(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102271
(43)【公開日】2023-07-24
(54)【発明の名称】レシオメトリック蛍光画像化方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/64 20060101AFI20230714BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20230714BHJP
G01N 33/483 20060101ALI20230714BHJP
G01N 33/542 20060101ALI20230714BHJP
A61B 1/00 20060101ALI20230714BHJP
【FI】
G01N21/64 F
C12Q1/02 ZNA
G01N33/483 C
G01N33/542 A
A61B1/00 511
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022207680
(22)【出願日】2022-12-23
(62)【分割の表示】P 2019553092の分割
【原出願日】2018-04-05
(31)【優先権主張番号】62/483,004
(32)【優先日】2017-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VISUAL BASIC
(71)【出願人】
【識別番号】514025133
【氏名又は名称】アベラス アクイジション コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハルトゥーニアン,アレック
(72)【発明者】
【氏名】ゴンザレス,ジーザス,イー.
【テーマコード(参考)】
2G043
2G045
4B063
4C161
【Fターム(参考)】
2G043AA04
2G043BA16
2G043CA04
2G043CA05
2G043CA09
2G043EA01
2G043FA01
2G043FA02
2G043FA06
2G043GA04
2G043GB18
2G043GB21
2G043JA02
2G043JA03
2G043KA01
2G043KA02
2G043KA09
2G043LA03
2G043MA01
2G043MA12
2G043NA01
2G043NA05
2G043NA06
2G045AA25
2G045CB01
2G045FA19
4B063QA19
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QR48
4B063QR56
4B063QS32
4B063QX02
4C161AA05
4C161AA24
4C161BB08
4C161HH54
4C161QQ04
4C161WW17
(57)【要約】 (修正有)
【課題】精度が改善された生物試料における生物活性の領域を検出且つ視覚化するための、レシオメトリック蛍光画像化試薬、並びに、蛍光比率及び輝度の閾値を使用する画像処理方法を提供する。
【解決手段】レシオメトリック蛍光画像化システムでは、特定の励起波長で組織サンプルを照らし、発光された蛍光は、光画像化システムの画像スプリッター構成要素へと向けられ、画像スプリッターの発光波長カットオフに従い2つの異なる発光波長での蛍光画像に分離され、2つの異なるカメラで別々に画像化される。画像化ソフトウェアにより、第1の蛍光輝度画像及び第2の蛍光輝度画像を組み合わせた蛍光比率画像を作成し、高い蛍光比率値及び/又は蛍光輝度値を示す関心領域(ROI)を同定する。ROI内の蛍光比率及び/又は蛍光輝度に対する平均値の測定は、生物活性の量的測定を提供する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物試料における生物活性の領域を検出する方法であって、該方法は:
a)前記生物試料を前記生物活性のレシオメトリック蛍光表示体と接触させる工程;
b)第1の発光波長にて前記生物試料の第1の蛍光輝度画像を、及び第2の発光波長にて前記生物試料の第2の蛍光輝度画像をキャプチャする工程;
c)蛍光比率画像を作成するために前記第1の蛍光画像及び前記第2の蛍光画像を組み合わせる工程;
d)生物活性の領域を検出するための画像分析アルゴリズムを使用して、前記蛍光比率画像、前記第1の蛍光輝度画像、前記第2の蛍光輝度画像、又はそれらの任意の組み合わせを処理する工程
を含み、前記画像分析アルゴリズムは:
i)前記蛍光比率画像、前記第1の蛍光輝度画像、前記第2の蛍光輝度画像、又はそれらの任意の組み合わせのマスク画像を作成するために、蛍光比率閾値、第1の蛍光輝度閾値、第2の蛍光輝度閾値、又はそれらの任意の組み合わせを使用し、
ii)2つ以上のマスク画像が工程(i)で作成されている場合、前記蛍光比率画像のマスク画像、前記第1の蛍光輝度画像のマスク画像、及び前記第2の蛍光輝度画像のマスク画像から成る群から選択された2つ以上の画像上でAND論理演算を実行し、及び
iii)前記生物活性に対し陽性又は陰性の何れかとして生物試料の分類を提供し、前記分類は、工程(i)に使用された前記蛍光比率画像、前記第1の蛍光輝度画像、前記第2の蛍光輝度画像、又はそれらの組み合わせ内の関心領域の検出に基づき、該関心領域は、工程(i)に使用された前記蛍光比率閾値、前記第1の蛍光輝度閾値、前記第2の蛍光輝度閾値、又はそれらの組み合わせの値を超える蛍光比率値又は蛍光輝度値を示すものであり、及び前記画像分析アルゴリズムは更に
iv)コンピュータメモリーに分類結果を随意に記憶する
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記蛍光比率画像、前記第1の蛍光輝度画像、前記第2の蛍光輝度画像、又はそれらの任意の組み合わせ内の関心領域を表示する工程を更に含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記生物試料はインビトロの生物試料又はインビボの生物試料である、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記生物試料は、細胞サンプル、エクスビボ組織サンプル、又はインビボの組織サンプルである、ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
検出される前記生物活性は疾患と相関する、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記疾患は、関節炎、アテローム動脈硬化症、癌、前癌、又は炎症である、ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
癌は乳癌である、ことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
検出される前記生物活性は、悪性組織又は凝結(血液凝固)と相関する、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
工程(b)~(d)は、経時的に生物活性の変化をモニタリングするために、一連の第1の蛍光輝度画像、第2の蛍光輝度画像、及び蛍光比率画像を提供するべく定められた時間間隔で2回以上繰り返される、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記関心領域の表示はリアルタイムで提供される、ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項11】
前記関心領域の表示は、外科手術を誘導するための手術時の設定で外科医によって使用される、ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の蛍光輝度画像及び前記第2の蛍光輝度画像は内視鏡を使用してキャプチャされ、前記関心領域の表示が内視鏡の位置決めを誘導するために使用される、ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記レシオメトリック蛍光表示体は、切断可能なリンカーにより分離される蛍光ドナー部分及び蛍光アクセプター部分を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記蛍光ドナー部分及び前記蛍光アクセプター部分はそれぞれCy5及びCy7である、ことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記切断可能なリンカーはプロテアーゼによって切断可能なペプチド結合を含む、ことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記プロテアーゼは、メタロプロテアーゼ、セリンプロテアーゼ、トレオニンプロテアーゼ、又はシステインプロテアーゼである、ことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記レシオメトリック蛍光表示体は、式(I)の分子を含み:
[DA-cA]-A-[cM-M]-X-B-[cB-DB]式(I)
式中、
Xはプロテアーゼによって切断可能なリンカーであり、
Aは、5~20の酸性アミノ酸残基を含む配列を有するペプチドであり、
Bは、5~20の塩基性アミノ酸残基を含む配列を有するペプチドであり、
cA、cB、及びcMは各々独立して0~1つのアミノ酸残基を含み、
Mは高分子であり、及び
DA及びDBは、その他との蛍光共鳴エネルギー転移を受けることが可能なアクセプター蛍光部分及びドナー蛍光部分の対であり;及びここで、[cM-M]はA又はX上の任意の位置に結合され、[DA-cA]はAの任意のアミノ酸残基に結合され、[cB-DB]はBの任意のアミノ酸残基に結合される
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項18】
Aは5~9つの酸性アミノ酸残基を含む配列を有するペプチドである、ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
Bは7~9つの塩基性アミノ酸残基を含む配列を有するペプチドである、ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項20】
Aは5又は9つの連続するグルタミン酸塩残基を含むペプチド配列であり、Bは8又は9つの連続するアルギニン残基を含むペプチド配列である、ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項21】
cA、cB、及びcMは各々独立して、Dアミノ酸、Lアミノ酸、α-アミノ酸、β-アミノ酸、又はγ-アミノ酸から選択される、ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項22】
cA、cB、及びcMは各々独立して、遊離チオール基を持つ任意のアミノ酸、N末端アミン基を持つ任意のアミノ酸、及び、ヒドロキシルアミン又はヒドラジンの基との反応に際してオキシム又はヒドラゾンの結合を形成可能な側鎖を有する任意のアミノ酸から選択される、ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項23】
cA、cB、及びcMは各々独立して、D-システイン、D-グルタミン酸塩、リジン、及びパラ-4-アセチルL-フェニルアラニンから選択される、ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項24】
Xは、PLGLAG、PLG-C(me)-AG、RPLALWRS、ESPAYYTA、DPRSFL、PPRSFL、RLQLKL、及びRLQLK(Ac)Lから選択されたアミノ酸配列を含む、ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項25】
Xは、メタロプロテアーゼ、セリンプロテアーゼ、トレオニンプロテアーゼ、又はシステインプロテアーゼにより切断可能である、ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項26】
DA及びDBはCy5及びCy7である、ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項27】
DA及びDBはCy5及びIR Dye750である、ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項28】
DA及びDBはCy5及びIR Dye800である、ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項29】
DA及びDBはCy5及びICGである、ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項30】
式(I)の分子はSDM-25である、ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項31】
マスクファイルを作成するために蛍光比率閾値のみが使用される、ことを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記第1の蛍光輝度画像及び前記第2の蛍光輝度画像は、前記蛍光比率画像の作成前に画像露光時間によって標準化される、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項33】
関心領域内の平均蛍光比率又は平均蛍光輝度値は、前記関心領域における生物活性の質的又は定量的な測定を提供する、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項34】
前記画像処理アルゴリズムは更に、検出された関心領域が特定の最小サイズより大きいことをチェックする工程を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項35】
生物試料のレシオメトリック蛍光画像における生物活性の領域を検出するために使用される、蛍光比率及び蛍光輝度閾値の自動最適化のための方法であって、該方法は:
a)複数の生物試料を提供する工程;
b)前記生物試料の各々を生物活性のレシオメトリック蛍光表示体と接触させる工程;
c)前記生物試料の各々に対して、第1の発光波長で第1の蛍光輝度画像を、及び第2の発光波長で第2の蛍光輝度画像をキャプチャする工程;
d)前記生物試料の各々に対して蛍光比率画像を作成するために前記第1の蛍光画像及び前記第2の蛍光画像を組み合わせる工程;
e)第1の蛍光輝度閾値、第2の蛍光輝度閾値、蛍光比率閾値、又はそれらの任意の組み合わせに対する出発値を提供する工程;及び
f)前記生物試料の各々に対して:
i)画像分析アルゴリズムを使用して、前記蛍光比率画像、前記第1の蛍光輝度画像、前記第2の蛍光輝度画像、又はそれらの任意の組み合わせを処理する工程であって、前記画像分析アルゴリズムは:
前記蛍光比率画像、前記第1の蛍光輝度画像、前記第2の蛍光輝度画像、又はそれらの任意の組み合わせのマスク画像を作成するために、前記蛍光比率閾値、前記第1の蛍光輝度閾値、前記第2の蛍光輝度閾値、又はそれらの任意の組み合わせを使用し、
2つ以上のマスク画像が先の工程で作成されている場合、前記蛍光比率画像のマスク画像、前記第1の蛍光輝度画像のマスク画像、及び前記第2の蛍光輝度画像のマスク画像から成る群から選択された2つ以上の画像上でAND論理演算を実行し、及び
随意に、前記蛍光比率画像、前記第1の蛍光輝度画像、前記第2の蛍光輝度画像、又はそれらの任意の組み合わせ内の検出された関心領域が特定の最小サイズよりも大きいことをチェックし、前記検出された関心領域は、前記蛍光比率閾値、前記第1の蛍光輝度閾値、前記第2の蛍光輝度閾値、又はそれらの任意の組み合わせの値を超える、蛍光比率値又は蛍光輝度値を示す領域であり、及び
前記画像分析アルゴリズムは更に、関心領域が検出されている場合に前記生物活性に対し陽性として前記生物試料の分類を提供し、又は関心領域が検出されていない場合に前記生物活性に対し陰性として前記生物試料の分類を提供する、工程;
ii)前記分類が、真陽性、偽陰性、真陰性、又は偽陽性であるかを判定するために、前記画像分析アルゴリズムによって提供される分類を、前記生物試料に対する病理実験室試験結果と比較する工程;
iii)コンピュータメモリーに、真陽性、偽陰性、真陰性、又は偽陽性の結果を記憶させる工程;及び
g)以下:
i)前記第2の蛍光輝度閾値及び前記蛍光比率閾値が、前記生物試料の全てが前記画像処理アルゴリズムによって陰性として分類されるまで固定したまま保持される間の、前記第1の蛍光輝度閾値の漸増的に増加した値、又は
ii)前記第1の蛍光輝度閾値及び前記蛍光比率閾値が、前記生物試料の全てが前記画像処理アルゴリズムによって陰性として分類されるまで固定したまま保持される間の、前記第2の蛍光輝度閾値の漸増的に増加した値、又は
iii)前記第1の蛍光輝度閾値及び前記第2の蛍光輝度閾値が、前記生物試料の全てが前記画像処理アルゴリズムによって陰性として分類されるまで固定したまま保持される間の、前記蛍光比率閾値の漸増的に増加した値
により、工程(f)を繰り返す工程;
h)蛍光比率閾値、第1の蛍光輝度閾値、及び第2の蛍光輝度閾値の各セットに対する記憶された分類結果を使用して受信者動作特性(ROC)曲線を算出する工程;及び
i)前記蛍光比率閾値、前記第1の蛍光輝度閾値、前記第2の蛍光輝度閾値、又はそれらの任意の組み合わせに対する最適な設定を決定するために、蛍光比率閾値、第1の蛍光輝度閾値、及び第2の蛍光輝度閾値の各セットに対する前記ROC曲線下の面積を比較する工程
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項36】
前記生物試料は、細胞サンプル、エクスビボ組織サンプル、又はインビボの組織サンプルである、ことを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項37】
検出される前記生物活性は疾患と相関する、ことを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記疾患は、関節炎、アテローム動脈硬化症、癌、前癌、又は炎症である、ことを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項39】
検出される前記生物活性は、悪性組織又は凝結(血液凝固)と相関する、ことを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項40】
癌は乳癌である、ことを特徴とする請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記レシオメトリック蛍光表示体は、切断可能なリンカーにより分離される蛍光ドナー部分及び蛍光アクセプター部分を含む、ことを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項42】
前記蛍光ドナー部分及び前記蛍光アクセプター部分はそれぞれCy5及びCy7である、ことを特徴とする請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記切断可能なリンカーはプロテアーゼによって切断可能なペプチド結合を含む、ことを特徴とする請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記プロテアーゼは、メタロプロテアーゼ、セリンプロテアーゼ、トレオニンプロテアーゼ、又はシステインプロテアーゼである、ことを特徴とする請求項43に記載の方法。
【請求項45】
レシオメトリック蛍光表示体はCy5及びCy7で標識されたSDM-25である、ことを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項46】
癌に対してレシオメトリック蛍光画像化に基づく診断試験を行う方法であって、該方法は:
a)生物試料をレシオメトリック蛍光表示体と接触させる工程;
b)第1の励起波長の励起光で前記生物試料を照らす工程;
c)第1の発光波長で前記生物試料の第1の蛍光輝度画像をキャプチャする工程;
d)第2の発光波長で前記生物試料の第2の蛍光輝度画像を引き続き又は同時にキャプチャする工程;及び
e)前記生物試料の蛍光比率画像を作成するべく前記第1の蛍光輝度画像及び前記第2の蛍光輝度画像を組み合わせるための画像化ソフトウェアを提供する工程であって、ここで、癌性の生物活性と相関される生物試料の蛍光比率画像内の関心領域を検出又は表示するために画像処理アルゴリズムが使用される、工程
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項47】
前記第1の蛍光輝度画像及び前記第2の蛍光輝度画像は、前記蛍光比率画像の作成前に画像露光時間によって標準化される、ことを特徴とする請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記画像処理アルゴリズムは、癌性の生物活性と相関される関心領域を検出するために、蛍光比率閾値、第1の蛍光輝度閾値、第2の蛍光輝度閾値、又はそれらの任意の組み合わせの使用を含む、ことを特徴とする請求項46に記載の方法。
【請求項49】
前記画像処理アルゴリズムは更に、(i)前記蛍光比率画像のマスク画像、前記第1の蛍光輝度画像のマスク画像、前記第2の蛍光輝度画像のマスク画像、又はそれらの任意の組み合わせのマスク画像を作成するために、前記蛍光比率閾値、前記第1の蛍光輝度閾値、前記第2の蛍光輝度閾値、又はそれらの任意の組み合わせを使用する工程、(ii)2つ以上のマスク画像が工程(i)で作成されている場合、前記蛍光比率画像のマスク画像、前記第1の蛍光輝度画像のマスク画像、前記第2の蛍光輝度画像のマスク画像、又はそれらの任意の組み合わせの上でAND論理演算を実行する工程、(iii)検出された関心領域が特定の最小サイズより大きいことを随意にチェックする工程、及び(iv)関心領域が検出されている場合に前記癌性の生物活性に対し陽性として前記生物試料の分類を提供し、又は関心領域が検出されていない場合に前記癌性の生物活性に対し陰性として前記生物試料の分類を提供する工程を含む、ことを特徴とする請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記レシオメトリック蛍光表示体は、式(I)の分子であり:
[DA-cA]-A-[cM-M]-X-B-[cB-DB]式(I)
式中、
Xはプロテアーゼによって切断可能なリンカーであり、
Aは、5~20の酸性アミノ酸残基を含む配列を有するペプチドであり、
Bは、5~20の塩基性アミノ酸残基を含む配列を有するペプチドであり、
cA、cB、及びcMは各々独立して0~1つのアミノ酸残基を含み、
Mは高分子であり、及び
DA及びDBは、その他との蛍光共鳴エネルギー転移を受けることが可能なアクセプター蛍光部分及びドナー蛍光部分の対であり;及び
ここで、[cM-M]はA又はX上の任意の位置に結合され、[DA-cA]はAの任意のアミノ酸残基に結合され、[cB-DB]はBの任意のアミノ酸残基に結合される
ことを特徴とする請求項46に記載の方法。
【請求項51】
前記レシオメトリック蛍光表示体はCy5及びCy7で標識されたSDM-25である、ことを特徴とする請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記癌性の生物活性は、黒色腫、非黒色腫性の皮膚癌、肺癌、乳癌、前立腺癌、大腸癌、膵臓癌、肝臓癌、卵巣癌、頸部癌、頭頚部癌、リンパ節、甲状腺癌、神経膠腫、胃腸癌、又は肉腫に関連付けられる、ことを特徴とする請求項46に記載の方法。
【請求項53】
患者はレシオメトリック蛍光表示体を注入され、前記方法が切除後の外科試料における乳癌を検出するために使用される、ことを特徴とする請求項46に記載の方法。
【請求項54】
癌の診断のための臨床的感度は70%を超える、ことを特徴とする請求項46に記載の方法。
【請求項55】
癌の診断のための臨床的特異性は70%を超える、ことを特徴とする請求項46に記載の方法。
【請求項56】
患者はレシオメトリック蛍光表示体を注入され、前記方法が外科手術を誘導するために手術中に使用される、ことを特徴とする請求項46に記載の方法。
【請求項57】
前記方法は、診断又は処置の決定を下すために医師又は医療サービス提供者によって使用される試験結果を提供する、ことを特徴とする請求項46に記載の方法。
【請求項58】
前記試験結果は、前記方法が実行される位置から、前記医師又は医療サービス提供者の位置へと送信される、ことを特徴とする請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記癌のマージン状況は手術中に評価される、ことを特徴とする請求項1乃至58の何れか1つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2017年4月7日出願の米国仮特許出願第62/438,004号の利益を主張し、該仮出願は、全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【0002】
本明細書には、生物試料における生物活性の領域を検出且つ視覚化するために蛍光比率及び輝度の閾値を使用する方法が開示され、該方法は:a)前記生物試料を前記生物活性のレシオメトリック蛍光表示体(ratiometric fluorescent indicator)と接触させる工程;b)前記生物試料に対して、第1の発光波長で第1の蛍光輝度画像を、及び第2の発光波長で第2の蛍光輝度画像をキャプチャする工程;c)蛍光比率画像を作成するために前記第1の蛍光画像及び前記第2の蛍光画像を組み合わせる工程;d)画像分析アルゴリズムを使用して、前記蛍光比率画像、前記第1の蛍光輝度画像、前記第2の蛍光輝度画像、又はそれらの任意の組み合わせを処理する工程であって、前記画像分析アルゴリズムは:i)前記蛍光比率画像のマスク画像、前記第1の蛍光輝度画像のマスク画像、前記第2の蛍光輝度画像のマスク画像、又はそれらの任意の組み合わせのマスク画像を作成するために、前記蛍光比率閾値、前記第1の蛍光輝度閾値、前記第2の蛍光輝度閾値、又はそれらの任意の組み合わせを使用し、ii)2つ以上のマスク画像が工程(i)で作成されている場合、前記蛍光比率画像のマスク画像、前記第1の蛍光輝度画像のマスク画像、前記第2の蛍光輝度画像のマスク画像、又はそれらの任意の組み合わせの上でAND論理演算を実行し、及びiii)前記生物活性に対し陽性又は陰性の何れかとして生物試料の分類を提供し、前記分類は、前記蛍光比率閾値、前記第1の蛍光輝度閾値、前記第2の蛍光輝度閾値、又はそれらの任意の組み合わせの値を超える蛍光比率値又は蛍光輝度値を示す、前記蛍光比率画像、前記第1の蛍光輝度画像、前記第2の蛍光輝度画像、又はそれらの任意の組み合わせ内の関心領域の検出に基づく、工程;及びe)ユーザーに対して前記蛍光比率画像、前記第1の蛍光輝度画像、又は前記第2の蛍光輝度画像内の関心領域を表示し、且つコンピュータメモリーに分類結果を随意に記憶する工程を含む。
【0003】
幾つかの実施形態において、前記生物試料は、細胞サンプル、エクスビボ組織サンプル、又はインビボの組織サンプルである。幾つかの実施形態において、検出且つ視覚化される生物活性は疾患と相関される。幾つかの実施形態において、前記疾患は、関節炎、アテローム動脈硬化症、癌、前癌、炎症、又はそれらの任意の組み合わせである。幾つかの実施形態において、癌は乳癌である。幾つかの実施形態において、検出且つ視覚化される生物活性は、悪性組織又は凝結(血液凝固)と相関される。幾つかの実施形態において、工程(b)~(e)は、経時的に生物活性の変化をモニタリングするために、一連の第1の蛍光輝度画像、第2の蛍光輝度画像、及び蛍光比率画像を提供するべく定められた時間間隔で2回以上繰り返される。幾つかの実施形態において、関心領域の表示はリアルタイムで提供される。幾つかの実施形態において、前記関心領域の表示は、外科手術を誘導するための手術時の設定で外科医によって使用される。幾つかの実施形態において、前記第1の蛍光輝度画像及び前記第2の蛍光輝度画像は内視鏡を使用してキャプチャされ、前記関心領域の表示が内視鏡の位置決めを誘導するために使用される。幾つかの実施形態において、前記レシオメトリック蛍光表示体は、切断可能なリンカーにより分離される蛍光ドナー部分及び蛍光アクセプター部分を含む。幾つかの実施形態において、蛍光ドナー部分及び蛍光アクセプター部分はそれぞれCy5及びCy7である。幾つかの実施形態において、切断可能なリンカーはプロテアーゼによって切断可能なペプチド結合を含む。幾つかの実施形態において、前記プロテアーゼは、メタロプロテアーゼ、セリンプロテアーゼ、トレオニンプロテアーゼ、又はシステインプロテアーゼである。幾つかの実施形態において、レシオメトリック蛍光表示体は式(I)の分子を含み、
[DA-cA]-A-[cM-M]-X-B-[cB-DB]式(I)
式中、Xはプロテアーゼによって切断可能なリンカーであり、Aは、5~20の酸性アミノ酸残基を含む配列を有するペプチドであり、Bは、5~20の塩基性アミノ酸残基を含む配列を有するペプチドであり、cA、cB、及びcMは各々独立して0~1つのアミノ酸を含み、Mは高分子であり、及びDA及びDBは、その他との蛍光共鳴エネルギー転移を受けることが可能なアクセプター蛍光部分及びドナー蛍光部分の対であり;及びここで、[cM-M]はA又はX上の任意の位置に結合され、[DA-cA]はAの任意のアミノ酸残基に結合され、[cB-DB]はBの任意のアミノ酸残基に結合される。幾つかの実施形態の実施形態において、式(I)の分子はSDM-25である。幾つかの実施形態において、マスクファイルを作成するために蛍光比率閾値のみが使用される。
【0004】
本明細書にはまた、生物試料のレシオメトリック蛍光画像における生物活性の領域を検出するために使用される、蛍光比率及び蛍光輝度閾値の自動最適化のための方法が開示され、該方法は:a)複数の生物試料を提供する工程;b)前記生物試料の各々を生物活性のレシオメトリック蛍光表示体と接触させる工程;c)前記生物試料の各々に対して、第1の発光波長で第1の蛍光輝度画像を、及び第2の発光波長で第2の蛍光輝度画像をキャプチャする工程;d)前記生物試料の各々に対して蛍光比率画像を作成するために前記第1の蛍光画像及び前記第2の蛍光画像を組み合わせる工程;e)第1の蛍光輝度閾値、第2の蛍光輝度閾値、蛍光比率閾値、又はそれらの任意の組み合わせに対する出発値を提供する工程;及びf)前記生物試料の各々に対して:i)画像分析アルゴリズムを使用して、前記蛍光比率画像、前記第1の蛍光輝度画像、前記第2の蛍光輝度画像、又はそれらの任意の組み合わせを処理する工程であって、前記画像分析アルゴリズムは:前記蛍光比率画像のマスク画像、前記第1の蛍光輝度画像のマスク画像、前記第2の蛍光輝度画像のマスク画像、又はそれらの任意の組み合わせを作成するために、前記蛍光比率閾値、前記第1の蛍光輝度閾値、前記第2の蛍光輝度閾値、又はそれらの任意の組み合わせを使用し、2つ以上のマスク画像が先の工程で作成されている場合、前記蛍光比率画像のマスク画像、前記第1の蛍光輝度画像のマスク画像、前記第2の蛍光輝度画像のマスク画像、又はそれらの任意の組み合わせの上でAND論理演算を実行し、随意に、前記蛍光比率画像、前記第1の蛍光輝度画像、前記第2の蛍光輝度画像、又はそれらの任意の組み合わせ内の検出された関心領域が特定の最小サイズよりも大きいことをチェックし、前記検出された関心領域は、前記蛍光比率閾値、前記第1の蛍光輝度閾値、前記第2の蛍光輝度閾値、又はそれらの任意の組み合わせの値を超える、蛍光比率値又は蛍光輝度値を示す領域であり、及び、前記画像分析アルゴリズムは更に、関心領域が検出されている場合に前記生物活性に対し陽性として前記生物試料の分類を提供し、又は関心領域が検出されていない場合に前記生物活性に対し陰性として前記生物試料の分類を提供する、工程;ii)前記分類が、真陽性、偽陰性、真陰性、又は偽陽性であるかを判定するために、前記画像分析アルゴリズムによって提供される分類を、前記生物試料に対する病理実験室試験結果と比較する工程;iii)コンピュータメモリーに、真陽性、偽陰性、真陰性、又は偽陽性の結果を記憶させる工程;及びg)以下:i)前記第2の蛍光輝度閾値及び前記蛍光比率閾値が、前記生物試料の全てが前記画像処理アルゴリズムによって陰性として分類されるまで固定したまま保持される間の、前記第1の蛍光輝度閾値の漸増的に増加した値、又はii)前記第1の蛍光輝度閾値及び前記蛍光比率閾値が、前記生物試料の全てが前記画像処理アルゴリズムによって陰性として分類されるまで固定したまま保持される間の、前記第2の蛍光輝度閾値の漸増的に増加した値、又はiii)前記第1の蛍光輝度閾値及び前記第2の蛍光輝度閾値が、前記生物試料の全てが前記画像処理アルゴリズムによって陰性として分類されるまで固定したまま保持される間の、前記蛍光比率閾値の漸増的に増加した値で工程(f)を繰り返す工程;h)蛍光比率閾値、第1の蛍光輝度閾値、及び第2の蛍光輝度閾値の各セットに対する記憶された分類結果を使用して受信者動作特性(ROC)曲線を算出する工程;及びi)前記蛍光比率閾値、前記第1の蛍光輝度閾値、前記第2の蛍光輝度閾値、又はそれらの任意の組み合わせに対する最適な設定を決定するために、蛍光比率閾値、第1の蛍光輝度閾値、及び第2の蛍光輝度閾値の各セットに対する前記ROC曲線下の面積を比較する工程を含む。
【0005】
幾つかの実施形態において、前記生物試料は、細胞サンプル、エクスビボ組織サンプル、又はインビボの組織サンプルである。幾つかの実施形態において、検出される生物活性は疾患と相関される。幾つかの実施形態において、前記疾患は、関節炎、アテローム動脈硬化症、癌、前癌、炎症、又はそれらの任意の組み合わせである。幾つかの実施形態において、癌は乳癌である。幾つかの実施形態において、検出且つ視覚化される生物活性は、悪性組織又は凝結(血液凝固)と相関される。幾つかの実施形態において、前記レシオメトリック蛍光表示体は、切断可能なリンカーにより分離される蛍光ドナー部分及び蛍光アクセプター部分を含む。幾つかの実施形態において、蛍光ドナー部分及び蛍光アクセプター部分はそれぞれCy5及びCy7である。幾つかの実施形態において、切断可能なリンカーはプロテアーゼによって切断可能なペプチド結合を含む。幾つかの実施形態において、前記プロテアーゼは、メタロプロテアーゼ、セリンプロテアーゼ、トレオニンプロテアーゼ、又はシステインプロテアーゼである。幾つかの実施形態において、レシオメトリック蛍光表示体はCy5及びCy7で標識されたSDM-25である。
【0006】
本明細書には、生物試料における生物活性の領域を検出するためのレシオメトリック蛍光画像化方法であって、該方法は:a)前記生物試料を前記生物活性のレシオメトリック蛍光表示体と接触させる工程;b)第1の励起波長の励起光で前記生物試料を照らす工程;c)第1の発光波長で前記生物試料の第1の蛍光輝度画像をキャプチャする工程;d)第2の発光波長で前記生物試料の第2の蛍光輝度画像を引き続き又は同時にキャプチャする工程;及びe)前記生物試料の蛍光比率画像を作成するべく前記第1の蛍光輝度画像及び前記第2の蛍光輝度画像を組み合わせるための画像処理ソフトウェアを提供する工程を含み、ここで、生物活性を示す生物試料の蛍光比率画像内の関心領域を検出又は表示するために画像処理アルゴリズムが使用され、ここで、関心領域は、第1の蛍光輝度閾値、第2の蛍光輝度閾値、蛍光比率閾値、又はそれらの任意の組み合わせの値を超える、蛍光比率値、第1の蛍光輝度値、第2の蛍光輝度値、又はそれらの任意の組み合わせを示す比率画像の領域を含む。
【0007】
幾つかの実施形態において、インビトロの生物試料の第1及び第2の蛍光輝度画像がキャプチャされる。幾つかの実施形態において、インビボの生物試料の第1及び第2の蛍光輝度画像がキャプチャされる。幾つかの実施形態において、前記生物試料は、細胞サンプル、エクスビボ組織サンプル、又はインビボの組織サンプルである。幾つかの実施形態において、レシオメトリック蛍光表示体は式(I)の分子であり、
[DA-cA]-A-[cM-M]-X-B-[cB-DB]式(I)
式中、Xはプロテアーゼによって切断可能なリンカーであり、Aは、5~20の酸性アミノ酸残基を含む配列を有するペプチドであり、Bは、5~20の塩基性アミノ酸残基を含む配列を有するペプチドであり、cA、cB、及びcMは各々独立して0~1つのアミノ酸を含み、Mは高分子であり、及びDA及びDBは、その他との蛍光共鳴エネルギー転移を受けることが可能なアクセプター蛍光部分及びドナー蛍光部分の対であり;及びここで、[cM-M]はA又はX上の任意の位置に結合され、[DA-cA]はAの任意のアミノ酸残基に結合され、[cB-DB]はBの任意のアミノ酸残基に結合される。
【0008】
幾つかの実施形態において、Aは、5~9つの酸性アミノ酸残基を含む配列を有するペプチドである。幾つかの実施形態において、Aは、5又は9つの連続するグルタミン酸塩残基を含む配列を有するペプチドである。幾つかの実施形態において、Bは、7~9つの塩基性アミノ酸残基を含む配列を有するペプチドである。幾つかの実施形態において、Bは、8又は9つの連続するアルギニン残基を含む配列を有するペプチドである。幾つかの実施形態において、Aは5又は9つの連続するグルタミン酸塩残基を含むペプチド配列であり、Bは8又は9つの連続するアルギニン残基を含むペプチド配列である。幾つかの実施形態において、Aは5つの連続するグルタミン酸塩残基を含むペプチド配列であり、Bは8つの連続するアルギニン残基を含むペプチド配列である。幾つかの実施形態において、cA、cB、及びcMは各々独立して、自然発生のアミノ酸又は非自然発生のアミノ酸から選択される。幾つかの実施形態において、cA、cB、及びcMは各々独立して、D-アミノ酸、Lアミノ酸、α-アミノ酸、β-アミノ酸、又はγ-アミノ酸から選択される。幾つかの実施形態において、cA、cB、及びcMは各々独立して、遊離チオール基を持つ任意のアミノ酸、N末端アミン基を持つ任意のアミノ酸、及び、ヒドロキシルアミン又はヒドラジンの基との反応に際してオキシム又はヒドラゾンの結合を形成可能な側鎖を有する任意のアミノ酸から選択される。幾つかの実施形態において、cA、cB、及びcMは各々独立して、D-システイン、D-グルタミン酸塩、リジン、及びパラ-4-アセチルL-フェニルアラニンから選択される。幾つかの実施形態において、cBは遊離チオール基を持つ任意のアミノ酸である。幾つかの実施形態において、cBはD-システインである。幾つかの実施形態において、cAはN末端アミン基を持つ任意のアミノ酸である。幾つかの実施形態において、cAはD-グルタミン酸塩である。幾つかの実施形態において、cAはリジンである。幾つかの実施形態において、cMは、ヒドロキシルアミン又はヒドラジンの基との反応に際してオキシム又はヒドラゾンの結合を形成可能な側鎖を有する任意のアミノ酸である。幾つかの実施形態において、cMはパラ-4-アセチルL-フェニルアラニンである。幾つかの実施形態において、Xはペプチド結合を含む。幾つかの実施形態において、Xは、PLGLAG、PLG-C(me)-AG、RPLALWRS、ESPAYYTA、DPRSFL、PPRSFL、RLQLKL、及びRLQLK(Ac)Lから選択されたアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態において、Xはメタロプロテアーゼにより切断可能である。幾つかの実施形態において、メタロプロテアーゼは、マトリックスメタロプロテイナーゼ、ADAMメタロプロテイナーゼ、アダマリシン、パッパリシン、マトリリシン、ネプリライシン(中性エンドペプチダーゼ)、アンギオテンシン転換酵素、金属カルボキシペプチダーゼ、又はグルタミン酸カルボキシペプチダーゼである。幾つかの実施形態において、Xは、MMP1、MMP2、MMP7、MMP9、MMP13、又はMMP14によって切断可能なアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態において、Xはセリン又はトレオニンのプロテアーゼによって切断可能である。幾つかの実施形態において、セリンプロテアーゼは、エラスターゼ、凝固因子(トロンビン、因子VIIa、因子IXa、又は因子Xa)、ヒト組織プラスミノーゲン活性化因子、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子、プラスミン、テスチシン、コリン、組織又は血漿カリクレイン、トリプターゼ、又はジペプチジルペプチダーゼである。幾つかの実施形態において、Xはシステインプロテアーゼによって切断可能である。幾つかの実施形態において、システインプロテアーゼは、カテプシンB、カテプシンK、カテプシンS、カテプシンL、カスパーゼ、又はレグマインである。幾つかの実施形態において、DA及びDBは、一方から他方への蛍光共鳴エネルギー転移を受けることが可能な蛍光アクセプター部分及び蛍光ドナー部分の対である。幾つかの実施形態において、DA及びDBはCy5及びCy7である。幾つかの実施形態において、第1の励起波長は約610nm~約650nmである。幾つかの実施形態において、第1の発光波長は約660nm~約720nmである。幾つかの実施形態において、第2の発光波長は約760nm~約830nmである。幾つかの実施形態において、DA及びDBはCy5及びIR Dye750である。幾つかの実施形態において、DA及びDBはCy5及びIR Dye800である。幾つかの実施形態において、DA及びDBはCy5及びICGである。幾つかの実施形態において、工程(c)~(e)は、経時的に生物活性の変化をモニタリングするために、一連の蛍光比率画像を提供するべく定められた時間間隔で2回以上繰り返される。幾つかの実施形態において、前記第1の蛍光輝度画像及び前記第2の蛍光輝度画像は、前記蛍光比率画像の作成前に画像露光時間によって標準化される。幾つかの実施形態において、前記画像処理アルゴリズムは、関心領域を検出するために、蛍光比率閾値、第1の蛍光輝度閾値、第2の蛍光輝度閾値、又はそれらの任意の組み合わせの使用を含む。幾つかの実施形態において、画像処理アルゴリズムは更に、(i)前記蛍光比率画像のマスク画像、前記第1の蛍光輝度画像のマスク画像、前記第2の蛍光輝度画像のマスク画像、又はそれらの任意の組み合わせのマスク画像を作成するために、前記蛍光比率閾値、前記第1の蛍光輝度閾値、前記第2の蛍光輝度閾値、又はそれらの任意の組み合わせを使用する工程、(ii)2つ以上のマスク画像が工程(i)で作成されている場合、前記蛍光比率画像のマスク画像、前記第1の蛍光輝度画像のマスク画像、前記第2の蛍光輝度画像のマスク画像、又はそれらの任意の組み合わせの上でAND論理演算を実行する工程、及び(iii)関心領域が検出されている場合に前記生物活性に対し陽性として前記生物試料の分類を提供し、又は関心領域が検出されていない場合に前記生物活性に対し陰性として前記生物試料の分類を提供する工程を含む。幾つかの実施形態において、関心領域内の平均蛍光比率又は平均蛍光輝度値は、前記関心領域における生物活性の質的な測定を提供する。幾つかの実施形態において、関心領域内の平均蛍光比率又は平均蛍光輝度値は、前記関心領域における生物活性の定量的な測定を提供する。幾つかの実施形態において、検出された関心領域は癌性の生物活性と相関される。幾つかの実施形態において、蛍光比率画像は、癌性組織と正常組織との間の少なくとも1.5:1のコントラスト比を提供する。幾つかの実施形態において、前記画像処理アルゴリズムは更に、検出された関心領域が特定の最小サイズより大きいことをチェックする工程を含む。
【0009】
本明細書には、癌に対してレシオメトリック蛍光画像化に基づく診断試験を行うための方法が開示され、該方法は:a)生物試料をレシオメトリック蛍光表示体と接触させる工程;b)第1の励起波長の励起光で前記生物試料を照らす工程;c)第1の発光波長で前記生物試料の第1の蛍光輝度画像をキャプチャする工程;d)第2の発光波長で前記生物試料の第2の蛍光輝度画像を引き続き又は同時にキャプチャする工程;及びe)前記生物試料の蛍光比率画像を作成するべく前記第1の蛍光輝度画像及び前記第2の蛍光輝度画像を組み合わせるための画像化ソフトウェアを提供する工程であって、ここで、癌性の生物活性と相関される生物試料の画像内の関心領域を検出又は表示するために画像処理アルゴリズムが使用される、工程を含む。
【0010】
幾つかの実施形態において、前記第1の蛍光輝度画像及び前記第2の蛍光輝度画像は、前記蛍光比率画像の作成前に画像露光時間によって標準化される。幾つかの実施形態において、前記画像処理アルゴリズムは、癌性の生物活性と相関される関心領域を検出するために、蛍光比率閾値、第1の蛍光輝度閾値、第2の蛍光輝度閾値、又はそれらの任意の組み合わせの使用を含む。幾つかの実施形態において、画像処理アルゴリズムは更に、(i)前記蛍光比率画像のマスク画像、前記第1の蛍光輝度画像のマスク画像、前記第2の蛍光輝度画像のマスク画像、又はそれらの任意の組み合わせのマスク画像を作成するために、前記蛍光比率閾値、前記第1の蛍光輝度閾値、前記第2の蛍光輝度閾値、又はそれらの任意の組み合わせを使用する工程、(ii)2つ以上のマスク画像が工程(i)で作成されている場合、前記蛍光比率画像のマスク画像、前記第1の蛍光輝度画像のマスク画像、前記第2の蛍光輝度画像のマスク画像、又はそれらの任意の組み合わせの上でAND論理演算を実行する工程、(iii)検出された関心領域が特定の最小サイズより大きいことを随意にチェックする工程、及び(iv)関心領域が検出されている場合に前記癌性の生物活性に対し陽性として前記生物試料の分類を提供し、又は関心領域が検出されていない場合に前記癌性の生物活性に対し陰性として前記生物試料の分類を提供する工程を含む。幾つかの実施形態において、レシオメトリック蛍光表示体は式(I)の分子であり、
[DA-cA]-A-[cM-M]-X-B-[cB-DB]式(I)
式中、Xはプロテアーゼによって切断可能なリンカーであり、Aは、5~20の酸性アミノ酸残基を含む配列を有するペプチドであり、Bは、5~20の塩基性アミノ酸残基を含む配列を有するペプチドであり、cA、cB、及びcMは各々独立して0~1つのアミノ酸を含み、Mは高分子であり、及びDA及びDBは、その他との蛍光共鳴エネルギー転移を受けることが可能なアクセプター蛍光部分及びドナー蛍光部分の対であり;及びここで、[cM-M]はA又はX上の任意の位置に結合され、[DA-cA]はAの任意のアミノ酸残基に結合され、[cB-DB]はBの任意のアミノ酸残基に結合される。幾つかの実施形態において、レシオメトリック蛍光表示体はCy5及びCy7で標識されたSDM-25である。幾つかの実施形態において、前記癌性の生物活性は、黒色腫、非黒色腫性の皮膚癌、肺癌、乳癌、前立腺癌、大腸癌、膵臓癌、肝臓癌、卵巣癌、頸部癌、頭頚部癌、リンパ節、甲状腺癌、神経膠腫、胃腸癌、又は肉腫に関連付けられる。幾つかの実施形態において、患者はレシオメトリック蛍光表示体を注入され、前記方法が切除後の外科試料における乳癌を検出するために使用される。幾つかの実施形態において、癌の診断のための臨床的感度は80%を超える。幾つかの実施形態において、癌の診断のための臨床的特異性は80%を超える。幾つかの実施形態において、患者はレシオメトリック蛍光表示体を注入され、前記方法が外科手術を誘導するために手術中に使用される。幾つかの実施形態において、前記方法は、診断又は処置の決定を下すために医師又は医療サービス提供者によって使用される試験結果を提供する。幾つかの実施形態において、前記試験結果は、前記医師又は医療サービス提供者の位置に対して前記方法が実行される位置から送信される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明の新規な特徴は、特に、添付の特許請求の範囲内に明記される。本発明の特徴及び利点のより良い理解は、本発明の原理が用いられる例示的実施形態を説明する以下の詳細な説明と、以下の添付図面とを引用することによって得られるであろう。
【
図1】Cy5蛍光ドナー及びCy7蛍光消光剤を含む、選択的な送達分子(SDM)(又は活性化可能な細胞膜透過ペプチド(ACPP))の一実施形態の構造を例示する。
図1に示される構造はSDM-25分子である。
【
図2】SDM-25、即ち、Cy7部分に抱合され、且つCy5部分に抱合されるポリカチオン系ドメインに切断可能なリンカーを介して接続されるポリアニオン系ドメインを含むレシオメトリックACPP(RACPP)に対する吸収度及び蛍光発光スペクトルを例示する。
図2のA:500-800nmの80%/20%のPBS/アセトニトリルにおける17.5μg/mLのSDM-25(AVB-620)の吸収度スペクトル。
図2のB:630nmの励起波長及び620-850nmの発光波長を使用するTCNB緩衝液におけるSDM-25蛍光発光スペクトル。2つのサンプルは、MMP9でのプレインキュベーションを用いて、又は用いることなく調製された。代表的なスペクトルが示される(6つの実験から)。蛍光発光スペクトルは、MMP9プロテアーゼでの処置の前(赤色)及びその後(青色)に630nmの励起光を使用してキュベット分光蛍光計において測定された。切断の前に、Cy5はCy7によってクエンチされ、これは780nmで吸収された励起光を再発光する。切断後、Cy7はこれ以上Cy5をクエンチせず、結果として670nmのCy5発光ピークの増加、及び780nmのCy7再発光の減少がもたらされる。710nm~840nmの残存する肩部(shoulder)の大部分はCy5発光によるものである。
【
図3】ヒト乳癌腫瘍組織及び正常組織におけるSDM-25(AVB-620)に対して観察された異なる切断割合を例示するデータ、及び、ヒト乳癌組織のレシオメトリック蛍光画像化ベースの検出におけるSDM-25の使用に対する受信者動作特性(ROC)曲線の例を提供する。
図3のA:25の対になったヒト乳癌患者組織ホモジネートにおけるSDM-25の切断割合(毎分切断されたnM)。癌陽性の腫瘍組織(赤色の菱形)及び癌陰性の隣接組織(青色の三角形)が示される。対になったサンプルは線によって接続される。対応のあるt検定は、腫瘍と標準との間の有意差に対してP<0.0001をもたらす。
図3のB:平均±95%の信頼水準と同じデータの散布図。
図3のC:腫瘍対正常組織のSDM-25切断割合検出のためのROC曲線を示す。
【
図4】非悪性の乳房組織及び腫瘍ホモジネートにおけるMMP活性の定量化に対するSDM-25の使用を例示するデータの例を提供する。
図4のA:データが
図3A-
図3Cに示される25の患者から選択される、3つの代表的なヒト乳癌サンプル及び対になった正常組織からのホモジネートが、10%のゼラチンザイモグラム上で分析された。組み換え体の活性MMP2及びMMP9は標準(1つのレーン当たり2ng)として示された。
図4のB:
図4のAに示される3つの対を含む、5つの代表的なヒト乳癌サンプル((1)として標識)及び対になった正常組織((2)として標識)における6つのMMPのELISA定量化。エラーバーは標準偏差である。ND=検出不能。
【
図5】2つの異なるカメラ上への2つの異なる波長での蛍光発光を画像化するために画像スプリッターを利用する、レシオメトリック蛍光画像化システムの1つの非限定的な例を概略的に例示する。
【
図6】ハードウェア(例えば、画像取得ハードウェア、プロセッサ、及びコンピュータメモリーを画像化する)及びソフトウェアコンポーネント(例えばオペレーティングシステム、及び画像取得、画像処理、並びに画像表示ソフトウェアモジュール)を含む、レシオメトリック画像化システムの概略図を提供する。
【
図7】蛍光比率画像内の高い蛍光比率及び/又は蛍光輝度値を示す関心領域(ROI)を同定するために使用される画像処理アルゴリズムを例示する。
【
図8A】SDM-25(AVB-620とも称される)を注入された、ヒト用量漸増研究からの生物試料の画像に対する蛍光輝度データの例を示す。
【
図8B】SDM-25(AVB-620とも称される)を注入された、ヒト用量漸増研究からの生物試料の画像に対する蛍光輝度データの例を示す。
【
図9】SDM-25を使用するレシオメトリック蛍光画像化が乳癌患者の悪性(陽性)と非悪性(陰性)とを区別可能であることを示すデータの例を示す。原発性腫瘍及びリンパ節からのデータが提供される。エラーバーは標準偏差を示す。
【
図10】関心領域(ROI)を同定し、且つレシオメトリック蛍光表示体、例えばSDM-25を注入された生物試料における生物活性(例えば、増強された酵素活性)の予測を提供するために使用される、画像処理アルゴリズムを例示する。陽性又は陰性のスコアの予測は、蛍光輝度比率閾値(例えばCy5/Cy7蛍光輝度比率閾値)及び/又は蛍光輝度閾値(例えばCy5蛍光輝度閾値)の与えられた組み合わせに対して生成される。
【
図11】レシオメトリック蛍光表示体、例えばSDM-25を注入された生物試料における生物活性(例えば、増強された酵素活性)の陽性又は陰性の予測を判定するために使用される、画像処理アルゴリズムを例示する。陽性又は陰性の活性の判定は、蛍光比率閾値(例えばCy5/Cy7蛍光比率閾値)及び/又は蛍光輝度閾値(例えばCy5蛍光輝度閾値)の与えられた組み合わせに対して生成される。
【
図12】レシオメトリック蛍光表示体、例えばSDM-25を注入された生物試料における生物活性(例えば増強された酵素活性)の存在を判定するための蛍光比率閾値及び/又は輝度閾値の最も正確な組み合わせを同定するために使用される、画像処理アルゴリズムの1つの非限定的な例を例示する。この例において、1つの閾値(即ち、蛍光比率閾値又は蛍光輝度閾値)が変動し、一方で他方の閾値は、生物試料のセットに関する画像化データと病理研究所データ(又は生物活性の他の独立した判定)との比較に基づいて最も正確な閾値を生成するべく固定されたまま保持されている。受信者動作特性(ROC)曲線は、異なる蛍光比率閾値及び/又は輝度閾値での画像分析からの予測を、例えば病理研究所結果と比較することによって生成される。
【
図13A】蛍光比率閾値及び蛍光輝度閾値の異なる組み合わせを使用して生成される、SDM-25を注入されたヒト患者からの原発性腫瘍試料に関するROC曲線の例を提供する。
【
図13B】蛍光比率閾値及び蛍光輝度閾値の異なる組み合わせを使用して生成される、SDM-25を注入されたヒト患者からの原発性腫瘍試料に関するROC曲線の例を提供する。
【
図13C】蛍光比率閾値及び蛍光輝度閾値の異なる組み合わせを使用して生成される、SDM-25を注入されたヒト患者からの原発性腫瘍試料に関するROC曲線の例を提供する。
【
図14A】蛍光比率閾値及び蛍光輝度閾値の異なる組み合わせを使用して生成される、SDM-25を注入されたヒト患者からのリンパ節試料に関するROC曲線の例を提供する。
【
図14B】蛍光比率閾値及び蛍光輝度閾値の異なる組み合わせを使用して生成される、SDM-25を注入されたヒト患者からのリンパ節試料に関するROC曲線の例を提供する。
【
図15A】蛍光比率閾値及び蛍光輝度閾値の異なる組み合わせを使用して生成される、SDM-25を注入された個々の患者試料に関するROC曲線の例を提供する。
【
図15B】蛍光比率閾値及び蛍光輝度閾値の異なる組み合わせを使用して生成される、SDM-25を注入された個々の患者試料に関するROC曲線の例を提供する。
【
図15C】蛍光比率閾値及び蛍光輝度閾値の異なる組み合わせを使用して生成される、SDM-25を注入された個々の患者試料に関するROC曲線の例を提供する。
【
図16】8mgの用量のSDM-25を投与した患者からの横断された原発性腫瘍試料画像の例を提供し、画像化は注入後の日に実行された。白色は、R≧120のCy5/Cy7蛍光比率閾値及びI≧50のCy5輝度閾値を示す。閾値は記載された方法を使用して判定された。
【
図17】転移性のリンパ節モデル及びインビボの画像診断プロトコルの概略図を提供する。乳癌細胞はマウスの耳に埋め込まれ、頸リンパ節に転移する(
図17のA)。リンパ節状態を評価するために、SDM-25(AVB-620)を、尾静脈注射を介して投与し、3-6時間後、頚部の領域を外科的に露出し(
図17のB)、リンパ節を画像化する。蛍光比率画像を獲得し、RGBスケールを使用しては白色光画像の上に重ねて表示し、そこでは、高い蛍光比率が赤色であり、低い比率は青色である-(
図17のC)に示される例。その後、リンパ節はH&E組織病理学解析のために外科摘出され且つ処理される(
図17のD)。赤色が高い比率に等しいRGBスケールを使用して、病理結果を画像比率値と直接比較する。赤色矢印は、SDM-25(AVB-620)によって蛍光標識された転移性(癌陽性)頸リンパ節を示す。シアンで着色された矢印は、組織病理学によって判定されるような癌陰性頸リンパ節を示す。
【
図18】マウス4T1乳房転移性リンパ節モデルを使用する蛍光比率画像化及び組織病理学の比較を示す。
図18のA:マウスの耳の原発性腫瘍における高い蛍光比率を示す、重ねられた蛍光比率画像を伴う(右)、及びそれを伴わない(左)、代表的な黒色及び白色の背側のマウス画像。
図18のB:SDM-25(AVB-620)は、H&E組織病理学から判定されるような癌状態によって分類された頸リンパ節に対する蛍光比率値を生成した。癌陽性のリンパ節(赤色の菱形)及び癌陰性の(青色の三角形)リンパ節が示される。黒い線は平均±95%の信頼水準を示す。
図18のC:SDM-25(AVB-620)投与の6時間後に得られる、反射光画像と混合される露出されたリンパ節の代表的な蛍光比率画像。この比率は、高い比率が赤色により示され且つ低い比率が青色により示されるRGBスケールを使用して、表示される。H&E染色によって判定されるように、赤色及びシアンの矢印はそれぞれ癌陽性及びリンパ節陰性を示す。
図18のD:インビボの診断上の蛍光シグナルにおけるSDM-25(AVB-620)の発達のための動力学が示される。画像化は、投与後1~48時間に及ぶ時点で実行された。癌陽性のリンパ節(赤色の菱形)及び癌陰性の(青色の三角形)リンパ節が示される。1つのデータポイント当たりの測定の数(N)は3~24に及び、エラーバーは標準偏差を示す。
【
図19A】8mgの用量のSDM-25を投与した患者からの原発性乳腺腫瘤摘出試料画像の表面マージン(surface margins)の第1の例を提供し、画像化は注入後の日に実行された。
【
図19B】8mgの用量のSDM-25を投与した患者からの原発性乳腺腫瘤摘出試料画像の表面マージンの第2の例を提供し、画像化は注入後の日に実行された。
【発明を実施するための形態】
【0012】
レシオメトリック蛍光検出及び単一輝度蛍光検出は、インビトロ及びインビボの画像化用途に使用される方法である。幾つかの例において、単一波長での蛍光発光の測定は、異なる形態、厚み、細胞組成、及び細胞外マトリックスを持つ異なる組織が原因で混乱させられる。レシオメトリック蛍光検出は、特異的な生物活性に応じて2つの異なる波長でレシオメトリック変化を生成する、蛍光性薬剤又は表示体の組み合わせを利用する。場合によっては、この方法は、例えば、フルオロフォア濃度の差異、被験体の動作、及び、異なる蛍光検出器及び器機に対する励起光輝度及び/又は蛍光発光収集及び検出の効率における変異性を含む、様々な実験因子が原因のアーチファクトを減らすと示されている。
【0013】
本明細書には、特定の実施形態において、インビボ及びエクスビボの生物試料における生物活性を検出且つ視覚化するためのレシオメトリック蛍光画像化方法が開示される。場合によっては、本明細書に記載されるレシオメトリック蛍光画像化方法は、当該技術で記載される画像化方法に比べて精度が改善している。幾つかの例において、精度の改善は、特異的なレシオメトリック蛍光表示体の使用を介して達成され、これは、対象の生物活性を示す生物試料の領域と、それを示さない領域とのより高度な区別を提供する。例えば、以下に詳しく記載されるように、幾つかの例において、生物活性(例えば、増強されたプロテアーゼ活性)の領域の検出及び視覚化の精度の改善は、蛍光ドナー部分及び蛍光アクセプター部分を含む、レシオメトリックの活性化可能な細胞膜透過ペプチド(RACPP)の使用を介して達成される。以下に詳しく記載されるように、後者の1つの非限定的な例は、SDM-25(AVB-620とも称される)である。
【0014】
幾つかの例において、生物活性の領域の検出及び視覚化の精度の改善は、対象の特異的な生物活性又は構造を示す、画像化されている生物試料内の領域に相当する蛍光比率画像及び関心領域(ROI)を生成及び表示するための、本明細書に開示される画像処理アルゴリズムの使用を介して達成される。幾つかの例において、ROIは蛍光比率画像から生成される。幾つかの例において、ROIは、蛍光比率画像及び/又は蛍光輝度画像の組み合わせから生成される。
【0015】
幾つかの例において、生物活性の領域の検出及び視覚化の精度の改善は、より高度な区別を提供する特異的なレシオメトリック蛍光表示体、並びに、蛍光比率画像及びROIを生成し且つ表示するための開示された画像処理アルゴリズムの両方の使用を介して達成される。
【0016】
開示されたレシオメトリック画像処理技術を使用して検出且つ視覚化される生物活性の例は、限定されないが、イオン濃度の変化(例えば、Ca2+イオンの蓄積又は放出、或いは局所的なpHの変化)、又は興奮性細胞、増強されたプロテアーゼ活性の領域、或いはそれらの任意の組み合わせの膜間電圧の変化を含む。幾つかの例において、検出且つ視覚化される生物活性は、様々な疾患状態、例えば関節炎、アテローム動脈硬化症、癌、乳癌、前癌、悪性組織、凝結(血液凝固)、炎症、又はそれらの任意の組み合わせと相関される。
【0017】
幾つかの例において、開示された画像化及び画像処理方法は、リアルタイムでROIを視覚化するために使用される。幾つかの例において、これらの方法は手術中に使用される。幾つかの例において、これらの方法は、組織の外科切除を誘導するために使用される。幾つかの例において、切除される組織は癌組織である。幾つかの例において、これらの方法は内視鏡処置中に使用される。幾つかの例において、これらの方法は、内視鏡の位置決めを誘導するために、或いは、最小限に侵襲的な外科手術において組織の外科切除を誘導するために使用される。幾つかの例において、これらの方法はエクスビボでROIを視覚化するために使用される。上述のように、幾つかの例において、これらの方法は、蛍光ドナー及び蛍光アクセプター(即ち、レシオメトリックACPP)を含む、活性化可能な細胞膜透過ペプチド(ACPP)と共に使用される。幾つかの例において、これらの方法はSDM-25と共に使用される。幾つかの例において、これらの方法は、乳癌患者において、又はこれらの患者から除去された組織と共に使用される。
【0018】
定義
【0019】
別段の定めのない限り、本明細書で使用される全ての技術用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を持つ。本明細書及び添付の請求項で使用されるように、単数形の「a」、「an」、及び「the」は、文脈上明確に指示されない限り、複数の言及も含む。「又は」への任意の言及は、別段の定めがない限り、「及び/又は」を包含するように意図される。
【0020】
本明細書で使用されるように、用語「生物試料」は、限定されないが、培養細胞サンプル、初代細胞サンプル(例えば、個々の細胞を懸濁液へと放出されるために細胞外マトリックスが消化又は溶解された組織サンプル)、血液サンプル又はその分画、エクスビボ組織サンプル(例えば、生検サンプル、又は外科切除サンプル)、インビボの組織サンプル(例えば、外科手術中に露出された腫瘍組織又は周辺組織)などを含む。生物試料は、様々な生物体、例えば原核生物、真核生物、菌類、植物、動物、又はヒトの何れかから集められてもよい。幾つかの例において、生物試料は患者サンプルである。
【0021】
本明細書で使用されるように、用語「生物活性」は、限定されないが、イオン濃度又は輸送活性の変化(例えば、Ca2+イオンの蓄積又は放出、又は局所的なpHの変化)、興奮性細胞の膜間電圧の変化、増強されたプロテアーゼ活性の領域、レシオメトリック蛍光表示体を使用してモニタリングされ得る他の生化学物質又は生理学的プロセスの変化、或いはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0022】
本明細書で使用されるように、「レシオメトリック蛍光表示体」(又は「レシオメトリック蛍光プローブ」)及び「レシオメトリック蛍光画像化」という用語は、従来のレシオメトリック表示体(例えば、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)ベースのプローブ)及び関連する画像化技術の使用だけでなく、例えば2つ以上のフルオロフォアの組み合わせが使用される例(例えばFRETペアリングが可能でないフルオロフォア)を含むように、広く使用され、1つのフルオロフォア内部統制として機能し、及び少なくとも1つの他のフルオロフォアは対象の生物活性に対する表示体として機能する。幾つかの例において、レシオメトリック蛍光表示体は、例えばインビボの画像化用途に使用するための造影剤である。
【0023】
本明細書で使用されるように、用語「励起波長」は、蛍光表示体(例えばフルオロフォア又は色素分子)を励起し且つ蛍光を生成するために使用される、光の波長を指す。励起波長は典型的に単一波長(例えば620nm)として特定されるが、本明細書は特定波長で集中される波長帯又は励起フィルタバンドパスを指すと、当業者によって理解される。幾つかの例において、特定の励起波長の光は、±2nm、±5nm、±10nm、±20nm、±40nm、±80nm、又はそれ以上の特定の波長の光を含む。幾つかの例において、使用される励起波長は、蛍光表示体の最大吸収ピークと一致する、又は一致しない場合がある。
【0024】
本明細書で使用されるように、用語「発光波長」は、適切な波長の光による励起に際して蛍光表示体(例えばフルオロフォア又は色素分子)により発せられた光の波長を指す。発光波長は典型的に単一波長(例えば670nm)として特定されるが、本明細書は特定波長で集中される波長帯又は発光フィルタバンドパスを指すと、当業者によって理解される。幾つかの例において、特定の発光波長の光は、±2nm、±5nm、±10nm、±20nm、±40nm、±80nm、又はそれ以上の特定の光を含む。
【0025】
本明細書で使用されるように、用語「リアルタイム」は、例えば罹患組織の除去を誘導するために外科手術中に外科医によって情報が使用されるように、蛍光画像データが処理され、獲得され、及び/又は表示される割合を指す。一般的に、用語「リアルタイム」は、本明細書で使用されるように、少なくとも0.5Hz、少なくとも1Hz、少なくとも5Hz、少なくとも10Hz、少なくとも20Hz、少なくとも30Hz、少なくとも40Hz、少なくとも50Hz、少なくとも60Hz、少なくとも70Hz、少なくとも80Hz、少なくとも90Hz、又は少なくとも100Hzの画像の取得、処理、及び/又は表示に対する更新レートを指す。
【0026】
本明細書で使用されるような用語「手術」は、物理的介入により組織中の効果を調べ、操作し、変化させ、又は引き起こすために使用される任意の方法を指す。これらの方法は、限定されないが、観血手術、内視鏡手術、腹腔鏡手術、低侵襲性手術、ロボットによる手術、及び、腫瘍切除、癌組織アブレーション、癌進行度分類、癌診断、リンパ節病期分類、前哨リンパ節検出、又は癌処置などの、癌組織に影響を与える任意の処置を含む。
【0027】
本明細書に使用されるような用語「誘導された手術」は、外科医が手術を誘導するために造影剤を利用する任意の外科手術を指す。
【0028】
本明細書で使用されるような用語「癌」は、人体における細胞の制御できない成長又は増殖に関与する任意の疾患を指す。癌は更に、細胞が元の部位から遊走して離れた部位に拡散する(即ち、転移)能力によって特徴づけられる。癌は、肉腫、細胞腫、リンパ腫、白血病、芽細胞腫、又は胚細胞腫瘍であり得る。癌は、肺、乳房、卵巣、大腸、食道、直腸、骨、前立腺、脳、膵臓、膀胱、腎臓、肝臓、血液細胞、リンパ節、及び胃を含むがこれらに限定されない様々な組織に生じる場合がある。
【0029】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」は本明細書で交換可能に使用され、アミノ酸残基のポリマーを指す。この用語は、自然発生のアミノ酸ポリマーの他、1つ以上のアミノ酸残基が非自然発生のアミノ酸(例えばアミノ酸アナログ)であるアミノ酸ポリマーにも適用される。この用語は、完全長のタンパク質(即ち、高原)を含む任意の長さのアミノ酸鎖を包含しており、アミノ酸残基は共有結合のペプチド結合によって結合される。
【0030】
アミノ酸配列が本明細書で提供される場合、配列のL-、D-、又はβ-アミノ酸の変形も、レトロアイソフォーム、逆位アイソフォーム、及びレトロ-逆位アイソフォームと同様に考慮される。ペプチドはまた、1つ以上のアミノ酸残基が対応する自然発生のアミノ酸の人工的な化学薬品アナログであるアミノ酸ポリマーの他、自然発生のアミノ酸ポリマーを含む。加えて、この用語は、ペプチド結合、又は他の修飾結合によって結合されたアミノ酸に適用される(例えば、ペプチド結合は、α-エステル、β-エステル、チオアミド、ホスホンアミド、カルバマート、ヒドロキシラートなどにより置換され(例えば、Spatola, (1983) Chem. Biochem. Amino Acids and Proteins 7:267-357を参照)、アミドは飽和アミンで置換される(例えば、参照により本明細書に組み込まれるSkiles et al.の米国特許第4,496,542号、及びKaltenbronn et al., (1990) Pp. 969-970 in Proc. 11th American Peptide Symposium, ESCOM Science Publishers, The Netherlandsなどを参照))。
【0031】
用語「アミノ酸」は、自然発生及び合成のアミノ酸の他、自然発生のアミノ酸と同様の様式で機能するアミノ酸アナログ及びアミノ酸模倣薬を指す。自然発生のアミノ酸は、後に修飾されるアミノ酸、例えばヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタマート、O-リン酸化セリンと同様に、遺伝子コードによってコードされるものである。アミノ酸は、疎水性アミノ酸、極性アミノ酸、無極性アミノ酸、及び荷電アミノ酸として分類される。疎水性アミノ酸は、小さな疎水性アミノ酸及び大きな疎水性アミノ酸を含む。小さな疎水性アミノ酸は、グリシン、アラニン、プロリン、及びそれらのアナログであり得る。大きな疎水性アミノ酸は、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、及びそれらのアナログであり得る。極性アミノ酸は、セリン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン、システイン、チロシン、及びそれらのアナログであり得る。無極性アミノ酸は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、プロリン、及びそれらのアナログであり得る。荷電アミノ酸は、リジン、アルギニン、ヒスチジン、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩、又はそれらのアナログであり得る。アミノ酸アナログは、自然発生のアミノ酸と同じ塩基化学構造を有する化合物、即ち、水素、カルボキシル基、アミノ基、及びR基に結合するα炭素を指し、例えばホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシドである。こうしたアナログは、修飾されたR基(例えば、ノルロイシン)又は修飾されたペプチド骨格を有するが、天然のアミノ酸と同じ基本的な化学構造を保持する。アミノ酸模倣薬は、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なるが自然発生のアミノ酸と同様の様式で機能する構造を有する化学化合物を指す。アミノ酸はD-アミノ酸又はL-アミノ酸の何れかである。
【0032】
場合によっては、そのような保存的に修飾された変異体は、多形性変異体、異種間ホモログ、及び本発明のアレルを加えられ、且つそれらを除外しない。
【0033】
レシオメトリック蛍光画像化
【0034】
レシオメトリック蛍光画像化は、リアルタイムでの細胞内イオン濃度、細胞膜電圧、及び細胞内pH動態の測定を含む、様々な測定のために広範囲で使用されている。上述のように、レシオメトリック画像化技術は、蛍光発光波長の推移を観察すること、或いは、輝度の単純な変化のモニタリングではなくフルオロフォアの組み合わせの発光輝度を比較することにより、定量化に対する蛍光輝度測定の使用に固有の制限(例えば、蛍光表示体濃度の変動、励起光輝度又は異なる器機間の蛍光発光の収集及び検出の効率の変動、並びに、異なる形態、厚み、細胞組成、及び細胞外マトリックスを有する組織が原因のインビボの画像化に対する更なる困難など)の幾つかを解消する。
【0035】
幾つかの例において、レシオメトリック蛍光表示体は、単一励起波長で励起され、且つ、特異的な生物活性の感知に際して、例えばイオンの結合又はプロテアーゼによる切断に際して蛍光発光波長の推移を示す、分子を含む。これらの例において、関連するレシオメトリック蛍光画像化技術は、単一励起波長の光で表示体を注入された生物試料を照らす工程、及び、蛍光比率画像を作成するために2つの異なる発光波長で(連続的に又は同時に)蛍光画像をキャプチャする工程を含む。
【0036】
幾つかの例において、レシオメトリック蛍光表示体は、単一発光波長で蛍光を放ち、且つ、特異的な生物活性の感知に際して、例えばイオンの結合又はプロテアーゼによる切断に際して最大吸収における推移を示す、分子を含む。これらの例において、関連するレシオメトリック蛍光画像化技術は、2つの異なる励起波長の光で表示体を注入された生物試料を照らす工程、及び、蛍光比率画像を作成するために単一発光波長で蛍光画像をキャプチャする工程を含む。
【0037】
幾つかの例において、「レシオメトリック蛍光表示体」は、2つ以上のフルオロフォアのセットを含み、そのうち1つは(例えば、染料濃度又はベースライン生物学的プロセスのモニタリングのための)内部統制として機能し、その他1つ以上は対象の生物活性の表示体として機能する。これらの例において、関連するレシオメトリック蛍光画像化技術は、2つ以上の異なる励起波長の光で2つ以上のフルオロフォアのセットを注入された生物試料を照らす工程、及び、1つ以上の蛍光比率画像を作成するために2つ以上の異なる発光波長で蛍光画像を連続的にキャプチャする工程を含む。
【0038】
レシオメトリック蛍光表示体
【0039】
様々なレシオメトリック蛍光表示体が、細胞内イオン濃度、細胞膜電圧、プロテアーゼ活性、及び他の生物学的プロセスをモニタリングするために開発されている。例は、限定されないが、カルシウム表示体Indo-1、Fura-2、Fura-4F、Fura-6F、Fura-FF、及びFura-Red(又は併用して使用されるFluo-3及びFura-Red)(ThermoFisher Scientific, Waltham, MA);pH表示体SNARF、Oregon Green、及びBCECF(ThermoFisher Scientific, Waltham, MA);細胞膜偏光表示体Di-4-ANEPPS、Di-8-ANEPPS、Di-2-ANEPEQ、JC-1、及びJC-9(ThermoFisher Scientific, Waltham, MA)(Gonzalez, J.E. and Tsien, R.Y. (1997), “Improved Indicators of Cell Membrane Potential that use Fluorescence Resonance Energy Transfer”, Chemistry & Biology 4:269-277も参照);及び蛍光ドナーと蛍光アクセプターで標識されたレシオメトリック酵素基質、例えば、HIV-1プロテアーゼ活性に対するレシオメトリック表示体(Jin, et al. (2011), “Visualization of HIV Protease Inhibition Using a Novel FRET Molecular Probe”, Biotechnol Prog. 27(4): 1107-1114)、マトリックスメタロプロテイナーゼMMP-7及び他のマトリックスメタロプロテイナーゼ活性(T. Jiang, et al. (2004), Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101:17867-17872; Scherer, et al. (2008), Optical Imaging of Matrix Metalloproteinase-7 Activity In vivo Using a Proteolytic Nanobeacon”, Mol Imaging. 7(3):118-131; Olson, et al. (2009) Integr. Biol. 1:382-393)、エラスターゼ活性(Whitney, et al., (2010), J. Biol. Chem. 285:22532-22541)、トロンビン活性(Whitney, et al. (2013), “Ratiometric Activatable Cell-Penetrating Peptides Provide Rapid In vivo Readout of Thrombin Activation”, Angew. Chem. Int. Ed. 52, 325-330)、及びカスパーゼ-3活性化(Mizukami, S. et al. (1999), “Imaging of Caspase-3 Activation in HeLa Cells Stimulated with Etoposide Using a Novel Fluorescent Probe”, FEBS Lett. 453, 356-360)を含む。
【0040】
蛍光共鳴エネルギー転移に基づくレシオメトリック蛍光表示体
【0041】
幾つかのレシオメトリック蛍光表示体は、対象の特異的な生物活性への応答性を与えるために蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)機構に依存する。プロテアーゼ活性をモニタリングするための蛍光発生酵素基質は、例えば、FRETベースの機構に頻繁に依存し、且つ、一端ではフルオロフォア(例えば蛍光ドナー)で、及び他端では蛍光消光剤(例えば蛍光アクセプター)で標識される短いペプチド配列又はリンカー(例えば、特定のプロテアーゼに対する固有の基質配列の全て又は一部に相当するペプチド配列)を典型的に含む、蛍光表示体の1つのクラスである。蛍光消光剤は、それ自体でフルオロフォアである、又はそうではない場合もある。無傷のFRETベースのプローブにおいて、蛍光ドナー及び蛍光消光剤は、互いに隣接した状態、例えば、典型的には約100Å未満を離間されて保持される。蛍光ドナーの発光スペクトルが実質的に蛍光消光剤の吸収スペクトルと重複することを要求するのに加えて、蛍光共鳴エネルギー転移プロセスの効率は、分離距離Iに対して極めて敏感であり、1/R6に比例する。プロテアーゼによりドナー及び消光剤を分離するリンカーの切断は、エネルギー転移プロセスの効率を抑え、その結果、蛍光ドナー発光輝度の増加、及び蛍光アクセプター発光の減少又は削減がもたらされる(レシオメトリックプローブに典型的であるように、アクセプターがフルオロフォアである場合)。蛍光輝度の変化はモニタリングされ(レシオメトリックプローブに関するドナー及びアクセプターの両方に対する発光波長にて)、プロテアーゼ活性に相関される。
【0042】
レシオメトリック活性化可能な細胞膜透過ペプチド(RACPP)
【0043】
活性化可能な細胞膜透過ペプチド(ACPP;「選択的な送達分子」(SDM)とも称される)は、インビボでプロテアーゼ活性の部位への蛍光染料又は他の造影剤を含む様々なカーゴ(cargos)の標的送達が可能な分子である(Whitney, et al. (2013), “Ratiometric Activatable Cell-Penetrating Peptides Provide Rapid In vivo Readout of Thrombin Activation”, Angew. Chem. Int. Ed. 52, 325-330; Liu, et al., WO 2013/019681 A2)。ACPPは、カーゴに結合されるポリカチオン系細胞膜透過ペプチド、及びプロテアーゼ切断可能なリンカーを有するポリアニオン系抑制ドメインから成る。プローブ活性化及びカーゴの取込みは、プローブを接着形態に変換するポリアニオン及びポリカチオン系ドメインを接続する、リンカー配列の局所的なタンパク質分解に依存する。この方法は、切断されたプローブの蓄積を介した生組織における空間に局所的な酵素活性の検出を提供する。ACPPは、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)、腫瘍におけるエラスターゼ、及びアテローム性動脈硬化及び脳損傷のトロンビン活性化を標的とすると以前に報告されている。
【0044】
レシオメトリック活性化可能な細胞膜透過ペプチド(RACPP)は、リアルタイムでプロテアーゼ活性をモニタリングするためにFRET依存性発光のレシオメトリックな読み出しを提供するべく蛍光ドナー部分及び蛍光アクセプター部分を更に含み(Whitney, et al. (2013), “Ratiometric Activatable Cell-Penetrating Peptides Provide Rapid In vivo Readout of Thrombin Activation”, Angew. Chem. Int. Ed. 52, 325-330)、且つ、インビボの画像化に対して単一発光波長プローブを超える著しい利点を提供する、ACPPである。例えば、ACPP内でのCy5からCy7へのFRETは、切断の部位での対比を生成するためにウォッシュアウトの必要性を排除する他、単一波長発光帯域での輝度測定を混乱させる多くの非酵素的な因子を排除することによって、輝度に基づくACPP又は蛍光脱消光(dequenching)プローブにわたる有意な改善を提供する。他の利点は、プローブの酵素的切断に際して生じる大きな分光学的な推移、及び、改善された空間分解能を与えるために切断の部位にて局在化されたままである接着性生成物への拡散性の基質の転換を含む。ヘアピン構造は、効率的なFRETを隔日にする距離でCy5及びCy7(又は他の蛍光ドナー-アクセプターの対)を保持する。プローブの切断は、感知されている基質配列又は酵素にかかわらず、発光比率における大きな変化を引き起こす(Whitney, et al. (2013)により報告される、Cy5/Cy7で標識されたトロンビン活性化RACPPの場合に、およそ40倍)。
【0045】
幾つかの実施形態において、本開示の画像化方法に利用されたRACPP(又はレシオメトリックSDMプローブ)は、以下の構造を持つ式(I)の分子を含み:
[DA-cA]-A-[cM-M]-X-B-[cB-DB]式(I)
式中、
Xはプロテアーゼによって切断可能なリンカーであり;
Aは、5~20の酸性アミノ酸残基を含む配列を有するペプチドであり;
Bは、5~20の塩基性アミノ酸残基を含む配列を有するペプチドであり;
cA、cB、及びcMは各々独立して0~1つのアミノ酸を含み;
Mは高分子であり;及び
DA及びDBは、蛍光共鳴エネルギー転移を受けることが可能なアクセプター蛍光部分及びドナー蛍光部分の対であり;及びここで、[cM-M]はA又はX上の任意の位置に結合され、[DA-cA]はAの任意のアミノ酸残基に結合され、[cB-DB]はBの任意のアミノ酸残基に結合される。
【0046】
幾つかの実施形態において、本開示の画像化方法に利用されたRACPP(又はレシオメトリックSDMプローブ)は、以下の構造を持つ式(II)の分子を含み:
[DA-cA]-A-[cM-M]-X-B-Y-[cB-DB]式(II)
式中、
Xはプロテアーゼによって切断可能なリンカーであり;
Yはリンカーであり;
Aは、5~20の酸性アミノ酸残基を含む配列を有するペプチドであり;
Bは、5~20の塩基性アミノ酸残基を含む配列を有するペプチドであり;
cA、cB、及びcMは各々独立して0~1つのアミノ酸を含み;
Mは高分子であり;及び
DA及びDBは、蛍光共鳴エネルギー転移を受けることが可能なアクセプター蛍光部分及びドナー蛍光部分の対であり;及びここで、[cM-M]はA又はX上の任意の位置に結合され、[DA-cA]はAの任意のアミノ酸残基に結合され、[cB-DB]はYに結合される。
【0047】
部分A
【0048】
幾つかの実施形態において、Aは、2~20の酸性アミノ酸を含む配列を有するペプチドである。幾つかの実施形態において、ペプチド部分Aは約2~約20の酸性アミノ酸を含む。幾つかの実施形態において、ペプチド部分Aは約5~約20の酸性アミノ酸を含む。幾つかの実施形態において、Aは、5~9の酸性アミノ酸を含む配列を有する。幾つかの実施形態において、Aは、5~8の酸性アミノ酸を含む配列を有する。幾つかの実施形態において、Aは、5~7の酸性アミノ酸を含む配列を有する。幾つかの実施形態において、Aは、5の酸性アミノ酸を含む配列を有する。幾つかの実施形態において、Aは、6の酸性アミノ酸を含む配列を有する。幾つかの実施形態において、Aは、7の酸性アミノ酸を含む配列を有する。幾つかの実施形態において、Aは、8の酸性アミノ酸を含む配列を有する。幾つかの実施形態において、Aは、9の酸性アミノ酸を含む配列を有する。
【0049】
幾つかの実施形態において、ペプチド部分Aは約2~約20の連続する酸性アミノ酸を含む。幾つかの実施形態において、ペプチド部分Aは約5~約20の連続する酸性アミノ酸を含む。幾つかの実施形態において、Aは、5~9の連続する酸性アミノ酸を含む配列を有する。幾つかの実施形態において、Aは、5~8の連続する酸性アミノ酸を含む配列を有する。幾つかの実施形態において、Aは、5~7の連続する酸性アミノ酸を含む配列を有する。幾つかの実施形態において、Aは、5の連続する酸性アミノ酸を含む配列を有する。幾つかの実施形態において、Aは、6の連続する酸性アミノ酸を含む配列を有する。幾つかの実施形態において、Aは、7の連続する酸性アミノ酸を含む配列を有する。幾つかの実施形態において、Aは、8の連続する酸性アミノ酸を含む配列を有する。幾つかの実施形態において、Aは、9の連続する酸性アミノ酸を含む配列を有する。
【0050】
幾つかの実施形態において、ペプチド部分Aは、アスパラギン酸塩及びグルタミン酸塩から選択される、約2~約20の酸性アミノ酸を含む。幾つかの実施形態において、ペプチド部分Aは、アスパラギン酸塩及びグルタミン酸塩から選択される、約5~約20の酸性アミノ酸を含む。幾つかの実施形態において、Aは、アスパラギン酸塩及びグルタミン酸塩から選択される、5~9の酸性アミノ酸を含む配列を有する。幾つかの実施形態において、Aは、アスパラギン酸塩及びグルタミン酸塩から選択される、5~8の酸性アミノ酸を含む配列を有する。幾つかの実施形態において、Aは、アスパラギン酸塩及びグルタミン酸塩から選択される、5~7の酸性アミノ酸を含む配列を有する。幾つかの実施形態において、Aは、アスパラギン酸塩及びグルタミン酸塩から選択される、5の酸性アミノ酸を含む配列を有する。幾つかの実施形態において、Aは、アスパラギン酸塩及びグルタミン酸塩から選択される、6の酸性アミノ酸を含む配列を有する。幾つかの実施形態において、Aは、アスパラギン酸塩及びグルタミン酸塩から選択される、7の酸性アミノ酸を含む配列を有する。幾つかの実施形態において、Aは、アスパラギン酸塩及びグルタミン酸塩から選択される、8の酸性アミノ酸を含む配列を有する。幾つかの実施形態において、Aは、アスパラギン酸塩及びグルタミン酸塩から選択される、9の酸性アミノ酸を含む配列を有する。
【0051】
幾つかの実施形態において、ペプチド部分Aは、アスパラギン酸塩及びグルタミン酸塩から選択される、約2~約20の連続する酸性アミノ酸を含む。幾つかの実施形態において、ペプチド部分Aは、アスパラギン酸塩及びグルタミン酸塩から選択される、約5~約20の連続する酸性アミノ酸を含む。幾つかの実施形態において、Aは、アスパラギン酸塩及びグルタミン酸塩から選択される、5~9の連続する酸性アミノ酸を含む配列を有する。幾つかの実施形態において、Aは、アスパラギン酸塩及びグルタミン酸塩から選択される、5~8の連続する酸性アミノ酸を含む配列を有する。幾つかの実施形態において、Aは、アスパラギン酸塩及びグルタミン酸塩から選択される、5~7の連続する酸性アミノ酸を含む配列を有する。幾つかの実施形態において、Aは、アスパラギン酸塩及びグルタミン酸塩から選択される、5の連続する酸性アミノ酸を含む配列を有する。幾つかの実施形態において、Aは、アスパラギン酸塩及びグルタミン酸塩から選択される、6の連続する酸性アミノ酸を含む配列を有する。幾つかの実施形態において、Aは、アスパラギン酸塩及びグルタミン酸塩から選択される、7の連続する酸性アミノ酸を含む配列を有する。幾つかの実施形態において、Aは、アスパラギン酸塩及びグルタミン酸塩から選択される、8の連続する酸性アミノ酸を含む配列を有する。幾つかの実施形態において、Aは、アスパラギン酸塩及びグルタミン酸塩から選択される、9の連続する酸性アミノ酸を含む配列を有する。
【0052】
幾つかの実施形態において、ペプチド部分Aは約2~約20のグルタミン酸塩を含む。幾つかの実施形態において、ペプチド部分Aは約5~約20のグルタミン酸塩を含む。幾つかの実施形態において、Aは、5~9のグルタミン酸塩を含む配列を有する。幾つかの実施形態において、Aは、5~8のグルタミン酸塩を含む配列を有する。幾つかの実施形態において、Aは、5~7のグルタミン酸塩を含む配列を有する。幾つかの実施形態において、Aは、5のグルタミン酸塩を含む配列を有する。幾つかの実施形態において、Aは、6のグルタミン酸塩を含む配列を有する。幾つかの実施形態において、Aは、7のグルタミン酸塩を含む配列を有する。幾つかの実施形態において、Aは、8のグルタミン酸塩を含む配列を有する。幾つかの実施形態において、Aは、9のグルタミン酸塩を含む配列を有する。
【0053】
幾つかの実施形態において、ペプチド部分Aは約2~約20の連続するグルタミン酸塩を含む。幾つかの実施形態において、ペプチド部分Aは約5~約20の連続するグルタミン酸塩を含む。幾つかの実施形態において、Aは、5~9の連続するグルタミン酸塩を含む配列を有する。幾つかの実施形態において、Aは、5~8の連続するグルタミン酸塩を含む配列を有する。幾つかの実施形態において、Aは、5~7の連続するグルタミン酸塩を含む配列を有する。幾つかの実施形態において、Aは、5の連続するグルタミン酸塩を含む配列を有する。幾つかの実施形態において、Aは、6の連続するグルタミン酸塩を含む配列を有する。幾つかの実施形態において、Aは、7の連続するグルタミン酸塩を含む配列を有する。幾つかの実施形態において、Aは、8の連続するグルタミン酸塩を含む配列を有する。幾つかの実施形態において、Aは、9の連続するグルタミン酸塩を含む配列を有する。
【0054】
幾つかの実施形態において、部分Aは、5の連続するグルタミン酸塩(即ち、EEEEE又はeeeee)を含む。幾つかの実施形態において、部分Aは、9の連続するグルタミン酸塩(即ち、EEEEEEEEE又はeeeeeeeee)を含む。
【0055】
酸性部分Aは、酸性でないアミノ酸を含み得る。酸性部分Aは、負電荷を帯びた部分などの他の部分を含み得る。本明細書に開示される選択的な送達分子の実施形態において、酸性部分Aは、アミノ酸を含まない生理的pHにて約2~約20の負電荷を好ましくは有している、負電荷を帯びた部分である。
【0056】
幾つかの実施形態において、部分Aの負電荷の量は、部分Bの正電荷の量とほぼ同じである。幾つかの実施形態において、部分Aの負電荷の量は、部分Bの正電荷の量と同じではない。幾つかの実施形態において、組織取込みの改善は、部分Aの負電荷の量が部分Bの正電荷の量と同じでない選択的な送達分子において見られる。幾つかの実施形態において、溶解度の改善は、部分Aの負電荷の量が部分Bの正電荷の量と同じでない部分選択的な送達分子において観察される。幾つかの実施形態において、より速い組織取込みは、部分Aの負電荷の量が部分Bの正電荷の量と同じでない選択的な送達分子において見られる。幾つかの実施形態において、より大きな組織取込みは、部分Aの負電荷の量が部分Bの正電荷の量と同じでない選択的な送達分子において見られる。
【0057】
部分AはL-アミノ酸又はD-アミノ酸の何れかである。本発明の実施形態において、D-アミノ酸は、バックグラウンドのペプチダーゼ又はプロテアーゼによる免疫原性及び非特異性の切断を最小化するために好ましい。
【0058】
部分Aは、例えばヒドロキシリジン、デスモシン、イソデスモシン、又は他の非標準アミノ酸などの、非標準アミノ酸を含み得ることが理解される。部分Aは、例えばメチル化アミノ酸(例えば、メチルヒスチジン、リジンのメチル化形態など)、アセチル化アミノ酸、アミノ化アミノ酸、ホルミル化アミノ酸、ヒドロキシル化アミノ酸、リン酸化アミノ酸、又は他の修飾アミノ酸などの、翻訳後修飾されたアミノ酸を含む、修飾アミノ酸を含み得る。部分Aはまた、非ペプチド結合により結合される部分、及び非アミノ酸部分により、又は非アミノ酸部分へと結合されるアミノ酸を含む、ペプチド模倣部分を含み得る。
【0059】
本明細書に開示される選択的な送達分子は、Aがアミノ末端にある、又はAがカルボキシ末端にある、即ちペプチド結合の何れかの配向が許容可能である場合に、有効である。
【0060】
部分B
【0061】
幾つかの実施形態において、Bは、5~15の塩基性アミノ酸を含む配列を有するペプチドである。幾つかの実施形態において、ペプチド部分Bは約5~約20の塩基性アミノ酸を含む。幾つかの実施形態において、ペプチド部分Bは約5~約12の塩基性アミノ酸を含む。幾つかの実施形態において、ペプチド部分Bは約7~約9の塩基性アミノ酸を含む。幾つかの実施形態において、ペプチド部分Bは約7~約8の塩基性アミノ酸を含む。幾つかの実施形態において、ペプチド部分Bは9の塩基性アミノ酸を含む。幾つかの実施形態において、ペプチド部分Bは8の塩基性アミノ酸を含む。幾つかの実施形態において、ペプチド部分Bは7の塩基性アミノ酸を含む。
【0062】
幾つかの実施形態において、ペプチド部分Bは約5~約20の連続する塩基性アミノ酸を含む。幾つかの実施形態において、ペプチド部分Bは約5~約12の連続する塩基性アミノ酸を含む。幾つかの実施形態において、ペプチド部分Bは約7~約9の連続する塩基性アミノ酸を含む。幾つかの実施形態において、ペプチド部分Bは約7~約8の連続する塩基性アミノ酸を含む。幾つかの実施形態において、ペプチド部分Bは9の連続する塩基性アミノ酸を含む。幾つかの実施形態において、ペプチド部分Bは8の連続する塩基性アミノ酸を含む。幾つかの実施形態において、ペプチド部分Bは7の連続する塩基性アミノ酸を含む。
【0063】
幾つかの実施形態において、ペプチド部分Bは、アルギニン、ヒスチジン、及びリジンから選択される、約5~約20の塩基性アミノ酸を含む。幾つかの実施形態において、ペプチド部分Bは、アルギニン、ヒスチジン、及びリジンから選択される、約5~約12の塩基性アミノ酸を含む。幾つかの実施形態において、ペプチド部分Bは、アルギニン、ヒスチジン、及びリジンから選択される、約7~約9の塩基性アミノ酸を含む。幾つかの実施形態において、ペプチド部分Bは、アルギニン、ヒスチジン、及びリジンから選択される、約7~約8の塩基性アミノ酸を含む。幾つかの実施形態において、ペプチド部分Bは、アルギニン、ヒスチジン、及びリジンから選択される、9の塩基性アミノ酸を含む。幾つかの実施形態において、ペプチド部分Bは、アルギニン、ヒスチジン、及びリジンから選択される、8の塩基性アミノ酸を含む。幾つかの実施形態において、ペプチド部分Bは、アルギニン、ヒスチジン、及びリジンから選択される、7の塩基性アミノ酸を含む。
【0064】
幾つかの実施形態において、ペプチド部分Bは、アルギニン、ヒスチジン、及びリジンから選択される、約5~約20の連続する塩基性アミノ酸を含む。幾つかの実施形態において、ペプチド部分Bは、アルギニン、ヒスチジン、及びリジンから選択される、約5~約12の連続する塩基性アミノ酸を含む。幾つかの実施形態において、ペプチド部分Bは、アルギニン、ヒスチジン、及びリジンから選択される、約7~約9の連続する塩基性アミノ酸を含む。幾つかの実施形態において、ペプチド部分Bは、アルギニン、ヒスチジン、及びリジンから選択される、約7~約8の連続する塩基性アミノ酸を含む。幾つかの実施形態において、ペプチド部分Bは、アルギニン、ヒスチジン、及びリジンから選択される、9の連続する塩基性アミノ酸を含む。幾つかの実施形態において、ペプチド部分Bは、アルギニン、ヒスチジン、及びリジンから選択される、8の連続する塩基性アミノ酸を含む。
【0065】
幾つかの実施形態において、ペプチド部分Bは約5~約20のアルギニンを含む。幾つかの実施形態において、ペプチド部分Bは約5~約12のアルギニンを含む。幾つかの実施形態において、ペプチド部分Bは約7~約9のアルギニンを含む。幾つかの実施形態において、ペプチド部分Bは約7~約8のアルギニンを含む。幾つかの実施形態において、ペプチド部分Bは9のアルギニンを含む。幾つかの実施形態において、ペプチド部分Bは8のアルギニンを含む。幾つかの実施形態において、ペプチド部分Bは7のアルギニンを含む。
【0066】
幾つかの実施形態において、ペプチド部分Bは約5~約20の連続するアルギニンを含む。幾つかの実施形態において、ペプチド部分Bは約5~約12の得アルギニンを含む。幾つかの実施形態において、ペプチド部分Bは約7~約9の連続するアルギニンを含む。幾つかの実施形態において、ペプチド部分Bは約7~約8の連続するアルギニンを含む。幾つかの実施形態において、ペプチド部分Bは9の連続するアルギニンを含む。幾つかの実施形態において、ペプチド部分Bは8の連続するアルギニンを含む。幾つかの実施形態において、ペプチド部分Bは7の連続するアルギニンを含む。
【0067】
塩基性部分Bは、塩基性でないアミノ酸を含み得る。塩基性部分Bは、正電荷を帯びた部分などの他の部分を含み得る。実施形態において、塩基性部分Bは、アミノ酸を含まない、生理的pHで約5~約20の正電荷を好ましくは有している、正電荷を帯びた部分である。幾つかの実施形態において、部分Aの負電荷の量は、部分Bの正電荷の量とほぼ同じである。幾つかの実施形態において、部分Aの負電荷の量は、部分Bの正電荷の量と同じではない。
【0068】
部分BはL-アミノ酸又はD-アミノ酸の何れかである。本発明の実施形態において、D-アミノ酸は、バックグラウンドのペプチダーゼ又はプロテアーゼによる免疫原性及び非特異性の切断を最小化するために好ましい。オリゴ-D-アルギニン配列の細胞取込みは、オリゴ-L-アルギニンのもの以上に優れていると知られている。
【0069】
部分Bは、例えばヒドロキシリジン、デスモシン、イソデスモシン、又は他の非標準アミノ酸などの、非標準アミノ酸を含み得ることが理解される。部分Bは、例えばメチル化アミノ酸(例えば、メチルヒスチジン、リジンのメチル化形態など)、アセチル化アミノ酸、アミノ化アミノ酸、ホルミル化アミノ酸、ヒドロキシル化アミノ酸、リン酸化アミノ酸、又は他の修飾アミノ酸などの、翻訳後修飾されたアミノ酸を含む、修飾アミノ酸を含み得る。部分Bはまた、非ペプチド結合により結合される部分、及び非アミノ酸部分により、又は非アミノ酸部分へと結合されるアミノ酸を含む、ペプチド模倣部分を含み得る。
【0070】
Xがプロテアーゼによって切断可能なペプチドである実施形態において、Xの切断により作成された新たなアミノ末端が、Bに既に存在している正電荷に添加される追加の正電荷に寄与するように、BのN末端にXのC末端を結合することが好ましい。
【0071】
抱合基(c)
【0072】
幾つかの実施形態において、カーゴ(例えばDA及びDB)及び高分子担体(M)は、A-X-Bに間接的に結合される。
【0073】
幾つかの実施形態において、カーゴ(例えばDA及びDB)及び高分子担体(M)は、抱合基(cA、cB、及びcM)によってA-X-Bに間接的に結合される。幾つかの実施形態において、カーゴ(例えばDA及びDB)及び高分子担体(M)は、反応型抱合基(cA、cB、及びcM)によってA-X-Bに間接的に結合される。幾つかの実施形態において、カーゴ(例えばDA及びDB)及び高分子担体(M)は、直交性反応型抱合基(cA、cB、及びcM)によってA-X-Bに間接的に結合される。幾つかの実施形態において、cA、cB、及びcM各々は独立してアミノ酸を含む。幾つかの実施形態において、cA、cB、及びcMは各々独立して0~10のアミノ酸を含む。幾つかの実施形態において、cA、cB、及びcMは各々独立して1つのアミノ酸を含む。幾つかの実施形態において、cA、cB、及びcMは各々独立して2つのアミノ酸を含む。幾つかの実施形態において、cA、cB、及びcMは各々独立して3つのアミノ酸を含む。幾つかの実施形態において、cA、cB、及びcMは各々独立して4つのアミノ酸を含む。幾つかの実施形態において、cA、cB、及びcMは各々独立して5つのアミノ酸を含む。幾つかの実施形態において、cA、cB、及びcMは各々独立して6つのアミノ酸を含む。幾つかの実施形態において、cA、cB、及びcMは各々独立して7つのアミノ酸を含む。幾つかの実施形態において、cA、cB、及びcMは各々独立して8つのアミノ酸を含む。幾つかの実施形態において、cA、cB、及びcMは各々独立して9つのアミノ酸を含む。幾つかの実施形態において、cA、cB、及びcMは各々独立して10のアミノ酸を含む。
【0074】
幾つかの実施形態において、cA、cB、及びcMは各々独立して誘導体化アミノ酸を含む。幾つかの実施形態において、多数のカーゴ(D)は誘導体化アミノ酸抱合基に結合される。
【0075】
幾つかの実施形態において、抱合基は受容体リガンドを含む。
【0076】
幾つかの実施形態において、cA、cB、及びcMは各々独立して、自然発生のアミノ酸又は非自然発生のアミノ酸を含む。幾つかの実施形態において、cA、cB、及びcMは各々独立して、D-アミノ酸、Lアミノ酸、α-アミノ酸、β-アミノ酸、又はγ-アミノ酸を含む。幾つかの実施形態において、cA、cB、及びcMは各々独立して、遊離チオール基を持つ任意のアミノ酸、遊離アミン基を含有する任意のアミノ酸、N末端アミン基を持つ任意のアミノ酸、及び、ヒドロキシルアミン又はヒドラジンの基との反応に際してオキシム又はヒドラゾンの結合を形成可能な側鎖を有する任意のアミノ酸を含む。幾つかの実施形態において、cA、cB、及びcMは各々独立して、D-システイン、D-グルタミン酸塩、リジン、及びパラ-4-アセチルL-フェニルアラニンを含む。幾つかの実施形態において、cBは遊離チオール基を持つ任意のアミノ酸を含む。幾つかの実施形態において、cBはD-システインを含む。幾つかの実施形態において、cAはN末端アミン基を持つ任意のアミノ酸を含む。幾つかの実施形態において、cAはD-グルタミン酸塩を含む。幾つかの実施形態において、cAはリジンを含む。幾つかの実施形態において、cMは、ヒドロキシルアミン又はヒドラジンの基との反応に際してオキシム又はヒドラゾンの結合を形成可能な側鎖を有する任意のアミノ酸を含む。幾つかの実施形態において、cMはパラ-4-アセチルL-フェニルアラニンを含む。
【0077】
幾つかの実施形態において、cA、cB、及びcMは各々独立して、自然発生のアミノ酸又は非自然発生のアミノ酸から選択される。幾つかの実施形態において、cA、cB、及びcMは各々独立して、D-アミノ酸、Lアミノ酸、α-アミノ酸、β-アミノ酸、又はγ-アミノ酸から選択される。幾つかの実施形態において、cA、cB、及びcMは各々独立して、遊離チオール基を持つ任意のアミノ酸、遊離アミン基を含有する任意のアミノ酸、N末端アミン基を持つ任意のアミノ酸、及び、ヒドロキシルアミン又はヒドラジンの基との反応に際してオキシム又はヒドラゾンの結合を形成可能な側鎖を有する任意のアミノ酸である。幾つかの実施形態において、cA、cB、及びcMは各々独立して、D-システイン、D-グルタミン酸塩、リジン、及びパラ-4-アセチルL-フェニルアラニンから選択される。幾つかの実施形態において、cBは遊離チオール基を持つ任意のアミノ酸である。幾つかの実施形態において、cBはD-システインである。幾つかの実施形態において、cAはN末端アミン基を持つ任意のアミノ酸である。幾つかの実施形態において、cAはD-グルタミン酸塩である。幾つかの実施形態において、cAはリジンである。幾つかの実施形態において、cMは、ヒドロキシルアミン又はヒドラジンの基との反応に際してオキシム又はヒドラゾンの結合を形成可能な側鎖を有する任意のアミノ酸である。幾つかの実施形態において、cMはパラ-4-アセチルL-フェニルアラニンである。
【0078】
造影剤(カーゴ)
【0079】
幾つかの実施形態において、選択的な送達分子のカーゴ部分(D)は、造影剤、例えばフルオロフォア又は染料を含む。幾つかの実施形態において、造影剤は蛍光部分である。幾つかの実施形態において、蛍光部分は、蛍光タンパク質、蛍光ペプチド、蛍光染料、蛍光体、又はそれらの組み合わせから選択される。幾つかの実施形態において、造影剤は、同じ選択的な送達分子に結合される蛍光部分(例えばDA及びDB)の組み合わせを含む。
【0080】
全ての蛍光部分は、用語「蛍光部分」内に包含される。本明細書で提供される蛍光部分の特異的な例は例示的なものであり、本明細書に開示される標的分子との使用のために蛍光部分を限定するものと意味するものではない。
【0081】
蛍光染料の例は、限定されないが、キサンテン(例えばローダミン、ロドール、及びフルオレセイン、並びにそれらの誘導体);ビマン;クマリン及びそれらの誘導体(例えばウンベリフェロン及びアミノメチルクマリン);芳香族アミン(例えばダンシル;スクアリン酸染料);ベンゾフラン;蛍光シアニン;インドカルボシアニン(indocarbocyanines);カルバゾール;ジシアノメチレンピラン;ポリメチン;オキサベンズアントラン;キサンテン;ピリリウム;カルボスチル(carbostyl);ペリレン;アクリドン;キナクリドン;ルブレン;アントラセン;コロネン;フェナントレセン(phenanthrecene);ピレン;ブタジエン;スチルベン;ポルフィリン;フタロシアニン;ランタニド金属キレート錯体;希土類金属キレート錯体;及びそのような染料の誘導体を含む。
【0082】
フルオレセイン染料の例は、限定されないが、5-カルボキシフルオレセイン、フルオレセイン-5-イソチオシアン酸塩、フルオレセイン-6-イソチオシアン酸塩、及び6-カルボキシフルオレセインを含む。
【0083】
ローダミン染料の例は、限定されないが、テトラメチルローダミン6-イソチオシアン酸塩、5-カルボキシテトラメチルローダミン、5-カルボキシロドール誘導体、テトラメチル及びテトラエチルローダミン、ジフェニルジメチル及びジフェニルジエチルローダミン、ジナフチルローダミン、ローダミン101スルホニルクロリド(TEXAS RED(登録商標)の商品名で販売)を含む。
【0084】
シアニン染料の例は、限定されないが、Cy3、Cy3B、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、IR Dye680、Alexa Fluor 750、IR Dye800CW、ICGを含む。
【0085】
蛍光ペプチドの例は、GFP(緑色蛍光タンパク質)又はGFPの誘導体(例えばEBFP、EBFP2、Azurite、mKalama1、ECFP、Cerulean、CyPet、YFP、Citrine、Venus、Ypet)を含む。
【0086】
幾つかの実施形態において、造影剤は、近赤外線(近IR)画像化用の近赤外線フルオロフォア、ルシフェラーゼ(ホタル、細菌、又は腔腸動物)、又は生物発光イメージング用の他の発光分子、或いは超音波用のペルフルオロカーボン充填ベシクルである。
【0087】
好ましい実施形態において、本開示のRACCP又はレシオメトリックSDMは、蛍光ドナー-アクセプターの対で標識される。適切な蛍光ドナー-アクセプターの対の例は、限定されないが、フルオレセイン/ローダミン、フルオレセイン/Cy5、ローダミン/Cy5、Cy5/Cy7、Cy5/IR Dye750、Cy5/IR Dye800、Cy5/ICGなどを含む。Cy5及びCy7の長波長がインビボの画像化に理想的であることから、Cy5及びCy7は、好ましい蛍光ドナー-アクセプターの対の一例を提供し、そこでは、励起及び発光波長が、内因的なヘムの強い吸収度を回避するべく十分に600nmより上でなければならない。Cy5/Cy7ドナー-アクセプターの対に対して、例えば、(Cy5励起に対して)約610nm~630nmの波長帯での光による励起、(Cy5発光に対して)約660nm~720nm及び(Cy7発光に対して)約760nm~830nmの蛍光発光の収集は、正確なレシオメトリック測定の実行を可能としつつ、内因的なヘムによる干渉を回避する。
【0088】
高分子担体(M)
【0089】
用語「担体」は、血漿内半減期、溶解度、又は生体分布を調節する不活性分子を意味する。幾つかの実施形態において、担体は、本明細書に開示される選択的な送達分子の血漿内半減期を調節する。幾つかの実施形態において、担体は、本明細書に開示される選択的な送達分子の溶解度を調節する。幾つかの実施形態において、担体は、本明細書に開示される選択的な送達分子の生体分布を調節する。
【0090】
幾つかの実施形態において、担体は、非標的細胞又は組織によって選択的な送達分子の取込みを減少させる。幾つかの実施形態において、担体は、軟骨への選択的な送達分子の取込みを減少させる。幾つかの実施形態において、担体は、標的組織に比べて関節への選択的な送達分子の取込みを減少させる。
【0091】
幾つかの実施形態において、担体は、標的細胞又は組織によって選択的な送達分子の取込みを増大させる。幾つかの実施形態において、担体は、標的組織に比べて肝臓への選択的な送達分子の取込みを減少させる。幾つかの実施形態において、担体は、腎臓への選択的な送達分子の取込みを減少させる。幾つかの実施形態において、担体は癌組織への取込みを増強する。幾つかの実施形態において、担体はリンパ管及び/又はリンパ節への取込みを増強する。
【0092】
幾つかの実施形態において、担体は糸球体濾過の減少により血漿内半減期を増大させる。幾つかの実施形態において、担体は、代謝又はプロテアーゼ分解の増加又は減少により血漿内半減期を調節する。幾つかの実施形態において、担体は、腫瘍脈管構造の増強された浸透性及び保持(EPR)により腫瘍取込みを増大させる。幾つかの実施形態において、担体は選択的な送達分子の水溶解度を増大させる。
【0093】
幾つかの実施形態において、任意のMが独立して、A、B、又はXに直接又は間接的に(例えばcMを介して)結合される。幾つかの実施形態において、任意のMが独立して、n-末端ポリグルタミン酸塩にてAに結合される。幾つかの実施形態において、任意のMが独立して、共有結合によってA(又はn-末端ポリグルタミン酸塩)に結合される。幾つかの実施形態において、任意のMが独立して、c-末端ポリアルギニンにてBに結合される。幾つかの実施形態において、任意のMが独立して、共有結合によってB(又はc-末端ポリアルギニン)に結合される。幾つかの実施形態において、任意のMが独立して、XとAの間、XとBの間、BとC/N末端の間、又はAとC/N末端のリンカーに直接又は間接的に結合される。幾つかの実施形態において、共有結合は、エーテル結合、チオエテール結合、アミン結合、アミド結合、オキシム結合、炭素-炭素結合、炭素-窒素結合、炭素-酸素結合、又は炭素-硫黄結合を含む。
【0094】
幾つかの実施形態において、Mは、タンパク質、合成又は天然高分子、又はデンドリマーから選択される。幾つかの実施形態において、Mは、デキストラン、PEGポリマー(例えばPEG 5kDa、PEG 12kDa、PEG 20kDa、PEG 30kDa、及びPEG 40kDa)、アルブミン、又はそれらの組み合わせから選択される。
【0095】
幾つかの実施形態において、MはPEGポリマーである。幾つかの例において、PEGは多分散又は単分散化合物である。幾つかの例において、多分散材料は、平均重量(重量平均)サイズと分散度を特徴として、材料の様々な分子量の分散分布を含む。他の例において、PEGは、分子の1つのサイズを含む単分散化合物である。
【0096】
幾つかの実施形態において、PEGの分子量は、約200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1450、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、2500、2600、2700、2800、2900、3000、3250、3350、3500、3750、4000、4250、4500、4600、4750、5000、5500、6000、6500、7000、7500、8000、10,000、12,000、20,000、35,000、40,000、50,000、60,000、又は100,000Daである。
【0097】
幾つかの実施形態において、Mは、約200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1450、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、2500、2600、2700、2800、2900、3000、3250、3350、3500、3750、4000、4250、4500、4600、4750、5000、5500、6000、6500、7000、7500、8000、10,000、12,000、20,000、35,000、40,000、50,000、60,000、又は100,000Daの分子重量を有する。幾つかの例において、Mの分子量は約200Daである。幾つかの例において、Mの分子量は約300Daである。幾つかの例において、Mの分子量は約400Daである。幾つかの例において、Mの分子量は約500Daである。幾つかの例において、Mの分子量は約600Daである。幾つかの例において、Mの分子量は約700Daである。幾つかの例において、Mの分子量は約800Daである。幾つかの例において、Mの分子量は約900Daである。幾つかの例において、Mの分子量は約1000Daである。幾つかの例において、Mの分子量は約1100Daである。幾つかの例において、Mの分子量は約1200Daである。幾つかの例において、Mの分子量は約1300Daである。幾つかの例において、Mの分子量は約1400Daである。幾つかの例において、Mの分子量は約1450Daである。幾つかの例において、Mの分子量は約1500Daである。幾つかの例において、Mの分子量は約1600Daである。幾つかの例において、Mの分子量は約1700Daである。幾つかの例において、Mの分子量は約1800Daである。幾つかの例において、Mの分子量は約1900Daである。幾つかの例において、Mの分子量は約2000Daである。幾つかの例において、Mの分子量は約2100Daである。幾つかの例において、Mの分子量は約2200Daである。幾つかの例において、Mの分子量は約2300Daである。幾つかの例において、Mの分子量は約2400Daである。幾つかの例において、Mの分子量は約2500Daである。幾つかの例において、Mの分子量は約2600Daである。幾つかの例において、Mの分子量は約2700Daである。幾つかの例において、Mの分子量は約2800Daである。幾つかの例において、Mの分子量は約2900Daである。幾つかの例において、Mの分子量は約3000Daである。幾つかの例において、Mの分子量は約3250Daである。幾つかの例において、Mの分子量は約3350Daである。幾つかの例において、Mの分子量は約3500Daである。幾つかの例において、Mの分子量は約3750Daである。幾つかの例において、Mの分子量は約4000Daである。幾つかの例において、Mの分子量は約4250Daである。幾つかの例において、Mの分子量は約4500Daである。幾つかの例において、Mの分子量は約4600Daである。幾つかの例において、Mの分子量は約4750Daである。幾つかの例において、Mの分子量は約5000Daである。幾つかの例において、Mの分子量は約5500Daである。幾つかの例において、Mの分子量は約6000Daである。幾つかの例において、Mの分子量は約6500Daである。幾つかの例において、Mの分子量は約7000Daである。幾つかの例において、Mの分子量は約7500Daである。幾つかの例において、Mの分子量は約8000Daである。幾つかの例において、Mの分子量は約10000Daである。幾つかの例において、Mの分子量は約12000Daである。幾つかの例において、Mの分子量は約20000Daである。幾つかの例において、Mの分子量は約35000Daである。幾つかの例において、Mの分子量は約40000Daである。幾つかの例において、Mの分子量は約50000Daである。幾つかの例において、Mの分子量は約60000Daである。幾つかの例において、Mの分子量は約100000Daである。
【0098】
幾つかの実施形態において、Mの平均分子量は50~70kDである。
【0099】
幾つかの実施形態において、Mは別個のPEGであり、ここで、別個のPEGは1より多くの繰り返しエチレンオキシド単位を含む高分子PEGである。幾つかの例において、別個のPEG(dPEG)は、2~60、2~50、又は2~48の繰り返しエチレンオキシド単位を含む。幾つかの例において、dPEGは、約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、22、24、26、28、30、35、40、42、48、又は50以上の繰り返しエチレンオキシド単位を含む。幾つかの例において、dPEGは約2つ以上の繰り返しエチレンオキシド単位を含む。幾つかの例において、dPEGは約3つ以上の繰り返しエチレンオキシド単位を含む。幾つかの例において、dPEGは約4つ以上の繰り返しエチレンオキシド単位を含む。幾つかの例において、dPEGは約5つ以上の繰り返しエチレンオキシド単位を含む。幾つかの例において、dPEGは約6つ以上の繰り返しエチレンオキシド単位を含む。幾つかの例において、dPEGは約7つ以上の繰り返しエチレンオキシド単位を含む。幾つかの例において、dPEGは約8つ以上の繰り返しエチレンオキシド単位を含む。幾つかの例において、dPEGは約9つ以上の繰り返しエチレンオキシド単位を含む。幾つかの例において、dPEGは約10以上の繰り返しエチレンオキシド単位を含む。幾つかの例において、dPEGは約11以上の繰り返しエチレンオキシド単位を含む。幾つかの例において、dPEGは約12以上の繰り返しエチレンオキシド単位を含む。幾つかの例において、dPEGは約13以上の繰り返しエチレンオキシド単位を含む。幾つかの例において、dPEGは約14以上の繰り返しエチレンオキシド単位を含む。幾つかの例において、dPEGは約15以上の繰り返しエチレンオキシド単位を含む。幾つかの例において、dPEGは約16以上の繰り返しエチレンオキシド単位を含む。幾つかの例において、dPEGは約17以上の繰り返しエチレンオキシド単位を含む。幾つかの例において、dPEGは約18以上の繰り返しエチレンオキシド単位を含む。幾つかの例において、dPEGは約19以上の繰り返しエチレンオキシド単位を含む。幾つかの例において、dPEGは約20以上の繰り返しエチレンオキシド単位を含む。幾つかの例において、dPEGは約22以上の繰り返しエチレンオキシド単位を含む。幾つかの例において、dPEGは約24以上の繰り返しエチレンオキシド単位を含む。幾つかの例において、dPEGは約26以上の繰り返しエチレンオキシド単位を含む。幾つかの例において、dPEGは約28以上の繰り返しエチレンオキシド単位を含む。幾つかの例において、dPEGは約30以上の繰り返しエチレンオキシド単位を含む。幾つかの例において、dPEGは約35以上の繰り返しエチレンオキシド単位を含む。幾つかの例において、dPEGは約40以上の繰り返しエチレンオキシド単位を含む。幾つかの例において、dPEGは約42以上の繰り返しエチレンオキシド単位を含む。幾つかの例において、dPEGは約48以上の繰り返しエチレンオキシド単位を含む。幾つかの例において、dPEGは約50以上の繰り返しエチレンオキシド単位を含む。場合によっては、dPEGは、段階的な方法において純粋な(例えば、約95%、98%、99%、又は99.5%)出発材料から単一の分子量化合物として合成される。場合によっては、dPEGは、平均分子量ではなく特定の分子量を有する。場合によっては、本明細書に記載されるdPEGは、Quanta Biodesign, LMDからのdPEGである。
【0100】
幾つかの実施形態において、選択的な送達分子はアルブミンに抱合する。特定の例において、アルブミンは、標準生理条件下で糸球体濾液から除外される。幾つかの実施形態において、選択的な送達分子は、アルブミンとの共有結合の抱合体を形成可能なマレイミドなどの反応基を含む。アルブミンを含む選択的な送達分子は結果として、切断依存性様式で腫瘍中の切断された選択的な送達分子の蓄積の増強をもたらす。幾つかの実施形態において、アルブミン抱合体には良好な薬物動態特性がある。
【0101】
幾つかの実施形態において、選択的な送達分子はPEGポリマーに抱合する。幾つかの実施形態において、選択的な送達分子はPEG500Daポリマーに抱合する。幾つかの実施形態において、選択的な送達分子はPEG1kDaポリマーに抱合する。幾つかの実施形態において、選択的な送達分子はPEG2kDaポリマーに抱合する。幾つかの実施形態において、選択的な送達分子はPEG5kDaポリマーに抱合する。幾つかの実施形態において、選択的な送達分子はPEG10kDaポリマーに抱合する。幾つかの実施形態において、選択的な送達分子はPEG12kDaポリマーに抱合する。幾つかの実施形態において、選択的な送達分子はPEG20kDaポリマーに抱合する。幾つかの実施形態において、30kDのPEG抱合体には遊離ペプチドと比較して長い半減期があった。幾つかの実施形態において、選択的な送達分子は、肝臓及び腎臓のクリアランスを有する20-40kDのPEGポリマーに抱合する。
【0102】
幾つかの実施形態において、選択的な送達分子はデキストランに抱合する。幾つかの実施形態において、選択的な送達分子は70kDaのデキストランに抱合する。幾つかの実施形態において、分子量の混合物であるデキストラン抱合体は、再生可能に合成及び精製するのが困難である。
【0103】
幾つかの実施形態において、選択的な送達分子はストレプトアビジンに抱合する。
【0104】
幾つかの実施形態において、選択的な送達分子は、第5世代のPAMAMデンドリマーに抱合する。
【0105】
幾つかの実施形態において、担体はキャッピングされる。幾つかの実施形態において、担体のキャッピングは、薬物動態学を改善し、親水性の追加によって担体の細胞毒性を減少する。幾つかの実施形態において、キャップは、アセチル、スクシニル、3-ヒドロキシプロピオニル、2-スルホベンゾイル、グリシジル、PEG-2、PEG-4、PEG-8、及びPEG-12から選択される。
【0106】
部分X(リンカー)
【0107】
幾つかの実施形態において、1つ以上のアミノ酸から成るリンカーは、ペプチド配列A(即ち、ペプチドBの送達活性を阻害するよう設計された配列)及びペプチド配列Bを結合するために使用される。一般的に、ペプチドリンカーは、分子を結合する、或いは幾つかの最小距離又はそれらの他の空間的関連性を保存する以外に特異的な生物活性を持たない。しかし、リンカーの構成的アミノ酸は、フォールディング、総電荷、又は疎水性などの分子の幾つかの特性に影響を及ぼすように選択され得る。
【0108】
生細胞において、本明細書に開示される無傷の選択的な送達分子は、部分Aの存在により細胞に入ることができない場合もある。故に、Xを切断するための厳密に細胞内のプロセスは、細胞への取込みを妨げる部分Aが正常細胞における内酵素によって効果的に切断され、拾い上げられず且つそのような内酵素へのアクセスを得なかったため、正常細胞におけるXを切断するのに効果がない。しかし、細胞が傷つけられ又は罹患される場合(例えば癌細胞、低酸素細胞、虚血性細胞、アポトーシス細胞、壊死細胞)、そのような内酵素は細胞から漏出し、Aの切断が行われ、これにより部分B及び/又はカーゴの細胞への侵入が可能と成り、近隣の細胞への部分B及び/又はカーゴDの標的送達を達成できる。幾つかの実施形態において、Xは細胞外液腔において切断される。
【0109】
幾つかの実施形態において、毛細管が多くの場合に腫瘍及び他の損傷部位のまわりで漏出しやすいという事実は、高分子量の分子(例えば、約30kDa以上の分子量)が間質区画に到達する能力を増強させる。幾つかの実施形態において、Xリンカーの切断が典型的に細胞外であるので、関連プロテアーゼを発現しないが発現細胞にすぐ隣接する細胞は、選択的な送達分子からカーゴを拾い上げる。幾つかの実施形態において、細胞表現型の異質性、及び可能な限り高い疑わしい細胞のパーセンテージを排除するという希望により、そのようなバイスタンダー(bystander)標的化は、腫瘍の処置に有益である。
【0110】
幾つかの実施形態において、Xは切断可能なリンカーである。幾つかの実施形態において、Xはプロテアーゼによって切断可能なリンカーである。幾つかの実施形態において、Xは細胞外プロテアーゼによって切断可能なリンカーである。
【0111】
幾つかの実施形態において、リンカーは可撓性である。幾つかの実施形態において、リンカーは剛性である。
【0112】
幾つかの実施形態において、リンカーは線形構造を含む。幾つかの実施形態において、リンカーは非線形構造を含む。幾つかの実施形態において、リンカーは分枝構造を含む。幾つかの実施形態において、リンカーは環状構造を含む。
【0113】
リンカーは、限定されないが、直鎖又は分枝鎖の炭素リンカー、複素環炭素リンカー、ペプチドリンカー、及びポリエーテルリンカーを含む。このようなリンカーには、アミド結合、スルフヒドリル結合、又はヘテロ機能性結合が随意にある。
【0114】
幾つかの実施形態において、Xは長さが約5~約30の原子である。幾つかの実施形態において、Xは長さが約6の原子である。幾つかの実施形態において、Xは長さが約8の原子である。幾つかの実施形態において、Xは長さが約10の原子である。幾つかの実施形態において、Xは長さが約12の原子である。幾つかの実施形態において、Xは長さが約14の原子である。幾つかの実施形態において、Xは長さが約16の原子である。幾つかの実施形態において、Xは長さが約18の原子である。幾つかの実施形態において、Xは長さが約20の原子である。幾つかの実施形態において、Xは長さが約25の原子である。幾つかの実施形態において、Xは長さが約30の原子である。
【0115】
幾つかの実施形態において、リンカーは、共有結合によってペプチド部分A(即ち、細胞取込みを妨げるペプチド配列)をペプチド部分B(即ち、送達配列)に結合する。幾つかの実施形態において、共有結合は、エーテル結合、チオエテール結合、アミン結合、アミド結合、オキシム結合、炭素-炭素結合、ヒドラゾン結合、炭素-窒素結合、炭素-酸素結合、又は炭素-硫黄結合を含む。
【0116】
幾つかの実施形態において、Xはペプチド結合を含む。ペプチド結合はL-アミノ酸及び/又はD-アミノ酸を含む。本発明の実施形態において、D-アミノ酸は、バックグラウンドのペプチダーゼ又はプロテアーゼによる免疫原性及び非特異性の切断を最小化するために好ましい。オリゴ-D-アルギニン配列の細胞取込みは、オリゴ-L-アルギニンのもの以上に優れていると知られている。
【0117】
幾つかの実施形態において、Xリンカーは、特定条件の存在下、又は特定の環境での切断のために設計されている。好ましい実施形態において、Xリンカーは生理学的条件下で切断可能である。そのようなXリンカーの切断は、例えば、特定の病理学的シグナル、又は、カーゴ送達が望ましい細胞に関連する特定の環境によって増強され、或いはそれにより影響を受ける場合がある。特異的な酵素などの特異的な条件による切断のためのXリンカーの設計は、そのような条件が得る特異的な位置への細胞取込みの標的化を可能にする。故に、選択的な送達分子が所望の細胞、組織、又は領域への細胞取込みの特異的な標的化を提供する、1つの重要な方法は、そのような標的細胞、組織、又は領域に近い条件によって切断されるリンカー部分Xの構想による。
【0118】
幾つかの実施形態において、XはpH感受性リンカーである。幾つかの実施形態において、Xは塩基性pH条件下で切断される。幾つかの実施形態において、Xは酸性pH条件下で切断される。幾つかの実施形態において、Xは、プロテアーゼ、マトリックスメタロプロテイナーゼ、又はそれらの組み合わせによって切断される。幾つかの実施形態において、Xは還元剤によって切断される。
【0119】
幾つかの実施形態において、XはMMPにより切断される。マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)の加水分解活性は、転移性腫瘍細胞の侵略的移動に関与する。特定の例において、MMPは炎症の部位の付近に見出される。特定の例において、MMPは、脳卒中(即ち、血流の減少後の脳損傷を特徴とする障害)の部位の付近に見出される。故に、本発明の特徴を持つ分子の取込みは、細胞外環境において活性MMPを有する特異的な細胞、組織、又は領域へのカーゴ(少なくとも1つのD部分)の細胞取込みを方向付けることが可能である。幾つかの実施形態において、Xリンカーは、アミノ酸配列PLG-C(Me)-AG(SEQ ID NO:1)、PLGLAG(SEQ ID NO:2)を含み、これらはメタロプロテイナーゼ酵素MMP-2、MMP-9、又はMMP-7(癌及び炎症に関与するMMP)によって切断される。
【0120】
幾つかの実施形態において、癌細胞付近に見出されるように、Xは、タンパク分解酵素により、又は環境の減少によって切断される。そのような環境、又はそのような酵素は典型的に、正常細胞の付近には見出されない。
【0121】
幾つかの実施形態において、Xは、トロンビン及びカテプシンを含むがこれらに限定されないセリンプロテアーゼによって切断される。幾つかの実施形態において、Xは、カテプシンK、カテプシンS、カテプシンD、カテプシンE、カテプシンW、カテプシンF、カテプシンA、カテプシンC、カテプシンH、カテプシンZ、又は任意のそれらの組み合わせによって切断される。幾つかの実施形態において、XはカテプシンK及び/又はカテプシンSによって切断される。
【0122】
幾つかの実施形態において、Xは、低酸素症に苦しむ組織、又はその付近にて切断される。幾つかの実施形態において、低酸素症組織又はその付近での切断は、癌細胞及び癌組織、梗塞領域、及び他の低酸素症領域の標的化を可能とする。幾つかの実施形態において、Xはジスルフィド結合を含む。幾つかの実施形態において、ジスルフィド結合を含むリンカーは、低酸素症領域において優先的に切断され、それにより、そのような領域における細胞へのカーゴ送達を標的とする。低酸素症は、癌細胞に発光線及び化学療法への耐性を増加させ、血管新生を開始させると考えられている。例えば、漏出細胞又は壊死細胞の存在下での低酸素症の環境において、遊離チオール及び他の還元剤は、細胞外で利用可能になり、一方で、通常は細胞外の環境を酸化したまま維持するO2は、除去された定義による。幾つかの実施形態において、酸化還元反応の均衡におけるこの推移は、Xリンカー内のジスルフィド結合の減少及び切断を促進する。チオール-ジスルフィドの平衡を利用するジスルフィド結合に加えて、ヒドロキノンへの還元時に崩壊するキノンを含む結合は、低酸素症環境において切断されるよう設計されたXリンカーにおいて使用される。
【0123】
幾つかの実施形態において、Xは、壊死環境において切断される。壊死は多くの場合、Xリンカーの切断を誘発するために使用され得る酵素又は他の細胞含有物の放出を引き起こす。幾つかの実施形態において、壊死酵素(例えばカルパイン)によるXの切断は、罹患細胞により、及び未だ完全に漏出していない近隣細胞によりカーゴの取り上げを可能にする。
【0124】
幾つかの実施形態において、Xは酸不安定性リンカーである。幾つかの実施形態において、Xはアセタール又はビニルエーテルの結合を含む。アシドーシスは、酸化的リン酸化反応から嫌気的解糖及び乳酸産生へのWarburgシフトが原因で、損傷した又は低酸素症の組織の部位に観察される。幾つかの実施形態において、アシドーシスは、ヒスチジンによりB内のアルギニンの一部を置換することによりカーゴ取込みのトリガーとして使用され、これは単にpH7より下のカチオンになる。
【0125】
本明細書に開示されるリンカーは、例えばヒドロキシリジン、デスモシン、イソデスモシン、又は他の非標準アミノ酸などの、非標準アミノ酸を含み得ることが理解される。本明細書に開示されるリンカーは、例えばメチル化アミノ酸(例えば、メチルヒスチジン、リジンのメチル化形態など)、アセチル化アミノ酸、アミノ化アミノ酸、ホルミル化アミノ酸、ヒドロキシル化アミノ酸、リン酸化アミノ酸、又は他の修飾アミノ酸などの、翻訳後修飾されたアミノ酸を含む、修飾アミノ酸を含み得る。本明細書に開示されるリンカーはまた、非ペプチド結合により結合される部分、及び非アミノ酸により、又は非アミノ酸部分へと結合されるアミノ酸を含む、ペプチド模倣部分を含み得る。
【0126】
幾つかの実施形態において、リンカーXは、PLGLAG、PLG-C(me)-AG、RPLALWRS、ESPAYYTA、DPRSFL、PPRSFL、RLQLKL、及びRLQLK(Ac)から選択されたアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態において、リンカーXはアミノ酸配列PLGLAGを含む。幾つかの実施形態において、リンカーXはアミノ酸配列PLG-C(Me)-AGを含む。幾つかの実施形態において、リンカーXはアミノ酸配列PLGxAGを含み、xは任意のアミノ酸(自然発生又は非自然発生)である。幾つかの実施形態において、リンカーXはアミノ酸配列RPLALWRSを含む。幾つかの実施形態において、リンカーXはアミノ酸配列ESPAYYTAを含む。幾つかの実施形態において、リンカーXはアミノ酸配列DPRSFLを含む。幾つかの実施形態において、リンカーXはアミノ酸配列PPRSFLを含む。幾つかの実施形態において、リンカーXはアミノ酸配列RLQLKLを含む。幾つかの実施形態において、リンカーXはアミノ酸配列RLQLK(Ac)を含む。
【0127】
幾つかの実施形態において、リンカーXは、以下から選択されたペプチドを含む:PR(S/T)(L/I)(S/T)、ここで、括弧中の文字は、示されたアミノ酸の何れか1つが配列のその位置にあることを示す;GGAANLVRGG;SGRIGFLRTA;SGRSA;GFLG;ALAL;FK;PIC(Et)F-F、ここで、C(Et)は、S-エチルシステイン(チオールに結合されるエチル基を有するシステイン)を示し、「-」はこの配列及び続く配列の典型的な切断部位を示す;GGPRGLPG;HSSKLQ;LVLA-SSSFGY;GVSQNY-PIVG;GVVQA-SCRLA;f(Pip)R-S、ここで、「f」はD-フェニルアラニンを示し、「Pip」はピペリジン-2-カルボン酸(ピペコリン酸、6員環を持つプロリンアナログ)を示す;DEVD;GWEHDG;RPLALWRS、或いはそれらの組み合わせ。
【0128】
幾つかの実施形態において、Xは低酸素症条件下で切断される。幾つかの実施形態において、Xはジスルフィド結合を含む。幾つかの実施形態において、Xはキニンを含む。
【0129】
幾つかの実施形態において、Xは壊死条件下で切断される。幾つかの実施形態において、Xはカルパインによって切断可能な分子を含む。
【0130】
幾つかの実施形態において、Xは6-アミノヘキサノイル、5-(アミノ)-3-オキサペンタノイル、又はそれらの組み合わせを含む。幾つかの実施形態において、Xはジスルフィド結合を含む。
【0131】
幾つかの実施形態において、リンカーはアルキルである。幾つかの実施形態において、リンカーはヘテロアルキルである。
【0132】
幾つかの実施形態において、リンカーはアルキレンである。幾つかの実施形態において、リンカーはアルケニレンである。幾つかの実施形態において、リンカーはアルキニレンである。幾つかの実施形態において、リンカーはヘテロアルキレンである。
【0133】
「アルキル」基は、脂肪族炭化水素基を表す。アルキル基の部分は飽和アルキル又は不飽和のアルキルかもしれない。アルキル基は、構造によって、モノラジカル又はジラジカル(つまりアルキレン基)であり得る。
【0134】
「アルキル」部分は、1~10個の炭素原子を有し得る(本明細書ではいかなる場合も、「1~10」などの数的範囲は、指定された範囲の各々の整数を指し、例えば「1~10個の炭素原子」は、アルキル基が1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子、及び最大10個の炭素原子から成り得ることを意味するが、本定義はまた、数の範囲が指定されない用語「アルキル」の発生を包含する)。アルキル基は1~6の炭素原子を有する「低級アルキル」でもあり得る。本明細書に記載される化合物のアルキル基は、「C1-C4アルキル」又は類似の名称として指定され得る。ほんの一例として、「C1-C4アルキル」は、1~4つの炭素原子がアルキル鎖に存在することを示し、即ち、アルキル鎖は、メチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチル、又はt-ブチルから選択される。典型的なアルキル基は、限定されないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、三級ブチル、ペンチル、ヘキシル、エテニル、プロペニル、ブテニルなどを含む。
【0135】
特定の実施形態において、リンカーは環構造(例えばアリール)を含む。本明細書で使用されるように、用語「環」は、任意の共有結合性閉構造を指す。環は、例えば、炭素環(例えば、アリール及びシクロアルキル)、複素環(例えば、ヘテロアリール及び非芳香族複素環)、芳香族(例えば、アリール及びヘテロアリール)、並びに非芳香族(例えば、シクロアルキル及び非芳香族複素環)を含む。環は、随意に置換され得る。環は、単環式又は多環式であり得る。
【0136】
本明細書で使用されるように、用語「アリール」は、環を形成する原子の各々が炭素原子である芳香環を表す。アリール環は、5、6、7、8、9、又は9より多い炭素原子によって形成され得る。アリール基は、随意に置換され得る。アリール基の例は、フェニル、ナフタレニル、フェナントレニル、アントラセラニル、フルオレニル、及びインデニルを含むが、これらに限定されない。構造によっては、アリール基は、モノラジカル又はジラジカル(即ち、アリーレン基)となり得る。
【0137】
用語「シクロアルキル」は単環式又は多環式の非芳香族ラジカルを指し、ここで、環を形成する原子(即ち、骨格原子)の各々は炭素原子である。シクロアルキルは飽和されているか、又は部分的に不飽和でもよい。シクロアルキル基は、3~10の環原子を有する基を含む。シクロアルキルは、限定されないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、及びシクロオクチルを含む。
【0138】
幾つかの実施形態において、環はシクロアルカンである。幾つかの実施形態において、環はシクロアルケンである。
【0139】
幾つかの実施形態において、環は芳香環である。「芳香族」という用語は平面環を指し、該平面環は、非局在化π-電子系を有し、このπ-電子系には4n+2πの電子が含まれ、ここでnは整数である。芳香環は、5、6、7、8、9、又は9より多い原子から形成され得る。芳香族は、随意に置換され得る。用語「芳香族」は、炭素環式アリール(例えばフェニル)及び複素環式アリール(又は「ヘテロアリール」或いは「ヘテロ芳香族」)の基(例えばピリジン)の両方を含む。前記用語は、単環式又は縮合環の多環式(即ち、隣接する炭素原子の対を共有する環)の基を含む。
【0140】
幾つかの実施形態において、環は複素環である。用語「複素環」は、O、S、及びNから各々が選択された1~4のヘテロ原子を包含しているヘテロ芳香族及びヘテロ脂環式基を指し、ここで、各複素環基は、その環系の中に、前記基の環が2つの隣接したO又はS原子を包含していないという条件付きで、4~10の原子を有している。非芳香族複素環基は、それらの環系に3つの原子のみを有する基を含むが、芳香族複素環基は、それらの環系に少なくとも5つの原子を有していなければならない。複素環基は、ベンゾ縮合した環系を含む。3員複素環式基の例はアジリジニルである。4員環複素環式基の例は、アゼチジニル(アゼチジン由来)である。5員環複素環式基の例は、チアゾリルである。6員環複素環式基の例は、ピリジルであり、10員環複素環式基の例は、キノリニルである。非芳香族複素環基の例は、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、ピペリジノ、モルホリノ、チオモルホリノ、チオキサニル、ピペラジニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、ホモピペリジニル、オキセパニル、チエパニル、オキサゼピニル、ジアゼピニル、チアセピニル、1,2,3,6-テトラヒドロピリジニル、2-ピロリニル、3-ピロリニル、インドリニル、2H-ピラニル、4H-ピラニル、ジオキサニル、1,3-ジオキソラニル、ピラゾリニル、ジチアニル、ジチオラニル、ジヒドロピラニル、ジヒドロチエニル、ジヒドロフラニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサニル、3-アザビシクロ[4.1.0]ヘプタニル、3H-インドリル、及び、キノリジニルである。芳香族複素環基の例は、ピリジニル、イミダゾリル、ピリミジニル、ピラゾリル、トリアゾリル、ピラジニル、テトラゾリル、フリル、チエニル、イソキサゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、ピロリル、キノリニル、イソキノリニル、インドリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、シンノリニル、インダゾリル、インドリジニル、フタラジニル、ピリダジニル、トリアジニル、イソインドリル、プテリジニル、プリニル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、フラザニル、ベンゾフラザニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、キナゾリニル、キノキサリニル、ナフチリジニル、及びフロピリジニルである。前述の基は、それらが可能な場合にC-付加又はN-付加であり得る。例えば、ピロール由来の基は、ピロール-1-イル(N-付加)又はピロール-3-イル(C-付加)である。更に、イミダゾールに由来する基は、イミダゾール-1-イル又はイミダゾール-3-イル(共にN付加)、或いはイミダゾール-2-イル、イミダゾール-4-イル、又はイミダゾール-5-イル(全てC付加)である。複素環基は、ベンゾ融合環系と、ピロリジン-2-オンなどの1又は2つのオキソ(=O)部分で置換された環系とを含む。構造により、複素環基は、一端遊離基又は二端遊離基(即ち、ヘテロシクレン基)であり得る。
【0141】
幾つかの実施形態において、環は縮合される。用語「縮合」は、2つ以上の環が1つ以上の結合を共有する構造を指す。幾つかの実施形態において、環は二量体である。幾つかの実施形態において、環は三重体である。幾つかの実施形態において、環は置換される。
【0142】
用語「炭素環式」又は「炭素環式化合物」は、環を形成する原子の各々が炭素原子である、環を表す。炭素環は、アリールとシクロアルキルを含む。この用語は故に、炭素環を、環のバックボーン(backbone)が、炭素とは異なる少なくとも1つの原子(即ちヘテロ原子)を包含している複素環(「複素環式」)と区別する。複素環は、ヘテロアリールとヘテロシクロアルキルを含む。炭素環と複素環は、随意に置換され得る。
【0143】
幾つかの実施形態において、リンカーXはヘテロアルキルである。用語「随意に置換した」又は「置換した」は、言及された基が、C1-C6アルキル、C3-C8シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、C2-C6ヘテロ脂環式、ヒドロキシ、C1-C6アルコキシ、アリールオキシ、C1-C6アルキルチオ、アリールチオ、C1-C6アルキルスルホキシド、アリールスルホキシド、C1-C6アルキルスルホン、アリールスルホン、シアノ、ハロ、C2-C8アシル、C2-C8アシルオキシ、ニトロ、C1-C6ハロアルキル、C1-C6フルオロアルキル、C1-C6アルキルアミノを含むアミノ、及びそれらの保護誘導体から個々に及び独立して選択される、1以上の追加の基(複数可)により置換され得ることを意味する。例として、随意の置換基はLsRsであり、ここで各Lsは単結合、-O-、-C(=O)-、-S-、-S(=O)-、-S(=O)2-、-NH-、-NHC(=O)-、-C(=O)NH-、-S(=O)2NH-、-NHS(=O)2-、-OC(=O)NH-、-NHC(=O)O-、-(C1-C6アルキル)-、又は-(C2-C6アルケニル)-から独立して選択され、及び各Rsは、H、(C1-C4アルキル)、(C3-C8シクロアルキル)、ヘテロアリール、アリール、及びC1-C6へテロアルキルから独立して選択される。随意に置換された非芳香族基は、1以上のオキソ(=O)により置換され得る。上述の置換基の保護誘導体を形成する保護基は、当業者に既知である。
【0144】
幾つかの実施形態において、リンカーXはゼロリンカーを含む。幾つかの例において、ゼロリンカーは共有結合を含む。幾つかの実施形態において、共有結合は、エーテル結合、チオエテール結合、アミン結合、アミド結合、オキシム結合、ヒドラゾン、炭素-炭素結合、炭素-窒素結合、炭素-酸素結合、又は炭素-硫黄結合を含む。
【0145】
幾つかの実施形態において、リンカーXは更に二機能性リンカーを含む。幾つかの例において、二機能性リンカーは、第1の分子(例えば選択的な送達分子)上の基と反応する1つの官能基、及び第2の分子(例えば画像化カーゴ)上の基と反応する第2の官能基を有する。場合によっては、二機能性リンカーは、ホモ二機能性リンカー又はヘテロ二機能性リンカーである。代替的に、幾つかの実施形態において、誘導体化が官能基を提供するために実行される。故に、例えば、ペプチド上の遊離スルフヒドリル基の生成の手順も知られている(米国特許第4,659,839号を参照)。リンカーXは代替的に、選択的な送達分子と相互作用可能な複素環を形成する2つ以上の異なる反応基を含む、ヘテロ二機能性クロスリンカーを含み得る。例えば、システインなどのヘテロ二機能性クロスリンカーはアミン反応基を含み、チオール反応基は、誘導体化された選択的な送達分子上でアルデヒドと相互作用することができる。ヘテロ二機能性クロスリンカーに適している反応基の追加の組み合わせは、例えば、アミン-及びスルフヒドリル反応基;カルボニル及びスルフヒドリル反応基;アミン及び光反応基;スルフヒドリル及び光反応基;カルボニル及び光反応基;カルボン酸塩及び光反応基;並びにアルギニン及び光反応基を含む。
【0146】
典型的なホモ二機能性リンカーは、限定されないが、Lomant試薬ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)DSP、3’3’-ジチオビス(スルホスクシンイミジル)プロピオネート(DTSSP)、ジスクシンイミジルスベレート(DSS)、ビス(スルホスクシンイミジル)スベレート(BS)、ジスクシンイミジルタートレート(DST)、ジスルホスクシンイミジルタートレート(スルホDST)、エチレングリコビス(スクシンイミジルスクシネート)(EGS)、ジスクシンイミジルグルタラート(DSG)、N,N’-ジスクシンイミジルカーボネート(DSC)、ジメチルアジピミデート(DMA)、ジメチルピペリミデート(DMP)、ジメチルスベリミデート(DMS)、ジメチル-3,3’-ジチオビスプロピオンイミデート(DTBP)、1,4-ジ-3’-(2’-ピリジルジチオ)プロピオナミド)ブタン(DPDPB)、ビスマレイミドヘキサン(BMH)、ハロゲン化アリール含有化合物(DFDNB)、例えば1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン、1,3-ジフルオロ-4,6-ジニトロベンゼン、4,4’-ジフルオロ-3,3’-ジニトロフェニルスルホン(DFDNPS)、ビス-[β-(4-アジドサリチルアミド)エチル]ジスルフィド(BASED)、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、アジピン酸ジヒドラジド、カルボヒドラジド、o-トルイジン、3,3’-ジメチルベンジジン、ベンジジン、α,α’-p-ジアミノジフェニル、ジヨード-p-キシレンスルホン酸、N,N’-エチレン-ビス(ヨードアセトアミド又はN,N’-ヘキサメチレン-ビス(ヨードアセトアミド)を含む。
【0147】
典型的なヘテロ二機能性リンカーは、限定されないが、アミン反応性クロスリンカー及びスルフヒドリルクロスリンカー、例えばN-スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(sPDP)、長鎖N-スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(LC-sPDP)、水溶性長鎖N-スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(スルホ-LC-sPDP)、スクシンイミジルオキシカルボニル-α-メチル-α-(2-ピリジルジチオ)トルエン(sMPT)、スルホスクシンイミジル-6-[α-メチル-α-(2-ピリジルジチオ)トルアミド]ヘキサネート(スルホ-LC-sMPT)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシラート(sMCC)、スルホスクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシラート(スルホ-sMCC)、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBs)、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル(スルホ-MBs)、N-スクシンイミジル(4-ヨードアセチル(iodoacteyl))アミノベンゾエート(sIAB)、スルホスクシンイミジル(4-ヨード)アミノベンゾエート(スルホ-sIAB)、スクシンイミジル-4-(p-マレイミドフェニル)ブチレート(sMPB)、スルホスクシンイミジル-4-(p-マレイミドフェニル)ブチレート(スルホ-sMPB)、N-(γ-マレイミドブチリルオキシ)スクシンイミドエステル(GMBs)、N-(γ-マレイミドブチリルオキシ)スルホスクシンイミドエステル(スルホ-GMBs)、スクシンイミジル6-((ヨードアセチル)アミノ)ヘキサノエート(sIAX)、スクシンイミジル6-[6-(((ヨードアセチル)アミノ)ヘキサノイル)アミノ]ヘキサノエート(sIAXX)、スクシンイミジル4-(((ヨードアセチル)アミノ)メチル)シクロヘキサン-1-カルボキシラート(sIAC)、スクシンイミジル6-((((4-ヨードアセチル)アミノ)メチル)シクロヘキサン-1-カルボニル)アミノ)ヘキサノエート(sIACX)、p-ニトロフェニルヨードアセテート(NPIA)、カルボニル反応性クロスリンカー及びスルフヒドリル反応性クロスリンカー、例えば4-(4-N-マレイミドフェニル)酪酸ヒドラジド(MPBH)、4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシル-ヒドラジド-8(M2C2H)、3-(2-ピリジルジチオ)プロビオニルヒドラジド(PDPH)、アミン反応性クロスリンカー及び光反応性クロスリンカー、例えばN-ヒドロキシスクシンイミジル-4-アジドサリチル酸(NH-AsA)、N-ヒドロキシスルホスクシンイミジル-4-アジドサリチル酸(スルホ-NH-AsA)、スルホスクシンイミジル-(4-アジドサリチルアミド)ヘキサノエート(スルホ-NH-LC-AsA)、スルホスクシンイミジル-2-(ρ-アジドサリチルアミド)エチル-1,3’-ジチオプロピオネート(sAsD)、N-ヒドロキシスクシンイミジル-4-アジドベンゾエート(HsAB)、N-ヒドロキシスルホスクシンイミジル-4-アジドベンゾエート(スルホ-HsAB)、N-スクシンイミジル-6-(4’-アジド-2’-ニトロフェニルアミノ)ヘキサノエート(sANPAH)、スルホスクシンイミジル-6-(4’-アジド-2’-ニトロフェニルアミノ)ヘキサノエート(スルホ-sANPAH)、N-5-アジド-2-ニトロベンゾイルオキシスクシンイミド(ANB-NO)、スルホスクシンイミジル-2-(m-アジド-o-ニトロベンズアミド)-エチル-1,3’-ジチオプロピオネート(sAND)、N-スクシンイミジル-4(4-アジドフェニル)1,3’-ジチオプロピオネート(sADP)、N-スルホスクシンイミジル(4-アジドフェニル)-1,3’-ジチオプロピオネート(スルホ-sADP)、スルホスクシンイミジル4-(ρ-アジドフェニル)ブチレート(スルホ-sAPB)、スルホスクシンイミジル2-(7-アジド-4-メチルクマリン-3-アセトアミド)エチル-1,3’-ジチオプロピオネート(sAED)、スルホスクシンイミジル7-アジド-4-メチルクマリン-3-アセテート(スルホ-sAMCA)、ρ-ニトロフェニルジアゾピルバート(ρNPDP)、ρ-ニトロフェニル-2-ジアゾ-3,3,3-トリフルオロプロピオネート(PNP-DTP)、スルフヒドリル反応性クロスリンカー及び光反応性クロスリンカー、例えば1-(ρ-アジドサリチルアミド)-4-(ヨードアセトアミド)ブタン(AsIB)、N-[4-(ρ-アジドサリチルアミド)ブチル]-3’-(2’-ピリジルジチオ)プロピオンアミド(APDP)、ベンゾフェノン-4-ヨードアセトアミド、ベンゾフェノン-4-マレイミド、カルボニル反応性クロスリンカー及び光反応性クロスリンカー、例えばρ-アジドベンゾイルヒドラジド(ABH)、カルボキシラート反応性クロスリンカー及び光反応性クロスリンカー、例えば4-(ρ-アジドサリチルアミド)ブチルアミン(AsBA)、及びアルギニン反応性クロスリンカー及び光反応性クロスリンカー、例えばρ-アジドフェニルグリオキサール(APG)を含む。
【0148】
幾つかの例において、リンカーXは更に反応性官能基を含む。幾つかの実施形態において、反応性官能基は、リンカーXを本明細書に記載されるカーゴに抱合する。場合によっては、反応性官能基は、親電子基に反応する求核基を含む。典型的な親電子基は、カルボニル基、例えばアルデヒド、ケトン、カルボン酸、エステル、アミド、エノン、酸ハロゲン化物、又は酸無水物を含む。幾つかの実施形態において、反応性官能基はアルデヒドである。典型的な求核基は、ヒドラジド、オキシム、アミノ、ヒドラジン、チオセミカルバゾン、カルボン酸ヒドラジン、及びアリールヒドラジドを含む。
【0149】
幾つかの実施形態において、リンカーXは、マレイミド基、ハロゲン化アルキルき、又はヨードアセトアミド基を含む。
【0150】
幾つかの実施形態において、リンカーXはマレイミド基を含む。幾つかの例において、マレイミド基はマレイミドスペーサーとも呼ばれる。幾つかの例において、マレイミド基は更に、マレイミドカプロイル(mc)を形成するカプロン酸を含む。場合によっては、リンカーはマレイミドカプロイル(mc)を含む。場合によっては、リンカーはマレイミドカプロイル(mc)である。他の例において、マレイミド基は、上述のスクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシラート(sMCC)又はスルホスクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシラート(スルホ-sMCC)などのマレイミドメチル基を含む。
【0151】
幾つかの実施形態において、マレイミド基は自己安定化マレイミドである。幾つかの例において、自己安定化マレイミドは、チオスクシンイミド環加水分解の分子内の触媒作用を提供するべくマレイミドに隣接する塩基性アミノ基を組み込むジアミノプロピオン酸(DPR)を利用し、それにより、マレイミドがレトロマイケル反応を介して脱離反応を受けることを排除する。幾つかの例において、自己安定化マレイミドは、Lyon, et al., “Self-hydrolyzing maleimides improve the stability and pharmacological properties of antibody-drug conjugates,” Nat. Biotechnol. 32(10):1059-1062 (2014)に記載されるマレイミド基である。幾つかの例において、リンカーは自己安定化マレイミドを含む。幾つかの例において、リンカーは自己安定化マレイミドである。
【0152】
幾つかの実施形態において、本明細書に開示される選択的な送達分子は単一のリンカーを含む。後の治療量が標的組織において正確に濃縮しそうかどうか試験するために非傷害性トレーサー量での画像化が使用され得るので、画像化及び治療カーゴ両方の取込みを媒介するための単一機構の使用が特に有益である。
【0153】
幾つかの実施形態において、本明細書に開示される選択的な送達分子は複数のリンカーを含む。本明細書に開示される選択的な送達分子が多数のX結合を含んでいる場合、分子の他の部分からの部分Aの分離は、全てのX結合の切断を必要とする。多数のXのリンカーの切断は同時又は連続的でもよい。1より多くの条件又は環境(例えば、「シグナル」又は「細胞外シグナル」)が分子に遭遇することを、分子の他の部分からの部分Aの分離が要求するように、多数のX結合は、異なる特異性を持つX結合を含み得る。多数のXリンカーの切断は故に、そのようなシグナル又は細胞外のシグナルの組み合わせの検出器として役立つ。例えば、選択的な送達分子は、塩基性部分Bを酸性部分Aに結び付ける2つのリンカー部分Xa及びXbを含み得る。酸性部分Aが塩基性部分Bから分離され、それにより部分B及びカーゴ部分C(必要に応じて)が細胞に侵入するのを可能とする前に、Xa及びXbリンカーの両方が切断されなければならない。リンカー領域は、存在し得る他のリンカーとは無関係に塩基性部分B又はカーゴ部分Cの何れかに結合することができ、及び、望ましくは、2より多くのリンカー領域Xが含まれ得ることが、理解される。
【0154】
2つ以上のXリンカーの組み合わせは、所望の細胞、組織、又は領域への分子の標的化及び送達を更に調節するために使用され得る。シグナル又は細胞外シグナルの組み合わせは、望ましい場合にXリンカーの切断の特異性を広げる又は狭くするために使用される。多数のXリンカーが平行して結合される場合、部分Aが分子の残りから分離される前に各Xリンカーが切断されなければならないため、切断の特異性は狭くなる。多数のXリンカーが連続して結合される場合、何れか1つのXリンカー上での切断が分子の残りからの部分Aの分離可能とするので、切断の特異性は広げられる。例えば、プロテアーゼ又は低酸素症を検出するために(即ち、プロテアーゼ又は低酸素症の何れかの存在下でXを切断すること)、Xリンカーは、何れかの切断が酸性部分Aの分離を可能とするのに十分となるように、縦一列でプロテアーゼ感受性及び還元感受性部位を配するように設計される。代替的に、プロテアーゼと低酸素症の両方を検出するために(即ち、何れか一方のみの存在下ではなくプロテアーゼと低酸素症の両方の存在下でXを切断すること)、Xリンカーは、互いにジスルフィド結合されるシステインの少なくとも1つの対の間にプロテアーゼ感受性部位を配するように設計される。その場合、プロテアーゼ切断及びジスルフィド還元の両方は、部分Aの分離を可能にするために必要とされる。
【0155】
部分Yリンカー
【0156】
幾つかの実施形態において、Yは1つ以上のアミノ酸から成るリンカーであり、SDMの残りにカーゴ(D)を結合するために使用される。幾つかの実施形態において、Yは1つ以上のアミノ酸から成るリンカーであり、部分Bにカーゴ(D)を結合するために使用される。一般的に、ペプチドリンカーは、分子を結合する、或いは幾つかの最小距離又はそれらの他の空間的関連性を保存する以外に特異的な生物活性を持たない。しかし、リンカーの構成的アミノ酸は、フォールディング、総電荷、又は疎水性などの分子の幾つかの特性に影響を及ぼすように選択され得る。
【0157】
幾つかの実施形態において、Yリンカーは、共有結合によってDのカーゴ部分をBのペプチド部分(即ち、送達配列)に結合する。幾つかの実施形態において、共有結合は、エーテル結合、チオエテール結合、アミン結合、アミド結合、オキシム結合、炭素-炭素結合、ヒドラゾン結合、炭素-窒素結合、炭素-酸素結合、又は炭素-硫黄結合を含む。
【0158】
幾つかの実施形態において、Yリンカーは可撓性である。幾つかの実施形態において、Yリンカーは剛性である。幾つかの実施形態において、Yリンカーは線形構造を含む。幾つかの実施形態において、Yリンカーは非線形構造を含む。幾つかの実施形態において、Yリンカーは分枝構造を含む。幾つかの実施形態において、リンカーは環状構造を含む。
【0159】
幾つかの実施形態において、Yリンカーはペプチド結合を含む。ペプチド結合はL-アミノ酸及び/又はD-アミノ酸を含む。実施形態において、D-アミノ酸は、バックグラウンドのペプチダーゼ又はプロテアーゼによる免疫原性及び非特異性の切断を最小化するために好ましい。オリゴ-D-アルギニン配列の細胞取込みは、オリゴ-L-アルギニンのもの以上に優れていると知られている。
【0160】
幾つかの実施形態において、Yリンカーは非切断可能なリンカーである。
【0161】
幾つかの実施形態において、Yリンカーは、特定条件の存在下、又は特定の環境での切断のために設計されている。幾つかの実施形態において、Yリンカーは細胞内プロテアーゼによって切断可能である。幾つかの実施形態において、Yは細胞内プロテアーゼによって切断可能である。幾つかの実施形態において、Yリンカーはリソソームプロテアーゼによって切断可能である。幾つかの実施形態において、細胞内プロテアーゼはシステインプロテアーゼである。幾つかの実施形態において、細胞内プロテアーゼはアスパルチルプロテアーゼである。幾つかの実施形態において、プロテアーゼはセリンプロテアーゼである。幾つかの実施形態において、システインプロテアーゼは、カスパーゼ、カテプシン、カルパイン、パパイン、又はレグマインである。幾つかの実施形態において、細胞内プロテアーゼはイニシエーターカスパーゼである。幾つかの実施形態において、細胞内プロテアーゼはエフェクターカスパーゼである。幾つかの実施形態において、Yリンカーは、カテプシンB、カテプシンL、カテプシンH、カテプシンK、カテプシンW、カテプシンC、カテプシンF、カテプシンV、カテプシンX、カテプシンS、カテプシンD、カテプシンG、HCP-1、HCP-2、ジペプチジル-ペプチダーゼI、MEROPS C13、CED-3ペプチダーゼ、カスパーゼ2、カスパーゼ3、カスパーゼ6、カスパーゼ7、カスパーゼ8、カスパーゼ9、カスパーゼ10、カスパーゼ11;カスパーゼ12、カスパーゼ13、及びカスパーゼ14の中から選択されるプロテアーゼによって切断可能である。幾つかの実施形態において、Yリンカーは、カテプシンB、カテプシンL、カスパーゼ3、カスパーゼ7、カスパーゼ8、及びカスパーゼ9の中から選択されたプロテアーゼによって切断可能である。幾つかの実施形態において、Yリンカーは、カテプシンB、ジペプチジルカルボキシペプチダーゼによって切断可能である。幾つかの実施形態において、リンカーは、P1位置にリジン、シトルリン、又はアルギニンの残基、及びP1’位置に大きな疎水性残基を有する。
【0162】
幾つかの実施形態において、Yリンカーは酸性の感受性化学リンカーを含む。幾つかの実施形態において、酸性の感受性化学リンカーはヒドラゾン又はその誘導体である。幾つかの実施形態において、Yリンカーは自己犠牲型スペーサーを含む。幾つかの実施形態において、自己犠牲型スペーサーは、SDMのB部分と治療カーゴとの間の立体障害の発生を妨げるのに十分な長さである。幾つかの実施形態において、Yはp-アミノベンジルアルコール(PABOH)スペーサー又はその誘導体を含む。幾つかの実施形態において、Yはp-アミノベンジルカルボニル(PABC)スペーサー又はその誘導体を含む。幾つかの実施形態において、Yは、分枝したビス(ヒドロキシメチル)スチレン(BHMS)スペーサー又はその誘導体を含む。幾つかの実施形態において、Yは、2-アミノイミダゾール-5-メタノール誘導体、或いはオルト又はパラ-アミノベンジルアセタールスペーサーを含む。幾つかの実施形態において、Yは、2,6-ビスヒドロキシメチル-p-クレソール(cresol)又はヘミチオアミナール(hemithioaminal)誘導体を含む。
【0163】
幾つかの実施形態において、Yリンカーは二機能性リンカーを含む。幾つかの例において、二機能性リンカーは、第1の分子(例えば選択的な送達分子)上の基と反応する1つの官能基、及び第2の分子(例えば画像化カーゴ)上の基と反応する第2の官能基を有する。場合によっては、二機能性リンカーは、ホモ二機能性リンカー又はヘテロ二機能性リンカーである。代替的に、幾つかの実施形態において、誘導体化が官能基を提供するために実行される。故に、例えば、ペプチド上の遊離スルフヒドリル基の生成の手順も知られている(米国特許第4,659,839号を参照)。リンカーは代替的に、選択的な送達分子と相互作用可能な複素環を形成する2つ以上の異なる反応基を含む、ヘテロ二機能性クロスリンカーを含み得る。例えば、システインなどのヘテロ二機能性クロスリンカーはアミン反応基を含み、チオール反応基は、誘導体化された選択的な送達分子上でアルデヒドと相互作用することができる。ヘテロ二機能性クロスリンカーに適している反応基の追加の組み合わせは、例えば、アミン-及びスルフヒドリル反応基;カルボニル及びスルフヒドリル反応基;アミン及び光反応基;スルフヒドリル及び光反応基;カルボニル及び光反応基;カルボン酸塩及び光反応基;並びにアルギニン及び光反応基を含む。
【0164】
典型的なホモ二機能性リンカーは、限定されないが、Lomant試薬ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)DSP、3’3’-ジチオビス(スルホスクシンイミジル)プロピオネート(DTSSP)、ジスクシンイミジルスベレート(DSS)、ビス(スルホスクシンイミジル)スベレート(BS)、ジスクシンイミジルタートレート(DST)、ジスルホスクシンイミジルタートレート(スルホDST)、エチレングリコビス(スクシンイミジルスクシネート)(EGS)、ジスクシンイミジルグルタラート(DSG)、N,N’-ジスクシンイミジルカーボネート(DSC)、ジメチルアジピミデート(DMA)、ジメチルピペリミデート(DMP)、ジメチルスベリミデート(DMS)、ジメチル-3,3’-ジチオビスプロピオンイミデート(DTBP)、1,4-ジ-3’-(2’-ピリジルジチオ)プロピオナミド)ブタン(DPDPB)、ビスマレイミドヘキサン(BMH)、ハロゲン化アリール含有化合物(DFDNB)、例えば1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン、1,3-ジフルオロ-4,6-ジニトロベンゼン、4,4’-ジフルオロ-3,3’-ジニトロフェニルスルホン(DFDNPS)、ビス-[β-(4-アジドサリチルアミド)エチル]ジスルフィド(BASED)、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、アジピン酸ジヒドラジド、カルボヒドラジド、o-トルイジン、3,3’-ジメチルベンジジン、ベンジジン、α,α’-p-ジアミノジフェニル、ジヨード-p-キシレンスルホン酸、N,N’-エチレン-ビス(ヨードアセトアミド又はN,N’-ヘキサメチレン-ビス(ヨードアセトアミド)を含む。
【0165】
典型的なヘテロ二機能性リンカーは、限定されないが、アミン反応性クロスリンカー及びスルフヒドリルクロスリンカー、例えばN-スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(sPDP)、長鎖N-スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(LC-sPDP)、水溶性長鎖N-スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(スルホ-LC-sPDP)、スクシンイミジルオキシカルボニル-α-メチル-α-(2-ピリジルジチオ)トルエン(sMPT)、スルホスクシンイミジル-6-[α-メチル-α-(2-ピリジルジチオ)トルアミド]ヘキサネート(スルホ-LC-sMPT)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシラート(sMCC)、スルホスクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシラート(スルホ-sMCC)、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBs)、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル(スルホ-MBs)、N-スクシンイミジル(4-ヨードアセチル(iodoacteyl))アミノベンゾエート(sIAB)、スルホスクシンイミジル(4-ヨード)アミノベンゾエート(スルホ-sIAB)、スクシンイミジル-4-(p-マレイミドフェニル)ブチレート(sMPB)、スルホスクシンイミジル-4-(p-マレイミドフェニル)ブチレート(スルホ-sMPB)、N-(γ-マレイミドブチリルオキシ)スクシンイミドエステル(GMBs)、N-(γ-マレイミドブチリルオキシ)スルホスクシンイミドエステル(スルホ-GMBs)、スクシンイミジル6-((ヨードアセチル)アミノ)ヘキサノエート(sIAX)、スクシンイミジル6-[6-(((ヨードアセチル)アミノ)ヘキサノイル)アミノ]ヘキサノエート(sIAXX)、スクシンイミジル4-(((ヨードアセチル)アミノ)メチル)シクロヘキサン-1-カルボキシラート(sIAC)、スクシンイミジル6-((((4-ヨードアセチル)アミノ)メチル)シクロヘキサン-1-カルボニル)アミノ)ヘキサノエート(sIACX)、p-ニトロフェニルヨードアセテート(NPIA)、カルボニル反応性クロスリンカー及びスルフヒドリル反応性クロスリンカー、例えば4-(4-N-マレイミドフェニル)酪酸ヒドラジド(MPBH)、4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシル-ヒドラジド-8(M2C2H)、3-(2-ピリジルジチオ)プロビオニルヒドラジド(PDPH)、アミン反応性クロスリンカー及び光反応性クロスリンカー、例えばN-ヒドロキシスクシンイミジル-4-アジドサリチル酸(NH-AsA)、N-ヒドロキシスルホスクシンイミジル-4-アジドサリチル酸(スルホ-NH-AsA)、スルホスクシンイミジル-(4-アジドサリチルアミド)ヘキサノエート(スルホ-NH-LC-AsA)、スルホスクシンイミジル--2-(ρ-アジドサリチルアミド)エチル-1,3’-ジチオプロピオネート(sAsD)、N-ヒドロキシスクシンイミジル-4-アジドベンゾエート(HsAB)、N-ヒドロキシスルホスクシンイミジル-4-アジドベンゾエート(スルホ-HsAB)、N-スクシンイミジル-6-(4’-アジド-2’-ニトロフェニルアミノ)ヘキサノエート(sANPAH)、スルホスクシンイミジル-6-(4’-アジド-2’-ニトロフェニルアミノ)ヘキサノエート(スルホ-sANPAH)、N-5-アジド-2-ニトロベンゾイルオキシスクシンイミド(ANB-NO)、スルホスクシンイミジル-2-(m-アジド-o-ニトロベンズアミド)-エチル-1,3’-ジチオプロピオネート(sAND)、N-スクシンイミジル-4(4-アジドフェニル)1,3’-ジチオプロピオネート(sADP)、N-スルホスクシンイミジル(4-アジドフェニル)-1,3’-ジチオプロピオネート(スルホ-sADP)、スルホスクシンイミジル4-(ρ-アジドフェニル)ブチレート(スルホ-sAPB)、スルホスクシンイミジル2-(7-アジド-4-メチルクマリン-3-アセトアミド)エチル-1,3’-ジチオプロピオネート(sAED)、スルホスクシンイミジル7-アジド-4-メチルクマリン-3-アセテート(スルホ-sAMCA)、ρ-ニトロフェニルジアゾピルバート(ρNPDP)、ρ-ニトロフェニル-2-ジアゾ-3,3,3-トリフルオロプロピオネート(PNP-DTP)、スルフヒドリル反応性クロスリンカー及び光反応性クロスリンカー、例えば1-(ρ-アジドサリチルアミド)-4-(ヨードアセトアミド)ブタン(AsIB)、N-[4-(ρ-アジドサリチルアミド)ブチル]-3’-(2’-ピリジルジチオ)プロピオンアミド(APDP)、ベンゾフェノン-4-ヨードアセトアミド、ベンゾフェノン-4-マレイミド、カルボニル反応性クロスリンカー及び光反応性クロスリンカー、例えばρ-アジドベンゾイルヒドラジド(ABH)、カルボキシラート反応性クロスリンカー及び光反応性クロスリンカー、例えば4-(ρ-アジドサリチルアミド)ブチルアミン(AsBA)、及びアルギニン反応性クロスリンカー及び光反応性クロスリンカー、例えばρ-アジドフェニルグリオキサール(APG)を含む。
【0166】
幾つかの実施形態において、リンカーYはマレイミド基を含む。幾つかの例において、マレイミド基はマレイミドスペーサーとも呼ばれる。幾つかの例において、マレイミド基は更に、マレイミドカプロイル(mc)を形成するカプロン酸を含む。場合によっては、リンカーはマレイミドカプロイル(mc)を含む。場合によっては、リンカーはマレイミドカプロイル(mc)である。他の例において、マレイミド基は、上述のスクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシラート(sMCC)又はスルホスクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシラート(スルホ-sMCC)などのマレイミドメチル基を含む。
【0167】
幾つかの実施形態において、マレイミド基は自己安定化マレイミドである。幾つかの例において、自己安定化マレイミドは、チオスクシンイミド環加水分解の分子内の触媒作用を提供するべくマレイミドに隣接する塩基性アミノ基を組み込むジアミノプロピオン酸(DPR)を利用し、それにより、マレイミドがレトロマイケル反応を介して脱離反応を受けることを排除する。幾つかの例において、自己安定化マレイミドは、Lyon, et al., “Self-hydrolyzing maleimides improve the stability and pharmacological properties of antibody-drug conjugates,” Nat. Biotechnol. 32(10):1059-1062 (2014)に記載されるマレイミド基である。幾つかの例において、リンカーは自己安定化マレイミドを含む。幾つかの例において、リンカーは自己安定化マレイミドである。
【0168】
幾つかの実施形態において、Yリンカーはリソソームで切断可能なペプチドを含む。幾つかの実施形態において、Yリンカーはリソソームで切断可能なジペプチドPhe-Argを含む。幾つかの実施形態において、Yリンカーはリソソームで切断可能なジペプチドPhe-Lysを含む。幾つかの実施形態において、Yリンカーはリソソームで切断可能なジペプチドVal-Cit(l-シトルリン)を含む。幾つかの実施形態において、Yリンカーはリソソームで切断可能なテトラペプチドGly-Phe-Leu-Glyを含む。幾つかの実施形態において、Yリンカーはリソソームで切断可能なテトラペプチドAla-Leu-Ala-Leuを含む。
【0169】
幾つかの実施形態において、Yリンカーは、リソソームで切断可能なペプチド及び自己犠牲型スペーサーを含む。
【0170】
幾つかの実施形態において、YはpH感受性リンカーである。幾つかの実施形態において、Yは酸性pH条件下で切断される。幾つかの実施形態において、Yは酸性リソソームのpH条件下で切断される。
【0171】
本明細書に開示されるYリンカーは、例えばヒドロキシリジン、デスモシン、イソデスモシン、又は他の非標準アミノ酸などの、非標準アミノ酸を含み得ることが理解される。本明細書に開示されるリンカーは、例えばメチル化アミノ酸(例えば、メチルヒスチジン、リジンのメチル化形態など)、アセチル化アミノ酸、アミノ化アミノ酸、ホルミル化アミノ酸、ヒドロキシル化アミノ酸、リン酸化アミノ酸、又は他の修飾アミノ酸などの、翻訳後修飾されたアミノ酸を含む、修飾アミノ酸を含み得る。本明細書に開示されるリンカーはまた、非ペプチド結合により結合される部分、及び非アミノ酸により、又は非アミノ酸部分へと結合されるアミノ酸を含む、ペプチド模倣部分を含み得る。
【0172】
追加の修飾
【0173】
幾つかの実施形態において、本開示の選択的な送達分子は、標識(labeling)の多重原子価及び結合活性を増大させる高分子量の分子に随意に抱合する。幾つかの実施形態において、高分子量の分子は水溶性高分子である。適切な水溶性高分子の例は、限定されないが、ペプチド、サッカライド、ポリ(ビニル)、ポリ(エーテル)、ポリ(アミン)、ポリ(カルボン酸)などを含む。幾つかの実施形態において、水溶性高分子は、デキストラン、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリオキシアルキレン、ポリシアル酸、デンプン、又はヒドロキシエチルデンプンである。任意の適切な方法が、水溶性高分子にペプチドを共役するために使用される(Hermanson G., Bioconjugate Techniques 2nd Ed., Academic Press, Inc. 2008を参照)。
【0174】
レシオメトリック画像化のための典型的な選択的な送達分子
【0175】
図1は、開示されたレシオメトリック蛍光画像化方法で使用される選択的な送達分子の1つの非限定的な例の構造を示す(即ち、SDM-25又はAVB-620)。SDM-25は、対象の組織への蛍光共鳴エネルギー転移を受けることができる蛍光ドナー及びアクセプター部分(即ち、造影剤)の対(例えばCy5及びCy7)を送達するための蛍光画像化方法に使用され、該方法は、(a)対象の組織をSDM-25と接触させる工程(例えば、個体にSDM-25を静脈内投与する)、及び(b)造影剤の少なくとも1つを視覚化する工程を含む。
【0176】
図2のBは、ドナー及びアクセプターを近接して保持するリンカーの切断に際して、Cy5/Cy7ドナー-アクセプターの対で標識されたレシオメトリックSDM-25に対する蛍光発光スペクトルでの推移を例示する。無傷のプローブに関して、620nmの光によるCy7アクセプター分子への励起時にCy5ドナー分子によって吸収される、FRETに基づくエネルギー伝達は結果として、およそ780nmの強い蛍光発光をもたらす。切断に際して、2つのフルオロフォアの分離は、FRETに基づくエネルギー伝達を排除し、その結果、780nmのCy7蛍光発光の減少、及び670nmのCy5蛍光発光の増加がもたらされる。
【0177】
図3のA-Cは、ヒト乳癌腫瘍組織及び正常組織におけるSDM-25(AVB-620)に対して観察された異なる切断割合を例示するデータ、及び、ヒト乳癌組織のレシオメトリック蛍光画像化ベースの検出におけるSDM-25の使用に対する受信者動作特性(ROC)曲線の例を提供する。
図3のA:25の対になったヒト乳癌患者組織ホモジネートにおけるSDM-25の切断割合(毎分切断されたnM)。癌陽性の腫瘍組織(赤色の菱形)及び癌陰性の隣接組織(青色の三角形)が示される。対になったサンプルは線によって接続される。対応のあるt検定は、腫瘍と標準との間の有意差に対してP<0.0001をもたらす。
図3のB:平均±95%の信頼水準と同じデータの散布図。
図3のC:腫瘍対正常組織のSDM-25切断割合検出のためのROC曲線を示す。
【0178】
図3のA-Bに示されるように、Cy5/Cy7で標識されたSDM-25による正常ヒト乳房組織及び癌ヒト乳房組織ホモジネートのインキュベーションに際して、酵素活性及びSDM-25の切断は、正常ヒト乳房組織と比較して癌性ヒト乳房組織においてかなり大きくなることが見出された。
【0179】
図4のA-Bは、非悪性の乳房組織及び腫瘍ホモジネートにおけるMMP活性の定量化に対するSDM-25の使用を例示するデータの例を提供する。
図4のA:データが
図3のA-Cに示される25の患者から選択される、3つの代表的なヒト乳癌サンプル及び対になった正常組織からのホモジネートが、10%のゼラチンザイモグラム上で分析された。組み換え体の活性MMP2及びMMP9は標準(1つのレーン当たり2ng)として示された。
図4のB:
図4のAに示される3つの対を含む、5つの代表的なヒト乳癌サンプル(赤色)及び対になった正常組織(青色)における6つのMMPのELISA定量化。エラーバーは標準偏差である。ND=検出不能。
【0180】
幾つかの例において、Cy5/Cy7で標識されたSDM-25(又は他のレシオメトリック表示体)を有する生物試料の注入は、高画像コントラスト比率で対象の生物活性を示す領域と生物活性を示さない領域との区別を可能にする。例えば、Cy5/Cy7で標識されたSDM-25(又は他のレシオメトリック表示体)を有する生物試料の注入は、癌に相関されるプロテアーゼ活性を示す領域と示さない領域との、少なくとも1.25:1、1.5:1、1.75:1、2:1、3:1、4:1、5:1、10:1、20:1、又はそれ以上のより高い蛍光比率画像又は蛍光輝度画像コントラスト比率を提供し得る。
【0181】
使用の方法
【0182】
上述のように、開示されたレシオメトリック蛍光表示体及び画像化方法は、対象の生物活性を示す生物試料内の領域を検出及び/又は視覚化するために使用され得る。「生物試料」の例は、限定されないが、培養細胞サンプル、初代細胞サンプル(例えば、個々の細胞を懸濁液へと放出されるに細胞外マトリックスが消化又は溶解された組織サンプル)、血液サンプル又はその分画、エクスビボ組織サンプル(例えば、生検サンプル、又は外科切除サンプル)、インビボの組織サンプル(例えば、外科手術中に露出された腫瘍組織又は周辺組織)などを含む。生物試料は、様々な生物体、例えば原核生物、真核生物、菌類、植物、動物、又はヒトの何れかから集められてもよい。幾つかの例において、生物試料は患者サンプルである。「生物活性」の例は、限定されないが、イオン濃度又は輸送活性の変化(例えば、Ca2+イオンの蓄積又は放出、又は局所的なpHの変化)、興奮性細胞の膜間電圧の変化、増強されたプロテアーゼ活性(例えば、細胞外プロテアーゼ活性)の領域、レシオメトリック蛍光表示体を使用してモニタリングされる他の生化学物質又は生理学的プロセスの変化、或いはそれらの任意の組み合わせを含む。幾つかの例において、検出且つ視覚化される生物活性は、様々な疾患状態、例えば関節炎、アテローム動脈硬化症、癌、乳癌、前癌、悪性組織、凝結(血液凝固)、炎症、又はそれらの任意の組み合わせと相関される。
【0183】
幾つかの実施形態において、開示されたレシオメトリック蛍光表示体は、エクスビボ組織サンプル(例えば生検サンプル又は切除された外科サンプル)において癌を検出且つ診断するために使用される。
【0184】
幾つかの実施形態において、開示されたレシオメトリック蛍光表示体及び画像化方法は、必要とする個体(例えば患者)における対象の組織を視覚化するために使用される。幾つかの実施形態において、レシオメトリック画像化方法は、(a)レシオメトリック蛍光表示体、例えば、Cy5/Cy7ドナー-アクセプターの対で標識されたSDM-25などのレシオメトリックACPPを個体に投与する工程、及び(b)蛍光種の少なくとも1つを視覚化する工程を含む。
【0185】
幾つかの実施形態において、細胞又は組織へのレシオメトリック蛍光表示体の標的送達は、医療従事者が特異的な組織(例えば癌組織)を視覚化/画像化することを可能にする。幾つかの実施形態において、細胞又は組織への造影剤の標的送達は、医療従事者が対象の組織(例えば癌組織)を視覚化/画像化することを可能にする。幾つかの実施形態において、細胞又は組織への造影剤の標的送達は、外科的マージンの減少により医療従事者が対象の組織(例えば癌組織)を除去(即ち、外科切除)することを可能にする。幾つかの実施形態において、細胞又は組織への造影剤の標的送達は、医療従事者が腫瘍/癌組織を除去(即ち、外科切除)することを可能にし、腫瘍/癌細胞の一部が除去されない可能性を減らす。幾つかの実施形態において、細胞又は組織への造影剤の標的送達は、医療従事者が腫瘍/癌組織を最大限に減量させることを可能にする。幾つかの実施形態において、癌乳房組織の造影剤の標的送達は、不必要な操作及び再操作の可能性を減らす。幾つかの実施形態において、癌マージン状態(cancer margin status)は手術時に評価される。
【0186】
幾つかの実施形態において、細胞又は組織への造影剤の標的送達は、医療従事者が対象の組織(例えば癌組織)をより正確にサンプリングする(例えば、切除生検、切開生検、吸引生検、又は針生検)を可能にする。幾つかの実施形態において、細胞又は組織への造影剤の標的送達は、医療従事者が正常な組織を含有する切除組織内の特異的な組織(例えば癌組織)を視覚化/画像化することを可能にする。標的組織(例えば癌組織)の同定を可能とすることで、病理学評価のために組織サンプルを区分する場所を病理学者に誘導し、病理学者が不健康な組織(例えば癌組織)を除外し且つ偽陰性をもたらす正常組織をサンプリングする可能性を減らすことができる。幾つかの実施形態において、式(I)の化合物又は式(II)の化合物の使用後で除去された組織(例えば癌組織)は、病理セクション又はスライドを調製するために使用される。幾つかの実施形態において、式(I)の化合物又は式(II)の化合物の使用後に除去される癌組織は、悪性又は良性として組織を診断するために使用される病理セクション又はスライドを調製するために使用される。
【0187】
幾つかの実施形態において、癌乳房組織への造影剤の標的送達は、医療従事者が癌を正確にステージ分けするのを可能にし、医学的処置決定を可能にする。幾つかの実施形態において、癌組織への造影剤の標的送達は、医療従事者が腫瘍(癌組織)のサイズ又は癌組織の拡散(例えば転移巣)を観察することを可能にする。幾つかの実施形態において、細胞又は組織への造影剤の標的送達は、医療従事者が有効な処置レジメンを設計することを可能にする。
【0188】
幾つかの実施形態において、造影剤を含む式(I)の選択的な送達分子(例えば、蛍光ドナー-アクセプターの対で標識された選択的な送達分子)は、誘導された手術において利用される。幾つかの実施形態において、選択的な送達分子は、アップレギュレートされたプロテアーゼ活性を持つ癌性又は他の病理学的組織(例えば、炎症反応を受ける組織)へと優先的に局在化される。幾つかの実施形態において、造影剤を含む式(I)の選択的な送達分子は、癌組織、例えば大腸癌を除去するために誘導された手術において利用される。幾つかの実施形態において、選択的な送達分子を利用する誘導された手術は、外科医が正常な(即ち、非癌性)組織を可能な限り切除しないことを可能にする。幾つかの実施形態において、選択的な送達分子を利用する誘導された手術は、外科医が、選択的な送達分子の存在なしに切除可能なより多くの癌組織を視覚化及び切除することを可能にする。幾つかの実施形態において、手術は蛍光誘導された手術である。
【0189】
幾つかの実施形態において、造影剤を含む式(II)の選択的な送達分子(例えば、蛍光ドナー-アクセプターの対で標識された選択的な送達分子)は、誘導された手術において利用される。幾つかの実施形態において、選択的な送達分子は、アップレギュレートされたプロテアーゼ活性を持つ癌性又は他の病理学的組織(例えば、炎症反応を受ける組織)へと優先的に局在化される。幾つかの実施形態において、造影剤を含む式(II)の選択的な送達分子は、癌組織、例えば大腸癌を除去するために誘導された手術において利用される。幾つかの実施形態において、選択的な送達分子を利用する誘導された手術は、外科医が正常な(即ち、非癌性)組織を可能な限り切除しないことを可能にする。幾つかの実施形態において、選択的な送達分子を利用する誘導された手術は、外科医が、選択的な送達分子の存在なしに切除可能なより多くの癌組織を視覚化及び切除することを可能にする。幾つかの実施形態において、手術は蛍光誘導された手術である。
【0190】
幾つかの実施形態において、対象の組織は、乳癌組織、結腸癌組織、扁平上皮癌組織、前立腺癌組織、黒色腫組織、肉腫組織、甲状腺癌組織、大腸癌組織、皮膚癌組織、卵巣癌組織、癌性のリンパ節組織、子宮頚癌組織、肺癌組織、膵臓癌組織、頭頚部癌組織、又は食道癌組織である。幾つかの実施形態において、対象の組織は乳癌組織である。幾つかの例において、対象の組織は結腸癌組織である。幾つかの例において、対象の組織は肺癌組織である。場合によっては、対象の組織は前立腺癌組織である。
【0191】
幾つかの実施形態において、癌は、AIDS関連癌(例えば、AIDS関連リンパ腫)、肛門癌、基底細胞癌、胆管癌(例えば、肝外)、膀胱癌、骨癌(骨肉腫及び悪性線維性組織球腫)、乳癌、子宮頚癌、結腸癌、大腸癌、子宮内膜癌(例えば子宮癌)、上衣腫、食道癌、眼癌(例えば眼球内黒色腫及び網膜芽細胞腫)、胃癌(gastric (stomach) cancer)、胚細胞腫(例えば、頭蓋外、性腺外、卵巣)、頭頚部癌、白血病、唇及び口腔の癌、肝臓癌、肺癌(例えば小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌、及び肺扁平上皮癌)、卵巣癌、膵臓癌、下垂体部腫瘍、前立腺癌、腎臓癌、肉腫、皮膚癌、小腸癌、扁平上皮癌、精巣癌、喉頭癌、甲状腺癌、尿道癌、及び移植後リンパ増殖性障害(PTLD)である。
【0192】
幾つかの実施形態において、癌は乳癌である。幾つかの例において、乳癌は、侵襲性腺管癌(IDC)、侵襲性小葉癌(ILC)、非浸潤性乳癌(DCIS)、炎症性乳癌、非浸潤性小葉癌(LCIS)、男性乳房癌、乳癌の分子亜型、乳頭のパジェット病、乳房の葉状腫瘍、及び転移性乳癌を含む。場合によっては、IDCは、乳房の管状腺癌、乳房の髄様癌、乳房の粘液性癌腫、乳房の乳頭状癌、及び乳房の篩状癌へと更に細分される。場合によっては、乳癌の分子亜型は、管腔A、管腔B、三種陰性/基底様、HER2-富化、又は正常様の乳癌を含む。
【0193】
幾つかの実施形態において、癌はリンパ系の癌(例えばリンパ腫)である。
【0194】
幾つかの実施形態において、癌はB細胞癌である。幾つかの実施形態において、癌は、B前駆細胞癌(例えば、前駆体Bリンパ芽球性白血病/リンパ腫)及び末梢性B細胞癌(例えばB細胞慢性リンパ球性白血病/前リンパ球性白血病/小リンパ球性リンパ腫(小リンパ球(SL)NHL)、リンパ形質細胞性リンパ腫/免疫細胞腫、マントル細胞リンパ腫、小胞中心リンパ腫、濾胞性リンパ腫(例えば、細胞学等級:I(小細胞)、II(小細胞と大細胞の組み合わせ)、III(大細胞)、及び/又は亜型:びまん性及び優勢的に小さな細胞型)、低級/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)、中級/濾胞性NHL、辺縁帯B細胞リンパ腫(例えば、結節外(例えばMALT型+/-単細胞様B細胞)及び/又は結節(例えば+/-単細胞様B細胞))、脾辺縁帯リンパ腫(例えば、+/-有毛リンパ球)、有毛細胞白血病、形質細胞腫/プラスマ細胞骨髄腫(例えば、骨髄腫及び多発性骨髄腫)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(例えば、一次縦隔洞(胸腺)B細胞リンパ腫)、中級のびまん性NHL、バーキットリンパ腫、高度B細胞リンパ腫、バーキット様、高度免疫芽細胞性NHL、高度リンパ芽球NHL、高度小非分割細胞NHL、巨大腫瘤病変NHL、AIDS関連リンパ腫、及びヴァルデンストレームマクログロブリン血症である。
【0195】
幾つかの実施形態において、癌はT細胞及び/又は推定NK細胞癌である。幾つかの実施形態において、癌は、T前駆細胞癌(前駆体T-リンパ芽球性リンパ腫/白血病)及び末梢性T細胞及びNK細胞癌(例えば、T細胞慢性リンパ球性白血病/前リンパ球性白血病、及び大顆粒リンパ球白血病(LGL)(例えばT細胞型及び/又はNK細胞型)、皮膚T細胞リンパ腫(例えば菌状息肉腫/セザリー症候群)、不特定の一次T細胞リンパ腫(例えば、細胞学カテゴリー(例えば、中型細胞、中型と大型の細胞の組み合わせ)、大細胞、リンパ上皮腫様細胞、亜型肝脾型γδT細胞性リンパ腫、及び皮下脂肪織炎T細胞性リンパ腫)、免疫芽球性T細胞性リンパ腫(AILD)、血管中枢性リンパ腫、腸T細胞性リンパ腫(例えば、+/-腸疾患関連)、成人T細胞リンパ腫/白血病(ATL)、未分化大細胞リンパ腫(ALCL)(例えば、CD30+、T細胞型及びヌル細胞型)、未分化大細胞リンパ腫、及びホジキン様)である。
【0196】
幾つかの実施形態において、癌はホジキン病である。
【0197】
幾つかの実施形態において、癌は白血病である。幾つかの実施形態において、癌は、慢性骨髄球I型(顆粒白血球)白血病、慢性骨髄性、及び慢性リンパ球性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、及び急性骨髄性白血病(例えば、骨髄芽球、前骨髄球、骨髄単球性、単球、及び赤白血症)である。
【0198】
幾つかの実施形態において、癌は液状腫瘍又は形質細胞腫である。幾つかの実施形態において、癌は髄外の形質細胞腫、孤立性骨髄腫、及び多発性骨髄腫である。幾つかの実施形態において、形質細胞腫は多発性骨髄腫である。
【0199】
幾つかの実施形態において、癌は肺癌である。
【0200】
幾つかの実施形態において、癌は前立腺癌である。幾つかの実施形態において、前立腺癌は腺癌である。幾つかの実施形態において、前立腺癌は、肉腫、神経内分泌腫瘍、小細胞癌、腺管癌、又はリンパ腫である。幾つかの実施形態において、前立腺癌は、ステージAの前立腺癌である(癌は、直腸試験中には感じられない場合がある)。幾つかの実施形態において、前立腺癌は、ステージBの前立腺癌である(即ち、腫瘍は、前立腺内のより多くの組織に関与し、直腸の試験中に感じられる場合があり、或いは、高いPSAのレベルにより行われる生検により見出される)。幾つかの実施形態において、前立腺癌は、ステージCの前立腺癌である(即ち、癌は前立腺の外側で近くの組織へと拡散する)。幾つかの実施形態において、前立腺癌は、ステージDの前立腺癌である。幾つかの実施形態において、前立腺癌はアンドロゲン非依存性前立腺癌(AIPC)である。幾つかの実施形態において、前立腺癌はアンドロゲン依存性前立腺癌である。幾つかの実施形態において、前立腺癌はホルモン療法に耐性がある。幾つかの実施形態において、前立腺癌はホルモン療法にほぼ耐性がある。幾つかの実施形態において、前立腺癌は化学療法に耐性がある。幾つかの実施形態において、前立腺癌は転移性前立腺癌である。幾つかの実施形態において、個体は、前立腺癌に関連付けられる遺伝子、遺伝子突然変異、又は多形性(例えば、RNASEL/HPC1、ELAC2/HPC2、SR-A/MSR1、CHEK2、BRCA2、PON1、OGG1、MIC-1、TLR4、及びPTEN)を持つ、或いは前立腺癌に関連付けられる遺伝子の1つ以上の余剰の複製物を持つヒトである。幾つかの実施形態において、前立腺癌はHER2陽性である。幾つかの実施形態において、前立腺癌はHER2陰性である。
【0201】
幾つかの実施形態において、癌は転移し、循環腫瘍細胞により特徴づけられる。
【0202】
幾つかの実施形態において、対象の組織は、アップレギュレートされたプロテアーゼ活性を持つ組織(例えば炎症反応を受ける組織)である。
【0203】
医薬組成物
【0204】
本明細書には、特定の実施形態において、本明細書に記載されるようなSDMの何れかを含む医薬組成物が開示される。幾つかの実施形態において、SDMを含む医薬組成物は、式1又は式IIの何れかのSDM及び薬学的に許容可能な担体を含む。
【0205】
本明細書中の医薬組成物は、活性薬剤を薬学的に使用される調製物へと処理するのを促進する賦形剤及び助剤を含む、1以上の生理学的に許容可能な担体を使用して、製剤され得る。適切な製剤は、選択される投与経路に左右される。本明細書に記載される医薬組成物の概要は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy, Nineteenth Ed (Easton, Pa.: Mack Publishing Company, 1995);Hoover, John E., Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, Pennsylvania 1975;Liberman, H.A. and Lachman, L., Eds., Pharmaceutical Dosage Forms, Marcel Decker, New York, N.Y., 1980;及びPharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, Seventh Ed.(Lippincott Williams & Wilkins,1999)に見出される。
【0206】
特定の実施形態において、本明細書に開示される医薬組成物は、薬学的に許容可能な希釈剤、賦形剤、又は担体を更に含む。幾つかの実施形態において、医薬組成物は、他の医療薬剤又は医薬品、担体、アジュバント、例えば、防腐剤、安定化剤、湿潤剤又は乳化剤、溶解促進剤、浸透圧を調節するための塩、及び/又は緩衝液を含む。加えて、医薬組成物は、他の治療上価値のある物質も含む。
【0207】
特定の実施形態において、本明細書に開示される医薬組成物は、非経口(静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内、血管内、脊髄腔内、硝子体内、点滴、又は局所(local))の投与を含むが、これらに限定されない任意の適切な投与経路によって被験体に投与される。
【0208】
筋肉内、皮下、腫瘍周辺、又は静脈内の注射に適した製剤は、生理学的に許容可能な無菌の水性又は非水性の溶液、分散液、懸濁液、或いはエマルジョン、及び無菌注射剤溶液又は分散液へと再構成される無菌の粉末を含む。適切な水性及び非水性の担体、希釈剤、溶媒、又はビヒクルの例としては、水、エタノール、ポリオール(プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール、クレモフォールなど)、それらの適切な混合物、植物油(オリーブオイルなど)、及びオレイン酸エチルなどの注射可能な有機酸エステルが挙げられる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散の場合に必要とされた粒径の維持、及び界面活性剤の使用によって、維持される。皮下注射に適した製剤は、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、及び分配剤(dispensing agent)などの随意の添加剤も含む。
【0209】
静脈内注射について、活性薬剤は、水溶液中で、好ましくはハンク溶液、リンガー溶液、又は緩衝生理食塩水などの生理学的に互換性を持つ緩衝剤中で製剤される。
【0210】
非経口注入は随意に大量注射又は持続注入を含む。注射のための製剤は随意に、単位「剤形、例えば、アンプル又は複数回用量の容器において、加えられた防腐剤と共に提供される。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される医薬組成物は、油性又は水溶性のビヒクル中の滅菌した懸濁液、水溶液、又はエマルジョンとして、非経口注射に適切な形態であり、懸濁化剤、安定剤及び/又は分散剤などの、調合剤を含有する。非経口投与のための医薬製剤は、水溶性形態の活性薬剤の水溶液を含む。加えて、懸濁液は、適切な油性の注入懸濁液として随意に調製される。
【0211】
幾つかの実施形態において、本明細書に記載される医薬組成物は、正確な投与量の単回投与に適した単位剤形である。単位剤形において、製剤は、本明細書に開示される活性薬剤の適量を含む単位用量に分割される。単位用量は、製剤の離散量を含有するパッケージ形状である。非限定的な例は、包装された錠剤又はカプセル、及びバイアル又はアンプルの中にある粉末剤である。幾つかの実施形態において、水性懸濁組成物は、単回用量用の再密閉できない容器に包装される。代替的に、複数回用量用の再密閉可能な容器が使用され、この場合、組成物中に保存料を含むことが典型的である。ほんの一例として、非経口的注入のための製剤は、限定されないがアンプルを含む単位剤形で、或いは、追加の保存料と共に複数回投与量容器で提供される。
【0212】
幾つかの実施形態において、与えられたSDMの量は、特定の化合物、被験体の同一性(例えば重量)、投与経路、及び、化合物の視覚化に必要な期間に依存して変動する。典型的な投与量は、限定されないが、0.5mg、1mg、2mg、3mg、4mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mg、10mg、11mg、12mg、15mg、18mg、20mg、25mg、又は30mgを含む。場合によっては、被験体に投与されるSDMの投与量は1mgである。場合によっては、被験体に投与されるSDMの投与量は2mgである。場合によっては、被験体に投与されるSDMの投与量は4mgである。場合によっては、被験体に投与されるSDMの投与量は6mgである。場合によっては、被験体に投与されるSDMの投与量は8mgである。場合によっては、被験体に投与されるSDMの投与量は10mgである。場合によっては、被験体に投与されるSDMの投与量は12mgである。場合によっては、被験体に投与されるSDMの投与量は15mgである。場合によっては、被験体に投与されるSDMの投与量は20mgである。場合によっては、被験体に投与されるSDMの投与量は25mgである。場合によっては、被験体に投与されるSDMの投与量は30mgである。
【0213】
幾つかの例において、SDMは、手術の約30分~約24時間前に投与される。幾つかの例において、SDMは、手術の約1時間~約22時間前、約1時間~約20時間前、約2時間~約22時間前、約2時間~約20時間前、約2時間~約18時間前、約2時間~約16時間前、約2時間~約14時間前、約2時間~約12時間前、約2時間~約10時間前、約2時間~約8時間前、約4時間~約18時間前、約4時間~約16時間前、約4時間~約12時間前、約4時間~約8時間前、約6時間~約20時間前、約6時間~約18時間前、約6時間~約12時間前、約8時間~約18時間前、又は約8時間~約12時間前に投与される。場合によっては、SDMは、手術の約30分、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、12時間、14時間、16時間、18時間、20時間、22時間、又は24時間前に投与される。
【0214】
幾つかの実施形態において、SDMは注入を介して被験体に投与される。幾つかの例において、注入の長さは、約20分、30分、40分、50分、1時間、1.5時間、2時間、2.5時間、3時間、4時間、5時間、6時間、又はそれ以上である。場合によっては、注入の長さは約20分である。場合によっては、注入の長さは約30分である。場合によっては、注入の長さは約40分である。場合によっては、注入の長さは約50分である。場合によっては、注入の長さは約1時間である。場合によっては、注入の長さは約50分である。場合によっては、注入の長さは約1.5時間である。場合によっては、注入の長さは約50分である。場合によっては、注入の長さは約2時間である。場合によっては、注入の長さは約50分である。場合によっては、注入の長さは約4時間である。場合によっては、注入の長さは約50分である。場合によっては、注入の長さは約6時間である。
【0215】
蛍光検出及び画像化システム
【0216】
様々な蛍光検出器機及び画像化システムの何れかが、造影剤、例えばレシオメトリック蛍光表示体、即ち本開示の画像化方法と共に使用されてもよい。例えば、インビトロの試験に対して、従来の分光蛍光計は、細胞に基づくアッセイを実行するために使用され得る。エクスビボでの組織サンプルの画像化に対して、適切な励起及び発光フィルターのセットを搭載した落射蛍光顕微鏡、及び1つ以上のCCDカメラが利用され得る。インビボの画像化用途に対して、より高度な画像化システムが利用され得る。専門的なインビボの画像化用途、例えば結腸内視鏡検査において、蛍光画像が2(又はそれ以上)の発光波長で集められるのを可能にする改変された内視鏡が利用され得る。
【0217】
一般的に、これら蛍光検出及び画像化システムは、(i)1つ以上の励起光源、(ii)励起及び発光フィルターのセット(或いは、波長設定及びバンドパスを調整するための他の構成要素)、(iii)1つ以上の検出器、及び(iv)光学システムを横断するにつれて光線の経路を操作するための他の光学部品を含む。幾つかの例において、蛍光検出及び画像化システムは更に、1つ以上のプロセッサ、コンピュータデータストレージ(メモリ)コンポーネント、オペレーティングシステムソフトウェア、器機制御ソフトウェア(例えば、画像取得ソフトウェア)、及び/又は、データ処理及び表示ソフトウェア(例えば、画像処理及び表示ソフトウェア)を含む。
【0218】
図5は、2つの異なるカメラ上へと2つの異なる波長で蛍光発光を画像化するために画像スプリッター光学部品(例えば、二色の反射体)を利用するレシオメトリック蛍光画像化システムの、1つの非限定的な例を概略的に例示する。例えば顕微鏡対物レンズを取り囲むリングライトによって提供された励起光は、特定の励起波長で組織サンプルを照らすために使用される。発光された蛍光は、光画像化システムによって集められ、画像スプリッター構成要素へと向けられ、そこで画像は、画像スプリッターの発光波長カットオフに従い2つの構成要素画像に分離され、2つの異なるカメラの画像センサーチップ上へと別々に画像化される。幾つかの実施形態において、2つの画像は同時にキャプチャされる。幾つかの実施形態において、2つの画像は連続してキャプチャされる。
【0219】
当業者に既知の様々な光源の何れかが、アーク灯、ハロゲン電球、レーザー(例えば、アルゴンイオンレーザー、ヘリウムネオン(HeNe)レーザーなど)、ダイオードレーザー、発光ダイオード(LED)、ライトエンジンなど、或いはそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない、励起光源として使用され得る。幾つかの実施形態において、蛍光検出又は画像化システムは、少なくとも1つの光源、少なくとも2つの光源、少なくとも3つの光源、少なくとも4つの光源、少なくとも5つの光源、又はそれ以上を含む。
【0220】
励起及び発光フィルターのセットは、光ガラスフィルター(例えば、Scott光学フィルター)、ロングパスフィルター、ショートパスフィルター、干渉フィルター、二色の反射体、ノッチフィルターなど、或いはそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない、当業者に既知の様々な光学フィルターの何れかを含む。幾つかの例において、励起及び/又は発光波長(又はバンドパス)は、システムの光学経路における1つ以上の光学フィルターの変更によって設定及び/又は調節される。幾つかの実施形態において、励起及び/又は発光波長(およびバンドパス)は、回折格子、モノクロメーター、音響光学変調器、調整可能な液晶フィルターなどの他の構成要素を使用して設定及び/又は調節される。
【0221】
幾つかの例において、蛍光検出又は画像化システムに対する励起又は発光波長の設定は独立して調節され、約350nm~約900nmの範囲に及ぶ。幾つかの例において、励起又は発光波長は、約350nm、375nm、400nm、425nm、450nm、475nm、500nm、525nm、550m、575nm、600nm、625nm、650nm、675nm、700nm、725nm、750nm、775nm、800nm、825nm、850nm、875nm、又は900nmに設定される。当業者は、励起又は発光波長がこの範囲内の任意の値、例えば約620nmに設定され得ることを認識する。
【0222】
幾つかの例において、特定の励起及び発光光の帯域幅は独立して調節され、±2nm、±5nm、±10nm、±20nm、±40nm、±80nm、又はそれ以上の特定の励起波長又は発光波長として特定される。当業者は、励起又は発光の帯域幅がこの範囲内の任意の値、例えば約±55nmに設定され得ることを認識する。
【0223】
当業者に既知の様々な検出器及び画像センサーの何れかが使用され、限定されないが、フォトダイオード、アバランシェフォトダイオード、フォトダイオードアレイ、光電子増倍管、CCD又はCMOS画像センサー及びカメラなど、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられる。幾つかの例において、蛍光検出又は画像化システムは、少なくとも1つの検出器、少なくとも2つの検出器(例えば、2つの異なる発光波長での蛍光画像の同時のキャプチャ用)、少なくとも3つの検出器、少なくとも4つの検出器、少なくとも5つの検出器、又はそれ以上を含む。幾つかの光学設計において、蛍光検出又は画像化システムは、例えば、画像捕捉工程間の蛍光発光フィルターの変更によって、2つの(又はさらに)異なる発光波長に蛍光輝度画像を連続してキャプチャするように構成される。いくつかの光設計において、蛍光検出又は画像化システムは、例えば、発光光学経路において適切な二色の反射体を含めること、及び各発光波長に対し異なる検出器を利用することによって、2(又はそれ以上)の異なる発光波長で蛍光輝度画像を同時に集めるように構成される。
【0224】
蛍光検出及び画像化システム中で利用され得る他の光学部品の例は、限定されないが、レンズ又はレンズシステム、プリズム、ビームスプリッター、ミラー、光ファイバー、色収差の補正のための回折光学素子などを含む。これら構成要素は、当業者に既知の多数の光構成のいずれかにおいて、光源、励起及び発光フィルター(又は、波長設定及びバンドパスを調整するための他の構成要素)、及び検出器と共に構成される。
【0225】
画像処理アルゴリズム
【0226】
本明細書にはまた、画像化された生物試料内の生物活性の領域を検出且つ視覚化する精度を改善するためにレシオメトリック蛍光画像化方法と共に使用される画像処理アルゴリズムが開示される。中に蛍光比率画像及び関心領域(ROI)を生成且つ表示するための開示されたアルゴリズムは、対象の特異的な生物活性又は構造を示す、生物試料内の領域に相当するROIの自動的、半自動的、又は手動の同定を可能とする。幾つかの例において、ROIは蛍光比率画像から生成される。幾つかの例において、ROIは、蛍光比率画像及び/又は蛍光輝度画像の組み合わせから生成される。
【0227】
図6は、ハードウェア構成要素及びソフトウェアユニットの両方を含む蛍光画像化システムの概略図を提供する。上述のように、幾つかの例において、システムのハードウェア構成要素は、画像取得ハードウェア(例えば、上述のような光源、励起及び発光フィルター又は同等物、検出器)の他、1つ以上のプロセッサ、コンピュータストレージ(メモリ)コンポーネント(画像表示コンポーネント)、他の器機制御モジュール(例えば温度調節器)、及び/又は通信ハードウェアを含む。幾つかの例において、システムのソフトウェアユニットはオペレーティングシステムを含み、その中で、1つ以上の画像取得、画像処理、及び/又は画像表示ソフトウェアモジュールの他、他の随意の器機制御及び通信ソフトウェアモジュールに対しプログラムされた命令が実行される。
【0228】
上述のように、開示されたレシオメトリック蛍光画像化方法の幾つかの実施形態において、画像処理ソフトウェアモジュールの命令セット内でコードされる、1つ以上の画像処理アルゴリズムは、対象の特異的な生物活性又は構造を示す生物試料内の領域に相当する、分析される画像内でROIの自動的、半自動的、又は手動の同定を可能にする。
【0229】
図7は、蛍光比率画像及び/又は対応する蛍光輝度画像内の高い蛍光比率値及び/又は蛍光輝度値を示す関心領域(ROI)を同定するために使用される画像処理アルゴリズムを例示する。2つの異なる発光波長(輝度1及び輝度2)での蛍光輝度画像が、蛍光比率画像を算出するために使用される。幾つかの例において、輝度画像はバックグラウンド控除され、及び/又は、比率の算出前に画像をキャプチャするために使用される露光時間へと標準化される。蛍光比率画像及び蛍光輝度画像の各々に対し、比率又は輝度の閾値は、マスク画像(即ち、対応するする2値画像ファイルであり、そこでは、元の画像が閾値以下である比率又は輝度の値を持つ各ピクセルが、0の値に設定され、元の画像が閾値より大きい比率又は輝度の値を持つ各ピクセルが1の値に設定される)を生成するために使用される。ROIは、3つのマスク画像を組み合わせるために論理的なAND操作を実行することにより検出される。幾つかの実施形態において、結果として生じるROIは、それらが最小規模要件を満たすことを確実にする(即ち、生物学的な関連性であることを確実にするように単一のピクセルノイズ又は他の検出アーチファクトを排除する)と随意に評価される。最小のROI設定は、画像化システムの光学解像度に関連し、偽陽性の同定を回避するために画像化システムの分解能を超えるように選択される。幾つかの実施形態において、アルゴリズムは完全に自動の様式で実行される。幾つかの実施形態において、アルゴリズムは半自動様式で実行される。幾つかの実施形態において、アルゴリズムは手動様式で実行される。幾つかの例において、ROI内の蛍光比率及び/又は蛍光輝度に対する平均値の測定は、生物活性の質的測定を提供する。幾つかの例において、ROI内の蛍光比率及び/又は蛍光輝度に対する平均値の測定は、生物活性の量的測定を提供する。
【0230】
図10は、(i)蛍光比率画像及び/又は対応する蛍光輝度画像内の高い蛍光比率値及び/又は蛍光輝度値を示す関心領域(ROI)を同定する、及び(ii)画像を調製するのに使用されるレシオメトリック蛍光表示体によって生物活性の陽性又は陰性の予測を行うために使用される画像処理アルゴリズムを例示する。2つの異なる発光波長(F1及びF2)での蛍光輝度画像が、蛍光比率画像を算出するために使用される。幾つかの例において、輝度画像はバックグラウンド控除され、及び/又は、比率の算出前に画像をキャプチャするために使用される露光時間へと標準化される。幾つかの例において、蛍光比率画像はROIの検出のために使用される。幾つかの例において、蛍光比率画像、及び2つの蛍光輝度画像の1つは、ROIの検出のために使用される。幾つかの例において、蛍光比率画像、及び両方の蛍光輝度画像は、ROIの検出のために使用される。選択される蛍光比率画像及び/又は蛍光輝度画像の各々に対し、比率及び/又は輝度の閾値は、マスク画像(即ち、対応するする2値画像ファイルであり、そこでは、元の画像が閾値以下である比率又は輝度の値を持つ各ピクセルが、0の値に設定され、元の画像が閾値より大きい比率又は輝度の値を持つ各ピクセルが1の値に設定される)を生成するために使用される。両方の蛍光比率画像及び少なくとも1つの蛍光輝度画像が使用される例において、ROIは、2つ以上のマスク画像を組み合わせるために論理的なAND操作を実行することにより検出される。幾つかの実施形態において、結果として生じるROIは、それらが最小規模要件を満たすことを確実にする(即ち、生物学的な関連性であることを確実にするように単一のピクセルノイズ又は他の検出アーチファクトを排除する)と随意に評価される。最小のROI設定は、画像化システムの光学解像度に関連し、偽陽性の同定を回避するために画像化システムの分解能を超えるように選択される。検証されたROIの存在は、研究の下で生物試料内の特定の生物活性に対して陽性の予測を行うために使用される。幾つかの実施形態において、アルゴリズムは完全に自動の様式で実行される。幾つかの実施形態において、アルゴリズムは半自動様式で実行される。幾つかの実施形態において、アルゴリズムは手動様式で実行される。幾つかの例において、ROI内の蛍光比率及び/又は蛍光輝度に対する平均値の測定は、生物活性の質的測定を提供する。幾つかの例において、ROI内の蛍光比率及び/又は蛍光輝度に対する平均値の測定は、生物活性の量的測定を提供する。
【0231】
図11は、画像を調製するのに使用されるレシオメトリック蛍光表示体により示される生物活性の陽性又は陰性の予測を行うためにユーザー選択されたROIが使用される、画像処理アルゴリズムを例示する。2つの異なる発光波長(F1及びF2)での蛍光輝度画像が、蛍光比率画像を算出するために使用される。幾つかの例において、輝度画像はバックグラウンド控除され、及び/又は、比率の算出前に画像をキャプチャするために使用される露光時間へと標準化される。幾つかの例において、蛍光比率画像は、ユーザー選択されたROIを同定するために使用される。幾つかの例において、蛍光比率画像、及び2つの蛍光輝度画像の1つは、ユーザー選択されたROIを同定するために使用される。幾つかの例において、蛍光比率画像、及び両方の蛍光輝度画像は、ユーザー選択されたROIを同定するために使用される。ユーザー選択されたROIが同定される蛍光比率画像及び/又は蛍光輝度画像の各々に対し、ユーザー選択されたROI内の比率値及び/又は輝度値の平均値は、マスク画像(即ち、対応するする2値画像ファイルであり、そこでは、元の画像が閾値以下である比率又は輝度の値を持つ各ピクセルが、0の値に設定され、元の画像が閾値より大きい比率又は輝度の値を持つ各ピクセルが1の値に設定される)を生成するために算出され、且つ蛍光比率及び/又は輝度の閾値と比較される。2つ以上のマスク画像が生成される場合、その後、マスク画像は、全ての閾値が超過しているそれらのROIを同定するために論理的なAND操作の実行によって組み合わせられる。幾つかの例において、結果として生じるROIは、それらが最小規模要件を満たすことを確実にする(即ち、生物学的な関連性であることを確実にするように単一のピクセルノイズ又は他の検出アーチファクトを排除する)と随意に評価される。最小のROI設定は、画像化システムの光学解像度に関連し、偽陽性の同定を回避するために画像化システムの分解能を超えるように選択される。検証されたROIの存在は、研究の下で生物試料内の特定の生物活性に対して陽性の予測を行うために使用される。幾つかの実施形態において、アルゴリズムは完全に自動の様式で実行される。幾つかの実施形態において、アルゴリズムは半自動様式で実行される。幾つかの実施形態において、アルゴリズムは手動様式で実行される。幾つかの例において、ROI内の蛍光比率及び/又は蛍光輝度に対する平均値の測定は、生物活性の質的測定を提供する。幾つかの例において、ROI内の蛍光比率及び/又は蛍光輝度に対する平均値の測定は、生物活性の量的測定を提供する。
【0232】
図12は、レシオメトリック蛍光表示体を注入された生物試料における生物活性(例えば、癌に相関される増強された細胞外酵素活性)の存在を判定するための蛍光比率閾値及び/又は輝度閾値の最も正確な組み合わせを同定するために使用される、画像処理アルゴリズムの1つの非限定的な例を例示する。2つの異なる発光波長での蛍光輝度画像が、複数の生物試料、即ち、レシオメトリック蛍光表示体を注入された組織標本の各々に関する蛍光比率画像を算出するために使用される。幾つかの例において、輝度画像はバックグラウンド控除され、及び/又は、比率の算出前に画像をキャプチャするために使用される露光時間へと標準化される。出発値は、第1の蛍光輝度閾値、第2の蛍光輝度閾値、蛍光比率閾値、又はそれらの任意の組み合わせに対して;及び生物試料の各々に対して提供され、i)画像分析アルゴリズム(例えば、
図7、
図10又は
図11に例示されるアルゴリズム)を使用して蛍光比率画像、第1の蛍光輝度画像、第2の蛍光輝度画像、又はそれらの任意の組み合わせを処理する工程であって、該画像分析アルゴリズムは、蛍光比率画像及び蛍光輝度画像のマスク画像を作成するために蛍光比率閾値、第1の蛍光輝度閾値、蛍光輝度閾値、又はそれらの任意の組み合わせを使用し、2つ以上のマスク画像が作成されている場合にマスク画像上でAND論理演算を実行し、特定の蛍光比率閾値又は蛍光輝度閾値を超える蛍光比率値又は蛍光輝度値を示す検出された関心領域が特定の最小のサイズよりも大きいことを随意にチェックし、且つ、特定の生物活性(例えば癌)に対して陽性又は陰性としての生物試料の分類を提供する、工程;ii)前記分類が、真陽性、偽陰性、真陰性、又は偽陽性であるかを判定するために、前記画像分析アルゴリズムによって提供される分類を、前記生物試料に対する病理実験室試験結果と比較する工程;及びiii)真陽性、偽陰性、真陰性、又は偽陽性の結果を記憶する工程が、繰り返される。その後、これら工程は、第1の蛍光輝度閾値、第2の蛍光輝度閾値、又は蛍光比率閾値の値の増加を使用して繰り返され、一方で、生物試料の全てが画像処理アルゴリズムによって陰性として分類されるまで、他の閾値は固定されたまま保持される。受信者動作特性(ROC)曲線は、(1-臨床的特異性)(又は「無病誤診率」)に対して臨床的感度(又は「有病正診率」)をプロットするものであり、且つ、診断試験の感度及び特異性を判定するために慣例的に使用される。受信者動作特性(ROC)曲線は、蛍光比率及び輝度閾値の各セットに関する記憶された分類結果を使用して算出され;前記ROC曲線下の面積は、蛍光比率閾値、第1の蛍光輝度閾値、第2の閾値蛍光輝度閾値、又はそれらの任意の組み合わせの値に対する最適な設定を決定するために、蛍光比率閾値及び蛍光輝度閾値の各セットに対して比較される。
【0233】
この例において、1つの閾値(即ち、蛍光比率閾値又は蛍光輝度閾値)が一度に変動し、一方で他の閾値は、生物試料のセットに関する画像化データと病理研究所データ(又は生物活性の他の独立した判定)との比較に基づいて最も正確な閾値を生成するべく固定されたまま保持されている。受信者動作特性(ROC)曲線は、異なる蛍光比率閾値及び/又は輝度閾値での画像分析からの予測を、例えば病理研究所結果と比較することによって生成される。
【0234】
幾つかの実施形態において、閾値最適化アルゴリズムは完全に自動の様式で実行される。幾つかの実施形態において、アルゴリズムは半自動様式で実行される。幾つかの実施形態において、アルゴリズムは手動様式で実行される。
【0235】
本明細書に記載されるアルゴリズムは、レシオメトリック蛍光表示体を使用して対象の生物活性を検出するための開示されたレシオメトリック画像化方法の、臨床的(又は非臨床的)感度(又は「有病正診率」)、特異性(又は「無病正診率」)、及び全体的な予測精度を改善するために、個々に又は組み合わせで使用される。幾つかの例において、感度は、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%である。幾つかの例において、特異性は、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%である。当業者は、感度及び特異性が各々、これら範囲内の任意の値を個別に有し得ること、例えば、感度は92%であり且つ特異性は94%であり得ることを、認識する。幾つかの例において、感度及び/又は特異性は、検出される生物活性(又は相関された疾患状態)の型に依存する。例えば、感度及び/又は感度は、検出されている癌の特定の型に応じて変動し得る。
【0236】
後述の実施例において、本明細書に開示される画像処理アルゴリズムは、国立衛生研究所により開発されたオープンソースのImageJソフトウェアを使用して実施されているが、当業者によって認識されるように、これらは他の様々なプログラミング言語(例えば、C、C++、Java(登録商標)、Fortran、Lua、Visual Basicなどを含むがこれらに限定されない)、及びソフトウェアパッケージ(例えば、Cell Profiler、Icy、LabVIEW、MatLab(Mathworks, Natick, MA)などを含むがこれらに限定されない)の何れかを使用しても実施される。幾つかの実施形態において、本明細書に開示される画像処理アルゴリズムは、それらがより迅速に実行され、コンピュータメモリーをあまり使用せず、且つ安価なプロセッサ上で実行されるように、アルゴリズムのパフォーマンスを促進するカスタムソフトウェアコードを使用して潜在的に実施され得る。
【0237】
コンピュータシステム
【0238】
1つ以上のプロセッサが、本明細書に開示される画像処理方法及びアルゴリズムを実施するために使用される。1つ以上のプロセッサは、中央処理装置(CPU)、映像処理ユニット(GPU)、汎用処理装置、又はコンピューティングプラットフォームなどのハードウェアプロセッサを含み得る。1つ以上のプロセッサは、様々な適切な集積回路、マイクロプロセッサ、論理回路などの何れかで構成され得る。本開示はプロセッサに対する言及と共に記載されるが、他のタイプの集積回路及び論理回路も適用可能であり得る。プロセッサは任意の適切なデータ演算能力を有し得る。例えば、プロセッサは、512ビット、256ビット、128ビット、64ビット、32ビット、又は16のビットのデータ演算を実行することができる。1つ以上のプロセッサは、シングルコア又はマルチコアプロセッサ、或いは並列処理用に構成された複数のプロセッサでもよい。
【0239】
1つ以上のプロセッサ、或いは蛍光画像化システム自体は、より大きなコンピュータシステムの一部であり、及び/又は、画像データ及び予測結果の送信と共有を促進するために通信インターフェースの補助によりコンピュータネットワーク(「ネットワーク」)に動作可能に接続され得る。ネットワークは、ローカルエリアネットワーク、イントラネット、及び/又はエクストラネット、インターネットと通信するイントラネット及び/又はエクストラネット、或いはインターネットであり得る。場合によってはネットワークは、電気通信及び/又はデータのネットワークである。ネットワークは、場合によってはクラウドコンピューティングなどの分散コンピューティングを可能にする、1つ以上のコンピュータサーバーを含み得る。ネットワークは、場合によってはコンピュータシステムの補助により、ピアツーピア・ネットワークを実施することができ、これは、コンピュータシステムに連結されたデバイスが、クライアント又はサーバーとして作動することを可能にし得る。
【0240】
コンピュータシステムはまた、メモリ又はメモリ場所(例えばランダムアクセスメモリ、読み取り専用メモリ、フラッシュメモリ)、電子記憶装置(例えばハードディスク)、1つ以上の他のシステムと通信するための通信インターフェース(例えばネットワークアダプタ)、及び、キャッシュ、他のメモリ、データ記憶装置、及び/又は電子ディスプレイアダプタなどの周辺機器も含み得る。メモリ、記憶装置、インターフェース、及び周辺機器は、例えば、マザーボード上で見出されるように、通信バスを介して、1つ以上のプロセッサ、例えばCPUと通信することができる。記憶装置は、データを記憶するためのデータ記憶装置(又はデータリポジトリ)であり得る。
【0241】
1つ以上のプロセッサ、例えばCPUは、一連の機械可読命令を実行し、これはプログラム(又はソフトウェア)で具体化される。この命令はメモリ場所に記憶される。命令は、本開示の方法を実行するようにCPUを引き続きプログラムする或いはそのように構成する、CPUに向けられる。CPUによって実行される操作の例は、フェッチ、デコード、実行、及びライトバックを含む。CPUは集積回路などの回路の一部であり得る。システムの1つ以上の他のコンポーネントを回路に含めてもよい。場合によっては、回路は特定用途向け集積回路(ASIC)である。
【0242】
記憶装置は、ドライバ、ライブラリ、及び保存されたプログラムなどのファイルを記憶する。記憶装置は、ユーザーデータ、例えばユーザー指定の嗜好性、及びユーザー指定のプログラムを記憶する。コンピュータシステムは、場合によっては、イントラネット又はインターネットを通じてコンピュータシステムと通信状態にあるリモートサーバー上に位置付けられるなど、コンピュータシステムの外部にある1つ以上の追加のデータ記憶装置を含み得る。
【0243】
開示された画像処理アルゴリズムなどの、本明細書に提供される画像処理方法の幾つかの態様は、例えばメモリ又は電子記憶装置など、コンピュータシステムの電子記憶場所に記憶された機械(例えばプロセッサ)実行可能なコードとして実施される。機械実行可能又は機械可読コードは、ソフトウェアの形で提供される。使用中に、コードは1つ以上のプロセッサによって実行される。場合によっては、コードは記憶装置から検索され、1つ以上のプロセッサによる即時のアクセスのためにメモリに記憶される。場合によっては、電子記憶装置は排除され、機械実行可能な命令がメモリに記憶される。コードは、コードを実行するように適合された1つ以上のプロセッサを有する機械との使用のために事前にコンパイルされ且つ構成され、或いは実行時にコンパイルされ得る。コードは、事前にコンパイルされた又はアズコンパイルされた(as-compiled)様式でのコードの実行を可能にするために選択される、プログラミング言語で供給され得る。
【0244】
この技術の様々な態様が、典型的に一種の機械可読媒体に記憶される機械(又はプロセッサ)実行可能コード及び/又は関連データの形で、「製品」又は「製造用品」として考慮され得る。機械実行可能コードは、メモリ(例えば、読み取り専用メモリ、ランダムアクセスメモリ、フラッシュメモリ)などの電子記憶装置に、又はハードディスクに記憶される。「記憶」型の媒体は、様々な半導体メモリチップ、テープドライブ、ディスクドライブなどの、コンピュータやプロセッサの有形メモリ、或いはその関連するモジュールの何れか又は全てを含み、これらは、本明細書に開示される画像処理方法及びアルゴリズムをコードするソフトウェアに対して任意の時点で非一時的な記憶を提供することができる。
【0245】
ソフトウェアコードの全て又は一部が時折、インターネット又は様々な他の電気通信ネットワークを介して通信される。そのような通信は、例えば、1つのコンピュータ又はプロセッサから別のものへのソフトウェアのローディング、例えば、管理サーバー又はホストコンピュータからアプリケーションサーバーのコンピュータプラットフォームへのソフトウェアのローディングを可能にする。故に、ソフトウェアでコードされた命令を伝えるために使用される媒体の他のタイプは、有線及び光地上通信線ネットワークを介した、及び様々な大気リンク(atmospheric link)上での、ローカルデバイス間の物理インターフェースにわたって使用されるものなどの、光波、電波、及び電磁波を含む。有線又は無線リンク、光リンクなどの、そのような波を運ぶ物理要素も、本明細書に開示される方法を実行するためのソフトウェアでコードされた命令を伝える媒体として考慮される。本明細書で使用されるように、非一時的で有形の「記憶」媒体に制限されない限り、コンピュータ又は機械「可読媒体」などの用語は、実行のためにプロセッサに命令を提供することに関与する媒体を指す。
【0246】
コンピュータシステムは典型的に、例えば画像化装置によりキャプチャされた画像を提供するための電子ディスプレイを含むか、或いはそれと通信状態にあってもよい。ディスプレイは典型的に、ユーザーインターフェースを提供することもできる。UIの例は、限定されないが、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)、ウェブベースユーザーインターフェースなどを含む。
【実施例0247】
これら実施例は例示目的のためだけに提供され、本明細書に提供される請求の範囲を制限するものではない。
【0248】
実施例1-ヒトにおけるレシオメトリック画像化
研究設計:レシオメトリック画像化を、手術を受ける原発性で非再発性の乳癌を患う女性において、第1相の非盲検の用量漸増研究の一部として実行した。研究は、1mgの投与量で始まる3+3のコホート拡張設計を使用する用量漸増相に対して5の投与コホート、その後、投与群の各々に観察される蛍光及び安全性のデータの特徴に基づいて第6の追加のコホートを含んでいた。追加のコホートを、手術及び画像化の前の異なるSDM-25(AVB-620)投与時間にて蛍光特徴と比較した。患者は、乳腺腫瘤摘出/乳房切除術及びセンチネルリンパ節生検/腋窩切開処置を受ける2~20時間前にSDM-25の注入を受けた。手術野から得られた画像、同様に、露出された原発性腫瘍を含む切除後の外科試料に対し、画像解析を行った。画像化結果を組織病理学データと相関させるために病理報告を得た。SDM-25を、静脈内(IV)注入を介して投与し、その後、標準の生理食塩溶液で流した。コホート1~4へと登録された被験体は、外科手術の12~20時間前(前日)に腹腔内(IP)注射を受けた。拡張コホートの被験体は、外科手術を受ける2~12時間前(同日)或いは12~20時間前(前日)にSDM-25を受けた。
【0249】
画像キャプチャ:研究スポンサーから画像化システムを得て、3つの空間的に登録された画像を同時に記録する三眼カメラシステム(three-camera system)を利用した。1つ目はカラーカメラであり、その他2つのカメラは蛍光を画像化するために使用される。画像化システムは4つのリアルタイム画像を表示する:色が鮮明な視野画像、Cy5染料蛍光画像、Cy7染料蛍光画像、及び、2つの蛍光画像から生成されたCy5/Cy7比率画像。背景画像(励起光が消される)を試料の画像化前に取得した。画像露光時間は投与量により変動し、カメラセンサのダイナミックレンジを満たすように調整された。初期の手術野、残存腫瘍ベッド、及び腋窩の内容物からインビボ画像を得た。外科切除の後、多数の角度から、原発性腫瘍、マージン試料、及び全てのリンパ節の多くの画像を集めた。
【0250】
画像分析:記憶された切除組織の画像を手術後に解析した。Cy5及びCy7の画像をバックグラウンド控除し、これを使用してCy5/Cy7比率画像を生成した。腫瘍領域(即ち、関心領域(ROI))を、高い蛍光比率を示す領域として同定した。対象の組織を含む画像の領域のみが分析されるように、ROIを引いた。コホートにわたる定量化及び比較のために、蛍光輝度の読み取り値を曝露長さにより標準化した。ROIからの曝露補正蛍光輝度値(exposure corrected fluorescence intensity values)を使用して、最終のROI比率画像を生成した。
【0251】
図7に示されるようにユーザー定義の閾値に基づいてROIを自動的に生成する。代替的に、ユーザーは、Cy5/Cy7蛍光比率及び/又は輝度に基づいてROIを手動で選択する。
【0252】
ヒト組織サンプルの病理学解析:異なる研究場所にある病理部が、地方部門のプロトコルに従って外科切除された組織を検査した。組織学的分類(例えば、侵襲性腺管癌、侵襲性小葉癌、腺管癌など)を含む腫瘍サイズ、等級、結節点状態の他、エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)、及びHER2受容体状態に関するデータを集めた。最終の病理報告のデータを上述の画像解析から導かれた結果に一致させることにより、画像化及び病理学的相関を行った。
【0253】
結果:Cy5及びCy7両方の蛍光輝度は、
図8A-
図8Bに示されるように、切除された乳腺腫瘤摘出組織及びリンパ節の両方におけるSDM-25の投与により増大した。
図8A:原発性乳腺腫瘤摘出試料;投与量に対する切除された原発性試料組織に関する平均Cy5及びCy7輝度のプロット。全体の切除試料から値を生成した。
図8B:陰性のリンパ節パケット;研究における各コホートの陰性のリンパ節に関する平均のCy5及びCy7輝度のプロット。全体の切除試料から値を生成した。エラーバーは標準偏差を示す。蛍光比率データのみを使用すると、悪性原発性腫瘍に関する蛍光比率データは、SDM-25の同日及び前日の投与の両方に関する隣接組織のデータとは大きく異なっていた(
図9)。
【0254】
実施例2-蛍光閾値に基づく診断法
癌が生じ得る場所の画像解析に基づく予測を、Cy5/Cy7蛍光比率及びCy5輝度が実施例1に記載されているように集められた原発性試料の画像に対して高かった領域を選択することによって行った。閾値より高い領域に関する最小規模判定と組み合わせたCy5/Cy7比率閾値及び/又はCy5輝度閾値の使用に基づく自動予測を、国立衛生研究所により開発されたオープンソースImageJソフトウェアを使用して生成した。
図10にプロセスは、画像解析を使用してROIを生成する。代替的に、ユーザー選択されたROIを使用して、
図11に示されるようなCy5/Cy7蛍光及び/又はCy5輝度に基づく予測を生成することができた。Cy5/Cy7比率及び/又はCy5輝度の所定の閾値に関して、陽性又は陰性の予測を行う。
図11は、蛍光比率画像及び個別の輝度画像からROIを生成するためのプロセスを概説するフロースキームを示す。前記方法は、蛍光比率閾値、及び/又は、蛍光比率閾値及び個別の蛍光輝度閾値の組み合わせに基づいて、画像マスクを作成する。その後、画像マスクを組み合わせて適用することでROIを生成する。
【0255】
実施例3-蛍光比率値及び蛍光輝度値の両方を使用した診断パフォーマンスの改善
ROC曲線解析:最適なCy5/Cy7蛍光比率閾値、個々の蛍光輝度閾値、及び予測精度を改善するための蛍光輝度及び比率の閾値の組み合わせを判定するために、受信者操作曲線(ROC)解析を使用した。ROC曲線は、(1-臨床的特異性)(又は「無病誤診率」)に対して臨床的感度(又は「有病正診率」)をプロットするものであり、且つ、診断試験の臨床的感度及び特異性を判定するために慣例的に使用される。
図12のフロースキームに示されるように、画像化された組織サンプルが癌に対し陽性又は陰性であることを試験する上述の画像解析予測を使用して、ROC曲線を生成した。
【0256】
原発性腫瘍の例:
図11及び
図12に示されるように、ヘマトキシリン-エオジン(H&E)染色された組織切片の病理学者評価を含んでいたゴールドスタンダードの病理試験結果を伴うユーザー選択されたROIを使用して、原発性試料画像の画像解析からの予測を比較することにより、ROC曲線を生成した。ROIにおけるCy5/Cy7比率及びCy5輝度を異なる閾値と比較し、病理予測を生成した。高い蛍光比率及び高い輝度領域の組み合わせ(陽性と仮定-真陽性又は偽陰性の何れかを予測)並びに原発性試料の領域に隣接する低いCy5/Cy7比率及び低いCy5輝度(陰性と仮定-真陰性又は偽陽性の何れかを予測)に対する、閾値に基づく病理予測から、ROC曲線を生成した。これらの仮定は病理研究所試験と一致していた。結果を
図13A-
図13Cに示し、そこでは、最高の予測精度(ROC曲線に対する最高の「曲線下面積」(AUC))がCy5/Cy7蛍光比率及びCy5輝度の両方を利用したことが示されている(
図13C)。
図13A:蛍光比率閾値の変動により算出されたROC曲線。全ての投与時間(即ち、同日、前日)の画像データをまとめて解析した。曲線下面積(AUC)=0.86。
図13B:蛍光比率閾値の変動により算出されたROC曲線、一方で蛍光輝度閾値は、値I=80で固定されたまま保持された;AUC=0.98。元の8ビットの輝度画像を16ビットの画像に拡大し、500msの露光に対し輝度を標準化した。
図13C:蛍光輝度閾値の変動により算出されたROC曲線、一方で蛍光比率閾値は、(0~255の8ビットの画像データ規模上で)値R=60で固定されたまま保持された;AUC=0.99。この場合、蛍光比率及び輝度閾値の組み合わせを使用して最高の精度が達成された。
【0257】
リンパ節の例:
図7、
図10、及び
図12に例示される画像解析プロセスを使用してリンパ節サンプルについて
図14A-
図14Bに示されるROC曲線を生成し、組織が所定の閾値に対し陽性又は陰性であったかを予測した。
図14A:変動される蛍光比率閾値の変動により算出されたROC曲線;I≧10に設定された輝度閾値;AUC=0.83。
図14B:蛍光比率閾値の変動により算出されたROC曲線;I≧60に設定された輝度閾値;AUC=0.95。この場合、蛍光比率及び輝度閾値の組み合わせを使用して最高の精度が達成された。
【0258】
ROC曲線を、個々の患者レベルでも生成する。
図7、
図10、及び
図12に例示される画像解析プロセスのワークフローを使用して
図15A-
図15Cに示される個々の患者のROC曲線を生成し、組織が所定の閾値に対し陽性又は陰性であったかを予測した。画像化されたエクスビボ組織サンプルは、原発性試料、リンパ節、及びマージンを含んでいた。
図15A:個々の患者に対する蛍光比率閾値ROC曲線(I≧5の蛍光輝度閾値設定)、AUC=0.85。
図15B:蛍光輝度閾値ROC曲線(R≧5に設定される蛍光比率閾値)、AUC=0.83。
図15C:個々の患者に対する蛍光比率及び蛍光輝度のROC曲線の組み合わせ;蛍光輝度閾値をI=85で固定されたまま保持されるにつれ蛍光比率閾値が増大、AUC=1.00。この場合、蛍光比率及び輝度閾値の組み合わせを使用して最高の精度が再び達成された。
【0259】
臨床研究:手術の前日(DBD)に8mgのSDM-25を患者に投与した。画像化及び解析の方法は上述の方法に基づいた。
【0260】
臨床研究からの乳腺腫瘤摘出表面及びマージン切除(Shaves)の例:
図7、10、及び12に例示される画像解析プロセスを使用して外科的腔から得られる、切除された乳腺腫瘤摘出表面及び切除マージンサンプルに対してROC曲線を生成し、組織が所定の閾値に対して陽性又は陰性であったかどうかを予測した。全ての試料及び表面データを病理結果と相関させた。精度の測定値である、曲線下面積(AUC)結果を、以下の表1に示す。
【0261】
【0262】
表1に例示されるこれら組織試料の両方において、最高の診断パフォーマンス又は精度が、蛍光比率及び輝度閾値の組み合わせを使用して達成された。
【0263】
実施例4-SDM-25を投与した患者から切除されたヒト乳癌における予測された癌性活性を表示する画像
本方法の目的は癌の手術中又は周術期の存在を視覚的に示すことであった。研究からの画像の例を
図16に示す。Cy5/Cy7比率及びCy5輝度が特定の閾値より上である画像の領域を、上述の方法を使用して判定し、緑色に着色する。注入後の日に得られた画像に対し使用されるものと異なるCy5/Cy7比率閾値を、注入と同じ日に得られた画像に対して使用した。比率及び輝度の閾値の両方は、カメラから生成された0~255のピクセル値の8ビットの画像表示に基づく。表示ソフトウェアにおけるCy5閾値スライダーを移動させることにより変換させることなく、Cy5輝度閾値が入力され得る。比率閾値(8ビット)をパーセンテージ(100×(閾値/255))に変換し、ソフトウェアビューアーにおいてスライダー標識されたバックグラウンドを移動させることにより入力した。Cy5輝度閾値は、露光又は輝度の差異について補正されなかった。
【0264】
実施例5-SDM-25を投与した患者から切除された原発性乳腺腫瘤摘出試料における予測された癌性活性を表示する画像
陽性の乳腺腫瘤摘出表面マージンの例。癌に対し陽性であると病理学によって実証される、外科切除された原発性乳腺腫瘤摘出試料の表面の画像の例を、
図19A-
図19Bに示す。Cy5/Cy7比率及びCy5輝度が特定の閾値より上である画像の領域を、上述の方法を使用するImageJソフトウェアして判定し、再び薄い灰色に着色する。矢印は、病理学により実証された癌を有する表面に相当する閾値より上の領域を指し示す。この実施例において、Cy5輝度閾値を、ImageJソフトウェアを使用して露光について調整した。
【0265】
図19Aと
図19Bは、8mgの用量のSDM-25を投与した患者からの原発性試料画像の表面マージンの例を提供し、画像化は注入後の日に実行された。薄い灰色の領域は、R≧170のCy5/Cy7蛍光比率閾値及びI≧50のCy5輝度閾値を示す。矢印は、病理学により実証された癌を有する表面に相当する閾値より上の領域を指し示す。閾値は記載された方法を使用して判定された。
【0266】
実施例6-乳癌のマウスモデルにおけるレシオメトリック画像化
インビボのマウスモデル:造影剤評価のために使用されるリンパ性転移及び頸部リンパ節転移のマウスの耳の腫瘍モデルを、黒色腫モデルについて記載された方法の改変に基づいて発達させた(Hoshida, et al. (2006), “Imaging Steps of Lymphatic Metastasis Reveals That Vascular Endothelial Growth Factor-C Increases Metastasis by Increasing Delivery of Cancer Cells to Lymph Nodes: Therapeutic Implications”, Cancer Res. 66:8065-75)。ATCC(CRL-2539(商標))からの転移性4T1腫瘍細胞を成長させ、DPBS/Matrigel(商標)(1:1vol)に懸濁させ、その後、メスのBALB/cマウスにおいて、ケタミン-キシラジン麻酔の下で耳介軟骨より上の右耳耳介上に皮下注射した(4×105腫瘍細胞/50mL/マウス)。耳の腫瘍の成長は、癌細胞のリンパ節への移動による頸部リンパ節転移に従った。耳の腫瘍細胞移植の17~20日後(4T1腫瘍モデル)、耳に腫瘍のあるマウスを使用してSDM-25を試験した。腫瘍のあるマウスを無作為に選択し、回転尾部注射器を使用して拘束し(Braintree Scientific, Inc., MA)、SDM-25溶液(60μMのSDM-25;100μL/~20グラムのマウス、即ち、体重1kgにつき1.8mg)を静脈内(尾静脈)投与した。投与後、腫瘍のあるマウスを各々、その割り当てられた収容ケージに戻し、研究前に制御された環境条件(自由裁量で食物と水)下で保存した。30 4T1腫瘍のあるマウスの合計を、SDM-25投与の3時間(N=9)及び6時間(N=21)後に検査した。
【0267】
画像化手順及びハードウェア:原発性腫瘍及び頸リンパ節を、ケタミンHCl/キシラジンHCl(100mg/kgのケタミン-10mg/kgのキシラジン)の混合物の腹腔内投与で末期に麻酔された腫瘍のあるマウスにおいてインビボで画像化した。各マウスは、同側性(腫瘍のある耳側)及び対側性の頸リンパ節の鈍的剥離を受けた。手術後、6つの主要な目視可能な表面の頸リンパ節(同側性及び対側性の節を含む)を同定し、生理食塩水(0.9%の塩化ナトリウム灌注USP、B. Braun Medical Inc., Irvine, CA)により湿らせて、以下を含む様々なシステムを使用して画像化した:Hamamatsu(Hamamatsu Photonics, K.K., Systems Division, Shizuoka-Pref, Japan)からの画像取得用のHCImageソフトウェアシステムに連結されたSZX10蛍光立体顕微鏡(Olympus Optical, CO, Ltd, Tokyo, Japan);及び、画像取得用のSpotソフトウェア5.0(SPOT(商標)Imaging Solutions, Sterling Heights, MI)にインターフェースされる、カスタマイズされたNavitar画像化システム(Navitar Inc, Rochester, NY)。上述の蛍光画像化システムの全てが、Cy5フルオロフォアを励起するために~630+/-20nmで発行するLED光源、及び同じ視野のCy5及びCy7の輝度画像を別々にキャプチャするための2つの発光フィルターを備えていた。
【0268】
診断上の蛍光画像解析:耳に腫瘍のあるマウスへのSDM-25投与後に、頸リンパ節を画像化し、解析した。腫瘍のあるマウス各々について、同側性及び対側性の頸リンパ節両方を含んでいるCy5及びCy7の蛍光画像を集め、これを使用してCy5/Cy7蛍光比率画像を作成した。画像化処理プログラムImageJを使用してCy7画像でCy5画像を割ることによって比率画像を作成した。場合によっては、輝度重み付き擬色比率画像(intensity-weighted pseudo-color ratio image)を、表示目的のために反射光画像と組み合わせた。楕円又は多角形の関心領域(ROI)を各頸リンパ節のために引き、ROIにおける個々の平均された蛍光輝度を測定された。比率が検査されたリンパ節において均一であった場合、全体のリンパ節をROIに使用した。画像化された頸リンパ節上に、(リンパ節領域の>5%であることを要求される)高い蛍光比率の明確に定められた領域として定められる「ホットスポット」があった場合、その後、より小さなホットスポットROIを解析のために選択した。平均Cy5/Cy7蛍光比率を各ROIから算出した。
【0269】
比率画像の表示のために、露光補正したCy5波長蛍光画像を、露光補正したCy7発光波長で割り、15を掛けると、比率画像に関する値は、後述のように8ビットの範囲を満たし、0~225の間に存在する。その後、各輝度レベルに対し割り当てられたRGB値を含むルックアップテーブルを使用し、比率画像を疑似着色した。色調又は色が比率を表し且つ明るさが蛍光輝度を表わす画像を結果としてもたらすCy5又はCy7の波長の蛍光画像に、疑似着色画像を掛けることによって、疑似着色比率画像を蛍光輝度に対しスケーリングした。
表示比率画像値=15*(ICy5/TCy5)/(ICy7/TCy7)
式中:
ICy5=Cy5波長蛍光画像輝度
ICy7=Cy7波長蛍光画像輝度
TCy5=Cy5露光時間
TCy7=Cy7露光時間
【0270】
染色された頸リンパ節セクションのH&E解析から判定されるような、算出された蛍光発光比率とリンパ節の病理学的状態(癌細胞の存在/不在)との比較を使用して、臨床的感度及び特異性を評価した。その後、陰性(無病誤診率)の偽陽性分画に対して陽性(有病正診率)の真陽性分画をプロットする、受信者動作特性(ROC)曲線を構築して、SDM-25の臨床的感度及び特異性を判定した。ROC曲線解析のために、データを、蛍光発光比率の閾値に基づいて陽性及び陰性の二通りの分類へと分割した。
【0271】
画像化された頚部前哨リンパ節からの蛍光発光比率データ及び閾値に基づく予測をと比較することによって、真陽性、偽陽性、真陰性、及び偽陰性を判定し、癌細胞の存在(陽性)及び不在(陰性)は、画像化された頸リンパ節のH&E染色した組織切片を使用して病理学者により判定される。
【0272】
閾値を、低い値から高い値へと徐々に調節して、(1,1)又は全ての陽性から(0,0)又は全ての陰性までの完全なROC曲線を得た。実際、データを選別し、且つ、検査されたリンパ節の各々に対する実際の比率値より直ぐ上の閾値を使用することにより、ROC曲線を生成した。ブール論理を使用するエクセルスプレッドシートを使用して、ROC曲線における各点の真陽性、偽陰性、真陰性、及び偽陽性を算出した。感度は有病正診率として算出された一方、特異性は無病誤診率を引いたものとして算出された。
【0273】
組織病理学:画像化の後、各マウスを末期に麻酔をかけ、頸リンパ節を採取し、10%の中性ホルマリンに固定した。末期に麻酔をかけられたマウスを、心臓内のケタミン-キシラジンの過剰投与によって直ちに屠殺した。一晩のホルマリン固定後、頸リンパ節を組織学のために処理して、蛍光/癌の相関を評価した。頚部前哨リンパ節のパラフィン切片(5μm)を得て、Zyagen (San Diego, CA)及びHistoTox Labs, Inc. (Boulder, CO)によって行われる慣例的なヘマトキシリン&エオシン(H&E)染色のために処理した。頸リンパ節組織における転移性癌細胞の存在/不在の古典的判定である外科病理学評価を、VA San Diego Health Care System (San Diego, CA)の公認解剖学者及び臨床病理学者によって実施した。H&E染色した頸リンパ節切片を検査し、Nikon Eclipse Microscope (Tochigi Nikon Precision Co., Ltd., Tochigi, Japan)を使用して盲検した。H&E切片における転移性癌細胞の有無を、標準の組織病理学基準の適用により判定した。
【0274】
実施例7-マウス転移性リンパ節モデルにおけるインビボの画像診断
インビボで活性化され且つリンパ節において乳癌を視覚化するSDM-25の能力を評価するために、リンパ節モデルにおけるマウス転移性乳癌を使用した。実験プロトコルの概要を
図17A-
図17Dに示す。癌細胞を免疫応答性マウスの耳に移植し、~2週間後に頸リンパ節に転移させた(
図17A)。SDM-25を投与し、3-6時間後、マウスに麻酔をかけ、頸リンパ節を外科的にさらし、画像化した(
図17B-
図17C)。最後に、画像化されたリンパ節を除去し、H&E病理学的評価のために処理し、画像化及び病理学の結果を比較した(
図17D)。第1のモデルにおいて、耳介上に転移性4T1乳癌腫瘍がある30匹のメスのBALB/cマウスに、SDM-25(6nmol)を、尾静脈注射を介して静脈内投与した。画像化投与量を、2~24nmol/マウスの研究に及ぶ投与量からに確立させた。6nmolの投与量が悪性と非悪性のリンパ節間の最大のCy5/Cy7蛍光比率の差異をもたらしたが、Cy5及びCy7両方の画像において許容可能な蛍光輝度シグナル-バックグラウンド比を今なおもたらしている。マウスの背側の前面像及び外科的にさらされた頸リンパ節の、手術前の蛍光画像化を、3-6時間後に実行した。手術前の画像は、耳に移植された原発性腫瘍を示す。重ねられた蛍光比率画像を含む、及びそれを含まない、代表的な白黒画像を、
図18Aに示す。画像は、病理学的に確認された原発性腫瘍に、露出された身体の残りの部分と比較して高いCy5/Cy7蛍光比率及び輝度があることを示している。手術後、60のリンパ節の蛍光比率画像を解析し、ゴールドスタンダードH&E組織病理学試験の結果と比較し、画像化精度を評価して、結果を
図18Bに示す。診断の感度及び特異性はそれぞれ、98%の最高精度をもたらした6.7-7.4からの比率閾値を使用して、96%及び100%であった。1匹のマウスの代表的な画像を
図18Cに示す。
【0275】
癌のないリンパ節と転移性のリンパ節との間のCy5/Cy7蛍光比率の差異の、動力学及び安定性を、SDM-25の投与の1~48時間後に評価した。結果を
図18Dに示す。有意な蛍光比率の差異を1時間で観察した(p<0.02、t検定)が、3-6時間で最大になり、24時間で安定した。この有用な時間窓は、0.24時間のマウスにおけるSDM-25血漿内半減期よりもかなり大きい。48時間で、比率の差異は今なお著しい(p<0.01、t検定)が、主として非関与のリンパ節におけるCy5/Cy7比率の増加が原因で減少する。この結果は、r9e9レシオメトリックACPPに対し観察されたものと大きく異なり、これは、2時間で最大コントラストを備え、24時間で悪性組織と非悪性組織との差異を示さないと考えられる。
【0276】
本発明の好ましい実施形態が本明細書中で示され且つ記載されてきたが、このような実施形態はほんの一例として提供されるものであることは、当業者に明らかであろう。多数の変形、変更、及び置き換えは、本発明から逸脱することなく、当業者によって現在想到されるものである。本明細書に記載される本発明の実施形態の様々な代案が、本発明の実施において任意の組み合わせで利用される得ることを理解されたい。以下の特許請求の範囲は本発明の範囲を定義するものであり、この特許請求の範囲及びその同等物の範囲内の方法及び構造は、それにより包含されることが、意図されている。