(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102337
(43)【公開日】2023-07-25
(54)【発明の名称】船舶甲板用遮音性床構造体の施工方法及び船舶甲板用遮音性床構造体
(51)【国際特許分類】
B63B 3/48 20060101AFI20230718BHJP
C04B 28/06 20060101ALI20230718BHJP
C04B 22/14 20060101ALI20230718BHJP
C04B 24/26 20060101ALI20230718BHJP
C04B 24/38 20060101ALI20230718BHJP
C04B 18/14 20060101ALI20230718BHJP
C04B 24/32 20060101ALI20230718BHJP
C04B 22/10 20060101ALI20230718BHJP
C04B 24/06 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
B63B3/48
C04B28/06
C04B22/14 B
C04B24/26 E
C04B24/38 B
C04B18/14 A
C04B24/32 A
C04B22/10
C04B24/06 A
C04B24/26 D
C04B24/26 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022002743
(22)【出願日】2022-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】515181409
【氏名又は名称】宇部興産建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(72)【発明者】
【氏名】蒔田 浩司
(72)【発明者】
【氏名】戸田 靖彦
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112MB06
4G112MB23
4G112PA29
4G112PB08
4G112PB11
4G112PB17
4G112PB30
4G112PB31
4G112PB36
4G112PB39
(57)【要約】
【課題】制振材層と船舶用レベリング材層との接着性に優れ、かつ船舶用レベリング材層の仕上がり面の平坦性に優れる、船舶甲板用遮音性床構造体の施工方法を提供すること。
【解決手段】船舶甲板床上面に、改質アスファルト組成物を含む制振材層を貼り付ける工程と、制振材層の上面に、セメント組成物及び合成樹脂のエマルジョンを含む樹脂モルタルを塗布して硬化させ、接着性を有する第一の樹脂モルタル硬化層を形成する工程と、第一の樹脂モルタル硬化層の上面に、自己流動性水硬性組成物及び水を含むセルフレベリング性モルタルを流し込み硬化させ、セルフレベリング性を有するモルタル硬化体下地層を形成する工程と、を備え、セメント組成物100質量部に対する合成樹脂の量が25~100質量部である、船舶甲板用遮音性床構造体の施工方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶甲板床上面に、改質アスファルト組成物を含む制振材層を貼り付ける工程と、
前記制振材層の上面に、セメント組成物及び合成樹脂のエマルジョンを含む樹脂モルタルを塗布して硬化させ、接着性を有する第一の樹脂モルタル硬化層を形成する工程と、
前記第一の樹脂モルタル硬化層の上面に、自己流動性水硬性組成物及び水を含むセルフレベリング性モルタルを流し込み硬化させ、セルフレベリング性を有するモルタル硬化体下地層を形成する工程と、を備え、
前記セメント組成物100質量部に対する前記合成樹脂の量が25~100質量部である、船舶甲板用遮音性床構造体の施工方法。
【請求項2】
前記船舶甲板床上面に、前記制振材層を貼り付ける前記工程と、
前記制振材層の上面に、前記第一の樹脂モルタル硬化層を形成する前記工程と、
前記第一の樹脂モルタル硬化層の上面に、鋼板からなる拘束層を貼り付ける工程と、
前記拘束層の上面に、セメント組成物及び合成樹脂のエマルジョンを含む樹脂モルタルを塗布して硬化させ、接着性を有する第二の樹脂モルタル硬化層を形成する工程と、
前記第二の樹脂モルタル硬化層の上面に、前記モルタル硬化体下地層を形成する前記工程と、を備える、請求項1に記載の船舶甲板用遮音性床構造体の施工方法。
【請求項3】
前記合成樹脂がエチレン・酢酸ビニル系共重合体を含む、請求項1又は2に記載の施工方法。
【請求項4】
前記制振材層が、改質アスファルト組成物層及びブローンアスファルト組成物が含浸した織布又は不織布層を備え、
前記改質アスファルト組成物がアスファルト及び樹脂を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の施工方法。
【請求項5】
前記セメント組成物が、アルミナセメント100質量部に対して、細骨材150~300質量部及び無機充填材1~100質量部を含み、前記細骨材の最大粒子径が425μm以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の施工方法。
【請求項6】
前記自己流動性水硬性組成物が、セメント及び石膏からなる水硬性成分、細骨材、減水剤、並びに増粘剤と、無機微粉末、消泡剤、凝結調整剤、及び樹脂粉末からなる群より選択される少なくとも1種と、を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の施工方法。
【請求項7】
船舶甲板床、制振材層、接着性を有する第一の樹脂モルタル硬化層、及びセルフレベリング性を有するモルタル硬化体下地層を備え、
前記制振材層が改質アスファルト組成物を含み、
前記第一の樹脂モルタル硬化層がセメント組成物及び合成樹脂のエマルジョンを含む樹脂モルタルの硬化物であり、
前記セメント組成物100質量部に対する前記合成樹脂の量が25~100質量部であり、
前記モルタル硬化体下地層が自己流動性水硬性組成物及び水を含むセルフレベリング性モルタルの硬化物である、船舶甲板用遮音性床構造体。
【請求項8】
前記船舶甲板床、前記制振材層、前記第一の樹脂モルタル硬化層、鋼板からなる拘束層、接着性を有する第二の樹脂モルタル硬化層、及び前記モルタル硬化体下地層を備え、
前記第二の樹脂モルタル硬化層がセメント組成物及び合成樹脂のエマルジョンを含む樹脂モルタルの硬化物である、請求項7に記載の船舶甲板用遮音性床構造体。
【請求項9】
前記合成樹脂がエチレン・酢酸ビニル系共重合体を含む、請求項7又は8に記載の船舶甲板用遮音性床構造体。
【請求項10】
前記制振材層が、改質アスファルト組成物層及びブローンアスファルト組成物が含浸した織布又は不織布層を備え、
前記改質アスファルト組成物がアスファルト及び樹脂を含む、請求項7~9のいずれか一項に記載の船舶甲板用遮音性床構造体。
【請求項11】
前記セメント組成物が、アルミナセメント100質量部に対して、細骨材150~300質量部及び無機充填材1~100質量部を含み、前記細骨材の最大粒子径が425μm以下である、請求項7~10のいずれか一項に記載の船舶甲板用遮音性床構造体。
【請求項12】
前記自己流動性水硬性組成物が、セメント及び石膏からなる水硬性成分、細骨材、減水剤、並びに増粘剤と、無機微粉末、消泡剤、凝結調整剤、及び樹脂粉末からなる群より選択される少なくとも1種と、を含む、請求項7~11のいずれか一項に記載の船舶甲板用遮音性床構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶甲板用遮音性床構造体の施工方法及び船舶甲板用遮音性床構造体に関する。本発明は、具体的には、船舶の居住区域等の一次甲板床張材として用いられる船舶甲板用遮音性床構造体の施工方法及び船舶甲板用遮音性床構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶においては、鋼板で形成される甲板上に一次甲板床張り材を施工し、その上に化粧タイルやカーペットなどの仕上げ材を施工し、船舶床を形成している。これにより、船舶内の居室、共用通路、食堂等の共用区域における歩行時の障害や騒音を抑制して、居住性を改善している。2012年に採択された騒音コードの改訂と義務化により、2018年以降の、引渡し船舶の居住区等の船内騒音に対し、改訂音響コードに基づく遮音材の設置が義務化され、仕切り材の防音性能の規制値が規定された。
【0003】
この居住性改善のため、床張り材の下に制振材層を設けて遮音性を向上させる試みがなされている。例えば特許文献1には、無機材拘束層と樹脂層からなる制振材が、拘束層側のデッキコンポジション層(セメント、骨材、ラテックス等からなるベースコート層)と樹脂層側の床鋼板とでサンドイッチされる構造を有する、船舶の制振構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、シート状の制振材層(制振シート)を積層させ、その上面にセルフレベリング性を有する船舶用レベリング材(デッキコンポジション)を施工する場合、制振材層と船舶用レベリング材との接着強度を確保する必要がある。また、広い面積でのシートの施工には継ぎ目の部分が生じるが、ここの施工に不備があると、レベリング材の仕上がり表面に凹凸が生じてしまう恐れがある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、制振材層と船舶用レベリング材層との接着性に優れ、かつ船舶用レベリング材層の仕上がり面の平坦性に優れる、船舶甲板用遮音性床構造体の施工方法を提供することを目的とする。また、本発明は、上記接着性及び平坦性に優れる船舶甲板用遮音性床構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面は、船舶甲板床上面に、改質アスファルト組成物を含む制振材層を貼り付ける工程と、制振材層の上面に、セメント組成物及び合成樹脂のエマルジョンを含む樹脂モルタルを塗布して硬化させ、接着性を有する第一の樹脂モルタル硬化層を形成する工程と、第一の樹脂モルタル硬化層の上面に、自己流動性水硬性組成物及び水を含むセルフレベリング性モルタルを流し込み硬化させ、セルフレベリング性を有するモルタル硬化体下地層を形成する工程と、を備え、セメント組成物100質量部に対する合成樹脂の量が25~100質量部である、船舶甲板用遮音性床構造体の施工方法を提供する。
【0008】
本開示の他の側面は、船舶甲板床、制振材層、接着性を有する第一の樹脂モルタル硬化層、及びセルフレベリング性を有するモルタル硬化体下地層を備え、制振材層が改質アスファルト組成物を含み、第一の樹脂モルタル硬化層がセメント組成物及び合成樹脂のエマルジョンを含む樹脂モルタルの硬化物であり、セメント組成物100質量部に対する合成樹脂の量が25~100質量部であり、モルタル硬化体下地層が自己流動性水硬性組成物及び水を含むセルフレベリング性モルタルの硬化物である、船舶甲板用遮音性床構造体を提供する。
【0009】
船舶甲板用遮音性床構造体の施工方法の一態様は、船舶甲板床上面に、制振材層を貼り付ける工程と、制振材層の上面に、第一の樹脂モルタル硬化層を形成する工程と、第一の樹脂モルタル硬化層の上面に、鋼板からなる拘束層を貼り付ける工程と、拘束層の上面に、セメント組成物及び合成樹脂のエマルジョンを含む樹脂モルタルを塗布して硬化させ、接着性を有する第二の樹脂モルタル硬化層を形成する工程と、第二の樹脂モルタル硬化層の上面に、モルタル硬化体下地層を形成する前記工程と、を備えていてよい。
【0010】
船舶甲板用遮音性床構造体の一態様は、船舶甲板床、制振材層、第一の樹脂モルタル硬化層、鋼板からなる拘束層、接着性を有する第二の樹脂モルタル硬化層、及びモルタル硬化体下地層を備えていてよい。また、第二の樹脂モルタル硬化層がセメント組成物及び合成樹脂のエマルジョンを含む樹脂モルタルの硬化物であってよい。
【0011】
一態様において、合成樹脂がエチレン・酢酸ビニル系共重合体を含んでいてよい。
【0012】
一態様において、制振材層が、改質アスファルト組成物層及びブローンアスファルト組成物が含浸した織布又は不織布層を備え、改質アスファルト組成物がアスファルト及び樹脂を含んでいてよい。
【0013】
一態様において、セメント組成物が、アルミナセメント100質量部に対して、細骨材150~300質量部及び無機充填材1~100質量部を含んでいてよく、また細骨材の最大粒子径が425μm以下であってよい。
【0014】
一態様において、自己流動性水硬性組成物が、セメント及び石膏からなる水硬性成分、細骨材、減水剤、並びに増粘剤と、無機微粉末、消泡剤、凝結調整剤、及び樹脂粉末からなる群より選択される少なくとも1種と、を含んでよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、制振材層と船舶用レベリング材層との接着性に優れ、かつ船舶用レベリング材層の仕上がり面の平坦性に優れる、船舶甲板用遮音性床構造体の施工方法を提供することができる。また、本発明によれば、上記接着性及び平坦性に優れる船舶甲板用遮音性床構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る船舶甲板用遮音性床構造体の断面模式図である。
【
図2】
図2は、他の実施形態に係る船舶甲板用遮音性床構造体の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本開示は以下の実施形態に限定されない。
【0018】
<船舶甲板用遮音性床構造体の施工方法>
船舶甲板用遮音性床構造体の施工方法は、船舶甲板床上面に、改質アスファルト組成物を含む制振材層を貼り付ける工程と(制振材層貼付工程)、制振材層の上面に、セメント組成物及び合成樹脂のエマルジョンを含む樹脂モルタルを塗布して硬化させ、接着性を有する第一の樹脂モルタル硬化層を形成する工程と(第一の樹脂モルタル硬化層形成工程)、第一の樹脂モルタル硬化層の上面に、自己流動性水硬性組成物及び水を含むセルフレベリング性モルタルを流し込み硬化させ、セルフレベリング性を有するモルタル硬化体下地層を形成する工程と(モルタル硬化体下地層形成工程)、を備える。
【0019】
船舶甲板用遮音性床構造体の施工方法は、制振材層貼付工程と、第一の樹脂モルタル硬化層形成工程と、第一の樹脂モルタル硬化層の上面に、鋼板からなる拘束層を貼り付ける工程と(拘束層貼付工程)、拘束層の上面に、セメント組成物及び合成樹脂のエマルジョンを含む樹脂モルタルを塗布して硬化させ、接着性を有する第二の樹脂モルタル硬化層を形成する工程と(第二の樹脂モルタル硬化層形成工程)、モルタル硬化体下地層形成工程とを備えるものであってもよい。
【0020】
(制振材層貼付工程)
制振材層は改質アスファルト組成物を含む。制振材層は改質アスファルト組成物層(改質アスファルト組成物からなる層)を備える。改質アスファルト組成物層は常温で粘着性を有することができる。制振材層は、必要に応じ粘着層と、粘着層上に設けられた改質アスファルト組成物層を備えることができる。制振材層は、制振材シートから剥離層を剥がしたものであってよい。制振材シートは、改質アスファルト組成物層の表面上に、あるいは粘着層の、改質アスファルト組成物層とは反対側の表面上に、剥離層として、剥離紙又は剥離フィルムを備えていてもよい。
【0021】
改質アスファルト組成物は、例えば、アスファルト及び樹脂を含有していてもよい。制振材層の厚さは、0.5~3.0mmが好ましい。改質アスファルト組成物層の厚さは、0.3~2.5mmが好ましく、補強材層の厚さは、0.2~1.0mmが好ましい。
【0022】
アスファルトは、少なくともストレートアスファルトを含むことが好ましい。ストレートアスファルトとしては、例えば、原油を常圧又は減圧蒸留して、ガソリン、灯油、軽油、潤滑油等を取り除いて得られるもの等が挙げられる。ストレートアスファルトは、JIS K 2207-1996「石油アスファルト」に準拠して測定される針入度(25℃)が10~250程度のストレートアスファルトを好適に使用できる。アスファルトの含有量は、改質アスファルト組成物全量を基準として、例えば20質量%以上とすることができ、好ましくは20~85質量%である。
【0023】
アスファルトは、ブローンアスファルトを含んでいてもよい。
【0024】
樹脂(ポリマー)は、アスファルトの改質剤として機能するものであれば特に限定なく使用することができる。樹脂としては、例えば、スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(SBS)、スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(SIS)、スチレンエチレンプロピレンスチレンブロック共重合体(SEPS)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、アタクチックポリプロピレン(APP)、非晶性ポリαオレフィン(APAO)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)等が挙げられる。これらの樹脂を1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0025】
樹脂の含有量は、所望の改質アスファルト組成物に応じて適宜調整することができ、改質アスファルト組成物全量を基準として、好ましくは1~40質量%、より好ましくは5~30質量%、特に好ましくは10~20質量%である。
【0026】
改質アスファルト組成物は、本発明の特性を損なわない範囲で、他の添加剤をさらに含んでいてもよい。他の添加剤としては、例えば、プロセスオイル、増量剤、発泡剤、架橋剤等が挙げられる。プロセスオイルとしては、例えば、芳香族系オイル、ナフテン系オイル、パラフィン系オイル等が挙げられる。増量剤としては、例えば、タルク、シリカ、クレー、炭酸カルシウム、フライアッシュバルーン、シラスバルーン、パーライトバルーン、ガラスバルーン、セラミックバルーン等が挙げられる。発泡剤としては、例えば、シュウ酸、クエン酸、酒石酸、炭酸水素ナトリム、炭酸水素カリウム等が挙げられる。架橋剤としては、例えば、硫黄系架橋剤、チラウム系架橋剤、樹脂系架橋剤等が挙げられる。これらの他の添加剤の含有量は、所望の改質アスファルト組成物に応じて適宜調整することができる。
【0027】
改質アスファルト組成物層は、アスファルト、樹脂、及び必要に応じて添加される他の添加剤を含有する改質アスファルト組成物から形成することができる。改質アスファルト組成物は、アスファルト、樹脂、及び必要に応じて添加される他の添加剤を混合、混練することによって調製することができる。
【0028】
制振材層は、改質アスファルト組成物層に加え、補強材層を備えていてもよい。制振材層が補強材層を備える場合、補強材層は改質アスファルト組成物層から見て粘着層と反対側の表面、又は改質アスファルト組成物層中に配置されうる。
【0029】
補強材層は、好ましくは織布又は不織布を備える。織布又は不織布の材質としては、例えば、芳香族系ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート等)、ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66等)、ポリアクリロニトリル、ポリオレフィン(低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等)等の合成樹脂繊維、ガラス等の無機繊維などが挙げられる。織布及び不織布にはブローンアスファルト組成物を含浸させることができる。その場合、制振材層は、改質アスファルト組成物層及びブローンアスファルト組成物が含浸した織布又は不織布層を備えたものであるということができる。制振材層が、改質アスファルト組成物が含浸した織布又は不織布層であってもよい。
【0030】
改質アスファルト組成物層が常温で粘着性を有しない場合、制振材層とは別に粘着層を備えてもよい。粘着層としては、常温で粘着性を有する改質アスファルト組成物層等が挙げられる。
【0031】
本工程では、上記の制振材層を、例えば鋼製の船舶甲板床(鋼製の基盤)に貼り付ける。具体的には、制振材シートから剥離層を剥がし、制振材層の粘着層又は改質アスファルト組成物層側を船舶甲板床に貼り付ける。この際、一方方向から制振材層を順に貼付け、ローラーなどを用いて制振材層を船舶甲板床に圧着することが望ましい。また、制振材層間の打継部にすき間が生じると遮音効果が低下するため、隣接する制振材層の端部を10~50mm重ねて貼付けることが好ましい。なお、上記製造方法においては、これらすき間や重なりにより生じる打継部の凹凸を、樹脂モルタル硬化層を設けることにより解消することができる。
【0032】
(第一の樹脂モルタル硬化層形成工程)
セメント組成物は、アルミナセメント、細骨材及び無機充填材を含むことができる。
【0033】
アルミナセメントは、鉱物組成の異なるものが数種知られ市販されているが、それらの主成分はモノカルシウムアルミネート(CA)であり、市販品はその種類によらず使用することができる。なかでも、2800~4000cm2/gのブレーン比表面積を有するアルミナセメントを用いることが好ましい。
【0034】
細骨材としては、表面精度の面から7~8号のものを使用することが適当である。細骨材の最大粒子径は425μm以下であることが好ましく、細骨材100質量%中に300μm超の粒子径を有する粗粒分を5質量%未満含むことが好ましい。このような細骨材として、珪砂、川砂、陸砂、海砂、砕砂等の砂類、スラグ細骨材、再生細骨材、から適宜選択して用いることができる。特に細骨材としては、珪砂、川砂、陸砂、海砂及び砕砂等の砂類から選択したものを好適に用いることができる。
【0035】
無機充填材は、特に、酸化チタン等の無機顔料、又はタルク微粉末等の層状珪酸塩であるフィロケイ酸塩鉱物微粉末から選ばれる一種又は二種以上であることが好ましい。
【0036】
フィロケイ酸塩鉱物微粉末としては、タルク、蛇紋岩、雲母、パイロフィライトを使用することができるが、特にタルクが好ましい。さらに、作業性及び増粘性の面から5~20μm程度の平均粒子径を持つものの使用が好ましい。
【0037】
セメント組成物における細骨材の量は、強度、作業性、コスト等の観点から、アルミナセメント100質量部に対して、150~300質量部であることが好ましい。また、セメント組成物における無機充填材の量は、強度、作業性、コスト等の観点から、アルミナセメント100質量部に対して、1~100質量部であることが好ましい。
【0038】
合成樹脂のエマルジョン(合成樹脂エマルジョン)は、分散質が合成樹脂である分散系溶液である。合成樹脂は、作業性、コスト等の観点から、エチレン・酢酸ビニル系共重合体、アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル-ベオバ共重合体、スチレン-アクリル共重合体を含むことが好ましく、特にエチレン・酢酸ビニル系共重合体を含むことがより好ましい。本発明の性質を損なわない範囲で、合成樹脂はエチレン・酢酸ビニル共重合体以外の樹脂を含むことができる。合成樹脂のエマルジョンは、合成樹脂を含む固形分を水に分散させたものである。合成樹脂のエマルジョン100質量%中の固形分量は、好ましくは40~70質量%である。また、セメント組成物100質量部に対する合成樹脂の量(エマルジョン中の固形分量)は、25~100質量部であり、好ましくは30~85質量部であり、より好ましくは35~75質量部である。合成樹脂のガラス転移温度(Tg)は、低温下での下地追従性に優れる観点から、10℃以下であることが好ましい。
【0039】
樹脂モルタルは、乾燥時間や流動性等を調整するため、本発明の特性を損なわない範囲でさらに添加剤を含むことができる。添加剤としては、一般的に用いられる凝結調整剤、消泡剤、増粘剤又は流動化剤などを挙げることができる。
【0040】
本工程では、上記の樹脂モルタルを制振材層の上面に塗布して硬化させ、接着性を有する第一の樹脂モルタル硬化層(すなわち接着材層)を形成する。具体的には、制振材層の船舶甲板床とは反対側の表面へ、セメント組成物と合成樹脂のエマルジョンとを混練して調製した樹脂モルタルを塗布する。混練にはハンドミキサーを用いることが好ましい。均質な混練物を得るべく、混練時間は少なくとも3分間であることが好ましい。樹脂モルタルは、ローラー、ゴム製や金属製のヘラ、コテなどを用いて、塗布することが好ましい。施工厚さは0.2~1.0mmが好ましく、0.3~0.8mmがより好ましい。樹脂モルタルを施工してから次の工程として、セルフレベリング性モルタルスラリーの流し込み工程に移行する期間は、1.0時間以上であることが好ましい。次の工程として、拘束板設置工程に移行する場合の期間は、10分間~1.0時間であることが好ましい。
【0041】
(拘束層貼付工程)
拘束層としては金属製の平板、例えば鋼板、鉛板、ステンレス等の合金の板が挙げられる。必要に応じ拘束層を設けることにより、遮音性をより向上することができる。拘束層の厚さは特に制限されないが、0.5~6mmとすることができる。拘束層は、第一の樹脂モルタル硬化層が有する接着性により貼り付けられる。
【0042】
(第二の樹脂モルタル硬化層形成工程)
本工程は、拘束層を設ける場合に実施される。本工程では、セメント組成物及び合成樹脂のエマルジョンを含む樹脂モルタルを拘束層上に塗布して硬化させ、接着性を有する第二の樹脂モルタル硬化層(すなわち接着材層)を形成する。使用材料及び施工方法の詳細は、第一の樹脂モルタル硬化層形成工程の記載が適宜参照される。
【0043】
(モルタル硬化体下地層形成工程)
自己流動性水硬性組成物は、セメント及び石膏からなる水硬性成分を含むことが好ましい。セメントとしては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメントなどのポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメントなどの混合セメント、アルミナセメントを用いることができる。アルミナセメントとしては、鉱物組成の異なるものが数種知られ市販されているが、何れも主成分はモノカルシウムアルミネート(CA)であり、市販品はその種類によらず使用することができる。セメントの含有量は、水硬性成分の全量を基準として、好ましくは65~85質量%である。
【0044】
水硬性成分は、ポルトランドセメント、アルミナセメント及び石膏を含むことが好ましい。ポルトランドセメント、アルミナセメント及び石膏を含む3成分系の水硬性成分を用いることで、速硬性・速乾性を有し、低収縮性又は低膨張性で硬化中の体積変化が少なく、クラックの発生を抑制した硬化体が得られやすい。
【0045】
石膏は、無水石膏、半水石膏、二水石膏等の各石膏を一種単独で又は二種以上の混合物として使用できる。石膏は、モルタルが硬化した後の寸法安定性を保持する成分として機能するものである。石膏の含有量は、水硬性成分の全量を基準として、好ましくは15~35質量%である。
【0046】
自己流動性水硬性組成物は、上記の水硬性成分に加え、細骨材、減水剤、及び増粘剤を含むことが好ましい。
【0047】
自己流動性水硬性組成物は、細骨材を含むことが好ましい。細骨材は、一般にモルタルやコンクリートに使用されるものを用いることができ、例えば、市販の珪砂、石灰石砂その他、川砂、海砂、山砂、砕砂等を挙げることができる。細骨材の含有量は、水硬性成分100質量部に対して、好ましくは100~250質量部である。
【0048】
自己流動性水硬性組成物は、減水剤を含むことが好ましい。これにより、より優れたレベリング性や平滑性を有することが可能となる。減水剤としては、減水効果を合わせ持つ、メラミンスルホン酸のホルムアルデヒド縮合物、カゼイン、カゼインカルシウム、ポリカルボン酸系、ポリエーテル系及びポリエーテルポリカルボン酸系等の市販の減水剤が、その種類を問わず用いることができる。減水剤の含有量は、水硬性成分100質量部に対して、好ましくは0.05~0.5質量部である。これにより、より優れた作業性を得ることができ、平滑性に優れた表面仕上げが容易となる。
【0049】
自己流動性水硬性組成物は、増粘剤を含むことが好ましい。これにより、水硬性成分や細骨材などの分離抑制、気泡発生の抑制、硬化体表面性状の改善により好ましい効果を与え、水硬性組成物の硬化物の特性をより向上させることができる。増粘剤としては、セルロース系、蛋白質系、スターチエーテル等の加工でん粉系、ラテックス系、水溶性ポリマー系及びベントナイト系の粘土鉱物微粉末などから選択した増粘剤を適宜併用して用いることができる。セルロース系増粘剤としては、その種類を問わず用いることができるが、特にヒドロキシエチルメチルセルロースやヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いることが好ましい。増粘剤の含有量は、水硬性成分100質量部に対して、好ましくは0.02~1.0質量部である。
【0050】
自己流動性水硬性組成物は、さらに無機微粉末、消泡剤、凝結調整剤、及び樹脂粉末からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0051】
自己流動性水硬性組成物は、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、シリカヒューム、炭酸カルシウム微粉末及びドロマイト微粉末から選ばれる少なくとも1種以上の無機微粉末を含むことが好ましく、特に高炉スラグ微粉末を含むことにより、乾燥収縮による硬化体の耐クラック性を高めることや、低コストで長期強度を増進させることができる。無機微粉末の含有量は、水硬性成分100質量部に対し、好ましくは10~200質量部である。高炉スラグ微粉末は、JIS A 6206に規定されるブレーン比表面積3000cm2/g以上のものを用いることができる。
【0052】
自己流動性水硬性組成物は、消泡剤を含むことにより、より好ましい消泡効果を得ることが可能となる。消泡剤としては、シリコン系、アルコール系、ポリエーテル系などの合成物質又は植物由来の天然物質など、公知のものを用いることができる。消泡剤の含有量は、水硬性成分100質量部に対して、好ましくは0.01~2質量部である。
【0053】
自己流動性水硬性組成物は、有機酸及び/又は無機酸のナトリウム塩である凝結遅延剤を凝結調整剤として含むことにより、より優れた可使時間を有することが可能となる。凝結遅延剤としては、無機酸のナトリウム塩であるリン酸ナトリウム塩系や重炭酸ナトリウム塩系、有機酸のナトリウム塩である酒石酸やグルコン酸などのオキシカルボン酸のナトリウム塩系が好ましい。凝結遅延剤の含有量は、水硬性成分100質量部に対して、好ましくは0.2~2質量部である。これにより、より適切な作業時間を確保することができる。
【0054】
自己流動性水硬性組成物は、公知の凝結促進剤を凝結調整剤として用いることができる。例えば、凝結促進効果を有する炭酸リチウム等のリチウム塩、硫酸カリウムや硫酸アルミニウム等の硫酸塩、蟻酸カルシウム、及び塩化カルシウム等を好適に用いることができ、これらを数種組み合わせて用いてもよい。凝結促進剤の含有量は、水硬性成分100質量部に対して、好ましくは0.1~2質量部である。
【0055】
自己流動性水硬性組成物は、優れた表面強度や耐摩耗性を有し、優れた耐久性を有するモルタル硬化体および床構造体を得るために、樹脂粉末(再乳化形樹脂粉末)を含むことが好ましい。再乳化形樹脂粉末を用いることで、硬化体表面の乾燥の防止、又は、材料分離によるブリージング水の発生を防止して、硬化体表面の仕上りを大幅に向上させる効果とともに、硬化体の弾性を高めてひび割れの発生を防止する効果とを得易くなる。樹脂粉末の主成分としては、アクリル酸エステル、スチレン、ブタジエン、エチレン、酢酸ビニル、バーサチック酸ビニルエステルなどの成分を一種単独又は二種以上含むものを用いることができる。樹脂粉末の含有量は、水硬性成分100質量部に対して、好ましくは5~20質量部である。これにより、より優れた下地接着性や表面強度を得ることができる。
【0056】
本工程では、上記の自己流動性水硬性組成物及び水を混錬して得られるセルフレベリング性モルタルスラリーを、第一の又は第二の樹脂モルタル硬化層の上面に施工し(流し込み)、養生することで、セルフレベリング性を有するモルタル硬化体下地層を形成する。セルフベリング性モルタルは、厚さ3~40mmで打設することが好ましい。セルフベリング性モルタルは、水平面を有する床面や、0/1000を超えて50/1000以下の勾配を有する床面に打設することができる。打設された直後に、セルフベリング性モルタルスラリー表面を鏝やトンボを用いて均すことで、表面を均一化してもよい。セルフレベリング性モルタルスラリーは、施工場所の温度や湿度の条件にもよるが、施工(流し込み)終了後30分~2時間の間に硬化を開始し、硬化の進行に伴って表面硬度が上昇し、モルタル硬化体下地層となる。
【0057】
<船舶甲板用遮音性床構造体>
上記製造方法により、船舶甲板用遮音性床構造体を得ることができる。具体的には、船舶甲板用遮音性床構造体は、船舶甲板床、制振材層、接着性を有する第一の樹脂モルタル硬化層、及びセルフレベリング性を有するモルタル硬化体下地層を備える。当該構造体において、制振材層が改質アスファルト組成物を含み、第一の樹脂モルタル硬化層がセメント組成物及び合成樹脂のエマルジョンを含む樹脂モルタルの硬化物であり、セメント組成物100質量部に対する合成樹脂の量が25~100質量部であり、合成樹脂がエチレン・酢酸ビニル系共重合体を含み、モルタル硬化体下地層が自己流動性水硬性組成物及び水を含むセルフレベリング性モルタルの硬化物である。
図1は、一実施形態に係る船舶甲板用遮音性床構造体の断面模式図である。
図1に示すように、船舶甲板用遮音性床構造体10は、船舶甲板床1、制振材層2、接着性を有する第一の樹脂モルタル硬化層3、及びセルフレベリング性を有するモルタル硬化体下地層4を備える。
【0058】
船舶甲板用遮音性床構造体は、船舶甲板床、制振材層、第一の樹脂モルタル硬化層、鋼板からなる拘束層、接着性を有する第二の樹脂モルタル硬化層、及びモルタル硬化体下地層を備えるものであってもよい。当該構造体において、第二の樹脂モルタル硬化層は、セメント組成物及び合成樹脂のエマルジョンを含む樹脂モルタルの硬化物である。
図2は、他の実施形態に係る船舶甲板用遮音性床構造体の断面模式図である。
図2に示すように、船舶甲板用遮音性床構造体20は、船舶甲板床1、制振材層2、接着性を有する第一の樹脂モルタル硬化層3、拘束層5、接着性を有する第二の樹脂モルタル硬化層6、及びセルフレベリング性を有するモルタル硬化体下地層4を備える。
【0059】
船舶甲板用遮音性床構造体は、硬化後のモルタル硬化体下地層を素地のまま使用することも可能であるが、モルタル硬化体下地層上に、カーペット、タイル、フローリング、塗り床材(防塵塗料)等の仕上げ材をさらに備えてもよい。
【実施例0060】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0061】
(A)セルフレベリング性モルタル(デッキコンポジション)
・船舶用超速硬型セメント系セルフレベリング材:水硬性成分としてセメント74質量%、石膏26質量%を含む。また、水硬性成分100質量部に対して細骨材200質量部、減水剤0.1質量部、増粘剤0.2質量部、無機微粉末100質量部、消泡剤0.15質量部、凝結調整剤0.8質量部、樹脂粉末8.0質量部を含む。各成分の詳細は以下のとおりである。
セメント:ポルトランドセメント及びアルミナセメント
石膏:フッ酸無水石膏
細骨材:6号珪砂
減水剤:ポリカルボン酸系減水剤
増粘剤:ヒドロキシエチルメチルセルロース
無機微粉末:高炉スラグ微粉末
消泡剤:ポリエーテル系消泡剤
凝結調整剤:炭酸リチウム、酒石酸ナトリウム、重炭酸ナトリウムの混合物
樹脂粉末:アクリル系再乳化形樹脂粉末
【0062】
(B)制振材シート
・改質アスファルト系シート:剥離紙、改質アスファルト組成物層、補強材層(ブローンアスファルト組成物が含浸した不織布層)を備える。改質アスファルト組成物層はアスファルトを44質量%、樹脂を12質量%含み、常温で粘着性を有する。
【0063】
(C)第一の接着性樹脂モルタル(接着材層)
・樹脂セメントモルタル:エチレン酢酸ビニル樹脂エマルション液と速硬性セメントからなる。エチレン酢酸ビニル樹脂エマルション中のエチレン酢酸ビニル樹脂の量は、速硬性セメント100質量部に対して70質量部である。速硬性セメントは、アルミナセメント100質量部に対して、細骨材216質量部及び無機充填材39質量部を含むセメント組成物である。各成分の詳細は以下のとおりである。
細骨材:7号珪砂(最大粒子径が300μm)
無機充填材:タルク
【0064】
(D)拘束層
・鋼板(厚さ3.2mm)
【0065】
(E)第二の樹脂モルタル(接着材層)
・第一の樹脂モルタルと同じ樹脂セメントモルタル
【0066】
(F)基盤(船舶甲板床に相当)
・鋼板(厚さ6mm)
【0067】
[遮音性床構造体の施工:引張強度測定]
(実施例(4層品))
25kgの上記セルフレベリング性モルタルに水6.3kgを加え、ハンドミキサー(1100rpm)を用いて3分間混練することによって、セルフレベリング性モルタルスラリーを調製した。この調製は、温度20℃、湿度65%RHに設定した恒温恒湿室内で行った。
【0068】
制振シートの剥離紙を剥がし、改質アスファルト組成物層側を鋼板上に貼り付け、制振材層を設けた。
制振材層上に第一の樹脂モルタルを塗布して、24時間乾燥させて硬化させることで、厚さ0.5mmの接着性の第一の樹脂モルタル硬化層を設けた。
第一の樹脂モルタル硬化層上に、40×40mmサイズの樹脂製の型枠を設置した。そこへセルフレベリング性モルタルスラリーを10mm厚にて流し込み、硬化させて20℃、RH65%の恒温室にて14日間養生した。これにより、第一の樹脂モルタル硬化層上に外寸40×40mmサイズのモルタル硬化体下地層を設けた。
養生後に型枠を外し、モルタル硬化体下地層の側面端部に沿って、制振材層と第一の樹脂モルタル硬化体層に、鋼板表面までカッターナイフで切込みを入れた。モルタル硬化体下地層表面にエポキシ樹脂接着剤を用いてアタッチメントを接着し、引張強度測定用サンプルを得た。
【0069】
(実施例(6層品))
制振シートの剥離紙を剥がし、改質アスファルト組成物層側を鋼板上に貼り付け、制振材層を設けた。
制振材層上に、実施例(4層品)と同様にして厚さ1mmの接着性の第一の樹脂モルタル硬化層を設けた。
第一の樹脂モルタル硬化層上に、拘束層となる鋼板を貼り付けた。
拘束層上に、実施例(4層品)と同様にして、第二の樹脂モルタルを塗布して、24時間乾燥させて硬化させることで、厚さ1mmの接着性の第二の樹脂モルタル硬化層を設けた。
第二の樹脂モルタル硬化層上に、実施例(4層品)と同様にしてモルタル硬化体下地層を設けた。
その後、実施例(4層品)と同様にしてサンプルを得た。
【0070】
(比較例)
制振材層上に接着性の第一の樹脂モルタル硬化層を設けず、直接モルタル硬化体下地層を設けたこと以外は、実施例(4層品)と同様にしてサンプルを得た。
【0071】
(引張強度測定)
各例で得られたサンプルを用いて、引張強度を測定した。引張強度の測定はJIS A 6916に準拠して行った。結果を表1に示す。
【0072】
[遮音性床構造体の施工:遮音性試験]
(実施例(4層品))
外寸985×985mmサイズとしたことと、セルフレベリング性モルタルスラリーを12mm厚で流し込んだこと以外は、引張強度測定と同様にして、接着性の第一の樹脂モルタル硬化層上にモルタル硬化体下地層を設けた。これにより遮音性試験用サンプルを得た。
【0073】
(実施例(6層品))
制振シートの剥離紙を剥がし、改質アスファルト組成物層側を鋼板上に貼り付け、制振材層を設けた。
制振材層上に、実施例(4層品)と同様にして厚さ1mmの接着性の第一の樹脂モルタル硬化層を設けた。
第一の樹脂モルタル硬化層上に、拘束層となる鋼板を貼り付けた。
拘束層上に、実施例(4層品)と同様にして、第二の樹脂モルタルを1mm厚となるように塗布して、24時間乾燥させて硬化させることで、第二の樹脂モルタル硬化層を設けた。
第二の樹脂モルタル硬化層上に、実施例(4層品)と同様にしてモルタル硬化体下地層を設けた。
これにより、遮音性試験用サンプルを得た。
【0074】
(遮音性試験)
各例で得られたサンプルを用いて、日本音響エンジニアリング社にて音響透過損失を測定し、その結果より重み付き音響透過損失Rw値を算出した。結果を表1に示す。
・小型残響室(音源室)-無響室(受音室)にて音響インテンシティ法による音響透過損失を測定(JIS A 1441準拠)。
【0075】
[遮音性床構造体の施工:平坦性評価]
(実施例(4層品及び6層品))
制振材層を、隣接する制振材層の端部同士が10mm重なるようにして鋼板上に貼り付けた。このこと以外は、遮音性試験と同様にして、平坦性評価用のサンプルを得た。
【0076】
(比較例(3層品))
制振材層上に接着性の第一の樹脂モルタル硬化層を設けず、直接モルタル硬化体下地層を設けたこと以外は、実施例(4層品及び6層品)と同様にしてサンプルを得た。
【0077】
(平坦性評価)
各例で得られたサンプルについて、制振材層の重なり部分(継ぎ目)の痕跡を、モルタル硬化体下地層表面から視認できるかどうかを確認した。結果を表1に示す。
【0078】
1…船舶甲板床、2…制振材層、3…接着性を有する第一の樹脂モルタル硬化層、4…セルフレベリング性を有するモルタル硬化体下地層、5…拘束層、6…接着性を有する第二の樹脂モルタル硬化層、10,20…船舶甲板用遮音性床構造体。