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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102326
(43)【公開日】2023-07-25
(54)【発明の名称】コンクリート
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/02 20060101AFI20230718BHJP
   C04B 22/06 20060101ALI20230718BHJP
   C04B 22/14 20060101ALI20230718BHJP
   C04B 24/32 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B22/06 Z
C04B22/14 A
C04B24/32 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022002716
(22)【出願日】2022-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】501173461
【氏名又は名称】太平洋マテリアル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】長塩 靖祐
(72)【発明者】
【氏名】倉形 公悦
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112MB13
4G112PB03
4G112PB10
4G112PB36
(57)【要約】
【課題】凝結時間を短縮でき、収縮補償コンクリートの規格値内の拘束膨張ひずみが得られるとともに乾燥収縮ひずみも小さいコンクリートを提供する。
【解決手段】収縮低減剤と、膨張材及び硫酸アルミニウムを含有するセメント混和材とを含むコンクリートであって、前記セメント混和材100質量部中、膨張材が80~99質量部、硫酸アルミニウムが1~20質量部であり、かつ、セメント混和材の混和量が20~30kg/m3であることを特徴とするコンクリート。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収縮低減剤と、膨張材及び硫酸アルミニウムを含有するセメント混和材とを含むコンクリートであって、前記セメント混和材100質量部中、膨張材が80~99質量部、硫酸アルミニウムが1~20質量部であり、かつ、セメント混和材の混和量が20~30kg/m3であることを特徴とするコンクリート。
【請求項2】
前記硫酸アルミニウムは、150μmの篩残分が10~100質量%であることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート。
【請求項3】
前記収縮低減剤の添加量が1.5~12kg/m3であることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンクリート。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収縮低減剤を使用したコンクリートに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、セメントを使用するモルタル、コンクリートの硬化体は、乾燥による体積の減少に伴う乾燥収縮が生じることが知られている。この乾燥収縮を抑制する手段として、セメント用乾燥収縮低減剤が提案されている(特許文献1等)。しかしながら、収縮低減剤を使用したコンクリートは、凝結時間が遅れる問題がある。収縮低減剤量を低減すれば凝結時間の遅れを回避できるが、それでは乾燥収縮ひずみが大きくなり乾燥収縮によるひび割れが発生する可能性がある。また、膨張材と収縮低減剤を併用して乾燥収縮ひずみを小さくする方策もあるが、その場合には膨張ひずみが大きくなるため、拘束膨張ひずみが収縮補償コンクリートの規格値(材齢7日のコンクリート拘束膨張ひずみが150~250×10-6)を超えてしまう。さらに、その場合には圧縮強度が低下しやすくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭59-184753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、収縮低減剤を使用した場合においても、凝結時間を短縮でき、収縮補償コンクリートの規格値内の拘束膨張ひずみが得られるとともに、乾燥収縮ひずみも小さいコンクリートを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は、次の〔1〕~〔3〕を提供するものである。
〔1〕収縮低減剤と、膨張材及び硫酸アルミニウムを含有するセメント混和材とを含むコンクリートであって、前記セメント混和材100質量部中、膨張材が80~99質量部、硫酸アルミニウムが1~20質量部であり、かつ、セメント混和材の混和量が20~30kg/m3であることを特徴とするコンクリート。
〔2〕前記硫酸アルミニウムは、150μmの篩残分が10~100質量%である〔1〕のコンクリート。
〔3〕前記収縮低減剤の添加量が1.5~12kg/m3である〔1〕又は〔2〕のコンクリート。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、凝結時間を短縮でき、収縮補償コンクリートの規格値内の拘束膨張ひずみが得られるとともに、乾燥収縮ひずみも小さいコンクリートを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明のコンクリートは、収縮低減剤と、膨張材及び硫酸アルミニウムを含有するセメント混和材とを含み、セメント混和材100質量部中、膨張材が80~99質量部、硫酸アルミニウムが1~20質量部であって、セメント混和材のコンクリート中の混和量が20~30kg/m3である。以下、詳細に説明する。
【0008】
本発明におけるセメント混和材中の膨張材としては、遊離生石灰(f-CaO)を有効成分とするもの、3CaO・3Al23・CaSO4(アウイン)等のカルシウムサルフォアルミネートを有効成分とするもの、さらに遊離生石灰及びカルシウムサルフォアルミネートの両方を有効成分とするもの、いずれも使用できる。特に、遊離生石灰の水和による体積増加によって膨張作用が発現するものが好ましい。膨張材中の遊離生石灰含有量としては、30~80質量%が好ましく、40~70質量%がより好ましい。
【0009】
本発明における膨張材中には、上記成分の他に、水硬性化合物として、CaO・2SiO2(C2S)、CaO・3SiO2(C3S)等のカルシウムシリケート、CaO・Al23(CA)、12CaO・7Al23(C127)、3CaO・Al23(C3A)等のカルシウムアルミネート、4CaO・Al23・Fe23(C4AF)、6CaO・2Al23・Fe23(C62F)等のカルシウムアルミノフェライトが含まれてもよい。膨張材中の水硬性化合物の含有量としては、3~40質量%が好ましく、5~30質量%がより好ましい。
【0010】
膨張材中には、さらに石膏を含むことができる。石膏としては、半水石膏、二水石膏、無水石膏等が挙げられるが、特に無水石膏が好ましい。膨張材中の石膏の含有量は、2~30質量%が好ましく、3~25質量%がより好ましい。
【0011】
膨張材の粉末度としては、ブレーン比表面積で2000~7000cm2/gが好ましく、3000~6500cm2/gがより好まく、4000~6000cm2/gがさらに好ましい。
【0012】
次に、本発明におけるセメント混和材中の硫酸アルミニウムとしては、一般に市販されている粉末状のものを使用することができる。例えば、凝集剤用途として市販されている粉末状硫酸アルミニウム(硫酸バンド)は、水和物(Al2(SO43・xH2O)の形態であるが、無水塩のものでも、あるいは非晶質のものでも使用可能である。粉末形態での保管上の観点からは、8水塩から18水塩の結晶水を含むものが好ましい。
【0013】
硫酸アルミニウムの粒度としては、フレッシュコンクリートのスランプ性状等の観点から、150μm篩残分が10~100質量%であることが好ましく、20~90質量%であることがより好ましく、40~80質量%であることがさらに好ましい。
【0014】
セメント混和材中の膨張材及び硫酸アルミニウムの含有量は、セメント混和材100質量部中、膨張材が80~99質量部、硫酸アルミニウムが1~20質量部である。硫酸アルミニウムの含有量が1質量部未満では凝結時間が長くなってしまい、一方硫酸アルミニウムの含有量が20質量部を超えると拘束膨張性能を確保できなくなる虞があり、またフレッシュ性状が低下する虞がある。硫酸アルミニウムの含有量としては、3~18質量部がより好ましく、5~15質量部がさらに好ましい。膨張材と硫酸アルミニウムは、混合装置で十分に混合され、セメント混和材として調製される。
【0015】
本発明におけるセメント混和材には、上記構成成分の他に、本発明の特長が損なわれない範囲で、少量の各種添加剤が含まれてもかまわない。この種の添加剤としては、例えば、AE剤、減水剤、起泡剤、発泡剤、凝結調整剤、硬化促進剤、防水剤、撥水剤、保水剤、防錆剤、増粘剤、顔料、白華防止剤等が挙げられる。
【0016】
本発明のコンクリートにおけるセメント混和材の混和量は、コンクリートの収縮補償の観点から20~30kg/m3である。25~30kg/m3がより好ましい。
【0017】
本発明における収縮低減剤は、一般的にコンクリートに使用されるものであれば、特に限定されるものではない。その成分としては、例えば、アルコールのアルキレンオキシド付加物,ポリエーテル、ポリオキシアルキレン・アルコールエーテル、グリコールエーテル・アミノアルコール誘導体、アルキレンオキシド共重合体等が挙げられ、これらから選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0018】
本発明のコンクリートにおける収縮低減剤の添加量としては、乾燥収縮ひずみを小さく抑える観点から、1.5~12kg/m3であることが好ましい。また、2~9kg/m3であることがより好ましく、3~6kg/m3であることがさらに好ましい。
【0019】
本発明におけるコンクリートには、上記の材料の他に、セメント、骨材及び水が使用されるが、特に限定されるものではなく、通常のコンクリートに使用されるセメント、骨材及び水を使用することができる。なお、本発明におけるコンクリートには、細骨材のみを使用するモルタルも含まれる。
【0020】
本発明のコンクリートに用いるセメントとしては、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、エコセメント、及び前記ポルトランドセメントに、高炉スラグ粉末、フライアッシュ、珪石粉末、シリカフューム、または石灰石粉末等を混合してなる混合セメントから選ばれる1種以上が挙げられる。単位セメント量は、好ましくは270~500kg/m、より好ましくは300~500kg/mである。
【0021】
本発明のコンクリートに用いる骨材としては、一般にモルタルコンクリート用に使用する骨材であれば特に限定されない。具体的には、細骨材は、川砂、山砂、陸砂、海砂、砕砂、硅砂、および軽量細骨材等から選ばれる1種以上が挙げられ、粗骨材は川砂利、山砂利、砕石、および軽量粗骨材等から選ばれる1種以上が挙げられる。また、天然骨材に限定されず、スラグ骨材等の人工骨材や再生骨材も用いることができる。また、前記細骨材および粗骨材の単位量は、いずれの骨材も、良好なワーカビリティの観点から、好ましくは500~1100kg/m、より好ましくは600~1000kg/mである。
【0022】
本発明のコンクリートに用いる水は特に限定されず、上水道水、下水処理水、および生コンの上澄み水等の、コンクリートの強度発現性や流動性等に影響を与えないものであれば用いることができる。また、単位水量は、良好なワーカビリティの観点から、好ましくは100~200kg/m、より好ましくは120~180kg/mである。
【0023】
さらに、本発明のコンクリートには、通常のコンクリートに使用されるAE剤、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤及び高性能AE減水剤等の混和剤を使用することができる。なお、これらの混和剤以外にも、コンクリートの用途に応じて、発泡剤、起泡剤、防水剤、防錆剤、増粘剤、保水剤、顔料、撥水剤、白華防止剤、繊維及び再乳化粉末樹脂等を使用することができる。
【実施例0024】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。
【0025】
(実施例1)
まず、膨張材と硫酸アルミニウムを配合し、セメント混和材を調製した。使用した膨張材は、生石灰系膨張材(遊離生石灰含有量;50質量%、ブレーン比表面積5,130cm2/g)である。また、硫酸アルミニウムとしては、市販の硫酸バンド(アルミナ17%品)を粒度調整したもの(150μm篩残分60質量%)を使用した。膨張材と硫酸アルミニウムとは、ブレンドミキサで十分混合し、セメント混和材とした。
【0026】
【表1】
【0027】
調製したセメント混和材を使用して、20℃環境下において、コンクリートを作製した。コンクリート配合を表2に示す。セメントは普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)を、細骨材は掛川産山砂を、粗骨材は桜川産砕石を使用した。収縮低減剤としては、収縮低減剤A(市販品;ポリオキシエチレンアルキルエーテル)及び収縮低減剤B(市販品;低級アルコールのアルキレンオキシド付加物)の2種類を使用した。なお、セメントとセメント混和材の合計量(記号P)に対して、混和剤(市販品;AE減水剤)を0.6質量%添加した。
【0028】
【表2】
【0029】
<評価試験>
作製したコンクリートについて、スランプ、凝結時間、拘束膨張ひずみ、乾燥収縮ひずみ及び圧縮強度を試験した。試験方法を下記に示す。
(1)スランプ
「JIS A 1101 コンクリートのスランプ試験」に準拠して試験した。
(2)凝結試験
「JIS A 1147 コンクリートの凝結試験方法」に準拠して試験した。
(3)拘束膨張試験
「JIS A 6202 コンクリート用膨張材 付属書B」に準拠し、材令7日における拘束膨張ひずみを測定した。
(4)乾燥収縮ひずみ試験
「JIS A 1129 モルタル及びコンクリートの長さ変化測定方法」に準拠して試験した。コンクリートを24時間で脱型し、材令7日間20℃水中養生後に基長を測定した上で、材令6ヶ月におけるひずみ量を測定し、乾燥収縮ひずみを算定した。コンクリート供試体は材令期間中20℃、湿度60%の恒温室に保管した。
(5)圧縮強度試験
「JIS A 1108 コンクリートの圧縮強度試験方法」に準拠して、材令28日の圧縮強度を試験した。養生温度は試験直前まで20℃とした。
【0030】
<試験結果>
試験結果を表3に示す。
本発明におけるコンクリートは、収縮補償コンクリートの規格値内(150~250×10-6)の拘束膨張ひずみが得られるとともに、乾燥収縮ひずみも小さく、良好な圧縮強度を有するコンクリートを得ることができることが分かった。
【0031】
【表3】
【0032】
(実施例2)
次に、セメント混和材で使用する硫酸アルミニウムの粒度の影響について評価した。
粒度調整した硫酸アルミニウムを用いたセメント混和材を表4に示す。
【0033】
【表4】
【0034】
調製したセメント混和材を添加し、実施例1と同様にコンクリートを作製して、各評価試験を実施した。コンクリート配合を表5に、試験結果を表6に示す。
硫酸アルミニウムの150μm残分が0質量%のものでは、スランプが小さくなる傾向を示した。また、材令7日の拘束膨張ひずみは、収縮補償コンクリートの規格値内に入っているものの、小さくなる傾向がみられた。
【0035】
【表5】
【0036】
【表6】