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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023010225
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】硬表面洗浄剤
(51)【国際特許分類】
   C11D 3/43 20060101AFI20230113BHJP
   C11D 1/22 20060101ALI20230113BHJP
   C11D 1/72 20060101ALI20230113BHJP
   C11D 1/74 20060101ALI20230113BHJP
   C11D 1/88 20060101ALI20230113BHJP
   C11D 1/75 20060101ALI20230113BHJP
   C11D 3/20 20060101ALI20230113BHJP
   C11D 17/04 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
C11D3/43
C11D1/22
C11D1/72
C11D1/74
C11D1/88
C11D1/75
C11D3/20
C11D17/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021114209
(22)【出願日】2021-07-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】三谷 絵美
(72)【発明者】
【氏名】宮島 正樹
【テーマコード(参考)】
4H003
【Fターム(参考)】
4H003AB19
4H003AC08
4H003AC12
4H003AC14
4H003AD01
4H003AD05
4H003BA12
4H003BA20
4H003BA21
4H003DA05
4H003DA17
4H003DB02
4H003EA21
4H003EB04
4H003EB06
4H003EB14
4H003EB22
4H003ED02
4H003FA04
4H003FA15
4H003FA21
4H003FA26
4H003FA28
4H003FA36
(57)【要約】
【課題】機械力をかけない場合であっても固体脂の洗浄力に優れるとともに、樹脂への影響(クラッキングの発生)が抑制された硬表面洗浄剤の提供。
【解決手段】アルキル基の炭素数が8~18であるアルキルベンゼンスルホン酸塩(A1)を含むアニオン界面活性剤(A)、25℃の水に対する溶解度が0.1~20g/100mLである有機溶剤(B)、オキシアルキレン基が酸素原子を介してアルキル基の1級炭素原子に結合しているポリオキシアルキレンアルキルエーテル(C1)、及びポリオキシアルキレン脂肪酸アルカノールアミド(C2)からなる群から選ばれる1種以上のノニオン界面活性剤(C)、両性界面活性剤(D1)及びアミンオキシド型界面活性剤(D2)からなる群から選ばれる1種以上である(D)、及び水を含有し、(B)/(A)+(C)(D))で表される質量比が0.1~14である、硬表面洗浄剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分:アルキル基の炭素数が8~18であるアルキルベンゼンスルホン酸塩(A1)を含むアニオン界面活性剤、
(B)成分:25℃の水に対する溶解度が0.1~20g/100mLである有機溶剤、
(C)成分:オキシアルキレン基が酸素原子を介してアルキル基の1級炭素原子に結合しているポリオキシアルキレンアルキルエーテル(C1)、及びポリオキシアルキレン脂肪酸アルカノールアミド(C2)からなる群から選ばれる1種以上のノニオン界面活性剤、
(D)成分:両性界面活性剤(D1)及びアミンオキシド型界面活性剤(D2)からなる群から選ばれる1種以上、
及び水を含有し、
前記(B)成分/(前記(A)成分+前記(C)成分+前記(D)成分)で表される質量比が0.1~14である、硬表面洗浄剤。
【請求項2】
前記(B)成分が、ベンジルアルコール、フェニルグリコール及びフェニルジグリコールから選択される1種以上である、請求項1に記載の硬表面洗浄剤。
【請求項3】
前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(C1)の平均分岐数が0.2~2である、請求項1又は2に記載の硬表面洗浄剤。
【請求項4】
前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(C1)が、下記式(1)で表される化合物である、請求項1~3のいずれか一項に記載の硬表面洗浄剤。
11-O-(R12O)-H ・・・(1)
(式(1)中、R11は炭素数8~18のアルキル基であり、R12は炭素数2又は3のアルキレン基であり、sはR12Oの平均繰り返し数を表し、1以上6未満の数であり、-O-(R12O)は、R11の1級炭素原子に結合している。)
【請求項5】
前記(A)成分/前記(D)成分で表される質量比が0.1~100である、請求項1~4のいずれか一項に記載の硬表面洗浄剤。
【請求項6】
前記アルキルベンゼンスルホン酸塩(A1)が、アルキルベンゼンスルホン酸のアルカノールアミン塩を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の硬表面洗浄剤。
【請求項7】
トリガー式スプレー容器に収容されて用いられる、請求項1~6のいずれか一項に記載の硬表面洗浄剤。
【請求項8】
台所用品用である、請求項1~7のいずれか一項に記載の硬表面洗浄剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬表面洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
食器洗い、レンジ掃除、コンロ掃除、換気扇掃除等に用いられる洗浄剤は、特に油汚れ(液体油、固体脂)に対する洗浄力が求められる。また、操作の簡便さを重視した製品形態として、スプレー容器に収容した洗浄剤が提案されている。
【0003】
特許文献1には、アニオン界面活性剤とキレート剤を組み合わせたスプレー洗剤により、固体脂を含む油汚れを機械力なしで洗浄できる方法が開示されている。
特許文献2には、非水溶性有機溶剤、アミン類、ピロリドン化合物、多価アルコール、アニオン系界面活性剤を含有し、グリル、オーブン等の油汚れを洗浄するのに適した洗浄剤が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-214545号公報
【特許文献2】特開平8-12992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のスプレー洗剤は、牛脂等の固体脂と菜種油等の液体油とを混合した油汚れに対しては機械力なしでも良好な洗浄力を発揮するものの、固体脂のみの油汚れに対しては機械力をかけない場合の洗浄力が不十分である。
特許文献2に記載の洗浄剤に含まれるベンジルアルコールなどの非水溶性有機溶剤は、樹脂製品を洗浄すると損傷の原因になり得るという課題がある。具体的にはABS樹脂(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体)製の表面を洗浄すると、クラッキングが発生することがある。
本発明は、機械力をかけない場合であっても固体脂の洗浄力に優れるとともに、クラッキングの発生を抑制できる硬表面洗浄剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下の態様を有する。
[1] (A)成分:アルキル基の炭素数が8~18であるアルキルベンゼンスルホン酸塩(A1)を含むアニオン界面活性剤、
(B)成分:25℃の水に対する溶解度が0.1~20g/100mLである有機溶剤、
(C)成分:オキシアルキレン基が酸素原子を介してアルキル基の1級炭素原子に結合しているポリオキシアルキレンアルキルエーテル(C1)、及びポリオキシアルキレン脂肪酸アルカノールアミド(C2)からなる群から選ばれる1種以上のノニオン界面活性剤、
(D)成分:両性界面活性剤(D1)及びアミンオキシド型界面活性剤(D2)からなる群から選ばれる1種以上、
及び水を含有し、
前記(B)成分/(前記(A)成分+前記(C)成分+前記(D)成分)で表される質量比が0.1~14である、硬表面洗浄剤。
[2] 前記(B)成分が、ベンジルアルコール、フェニルグリコール及びフェニルジグリコールから選択される1種以上である、[1]の硬表面洗浄剤。
[3] 前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(C1)前記の平均分岐数が0.2~2である、[1]又は[2]の硬表面洗浄剤。
[4] 前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(C1)が、下記式(1)で表される化合物である、[1]~[3]のいずれかの硬表面洗浄剤。
11-O-(R12O)-H ・・・(1)
(式(1)中、R11は炭素数8~18のアルキル基であり、R12は炭素数2又は3のアルキレン基であり、sはR12Oの平均繰り返し数を表し、1以上6未満の数であり、-O-(R12O)は、R11の1級炭素原子に結合している。)
[5] 前記(A)成分/前記(D)成分で表される質量比が0.1~100である、[1]~[4]のいずれかの硬表面洗浄剤。
[6] 前記アルキルベンゼンスルホン酸塩(A1)が、アルキルベンゼンスルホン酸のアルカノールアミン塩を含む、[1]~[5]のいずれかの硬表面洗浄剤。
[7] トリガー式スプレー容器に収容されて用いられる、[1]~[6]のいずれかの硬表面洗浄剤。
[8] 台所用品用である、[1]~[7]のいずれかの硬表面洗浄剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、機械力をかけない場合であっても固体脂の洗浄力に優れるとともに、クラッキングの発生を抑制できる硬表面洗浄剤が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の硬表面洗浄剤(以下、本洗浄剤ともいう。)は、以下に示す(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分及び水を含有する組成物である。
硬表面とは、硬質な素材の物品等の表面を意味する。硬表面の材質としては、プラスチック類、陶磁器、ガラス、ステンレス等を例示できる。
【0009】
<(A)成分>
(A)成分はアニオン界面活性剤である。(A)成分は、油汚れ、特に固体脂に対する洗浄力に寄与する。
(A)成分は、アルキルベンゼンスルホン酸塩(以下、(A1)成分ともいう。)を含む。(A1)成分は、(C)成分及び(D)成分と組み合わせて用いることで、主に(B)成分に起因する樹脂のクラッキングの抑制に寄与する。
【0010】
(A1)成分におけるアルキル基の炭素数は8~18であり、10~15が好ましい。アルキル基は直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。直鎖状であることが好ましい。
アルキルベンゼンスルホン酸の塩の形態としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩;モノエタノールアンモニウム、ジエタノールアンモニウム、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン塩等が挙げられる。これらの中でも、油汚れ、特に固体脂に対する洗浄力が向上する観点から、アルカノールアミン塩が好ましく、トリエタノールアミン塩がより好ましい。
(A1)成分は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
(A1)が、アルキルベンゼンスルホン酸のアルカノールアミン塩を含むことが好ましく、アルキルベンゼンスルホン酸のトリエタノールアミンを含むことがより好ましい。
【0011】
(A1)成分は、例えば、アルキル基の炭素数が8~18であるアルキルベンゼンスルホン酸(以下、「LAS酸」ともいう。)をトリエタノールアミンや水酸化ナトリウム等の中和剤で中和することで得られる。又は、LAS酸を含む本洗浄剤をトリエタノールアミンや水酸化ナトリウム等の中和剤で中和する方法で、本洗浄剤中でLAS酸を中和して(A1)成分とすることもできる。
【0012】
(A)成分は、(A1)成分以外のアニオン界面活性剤(以下、(A2)成分ともいう。)を含んでいてもよい。
(A2)成分としては、スルホン酸塩型のアニオン界面活性剤(ただし、(A1)成分を除く。)、硫酸エステル塩型のアニオン界面活性剤、カルボン酸塩型のアニオン界面活性剤、リン酸エステル塩型のアニオン界面活性剤等が挙げられる。
(A2)成分は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0013】
スルホン酸塩型のアニオン界面活性剤は、分子内に-SO (ここでXは金属イオンを表す)を有するアニオン界面活性剤である。スルホン酸塩型のアニオン界面活性剤としては、例えばアルカンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、α-スルホ脂肪酸塩、α-スルホ脂肪酸アルキルエステル塩、アルキルスルホコハク酸塩、ジアルキルスルホコハク酸等が挙げられる。
硫酸エステル塩型のアニオン界面活性剤は、分子内に-O-SO (ここでXは金属イオンを表す)を有するアニオン界面活性剤である。硫酸エステル塩型のアニオン界面活性剤としては、例えばアルキル硫酸エステル塩、アルケニル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸エステル塩等が挙げられる。
カルボン酸塩型のアニオン界面活性剤は、分子内に-CO (ここでXは金属イオンを表す)を有するアニオン界面活性剤である。カルボン酸塩型のアニオン界面活性剤としては、例えばアルキルエーテルカルボン酸塩、アミドエーテルカルボン酸塩、スルホコハク酸塩、アミノ酸系アニオン界面活性剤等が挙げられる。なお、カルボン酸塩型のアニオン界面活性剤は、石鹸(高級脂肪酸塩)を含まないことが好ましい。
【0014】
(A2)成分の塩の形態としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩;モノエタノールアンモニウム、ジエタノールアンモニウム、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン塩等が挙げられる。
【0015】
(A2)成分は、炭素数8~18のアルキル基又は炭素数8~18のアルケニル基を有することが好ましく、炭素数8~18のアルキル基を有することがより好ましい。(A2)成分に存在するアルキル基及びアルケニル基は、それぞれ直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。
(A2)成分がポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、又はポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸エステル塩である場合、オキシアルキレン基の平均繰り返し数は1~20が好ましく、1~3がより好ましい。オキシアルキレン基の炭素数は2~3が好ましく、具体的には、オキシエチレン基又はオキシプロピレン基が好ましい。
【0016】
<(B)成分>
(B)成分は、25℃の水に対する溶解度(以下、単に「溶解度」ともいう)が0.1~20g/100mLの有機溶剤である。
(B)成分の溶解度は0.5~10g/100mLが好ましく、1~5g/100mLがより好ましい。溶解度が上記下限値以上であれば、本洗浄剤中に均一に溶解しやすく、優れた油汚れ、特に固体脂に対する洗浄力を発揮できる。溶解度が上記上限値以下であれば、機械力をかけなくても優れた油汚れ、特に固体脂に対する洗浄力を発揮できる。
【0017】
(B)成分としては、溶解度が上記範囲内の有機溶剤であれば特に制限されないが、例えばアルコール類、グリコールエーテル類が好ましい。具体例として下記化合物が挙げられる。下記において化合物名の後ろのカッコ内の数値は、その化合物の25℃の水に対する溶解度(単位:g/100mL)である。
アルコール類としては、例えば2-メチル-1-ブタノール(3)、2-メチル-2-ブタノール(12.5)、3-メチルブタノール(2.7)、2-エチル-1-ヘキサノール(0.1)、2-エチルヘキサン-1,3-ジオール(0.3)、ベンジルアルコール(3.5)、フェネチルアルコール(2)等が挙げられる。
グリコールエーテル類としては、例えば2-エチルヘキシルグリコール(0.2)、2-エチルヘキシルジグリコール(0.3)、ヘキシルグリコール(0.99)、ヘキシルジグリコール(1.7)、フェニルグリコール(2.7)、フェニルジグリコール(3.4)、ベンジルグリコール(0.4)、ブチルジグリコールアセテート(6.5)、プロピルプロピレンジグリコール(4.8)、ブチルプロピレングリコール(6.4)、ブチルプロピレンジグリコール(3.0)、ブチルプロピレントリグリコール(0.4)、フェニルプロピレングリコール(0.2)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(0.3)等が挙げられる。
【0018】
(B)成分は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
油汚れ、特に固体脂に対する洗浄力がより高まる観点から、(B)成分としてはベンジルアルコール、フェニルグリコール、フェニルジグリコールが好ましく、ベンジルアルコール、フェニルグリコールがより好ましく、フェニルグリコールが特に好ましい。
【0019】
<(C)成分>
(C)成分は、オキシアルキレン基が酸素原子を介してアルキル基の1級炭素原子に結合しているポリオキシアルキレンアルキルエーテル(C1)、及びポリオキシアルキレン脂肪酸アルカノールアミド(C2)からなる群から選ばれる1種以上のノニオン界面活性剤である。
本洗浄剤が(C)成分を含有することで、油汚れ、特に固体脂に対する洗浄力がより高まる。加えて(C)成分は、(A1)成分及び(D)成分と組み合わせて用いることで、主に(B)成分に起因する樹脂のクラッキングの抑制に寄与する。
【0020】
[(C1)成分]
(C1)成分は、第1級アルコールにアルキレンオキシドを付加したポリオキシアルキレンアルキルエーテルであり、第1級アルコール由来のアルキル基と、アルキレンオキシド由来のオキシアルキレン基を有する。
(C1)成分は、下記式(1)で表される化合物が好ましい。
11-O-(R12O)-H ・・・(1)
式(1)中、R11は炭素数8~18のアルキル基であり、R12は炭素数2又は3のアルキレン基であり、sはR12Oの平均繰り返し数を表し、1以上6未満の数である。
-O-(R12O)は、R11の1級炭素原子に結合している。
【0021】
前記R11の炭素数は10~18が好ましく、13~15がより好ましい。R11は直鎖状でもよく分岐鎖状でもよい。R11は天然アルコール由来でもよく、合成アルコール由来でもよい。
前記sは2~5が好ましく、2~3がより好ましい。前記sが2以上の場合、2以上のR12Oは互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。2以上のR12Oが互いに異なる場合、これらはブロック状に配列していてもよいし、ランダム状に配列していてもよい。
【0022】
(C1)成分の平均分岐数は、0.2~2が好ましく、0.5~1.5が好ましい。
(C1)成分の平均分岐数は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(C1)の1分子に存在するメチル基数から1を引いた数として定義される。平均分岐数は、(C1)成分における側鎖の数(分岐数)の統計的平均値である。(C1)成分の平均メチル基数は、H-NMR分光分析により容易に測定される。
具体的に、平均分岐数は下記式(i)によって算出される。すなわち、平均分岐数は、H-NMRスペクトル中のメチルプロトン(CH基)に対応するシグナル領域を3で除し、この値と、2で除したCH-OH基のメチレンプロトンのシグナル領域とを比較により求められる値である。
平均分岐数={(CH基のメチルプロトンに対応するシグナル領域の積分値/3)-(CH-OH基のメチレンプロトンに対応するシグナル領域の積分値/2)}/(CH-OH基のメチレンプロトンに対応するシグナル領域の積分値/2) ・・・(i)
なお、H-NMR分光分析においては、測定対象((E)成分)を重水又は重クロロホルムに溶解し、試料濃度を30質量%とする。これをH-NMR(例えば、JEOL社製の製品名「JNM―LA300 FT NMR SYSTEM」)により、測定する。
【0023】
(C1)成分の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(アルキル基の炭素数が8~18、オキシアルキレン基の炭素数が2~3、オキシアルキレン基の平均繰り返し数が1以上6未満(好ましくは2~5))、アルキル基の炭素数が13~15であり、側鎖の平均分岐数が0.2~2.0であるオキソアルコールのエチレンオキシド付加物(オキシエチレン基の平均繰り返し数が1以上6未満(好ましくは2~5、さらに好ましくは2~3))が挙げられる。
ポリオキシエチレンアルキルエーテルの市販品としては、BASF社製のLutensolAOシリーズが例示できる。
【0024】
また、(C1)成分として、ガーベット反応による2分子縮合で得られ、β位に分岐構造を有するアルコールのアルキレンオキシド付加物(ガーベットアルコール型ノニオン界面活性剤)も使用できる。
具体例として、2-プロピルヘプチルアルコールエトキシレート、2-エチルヘキシルアルコールエトキシレート等が挙げられる。
2-プロピルヘプチルアルコールエトキシレートの具体例としては、BASF製 Lutensol XPシリーズが挙げられる。
【0025】
[(C2)成分]
ポリオキシアルキレン脂肪酸アルカノールアミド(C2)は、下記式(2)で表される化合物が好ましい。
21-C(=O)-N-(R22O)-H ・・・(2)
(式(2)中、R21は炭素数5~19のアルキル基又はアルケニル基であり、R22は炭素数2~4のアルキレン基であり、tはR22Oの平均繰り返し数を表し、1~20の数である。)
【0026】
21としてのアルキル基又はアルケニル基は、直鎖状でもよく分岐鎖状でもよい。炭素数は9~13が好ましい。
22としてのアルキレン基は、直鎖状でもよく分岐鎖状でもよい。炭素数は2又は3が好ましく、2がより好ましい。
平均繰り返し数tは1~10が好ましく、1~4がより好ましく、2~3がさらに好ましい。
平均繰り返し数が2以上の場合、2以上のR22Oは互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。2以上のR22Oが互いに異なる場合、これらはブロック状に配列していてもよいし、ランダム状に配列していてもよい。
【0027】
(C2)成分の具体例としては、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ポリオキシエチレンラウリン酸モノエタノールアミド、ポリオキシエチレンミリスチン酸モノエタノールアミド、ポリオキシエチレンパルミチン酸モノエタノールアミド、ポリオキシエチレンステアリン酸モノエタノールアミド、ポリオキシエチレンイソステアリン酸モノエタノールアミド、ポリオキシエチレンラウリン酸モノイソプロパノールアミド等のポリオキシエチレン脂肪酸モノアルカノールアミド等が挙げられる。
【0028】
<(D)成分>
(D)成分は、両性界面活性剤(D1)及びアミンオキシド型界面活性剤(D2)から選択される1種以上である。
(D)成分は、(A)成分及び(B)成分と組み合わせて用いることで、機械力をかけなくても優れた油汚れ、特に固体脂に対する洗浄力を発揮できる。加えて、(D)成分を(A1)成分及び(C)成分と組み合わせて用いることで、主に(B)成分に起因する樹脂のクラッキングの抑制に寄与する。
【0029】
[(D1)成分]
両性界面活性剤(D1)としては、例えばカルボン酸塩型の両性界面活性剤、硫酸エステル塩型の両性界面活性剤、スルホン酸塩型の両性界面活性剤、リン酸エステル塩型の両性界面活性剤等が挙げられる。
これらの中でも、油汚れ、特に固体脂に対する洗浄力がより高まる観点から、カルボン酸塩型の両性界面活性剤又はスルホン酸塩型の両性界面活性剤が好ましく、スルホン酸塩型の両性界面活性剤がより好ましい。
両性界面活性剤(D1)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0030】
カルボン酸塩型の両性界面活性剤として、具体的には、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシアルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシアルキルアミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のベタイン型の両性界面活性剤が挙げられる。
スルホン酸塩型の両性界面活性剤として、具体的には、ラウリルヒドロキシスルホベタイン、ラウリルジメチルスルホベタイン等のベタイン型の両性界面活性剤等が挙げられる。
カルボン酸塩型の両性界面活性剤及びスルホン酸塩型の両性界面活性剤は、それぞれ1種を単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0031】
[(D2)成分]
アミンオキシド型界面活性剤(D2)はとしては、例えばアルキルアミンオキシド型界面活性剤、アルカノイルアミドアルキルアミンオキシド型界面活性剤等が挙げられる。
アミンオキシド型界面活性剤(D2)としては、下記式(3)で表される化合物(以下、「化合物(3)」ともいう。)が好ましい。
-(A)-N(-R)(-R)→O ・・・(3)
(式(3)中、Rは炭素数8~18のアルキル基又は炭素数8~18のアルケニル基であり、R及びRはそれぞれ独立して炭素数1~3のアルキル基又は炭素数1~3のヒドロキシアルキル基であり、Aは-C(=O)-NH-R-、-NH-C(=O)-R-、-C(=O)-O-R-、-O-C(=O)-R-又は-O-R-であり、Rは炭素数1~4のアルキレン基であり、pは0又は1の数である。)
【0032】
式(3)中、Rにおけるアルキル基及びアルケニル基の炭素数は、それぞれ8~18であり、10~14が好ましい。
におけるアルキル基及びアルケニル基は、それぞれ直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。
としては、炭素数8~18の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基が好ましく、炭素数10~14の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基がより好ましい。
【0033】
及びRにおけるアルキル基及びヒドロキシアルキル基の炭素数は、それぞれ1~3であり、1~2が好ましく、1がより好ましい。
及びRにおけるヒドロキシアルキル基中のヒドロキシ基の数は、1つでも2つ以上でもよい。
及びRとしては、それぞれ独立して炭素数1~3のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましく、R及びRがいずれもメチル基であることがさらに好ましい。
【0034】
Aは-C(=O)-NH-R-、-NH-C(=O)-R-、-C(=O)-O-R-、-O-C(=O)-R-又は-O-R-であり、-C(=O)-NH-R-が好ましい。
pは、0又は1の数であり、0が好ましい。
【0035】
化合物(3)の具体例としては、ラウリルジメチルアミンオキシド(n-ドデシルジメチルアミンオキシド)、ヤシアルキルジメチルアミンオキシド、ラウリルジエチルアミンオキシド、ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミンオキシド等が挙げられる。
化合物(3)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、本発明の効果が特に得られやすいことから、ラウリルジメチルアミンオキシド(n-ドデシルジメチルアミンオキシド)が好ましい。
【0036】
<水>
水としては、イオン交換水、蒸留水、水道水などを使用することができる。
水は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0037】
<任意成分>
本洗浄剤は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、必要に応じて(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分及び水以外の任意成分をさらに含有してもよい。
任意成分としては、従来の硬表面洗浄剤に用いられる成分であれば特に制限されないが、例えば(A)成分、(C)成分及び(D)成分以外の界面活性剤、キレート剤、ハイドロトロープ剤、防腐剤、pH調整剤、香料、色素等が挙げられる。
ハイドロトロープ剤として下記(E)成分を用いることが好ましい。(E)成分以外の他のハイドロトロープ剤((B)成分は含まない)を用いてもよい。
【0038】
<(E)成分>
(E)成分は、炭素数6~9の芳香族スルホン酸又はその塩、及び炭素数7~10の芳香族カルボン酸又はその塩から選択される1種以上である。
(E)成分を用いると、製剤の粘度を適正にし、かつ貯蔵安定性を発揮できる点で好ましい。
【0039】
炭素数6~9の芳香族スルホン酸又はその塩としては、例えばo-キシレンスルホン酸、m-キシレンスルホン酸等のキシレンスルホン酸又はその塩、o-トルエンスルホン酸、m-トルエンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等のトルエンスルホン酸又はその塩、m-クメンスルホン酸、p-クメンスルホン酸等のクメンスルホン酸又はその塩、メシチレンスルホン酸又はその塩等が挙げられる。
炭素数7~10の芳香族カルボン酸又はその塩としては、例えば安息香酸又はその塩、サリチル酸又はその塩、フタル酸又はその塩、イソフタル酸又はその塩、テレフタル酸又はその塩、p-オキシ安息香酸メチル、p-オキシ安息香酸エチル、p-オキシ安息香酸n-プロピル、p-オキシ安息香酸イソプロピル、β-オキシナフトエ酸、及びこれらのエステル等が挙げられる。
芳香族スルホン酸及び芳香族カルボン酸の塩の形態としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩;モノエタノールアンモニウム、ジエタノールアンモニウム、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン塩等が挙げられる。
【0040】
(E)成分は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
(E)成分としてはキシレンスルホン酸又はその塩、トルエンスルホン酸又はその塩、クメンスルホン酸又はその塩、メシチレンスルホン酸又はその塩、安息香酸又はその塩が好ましく、トルエンスルホン酸又はその塩がより好ましく、p-トルエンスルホン酸又はその塩が特に好ましい。
【0041】
<他のハイドロトロープ剤>
ハイドロトロープ剤(ただし、(B)成分及び(E)成分を除く。)としては、例えば炭素数2~4の1価アルコール、炭素数2~4の2価アルコール、炭素数4~10のグリセリルエーテル等が挙げられる。
炭素数2~4の1価アルコールとしては、例えばエタノール、n-プロパノール、イソプロパノール等が挙げられる。
炭素数2~4の2価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール等が挙げられる。
炭素数4~10のグリセリルエーテルとしては、例えばグリセリン、ヘキシルグリセリルエーテル等が挙げられる。
ハイドロトロープ剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0042】
<キレート剤>
キレート剤としては特に限定されず、公知のものを使用することができる。
キレート剤としては、具体的には、分子量が800以下である低分子キレート剤、重量平均分子量が800を超える高分子キレート剤等が挙げられる。
低分子キレート剤としては、例えばエチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、β-アラニン二酢酸、エチレンジアミン二コハク酸、L-アスパラギン酸-N,N-二酢酸、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、クエン酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、L-グルタミン酸二酢酸、1,3-ジアミノ-2-ヒドロキシプロパン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、ジヒドロキシエチルグリシン、3-ヒドロキシ-2,2’-イミノジコハク酸、セリン二酢酸、アスパラギン二酢酸、メチルグリシン二酢酸、ヒドロキシエタンジホスホン酸、アミノトリメチレンホスホン酸、トリポリリン酸、又はこれらの塩等が挙げられる。
高分子キレート剤としては、例えばマレイン酸とアクリル酸との共重合体(以下「マレイン酸/アクリル酸共重合体」ともいう。)又はその塩が好適に挙げられる。
キレート剤を構成する塩としては、アルカリ金属塩が好ましく、ナトリウム塩、カリウム塩がより好ましい。
キレート剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、ガラスコップ等の茶渋汚れに対する洗浄力が高まりやすいことから、低分子キレートが好ましい。
【0043】
<防腐剤>
防腐剤としては、ベンズイソチアゾリノン、メチルイソチアゾリノン、ブチルベンズイソチアゾリノン、クロロメチルイソチアゾリノン、オクチルイソチアゾリノン、ジクロロオクチルイソチアゾリノン等のイソチアゾリン系防腐剤が挙げられる。1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
好ましくは、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、又はその併用である。
【0044】
<pH調整剤>
pH調整剤としては、アルカノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、硫酸等が挙げられる。
アルカノールアミンとしては、具体的にはモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン等が挙げられる。1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0045】
<含有量・質量比>
(A)成分の含有量は、本洗浄剤の総質量に対して0.72~31質量%が好ましく、3~16質量%がより好ましい。上記範囲内であれば、油汚れ、特に固体脂に対する洗浄力に優れる。加えて、(C)成分及び(D)成分と組み合わせたときの樹脂のクラッキング抑制効果に優れる。
(A)成分の総質量に対する(A1)成分の含有量(以下、「Aに対するA1の割合」ともいう)は、30質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、80質量%がさらに好ましく、100質量%が特に好ましい。上記下限値以上であれば、油汚れ、特に固体脂に対する洗浄力に優れる。加えて、(C)成分及び(D)成分と組み合わせたときの樹脂のクラッキング抑制効果に優れる。
【0046】
(B)成分の含有量は、本洗浄剤の総質量に対して0.1~15質量%が好ましく、3~10質量%がより好ましい。上記下限値以上であれば、油汚れ、特に固体脂に対する洗浄力がより向上する。上記上限値以下であれば、樹脂のクラッキング抑制効果に優れる。
【0047】
(C)成分の含有量は、本洗浄剤の総質量に対して0.05~10質量%が好ましく、0.1~3質量%がより好ましい。上記範囲内であれば、油汚れ、特に固体脂に対する洗浄力に優れる。上記上限値以下であれば(A)成分及び(D)成分と組み合わせたときの樹脂のクラッキング抑制効果に優れる。
【0048】
(D)成分の含有量は、本洗浄剤の総質量に対して0.03~10質量%が好ましく、0.1~2質量%がより好ましい。上記範囲内であれば、油汚れ、特に固体脂に対する洗浄力に優れる。上記下限値以上であれば、(A)成分及び(C)成分と組み合わせたときの樹脂のクラッキング抑制効果に優れる。
【0049】
本洗浄剤が(E)成分を含む場合、(E)成分の含有量は本洗浄剤の総質量に対して0.48~15質量%が好ましく、2~6質量%がより好ましい。(E)成分の含有量が上記の範囲内であれば本洗浄剤の粘度を適正に調整しやすく、貯蔵安定性の向上効果に優れる。
【0050】
水の含有量は、本洗浄剤の総質量に対して50~95質量%が好ましく、67~95質量%がより好ましい。水の含有量が上記範囲内であれば、本洗浄剤を調製しやすい。加えて、本洗浄剤を使用する際に、水への溶解性がより良好となる。
本洗浄剤の各成分の含有量の合計は、100質量%を超えない。
【0051】
(A)成分及び(B)成分の含有量の合計(以下、「A+B」ともいう。)は、本洗浄剤の総質量に対して0.82~32質量%が好ましい。
(A)成分及び(D)成分の含有量の合計(以下、「A+D」ともいう。)は、本洗浄剤の総質量に対して0.75~32質量%が好ましい。
本洗浄剤に含まれるすべての界面活性剤の含有量の合計(以下、「総界面活性剤量」ともいう。)は、本洗浄剤の総質量に対して、0.8~32質量%が好ましい。
【0052】
(B)成分/((A)成分+(C)成分+(D)成分)で表される質量比(以下、「B/(A+C+D)比」ともいう。)は、0.1~14であり、0.4~1.5がより好ましい。上記範囲内であれば、油汚れ、特に固体脂に対する洗浄力に優れる。上記上限値以下であれば、樹脂のクラッキング抑制効果に優れる。
(A)成分/(B)成分で表される質量比(以下、「A/B比」ともいう。)は、0.048~13が好ましい。
(A)成分/(D)成分で表される質量比(以下、「A/D比」ともいう。)は、0.1~100が好ましく、4~100がより好ましい。上記範囲内であれば、油汚れ、特に固体脂に対する洗浄力に優れる。加えて、樹脂のクラッキング抑制効果に優れる。
【0053】
<製造方法>
本洗浄剤の製造方法は特に限定されず、従来公知の製造方法を用いることができる。例えば、水の一部に、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分と、必要に応じてpH調整剤以外の任意成分とを加えて溶解させ、必要に応じてpH調整剤にて所望のpHに調整した後、水の残部を加えることによって製造できる。
【0054】
<pH>
本洗浄剤の25℃におけるpHは5~10が好ましく、6~8がより好ましい。pHが上記範囲内であれば樹脂に対するクラッキングが生じにくくなる。
本洗浄剤のpHは、JIS Z 8802:1984「pH測定方法」に準拠した方法により測定される値を示す。
【0055】
<トリガースプレー容器>
本洗浄剤は、トリガー式スプレー容器に収容された製品形態とすることができる。
トリガー式スプレー容器としては特に制限されるものではなく、一般的な洗浄剤製品(トリガー式スプレー容器に洗浄剤が収容されたもの)に用いられている容器(スプレーヤー)を用いることができる。
トリガー式スプレー容器としては、具体的には本洗浄剤を霧状に吐出できるものであればよい。又は、霧状にも泡状にも吐出でき、これらの切り替えが可能なものでもよい。さらに、本洗浄剤を広範囲に吐出するワイドパターンと、狭範囲に吐出するナローパターンとの切り替えが可能なものでもよい。
また、トリガー式スプレー容器は公知の機構のものが使用でき、直圧型であっても蓄圧型であってもよい。トリガー式スプレー容器の例としては、例えば特開平10-146546号公報、特開2000-24561号公報などに記載のものが挙げられる。
【0056】
<使用方法>
本洗浄剤は、良好な油汚れ洗浄力を有するとともに、樹脂のクラッキング抑制効果に優れる。
本洗浄剤を用いた洗浄対象物の洗浄方法は、本洗浄剤を洗浄対象物に接触させて洗浄対象物を洗浄する方法である。例えば本洗浄剤をトリガー式スプレー容器に収容し、このトリガー式スプレー容器から本洗浄剤を噴霧して洗浄対象物と接触させ、洗浄対象物を洗浄する。
本洗浄剤は油汚れ、特に固体脂に対する洗浄力に優れるため、手やスポンジ等の洗浄具で洗浄対象物を擦り洗いするなどの機械力をかけなくても、固体脂が付着した洗浄対象物を洗浄できる。すなわち、本洗浄剤は、機械力をかけずに固体脂が付着した洗浄対象物を洗浄する際に用いる洗浄剤として特に好適であり、手やスポンジ等の洗浄具の届きにくい部位や、洗浄対象物の細部の洗浄に有効である。
ここで、「機械力をかけずに」とは、本洗浄剤の接触以外に、意図的な洗浄操作を行わないことを意味する。なお、洗浄対象物に接触させた本洗浄剤が自然に流下すること、洗浄を目的としない振動が洗浄対象物に伝わること、洗浄対象物に接触させた本洗浄剤を水ですすぐことなどは、機械力をかけずに洗浄対象物を洗浄する場合に相当する。
【0057】
洗浄対象物は、硬表面を有する物品であればよく、例えば台所用品が好ましい。すなわち、本洗浄剤は台所用品用として好適に用いることができる。
本発明において、皿、箸、スプーン等の食器;鍋、包丁、まな板等の調理器具;換気扇、レンジ、コンロ等の厨房器具を総じて「台所用品」と称する。
【実施例0058】
以下、実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。なお、各例で用いた成分の配合量は、特に断りのない限り純分換算値である。
【0059】
<使用原料>
[(A)成分]
A1-1:LAS-TEA、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン塩(アルキル基の炭素数:10~14)、アルキル基の炭素数が10~14である直鎖アルキルベンゼンスルホン酸(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製、商品名「ライポン LH-200」、純分96質量%)をトリエタノールアミン(日本触媒社製、商品名「トリエタノールアミンS-80」)で中和したもの。
・A1-2:LAS-Na、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(アルキル基の炭素数:10~14)、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製、商品名「ライポン LS-250、純度50質量%。
・A2-1:AES-Na、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(アルキル基の炭素数12及び14、比率がC12:C14=75:25、天然アルコール由来。オキシエチレン基の平均繰り返し数2)、新日本理化社製、商品名「シノリン SPE-1250」、純度70質量%。
【0060】
[(B)成分]
・B-1:フェニルグリコール(三洋化成工業社製、商品名「ニューポール EFP」、溶解度:2.7g/100mL)。
・B-2:ベンジルアルコール(純正化学社製、商品名「ベンジルアルコール」、溶解度:3.5g/100mL)。
・B-3:フェニルジグリコール(東京化成工業社製、商品名「フェニルジグリコール」、溶解度:3.4g/100mL)。
[(B’)成分(比較成分)]
・B’-1:ブチルカルビトール(東京化成工業社製、商品名「ジエチレングリコールモノブチルエーテル」、溶解度:無限大(20g/100mL超))。
【0061】
[(C)成分]
・C1-1:ポリオキシエチレンアルキルエーテル(上記式(1)においてR11が炭素数13~15のアルキル基、R12がエチレン基、sが3である化合物、平均分岐数が1)、BASF社製、商品名「LutensolAO3」。
・C1-2:ポリオキシエチレンアルキルエーテル(上記式(1)においてR11が炭素数13~15のアルキル基、R12がエチレン基、sが5である化合物、平均分岐数が1 )、BASF社製、商品名「LutensolAO5」。
・C1-3:2-プロピルヘプチルアルコールエトキシレート(上記式(1)においてR11が炭素数10のアルキル基、R12がエチレン基、sが3である化合物、平均分岐数が2)、BASF社製、商品名「LutensolXP30」。
・C2-1:ポリオキシエチレンラウリン酸モノエタノールアミド、上記式(2)において、R21が炭素数11のアルキル基、R22がエチレン基、tが2である化合物)、川研ファインケミカル社製、商品名「アミゼット2L-Y」。
[(C’)成分(比較成分)]
・C’-1:ポリオキシエチレンアルキルエーテル(アルキル基の炭素数が12~14である第2級アルコールにエチレンオキシドを付加した化合物、オキシエチレン基の平均繰り返し数が3)、日本触媒社製、商品名「ソフタノール33」。
【0062】
[(D)成分]
・D-1:AX、n-ドデシルジメチルアミンオキシド、上記式(3)において、Rが炭素数12の直鎖状のアルキル基、Rがメチル基、Rがメチル基、pが0である化合物、(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製、商品名「カデナックス DM12D-W」)。
・D-2:ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミンオキシド、上記式(3)において、Rが炭素数11の直鎖状のアルキル基、Aが-C(=O)-NH-R-、Rがメチル基、Rがメチル基、Rがプロピレン基、pが1である化合物、(クラリアント社製、商品名「GENAMINOX AP」)。
・D-3:ラウリルヒドロキシスルホベタイン(花王社製、商品名「アンヒトール 20HD」)。
【0063】
[(E)成分]
・E-1:PTS-TEA、パラトルエンスルホン酸トリエタノールアミン塩、パラトルエンスルホン酸(関東化学社製、商品名「p-トルエンスルホン酸一水溶液」)をトリエタノールアミン(日本触媒社製、商品名「トリエタノールアミンS-80」)で中和したもの。
【0064】
[その他の任意成分]
・香料:特開2002-128658号公報の段落[0065]~[0071]に記載された香料A~D、特開2003-73249号公報の段落[0076]~[0088]に記載されたA~E、又は特開2020-132680号公報の段落[0016]~[0023]に記載の調合香料組成物1~4から適宜選択した。
・pH調整剤:水酸化ナトリウム(AGC社製、商品名「48%水酸化ナトリウム」)及び硫酸(関東化学社製)の少なくとも一方。
・水:イオン交換水。
【0065】
<実施例1~29、比較例1~9>
[硬表面洗浄剤の調製]
表1~8に示す配合組成の硬表面洗浄剤1000gを以下の手順にて調製した。
1Lビーカーに(A)成分と、(B)成分と、(C)成分と、水(水全体の約8割)を入れ、スリーワンモータ(新東科学社製、商品名「FBL600」)で均一になるまで撹拌した。続いて(D)成分と、水及びpH調整剤(NaOH、硫酸)以外の任意成分とを加え、混合した。混合終了後、25℃でのpHが表1~8に示す値となるように、必要に応じpH調整剤を適量添加した後、全体量が100質量%になるように残りの水を加え、さらによく撹拌し、硬表面洗浄剤を得た。
硬表面洗浄剤のpH(25℃)は、硬表面洗浄剤を25℃に調温し、ガラス電極式pHメーター(東亜ディーケーケー社製、商品名「HM-30G」)を用い、ガラス電極を硬表面洗浄剤に直接に浸漬し、1分間経過後に示すpHを測定した。測定方法は、JIS Z 8802:1984「pH測定方法」に準拠して行った。
得られた各例の硬表面洗浄剤について、下記の評価方法で、クラッキング防止性及び洗浄力を評価した。結果を表1~8に示す。
【0066】
[評価方法]
(クラッキング防止性の評価(損傷試験))
100mLのビーカーに評価対象の硬表面洗浄剤15mLを入れ、そこに7.5cm×1cmに裁断したABS樹脂製の試験片(東レ社製、厚さ0.1cm)を浸漬し、30℃の雰囲気中で24時間放置した後、表面の損傷程度を目視にて観察した。下記の評価基準でクラッキング防止性を3段階に評価した。
≪評価基準≫
◎:試験片が全く変化しなかった。
○:試験片にわずかな変化が生じたが、明らかな変色及びクラッキング(ひび割れ)発生のいずれも認められない。
×:試験片の明らかな変色及びクラッキング発生の少なくとも一方が認められる。
【0067】
(洗浄力の評価)
機械力をかけずに洗浄したときの洗浄力を評価した。
市販されている台所用洗剤「レンジまわりのルック」のトリガー式スプレー容器に評価対象の硬表面洗浄剤を収容した。
牛脂(純度100質量%、富士フイルム和光純薬社製)に対し、視認性を上げる為に、重量で0.1%となるように着色料(Sudan IV)を均一溶解させたものを評価用汚垢とした。調製した汚垢1.0gを、ポリプロピレン製のプラスチック保存容器(岩崎工業社製、商品名「ラストロ・ネオキーパー870mL」)の内面に塗布した。具体的には、電子天秤で計量しながら、ポリスポイトを用いて均一に塗布した。その後、室温(25℃)で8時間静置して疎水表面汚垢を作製した。
上記の疎水表面汚垢に対し、トリガー式スプレー容器に収容された硬表面洗浄剤10mLを噴霧し、30秒間静置した後、25℃流速5L/分の流水で満遍なく充分にすすいだ。残存汚垢を目視にて確認した後、容器内面を手でこすった際の感触を確認した。下記の評価基準で洗浄力を4段階に評価した。
≪評価基準≫
◎◎:汚垢の残りが全く無く、手で触ってもぬるつきを全く感じない。
◎:汚垢の残りが殆ど無く、手で触ってもぬるつきを殆ど感じない。
〇:汚垢の残りは殆ど無いが、手で触るとややぬるつきを感じる。
×:汚垢が明らかに残っており、手で触ると明らかにぬるつきを感じる。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】
【表3】
【0071】
【表4】
【0072】
【表5】
【0073】
【表6】
【0074】
【表7】
【0075】
【表8】
【0076】
表1~8中、「適量」とは、各例の硬表面洗浄剤のpHを表中の値にするのに要した量である。「バランス」とは、硬表面洗浄剤全体で100質量%とするのに必要な水の配合量(質量%)である。また、表中に配合量が記載されていない成分は、配合されていない。
【0077】
表1~6の結果に示されるように、各実施例の硬表面洗浄剤は、クラッキング防止性に優れ、機械力をかけなくても固体脂に対する洗浄力に優れていた。
一方、表7の結果に示されるように、(A)~(D)成分のいずれかを含まない比較例1~4は洗浄力が劣っていた。また(D)成分を含まない比較例3、及び(A)成分を含まない比較例4はクラッキング防止性にも劣っていた。
表8の結果に示されるように、(A)成分が(A1)成分を含まない比較例5は洗浄力が劣っていた。
(B)成分に代えて、溶解度が20g/100mLを超える(B’-1)成分を用いた比較例6は洗浄力が劣っていた。
(C)成分に代えて、第2級アルコールにアルキレンオキシドを付加した(C’-1)成分を用いた比較例7は洗浄力が劣っていた。
B/(A+C+D)比が0.1未満である比較例8は洗浄力が劣っていた。
B/(A+C+D)比が14を超える比較例9はクラッキング防止性が劣っていた。