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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102306
(43)【公開日】2023-07-25
(54)【発明の名称】アレーアンテナ
(51)【国際特許分類】
   H01Q 21/06 20060101AFI20230718BHJP
【FI】
H01Q21/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022002672
(22)【出願日】2022-01-12
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人情報通信研究機構「革新的情報通信技術研究開発委託研究/研究開発課題名:テラヘルツ帯を用いたBeyond 5G超高速大容量通信を実現する無線通信技術の研究開発 研究開発項目2 テラヘルツ帯を用いた限定エリア内無線システムの研究開発 研究開発項目3 テラヘルツ帯を用いた地上~NTN プラットホーム間フィーダーリンクシステムの研究開発 副題:テラヘルツ帯通信の高密度化・長距離化に関する研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 拓朗
(72)【発明者】
【氏名】西 清次
【テーマコード(参考)】
5J021
【Fターム(参考)】
5J021AA04
5J021AA09
5J021AA11
(57)【要約】
【課題】アレーアンテナにおけるグレーティングローブの発生を抑制する。
【解決手段】アレーアンテナ1は、それぞれが複数の放射素子111を含む少なくとも4つのサブアレー11を有しており、4つのサブアレー11の中心位置は、四角形Sの4つの頂点に配置されており、前記複数の放射素子111それぞれと、複数の放射素子111それぞれと最も近い他の放射素子111と、を結ぶ直線の方向が、四角形Sの4つの辺の方向と異なっている。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アレーアンテナであって、
それぞれが複数の放射素子を含む少なくとも4つのサブアレーを有しており、
前記少なくとも4つのサブアレーの中心位置は、前記アレーアンテナに含まれるサブアレーの数以下の数の辺を有する多角形の頂点に配置されており、
前記複数の放射素子それぞれと、前記複数の放射素子それぞれと最も近い他の放射素子と、を結ぶ直線の方向が、前記多角形の辺の方向と異なっている、
アレーアンテナ。
【請求項2】
前記少なくとも4つのサブアレーのそれぞれは、前記複数の放射素子として、正方形の頂点に配置された4つの放射素子を含んでいる、
請求項1に記載のアレーアンテナ。
【請求項3】
前記少なくとも4つのサブアレーに含まれる4つのサブアレーが第1サブアレー、第2サブアレー、第3サブアレー及び第4サブアレーであり、前記複数の放射素子のうち第1放射素子と、前記第1放射素子に最も近い第2放射素子との距離をdとした場合、
前記第1サブアレーの中心位置と前記第2サブアレーの中心位置とは、第1方向においてdだけ離れており、前記第1方向と直交する第2方向において2dだけ離れており、
前記第2サブアレーの中心位置と前記第3サブアレーの中心位置とは、第1方向において2dだけ離れており、前記第2方向においてdだけ離れており、
前記第3サブアレーの中心位置と前記第4サブアレーの中心位置とは、第1方向においてdだけ離れており、前記第2方向において2dだけ離れており、
前記第4サブアレーの中心位置と前記第1サブアレーの中心位置とは、第1方向において2dだけ離れており、前記第2方向においてdだけ離れている、
請求項1又は2に記載のアレーアンテナ。
【請求項4】
前記第1放射素子と前記第2放射素子との距離dは、前記アレーアンテナが放射する電波の波長をλとした場合に、0.5λ以上0.8λ未満である、
請求項3に記載のアレーアンテナ。
【請求項5】
前記サブアレーに給電される信号の位相差の基準値をτとした場合に、4つの前記サブアレーのうち1つの前記サブアレーの給電位相に対して、他の3つの前記サブアレーの給電位相は、それぞれτ、2τ、3τだけ進んでいる、
請求項1から4のいずれか一項に記載のアレーアンテナ。
【請求項6】
前記少なくとも4つのサブアレーのそれぞれは、前記複数の放射素子に対して同一の位置に配置された給電口をさらに有する、
請求項1から5のいずれか一項に記載のアレーアンテナ。
【請求項7】
少なくとも1つの前記サブアレーの給電口が、前記4つのサブアレーのそれぞれが有する前記複数の放射素子のうち、他の前記サブアレーに最も近い複数の放射素子を結ぶ線に囲まれた領域内に設けられている、
請求項6に記載のアレーアンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレーアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の放射素子を含む複数のサブアレーアンテナ(以下、「サブアレー」という)により構成されるアレーアンテナが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-186337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アレーアンテナにおいては、複数のサブアレーに異なる位相で給電することにより、給電位相に応じた方向に電波を放射させることができる。しかしながら、給電位相によっては、電波を放射させたい方向(主放射方向)以外の特定の方向に強い電波が放射されてしまうことがある。これをグレーティングローブという。このようなグレーティングローブを抑制することが求められている。
【0005】
従来のアレーアンテナにおいては、複数のサブアレーが一直線上に配置されていた。このように一直線上に配置された複数のサブアレーに同一位相で給電すると、グレーティングローブが発生しやすいという問題が生じていた。
【0006】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、アレーアンテナにおけるグレーティングローブの発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のアレーアンテナは、それぞれが複数の放射素子を含む少なくとも4つのサブアレーを有しており、前記少なくとも4つのサブアレーの中心位置は、前記アレーアンテナに含まれるサブアレーの数以下の数の辺を有する多角形の頂点に配置されており、前記複数の放射素子それぞれと、前記複数の放射素子それぞれと最も近い他の放射素子と、を結ぶ直線の方向が、前記多角形の辺の方向と異なっている。
【0008】
前記少なくとも4つのサブアレーのそれぞれは、前記複数の放射素子として、正方形の頂点に配置された4つの放射素子を含んでいてもよい。
【0009】
前記少なくとも4つのサブアレーに含まれる4つのサブアレーが第1サブアレー、第2サブアレー、第3サブアレー及び第4サブアレーであり、前記複数の放射素子のうち第1放射素子と、前記第1放射素子に最も近い第2放射素子との距離をdとした場合、前記第1サブアレーの中心位置と前記第2サブアレーの中心位置とは、第1方向においてdだけ離れており、前記第1方向と直交する第2方向において2dだけ離れており、前記第2サブアレーの中心位置と前記第3サブアレーの中心位置とは、第1方向において2dだけ離れており、前記第2方向においてdだけ離れており、前記第3サブアレーの中心位置と前記第4サブアレーの中心位置とは、第1方向においてdだけ離れており、前記第2方向において2dだけ離れており、前記第4サブアレーの中心位置と前記第1サブアレーの中心位置とは、第1方向において2dだけ離れており、前記第2方向においてdだけ離れていてもよい。
【0010】
前記第1放射素子と前記第2放射素子との距離dは、前記アレーアンテナが放射する電波の波長をλとした場合に、0.5λ以上0.8λ未満であってもよい。
【0011】
前記サブアレーに給電される信号の位相差の基準値をτとした場合に、4つの前記サブアレーのうち1つの前記サブアレーの給電位相に対して、他の3つの前記サブアレーの給電位相は、それぞれτ、2τ、3τだけ進んでいてもよい。
【0012】
前記少なくとも4つのサブアレーのそれぞれは、前記複数の放射素子に対して同一の位置に配置された給電口をさらに有してもよい。
【0013】
少なくとも1つの前記サブアレーの給電口が、前記4つのサブアレーのそれぞれが有する前記複数の放射素子のうち、他の前記サブアレーに最も近い複数の放射素子を結ぶ線に囲まれた領域内に設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、アレーアンテナにおけるグレーティングローブの発生を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係るアレーアンテナ1Aの構成例を示す図である。
図2】第1実施形態に係るアレーアンテナ1Aの構成例を示す図である。
図3】本シミュレーションで用いるパラメータを説明するための図である。
図4】第1シミュレーション結果を示す図である。
図5】第2シミュレーション結果を示す図である。
図6】比較例のアレーアンテナの第1シミュレーション結果を示す図である。
図7】比較例のアレーアンテナの第2シミュレーション結果を示す図である。
図8】第2実施形態に係るアレーアンテナ1B及びアレーアンテナ1Cの構成を示す図である。
図9】第3実施形態に係るアレーアンテナ1Dの構成を示す図である。
図10】第4実施形態に係るアレーアンテナ1Eの構成を示す図である。
図11】第5実施形態に係るアレーアンテナ1Fの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<本実施形態のアレーアンテナの概要>
本願の発明者は、複数のサブアレーを有するアレーアンテナのグレーティングローブを抑制する方法を鋭意研究した。その結果、各サブアレーに含まれる複数の放射素子それぞれと、当該複数の放射素子それぞれと最も近い同じサブアレー内の他の放射素子と、を結ぶ直線の方向と、互いに最も近い複数のサブアレーの中心位置を結ぶ直線の方向とが一致しないようにすることで、グレーティングローブを抑制できることを見出した。
【0017】
すなわち、本願の発明者は、アレーアンテナが、それぞれが複数の放射素子を含む少なくとも4つのサブアレーを有しており、少なくとも4つのサブアレーの中心位置が、アレーアンテナに含まれるサブアレーの数以下の数の辺を有する多角形の頂点に配置されており、複数の放射素子それぞれと、複数の放射素子それぞれと最も近い他の放射素子と、を結ぶ直線の方向が、多角形の辺の方向と異なっていることが望ましいということを見出した。本明細書においては、この条件を満たすアレーアンテナの構成例を示すとともに、この条件を満たすアレーアンテナとこの条件を満たさないアレーアンテナの電波放射特性を比較した結果を示す。
【0018】
<第1実施形態>
[アレーアンテナ1Aの構成]
図1及び図2は、第1実施形態に係るアレーアンテナ1Aの構成例を示す図である。アレーアンテナ1Aは、第1サブアレー11-1から第4サブアレー11-4までの4つのサブアレー11を有する。図1(a)は、アレーアンテナ1Aにおける4つのサブアレー11の形状及び配置を模式的に示しており、図1(b)は、それぞれのサブアレー11の構成を模式的に示している。
【0019】
図1(b)に示すように、4つのサブアレー11のそれぞれは、正方形の頂点に配置された4つの放射素子111を含んでいる。すなわち、それぞれのサブアレー11は、4つの放射素子111(111-1~111-4)及び給電口112を有する。
【0020】
4つの放射素子111は、正方形の頂点に位置するように配置されている。すなわち、4つの放射素子111のうち、最も近い複数の放射素子111の間の距離は同一である。また、第1放射素子111-1及び第2放射素子111-2を結ぶ直線の方向と、第3放射素子111-3及び第4放射素子111-4を結ぶ直線の方向とは同一のX方向である。第1放射素子111-1及び第4放射素子111-4を結ぶ直線の方向と、第2放射素子111-2及び第3放射素子111-3を結ぶ直線の方向とは、X方向と直交するY方向である。
【0021】
図1(b)においては、4つの放射素子111の中心位置Cが示されている。中心位置Cは、4つの放射素子111で形成される多角形(すなわち四角形)の重心位置に相当する。図1(b)に示す例の場合、中心位置Cは、第1放射素子111-1と第3放射素子111-3とを結ぶ直線と、第2放射素子111-2と第4放射素子111-4とを結ぶ直線との交点の位置である。
【0022】
給電口112は、4つの放射素子111に送信電力を供給するための入力端子であるとともに、受信した受信電力を出力するための出力端子であり、外部回路に接続された導波管に結合している。4つのサブアレー11それぞれの給電口112は、他のサブアレー11に重ならない領域に配置されている。また、図1(a)に示すアレーアンテナ1Aにおいては、4つのサブアレー11それぞれの給電口112が、各サブアレー11が有する複数の放射素子111に対して同一の位置に配置されている。
【0023】
また、複数のサブアレー11が有する複数の給電口112のうち少なくとも1つの給電口112は、4つのサブアレー11のそれぞれが有する複数の放射素子111のうち、他のサブアレー11に最も近い複数の放射素子111を結ぶ線に囲まれた領域内に設けられている。図1(a)に示す例の場合、第4サブアレー11-4が有する給電口112は、符号a、b、c、dで示す4つの放射素子111を頂点とする四角形内の領域に設けられている。給電口112がこのような領域に配置されていることで、アレーアンテナ1を小型化することができる。
【0024】
図1(a)及び図1(b)に示すように、4つの放射素子111のうち、最も近い2つの放射素子111(すなわち第1放射素子と第2放射素子)の間の距離はdである。ここで、距離dは、アレーアンテナ1が放射する電波の周波数の波長をλとした場合に、0.5λ以上0.8λ未満であることが望ましい。距離dがこの範囲になっていることで、グレーティングローブを抑制しやすくなる。
【0025】
第1放射素子111-1と第2放射素子111-2との距離をdとした場合、第1サブアレー11-1の中心位置C1と第2サブアレー11-2の中心位置C2とは、X方向(第1方向に相当)においてdだけ離れており、X方向と直交するY方向(第2方向に対応)において2dだけ離れている。ここでサブアレーの中心とは、前述のようにサブアレーを構成する複数の放射素子の位置から求められる重心を示すものとする。
【0026】
同様に、第2サブアレー11-2の中心位置C2と第3サブアレー11-3の中心位置C3とは、X方向において2dだけ離れており、Y方向においてdだけ離れている。第3サブアレー11-3の中心位置C3と第4サブアレー11-4の中心位置C4とは、X方向においてdだけ離れており、Y方向において2dだけ離れている。第4サブアレー11-4の中心位置C4と第1サブアレー11-1の中心位置C1とは、X方向において2dだけ離れており、Y方向においてdだけ離れている。
【0027】
図2に示すように、4つのサブアレー11の中心位置C1~C4は、四角形Sの4つの頂点に配置されている。すなわち、4つのサブアレー11の位置関係は、風車の羽の位置関係と同等である。
【0028】
そして、複数の放射素子111のうち、第1放射素子と、当該第1放射素子と最も近い第2放射素子と、を結ぶ直線の方向が、四角形Sの4つの辺の方向と異なっている。すなわち、サブアレー11を構成する複数の放射素子111により形成される多角形の辺の方向と、四角形Sの4つの辺の方向とが異なっている。
【0029】
具体的には、四角形Sの4つの辺の方向は、X方向及びY方向と異なる方向になっている。より具体的には、四角形Sの4つの辺の方向は、第1放射素子111-1と第2放射素子111-2とを結ぶ直線の方向、第2放射素子111-2と第3放射素子111-3とを結ぶ直線の方向、第3放射素子111-3と第4放射素子111-4とを結ぶ直線の方向、及び第4放射素子111-4と第1放射素子111-1とを結ぶ直線の方向の何れとも異なっている。
【0030】
4つのサブアレー11の中心位置C1~C4が、各サブアレー11に含まれる最も近い複数の放射素子111を結ぶ直線の方向と異なる方向になるように構成されていることで、後述するシミュレーション結果が示すようにグレーティングローブが抑制される。
【0031】
なお、4つのサブアレー11のそれぞれには異なる位相の信号が給電されることにより、電波の放射方向を変化させることができる。複数のサブアレー11に給電される信号の位相差の基準値をτとした場合に、4つの前記サブアレーのうち1つのサブアレー11の給電位相に対して、他の3つのサブアレー11の給電位相は、それぞれτ、2τ、3τだけ進んでいることが望ましい。
【0032】
[シミュレーション結果]
以下、アレーアンテナ1Aの電波放射特性と比較例のアレーアンテナの電波放射特性のシミュレーション結果を説明する。シミュレーションにおいては、距離d=0.5λとしている。
【0033】
図3は、シミュレーションで用いるパラメータを説明するための図である。アレーアンテナ1の面がXY平面上にあるとして、放射方向とZ方向との角度をθ、放射方向とX方向との角度をΦとする。
【0034】
図4は、図1図2に示すアレーアンテナ1Aの第1シミュレーション、すなわちXZ平面内で主放射ビームの方向を変化させる場合の電波放射特性のシミュレーション結果を示す図である。図4(a)は、アレーアンテナ1Aのサブアレー11-1、11-2、11-3及び11-4を構成する各4つの放射素子の給電位相を示す図である。図4(a)においては、第2サブアレー11-2の給電位相に対して、第1サブアレー11-1の給電位相がτ、第3サブアレー11-3の給電位相が2τ、第4サブアレー11-4の給電位相が3τだけ進むようにしており、τを変化させることにより主放射ビームの方向が変化する。各サブアレーを構成する放射素子の給電位相としてはτ、2τ、3τの変化分だけを記載しており、放射素子間の固定的な位相差は表示していない。以下の例でも同様である。
【0035】
図4(b)は、このような給電位相のアレーアンテナ1Aの電波放射特性を示す図である。図4(b)の横軸は放射方向とZ方向との角度θを示しており、縦軸は放射される電波の強度に相当するゲイン(dB)を示している。
【0036】
図4(b)における実線は、τ=0°の場合(すなわち、全てのサブアレー11の給電位相が同一である場合)の電波放射特性を示している。破線はτ=50°の場合を示しており、一点鎖線はτ=100°の場合を示しており、二点鎖線はτ=150°の場合を示している。どの場合においても主放射ビームのゲインに対してグレーティングローブのゲインは十分に低く抑制されている。
【0037】
図5は、アレーアンテナ1Aの第2シミュレーション、すなわちYZ平面内で主放射ビームの方向を変化させる場合の電波放射特性のシミュレーション結果を示す図である。図5(a)は、アレーアンテナ1Aのサブアレー11-1、11-2、11-3及び11-4を構成する各4つの放射素子の給電位相を示す図である。図5(a)においては、第1サブアレー11-1の給電位相に対して、第2サブアレー11-2の給電位相が2τ、第3サブアレー11-3の給電位相が3τ、第4サブアレー11-4の給電位相がτだけ進むようにしている。図5(b)に示すように、この場合においてもグレーティングローブが十分に抑制されている。
【0038】
図6は、比較例のアレーアンテナの第1シミュレーション結果を示す図である。比較例のアレーアンテナにおいては、図6(a)に模式的に示すように、複数のサブアレーがX方向において同一直線上に配置されている。つまり、サブアレー21-1と21-2、サブアレー21-3と21-4とはそれぞれ直線上に配置され、相互にサブアレーの放射素子の距離分だけずらして配置されている。サブアレー21-1の給電位相に対して、サブアレー21-4の給電位相がτ、サブアレー21-2の給電位相が2τ、サブアレー21-3の給電位相が3τだけ進むようにしている。この場合は、XZ平面(Φ=0°)において放射方向が変化し、グレーティングローブがある程度抑制されている。
【0039】
図7は、比較例のアレーアンテナの第2シミュレーション結果を示す図である。サブアレー21-1の給電位相とサブアレー21-2の給電位相とは等しく、サブアレー21-3の給電位相とサブアレー21-4の給電位相とをτだけ進めている。この場合は、YZ平面(Φ=90°)において主放射ビームの方向が変化する。図7(b)においては、大きなグレーティングローブが発生していることがわかる。
【0040】
以上の比較結果から、本実施形態に係るアレーアンテナ1Aは、幅広く放射方向を変化させられるとともに、従来のアレーアンテナに比べてグレーティングローブを十分に抑制できることが確認できた。
【0041】
<第2実施形態>
図8は、第2実施形態に係るアレーアンテナ1B及びアレーアンテナ1Cの構成を示す図である。アレーアンテナ1B及びアレーアンテナ1Cは、それぞれのサブアレー11が2つの放射素子111を有しているという点で図1に示したアレーアンテナ1Aと異なっている。アレーアンテナ1B及びアレーアンテナ1Cにおける2つの放射素子111の中心位置を結ぶ四角形の辺の方向は、2つの放射素子111を結ぶ直線の方向と異なっている。このような構成においてもグレーティングローブが抑制される。
【0042】
<第3実施形態>
図9は、第3実施形態に係るアレーアンテナ1Dの構成を示す図である。アレーアンテナ1Dは、それぞれのサブアレー11が3つの放射素子111を有しているという点で図1に示したアレーアンテナ1Aと異なっている。アレーアンテナ1Dにおける3つの放射素子111の中心位置を結ぶ四角形の辺の方向は、3つの放射素子111により形成される三角形のそれぞれの辺の方向と異なっている。このような構成においてもグレーティングローブが抑制される。
【0043】
<第4実施形態>
図10は、第4実施形態に係るアレーアンテナ1Eの構成を示す図である。アレーアンテナ1Eは、9個のサブアレー11を有しているという点で図1に示したアレーアンテナ1Aと異なっている。アレーアンテナ1Eにおいては、複数のサブアレー11の中心位置を結ぶ直線の方向が、サブアレー11に含まれている複数の放射素子111のうち最も近い2つの放射素子111を結ぶ直線の方向と異なっている。このような構成のアレーアンテナ1Eにおいても、グレーティングローブが抑制される。
【0044】
<第5実施形態>
図11は、第5実施形態に係るアレーアンテナ1Fの構成を示す図である。アレーアンテナ1Fは、16個のサブアレー11を有しているという点で図1に示したアレーアンテナ1Aと異なっている。アレーアンテナ1Fにおいては、複数のサブアレー11の中心位置を結ぶ直線の方向が、サブアレー11に含まれている複数の放射素子111のうち最も近い2つの放射素子111を結ぶ直線の方向と異なっている。このような構成のアレーアンテナ1Fにおいても、グレーティングローブが抑制される。
【0045】
<その他の実施形態>
本発明に係るアレーアンテナ1の形態は、以上に例示した形態に限らず各種の変形が可能である。一例として、以上の説明においては、最も近い複数のサブアレー11の中心位置の間の第1方向の距離及び第2方向の距離が、d又は2dのいずれかであり、4つのサブアレー11の中心位置が正方形の頂点に配置されていたが、これらの距離はd又は2dに限らず、4つのサブアレー11の中心位置が長方形、平行四辺形又は台形の頂点に配置されていてもよい。
【0046】
また、以上に例示した形態においては、サブアレー11が有する複数の放射素子111が正方形の頂点に配置されていたが、複数の放射素子111の位置関係は、複数のサブアレー11の中心位置を結ぶ直線の方向と、最も近い複数の放射素子111を結ぶ直線の方向とが一致しない限りにおいて、正方形の頂点以外の位置に配置されていてもよい。例えば、アレーアンテナが5つ以上のサブアレーを有しており、5つ以上のサブアレーの中心位置を結ぶ多角形の辺の方向が、サブアレーに含まれる最も近い複数の放射素子を結ぶ直線の方向と異なるように構成されていてもよい。
【0047】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0048】
1 アレーアンテナ
11 サブアレー
21 サブアレー
111 放射素子
112 給電口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11