射ボタンともいう。)が使用者に操作されることにより、エアゾールバルブを通って耐圧容器内のエアゾール組成物(原液と噴射剤)の一定量が噴射され、原液は噴射剤によって粒子状とされて噴霧粒子として噴射される。
【0038】
(耐圧容器)
本発明の定量噴射型エアゾールは、耐圧容器の内圧が、25℃において0.60MPa以下が好ましく、0.10~0.60MPaがより好ましく、0.20~0.60MPaがさらに好ましく、0.30~0.55MPaが特に好ましい。内圧が25℃において0.60MPa以下であれば、浴室において、エアゾールを噴射したとき、浴室の隙間空間に対しても適切な量の防除成分を付着させ、十分な防除成分の効果を得ることができる。また、対象面に到達した際の跳ね返りや舞い散りを抑制し、噴射時の薬剤臭や刺激を抑えることができる。
耐圧容器は、0.60MPaの内圧に耐え得る耐圧容器が好ましく、その材質は、例えば、アルミニウムやブリキ等の金属、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂、耐圧ガラス等が挙げられる。また、耐圧容器は、材質が合成樹脂である場合、半透明や透明であってもよい。
【0039】
(エアゾールバルブ)
エアゾールバルブは、噴射部材が使用者に操作されることにより耐圧容器内と外部との連通および遮断を切り替えるための開閉部材と、開閉部材が取り付けられるハウジングと、ハウジングを耐圧容器の所定の位置に保持するためのマウント部材を備える。また、開閉部材は、噴射部材と連動して上下に摺動するステムを含む。ステムの摺動によりエアゾール組成物の連通(噴射状態)および遮断(非噴射状態)が切り替えられる。エアゾールバルブには、耐圧容器からエアゾール組成物を取り込むためのハウジング孔と、取り込まれたエアゾール組成物を噴射部材に送るためのステム孔とが形成されている。ハウジングには、耐圧容器からエアゾール組成物を取り込むためのハウジング孔が形成されている。ステムには、ハウジング内に取り込まれたエアゾール組成物を噴射部材に送るためのステム孔が形成されている。ハウジング孔からステム孔までの経路は、エアゾール組成物が通過する内部通路を構成する。
【0040】
本発明において、エアゾールバルブは、噴射部材を1回操作することで定量噴射される定量型のエアゾールバルブである。エアゾールバルブの噴射量は、1回の噴射操作で0.6~0.9mLの範囲の所定の一定量とされている。1回当たりの噴射量が0.6~0.9mLの範囲の所定量となるエアゾール組成物を貯留できる定量室(ハウジング)を有するエアゾールバルブを用いることで、1回の噴射操作により0.6~0.9mLの範囲の所定の一定量を噴射することができる。あるいは、エアゾール組成物が一定時間噴射できるような仕組みを用いる方法により、1回の噴射操作により0.6~0.9mLの範囲の所定の一定量を噴射することができる。エアゾールバルブの噴射量は、前記範囲内であれば所定の噴射量を適宜設定することができる。
【0041】
(噴射部材)
噴射部材(噴射ボタン)は、エアゾールバルブを介して耐圧容器に取り付けられる部材である。噴射ボタンには、エアゾールバルブのステム孔を介して耐圧容器から取り込まれるエアゾール組成物が通過する操作部内通路とエアゾール組成物が噴射される噴口が形成されている。
【0042】
噴射ボタンの噴口の内径(噴口孔径)は、噴射時間を所望の範囲とするという観点から、φ0.45~3.0mmであることが好ましく、φ0.5~2.0mmがより好ましく、φ0.6~1.6mmがさらに好ましい。
【0043】
噴射ボタンの噴口の数は、特に制限されず、1個であってもよいし、2個以上であってもよい。
【0044】
(噴射力)
本発明の定量噴射型エアゾールは、上記したようにエアゾール用耐圧容器に原液と噴射剤、すなわちエアゾール組成物が充填され、噴射ボタンを押圧することにより、1回の押圧によって一定量のエアゾール組成物が噴射される。噴口から50cm離れた位置におけるエアゾール組成物の噴射力は、10~80mNであることが好ましく、15~70mNがより好ましい。噴射力が前記範囲であることで、噴射時間を所望の範囲とすることができる。
なお、前記噴射力は、25℃の室温条件下で、定量噴射型エアゾールの噴口から50cmの距離を置いたところに横倒しにしたデジタルフォースゲージ(例えば、株式会社イマダ製、型番:DS2-2N)に装着した直径φ60mmの円状の平板の中心に向かってエアゾール組成物を噴射した際の最大値を噴射荷重とし、平均を算出することにより測定できる。
【0045】
(噴霧粒子の体積平均粒子径(D50))
本発明の定量噴射型エアゾールは、噴霧粒子の体積平均粒子径(D50)が5~100μmであることが好ましい。体積平均粒子径(D50)が5μm以上であることで、噴霧粒子が細かくなり過ぎず、エアゾール組成物が落下しにくくなるのを抑制でき、浴室での防除効果を向上できる。一方、100μm以下であると、噴霧粒子が床面、壁面、天井面等の対象面の細部にわたって付着し、浴室内の隙間空間に対しても適切な量の防除成分を付着させることができ、有害物の防除効果を向上できる。噴霧粒子の体積平均粒子径(D50)は、下限は10μm以上であることがより好ましく、15μm以上がさらに好ましく、また、上限は70μm以下がより好ましく、60μm以下がさらに好ましい。
【0046】
なお、本発明でいう噴霧粒子の体積平均粒子径(D50)は、定量噴射型エアゾールの噴口から50cm離れた距離で測定した噴霧粒子の体積平均粒子径(D50)であり、公知の粒度分布測定装置及び自動演算処理装置を用いて測定できる。具体的には、粒度分布測定装置としてレーザー回析式粒度測定装置(例えば、マイクロトラック・ベル株式会社製「LDSA-1400A」)を用い、レーザー光発光部より受光部に照射されるレーザービームと、定量噴射型エアゾールの噴口との距離が50cmとなるように、かつ、噴霧粒子がレーザービームを垂直に通過するようにエアゾールの位置を調整する。噴射中に測定を行い、噴霧粒子の粒度分布を自動演算処理装置により解析し、体積積分分布に基づく噴霧粒子の50%体積平均粒子径(D50)を求めることができる。測定は、25℃条件下で行う。
【0047】
(噴射時間)
本発明の定量噴射型エアゾールは、1回の噴射操作による噴射時間が0.7秒以内であることが好ましい。1回当たりの噴射量が0.6~0.9mLの範囲の所定量であるエアゾール組成物を0.7秒以内で噴射させることにより、エアゾール組成物の揮散性を効率良く高めることができるため、浴室内の隙間空間に対しても適切な量の防除成分を付着させ、防除成分の効力を向上させることができる。
1回の噴射操作による噴射時間は、0.67秒以内であることがより好ましく、0.25~0.65秒がさらに好ましく、0.3~0.65秒が特に好ましい。
【0048】
本発明の定量噴射型エアゾールは、エアゾール組成物の単位時間当たりの噴射量(噴射速度)が、1.4mL/s以上が好ましく、1.5~2.35mL/sがより好ましく、1.7~2.32mL/sがさらに好ましい。上記範囲であれば、対象面に到達した際の跳ね返りや舞い散りを抑制し、噴射時の薬剤臭や刺激を抑えることができる。
【0049】
本発明において、1回の噴射操作による噴射時間を調整する方法としては、例えば、噴射ボタンの噴口の大きさを調整する方法、定量噴射型エアゾールの噴射力を調整する方法、エアゾールバルブのステム孔径を調整する方法、噴射剤の圧力を調整する方法、及びこれらの組み合せ等が挙げられる。
【0050】
(有害物防除方法)
本発明では、上記した本発明の定量噴射型エアゾールを用いて、浴室での有害物を防除する方法も提供する。すなわち、耐圧容器に防除成分を含む原液と噴射剤とを含むエアゾール組成物が充填された定量噴射型エアゾールを用いて、1回の噴射操作での噴射量が0.6~0.9mLとなるように前記エアゾール組成物を噴射する、浴室での有害物防除方法(以下、単に本発明の防除方法ともいう)も提供する。
【0051】
具体的には、本発明の定量噴射型エアゾールを、浴室の天井・壁面・床面等の対象面に噴射ボタンの噴口を向けて、噴射ボタンを操作する。噴射ボタンの噴口から、浴室の天井・壁面・床面等の対象面までの距離は、10cm~100cmが好ましく、20cm~80cmがより好ましく、30cm~60cmがさらに好ましい。また、定量噴射型エアゾールの噴射方向は、天井・壁面・床面等の対象面の垂直方向に対し0~60°の角度の範囲内であることが好ましく、0~45°の角度の範囲内であることがより好ましい。このように、1回の噴射量が0.6~0.9mLのエアゾール組成物を、上記所定の距離を空けて浴室の天井・壁面・床面等の対象面に向けて噴射することで、噴霧粒子の過剰な舞上がりを抑制し、噴射時の薬剤臭や刺激を抑えつつ、浴室内の隙間空間に対しても適切な量の防除成分を付着させ、十分な防除成分の効果を得ることができる。
【0052】
エアゾール組成物の対象面への付着量としては、0.1~1000mg/mであることが好ましい。エアゾール組成物の対象面への付着量が0.1mg/m以上であれば、防除対象を効果的に防除することができ、1000mg/m以下であれば、防除対象を汚すことなく使用することができる。エアゾール組成物の付着量は、下限は1mg/m以上であることがより好ましく、10mg/m以上がさらに好ましく、また、上限は750mg/m以下であることがより好ましく、500mg/m以下がさらに好ましい。
【0053】
浴室の容積としては、好ましくは2000~20000L、より好ましくは2500~15000L、さらに好ましくは3000~10000Lの場合に、本発明の防除方法の効果がより発揮される。すなわち、浴室の容積が上記範囲であることにより、1回の噴射量を0.6~0.9mLとしたときに、浴室での噴射時の薬剤臭や刺激を十分に抑えつつ、浴室内の隙間空間に対しても適切な量の防除成分を付着させ、十分な防除成分の効果を得ることができる。
また、浴室での防除成分の噴射時は、浴室の窓や扉等を閉め切っていてもよく、窓等を開放していてもよく、換気扇を作動させていてもよい。
【0054】
浴室は、25℃における湿度が、好ましくは30~99.9%、より好ましくは50~99.5%、さらに好ましくは70~99%の場合に、本発明の防除方法の効果がより発揮される。すなわち、浴室の湿度が上記範囲であることにより、浴室の天井や壁面、床面に適切な付着量となるため、1回の噴射量を0.6~0.9mLとしたときに、浴室での噴射時の薬剤臭や刺激を十分に抑えつつ、浴室内の隙間空間に対しても適切な量の防除成分を付着させ、十分な防除成分の効果を得ることができる。
【0055】
浴室の構造は、一般的に、天井部、壁部及び洗い場の床面部で構成され、浴室内を照明する光源(照明装置)、換気扇、シャワー台、鏡、物品載置台等が備えられている。
天井、壁面、床面等の素材は、繊維強化プラスチック(FRP)や塩化ビニル、アクリル等を含む樹脂や、ホーロー、ステンレス、人工大理石、木等が使用されている。FRPとしては、例えば、ポリエチレン繊維強化プラスチック(DFRP)、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)、ガラス長繊維強化プラスチック(GMT)、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、ボロン繊維強化プラスチック(BFRP)、アラミド繊維強化プラスチック(AFRP,KFRP)、ザイロン強化プラスチック(ZFRP)及び液晶ポリマー等が挙げられる。
なかでも、本発明の防除方法による効果がより発揮されるという観点では、浴室の天井、壁面、床面等の素材は繊維強化プラスチック(FRP)、塩化ビニルなどの樹脂製部材が好ましい。
【0056】
また、本発明の定量噴射型エアゾールおよび防除方法は、浴室の隙間用として用いることが好ましい。浴室の隙間用とは、浴室内の隙間空間に向けて噴射して使用するためのものであって、当該隙間空間とは物体と物体との間に形成され、例えば一方向の幅が0.05~5cm、好ましくは0.07~3cm、より好ましくは0.1~1cmの範囲にある区間をいう。浴室内の隙間としては、例えば平面方向、奥行き方向、高さ方向に生じる壁面と物品の間、物品同士の間、浴室の床面、壁面、天井面等の溝等を挙げることができる。
【実施例0057】
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0058】
1.エアゾール組成物の調製
下記表1に示すように、各防除成分と、溶剤(99.5%エタノール)とを混合し、防除成分濃度、比重が表1に示す値となるように原液A~Dを調製した。
【0059】
【表1】
【0060】
なお、表1に示す各成分は以下のものを使用した。
・イソプロピルメチルフェノール(IPMP):(製品名)イソプロピルメチルフェノール(大阪化成株式会社製)
・塩化ベンザルコニウム:Barquat MS-100(アークサーダジャパン株式会社製)
・ビス型第四級アンモニウム塩:ハイジェニア(タマ化学工業株式会社製)
【0061】
次に、エアゾール用耐圧缶(アルミ缶:容量130mL)に、上記で調製した原液A~Dを充填し、各エアゾールバルブでエアゾール用耐圧缶を閉止した。続いて、噴射剤として各LPG(液化石油ガス)を加圧充填した。なお、充填した各原液と各噴射剤(LPG)の配合比率は表2に従い、全量が100mLになるように調製した。そして、エアゾールバルブに各噴射ボタンを取り付け、実施例1~12、比較例1~4の定量噴射型エアゾールを得た。
【0062】
【表2】
【0063】
なお、表2に示す噴射剤としては、液化石油ガス(0.29MPa(25℃)、0.39MPa(25℃)、0.49MPa(25℃))を使用した。
また、実施例1~10、比較例1~4における耐圧容器には、1回当たりの噴射容量が後述する表3に記載の所定量となるエアゾール組成物を貯留できる定量室(ハウジング)を有するエアゾールバルブを用いた。実施例11、12における耐圧容器には、表2に記載の所定のバルブを取り付けて、1回当たりの噴射容量が後述する表3に記載の所定量となるように、エアゾール組成物が一定時間噴射できる、エアゾール用定量噴射装置((株)安田精機製作所製)を用いて試験を行った。
また、実施例1~9、11、12、比較例1~4における耐圧容器は噴口を1つ備える。また、実施例10における耐圧容器は噴口を3つ備え、すべて同一の方向に配置される。
【0064】
2.体積平均粒子径(D50)の測定
定量噴射型エアゾールの噴霧粒子の50%体積平均粒子径(D50)は以下のようにして測定した。まず、粒度分布測定装置としてレーザー回析式粒度測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製「LDSA-1400A」)を用い、レーザー光発光部より受光部に照射されるレーザービームと、定量噴射型エアゾールの噴口との距離が50cmとなるように、かつ、噴霧粒子がレーザービームを垂直に通過するようにエアゾールの位置を調整した。噴射中に測定を行い、噴霧粒子の粒度分布を自動演算処理装置により解析し、体積積分分布に基づく噴霧粒子の50%体積平均粒子径(D50)を求めた。当該試験を合計3回行い、その平均値を表3に示す。測定は、25℃条件下で行った。
【0065】
3.噴射力の測定
定量噴射型エアゾールの噴射力は以下のようにして測定した。まず、25℃の室温条件下で、定量噴射型エアゾールの噴口から50cmの距離を置いたところに横倒しにしたデジタルフォースゲージ(株式会社イマダ製、型番:DS2-2N)に装着した直径φ60mmの円状の平板の中心に向かってエアゾール組成物を噴射した際の最大値である噴射荷重を求めた。当該試験を合計3回行い、その平均値を表3に示す。
【0066】
4.噴射速度の測定
噴射容量(mL)を上記噴射時間(s)で除することで、単位時間当たりの噴射量である噴射速度(mL/s)を求めた。その平均値を表3に示す。
【0067】
5.薬剤臭・刺激の官能試験
定量噴射型エアゾールを50cmの距離から床面の垂直方向に対して45°の角度をなすように浴室排水口に向けて噴射し、噴射した後の薬剤臭や刺激を何秒後に感じるかについて、噴射部分から50cmの距離にいる専門パネラー3名により、次の基準で評価した。刺激を感じるまでの時間が10秒以上の場合を「良」、10秒未満の場合を「不良」とした。なお、刺激を感じるまでの時間は、専門パネラー3名の平均値とした。
【0068】
6.隙間空間への噴射試験
図1のように、プラスチック製の箱を用いて、幅2mmの浴室排水口隙間を模したモデルを作製し、その下に感熱紙(ワープロ用感熱紙、コクヨS&T株式会社)を敷いた。50cmの距離から床面の垂直線lに対して45°の角度をなすように定量噴射型エアゾールを噴射した。噴霧液が付着して感熱紙が着色した部分について、画像処理ソフトウェアImageJを用いて着色した面積値を画像解析により算出した。なお、評価基準は、付着面積が1cm以上の場合を「良」、1cm未満の場合を「不良」とした。当該試験を合計3回行い、その平均値を表3に示す。
【0069】
【表3】
【0070】
表3の結果からもわかるように、実施例1~12の定量噴射型エアゾールにおいては、薬剤臭や刺激を抑えつつ、隙間空間に対しても適切な量の防除成分を付着させることができた。
一方、比較例1、2の定量噴射型エアゾールは、噴射容量が1.0mLと多いため、薬剤臭や刺激を十分に抑えられず、また、隙間空間に対しても十分な量の防除成分を付着させることが出来なかった。また、比較例3、4の定量噴射型エアゾールは、噴射容量がそれぞれ0.4mL、0.2mLと少ないため、隙間空間に対して十分な量の防除成分を付着させることが出来なかった。
図1