IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
  • -水素貯蔵装置 図1
  • -水素貯蔵装置 図2
  • -水素貯蔵装置 図3
  • -水素貯蔵装置 図4
  • -水素貯蔵装置 図5
  • -水素貯蔵装置 図6
  • -水素貯蔵装置 図7
  • -水素貯蔵装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102303
(43)【公開日】2023-07-25
(54)【発明の名称】水素貯蔵装置
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/00 20060101AFI20230718BHJP
   F17C 11/00 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
C01B3/00 A
F17C11/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022002668
(22)【出願日】2022-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(71)【出願人】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 大輔
(72)【発明者】
【氏名】山口 翔太朗
(72)【発明者】
【氏名】市川 貴之
(72)【発明者】
【氏名】宮岡 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】新里 恵多
(72)【発明者】
【氏名】前田 哲彦
(72)【発明者】
【氏名】五舛目 清剛
【テーマコード(参考)】
3E172
4G140
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA05
3E172AB01
3E172BA01
3E172BA10
3E172BB02
3E172BB03
3E172BB13
3E172BB18
3E172BC07
3E172DA90
3E172EA02
3E172EA12
3E172EA13
3E172EA22
3E172EA23
3E172EA42
3E172EB02
3E172EB12
3E172FA04
3E172FA18
4G140AA12
4G140AA23
4G140AA25
4G140AA31
(57)【要約】
【課題】より低い温度でより高い圧力の水素ガスを放出できる水素吸蔵合金を利用した水素貯蔵装置を提供する。
【解決手段】水素貯蔵装置は、水素吸蔵合金を有する第1~第3容器を備える。第1容器は加熱部と冷却部に接続される。第1容器と第2容器は互いに水素ガスが流通できる。第2容器と第3容器は互いに熱を伝達できる。第3容器は水素供給源と水素供給対象に接続される。第1合金の水素放出の平衡圧力の範囲と、第2合金の水素吸蔵の平衡圧力の範囲は、重複する。第1合金の吸蔵の平衡圧力の範囲と、第2合金の放出の平衡圧力の範囲は、重複する。第2合金の最高温度での第3合金の放出の平衡圧力は、加熱部によって第1合金が水素を放出する平衡圧力より高い。第2合金の吸蔵の温度範囲と、第3合金の放出の温度範囲は、重複する。第2合金の放出の温度範囲と、第3合金の吸蔵の温度範囲とは、重複する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素貯蔵装置であって、
第1水素吸蔵合金を収容している第1容器と、
第2水素吸蔵合金を収容している第2容器と、
第3水素吸蔵合金を収容している第3容器と、を備え、
前記第1容器は、前記第1水素吸蔵合金を加熱する加熱部と、前記第1水素吸蔵合金を冷却する冷却部と、に接続され、
前記第1容器と前記第2容器とは、それぞれの内部の水素ガスが流通できるように接続されており、
前記第2容器と前記第3容器とは、互いに熱を伝達できるように接続されており、
前記第3容器は、前記第3容器に水素ガスを供給する水素供給源と、前記第3容器から水素ガスを供給される水素供給対象と、に接続され、
前記第1水素吸蔵合金が水素を放出する平衡圧力の範囲と、前記第2水素吸蔵合金が水素を吸蔵する平衡圧力の範囲とは、重複しており、
前記第1水素吸蔵合金が水素を吸蔵する平衡圧力の範囲と、前記第2水素吸蔵合金が水素を放出する平衡圧力の範囲とは、重複しており、
前記水素貯蔵装置の運転において前記第2水素吸蔵合金が達する最高の温度において、前記第3水素吸蔵合金が水素を放出する平衡圧力は、前記加熱部に加熱されることにより前記第1水素吸蔵合金が水素を放出する平衡圧力よりも高く、
前記第2水素吸蔵合金が水素を吸蔵する温度の範囲と、前記第3水素吸蔵合金が水素を放出する温度の範囲とは、重複しており、
前記第2水素吸蔵合金が水素を放出する温度の範囲と、前記第3水素吸蔵合金が水素を吸蔵する温度の範囲とは、重複している、水素貯蔵装置。
【請求項2】
請求項1記載の水素貯蔵装置であって、
前記第2容器は、前記第3容器の外周に接して配されている、水素貯蔵装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の水素貯蔵装置であって、
前記第1容器は、前記第2容器の外周に配されている、水素貯蔵装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の水素貯蔵装置であって、
前記水素貯蔵装置の運転において前記第2水素吸蔵合金が達する最低の温度において、前記第3水素吸蔵合金が水素を吸蔵する平衡圧力は、前記冷却部に冷却されることにより前記第1水素吸蔵合金が水素を吸蔵する平衡圧力よりも高い、水素貯蔵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水素貯蔵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水素吸蔵合金を低温にして低圧の水素を吸蔵させ、その水素吸蔵合金を高温にして高圧の水素を放出させる技術が存在する。特許文献1の水素貯蔵システムにおいては、熱交換器に冷却媒体が連続して導入され排出される。その結果、熱交換器によって水素吸蔵合金が冷却され、水素移動管によって導入された水素を水素吸蔵合金が吸蔵する。また、熱交換器に、加熱媒体が連続して導入され排出される。その結果、熱交換器によって水素吸蔵合金が加熱され、水素吸蔵合金に吸蔵された水素が放出される。水素は水素移動管を通して水素貯蔵タンク内の空間に移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-211646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された水素貯蔵システムを使用して、ある程度高い圧力を有する水素ガスを放出させようとすると、水素吸蔵合金をその圧力に応じた高温に加熱する必要がある。たとえば、40Ma程度の圧力まで水素を貯蔵できる水素ガスタンクに充填するための水素ガスを、特許文献1の水素貯蔵システムに放出させるためには、水素吸蔵合金を100℃を超える温度に加熱する必要がある。一方で、100℃を超える熱源の確保は、100℃以下の熱源に比べて、容易ではない。このため、より低い温度でより高い圧力の水素ガスを放出できる、水素吸蔵合金を利用した水素貯蔵装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本開示の一形態によれば、水素貯蔵装置が提供される。この水素貯蔵装置は、第1水素吸蔵合金を収容している第1容器と、第2水素吸蔵合金を収容している第2容器と、第3水素吸蔵合金を収容している第3容器と、を備える。前記第1容器は、前記第1水素吸蔵合金を加熱する加熱部と、前記第1水素吸蔵合金を冷却する冷却部と、に接続され、前記第1容器と前記第2容器とは、それぞれの内部の水素ガスが流通できるように接続されており、前記第2容器と前記第3容器とは、互いに熱を伝達できるように接続されており、前記第3容器は、前記第3容器に水素ガスを供給する水素供給源と、前記第3容器から水素ガスを供給される水素供給対象と、に接続される。前記第1水素吸蔵合金が水素を放出する平衡圧力の範囲と、前記第2水素吸蔵合金が水素を吸蔵する平衡圧力の範囲とは、重複しており、前記第1水素吸蔵合金が水素を吸蔵する平衡圧力の範囲と、前記第2水素吸蔵合金が水素を放出する平衡圧力の範囲とは、重複しており、前記水素貯蔵装置の運転において前記第2水素吸蔵合金が達する最高の温度において、前記第3水素吸蔵合金が水素を放出する平衡圧力は、前記加熱部に加熱されることにより前記第1水素吸蔵合金が水素を放出する平衡圧力よりも高く、前記第2水素吸蔵合金が水素を吸蔵する温度の範囲と、前記第3水素吸蔵合金が水素を放出する温度の範囲とは、重複しており、前記第2水素吸蔵合金が水素を放出する温度の範囲と、前記第3水素吸蔵合金が水素を吸蔵する温度の範囲とは、重複している。
このような態様とすれば、加熱部で第1水素吸蔵合金を加熱することによって、第1水素吸蔵合金による水素の放出と、第1水素吸蔵合金からの水素の第2水素吸蔵合金による吸蔵と、により、第2水素吸蔵合金に反応熱を放出させることができる。第2水素吸蔵合金の反応熱で、第2容器および第3容器を介して、第3水素吸蔵合金を、加熱することができる。その結果、加熱された第1水素吸蔵合金が放出する水素ガスの圧力、および加熱された第1水素吸蔵合金の温度まで第3水素吸蔵合金を加熱した場合に第3水素吸蔵合金が放出する水素ガスの圧力よりも、高い圧力で、第3水素吸蔵合金から水素ガスを放出させることができる。すなわち、加熱部で第3水素吸蔵合金を加熱した場合よりも高い圧力の水素ガスを、水素供給対象に供給することができる。
また、このような態様とすれば、冷却部で第1水素吸蔵合金を冷却することによって、第1水素吸蔵合金による水素の吸蔵と、第2水素吸蔵合金による第1水素吸蔵合金への水素の放出と、により、第2水素吸蔵合金に反応熱を吸収させることができる。第2水素吸蔵合金の反応熱で、第2容器および第3容器を介して、第3水素吸蔵合金を、冷却することができる。その結果、第3水素吸蔵合金に水素ガスを吸蔵させることができる。
(2)上記形態の水素貯蔵装置において、前記第2容器は、前記第3容器の外周に接して配されている、態様とすることができる。
このような態様とすれば、第2容器と第3容器とは、第3容器の外表面を通じて、互いに熱を伝達できる。このため、熱を伝達するための構成を挟んで第2容器と第3容器とが並んで配される態様に比べて、効率的に相互に熱を伝達できる。
(3)上記形態の水素貯蔵装置において、前記第1容器は、前記第2容器の外周に配されている、態様とすることができる。
このような態様とすれば、水素ガスを流通させる構成を挟んで第1容器と第2容器とが並んで配される態様に比べて、水素貯蔵装置を小さく構成することができる。
(4)上記形態の水素貯蔵装置において、前記水素貯蔵装置の運転において前記第2水素吸蔵合金が達する最低の温度において、前記第3水素吸蔵合金が水素を吸蔵する平衡圧力は、前記冷却部に冷却されることにより前記第1水素吸蔵合金が水素を吸蔵する平衡圧力よりも高い、態様とすることができる。
このような態様においては、水素貯蔵装置の運転において第2水素吸蔵合金が達する最高の温度において、第3水素吸蔵合金が水素を放出する平衡圧力は、加熱部によって加熱されることにより前記水素吸蔵合金が水素を放出する平衡圧力よりも高い。さらに、水素貯蔵装置の運転において第2水素吸蔵合金が達する最低の温度において、第3水素吸蔵合金が水素を吸蔵する平衡圧力は、冷却部によって冷却されることにより第1水素吸蔵合金が水素を吸蔵する平衡圧力よりも高い。すなわち、Tを温度、Pを圧力とし、横軸に1/T、縦軸にPを取ったグラフにおいて、第3水素吸蔵合金の放出の平衡圧力の特性直線も、吸蔵の平衡圧力の特性直線も、傾きがなだらかである。言い換えれば、1/Tの増加に対するPの減少量が小さい。そのような特性を有する水素吸蔵合金の種類の数は、特性直線の傾きが急峻な水素吸蔵合金の種類の数に比べて、多い。このため、安価な水素吸蔵合金を選択して、低コストで水素貯蔵装置を構成できる。
本開示は、水素貯蔵装置以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、水素貯蔵装置の製造方法や水素貯蔵装置の制御方法、その制御方法を実現するコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した一時的でない記録媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】水素貯蔵装置10の構成および水素を放出する際の水素貯蔵装置10の動作を示すブロック図である。
図2】水素貯蔵装置10の構成および水素を吸蔵する際の水素貯蔵装置10の動作を示すブロック図である。
図3】水素貯蔵装置10の内部構造の概略構成を示す説明図である。
図4】第1水素吸蔵合金120と、第2水素吸蔵合金220と、第3水素吸蔵合金320と、の水素の吸蔵および放出の特性を示すグラフである。
図5】水素貯蔵装置12の内部構造を示す説明図である。
図6】水素貯蔵装置12を、図5のVI-VI断面で切断した状態を示す説明図である。
図7】水素貯蔵装置12を、図5のVII-VII断面で切断した状態を示す説明図である。
図8】第1水素吸蔵合金122と、第2水素吸蔵合金222と、第3水素吸蔵合金322と、の水素の吸蔵および放出の特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
A1.水素貯蔵装置の構成:
図1は、第1実施形態の水素貯蔵装置10の構成および水素を放出する際の水素貯蔵装置10の動作を示すブロック図である。図2は、水素貯蔵装置10の構成および水素を吸蔵する際の水素貯蔵装置10の動作を示すブロック図である。
【0009】
水素貯蔵装置10は、貯蔵している水素を、水素供給対象HGTに水素ガスとして供給する(図1の中段右部参照)。水素貯蔵装置10は、水素供給源HGSから水素ガスを供給されて、その水素を貯蔵する(図2の中段左部および右部参照)。水素貯蔵装置10が水素供給対象HGTに供給する水素ガスの圧力は、水素貯蔵装置10が水素供給源HGSから供給される水素ガスの圧力よりも、高い。具体的には、水素貯蔵装置10が水素供給源HGSから供給される水素ガスの圧力は、10MPa以下である。水素貯蔵装置10が水素供給対象HGTに供給する水素ガスの圧力は、40MPa以上である。
【0010】
水素供給源HGSは、たとえば、水を電気分解して水素を生成するプラントや、副産物として水素を生成する製鉄所や化学工場である。水素供給対象HGTは、たとえば、水素ガスを利用して走行する燃料電池車両の水素ガスタンクである。
【0011】
水素貯蔵装置10は、第1水素吸蔵器100と、第2水素吸蔵器200と、第3水素吸蔵器300と、接続管400と、温度調節器500と、を備える。
【0012】
第1水素吸蔵器100は、加熱部HSと冷却部CSとに接続される(図1の左部および図2の左部参照)。加熱部HSは、第1水素吸蔵器100を加熱する。加熱部HSは、高温の流体FL1を、第1水素吸蔵器100との間で循環させることができるように構成されている(図1の左部参照)。本実施形態において、高温の流体FL1は水である。高温の流体FL1の温度Thsは、70℃以上100℃未満である。加熱部HSは、第1水素吸蔵器100との間で循環させている流体に熱を付与することで、高温の流体FL1とする。
【0013】
冷却部CSは、第1水素吸蔵器100を冷却する。冷却部CSは、低温の流体FL2を、第1水素吸蔵器100との間で循環させることができるように構成されている(図2の左部参照)。本実施形態において、低温の流体FL2も水である。本実施形態において、低温の流体FL2の温度Tcsは、0℃以上40℃以下である。冷却部CSは、第1水素吸蔵器100との間で循環させている流体から熱を奪うことで、低温の流体FL2とする。
【0014】
第1水素吸蔵器100は、水素供給源HGSに接続されている。第1水素吸蔵器100は、水素供給源HGSから水素ガスHG1を供給されることができる(図2の左部参照)。
【0015】
図3は、水素貯蔵装置10の内部構造の概略構成を示す説明図である。第1水素吸蔵器100は、第1外殻110と、第1水素吸蔵合金120と、を備える(図3の左部参照)。第1外殻110は、ステンレス鋼板で構成される直方体状の容器である。第1水素吸蔵器100は、第1外殻110内に第1水素吸蔵合金120を収容している。
【0016】
第1水素吸蔵合金120は、数μmから数百μmの粒径を有する粉末の水素吸蔵合金である。第1水素吸蔵合金120は、水素ガスを流通させ、水素吸蔵合金の粉末を流通させないフィルタにより外面を覆われている。その結果、第1水素吸蔵合金120は、直方体状に外形形状を維持されている。第1水素吸蔵合金120の特性については、後に説明する。
【0017】
第1水素吸蔵器100は、加熱部HSと冷却部CSとに接続される(図1の左部および図2の左部参照)。第1水素吸蔵器100は、温度調節器500内に収容されている。この構造により、第1水素吸蔵器100の加熱部HSおよび冷却部CSとの接続が実現される。
【0018】
温度調節器500は、加熱部HSが備えるポンプにより、加熱部HSから高温の流体FL1を供給され、加熱部HSとの間でその流体FL1を循環させる。温度調節器500は、冷却部CSが備えるポンプにより、冷却部CSから低温の流体FL2を供給され、冷却部CSとの間でその流体FL2を循環させる。温度調節器500は、第1水素吸蔵器100の周りに配されている。温度調節器500は、内殻530と、外殻550と、を備える。
【0019】
内殻530は、第1水素吸蔵器100の第1外殻110と同一の構成である。すなわち、第1水素吸蔵器100の第1外殻110が、温度調節器500の内殻530として機能する。
【0020】
外殻550は、ステンレス鋼板で構成される直方体状の容器である。外殻550は、第1水素吸蔵器100の第1外殻110を囲んでいる。外殻550は、第1外殻110すなわち内殻530との間に空間をあけて、配されている。外殻550と内殻530の間を、高温の流体FL1または低温の流体FL2が流通する。
【0021】
温度調節器500は、加熱部HSからの流体FL1と、冷却部CSからの流体FL2とを切り替えて、流通させることができる。第1水素吸蔵合金120は、流体FL1および第1外殻110を介して、加熱部HSによって、加熱される。第1水素吸蔵合金120は、流体FL2および第1外殻110を介して、冷却部CSによって、冷却される。このような構成を、本明細書においては、第1水素吸蔵器100は加熱部HSと冷却部CSとに接続される、と表記する。
【0022】
第3水素吸蔵器300は、第3外殻310と、第3水素吸蔵合金320と、空隙330、を備える(図3の右部参照)。第3外殻310は、ステンレス鋼板で構成される円筒状の容器である。第3水素吸蔵器300は、第3外殻310内に第3水素吸蔵合金320を収容している。
【0023】
第3水素吸蔵合金320は、数μmから数百μmの粒径を有する粉末の水素吸蔵合金である。第3水素吸蔵合金320は、水素ガスを流通させ、水素吸蔵合金の粉末を流通させないフィルタにより外面を覆われている。その結果、第3水素吸蔵合金320は、円筒状に外形形状を維持されている。なお、円筒の中心の空隙330の形状は、フィルタとともにフレームにより維持されている。第3水素吸蔵合金320は、中心の空隙330を通じて、外部から水素ガスを供給され、外部に水素ガスを供給する。第3水素吸蔵合金320の特性については、後に説明する。
【0024】
第3水素吸蔵器300は、水素供給源HGSと水素供給対象HGTと、に接続される。水素供給源HGSは、第3水素吸蔵器300に水素ガスHG1を供給する(図2の右部および左部参照)。水素供給源HGSが第3水素吸蔵器300に供給する水素ガスHG1の圧力は、10MPa以下である。
【0025】
水素供給対象HGTは、第3水素吸蔵器300から水素ガスHG2を供給される(図1の右部参照)。水素供給対象HGTが第3水素吸蔵器300から供給される水素ガスHG1の圧力は、40MPa以上である。
【0026】
第2水素吸蔵器200は、第3水素吸蔵器300の外周に接して配されている(図3の右部参照)。第2水素吸蔵器200は、第2外殻210と、第2水素吸蔵合金220と、第2内殻230と、を備える(図3の右部参照)。第2内殻230は、第3水素吸蔵器300の第3外殻310と同一の構成である。すなわち、第3水素吸蔵器300の第3外殻310が、第2水素吸蔵器200の第2外殻210として機能する。その結果、第2水素吸蔵器200と第3水素吸蔵器300とは、互いに熱を伝達できる。このような構成を、本明細書においては、第2水素吸蔵器200と第3水素吸蔵器300とは互いに熱を伝達できるように接続されている、と表記する。
【0027】
本実施形態において、第2水素吸蔵器200と第3水素吸蔵器300とは、第3水素吸蔵器300の第3外殻310の外表面を通じて、互いに熱を伝達できる。このため、熱を伝達するための構成を挟んで第2水素吸蔵器200と第3水素吸蔵器300とが並んで配される態様に比べて、第2水素吸蔵器200と第3水素吸蔵器300は、効率的に相互に熱を伝達できる。
【0028】
第2外殻210は、ステンレス鋼板で構成される円筒状の容器である。第2外殻210は、第2内殻230と中心軸を同じくし、第2内殻230を囲む。第2水素吸蔵器200は、第2外殻210と第2内殻230との間の空間に、第3水素吸蔵合金320を収容している。
【0029】
第2水素吸蔵合金220は、数μmから数百μmの粒径を有する粉末の水素吸蔵合金である。第2水素吸蔵合金220は、水素ガスを流通させ、水素吸蔵合金の粉末を流通させないフィルタにより外面を覆われている。その結果、第2水素吸蔵合金220は、円筒状に外形形状を維持されている。第2水素吸蔵合金220は、フィルタを介して第3外殻310に接している。第2水素吸蔵合金220は、フィルタおよび第3外殻310を介して第3水素吸蔵合金320を加熱し、または冷却する。第2水素吸蔵合金220の特性については、後に説明する。
【0030】
接続管400は、第1水素吸蔵器100と第2水素吸蔵器200とを、それぞれの内部の水素ガスHGiが流通できるように接続している(図3の中央部参照)。
【0031】
A2.各水素吸蔵器の水素貯蔵合金の特性:
図4は、第1水素吸蔵合金120と、第2水素吸蔵合金220と、第3水素吸蔵合金320と、の水素の吸蔵および放出の特性を示すグラフである。図4の横軸は、1/温度[1/K]である。図4の縦軸は、圧力である。図4の横軸において、常温すなわち20℃に相当する位置は、1/Thsと1/T2minの間の位置である。温度T2minについては、後に説明する。
【0032】
図4において、グラフGo1は、第1水素吸蔵合金120の水素吸蔵時の平衡圧力を示す。グラフGe1は、第1水素吸蔵合金120の水素放出時の平衡圧力を示す。グラフGo2は、第2水素吸蔵合金220の水素吸蔵時の平衡圧力を示す。グラフGe2は、第2水素吸蔵合金220の水素放出時の平衡圧力を示す。グラフGo3は、第3水素吸蔵合金320の水素吸蔵時の平衡圧力を示す。グラフGe3は、第3水素吸蔵合金320の水素放出時の平衡圧力を示す。図4において、各水素吸蔵合金の水素吸蔵時の平衡圧力を一点鎖線で示す。図4において、各水素吸蔵合金の水素放出時の平衡圧力を破線で示す。なお、それぞれのグラフは、直線で近似して表記されている。
【0033】
グラフGo2とグラフGe3から分かるように、第2水素吸蔵合金220が水素を吸蔵する温度の範囲To2と、第3水素吸蔵合金320が水素を放出する温度の範囲Te3とは、重複している(図4の下段参照)。グラフGe2とグラフGo3から分かるように、第2水素吸蔵合金220が水素を放出する温度の範囲Te2と、第3水素吸蔵合金320が水素を吸蔵する温度の範囲To3とは、重複している(図4の下段参照)。
【0034】
グラフGe1とグラフGo2から分かるように、第1水素吸蔵合金120が水素を放出する平衡圧力の範囲Pe1と、第2水素吸蔵合金220が水素を吸蔵する平衡圧力の範囲とPo2は、重複している(図4の左部参照)。グラフGo1とグラフGe2から分かるように、第1水素吸蔵合金120が水素を吸蔵する平衡圧力の範囲Po1と、第2水素吸蔵合金220が水素を放出する平衡圧力の範囲Pe2とは、重複している(図4の左部参照)。
【0035】
水素貯蔵装置10の運転において第2水素吸蔵合金220が達する最高の温度T2maxにおいて、第3水素吸蔵合金320が水素を放出する平衡圧力Pemaxは、加熱部HSによって温度Thsに加熱されることにより第1水素吸蔵合金120が水素を放出する平衡圧力Pe1thsよりも高い(図4の左部参照)。
【0036】
水素貯蔵装置10の運転において第2水素吸蔵合金220が達する最低の温度T2minにおいて、第3水素吸蔵合金320が水素を吸蔵する平衡圧力Pominは、冷却部CSによって温度Tcsに冷却されることにより第1水素吸蔵合金120が水素を吸蔵する平衡圧力Po1tcsよりも高い(図4の左部参照)。なお、図4において、水素貯蔵装置10の運転において第2水素吸蔵合金220が取り得る温度範囲をT2で示す。
【0037】
図4に示した特性を実現できる第3水素吸蔵合金320は、具体的には、BCC固溶体合金である。図4に示した特性を実現できる第2水素吸蔵合金220は、具体的には、AB型チタン合金である。図4に示した特性を実現できる第1水素吸蔵合金120は、任意の水素吸蔵合金の中から採用することができる。
【0038】
第1水素吸蔵合金120、第2水素吸蔵合金220、第3水素吸蔵合金320の特性とともに、第1水素吸蔵器100と第2水素吸蔵器200内の水素ガスHGiの圧力、言い換えれば、接続管400により接続されている第1水素吸蔵器100と第2水素吸蔵器200内の水素ガスHGiの量は、以下で説明する動作が実現されるように調整されている。
【0039】
A3.水素貯蔵装置の動作:
(1)水素貯蔵装置における水素ガスの放出:
水素貯蔵装置10から水素ガスを放出させる際には、加熱部HSにより、第1水素吸蔵器100が加熱される(図1の左部参照)。その結果、第1水素吸蔵器100の第1水素吸蔵合金120は、温度Thsに昇温される。温度Thsは、100℃よりも低い温度である。このときの第1水素吸蔵器100内の水素ガスHGiの圧力は、第1水素吸蔵合金120の水素の放出の平衡圧力以下である。このため、平衡圧力になるまで第1水素吸蔵合金120から水素ガスHGiが放出される。この状態を、図4において、点S1で示す。
【0040】
第2水素吸蔵器200は、接続管400を介して第1水素吸蔵器100と接続されている。このため、第2水素吸蔵器200内の水素ガスHGiの圧力は、第1水素吸蔵器100内の水素ガスHGiの圧力と同じである。加熱部HSによる第1水素吸蔵合金120の加熱により、第2水素吸蔵器200内の水素ガスHGiの圧力は、第2水素吸蔵合金220の水素の吸蔵の平衡圧力以上の圧力である(図4の点S1とグラフGo2参照)。このため、平衡圧力になるまで第2水素吸蔵合金220は、水素ガスHGiを吸蔵する。
【0041】
すなわち、接続管400を介して接続されている第1水素吸蔵器100と第2水素吸蔵器200との内部では、第1水素吸蔵合金120からの水素ガスHGiの放出と、その水素ガスHGiの第2水素吸蔵合金220による吸蔵とが、継続して行われる(図1の中央部参照)。
【0042】
水素吸蔵合金における水素の吸蔵反応は、発熱反応である。このため、第2水素吸蔵合金220の温度は、水素の吸蔵とともに上昇する。第2水素吸蔵合金220の温度は、グラフGo2に沿って、T2maxまで上昇する。温度T2maxは、温度Thsおよび100℃よりも高い温度である。この状態を、図4において、点S2で示す。
【0043】
第2水素吸蔵合金220の熱は、第2内殻230すなわち第3外殻310を介して、第3水素吸蔵合金320に伝えられる(図3の右部参照)。第3水素吸蔵合金320は、温度T2maxにおいて、平衡圧力Pemaxで水素ガスHG2を放出する。この状態を、図4において、点S3で示す。
【0044】
水素吸蔵合金における水素の放出反応は、吸熱反応である。第2水素吸蔵合金220が水素ガスHGiの吸蔵反応において放出した熱エネルギーは、第3水素吸蔵合金320に吸収される。すなわち、第2水素吸蔵合金220における発熱反応の熱エネルギーは、第3水素吸蔵合金320における吸熱反応の熱エネルギーによって、相殺される(図1の下段右部参照)。
【0045】
その結果、温度Thsで第1水素吸蔵合金120が水素ガスHGiを放出する平衡圧力Pe1thsよりも高い平衡圧力Pemaxで、第3水素吸蔵合金320は、水素ガスHG2を放出する(図4のS1,S3参照)。第3水素吸蔵合金320が放出する水素ガスHG2は、水素供給対象HGTに供給される(図1の右部参照)。
【0046】
以上のように、水素貯蔵装置10においては、加熱部HSにより100℃よりも低い温度で第1水素吸蔵合金120を加熱することによって、第1水素吸蔵合金120による水素の放出(図4のS1参照)と、第1水素吸蔵合金120からの水素の第2水素吸蔵合金220による吸蔵(図4のS2参照)と、により、第2水素吸蔵合金220に反応熱を放出させることができる。そして、第2水素吸蔵合金220の反応熱で、第2水素吸蔵器200の第2内殻230すなわち第3水素吸蔵器300の第3外殻310を介して、第3水素吸蔵合金320を、100℃より高い温度で加熱することができる(図3の右部参照)。その結果、加熱部HSで加熱された第1水素吸蔵合金120が放出する水素ガスHGiの圧力Pe1ths、および加熱された第1水素吸蔵合金120の温度Thsまで第3水素吸蔵合金320を加熱した場合に第3水素吸蔵合金320が放出する水素ガスの圧力よりも、高い圧力Pemaxで、第3水素吸蔵合金320から水素ガスHG2を放出させることができる(図4のS3参照)。すなわち、加熱部HSで第3水素吸蔵合金320を100℃よりも低い温度で加熱した場合よりも高い圧力の水素ガスを、水素供給対象HGTに供給することができる(図1の右部参照)。
【0047】
(2)水素貯蔵装置における水素ガスの吸蔵:
水素貯蔵装置10に水素ガスを吸蔵させる際には、冷却部CSにより、第1水素吸蔵器100が冷却される(図2の左部参照)。その結果、第1水素吸蔵器100の第1水素吸蔵合金120は、温度Tcsに冷却される。このときの第1水素吸蔵器100内の、水素ガスHGiの圧力は、第1水素吸蔵合金120の水素の吸蔵の平衡圧力以上の圧力である。このため、平衡圧力になるまで第1水素吸蔵合金120に水素ガスHGiが吸蔵される。この状態を、図4において、点S4で示す。なお、このとき、水素供給源HGSから追加の水素ガスHG1が第1水素吸蔵器100に供給されてもよい(図2の中段左部参照)。
【0048】
第2水素吸蔵器200は、接続管400を介して第1水素吸蔵器100と接続されている。このため、第2水素吸蔵器200内の水素ガスHGiの圧力は、第1水素吸蔵器100内の水素ガスHGiの圧力と同じである。冷却部CSによる第1水素吸蔵合金120の冷却により、第2水素吸蔵器200内の水素ガスHGiの圧力は、第2水素吸蔵合金220の水素の放出の平衡圧力以下の圧力に達する(図4の点S4とグラフGo1参照)。このため、第2水素吸蔵合金220は、水素ガスHGiを放出する。
【0049】
すなわち、接続管400を介して接続されている第1水素吸蔵器100と第2水素吸蔵器200との内部では、第2水素吸蔵合金220からの水素ガスHGiの放出と、その水素ガスHGiの第1水素吸蔵合金120による吸蔵とが、継続して行われる(図2の中央部参照)。
【0050】
水素吸蔵合金における水素の放出反応は、吸熱反応である。このため、第2水素吸蔵合金220の温度は、水素の放出とともに低下する。第2水素吸蔵合金220の温度は、グラフGe2に沿って、T2minまで低下する。この状態を、図4において、点S5で示す。
【0051】
第2水素吸蔵合金220は、第2内殻230すなわち第3外殻310を介して、第3水素吸蔵合金320の熱を奪う(図3の右部参照)。第3水素吸蔵合金320は、温度T2minにおいて、平衡圧力Pominで水素ガスHG1を吸蔵する。この状態を、図4において、点S6で示す。
【0052】
水素吸蔵合金における水素の吸蔵反応は、発熱反応である。第3水素吸蔵合金320が水素ガスHG1の吸蔵反応において放出した熱エネルギーは、第2水素吸蔵合金220に吸収される。すなわち、第3水素吸蔵合金320における発熱反応の熱エネルギーは、第2水素吸蔵合金220における吸熱反応の熱エネルギーによって、相殺される(図2の下段右部参照)。
【0053】
その結果、温度Tcsで第1水素吸蔵合金120が水素を吸蔵する平衡圧力Po1tcsよりも高い平衡圧力Pominで、第3水素吸蔵合金320は、水素ガスHG1を吸蔵する(図4のS4,S6参照)。第3水素吸蔵合金320が吸蔵する水素ガスHG1は、水素供給源HGSから供給される(図2の左部参照)。
【0054】
以上のように、水素貯蔵装置10においては、冷却部CSで第1水素吸蔵合金120を冷却することによって、第2水素吸蔵合金220による水素の放出(図4のS5参照)と、第2水素吸蔵合金220からの水素の第1水素吸蔵合金120による吸蔵(図4のS4参照)と、により、第2水素吸蔵合金220に反応熱を吸収させることができる。そして、第2水素吸蔵合金220の反応熱で、第2水素吸蔵器200の第2内殻230すなわち第3水素吸蔵器300の第3外殻310を介して、第3水素吸蔵合金320を、冷却することができる。その結果、第3水素吸蔵合金320に水素ガスを吸蔵させることができる(図4のS6および図2の右部参照)。
【0055】
(3)その他:
本実施形態においては、水素貯蔵装置10の運転において第2水素吸蔵合金220が達する最高の温度T2maxにおいて、第3水素吸蔵合金320が水素を放出する平衡圧力Pemaxは、加熱部HSによって加熱されることにより第1水素吸蔵合金120が水素を放出する平衡圧力Pe1thsよりも高い。さらに、水素貯蔵装置10の運転において第2水素吸蔵合金220が達する最低の温度T2minにおいて、第3水素吸蔵合金320が水素を吸蔵する平衡圧力Pominは、冷却部CSによって冷却されることにより第1水素吸蔵合金120が水素を吸蔵する平衡圧力Po1tcsよりも高い。すなわち、図4のグラフにおいて、第3水素吸蔵合金320の放出の平衡圧力の特性直線Ge3も、吸蔵の平衡圧力の特性直線Go3も、傾きがなだらかである。言い換えれば、いずれも、1/Tの増加に対する平衡圧力Pの減少量が小さい。そのような特性を有する水素吸蔵合金の種類の数は、特性直線の傾きが急峻な水素吸蔵合金の種類の数に比べて、多い。このため、安価な水素吸蔵合金を選択して、低コストで水素貯蔵装置10を構成できる。同様に、図4のグラフにおいて、第1、第2水素吸蔵合金120、220の放出の平衡圧力の特性直線Ge1、Ge2も、吸蔵の平衡圧力の特性直線Go1、Go2も、傾きがなだらかである。このため、安価な水素吸蔵合金を選択して、低コストで水素貯蔵装置10を構成できる。
【0056】
本実施形態の第1水素吸蔵器100を「第1容器」とも呼ぶ。第2水素吸蔵器200を「第2容器」とも呼ぶ。第3水素吸蔵器300を「第3容器」とも呼ぶ。
【0057】
B.第2実施形態:
B1.水素貯蔵装置の構成:
第2実施形態の水素貯蔵装置12においては、第1水素吸蔵器102、接続流路402、および温度調節器502の構成が、それぞれ対応する第1実施形態の水素貯蔵装置10における第1水素吸蔵器100、接続管400、および温度調節器500の構成とは異なる。第2実施形態の水素貯蔵装置12の他の点は、第1実施形態の水素貯蔵装置10と同じである。このため、図1および図2のブロック図は、第2実施形態にも適用できる。
【0058】
図5は、水素貯蔵装置12の内部構造を示す説明図である。水素貯蔵装置12は、略円柱状の形状を有している。水素貯蔵装置12は、第1水素吸蔵器102と、第2水素吸蔵器202と、第3水素吸蔵器302と、接続流路402、温度調節器502と、を備える。第2実施形態の水素貯蔵装置12の構成のうち、第1実施形態の水素貯蔵装置10の構成と対応する構成については、水素貯蔵装置10の構成に付された符号の末尾0を2に置き換えた符号を付す。
【0059】
第3水素吸蔵器302は、第3外殻312と、第3水素吸蔵合金322と、空隙332と、を備える。第3水素吸蔵器302の構成は、水素貯蔵装置10の第3水素吸蔵器300と同じである。
【0060】
第2水素吸蔵器202は、第3水素吸蔵器302の外周に接して配されている。第2水素吸蔵器202は、第2外殻212と、第2水素吸蔵合金222と、第2内殻232と、を備える。第2水素吸蔵器202の構成は、接続流路402との接続部分の構成を除いて、水素貯蔵装置10の第2水素吸蔵器200と同じである。
【0061】
第1水素吸蔵器102は、第2水素吸蔵器202の外周に配されている。第1水素吸蔵器102は、第1外殻112と、第1水素吸蔵合金122と、第1内殻132と、を備える。
【0062】
第1内殻132は、ステンレス鋼板で構成される円筒状の容器である。第1外殻112は、ステンレス鋼板で構成される円筒状の容器である。第1外殻112は、第1内殻132と中心軸を同じくし、第1内殻132を囲む。第1水素吸蔵器102は、第1外殻112と第1内殻132との間の空間に、第1水素吸蔵合金122を収容している。
【0063】
第1水素吸蔵合金122は、粉末状の水素吸蔵合金である。第1水素吸蔵合金122は、水素ガスを流通させ、水素吸蔵合金の粉末を流通させないフィルタにより外面を覆われている。その結果、第1水素吸蔵合金122は、円筒状に外形形状を維持されている。第1水素吸蔵合金122は、フィルタを介して第1外殻112および第1内殻132に接している。
【0064】
このような構成とすることにより、水素ガスHGiを流通させる接続管400を挟んで第1水素吸蔵器100と第2水素吸蔵器200とが並んで配される水素貯蔵装置10(図3参照)に比べて、水素貯蔵装置12を小さく構成することができる。
【0065】
温度調節器502は、第2水素吸蔵器202の周りに、第2水素吸蔵器202の外周との間に空間VPをあけて、配されている。空間VPは実質的に真空に保たれている。温度調節器502は、第1水素吸蔵器102を内側と外側から挟むように配されている。温度調節器502は、外殻512と、内殻532と、内殻542と、外殻552と、を備える。
【0066】
外殻512は、ステンレス鋼板で構成される円筒状の容器である。外殻512は、第2水素吸蔵器202の第2外殻212と中心軸を同じくし、第2外殻212を囲む。外殻512は、第2外殻212との間に空間VPをあけて、配されている。外殻512は、内殻532との間にも空間をあけて、配されている。
【0067】
内殻532は、第1水素吸蔵器102の第1内殻132と同一の構成である。すなわち、第1水素吸蔵器102の第1内殻132が、温度調節器502の内殻532として機能する。外殻512と内殻532の間を、低温の流体FL2が流通する。低温の流体FL2を供給する冷却部CSの構成は、第1実施形態における冷却部CSの構成と同じである。
【0068】
内殻542は、第1水素吸蔵器102の第1外殻112と同一の構成である。すなわち、第1水素吸蔵器102の第1外殻112が、温度調節器502の内殻542として機能する。外殻552は、ステンレス鋼板で構成される円筒状の容器である。外殻552は、内殻542と中心軸を同じくし、内殻542を囲む。外殻552は、内殻542との間に空間をあけて、配されている。外殻552と内殻542の間を、高温の流体FL1が流通する。高温の流体FL1を供給する加熱部HSの構成は、第1実施形態における加熱部HSの構成と同じである。
【0069】
図6は、水素貯蔵装置12を、図5のVI-VI断面で切断した状態を示す説明図である。図5に示した水素貯蔵装置12における第1水素吸蔵器102の中心軸CAから上の部分が、図6において示されている。
【0070】
温度調節器502は、加熱部HSから高温の流体FL1を供給され、加熱部HSとの間でその流体FL1を循環させる(図6の上段右部参照)。温度調節器502内においては、高温の流体FL1は、外殻552と内殻542との間を流通する。温度調節器502は、冷却部CSから低温の流体FL2を供給され、冷却部CSとの間でその流体FL2を循環させる(図6の下段右部参照)。温度調節器502内においては、低温の流体FL2は、内殻532と外殻512との間を流通する。温度調節器502においては、加熱部HSを含む高温の流体FL1の循環流路と、冷却部CSを含む低温の流体FL2の循環流路とは、互いに独立である。温度調節器502は、図示しない弁により、加熱部HSとの間の流体FL1の循環と、冷却部CSとの間の流体FL2の循環とを、選択的に実行することができる。
【0071】
温度調節器502の内殻542、すなわち第1水素吸蔵器102の第1外殻112と接している第1水素吸蔵合金122は、流体FL1および第1外殻112を介して、加熱部HSによって、加熱される(図6および図7の上段参照)。温度調節器502の内殻532、すなわち第1水素吸蔵器102の第1内殻132と接している第1水素吸蔵合金122は、流体FL2および第1外殻112を介して、冷却部CSによって、冷却される(図6および図7の中段参照)。このような構成を、本明細書においては、第1水素吸蔵器102は加熱部HSと冷却部CSとに接続される、と表記する。
【0072】
なお、第2水素吸蔵器202は、真空の空間VPによって温度調節器502と隔てられている(図5および図6参照)。このため、第2水素吸蔵器202は、温度調節器502の温度による影響を、実質的に受けない。
【0073】
図7は、水素貯蔵装置12を、図5のVII-VII断面で切断した状態を示す説明図である。図5に示した水素貯蔵装置12における第1水素吸蔵器102の中心軸CAから右の部分が、図6において示されている。
【0074】
接続流路402は、水素貯蔵装置12内において、第1水素吸蔵器102と第2水素吸蔵器202とを、それぞれの内部の水素ガスHGiが流通できるように接続している(図7の中段右部、および図5の中段参照)。
【0075】
B2.各水素吸蔵器の水素貯蔵合金の特性:
図8は、第1水素吸蔵合金122と、第2水素吸蔵合金222と、第3水素吸蔵合金322と、の水素の吸蔵および放出の特性を示すグラフである。図8の横軸は、1/温度[1/K]である。図8の縦軸は、圧力である。図8の横軸において、常温すなわち20℃に相当する位置は、1/Thsと1/T2minの間の位置である。図8は、第1実施形態における図4に相当する。
【0076】
図8において、グラフGo12は、第1水素吸蔵合金122の水素吸蔵時の平衡圧力を示す。グラフGe12は、第1水素吸蔵合金122の水素放出時の平衡圧力を示す。グラフGo22は、第2水素吸蔵合金222の水素吸蔵時の平衡圧力を示す。グラフGe22は、第2水素吸蔵合金222の水素放出時の平衡圧力を示す。グラフGo32は、第3水素吸蔵合金322の水素吸蔵時の平衡圧力を示す。グラフGe32は、第3水素吸蔵合金322の水素放出時の平衡圧力を示す。なお、それぞれのグラフは、直線で近似して表記されている。
【0077】
グラフGo12は、グラフGo1と同じグラフである。グラフGe12は、グラフGe1と同じグラフである。グラフGo22は、グラフGo2と同じグラフである。グラフGe22は、グラフGe2と同じグラフである。
【0078】
グラフGo32における1/Tの増加に対する平衡圧力Pの減少量は、第1実施形態におけるグラフGo3における1/Tの増加に対する平衡圧力Pの減少量よりも、大きい。グラフGe32における1/Tの増加に対する平衡圧力Pの減少量は、第1実施形態におけるグラフGe3における1/Tの増加に対する平衡圧力Pの減少量よりも、大きい。グラフGo32およびグラフGe32は、いずれもグラフGo12,Ge12,Go22,Ge22と交差している。
【0079】
水素貯蔵装置12の運転において第2水素吸蔵合金222が達する最高の温度T2maxにおいて、第3水素吸蔵合金322が水素を放出する平衡圧力Pemaxは、加熱部HSによって温度Thsに加熱されることにより第1水素吸蔵合金122が水素を放出する平衡圧力Pe1thsよりも高い(図8の左部参照)。
【0080】
水素貯蔵装置10の運転において第2水素吸蔵合金222が達する最低の温度T2minにおいて、第3水素吸蔵合金322が水素を吸蔵する平衡圧力Pominは、冷却部CSによって温度Tcsに冷却されることにより第1水素吸蔵合金122が水素を吸蔵する平衡圧力Po1tcsとほぼ等しい(図8の左部参照)。
【0081】
第1水素吸蔵合金122、第2水素吸蔵合金222、第3水素吸蔵合金322の特性とともに、第1水素吸蔵器102と第2水素吸蔵器202内の水素ガスHGiの圧力、言い換えれば、接続流路402により接続されている第1水素吸蔵器102と第2水素吸蔵器202内の水素ガスHGiの量は、以下で説明する動作が実現されるように調整されている。
【0082】
B3.水素貯蔵装置の動作:
(1)水素貯蔵装置における水素ガスの放出:
水素貯蔵装置12から水素ガスを放出させる際には、加熱部HSにより、第1水素吸蔵器102が加熱される(図1の左部参照)。すると、第1水素吸蔵合金122から水素ガスHGiが放出され(図8のS1参照)、第2水素吸蔵合金222に、水素ガスHGiが吸蔵される(図8のS2参照)。その結果、第2水素吸蔵合金222の反応熱により、第3水素吸蔵合金320が加熱される。第3水素吸蔵合金320は、温度T2maxにおいて、平衡圧力Pemaxで水素ガスHG2を放出する(図8のS3参照)。水素ガスを放出する際の水素貯蔵装置12の動作は、水素ガスを放出する際の水素貯蔵装置10の動作と同様である。
【0083】
水素貯蔵装置12によれば、加熱部HSにより100℃よりも低い温度で第1水素吸蔵合金120を加熱することによって、加熱部HSで第3水素吸蔵合金320をその温度で加熱した場合よりも高い圧力の水素ガスを、水素供給対象HGTに供給することができる(図1の右部参照)。
【0084】
(2)水素貯蔵装置における水素ガスの吸蔵:
水素貯蔵装置12に水素ガスを吸蔵させる際には、冷却部CSにより、第1水素吸蔵器102が冷却される(図2の左部参照)。その結果、第1水素吸蔵器102の第1水素吸蔵合金122は、温度Tcsに冷却される。温度Tcsは、0℃以上40℃未満の温度である。このときの第1水素吸蔵器102内の、水素ガスHGiの圧力は、第1水素吸蔵合金122の水素の吸蔵の平衡圧力以上の圧力である。このため、平衡圧力になるまで第1水素吸蔵合金122に水素ガスHGiが吸蔵される。この状態を、図8において、点S42で示す。なお、このとき、水素供給源HGSから追加の水素ガスHG1が第1水素吸蔵器102に供給されてもよい(図2の中段左部参照)。
【0085】
第2水素吸蔵器202は、接続流路402を介して第1水素吸蔵器102と接続されている。このため、第2水素吸蔵器202内の水素ガスHGiの圧力は、第1水素吸蔵器102内の水素ガスHGiの圧力と同じである。冷却部CSによる第1水素吸蔵合金122の冷却により、第2水素吸蔵器202内の水素ガスHGiの圧力は、第2水素吸蔵合金222の水素の放出の平衡圧力以下の圧力に達する。このため、平衡圧力になるまで第2水素吸蔵合金222は、水素ガスHGiを放出する。
【0086】
すなわち、接続流路402を介して接続されている第1水素吸蔵器102と第2水素吸蔵器202との内部では、第2水素吸蔵合金222からの水素ガスHGiの放出と、その水素ガスHGiの第1水素吸蔵合金122による吸蔵とが、継続して行われる(図2の中央部参照)。
【0087】
水素吸蔵合金における水素の放出反応は、吸熱反応である。このため、第2水素吸蔵合金222の温度は、水素の放出とともに低下する。第2水素吸蔵合金222の温度は、グラフGo2に沿って、T2minまで低下する。この状態を、図8において、点S52で示す。
【0088】
第2水素吸蔵合金222は、第2内殻232すなわち第3外殻312を介して、第3水素吸蔵合金322の熱を奪う(図5参照)。第3水素吸蔵合金322は、温度T2minにおいて、平衡圧力Pominで水素ガスHG1を吸蔵する。この状態を、図8において、点S62で示す。第3水素吸蔵合金322の水素吸蔵の平衡圧力のグラフGo32は、第1実施形態の第3水素吸蔵合金320の水素吸蔵の平衡圧力のグラフGo3に比べて、負の傾きが大きい(図4のGo3、および図8のGo32参照)。このため、第3水素吸蔵合金322が水素を吸蔵する平衡圧力Pominは、第1水素吸蔵合金122が水素を吸蔵する平衡圧力Po1tcsとほぼ同じである。
【0089】
その結果、温度Tcsで第1水素吸蔵合金122が水素を吸蔵する平衡圧力Po1tcとほぼ等しい平衡圧力Pominで、第3水素吸蔵合金322は、水素ガスHG1を吸蔵する(図8のS42,S62参照)。第3水素吸蔵合金322が吸蔵する水素ガスHG1は、水素供給源HGSから供給される(図2の左部参照)。
【0090】
以上のように、水素貯蔵装置12においては、冷却部CSで第1水素吸蔵合金122を冷却することによって、第2水素吸蔵合金222による水素の放出(図8のS52参照)と、第2水素吸蔵合金222からの水素の第1水素吸蔵合金122による吸蔵(図8のS42参照)と、により、第2水素吸蔵合金222に反応熱を吸収させることができる。そして、第2水素吸蔵合金222の反応熱で、第2水素吸蔵器202第2内殻232すなわち第3水素吸蔵器302の第3外殻312を介して、第3水素吸蔵合金322を、冷却することができる。その結果、第3水素吸蔵合金322に水素ガスを吸蔵させることができる(図8のS62および図2の右部参照)。
【0091】
本実施形態の第1水素吸蔵器102を「第1容器」とも呼ぶ。第2水素吸蔵器202を「第2容器」とも呼ぶ。第3水素吸蔵器302を「第3容器」とも呼ぶ。
【0092】
C.他の実施形態:
C1.他の実施形態1:
(1)上記第1実施形態においては、第2水素吸蔵合金220はAB型チタン合金であり、第3水素吸蔵合金320はBCC固溶体合金である。しかし、第2水素吸蔵合金と第3水素吸蔵合金との組み合わせは、たとえば、以下のような組み合わせとすることができる。
(i)AB型ラーベス相合金とAB型ラーベス相合金。
(ii)AB型ラーベス相合金とAB型希土類系合金。
(iii)AB型希土類系合金とAB型ラーベス相合金。
(iv)AB型チタン合金とAB型ラーベス相合金。
(v)AB型チタン合金とAB型希土類系合金。
【0093】
第1水素吸蔵合金としては、任意の水素吸蔵合金を採用することができる。ただし、第1水素吸蔵合金と第2水素吸蔵合金とは、横軸を1/温度[1/K]、縦軸を圧力としたグラフにおいて、以下の特性を有していることが好ましい。第1水素吸蔵合金の水素吸蔵時の平衡圧力の線が、第2水素吸蔵合金の水素放出時の平衡圧力の線と交わる(図4のGo1,Ge2参照)。第1水素吸蔵合金の水素放出時の平衡圧力の線が、第2水素吸蔵合金の水素吸蔵時の平衡圧力の線と交わる(図4のGe1,Go2参照)。そのような特性を備えることにより、第1水素吸蔵合金を備える第1水素吸蔵器と、第2水素吸蔵合金を備える第2水素吸蔵器と、を組み合わせた装置を、加熱および冷却することにより、ヒートポンプとして機能させることができる。
【0094】
(2)上記第1実施形態においては、第1水素吸蔵合金120は、水素ガスを流通させ、水素吸蔵合金の粉末を流通させないフィルタにより外面を覆われている(図3参照)。しかし、第1水素吸蔵器100の内部空間と接続管400とを接続する開口が、水素ガスを流通させ水素吸蔵合金の粉末を流通させないフィルタによって覆われ、水素吸蔵合金の粉末は、フィルタなどによって覆われることなく、第1水素吸蔵器100の内部空間内に存在してもよい。
【0095】
上記第1実施形態においては、第2水素吸蔵合金220は、水素ガスを流通させ、水素吸蔵合金の粉末を流通させないフィルタにより外面を覆われている(図3参照)。しかし、第2水素吸蔵器200の内部空間と接続管400とを接続する開口が、水素ガスを流通させ水素吸蔵合金の粉末を流通させないフィルタによって覆われ、水素吸蔵合金の粉末は、フィルタなどによって覆われることなく、第2水素吸蔵器200の内部空間内に存在してもよい。
【0096】
上記第2実施形態においては、第1水素吸蔵合金122は、水素ガスを流通させ、水素吸蔵合金の粉末を流通させないフィルタにより外面を覆われている(図5参照)。しかし、第1水素吸蔵器102の内部空間と接続流路402とを接続する開口が、水素ガスを流通させ水素吸蔵合金の粉末を流通させないフィルタによって覆われ、水素吸蔵合金の粉末は、フィルタなどによって覆われることなく、第1水素吸蔵器102の内部空間内に存在してもよい。
【0097】
上記第2実施形態においては、第2水素吸蔵合金222は、水素ガスを流通させ、水素吸蔵合金の粉末を流通させないフィルタにより外面を覆われている(図5参照)。しかし、第2水素吸蔵器202の内部空間と接続流路402とを接続する開口が、水素ガスを流通させ水素吸蔵合金の粉末を流通させないフィルタによって覆われ、水素吸蔵合金の粉末は、フィルタなどによって覆われることなく、第2水素吸蔵器202の内部空間内に存在してもよい。
【0098】
(3)上記第1実施形態においては、第1水素吸蔵器100は、水素供給源HGSに接続されている(図2の左部参照)。そして、水素貯蔵装置10に水素ガスを吸蔵させる際に、水素供給源HGSから追加の水素ガスHG1が第1水素吸蔵器100に供給されてもよいことを説明した。しかし、水素貯蔵装置は、その構成要素である第2水素吸蔵器が、水素供給源HGSに接続される態様とすることもできる。
【0099】
また、水素貯蔵装置は、その構成要素である第1水素吸蔵器および第2水素吸蔵器が、水素供給源HGSに接続されない態様とすることもできる。そのような態様においては、接続管400により接続されている第1水素吸蔵器100と第2水素吸蔵器200内の水素ガスHGiの量は、一定である。
【0100】
(4)上記第1実施形態においては、加熱部HSは、第1水素吸蔵器100との間で高温の流体FL1を循環させる(図1参照)。冷却部CSは、第1水素吸蔵器100との間で低温の流体FL2を循環させる(図2参照)。しかし、高温の流体FL1は、加熱部HSから第1水素吸蔵器100に供給された後、加熱部HSに戻ることなく、系外に排出されてもよい。低温の流体FL2は、冷却部CSから第1水素吸蔵器100に供給された後、冷却部CSに戻ることなく、系外に排出されてもよい。
【0101】
(5)上記第1実施形態においては、加熱部HSから第1水素吸蔵器100に供給される高温の流体FL1は、水である。冷却部CSから第1水素吸蔵器100に供給される低温の流体FL2も、水である。しかし、第1水素吸蔵器を昇温または冷却するための媒体は、水に限られず、油などの他の流体であってもよい。また、第1水素吸蔵器は、第1水素吸蔵器の外殻を構成する素材以上の伝熱性を有する素材で構成された伝熱部材を介して、昇温または冷却されることもできる。
【0102】
(6)上記第1実施形態においては、技術の理解を容易にするため、水素ガスHG2の放出において、第2水素吸蔵合金220は、T2maxに達するものとして説明をした。しかし、水素ガスを放出する際には、第2水素吸蔵合金220の温度がT2maxより低い温度である運転状態で、水素貯蔵装置10が運転されてもよい。
【0103】
上記第1実施形態においては、技術の理解を容易にするため、水素ガスHG1の吸蔵において、第2水素吸蔵合金220は、T2minに達するものとして説明をした。しかし、水素ガスを吸蔵する際には、第2水素吸蔵合金220の温度がT2minより高い温度である運転状態で、水素貯蔵装置10が運転されてもよい。
【0104】
C2.他の実施形態2:
上記第1実施形態においては、第2水素吸蔵器200は、第3水素吸蔵器300の外周に接して配されている(図3の右部参照)。しかし、第2水素吸蔵器と第3水素吸蔵器とは、たとえば、隣接して設けられ、第2水素吸蔵器と第3水素吸蔵器とを仕切る外壁を共有することにより、熱交換を行うことができるように設けられていてもよい。また、第2水素吸蔵器と第3水素吸蔵器とは、熱を伝達する流体を相互に流通させることにより、熱交換を行うことができるように設けられていてもよい。すなわち、第2水素吸蔵器と第3水素吸蔵器とは、第2水素吸蔵器の熱が第3水素吸蔵器に伝達され、かつ、第3水素吸蔵器の熱が第3水素吸蔵器に伝達されるように設けられていればよい。
【0105】
C3.他の実施形態3:
上記第2実施形態においては、第1水素吸蔵器102は、第2水素吸蔵器202の外周に配されている(図6参照)。しかし、第1水素吸蔵器と第2水素吸蔵器とは、たとえば、第1実施形態の水素貯蔵装置10のように、水素ガスHGiを流通させる接続管400を挟んで第1水素吸蔵器100と第2水素吸蔵器200とが並んで配される態様とすることもできる(図3参照)。すなわち、第1水素吸蔵器と第2水素吸蔵器とは、それぞれの内部の水素ガスが流通できるように接続されていればよい。
【0106】
C4.他の実施形態4:
上記第1実施形態においては、水素貯蔵装置10の運転において第2水素吸蔵合金220が達する最低の温度T2minにおいて、第3水素吸蔵合金320が水素を吸蔵する平衡圧力Pominは、冷却部CSによって温度Tcsに冷却されることにより第1水素吸蔵合金120が水素を吸蔵する平衡圧力Po1tcsよりも高い(図4の左部参照)。しかし、第2実施形態で示したように、温度T2minにおいて第3水素吸蔵合金320が水素を吸蔵する平衡圧力Pominは、温度Tcsにおいて第1水素吸蔵合金120が水素を吸蔵する平衡圧力Po1tcsと、実質的に等しくてもよい(図8参照)。また、温度T2minにおいて第3水素吸蔵合金320が水素を吸蔵する平衡圧力Pominは、温度Tcsにおいて第1水素吸蔵合金120が水素を吸蔵する平衡圧力Po1tcsより低くてもよい。
【0107】
また、本開示の技術は、以下のような態様とすることもできる。前記水素貯蔵装置の運転において前記第2水素吸蔵合金が達する最高の温度において、前記第3水素吸蔵合金が水素を吸蔵する平衡圧力は、前記加熱部に加熱されることにより前記第1水素吸蔵合金が水素を放出する平衡圧力よりも高くてもよい。そして、前記水素貯蔵装置の運転において前記第2水素吸蔵合金が達する最低の温度において、前記第3水素吸蔵合金が水素を吸蔵する平衡圧力および前記第3水素吸蔵合金が水素を放出する平衡圧力は、前記冷却部に冷却されることにより前記第1水素吸蔵合金が水素を吸蔵する平衡圧力以上であってもよい。
【0108】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0109】
10…水素貯蔵装置、12…水素貯蔵装置、100…第1水素吸蔵器、102…第1水素吸蔵器、110…第1外殻、112…第1外殻、120…第1水素吸蔵合金、122…第1水素吸蔵合金、132…第1内殻、200…第2水素吸蔵器、202…第2水素吸蔵器、210…第2外殻、212…第2外殻、220…第2水素吸蔵合金、222…第2水素吸蔵合金、230…第2内殻、232…第2内殻、300…第3水素吸蔵器、302…第3水素吸蔵器、310…第3外殻、312…第3外殻、320…第3水素吸蔵合金、322…第3水素吸蔵合金、330…空隙、332…空隙、400…接続管、402…接続流路、500…温度調節器、502…温度調節器、512…外殻、530…内殻、532…内殻、542…内殻、550…外殻、552…外殻、CA…第1水素吸蔵器の中心軸、CS…冷却部、FL1…流体、FL2…流体、Ge1…第1水素吸蔵合金の水素放出時の平衡圧力のグラフ、Ge2…第2水素吸蔵合金の水素放出時の平衡圧力のグラフ、Ge3…第3水素吸蔵合金の水素放出時の平衡圧力のグラフ、Go1…第1水素吸蔵合金の水素吸蔵時の平衡圧力のグラフ、Go2…第2水素吸蔵合金の水素吸蔵時の平衡圧力のグラフ、Go3…第3水素吸蔵合金の水素吸蔵時の平衡圧力のグラフ、Ge12…第1水素吸蔵合金の水素放出時の平衡圧力のグラフ、Ge22…第2水素吸蔵合金の水素放出時の平衡圧力のグラフ、Ge32…第3水素吸蔵合金の水素放出時の平衡圧力のグラフ、Go12…第1水素吸蔵合金の水素吸蔵時の平衡圧力のグラフ、Go22…第2水素吸蔵合金の水素吸蔵時の平衡圧力のグラフ、Go32…第3水素吸蔵合金の水素吸蔵時の平衡圧力のグラフ、HG1…水素貯蔵装置が受け取る水素ガス、HG2…水素貯蔵装置が供給する水素ガス、HGi…水素貯蔵装置内で吸蔵および放出される水素ガス、HGS…水素供給源、HGT…水素供給対象、HS…加熱部、Pe1…第1水素吸蔵合金の水素放出時の平衡圧力の範囲、Pe2…第2水素吸蔵合金の水素放出時の平衡圧力の範囲、Pe3…第3水素吸蔵合金の水素放出時の平衡圧力の範囲、Pemax…水素貯蔵装置の水素放出時の平衡圧力、Pe1ths…第1水素吸蔵合金の水素放出時の平衡圧力、Po1tcs…第1水素吸蔵合金の水素吸蔵時の平衡圧力、Po1…第1水素吸蔵合金の水素吸蔵時の平衡圧力の範囲、Po2…第2水素吸蔵合金の水素吸蔵時の平衡圧力の範囲、Po3…第3水素吸蔵合金の水素吸蔵時の平衡圧力の範囲、Pomin…水素貯蔵装置の水素吸蔵時の平衡圧力、S1…第1水素吸蔵合金の状態を表す点、S2…第2水素吸蔵合金の状態を表す点、S3…第3水素吸蔵合金の状態を表す点、S4…第1水素吸蔵合金の状態を表す点、S42…第1水素吸蔵合金の状態を表す点、S5…第2水素吸蔵合金の状態を表す点、S52…第2水素吸蔵合金の状態を表す点、S6…第3水素吸蔵合金の状態を表す点、S62…第3水素吸蔵合金の状態を表す点、T2max…第2水素吸蔵合金が達する最高の温度、T2min…第2水素吸蔵合金が達する最低の温度、Tcs…低温流体の温度、Te1…第1水素吸蔵合金の水素放出時の温度範囲、Te2…第2水素吸蔵合金の水素放出時の温度範囲、Te3…第3水素吸蔵合金の水素放出時の温度範囲、Ths…高温の流体の温度、To1…第1水素吸蔵合金の水素吸蔵時の温度範囲、To2…第2水素吸蔵合金の水素吸蔵時の温度範囲、To3…第3水素吸蔵合金の水素吸蔵時の温度範囲、VP…空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8