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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102287
(43)【公開日】2023-07-24
(54)【発明の名称】多層熱可塑性樹脂シート
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20230714BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20230714BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002675
(22)【出願日】2023-01-11
(31)【優先権主張番号】P 2022002602
(32)【優先日】2022-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】502038989
【氏名又は名称】ベスパック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】高茂 功
(72)【発明者】
【氏名】根田 祐介
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AD05
3E086BA04
3E086BA15
3E086BB05
3E086BB42
3E086BB85
3E086CA01
3E086DA06
4F100AK03E
4F100AK04C
4F100AK07B
4F100AK07D
4F100AK21A
4F100AK47A
4F100AL02B
4F100BA05
4F100BA06
4F100BA07
4F100CB00B
4F100CB00E
4F100EH20
4F100EH23
4F100GB16
4F100JC00C
4F100JD03A
4F100JJ04
4F100JK10
4F100JL11B
(57)【要約】
【課題】
従来の化石燃料から得られる原料から製造された樹脂シートと機械的特性、特に耐寒衝撃性で遜色ない植物由来ポリエチレン樹脂含有多層熱可塑性樹脂シートであり、さらに食品等の容器に必要な酸素透過度が低い多層熱可塑性樹脂シートを提供すること。
【解決手段】
1層又は2層の酸素バリア性樹脂層の両側にそれぞれ接着剤層を介して、植物由来ポリエチレンを含むコア層を有し、該コア層の外側に植物由来ポリエチレンを含まないスキン層を有する多層熱可塑性樹脂シートであり、ポリプロピレンを80質量%含み、該コア層は、ブロックポリプロピレンを25質量%以上含み、該コア層に対する該スキン層の厚さの比が10乃至45%であり、該多層熱可塑性樹脂シートの酸素透過度が20℃、65%Rhにおいて2.0cc/m・day・atm以下である多層熱可塑性樹脂シート。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素バリア性樹脂層を有し、該酸素バリア性樹脂層の両側に接着剤層を介して、
植物由来ポリエチレンを含むコア層を有し、
該コア層の両方の外側に植物由来ポリエチレンを含まないスキン層を有し、
該スキン層の一方若しくは両方の外側に、接着剤層を有し、該接着剤層の外側にポリオレフィン系樹脂層を有してもよい、
全体で7層以上11層以下の層からなる多層熱可塑性樹脂シートであって、
該酸素バリア性樹脂層の両側の接着剤層と該スキン層の外側の接着剤層とは同一であっても異なってもよく、
該スキン層は、プロピレン・ホモポリマー及び/又はブロックポリプロピレンを含むポリプロピレンを80質量%以上含み、
該コア層は、ブロックポリプロピレンを25質量%以上含み、
該コア層の厚さに対する該スキン層の厚さは、10乃至45%の厚さであり、
該多層熱可塑性樹脂シートの酸素透過度が20℃、65%Rhにおいて2.0cc/m・day・atm以下である多層熱可塑性樹脂シート。
【請求項2】
前記コア層の植物由来ポリエチレンの含有量は、多層熱可塑性樹脂シート全体の1質量%乃至20質量%である、請求項1に記載の多層熱可塑性樹脂シート。
【請求項3】
前記植物由来ポリエチレンが、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体又は該モノマーと他のモノマーとの共重合体からなるバイオマス由来の高密度ポリエチレンである、請求項1に記載の多層熱可塑性樹脂シート。
【請求項4】
前記酸素バリア性樹脂層がエチレン-ビニルアルコールの共重合体又はポリ(メタキシリレンアジパミド)の層である、請求項1に記載の多層熱可塑性樹脂シート。
【請求項5】
前記多層熱可塑性樹脂シートの全体の密度が、0.85乃至1.30g/cmである、請求項1に記載の多層熱可塑性樹脂シート。
【請求項6】
前記多層熱可塑性樹脂シートの全体の厚みが、0.25乃至1.2mmである、請求項1に記載の多層熱可塑性樹脂シート。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の多層熱可塑性樹脂シートからなる容器。
【請求項8】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の多層熱可塑性樹脂シートを共押出成形または共押出ラミネートまたはドライラミネートにより製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物由来ポリエチレンを含む樹脂、より詳細には、植物由来のエチレンを含むモノマー又はモノマー混合物が重合してなる植物由来のポリエチレンを含む樹脂層及び酸素バリア性樹脂層を備えた多層熱可塑性樹脂シートに関し、特に、耐寒衝撃性と酸素透過性に優れる多層熱可塑性樹脂シート、その多層熱可塑性樹脂シートで成形される成形品及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物由来の樹脂は、二酸化炭素と水から光合成された有機化合物由来の樹脂であり、これを利用しても再度二酸化炭素と水になる、いわゆるカーボンニュートラルな再生可能エネルギー源である。従来の化石燃料由来の樹脂から製作された成形品と比較すると、環境負荷を小さくすることができる。つまり、化石燃料由来の樹脂と合わせて植物由来の樹脂を使用することで、化石燃料の使用量を削減することができる。
そこで、環境負荷を低減するために、樹脂の一部を、化石燃料由来の樹脂から、植物等のバイオマス資源由来の樹脂に置き換えることが検討されている。ただし、植物由来の樹脂を使用しても、少なくとも従来の化石燃料由来の樹脂と比較して、耐寒衝撃性等の機械的特性で遜色ない成形品を得る必要がある。
【0003】
一方、食品の品質保持には、酸化防止が重要であり、酸素透過度の低い包装材料が用いられる。酸素透過度の低い樹脂成分として用いられるエチレン-ビニルアルコール系共重合体又はポリ(メタキシリレンアジパミド)は、優れたガスバリア性を有することから、食品包装材料に用いられている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に示されるように、エチレン-ビニルアルコール系重合体層、および化石燃料由来ポリエチレン系樹脂層を含む製品において、原料のポリエチレン系樹脂の一部を植物由来のポリエチレン系樹脂に代えると、積層間接着性が低下し、機械的特性等も低下する傾向がある。
また、特許文献2では、従来の化石燃料由来の樹脂であるブロックポリプロピレンを用いて、耐熱性を有すると同時に、冷凍環境下での耐衝撃性に優れる積層シートを提供することを目的とする発明が示されている。しかし、植物由来の樹脂は使用されておらず、3層以内のシートであり、酸素透過性や耐寒衝撃性で優れたシートが得られたとの記載はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-177531号公報
【特許文献2】特開2021-37748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の化石燃料由来の樹脂から成る多層熱可塑性樹脂シートは、化石燃料由来の樹脂の一部を植物由来の樹脂で置き換えると配合率の上昇により、酸素の透過性と機械的特性が低下し、層間接着強度が低下する。これら課題を解消するためには、各層を厚くすることで対応することもできるが、生産及び加工が困難になることに加え、機械的特性、特に耐寒衝撃性が向上することはない。
そこで本発明は、化石燃料由来の多層熱可塑性樹脂シートの一部を植物由来の樹脂で置き換えても、多層間の接着性を向上させ、多層熱可塑性樹脂シート全体で機械的特性に優
れ、かつ食品等の包装材料に必要な酸素透過度を抑えた多層熱可塑性樹脂シートを提供することを課題とした。機械的特性については、冷凍食品の容器を想定した場合、冷凍での貯蔵、搬送を考慮し、特に耐寒衝撃性に優れる多層熱可塑性樹脂シートを提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、酸素バリア性樹脂層を含めた7層以上の多層構造にすることで酸素透過度を抑制させ、さらに植物由来の樹脂が含有した層と化石燃料由来の樹脂から成る層それぞれの材質を調整し、植物由来の樹脂が含有した層の外側に化石燃料由来の樹脂から成る層を配置させた多層構造にすること及び該2層の厚さの比を適切な値にすることで耐寒衝撃性が向上することを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、本発明は、
1. 酸素バリア性樹脂層を有し、該酸素バリア性樹脂層の両側に接着剤層を介して、
植物由来ポリエチレンを含むコア層を有し、
該コア層の両方の外側に植物由来ポリエチレンを含まないスキン層を有し、
該スキン層の一方若しくは両方の外側に、接着剤層を有し、該接着剤層の外側にポリオレフィン系樹脂層を有してもよい、
全体で7層以上11層以下の層からなる多層熱可塑性樹脂シートであって、
該酸素バリア性樹脂層の両側の接着剤層と該スキン層の外側の接着剤層とは同一であっても異なってもよく、
該スキン層は、プロピレン・ホモポリマー及び/又はブロックポリプロピレンを含むポリプロピレンを80質量%以上含み、
該コア層は、ブロックポリプロピレンを25質量%以上含み、
該コア層の厚さに対する該スキン層の厚さは、10乃至45%の厚さであり、
該多層熱可塑性樹脂シートの酸素透過度が20℃、65%Rhにおいて2.0cc/m・day・atm以下である多層熱可塑性樹脂シート、
2. 前記コア層の植物由来ポリエチレンの含有量は、多層熱可塑性樹脂シート全体の1質量%乃至20質量%である、1に記載の多層熱可塑性樹脂シート、
3. 前記植物由来ポリエチレンが、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体又は該モノマーと他のモノマーとの共重合体からなるバイオマス由来の高密度ポリエチレンである、1に記載の多層熱可塑性樹脂シート、
4. 前記酸素バリア性樹脂層がエチレン-ビニルアルコールの共重合体又はポリ(メタキシリレンアジパミド)の層である、1に記載の多層熱可塑性樹脂シート、
5. 前記多層熱可塑性樹脂シートの全体の密度が、0.85乃至1.30g/cmである、1に記載の多層熱可塑性樹脂シート、
6. 前記多層熱可塑性樹脂シートの全体の厚みが、0.25乃至1.2mmである、1に記載の多層熱可塑性樹脂シート、
7. 1乃至6のいずれか一に記載の多層熱可塑性樹脂シートからなる容器、
8. 1乃至6のいずれか一に記載の多層熱可塑性樹脂シートを共押出成形または共押出ラミネートまたはドライラミネートにより製造する方法、に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の多層熱可塑性樹脂シートとすれば、植物由来ポリエチレンを含む層を厚くするとともに、優れた耐寒衝撃性が得られ、かつ酸素透過度を抑えることができる多層熱可塑性樹脂シートが得られる。
本発明により、スキン層の成分としてポリプロピレンを含有させ、コア層にブロックプロピレンを含有させ、くわえてコア層の厚さに対する該スキン層の厚さが10乃至45%の厚さの範囲にすることで、コア層に植物由来ポリエチレンを含有させたとしても、耐寒衝撃性が優れた多層熱可塑性樹脂シートを得ることができる。
つまり本発明により、植物由来ポリエチレンを多量に含み、化石燃料の使用量を削減することができ、環境負荷を減らすことができる。そして、植物由来のポリエチレンを含んでも従来の化石燃料由来の樹脂と比較して、耐寒衝撃性が優れた多層熱可塑性樹脂シートを得られるため、従来の化石燃料由来の樹脂シートを代替できる。
本発明により、多層熱可塑性樹脂シートの全体の密度が、0.91乃至1.10g/cm又は多層熱可塑性樹脂シートの全体の厚みが、0.25乃至1.2mmであれば、加工がしやすく耐寒衝撃性の優れた多層熱可塑性樹脂シートを得ることができる。
本発明により、多層熱可塑性樹脂シート全体で酸素の透過を抑え、耐寒衝撃性の優れた食品等の容器とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の多層熱可塑性樹脂シートの一態様の断面図である。
図2図2は、「容器の耐寒衝撃性評価」で使用した容器の形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一態様に関して詳細を説明する。
[酸素バリア性樹脂層]
酸素バリア性樹脂層は、少なくとも1種の酸素バリア性樹脂を含み、例えば、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリ(メタキシリレンアジパミド)(MXD6)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ナイロン6およびナイロン6,6などのポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、並びに(メタ)アクリル樹脂などが挙げられ、これらの中でも、酸素バリア性としては、EVOH及びMXD6が好ましい。
酸素バリア性樹脂層における酸素バリア性樹脂の含有量は、優れた酸素透過性を得るために60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上、80質量%以上であることがより好ましい。酸素バリア性樹脂層における酸素バリア性樹脂の含有量を60質量%以上とすることにより、酸素バリア性をより向上することができる。
多層熱可塑性樹脂シートにおける酸素バリア性樹脂の含有量は、20質量%以下であることが好ましく、18質量%以下、15質量%以下、13質量%以下、10質量%以下、8質量%以下、5質量%以下であってもよい。
酸素バリア性樹脂は1層でも、複数でもよい。複数の場合は、成分が同一でも異なってもよく、酸素バリア性樹脂層同士が接していても、接着剤層を介して接してもよく、2層の酸素バリア性樹脂層の間に接着剤層以外にオレフィン系樹脂層があってもよい。
【0012】
[酸素透過度]
酸素透過度は、シートの物性値の一つで、1atm(1気圧)の条件下で、シート1mあたり1日に通過する酸素の量を示す。温度や湿度に大きく影響されるため、比較する際は同一環境下でテストする必要がある。単位はcc/m・24h・atmで、値が大きいほど酸素が通過しやすく、小さいほど酸素が通過しにくい。
測定に使用できる装置として、OX-TRAN 1/50 (MOCON社製)がある。この装置は、JIS K7126-2(等圧法)のほかASTM やISOなどの酸素透過度測定規格に準拠している。測定は樹脂シートをテストセルで挟み、一方のテストセルに酸素を流す。その後樹脂シートを拡散透過した酸素は、センサがある他方のセルに導入され、導入された酸素量を酸素透過度に換算している。
多層熱可塑性樹脂シートの酸素透過度は、20℃、65%Rhにおいて2.0cc/m・day・atm以下であり、1.5cc/m・day・atm以下であり、0.7cc/m・day・atm以下であることが好ましく、0.5cc/m・day・atm以下であることがより好ましい。
【0013】
[熱可塑性樹脂]
オレフィン系樹脂は熱可塑性樹脂である。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレ
ン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル等のハロゲン含有樹脂、EVOH、ポリビニルアルコール等のビニルアルコール系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、セルロースエステル系樹脂等があげられる。
【0014】
[ポリプロピレン]
プロピレンの重合体であり、オレフィン系樹脂の熱可塑性樹脂である。ポリプロピレンは、耐熱性がよく、比重が最も小さくて水に浮かぶという特徴を有する。さらに比較的、強度が高く、耐薬品(酸、アルカリを含む)性に優れ、吸湿性が無いといった特長も有している。ポリプロピレンは、共重合の形態において、プロピレン・ホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックポリプロピレンを含む。
【0015】
[プロピレン・ホモポリマー]
ホモポリマーは、プロピレンだけによる単独の重合体である。プロピレンと連鎖移動剤としての水素のみを用いて重合する。剛性、耐熱性、耐薬品性等に優れ、透明性も優れている。
【0016】
[ブロックポリプロピレン]
ブロックポリプロピレンとは、プロピレンからなる重合体ブロックと、プロピレン以外の他のα-オレフィンからなる重合体ブロックを有する共重合体である。さらに、プロピレン・ホモポリマーとEPR(エチレンプロピレンゴム)との混合成分であるインパクトコポリマーも含まれる。包装容器等の機械的特性である衝撃性を考慮する場合には、ブロックポリプロピレンを含有させることが好ましい。
【0017】
[植物由来ポリエチレン]
植物由来ポリエチレンとは、再生可能なバイオマス資源を原料に、化学的または生物学的に合成することで得られるポリエチレンを意味する。植物由来ポリエチレンは、これを焼却処分した場合でも、バイオマスのカーボンニュートラル性から、大気中の二酸化炭素濃度を上昇させないという特徴がある。
植物由来ポリエチレンを含む層には、植物原料から得られたバイオエタノールから重合された植物由来エチレンを用いることが好ましい。植物由来ポリエチレンを含む層には、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるバイオマス由来の高密度ポリエチレンを含んでもよい。
植物由来ポリエチレンの含有量は、環境負荷の観点から下限は多層熱可塑性樹脂シート全体の0.05質量%以上、さらには、0.1質量%以上、0.5質量%以上、1質量%以上含有することが好ましく、さらに3質量%以上、5質量%以上、8質量%以上、10質量%以上含有することができ、機械的特性の観点から含有量の上限は、25質量%以下が好ましく、さらに、20質量%以下、18質量%以下、15質量%以下、13質量%以下、10質量%以下とすることができる。
【0018】
[ポリエチレン]
上記植物由来ポリエチレンは、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE、密度0.940g/cm超える)、中密度ポリエチレン(MDPE、密度0.925超えて0.940g/cm以下)、低密度ポリエチレン(LDPE、密度0.911超えて0.925g/cm以下)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE、密度0.911超えて0.925g/cm以下)等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いてもよい。なかでも、包装容器等の機械的特性である剛性と衝撃性を考慮する場合には、高密度ポリエチレンを多く含むことが好ましい。
【0019】
[密度]
密度の測定は、JIS K6760-1995に記載のアニーリングを行った後、JIS K7112-1999のうち、A法に規定された方法に従った。多層熱可塑性樹脂シートの密度は、例えば0.85~1.30g/cm 、好ましくは0.88~1.20g/cm 、さらに0.9~1.15g/cm の範囲内にすることができる。多層熱可塑性樹脂シートの層全体の密度は、各層に使用している樹脂の密度をもとに計算することもできる。
密度が0.85以上であれば、多層熱可塑性樹脂シートの剛性や耐衝撃性を高めることができる。また、1.30以下であれば、多層熱可塑性樹脂シートの成形性を高めることができる。密度が上記範囲内であれば、多層熱可塑性樹脂シートの剛性や耐衝撃性を高め、かつ成形性も向上させることができる。
【0020】
[樹脂組成物]
樹脂組成物は、植物由来の樹脂だけでなく、化石燃料由来樹脂を含んでいてもよい。化石燃料由来樹脂としては、化石燃料由来のポリオレフィンを含んでいてもよい。ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、エチレン-プロピレン共重合体およびプロピレン-ブテン共重合体などが挙げられ、これらの中でも、機械的特性等の物性面という点からは、ポリエチレンおよびポリプロピレンが好ましい。
多層熱可塑性樹脂シートの樹脂組成物全体としての化石燃料由来のポリオレフィンの含有量の下限は、機械的特性の観点から、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上含んでよく、化石燃料由来のポリオレフィンの含有量の上限は、環境負荷の観点から99質量%以下、95質量%以下、90質量%以下、85質量%以下とすることができる。
多層熱可塑性樹脂シートの樹脂組成物には、主成分であるポリオレフィン以外に、各種の添加剤を添加してもよい。
上記添加剤としては、例えば、着色剤、可塑剤(エチレングリコール、グリセリン、ヘキサンジオール等の脂肪族多価アルコール等)、酸素吸収剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、界面活性剤、抗菌剤、アンチブロッキング剤、充填材(例えば無機フィラー等)等があげられる。これらの添加剤は、単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0021】
[コア層]
コア層は植物由来ポリエチレンを含むオレフィン系樹脂となる。本発明の一態様として7層の多層熱可塑性樹脂シートの場合は、第2層および第6層となる。これら2層は、成分としてポリプロピレンを含み、更に、植物由来ポリエチレンを含んでいる。これら2層は、植物由来ポリエチレンを含むことで、環境負荷を減らし、かつ多層熱可塑性樹脂シートの成形性を向上させることができる。
これら2層の成分であるポリプロピレンには、プロピレン・ホモポリマー、及びブロックポリプロピレンが包含される。
ポリプロピレンの含量は、耐寒衝撃性の観点からコア層の30質量%以上含むことができ、35質量%以上含むことが好ましく、さらに、40質量%以上、45質量%以上、50質量%以上、55質量%以上、60質量%以上、65質量%以上、70質量%以上、75質量%以上、80質量%以上、85質量%以上含むことができる。
プロピレン・ホモポリマーの含量は、耐寒衝撃性の観点からコア層の10質量%以上含むことができ、15質量%以上含むことが好ましく、さらに、20質量%以上、25質量%以上、30質量%以上、35質量%以上、40質量%以上含むことができる。
ブロックポリプロピレンの含量は、耐寒衝撃性の観点からコア層の10質量%以上含むことができ、15質量%以上含むことが好ましく、さらに、20質量%以上、25質量%以上、30質量%以上、35質量%以上、40質量%以上含むことができる。
植物由来ポリエチレンの含量は、環境負荷性の観点からコア層の3質量%以上含むことができ、5質量%以上含むことが好ましく、さらに、8質量%以上、10質量%以上、13質量%以上、15質量%以上、18質量%以上、20質量%以上含むことができる。
化石燃料由来ポリエチレンの含量は、環境負荷性の観点からコア層の25質量%以下含むことができ、20質量%以下含むことが好ましく、さらに、18質量%以下、15質量%以下、13質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、3質量%以下、1質量%以下含むことができる。
また、植物由来ポリエチレンと化石燃料由来ポリエチレンの配合は、環境負荷性の観点からコア層の全体量に対し植物由来ポリエチレンの配合量を化石燃料由来ポリエチレンの配合量より多くすることが好ましく、さらに、3質量%以上を含むことができ、5質量%以上、8質量%以上、10質量%以上、13質量%以上、15質量%以上、18質量%以上、20質量%以上、25質量%以上含むことができる。
【0022】
[スキン層]
スキン層は植物由来ポリエチレンを含まないオレフィン系樹脂となる。酸素バリア性樹脂層の両側の接着剤層を介して接するコア層、及びそのコア層の両外側にスキン層を備える場合について説明する。
本発明の一態様として7層の多層熱可塑性樹脂シートの場合は、第1層および第7層に使用する。これら両側の2層は、成分としてポリプロピレン及びポリエチレンを含む。前記ポリプロピレンには、プロピレン・ホモポリマー、及び/又はブロックポリプロピレンが包含される。ポリエチレンは、化石燃料由来ポリエチレンであり、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)及び/又はHDPE(高密度ポリエチレン)を含む。本発明の各層には植物由来のポリエチレンを含有できるが、スキン層は、植物由来のポリエチレンを含まない構成とした。
ポリプロピレンの含量は、スキン層の30質量%以上含むことができ、40質量%以上含むことが好ましく、さらに、45質量%以上、50質量%以上、55質量%以上、60質量%以上、65質量%以上、70質量%以上、75質量%以上、80質量%以上、85質量%以上含むことができる。
ポリエチレンの含量は、スキン層の30質量%以下含むことができ、25質量%以下含むことが好ましく、さらに、23質量%以下、20質量%以下、18質量%以下、15質量%以下、13質量%以下、10質量%以下、8質量%以下、5質量%以下含むことができる。
プロピレン・ホモポリマーの含量は特に限定するものではないが、剛性向上の観点からコア層の10質量%以上含むことができ、15質量%以上含むことが好ましく、さらに、20質量%以上、25質量%以上、30質量%以上、35質量%以上、40質量%以上含むことができる。
ブロックポリプロピレンの含量は特に限定するものではないが、耐寒衝撃性の観点からコア層の10質量%以上含むことができ、15質量%以上含むことが好ましく、さらに、20質量%以上、25質量%以上、30質量%以上、35質量%以上、40質量%以上含むことができる。
【0023】
環境負荷を減らすためには、コア層を厚くする必要がある。しかし、過去の特許文献から、植物由来ポリエチレンを含む層(コア層)だけでは、化石燃料由来の樹脂と同等の機械的特性が得られないと考え、コア層の両側をスキン層で挟持し機械的特性の優れる多層熱可塑性樹脂シートとした。
コア層の厚みは、機械的特性及び環境負荷の観点からスキン層の厚みに対し、より厚いことが望まれる。コア層に対するスキン層の厚さの比の下限は1%以上あることが望まれ、さらに3%以上、5%以上、8%以上、10%以上、15%以上、18%以上、20%以上でもよく、厚さの比の上限は60%以下であることが望まれ、58%以下、55%以下、53%以下、50%以下、48%以下、45%以下、43%以下、40%以下、38
%以下、35%以下、33%以下、30%以下、28%以下であってもよい。
【0024】
[接着剤層]
本発明の一態様として7層の多層熱可塑性樹脂シートの場合は、第3層および第5層となり、酸素バリア性樹脂層は第4層となる。前記7層の場合は、第2層と第4層、および第4層と第6層を貼合するために形成される、接着剤層である。
さらに、9層の場合は、上記7層の第1層と第7層であるスキン層の内の1層の外側が接着剤層となる。11層の場合は、上記7層の第1層と第7層であるスキン層の2層の両外側が接着剤層となる。
上記、第2層と第4層、第4層と第6層を接着する接着剤層と第1層と第7層であるスキン層の両外側の接着剤層とは、同一でも異なってもよい。
接着剤層は、少なくとも1種の樹脂材料を含み、例えば、ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリエステル、ビニル樹脂およびポリアミドなどが挙げられる。これらの中でも、密着性という点からは、変性ポリオレフィンが好ましい。
接着剤層の厚みは、3~40μmとすることができ、好ましくは5~30μmである。接着剤層の厚みを3μm以上にすることにより接着性を向上することができ、40μm以下にすることで多層熱可塑性樹脂シートの加工性を向上することができる。
【0025】
[7層以上の多層熱可塑性樹脂シート]
前記7層の多層熱可塑性樹脂シートの例を示した。以下に8層以上となる場合についての例を説明する。
前記7層の例におけるスキン層の外側の一方側に、ポリオレフィン系樹脂層を有し8層とすることができ、前記スキン層の外側の両側に、ポリオレフィン系樹脂層を有し9層とすることができる。
また、前記7層の例におけるスキン層の外側の一方側に、接着剤層とポリオレフィン系樹脂層を有し9層とすることができ、前記スキン層の外側の両側に、接着剤層とポリオレフィン系樹脂層を有し11層とすることができる。
さらに、前記7層の例におけるスキン層の外側の一方側に、ポリオレフィン系樹脂層を有し、スキン層の外側の他方側に、接着剤層とポリオレフィン系樹脂層を有し10層とすることができる。
前記の場合のポリオレフィン系樹脂層としては、同一の組成であってもよいし、異なる組成であってもよく、好ましくは、無延伸ポリプロピレンとすることができる。
さらに、前記7層の例における酸素バリア性樹脂層は、1層の場合であるが、酸素バリア性樹脂層を材質が異なる2種による2層又は材質が同一の2層としてもよい。さらに、前記2層は接着剤層を介して全体で3層とすることもできる。この場合の接着剤層は、上述した「接着剤層」と同様である。
層の数は、前記7層に対し、酸素バリア性樹脂層が2層になる場合は、全体で8層となり、さらに酸素バリア性樹脂層の2層に前記接着剤層が加わる場合は9層となる。
また、前記11層に対し、酸素バリア性樹脂層が2層になる場合は、全体で12層となり、さらに酸素バリア性樹脂層の2層に前記接着剤層が加わる場合は13層となる。
つまり、前記全体で7層から11層の多層熱可塑性樹脂シートは、酸素バリア性樹脂層が2層になる場合は、+1層となり、さらに酸素バリア性樹脂層の2層に前記接着剤層が加わる場合は+2層となる。
【0026】
[多層熱可塑性樹脂シートの酸素バリア性樹脂層]
本発明の一態様として7層の多層熱可塑性樹脂シートの場合は、酸素バリア性樹脂層は第4層となる。この層は、多層熱可塑性樹脂シート全体として酸素バリア性を付与するために形成される、酸素バリア性樹脂層である。酸素バリア性樹脂層の厚みは、多層熱可塑性樹脂シート全体の酸素バリア性に影響を与える。多層熱可塑性樹脂シートにバリア性を付与するために酸素バリア性樹脂層の厚みの下限は、3μm以上とすることができ、5μ
m以上が好ましく、さらに8μm以上、10μm以上、15μm以上、20μm以上、30μm以上、40μm以上、50μm以上、とすることができ、厚みの上限は、150μm以下とすることができ、130μm以下が好ましく、さらに100μm以下、80μm以下、60μm以下、50μm以下、40μm以下、30μm以下、20μm以下とすることができる。
前記酸素バリア性樹脂層がエチレン-ビニルアルコールの共重合体の場合は、バリア性を付与するために厚みの下限は、3μm以上とすることができ、5μm以上が好ましく、さらに8μm以上、10μm以上、15μm以上、20μm以上、30μm以上、40μm以上、50μm以上、とすることができ、厚みの上限は、150μm以下とすることができ、130μm以下が好ましく、さらに100μm以下、80μm以下、60μm以下、50μm以下、40μm以下、30μm以下、20μm以下とすることができる。
前記酸素バリア性樹脂層がMXD6の場合は、バリア性を付与するために厚みの下限は、90μm以上とすることができ、98μm以上が好ましく、さらに100μm以上、103μm以上、105μm以上、108μm以上、110μm以上、113μm以上、115μm以上とすることができ、厚みの上限は、200μm以下とすることができ、180μm以下が好ましく、さらに160μm以下、150μm以下、140μm以下、130μm以下とすることができる。
【0027】
[層全体]
各層を押出成形等により積層させたとき、これを層全体と呼ぶ。層全体の厚みは、0.1~2.0mmとすることができ、0.15~1.5mmが好ましく、0.25~1.2mmであることがさらに好ましい。上記範囲の厚みの多層熱可塑性樹脂シートであれば、樹脂板やトレー等の熱成形品など各種用途、特に容器に好適に使用することができる。
【0028】
[製造方法]
多層熱可塑性樹脂シートの製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法により製造することができる。本発明においては、共押出成形または共押出ラミネートまたはドライラミネートされてなることが好ましく、押出成形等、Tダイ法により行われることがより好ましい。
【0029】
[用途]
本発明による多層熱可塑性樹脂シートは、樹脂板やトレー等の熱成形品など各種用途、特に容器に好適に使用することができ、特に、熱成形品が好ましい。
【実施例0030】
実施例に用いた材料及び略号を含め下記に示す。
BPP:化石燃料由来のブロックポリプロピレン(株式会社プライムポリマー製、商品名:E702G、バイオマス度:0%、密度:0.9g/cm3、MFR:0.9g/10分)
HPP:化石燃料由来のプロピレン・ホモポリマー(株式会社プライムポリマー製、商品名:E-100GPL、バイオマス度:0%、密度:0.90g/cm3、MFR:0.9g/10分)
石化HD:化石燃料由来の高密度ポリエチレン(株式会社プライムポリマー製、商品名:5000S、バイオマス度:0%、密度:0.949g/cm3、MFR:0.82g/10分)
バイオHD:植物由来の高密度ポリエチレン(ブラスケム社製、商品名:SHE150、バイオマス度:94%、密度:0.948g/cm3、MFR:1.0g/10分)
EVOH:エチレン-ビニルアルコール共重合体(三菱ケミカル株式会社製、商品名:DT2904RB、バイオマス度:0%、密度:1.21g/cm3、MFR:3.8g/10分・210℃)
MXD6:ポリ(メタキシリレンアジパミド)(三菱ガス化学株式会社製、商品名:S6007、密度:1.22)
CPP:無延伸ポリプロピレン(フタムラ化学株式会社製、商品名:FCMSOK)
LLDPE:直鎖状低密度ポリエチレン(株式会社プライムポリマー製、商品名:2022L、密度:0.919)
着色MB:白色マスターバッチ(三協化学工業株式会社製)
【0031】
[実施例1]
本例は7層の多層熱可塑性樹脂シートとした。化石燃料由来のブロックポリプロピレン40.0質量部と、化石燃料由来のプロピレン・ホモポリマー40.0質量部と、植物由来の高密度ポリエチレン20.0質量部をドライブレンドした樹脂をコア層とし、上記化石燃料由来のポリプロピレン80質量部、LLDPE20質量部からなる樹脂を両側スキン層とし、EVOH100質量部からなる樹脂を酸素バリア性樹脂層として溶融押し出しにて、厚み600μmの多層熱可塑性樹脂シートを得た。各層の厚み、コア層とスキン層の配合比を表1に示す。
【0032】
[実施例2、4~9]
表1の「コア層配合比(質量部%)」でドライブレンドした樹脂をコア層とし、上記化石燃料由来のポリプロピレン80質量部、LLDPE20質量部からなる樹脂をスキン層とし、表1のバリア材(酸素バリア性樹脂)で示す材料を酸素バリア性樹脂層として、溶融押し出しにて、表1のシート層構成に示す厚みとする多層熱可塑性樹脂シートを得た。各層の厚み、コア層とスキン層の配合比を表1に示す。
【0033】
[実施例3]
本例は9層の多層熱可塑性樹脂シートとした。化石燃料由来のブロックポリプロピレン40.0質量部と、化石燃料由来のプロピレン・ホモポリマー40.0質量部と、植物由来の高密度ポリエチレン20.0質量部をドライブレンドした樹脂をコア層とし、上記化石燃料由来のポリプロピレン80質量部、LLDPE20質量部からなる樹脂をスキン層とし、EVOH100質量部からなる樹脂を酸素バリア性樹脂層として溶融押し出しにて、接着剤層を第8層、ポリオレフィン層(CPP)を第9層として共押出ラミネートし、厚み650μmの多層熱可塑性樹脂シートを得た。各層の厚み、コア層とスキン層の配合比を表1に示す。
【0034】
[実施例13~23]
表2の「コア層配合比(質量部%)」でドライブレンドした樹脂をコア層とし、表2の「スキン層配合比(質量部%)」からなる樹脂をスキン層とし、EVOHを酸素バリア性樹脂層として、溶融押し出しにて、表2のシート層構成に示す厚みとする多層熱可塑性樹脂シートを得た。各層の厚み、コア層とスキン層の配合比を表2に示す。
【0035】
[比較例1]
本例は7層の多層熱可塑性樹脂シートとした。化石燃料由来のブロックポリプロピレン40.0質量部と、化石燃料由来のプロピレン・ホモポリマー40.0質量部と、化石燃料由来の高密度ポリエチレン15.0質量部をドライブレンドした樹脂をコア層とし、上記化石燃料由来のポリプロピレン80質量部、LLDPE20質量部からなる樹脂を両側スキン層とし、上記化石燃料由来のブロックポリプロピレン100質量部からなる樹脂を酸素バリア性樹脂層として溶融押し出しにて、厚み600μmの多層熱可塑性樹脂シートを得た。各層の厚み、コア層とスキン層の配合比を表1に示す。
【0036】
[比較例2~6]
表1の「コア層配合比(質量部%)」でドライブレンドした樹脂をコア層とし、上記化
石燃料由来のポリプロピレン80質量部、LLDPE20質量部又は化石燃料由来のポリプロピレン100質量部からなる樹脂をスキン層とし、表1のバリア材(酸素バリア性樹脂)で示す材料を酸素バリア性樹脂層として、溶融押し出しにて、表1のシート層構成に示す厚みとする多層熱可塑性樹脂シートを得た。各層の厚み、コア層とスキン層の配合比を表1に示す。
【0037】
[比較例7~14]
表2の「コア層配合比(質量部%)」でドライブレンドした樹脂をコア層とし、表2の「スキン層配合比(質量部%)」からなる樹脂をスキン層とし、EVOHを酸素バリア性樹脂層として、溶融押し出しにて、表2のシート層構成に示す厚みとする多層熱可塑性樹脂シートを得た。各層の厚み、コア層とスキン層の配合比を表2に示す。
【0038】
[樹脂組成物からなるシートまたは容器の評価]
実施例及び比較例の樹脂組成物について、(1)シートのバリア性評価及び(2)容器の耐寒衝撃性評価を行った。
[(1)シートのバリア性評価]
多層熱可塑性樹脂シートの酸素透過度を測定することで、シートの酸素バリア性を評価した。酸素透過度の測定装置は、OX-TRAN1/50(MOCON社製)を使用した。多層熱可塑性樹脂シートのシート層構成等及び評価結果を表1に記す。
【表1】
スキン:スキン層、コア:コア層、接着:接着剤層、バリア材:酸素バリア性樹脂、
バリア性:バリア性評価、スキン/コア%:スキン層/コア層の比(%)
バリア性のランク (単位:[cc/m2・day・atm] (20℃、65%Rh)
A:0.5以下、B:0.5超~0.7以下、C:0.7超~2.0以下、D:2.0超
【0039】
[評価結果]
表1より、酸素バリア性樹脂層の厚みがEVOHの場合4μm以下、MXD6の場合100μm以下、EVOH又はMXD6以外の材質では、2.0cc/m2・day・atm超えて大きく酸素バリア性がよくないことが分かった。
【0040】
[(2)容器の耐寒衝撃性評価]
表2に示す構成の実施例及び比較例の樹脂組成物について、(2)容器の耐寒衝撃性評価を行った。
厚さ600μm又は650μmの多層熱可塑性樹脂シートを角型の容器形状に熱成形し、耐寒衝撃性の評価を行った。評価は、JISZ0200に準拠した方法で行い、衝撃試験の区分はレベルIIを適用した。評価に使用する容器は上記の比較例1~4及び実施例1~3を使用し、容器の大きさは、深さ約30mm、長辺約150mm、短辺約100mmとした。評価試験方法は、各容器の凹部にそれぞれ水を150g入れ、開口部をONy(ユニチカ株式会社製、エンブレム ONU 厚み25μm)とイージーピールフィルム(ジェイフィルム株式会社製、VMX LMX 厚み35μm)をドライラミネートした多層フィルムを使用してヒートシールし、段ボールに1段あたり8個、3段となるように入れて段ボールに封をした。梱包した段ボールの重量は約3.6kgとなった。梱包済み段ボールを10ケース用意し(評価サンプル240個)、-18℃の冷凍庫中で24時間静置後、-18℃の環境温度で0.6mの高さからコンクリート床面に10回落下させた。
そして、段ボール落下後の容器の割れや内容物の漏れの有無の発生状況を評価した。評価方法は、各容器に発生した割れ(貫通しているもの)で一番大きいサイズを以下の点数で点数化し合計値の結果を表2に記載した。
点数
1:5mm未満の割れ
2:5mm以上10mm未満の割れ
3:10mm以上の割れ
耐寒衝撃の点数評価において20以下を「良」、21以上を「否」と判断した。
【表2】
スキン:スキン層、コア:コア層、接着:接着剤層、スキン/コア%:スキン層/コア層の比(%)
【0041】
[評価結果]
「スキン層/コア層の比」が7.7%以下又は、47.4%以上の場合は耐寒衝撃の評価が「否」になった。植物由来の高密度ポリエチレンが含有しても、化石燃料由来の高密度ポリエチレンを含有せず、植物由来の高密度ポリエチレンのみ含有する場合でも「スキン層/コア層の比」が7.7%~47.5%の範囲であれば耐寒衝撃の評価が「良」になる結果となった。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【0042】
[層全体密度]
実施例1及び実施例2の層全体密度について、JIS K6760-1995に記載のアニーリングを行った後、JIS K7112-1999のうち、A法に規定された方法に従って測定した。その結果、実施例1は0.928g/cm3、実施例2は0.922g/cm3となった。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明による多層熱可塑性樹脂シートは、樹脂板やトレー等の熱成形品など各種用途に好適に使用することができ、特に、熱成形品が好ましい。具体的には、食品包装容器等に使用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 多層熱可塑性樹脂シート
2 スキン層
3 コア層
4 接着剤層
5 酸素バリア性樹脂層
6 容器
図1
図2