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特開2023-102268惑星表面で使用されるシステム、およびその組み立て方法
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  • 特開-惑星表面で使用されるシステム、およびその組み立て方法 図1
  • 特開-惑星表面で使用されるシステム、およびその組み立て方法 図2
  • 特開-惑星表面で使用されるシステム、およびその組み立て方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102268
(43)【公開日】2023-07-24
(54)【発明の名称】惑星表面で使用されるシステム、およびその組み立て方法
(51)【国際特許分類】
   B64G 1/16 20060101AFI20230714BHJP
   B64G 4/00 20060101ALI20230714BHJP
【FI】
B64G1/16
B64G4/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203819
(22)【出願日】2022-12-21
(31)【優先権主張番号】17/572,820
(32)【優先日】2022-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500107762
【氏名又は名称】ハミルトン・サンドストランド・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】HAMILTON SUNDSTRAND CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】ジュリー ストリックランド
(72)【発明者】
【氏名】アシュリー ローズ ヒメルマン
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル カプラン
(57)【要約】
【課題】 惑星表面で使用されるシステムおよびその組み立て方法を提供する。
【解決手段】 惑星表面で使用されるシステムは、互いに平行に配置されたリッジを含む。リッジは、リッジの上を走行する地球外ビークルの重量を支える。システムはまた、リッジのそれぞれの相対位置を維持するベースと、リッジのうちの1つ以上を制御して振動させるコントローラと、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
惑星表面で使用されるシステムであって、前記システムは、
互いに平行に配置されたリッジであって、前記リッジの上を走行する地球外ビークルの重量を支えるように構成された前記リッジと、
前記リッジのそれぞれの相対位置を維持するように構成されたベースと、
前記リッジのうちの1つ以上を制御して振動させるように構成されたコントローラと、
を備える、前記システム。
【請求項2】
前記ベースは、可撓性であり、前記惑星表面に適合するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記ベースは、剛性である、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記リッジのうちの少なくとも1つのリッジの高さが、前記リッジのうちの別の少なくとも1つのリッジの高さと異なるように、前記リッジは非平面的である、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記リッジのそれぞれが同じ高さを有するように、前記リッジは平面的である、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記リッジは、中空である、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記リッジは、中実である、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記リッジの断面形状は、円形、長方形、三角形、または台形である、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記リッジのうちの隣接するリッジ間の距離は均一である、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記リッジのうちの隣接するリッジ間の距離は不均一である、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
惑星表面で使用されるシステムの組み立て方法であって、
リッジを互いに平行に配置することであって、前記リッジは、前記リッジの上を走行する地球外ビークルの重量を支えるように構成される、前記配置することと、
前記リッジのそれぞれの相対位置を維持するようベースを構成することと、
前記リッジのうちの1つ以上を制御して振動させるコントローラを接続することと、
を含む、前記方法。
【請求項12】
前記ベースを前記構成することは、前記惑星表面に適合するように前記ベースが可撓性であることを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ベースを前記構成することは、前記ベースが剛性であることを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記リッジを前記配置することは、前記リッジのうちの少なくとも1つのリッジの高さが、前記リッジのうちの別の少なくとも1つのリッジの高さと異なるように、非平面的リッジを配置することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記リッジを前記配置することは、前記リッジのそれぞれが同じ高さを有するように、平面的リッジを配置することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記リッジを前記配置することは、中空のリッジを配置することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記リッジを前記配置することは、中実のリッジを配置することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記リッジを前記配置することは、前記リッジの断面形状が円形、長方形、三角形、または台形であることを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記リッジを前記配置することは、前記リッジのうちの隣接するリッジ間の距離が均一であることを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記リッジを前記配置することは、前記リッジのうちの隣接するリッジ間の距離が不均一であることを含む、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
例示的な実施形態は、ビークルの技術に関し、具体的には、ビークルからの粉塵除去に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な環境で様々な用途に使用されるビークルは、粉塵、砂利、及び他の岩屑で覆われた状態になり得る。宇宙で使用される場合、例えば、地球外ビークルには、惑星表面からのレゴリス(すなわち遊離した岩屑)または土壌がこびりつき得る。ローバーと称されることの多い地球外ビークルは、地球以外の惑星の表面で使用されるビークルである。地球外ビークルは、有人ビークルであってもよく、または無人で自律動作もしくは遠隔制御動作のビークルであってもよい。さらに、地球外ビークルは、例えば進路など移動のための車輪または他の機構を有し得る。地球外ビークルは、数ある中でも、宇宙飛行士を輸送し、土壌及び他のサンプルを収集するために使用され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、本発明は、惑星表面で使用されるシステムおよびその組み立て方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一実施形態では、惑星表面で使用されるシステムは、互いに平行に配置されたリッジを含む。リッジは、リッジの上を走行する地球外ビークルの重量を支える。システムはまた、リッジのそれぞれの相対位置を維持するベースと、リッジのうちの1つ以上を制御して振動させるコントローラと、を含む。
【0005】
付加的または代替的に、ベースは、惑星表面に適合するように可撓性である。
【0006】
付加的または代替的に、ベースは剛性である。
【0007】
付加的または代替的に、リッジのうちの少なくとも1つのリッジの高さが、リッジのうちの別の少なくとも1つのリッジの高さと異なるように、リッジは非平面的である。
【0008】
付加的または代替的に、リッジのそれぞれが同じ高さを有するように、リッジは平面的である。
【0009】
付加的または代替的に、リッジは中空である。
【0010】
付加的または代替的に、リッジは中実である。
【0011】
付加的または代替的に、リッジの断面形状は、円形、長方形、三角形、または台形である。
【0012】
付加的または代替的に、リッジのうちの隣接するリッジ間の距離は、均一である。
【0013】
付加的または代替的に、リッジのうちの隣接するリッジ間の距離は、不均一である。
【0014】
別の実施形態では、惑星表面で使用されるシステムを組み立てる方法は、リッジを互いに平行に配置することを含む。リッジは、リッジの上を走行する地球外ビークルの重量を支える。方法はまた、リッジのそれぞれの相対位置を維持するようにベースを構成することと、リッジのうちの1つ以上を制御して振動させるコントローラを接続することと、を含む。
【0015】
付加的または代替的に、ベースを構成することは、惑星表面に適合するようにベースが可撓性であることを含む。
【0016】
付加的または代替的に、ベースを構成することは、ベースが剛性であることを含む。
【0017】
付加的または代替的に、リッジを配置することは、リッジのうちの少なくとも1つのリッジの高さが、リッジのうちの別の少なくとも1つのリッジの高さと異なるように、非平面的リッジを配置することを含む。
【0018】
付加的または代替的に、リッジを配置することは、リッジのそれぞれが同じ高さを有するように、平面的リッジを配置することを含む。
【0019】
付加的または代替的に、リッジを配置することは、中空のリッジを配置することを含む。
【0020】
付加的または代替的に、リッジを配置することは、中実のリッジを配置することを含む。
【0021】
付加的または代替的に、リッジを配置することは、リッジの断面形状が円形、長方形、三角形、または台形であることを含む。
【0022】
付加的または代替的に、リッジを配置することは、リッジのうちの隣接するリッジ間の距離が均一であることを含む。
【0023】
付加的または代替的に、リッジを配置することは、リッジのうちの隣接するリッジ間の距離が不均一であることを含む。
【0024】
下記の説明は、決して限定と見なされるべきではない。添付図面に関して、同様の要素には同様の番号が付される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】1つ以上の実施形態による、地球外ビークルから粉塵を除去するための例示的な粉塵剥離システムを示す。
図2】1つ以上の実施形態による、地球外ビークルから粉塵を除去するための別の例示的な粉塵剥離システムを示す。
図3】A~Eは、1つ以上の実施形態による、地球外ビークルから粉塵を除去するための粉塵剥離システムのリッジの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
開示される装置及び方法の1つ以上の実施形態の詳細説明が、限定ではなく例示として、図を参照しながら本明細書に提示される。
【0027】
本明細書で詳述されるシステム及び方法の実施形態は、ビークルからの粉塵除去に関する。前述のように、ビークルは粉塵、及び岩屑などで覆われた状態になり得る。ビークルを覆うまたはビークルに付着するものはすべて、本明細書では概して粉塵と称する。また述べられたように、地球外ビークルとは、地球以外の惑星の表面で使用される有人ビークルまたは無人ビークルを指す。説明目的で、惑星表面で使用される地球外ビークル及びシステムが具体的に論述される。しかしながら、本明細書で詳述される粉塵剥離は、あらゆる環境のあらゆるビークルに適用可能であり得る。地球外ビークルであっても、または船外活動ユニット(EMU)内の宇宙飛行士であっても、惑星表面を移動すると、粉塵雲を生じ得、粉塵雲は地球外ビークルまたはEMUに付着する。惑星の粉塵(例えばレゴリス、土壌)は、肺に瘢痕組織を生じることが判明しており、脳腫瘍と関連し得、火星の粉塵は、有毒であることが判明している。粉塵は、その密度及び量に基づいて、時間の経過とともに地球外ビークルのスムーズな動きを妨げ得る。さらに、粉塵は、電子機器に積もって、誤作動の原因となり得る。
【0028】
1つ以上の実施形態によれば、粉塵剥離システムの上を走行することにより、粉塵は、実質的に地球外ビークルから振り落とされる。粉塵を剥離させて地球外ビークルから落下させることは、リッジのうちの少なくとも1つが振動状態であり得る一連のリッジに、地球外ビークルが乗り上げて走行することにより、達成される。リッジは、非平面的であり得(すなわち不均一な高さを有し得)、異なる断面形状の中空管または中実ロッドで形成され得る。粉塵剥離システムは、惑星環境へ容易に輸送されるように、ならびに地球外ビークルにより輸送されていつでも使用できるように、巻くまたは折りたたむことができる。
【0029】
図1は、1つ以上の実施形態による、地球外ビークル150から粉塵を除去するための例示的な粉塵剥離システム110を示す。粉塵剥離システム110は、互いに平行に配置されたリッジ120を含む。図示されるように、リッジ120の断面形状は、正方形または長方形である。リッジ120の平行配置は、示されるように、地球外ビークル150の進行方向に対して垂直である。地球外ビークル150がリッジ120上を進行することで生じる動揺により、地球外ビークル150から粉塵が振り落とされ得る。
【0030】
図示されるように、リッジ120は距離dだけ互いに分離され、リッジ120は非平面的である。すなわち、隣接するリッジ120は、異なる高さを有する。具体的には、リッジ120に関して、2つの異なる高さh1、h2が図示される。高さが異なると、動揺が大きくなり、よって、粉塵除去が向上し得る。代替的な実施形態では、リッジ120は、平面的であり得(すなわち同じ高さを有し得)、または任意の数の異なる高さを有し得る。さらに、隣接するリッジ120間の距離dは、同一でなくてもよい。リッジ120の配置は、ベース130により維持される。図1の例示では、ベース130は、マットのように可撓性があって中実である。よって、ベース130及びリッジ120は、輸送及び保管のために、巻くまたは折りたたむことができる。例えば、粉塵剥離システム110は、地球外ビークル150に持ち込むことができ、宇宙飛行士は、必要に応じて使用するために、ベース130を伸ばすまたは広げることができる。図示されるように、ベース130の可撓性により、ベース130は、惑星表面に適合することが可能となる。
【0031】
リッジ120のうちの1つに接続されたコントローラ140が図示される。代替的な実施形態では、コントローラ140は、任意の数のリッジ120に接続され得る。コントローラ140は、バッテリー駆動であってもよく、または図示されるように地球外ビークル150もしくは固定電源に接続された電源ケーブル145を介して電力供給されてもよい。コントローラ140は、既知の技術(例えば機械的刺激または音響的刺激を加える技術)に従って、1つ以上のリッジ120を制御して振動させる。コントローラ140は、例えば粉塵のレベルまたは地球外ビークル150の種類に基づいて、振動の周波数を変更し得る。周波数の変更は、センサ(例えばカメラ)に基づいて自動的に行われてもよく、または宇宙飛行士が手動で設定してもよい。振動により、地球外ビークル150からの粉塵除去はさらに向上し得る。地球外ビークル150は、リッジ120の振動中に、粉塵剥離システム110上で一時停止し得る。
【0032】
図2は、1つ以上の実施形態による、地球外ビークル150から粉塵を除去するための別の例示的な粉塵剥離システム110を示す。図1は側面図であるが、図2は上から見下ろした図であり、リッジ120の平行配置を示す。図1に示されるベース130は中実であるが、図2に示されるベース130は、可撓性コネクタ(例えばチェーン)または剛性コネクタ(例えばビーム)を含む。剛性コネクタの例示的な事例では、傾斜したベース130及び粉塵剥離システム110(すなわちランプ)が実現され得る。示されるように、コントローラ140は、リッジ120のうちの4つに接続され、リッジ120のうちの1つ以上を制御して振動させ得る。
【0033】
例示的な実施形態によれば、図示されるように、地球外ビークル150の車輪が振動するリッジ120の上に駐車され得るように、振動するリッジ120の各ペア間の距離d2及びペアとペアの間の距離2*d1が選択され得る。地球外ビークル150は、粉塵剥離システム110を複数回横断してもよい。例えば、地球外ビークル150は、図示されるように駐車し、1つのサイクル中にリッジ120の振動により粉塵を剥離させることが可能となり得る。その後、地球外ビークル150は、後続のサイクル中に停止することなく、すべてのリッジ120を横断して走行してもよい。
【0034】
図3A図3Eは、1つ以上の実施形態による、地球外ビークル150から粉塵を除去するための粉塵剥離システム100のリッジ120の断面図である。リッジ120の材料及び寸法は、変形することなく地球外ビークル150の重量を支えられるものが選択される。例示的な材料には、ステンレス、アルミニウム、及び地球外ビークル150の重量を支えるのに必要な強度を提供すると同時に、軽量で容易な輸送を促進する複合材料が含まれる。図3Aは、リッジ120のための中実円形断面形状(すなわちロッド)を示す。非平面的な粉塵剥離システム110を実現するために、リッジ120のうちのいくつかのリッジの直径が変更されてもよく、またはリッジ120のいくつかのリッジの形状が変更されてもよい(例えば楕円形であってもよい)。すなわち、所与の粉塵剥離システム110におけるリッジ120のすべてが、同じ断面形状を有さなくてもよい。
【0035】
図3Bは、リッジ120の中空円形断面形状(すなわちパイプ)を示す。図1のリッジ120の断面形状は、中実であり得るが、図3Cに示されるリッジ120の断面形状は、中空長方形である。図3Dは、リッジ120の台形断面形状を示し、図3Eは、三角形断面形状を示す。例示的な断面形状は、リッジ120に使用され得る代替的または付加的な断面形状を限定する意図はない。
【0036】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、本開示を限定する意図はない。本明細書で使用される単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上明らかに別段の指示がない限り、複数形も含むことが意図される。用語「備える/含む(comprises)」及び/または「備えている/含んでいる(comprising)」は、本明細書で使用される場合、述べられる特徴、構成要素、ステップ、動作、要素、及び/または成分の存在を特定するが、1つ以上の他の特徴、構成要素、ステップ、動作、要素、成分、及び/またはこれらのグループの存在もしくは追加を除外しないことが、さらに理解されよう。
【0037】
本開示は1つ以上の例示的な実施形態を参照して説明されているが、本開示の範囲から逸脱することなく、様々な変更が加えられてもよく、本開示の要素は均等物で置き換えられてもよいことが、当業者には理解されよう。さらに、特定の状況または材料を本開示の教示に適応させるために、本開示の本質的範囲から逸脱することなく、多くの修正が加えられてもよい。よって、本開示は、本開示を実行するために想到される最適の形態として開示される特定の実施形態に限定されるのではなく、本開示は、特許請求の範囲に入るすべての実施形態を含むことが意図される。
図1
図2
図3