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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102344
(43)【公開日】2023-07-25
(54)【発明の名称】熱処理用容器及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C21D 1/00 20060101AFI20230718BHJP
   F27D 3/12 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
C21D1/00 F
F27D3/12 Z
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022002754
(22)【出願日】2022-01-12
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】596174341
【氏名又は名称】ミクニ機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131048
【弁理士】
【氏名又は名称】張川 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100174377
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100215038
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 友子
(72)【発明者】
【氏名】道念 雅彦
【テーマコード(参考)】
4K034
4K055
【Fターム(参考)】
4K034AA11
4K034AA16
4K034EB41
4K034EC01
4K034EC06
4K034GA08
4K055AA06
4K055HA13
4K055HA14
4K055HA23
4K055HA27
(57)【要約】
【課題】熱処理用容器の製造コストを下げることができる熱処理用容器及びその製造方法を提供する。
【解決手段】熱処理用容器1は、上方が開口し、四方を囲む側壁2と下方を塞ぐ底壁3とを有する直方体形状に形成される。側壁2は互いに同一形状の4つの単位壁4から構成される。各単位壁4はロストワックス法で形成される。単位壁4同士は溶接される。各単位壁4は底壁3にも溶接される。単位壁4の縦断面が波形状であり、波形状を構成する各盛上部の頂点部には周方向に沿って複数の貫通孔が形成される。さらに、単位壁4は隣りの単位壁4と突き合わさる突合せ部を有する。側壁2は、隣り合う一方の単位壁4の突合せ部と他方の単位壁4の突合せ部とを貫通するとともに、両方の突合せ部に溶接されたピンを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方が開口し、四方を囲む側壁と下方を塞ぐ底壁とを有する直方体形状であり、
前記側壁は鋳造製であり、
前記側壁は、前記側壁の周方向に沿った位置のうち前記側壁の角部以外の位置で分割された複数の単位壁で構成されており、
複数の前記単位壁のそれぞれが隣りの前記単位壁に溶接され、かつ、前記底壁に溶接されており、
複数の前記単位壁のそれぞれは、他の少なくとも1つの前記単位壁と同一形状に形成される、
熱処理用容器。
【請求項2】
前記単位壁は、隣りの前記単位壁と突き合わさる突合せ部を有し、
隣り合う一方の前記単位壁の前記突合せ部と他方の前記単位壁の前記突合せ部とを貫通するとともに両方の前記突合せ部に溶接されたピンを備える請求項1に記載の熱処理用容器。
【請求項3】
前記側壁の縦断面が波形状であり、
前記波形状における外側に盛り上がった盛上部には、前記側壁の周方向に沿って複数の貫通孔が形成される請求項1又は2に記載の熱処理用容器。
【請求項4】
前記単位壁の個数は4つであり、
4つの前記単位壁は互いに同一形状である請求項1~3のいずれか1項に記載の熱処理用容器。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の熱処理用容器の製造方法であって、
前記単位壁を鋳造により形成する鋳造工程と、
複数の前記単位壁及び前記底壁を溶接により一体化する溶接工程と、
を備える熱処理用容器の製造方法。
【請求項6】
前記単位壁同士の突合せ部にピンを貫通させて、前記ピンを前記突合せ部に溶接するピン固定工程を備える請求項5に記載の熱処理用容器の製造方法。
【請求項7】
前記鋳造工程では、互いに同一形状の4つの前記単位壁を鋳造により形成する請求項5又は6に記載の熱処理用容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被熱処理物を入れる熱処理用容器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上方が開口し、四方を囲む側壁と下方を塞ぐ底壁とを有する直方体形状の熱処理用容器がある(例えば特許文献1参照)。特許文献1には、ロストワックス法等の精密鋳造法で熱処理用治具(熱処理用容器)を製造することが記載されている。また、特許文献1には、比較的大きな治具(熱処理用容器)を製作するときは、底壁部、側壁部等を2~3個に分割して鋳造し、溶接により一体化することもできると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3327436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来では、熱処理用容器の製造コストが高いという問題点があった。そこで、本開示は、熱処理用容器の製造コストを下げることができる熱処理用容器及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の熱処理用容器は、
上方が開口し、四方を囲む側壁と下方を塞ぐ底壁とを有する直方体形状であり、
前記側壁は鋳造製であり、
前記側壁は、前記側壁の周方向に沿った位置のうち前記側壁の角部以外の位置で分割された複数の単位壁で構成されており、
複数の前記単位壁のそれぞれが隣りの前記単位壁に溶接され、かつ、前記底壁に溶接されており、
複数の前記単位壁のそれぞれは、他の少なくとも1つの前記単位壁と同一形状に形成される。
【0006】
また、本開示の熱処理用容器の製造方法は、
前記単位壁を鋳造により形成する鋳造工程と、
複数の前記単位壁及び前記底壁を溶接により一体化する溶接工程と、
を備える。
【0007】
本開示の熱処理用容器及びその製造方法によれば、側壁が鋳造製の複数の単位壁で構成され、各単位壁は他の少なくとも1つの単位壁と同一形状に形成されるので、各単位壁を形成するための鋳造用の型を共通化できる。また、側壁が複数の単位壁で構成されるので、側壁を形成するための鋳造用の型を小さくできる。これにより、熱処理用容器の製造コストを下げることができる。また、各単位壁は側壁の角部以外の位置で分割されるので、熱応力がかかりやすい角部が破損するのを抑制できる。また、角部以外の位置で単位壁同士が溶接されるので、その溶接をしやすくできる。なお、本開示における「直方体形状」とは、縦、横、高さの比が1:1:1となる立方体形状も含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】熱処理用容器の斜視図である。
図2】熱処理用容器の上面図(平面図)である。
図3】熱処理用容器を図2のX1方向から見た側面図である。
図4】熱処理用容器を図2のX2方向から見た側面図である。
図5】熱処理用容器を、図2のV-V線で切った縦断面図である。
図6】単位壁の斜視図である。
図7】単位壁の平面図である。
図8】単位壁を図7のX3方向から見た側面図である。
図9】単位壁を図7のX4方向から見た側面図である。
図10図5のB部の拡大図であり、側壁の波形状の構成する盛上部の拡大断面図である。
図11図1のA部における断面図であり、隣り合う単位壁の各突合せ部とピンとの固定を示す断面図である。
図12】底板の斜視図である。
図13】ベースの斜視図である。
図14】熱処理用容器の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態を図面を参照しつつ説明する。図1図4に、本実施形態の熱処理用容器(以下、単に容器という場合がある)を示す。図1図4の容器1は、被熱処理物に対して熱処理を行う際に、その被熱処理物を入れるための容器である。すなわち、容器1は、被熱処理物を入れた状態で熱処理炉の中に搬送されるように用いられる。なお、容器1は、同時に複数の被熱処理物を入れるように用いられてもよいし、1つの被熱処理物のみを入れるように用いられてもよい。
【0010】
容器1は、上方が開口し、四方を囲む側壁2と下方を塞ぐ底壁3とを有する直方体形状に形成されている。また、容器1(側壁2及び底壁3)は鋳造製であり、より具体的には、精密鋳造法の一つであるロストワックス法で製造された物である。また、容器1(側壁2及び底壁3)はステンレス鋼等の鋼材で形成される。
【0011】
側壁2は、図2の平面視(上面視)で見て、上方に、長手方向(図2の紙面で左右方向)と、それに直交する短手方向(図2の紙面で上下方向)とを有した長方形の開口2a(図1も参照)を形成するように設けられる。開口2aは、容器1への被熱処理物の出入口として機能する。また、側壁2は、図2の平面視で見て、側壁2の周方向(長方形の開口2aに沿った方向)に沿った位置のうち、側壁2の角部5c以外の位置11で4つに等分割された単位壁4で構成されている。側壁2の分割位置11(後述の突合せ部)は、図2の平面視で見て、長方形を構成する各辺の中点の位置である。各単位壁4は、各辺の中点位置11を通る、図2の紙面に直角かつ各辺に直角な面で、直方体の側壁2を分割した形状を有する。なお、各単位壁4は、容器1の状態では、互いに一体化されて、分離不可能に設けられる。
【0012】
具体的にいえば、4つの単位壁4は互いに同一形状に形成される。すなわち、各単位壁4は上下対称形に形成されている。図2において、左上に位置する単位壁4A、右上に位置する単位壁4B、右下に位置する単位壁4C、及び左下に位置する単位壁4Dが仮に互いに分離可能であるとすると、右下の単位壁4Cを中心O回りに回転移動させると、左上の単位壁4Aに一致する。また、右上の単位壁4Bを上下反転させたのち、回転移動及び/又は平行移動させると、左上の単位壁4Aに一致する。また、左下の単位壁4Dを上下反転させたのち、回転移動及び/又は平行移動させると、左上の単位壁4Aに一致する。
【0013】
図6図9は1つの単位壁4を抜き出した図であり、すなわち、側壁2として一体化される前の単位壁4を示している。単位壁4は、板状に形成された板部5を有する。板部5は、図7の平面視で見て、直角な屈曲した形状に形成され、言い換えれば、L字形状に形成される。すなわち、板部5は、図7の平面視で見て、第1方向Dに延びた第1部分5aと、第1方向Dに直角な第2方向Eに延びた第2部分5bとを有する。第1部分5aの第1方向Dにおける長さは、第2部分5bの第2方向Eにおける長さよりも長い。また、第1部分5aと第2部分5bとの境界部5c(板部5の角部5c)は、図7の平面視で見て、例えば曲率半径が20mm以上の円弧状に形成される。
【0014】
また、板部5の縦断面(図7に示す方向D又は方向Eに直角な断面)が波形状である。具体的には、板部5は、図5図8図9に示すように、上下方向に沿って、上から順に、平坦部6、複数の盛上部7(本実施形態では3つ)、及び平坦部6を有する。上下の平坦部6は、容器1の上下方向に平行な平坦面に形成され、言い換えれば、水平面(容器1の上下方向に直角な面)に直角な平坦面に形成される。盛上部7は、平坦部6よりも水平方向の外側に山状に盛り上がるように形成される。具体的には、盛上部7は、図10に示すように、水平方向外側に最も突出した頂点部7aと、頂点部7aから上方に向かうにしたがって徐々に内側に変位する第1傾斜部7bと、頂点部7aから下方に向かうにしたがって徐々に内側に変位する第2傾斜部7cとを有する。そして、各盛上部7の上下両側には、頂点部7aから見て内側に最も凹んだ谷部7dを有する。谷部7dは、平坦部6と盛上部7との境界部、又は隣り合う盛上部7同士の境界部である。
【0015】
また、図10に示すように、上側の谷部7dと頂点部7aとの間の上下方向における幅d1(第1傾斜部7bの上下幅)と、下側の谷部7dと頂点部7aとの間の上下方向における幅d2(第2傾斜部7cの上下幅)とが同じである。さらに、上側の谷部7dと頂点部7aとの間の水平方向における幅d3(第1傾斜部7bの水平幅)と、下側の谷部7dと頂点部7aとの間の水平方向における幅d4(第2傾斜部7cの水平幅)とが同じである。
【0016】
複数の盛上部7(本実施形態では3つ)は、互いに同一の断面形状(図10で示される断面形状)である。すなわち、各盛上部7の各頂点部7aの外側への突出量(谷部7dに対する頂点部7aの突出量)は複数の盛上部7の間で互いに同一である。また、複数の盛上部7は上下方向に連続するように設けられる。
【0017】
また、上下の平坦部6及びその間に設けられる複数の盛上部7から構成される波形状は、板部5の第1部分5a(図7の第1方向Dに延びた部分)と、第2部分5b(図7の第2方向Eに延びた部分)の双方に形成される(図8図9参照)。さらに、第1部分5aに形成される波形状と、第2部分5bに形成される波形状とは互いに同一の縦断面形状であるとともに、それら双方の波形状が角部5cを介して連続している。すなわち、板部5の角部5cにも波形状が形成されている。このように、波形状を構成する各平坦部6及び各盛上部7は、図7の平面視で見たL字に沿った方向に連続するように形成される。なお、以下では、図7の平面視で見て、単位壁4におけるL字に沿った方向を単位壁4(板部5)の水平延設方向又は周方向という場合がある。
【0018】
また、各盛上部7の頂点部7aには、頂点部7aの延設方向(L字に沿った方向)に沿って複数の貫通孔8が形成されている(図8図9参照)。貫通孔8は、頂点部7aの延設方向に沿って等間隔(ただし、角部5cは除く)かつ互いに同一形状(同一径の円形)に形成される。また、貫通孔8は、3つの盛上部7(頂点部7a)の間で、互いに同一間隔、かつ、互いに同一個数、かつ、互いに同一形状に形成される。
【0019】
また、上下の平坦部6には、平坦部6の延設方向(L字に沿った方向)に沿って複数の貫通孔9が形成されている(図8図9参照)。貫通孔9は、平坦部6の延設方向に沿って等間隔(ただし、角部5cは除く)かつ互いに同一形状(同一径の円形)に形成される。また、貫通孔9は、上下の平坦部6の間で、互いに同一間隔、かつ、互いに同一個数、かつ、互いに同一形状に形成される。このように、板部5には、周方向の全周に亘って複数の貫通孔8、9が形成され、そのその周方向の貫通孔8、9の配列が上下方向に複数列形成されている。
【0020】
また、単位壁4は、屈曲形状の板部5の上端及び下端から水平方向外側に出っ張る出張り部10を有する。上下の出張り部10は、板部5の上端及び下端の延設方向(図7のL字に沿った方向)に沿って連続するよう形成される。また、上下の出張り部10は互いに同一の平面視形状に形成される。
【0021】
また、単位壁4は、板部5の水平延設方向(L字に沿った方向)の両端部(以下、板部5の周方向端部という場合がある)に、その水平延設方向に直角な水平方向の外側に出っ張る形状の出張り部11を有する(図6図8図9参照)。出張り部11は、板部5の周方向端部の延設方向(つまり上下方向)に沿って延設されている。ここで、上下方向に並ぶ3つの盛上部7の各頂点部7aを上から第1の頂点部、第2の頂点部、及び第3の頂点部と称する。出張り部11は、上側の平坦部6の上端(言い換えれば上側の出張り部10)から第1の頂点部7aまでに亘って形成される第1部分11aと、第1の頂点部7aから第2の頂点部7aまでに亘って形成される第2部分11bと、第2の頂点部7aから第3の頂点部7aまでに亘って形成される第3部分11cと、第3の頂点部7aから下側の平坦部6の下端(言い換えれば、下側の出張り部10)までに亘って形成される第4部分11dとを含んで構成される。これら各部分11a~11dの突出方向の先端11e(図8図9参照)は、3つの頂点7aを通る、上下方向に延びた直線を描くように設けられる。すなわち、出張り部11(第1~第4部分11a~11d)の外側への突出量は頂点部7aの突出量と同じである。言い換えれば、出張り部11は、平坦部6及び盛上部7の上下両側の谷部7d(図10参照)に対しては外側に出っ張っているが、頂点部7aに対しては外側に出っ張っていない。出張り部11は、隣り合う単位壁4同士が突き合わさる突合せ部として機能する。以下、出張り部11を突合せ部又は周方向端部という場合がある。
【0022】
出張り部11の各部分11a~11dのうち最も上側に位置する第1部分11aと、最も下側に位置する第4部分11dとにはそれぞれ貫通孔12が形成されている。ただし、容器1の状態(単位壁4が一体化された状態)では、この貫通孔12に後述のピン15が埋められて溶接された状態になることで、貫通孔12は外部からは視認できない。なお、貫通孔12は、1つの単位壁4当たりに、板部5の一方の周方向端部11の上下の2箇所と、他方の周方向端部11の上下の2箇所の、合計4箇所に形成されている。
【0023】
さらに、単位壁4は、板部5の外側面から突出するリブ13、14を有する(図6図8図9参照)。リブ13、14は、板部5の水平延設方向に沿って線状に延びた横リブ13を含む。横リブ13は、上下方向に間隔をあけて複数(本実施形態では4つ)形成される。複数の横リブ13は互いに平行に形成される。各横リブ13は、板部5の谷部7d(図10参照)の位置に形成される。また、各横リブ13は、板部5の一方の周方向端部11から他方の周方向端部11までに亘って連続して形成されている。横リブ13は角部5cにも形成されている。
【0024】
また、リブ13、14は、上下方向に線状に延びた縦リブ14を含む(図6図8図9参照)。縦リブ14は、水平延設方向に沿って間隔をあけて複数列形成されている。さらに、各列の縦リブ14は、各横リブ13(言いかえれば、板部5の谷部7d)に交差するように、かつ、盛上部7の頂点部7aには交差しないように、上下方向に断続的に(言い換えれば、上下方向に間隔をあけて)形成されている。より具体的には、各列の縦リブ14は、板部5の各平坦部6の上下方向幅の全体を跨ぎ、かつ、平坦部6に隣接した横リブ13に交差する端リブ14aと、上下方向に配列された複数の横リブ13のうち平坦部6から距離をあけて形成される中間横リブ13に交差する中間リブ14bとを含む。さらに、縦リブ14は、角部5c(図6参照)の位置に形成される角リブ14cを含む。
【0025】
4つの単位壁4は溶接により分離不可能に一体化されている。このとき、第1の単位壁4A(図2参照)の第1部分5a(図7参照)の周方向端部11(出張り部)と、第2の単位壁4B(図2参照)の第1部分5aの周方向端部11(出張り部)とが突き合わさり、かつ溶接されている。また、第1の単位壁4Aの第2部分5b(図7参照)の周方向端部11と、第4の単位壁4D(図2参照)の第2部分5bの周方向端部11とが突き合わさり、かつ溶接されている。また、第2の単位壁4Bの第2部分5bの周方向端部11と、第3の単位壁4Cの第2部分5bの周方向端部11とが突き合わさり、かつ溶接されている。また、第3の単位壁4Cの第1部分5aの周方向端部11と、第4の単位壁4Dの第1部分5aの周方向端部11とが突き合わさり、かつ溶接されている。
【0026】
図3図4に示すように、側壁2は、隣り合う単位壁4同士の突合せ部11(周方向端部)の位置に溶接部100を有する。図3図4の例では、溶接部100は、突合せ部11の延設方向(上下方向)に沿って断続的に複数の箇所に形成されるが、突合せ部11の上端から下端までに亘って連続的に形成されてもよい。なお、側壁2の角部5cには溶接部は存在しない。
【0027】
さらに、4つの単位壁4が一体化された状態では、周方向端部11の上下に形成された貫通孔12(図6図8図9参照)が、隣り合う単位壁4同士で合わさって、合わさった両方の貫通孔12にピン15が挿通されている(図11参照)。すなわち、ピン15は、隣り合う一方の単位壁4の突合せ部11(周方向端部)と、他方の単位壁4の突合せ部11(周方向端部)とを貫通するように設けられる。そして、ピン15の軸方向における一方の端部が一方の突合せ部11に溶接され、ピン15の軸方向における他方の端部が他方の突合せ部11に溶接されている。図11に示すように、側壁2は、ピン15の両端部の位置に溶接部101を有する。この溶接部101により、ピン15の端部が溶けて潰されている。また、貫通孔12の開口は溶接部101で閉塞されている。このため、外部からはピン15及び貫通孔12が視認できないようになっている。
【0028】
側壁2の分割位置11(突合せ部に相当)(図2参照)は4箇所あり、各分割位置11毎に上下それぞれで図11に示すピン15による固定が行われている。つまり、側壁2は、合計8箇所でピン15による固定部を有する。
【0029】
また、各単位壁4(側壁2)は、溶接により底壁3に分離不可能に固定されている。具体的には、各単位壁4の下側の出張り部10(図6参照)が、底壁3の一部を構成するベース17(図13参照)の上面に溶接されている。図3図4に示すように、容器1は、単位壁4の下側の出張り部10とベース17の上面とを固定する溶接部102を有する。図3図4の例では、溶接部102は、側壁2の周方向に沿って断続的に複数の箇所に形成されるが、側壁2の周方向の全周に亘って連続して形成されてもよい。
【0030】
また、各単位壁4(側壁2)は、底壁3の一部を構成する底板16(図12参照)にも溶接により固定されている。具体的には、底板16の外周縁部が各単位壁4の内面に溶接されている。図5に示すように、容器1は、単位壁4の内面と、底板16の外周縁部とを固定する溶接部103を有する。図5の例では、溶接部103は、底板16の周方向に沿って断続的に複数の箇所に形成されるが、底壁16の周方向の全周に亘って連続して形成されてもよい。
【0031】
底壁3は、側壁2の下方を塞ぐように設けられる。上述のように、底壁3は側壁2に溶接により分離不可能に固定されている。底壁3は、図5に示すように、底板16とベース17とを備える。底板16は、図12に示すように、板状の本体18と、本体18の裏面から起立する起立部(リブ)19とを有する。本体18は、平面視(図示外)で見て、側壁2の開口2aの形状(長方形)と同様の形状(つまり長方形)に形成される。具体的には、本体18は、本体18の長手方向における両端側に水平部18aと、水平部18aから長手方向の中心18cに近づくにしたがって徐々に上方に変位する傾斜部18bとを有する。
【0032】
水平部18aは、平面視長方形の本体18の短手方向の全幅に亘ってベース17の上面に平行な水平面を形成する。また、各水平部18aは、平面視(図示外)で見て、本体18の短手方向を水平部18aの長手方向とし、本体18の長手方向を水平部18aの短手方向とした長方形に形成される。
【0033】
傾斜部18bは、本体18の長手方向に沿って進むにしたがって徐々に水平部18aからの高さが変位するように設けられる。具体的には、傾斜部18bは、本体18の長手方向幅の中心を通る、本体18の短手方向に延びた中心線18c(図12参照)に長手方向に沿って近づくにしたがって徐々に上方に変位し、反対に、中心線18cから長手方向に沿って遠ざかるにしたがって徐々に下方に変位する。なお、傾斜部18bは、本体18の短手方向に対しては傾斜していない。
【0034】
本体18(水平部18a及び傾斜部18b)には多数の貫通孔20が形成されている。すなわち、貫通孔20は、本体18の長手方向に沿って複数形成されるとともに、本体18の短手方向に沿って複数形成される。
【0035】
起立部19は、傾斜部18bの裏面から下方に起立(突出)するように設けられる。起立部19は、本体18の長手方向に延びた第1起立部と、本体18の短手方向に延びた第2起立部とを含む。第1起立部19は、本体18の短手方向に間隔をあけて複数(本実施形態では2つ)形成される。第2起立部19は、本体18の長手方向に間隔をあけて複数(本実施形態では2つ)形成される。第1起立部19及び第2起立部19は平面視(図示外)で見て直角に交差するように設けられる。
【0036】
各起立部19の下端(傾斜部18bに接続される側の反対側の端部)は、水平部18aと同じ高さ位置に設けられる。
【0037】
図13に示すベース17は、容器1の土台となる部材である。ベース17は、平面視(図示外)で見て、側壁2の平面視形状(長方形)と同様の長方形に形成される。また、ベース17の上面はベース17の下面に平行に形成される。
【0038】
具体的には、ベース17は、縦断面が直角四角形(つまり長方形又は正方形)の枠を形成する一対のフレーム部21と、一対のフレーム部21を連結する連結部22とを有する。一対のフレーム部21は互いに同一形状に形成される。各フレーム部21は、フレーム部21(ベース17)の長手方向に対応する一方向に貫通する空間23を内側に形成し、この空間23の上方、下方及び側方を囲むように形成されている。フレーム部21の長手方向における両端には空間23の開口が形成される。また、フレーム部21の上面部には、内側の空間23に導通する貫通孔24が形成されている。貫通孔24は、フレーム部21の長手方向に沿って等間隔に複数形成されている。各貫通孔24は互いに同一形状に形成される。また、各貫通孔24は、フレーム部21の下面部及び側面部に形成される貫通孔25、26よりも大きい。また、各貫通孔24は、連結部22に形成される貫通孔27よりも大きい。また、貫通孔24は、底板16に形成される貫通孔20(図12参照)及び側壁2に形成される貫通孔8、9(図8図9参照)よりも大きい。本実施形態では、貫通孔24は長方形又は正方形に形成されるが、他の形状(円形など)でもよい。
【0039】
フレーム部21の下面部には、内側の空間23に導通する貫通孔25が形成されている。貫通孔25は、フレーム部21の長手方向に沿って間隔をあけて複数形成される。また、長手方向に沿って複数形成される貫通孔25の列が、フレーム部21の短手方向に間隔をあけて複数列形成される。各貫通孔25は互いに同一形状である。貫通孔25は、フレーム部21の上面部に形成される貫通孔24よりも小さい。さらに、貫通孔25は、フレーム部21の側面部に形成される貫通孔26よりも小さい。また、貫通孔25は、連結部22に形成される貫通孔27よりも小さい。貫通孔25の個数は、上面部の貫通孔24の個数よりも多い。
【0040】
また、フレーム部21の外側の側面部及び内側の側面部には、内側の空間23に導通する貫通孔26が形成されている。貫通孔26は、フレーム部21の長手方向に沿って間隔をあけて複数形成されている。各貫通孔26は互いに同一形状である。また、貫通孔26は、上面部に形成される貫通孔24よりも小さく、下面部に形成される貫通孔25よりも大きい。また、貫通孔26は、連結部22に形成される貫通孔27と同等の大きさに形成される。さらに、貫通孔26は、底板16に形成される貫通孔20(図12参照)及び側壁2に形成される貫通孔8、9(図8図9参照)よりも大きい。
【0041】
一対のフレーム部21は、同一高さ位置に設けられるとともに、各フレーム部21の空間23が、フレーム部21(ベース17)の短手方向に間隔をあけて並ぶように設けられる。一対の空間23は、例えば、容器1を持ち上げたり、移動させたりするフォークリフトのつめを入れるための空間である。
【0042】
連結部22は、各フレーム部21の内側の側面部に接続されている。連結部22は、一対のフレーム部21の間において、フレーム部21の長手方向に間隔をあけて複数設けられる。各連結部21は、一対のフレーム部21の配列方向(ベース17の短手方向)及び高さ方向(上下方向)の各幅よりも、前記各幅に直角な方向(ベース17の長手方向)の幅が小さい板状に形成される。各連結部22には、連結部22の板厚方向(ベース17の長手方向)に貫通する貫通孔27が形成されている。1つの連結部22当たりに、2つの貫通孔27が形成されている。2つの貫通孔27は、一対のフレーム部21の配列方向に間隔をあけて形成される。貫通孔27は、フレーム部21の上面部に形成される貫通孔24よりも小さく、フレーム部21の下面部に形成される貫通孔25よりも大きい。また、貫通孔27は、フレーム部21の側面部に形成される貫通孔26と同等の大きさに形成される。さらに、貫通孔27は、底板16に形成される貫通孔20(図12参照)及び側壁2に形成される貫通孔8、9(図8図9参照)よりも大きい。
【0043】
上述の底板16及びベース17は溶接により分離不可能に一体化されている。具体的には、底板16がベース17の上に載っている。より具体的には、底板16の平坦部18aの裏面及び底板6の起立部19の下端が、ベース17(一対のフレーム部21)の上面に接触した状態となる。この状態で、平坦部18aとベース17とが溶接により固定され、起立部19の下端とベース17とが溶接により固定されている。図5に示すように、底壁3は、平坦部18aとベース17とを固定する溶接部104と、起立部19の下端とベース17とを固定する溶接部105とを有する。
【0044】
底壁3は、溶接により側壁2に分離不可能に固定されている。上述のように、容器1は、底壁3と側壁2とを固定する溶接部102、103を有する(図3図5参照)。底壁3が側壁2に固定された状態では、ベース17は側壁2の下方に露出した状態に設けられる。また、底板16の傾斜部18bは、側壁2の内側の空間(被熱処理物の収容空間)の下方を塞いだ状態に設けられる。つまり、傾斜部18bが側壁2の内側の空間の底面を構成している。
【0045】
次に、容器1の製造方法を説明する。図14は容器1の製造方法のフローチャートの一例を示している。以下、図14のフローチャートにしたがって、容器1の製造方法を説明する。先ず、互いに同一形状の単位壁4を準備する(S1)。具体的には、例えば、ロストワックス法で単位壁4を製造(鋳造)する。ロストワックス法では、金型にロウを流し込んで、ロウにより形成された原型を得る。原型は単位壁4の形状に形成される。次に、原型の周りを鋳砂、石膏等の耐火材でコーティング(被覆)する。次に、耐火材及びその内側の原型(ロウ)を加熱して、内側の原型(ロウ)を溶かし出して除去する。これにより、耐火材の内側に、単位壁4の形状に相当する空洞が形成される。この空洞を有した耐火材を鋳型として、次に、この空洞に金属を流し込んで、流し込んだ金属を硬化させた後、周りの耐火材を破壊により除去する。以上により、単位壁4が得られる。この作業を4回行うことで、互いに同一形状の4つの単位壁4が得られる。なお、ステップS1が本開示の鋳造工程に相当する。
【0046】
また、底板16及びベース17を、例えば、ロストワックス法で製造(鋳造)する(S2、S3)。なお、単位壁4、底板16、及びベース17は互いに同一種類の鋼材で形成してもよいし、異なる種類の鋼材で形成してもよい。また、単位壁4の準備(S1)、底板16の準備(S2)、及びベース17の準備(S3)はどの順番で行ってもよい。
【0047】
次に、ステップS1で準備した4つの単位壁4を互いに溶接することで、上方及び下方に長方形開口を有した側壁2を形成する(S4)。このとき、4つの単位壁4を側壁2の形状となるよう治具で固定した状態にし、この状態で単位壁4同士を溶接すればよい。溶接はアーク溶接等の融接としてよい。また、ステップS4では、溶接後の側壁2の形状を微調整できるように、単位壁4同士を仮溶接してよい。仮溶接では、溶接箇所又は溶接範囲を、容器1の完成時の状態よりも少なくすればよい。また、ステップS4では、側壁2へのピン15の固定は未だ行わないとしてよい。
【0048】
また、ステップS2、S3で準備した底板16及びベース17を互いに溶接することで、底壁3を形成する(S5)。このとき、底板16及びベース17を底壁3の形状(ベース17の上に底板16が載った形状)となるよう治具で固定した状態にし、この状態で底板16及びベース17を溶接すればよい。溶接はアーク溶接等の融接としてよい。また、ステップS5では、溶接後の底壁3の形状を微調整できるように、底板16及びベース17を仮溶接してよい。なお、ステップS4の側壁2の形成と、ステップS5の底壁3の形成とはどの順番で行ってもよい。
【0049】
次に、ステップS4で得た側壁2と、ステップS5で得た底壁3とを溶接により合体させる(S6)。このとき、側壁2及び底壁3を容器1の形状(側壁2の下方を底壁3で塞いだ形状)となるよう治具で固定した状態にし、この状態で側壁2(各単位壁4)及び底壁3を溶接すればよい。溶接はアーク溶接等の融接としてよい。
【0050】
また、ステップS6では、単位壁4同士の溶接箇所又は溶接範囲を追加することで、単位壁4同士の本溶接を行ってよい。言い換えれば、単位壁4同士の固定を強化してよい。また、底板16とベース17との溶接箇所又は溶接範囲を追加することで、底板16及びベース17の本溶接を行ってよい。言い換えれば、底板16及びベース17の固定を強化してよい。また、ステップS6では、側壁2と底壁3とを先ず仮溶接し、その後、本溶接してよい。なお、ステップS4~S6が本開示の溶接工程に相当する。
【0051】
また、側壁2と底壁3とを合体させる際には、図11に示すように単位壁4同士をピン15で固定する(S7)。具体的には、隣り合う一方の単位壁4の突合せ部11に形成された貫通孔12と、他方の単位壁4の突合せ部11に形成された貫通孔12とを貫通するようにピン15を挿通させる。その後、ピン15の一方の端部と一方の突合せ部11とを溶接し、ピン15の他方の端部と他方の突合せ部11とを溶接する。溶接はアーク溶接等の融接としてよい。なお、ステップS7が本開示のピン固定工程に相当する。以上により、容器1が得られる。
【0052】
以下、本実施形態の効果を説明する。本実施形態では、容器1が鋳造製なので、プレス加工製に比べて、容器1を製造するための金型のコストを抑えることができる。すなわち、プレス加工の金型は、鋼材に強い力を加えて鋼材を変形させるために、破損しやすい。破損しないようにするために、金型を頑丈に作る必要がある。また、破損した場合には、新たに金型を作る必要がある。これに対して、鋳造の金型は、鋼材に強い力を加える必要がないため、プレス加工の金型に比べて破損しにくい。
【0053】
また、容器1を構成する各部材4、16、17は精密鋳造法の一つであるロストワックス法で製造されるので、各部材4、16、17を精密に形成できる。これにより、各部材4、16、17を組み立てる際に、部材4、16、17間で接合箇所がずれてしまうのを抑制でき、部材4、16、17間の溶接をしやすくできる。また、正確な形状の容器1を得ることができる。また、隣り合う単位壁4間で、ピン15を挿通させるための貫通孔12の位置がずれてしまうのを抑制でき、単位壁4同士のピン15による固定をしやすくできる。
【0054】
また、側壁2は複数(4つ)の単位壁4の組み合わせで構成されるので、容器1の容積を大きくできる。また、単位壁4の1つ当たりの大きさを抑制できる。これにより、単位壁4を製造するための設備(型など)が大型化するのを抑制でき、該設備のコストを低減できる。また、単位壁4の大きさを抑えることで、単位壁4を鋳造で製造したときに、単位壁4の形状誤差を小さくできる。
【0055】
また、各単位壁4は互いに同一形状なので、単位壁4を製造するための型(ロストワックス法によるロウの原型を作るための金型)として、全ての単位壁4の間で共通の型を使用できる。これにより、型のコストを低減でき、ひいては、容器1の製造コストを低減できる。
【0056】
また、単位壁4は上下対称形なので、各単位壁4を、図2の左上の単位壁4Aとして用いることもできるし、右上の単位壁4Bとして用いることもできるし、右下の単位壁4Cとして用いることもできるし、左下の単位壁4Dとして用いることもできる。
【0057】
また、各単位壁4は側壁2の角部5cを含んでおり、言い換えれば、角部5c以外の位置で分割された形状なので、角部5c以外の位置で単位壁4同士を溶接できる。これにより、その溶接をしやすくできる。また、単位壁4が角部5cを含む形状なので、円弧状の角部5cを容易に形成できる。これにより、角部5cに熱応力が集中するのを抑制でき、角部5cが熱変形で破損するのを抑制できる。また、角部5cには溶接部が存在しないので、角部5cが熱変形で破損するのを抑制できる。
【0058】
また、各単位壁4は突合せ部11同士の溶接に加えて、ピン15による固定もなされるので、側壁2が仮に熱変形したとしても、単位壁4同士の溶接部100が切れて、単位壁4同士が分離されてしまうのを抑制できる。
【0059】
さらに、側壁2(単位壁4)の縦断面が波形状なので、側壁2の剛性を高くできる。これにより、側壁2の熱変形を抑制できる。その波形状は、側壁2の横断面(側壁2を水平面で切断した断面)ではなく、縦断面(水平面に直角な垂直面で側壁2を切断した断面)に形成されるので、単位壁4同士を分離させようとする(単位壁4同士の溶接部100を切断しようとする)方向への側壁2の変形(図2の破線部200で示される変形)を抑制できる。これにより、溶接部100が切れてしまうのを抑制できる。
【0060】
また、側壁2(単位壁4)は横方向及び縦方向に複数のリブ13、14を有するので、側壁2の剛性を高くできる。これにより、側壁2の熱変形を抑制できる。
【0061】
また、側壁2には全周に亘って複数の貫通孔8、9が形成され、その周方向の貫通孔8、9の配列が上下方向に複数列形成されるので、熱処理の際に、容器1内に熱風を効率的に導入でき、ひいては被熱処理物に対する熱処理を効率的に行うことができる。
【0062】
さらに、側壁2の貫通孔8は、波形状を構成する盛上部7に形成されるので、容器1内に入れられる被熱処理物で貫通孔8が塞がれてしまうのを抑制できる。特に、貫通孔8は、盛上部7の中で最も外側に位置する頂点部7aに形成されるので、被熱処理物で貫通孔8が塞がれてしまうのをより一層抑制できる。これにより、熱処理の際に、外からの熱風を容器1内の各領域に流通させやすくできる。
【0063】
また、底壁3(底板16及びベース17)にも貫通孔20、24~27が形成されるので、熱処理の際に、容器1内に熱風を効率的に導入でき、ひいては被熱処理物に対する熱処理を効率的に行うことができる。特に、ベース17のフレーム部21の上面部、側面部、及び下面部にそれぞれ貫通孔24~26が形成され、さらに連結部22にも貫通孔27が形成されるので、より一層、容器1内に熱風を効率的に導入できる。
【0064】
なお、本開示は上記実施形態に限定されず種々の変更が可能である。例えば上記実施形態では、平面視で見て、長手方向及び短手方向を有した長方形の熱処理用容器を示したが、平面視で見た形状が正方形の熱処理用容器であってもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、側壁が4つに等分割された例を示したが、2つに等分割されてもよい。また、側壁を構成する複数の単位壁のそれぞれが、他の少なくとも1つの単位壁と同一形状に形成されるのであれば、側壁は4つ、又は2つ以外の個数(3つ、又は5つ以上)に分割されてもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、側壁が、平面視で長方形を構成する各辺の中点位置で分割された例を示したが、側壁を構成する複数の単位壁のそれぞれが、他の少なくとも1つの単位壁と同一形状に形成されるのであれば、各辺の中点位置以外の位置で分割されてもよい。
【0067】
また、側壁に貫通孔が形成されないとしてもよい。また、底壁(底板、ベース)に貫通孔が形成されないとしてもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、単位壁、底板、及びベースがロストワックス法で形成される例を示したが、他の鋳造法で形成されてもよい。
【0069】
単位壁同士を固定するピンは、側壁と底壁とを合体させる前に予め側壁に固定されてもよい。すなわち、図14のステップS4でピン固定を行ってもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 熱処理用容器
2 側壁
3 底壁
4 単位壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【手続補正書】
【提出日】2022-03-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方が開口し、四方を囲む側壁と下方を塞ぐ底壁とを有する直方体形状であり、
前記側壁は鋳造製であり、
前記側壁は、上方に、長手方向と、それに直交する短手方向とを有した長方形の開口を形成するように設けられ、
前記側壁は、前記側壁の周方向に沿った位置のうち前記側壁の角部以外の位置であって前記長方形を構成する各辺の中点の位置で分割された4つの単位壁で構成されており、
4つの前記単位壁のそれぞれが隣りの前記単位壁に溶接され、かつ、前記底壁に溶接されており、
4つの前記単位壁は互いに同一形状に形成されており、
前記単位壁は、平面視で見て第1方向に延びた第1部分と、前記第1方向に直角な第2方向に延びた第2部分とを有し、前記第1部分の前記第1方向における長さは前記第2部分の前記第2方向における長さよりも長いL字形状に形成され、かつ、上下対称形である、
熱処理用容器。
【請求項2】
前記単位壁は、隣りの前記単位壁と突き合わさる突合せ部を有し、
隣り合う一方の前記単位壁の前記突合せ部と他方の前記単位壁の前記突合せ部とを貫通するとともに両方の前記突合せ部に溶接されたピンを備え
前記ピンの溶接部とは別に、隣り合う前記単位壁同士の前記突合せ部の位置に溶接部が上下方向に沿って形成される請求項1に記載の熱処理用容器。
【請求項3】
前記側壁の縦断面が波形状であり、
前記波形状における外側に盛り上がった盛上部には、前記側壁の周方向に沿って複数の貫通孔が形成される請求項1又は2に記載の熱処理用容器。
【請求項4】
前記波形状は上下方向に沿って複数の前記盛上部を有し、
前記盛上部は、水平方向外側に最も突出した頂点部と、前記頂点部から上方に向かうにしたがって徐々に内側に変位する第1傾斜部と、前記頂点部から下方に向かうにしたがって徐々に内側に変位する第2傾斜部とを有し、
前記盛上部の前記貫通孔は前記頂点部に形成される請求項3に記載の熱処理用容器。
【請求項5】
前記盛上部の上下両側に位置する谷部には、前記単位壁の水平延設方向に沿って線状に延びた横リブが形成されており、
前記横リブに交差するように、かつ、前記頂点部には交差しないように、上下方向に線状に延びた縦リブが上下方向に断続的に形成される請求項4に記載の熱処理用容器。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載の熱処理用容器の製造方法であって、
前記単位壁を鋳造により形成する鋳造工程であり、その鋳造に使用する型が全ての前記単位壁の間で共通の型である鋳造工程と、
4つの前記単位壁及び前記底壁を溶接により一体化する溶接工程と、
を備える熱処理用容器の製造方法。
【請求項7】
前記単位壁同士の突合せ部にピンを貫通させて、前記ピンを前記突合せ部に溶接するピン固定工程を備える請求項に記載の熱処理用容器の製造方法。