(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023010235
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】電力需要予測装置および電力需要予測方法
(51)【国際特許分類】
H02J 3/00 20060101AFI20230113BHJP
G06Q 10/04 20230101ALI20230113BHJP
G06Q 50/06 20120101ALI20230113BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
H02J3/00 130
G06Q10/04
G06Q50/06
H02J13/00 301A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021114222
(22)【出願日】2021-07-09
(71)【出願人】
【識別番号】000205661
【氏名又は名称】大崎電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100173565
【弁理士】
【氏名又は名称】末松 亮太
(74)【代理人】
【識別番号】100195408
【弁理士】
【氏名又は名称】武藤 陽子
(72)【発明者】
【氏名】相京 靖明
(72)【発明者】
【氏名】清水 祐也
(72)【発明者】
【氏名】関口 寛敏
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
5L049
【Fターム(参考)】
5G064AA04
5G064AB05
5G064AC09
5G064BA02
5G064CB03
5G064CB08
5G064DA03
5G066AA02
5G066AE01
5G066AE05
5G066AE07
5G066AE09
5L049AA04
5L049CC06
(57)【要約】
【課題】比較的長期の電力需要の予測を行うことを目的とする。
【解決手段】
電力需要予測装置1は、平年値と比較した確率的な気象の予報値に基づいて、過去の観測期間のうちの第1観測期間での電力需要の推論値から、対象期間に予測される電力需要を抽出する抽出部12と、抽出された、予測される電力需要を提示する提示部14とを備え、推論値は、事前に構築された推論モデルに基づいて、第1観測期間での気象の観測値である第1観測値に対して推論された値である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平年値と比較した確率的な気象の予報値に基づいて、過去の観測期間のうちの第1観測期間での電力需要の推論値から、対象期間に予測される電力需要を抽出する抽出部と、
抽出された前記予測される電力需要を提示する提示部と
を備え、
前記推論値は、事前に構築された推論モデルに基づいて、前記第1観測期間での気象の観測値である第1観測値に対して推論された値である
ことを特徴とする電力需要予測装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力需要予測装置において、
さらに、前記過去の観測期間のうちの第2観測期間での気象の観測値である第2観測値と電力需要の実測値との関係を学習して構築された前記推論モデルに、前記第1観測期間で観測された前記第1観測値を入力して、前記推論モデルを演算することにより前記第1観測期間での電力需要の前記推論値を求める推論部を備え、
前記推論部によって求められた前記推論値は前記抽出部に入力される
ことを特徴とする電力需要予測装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電力需要予測装置において、
さらに、前記第2観測期間での前記第2観測値と前記実測値との関係を学習して前記推論モデルを構築する学習部を備え、
前記第2観測期間は、前記対象期間の季節の区分に関する情報に応じて設定され、
前記推論部は、前記推論モデルを前記学習部から読み出して前記推論モデルの演算を行う
ことを特徴とする電力需要予測装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の電力需要予測装置において、
前記気象の観測値は、前記過去の観測期間の気温の平均値である前記平年値に対する値の高低によって複数の階級に区分される気温の観測値であり、
前記平年値と比較した確率的な気象の前記予報値は、予報に係る気温の分布が前記複数の階級の各々に該当する確率で表され、
前記抽出部は、前記第1観測期間での前記第1観測値が取りうる階級に対応する前記推論値を、前記予報値が示す前記複数の階級の各々の確率で重みを付けした平均値を用いて前記予測される電力需要を抽出する
ことを特徴とする電力需要予測装置。
【請求項5】
平年値と比較した確率的な気象の予報値に基づいて、過去の観測期間のうちの第1観測期間での電力需要の推論値から、対象期間に予測される電力需要を抽出する抽出ステップと、
抽出された前記予測される電力需要を提示する提示ステップと
を備え、
前記推論値は、事前に構築された推論モデルに基づいて、前記第1観測期間での気象の観測値である第1観測値に対して推論された値である
ことを特徴とする電力需要予測方法。
【請求項6】
請求項5に記載の電力需要予測方法において、
さらに、前記過去の観測期間のうちの第2観測期間での気象の観測値である第2観測値と電力需要の実測値との関係を学習して構築された前記推論モデルに、前記第1観測期間で観測された前記第1観測値を入力して、前記推論モデルを演算することにより前記第1観測期間での電力需要の前記推論値を求める推論ステップを備え、
前記推論ステップによって求められた前記推論値は前記抽出ステップで用いられる
ことを特徴とする電力需要予測方法。
【請求項7】
請求項6に記載の電力需要予測方法において、
さらに、前記第2観測期間での前記第2観測値と前記実測値との関係を学習して前記推論モデルを構築する学習ステップを備え、
前記第2観測期間は、前記対象期間の季節の区分に関する情報に応じて設定され、
前記推論ステップは、前記学習ステップで構築された前記推論モデルを記憶部から読み出して前記推論モデルの演算を行う
ことを特徴とする電力需要予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力需要予測装置および電力需要予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電力の安定供給、発電コストの低減、さらには環境負荷を低減するために将来に必要となる電力量を予測する技術が知られている。また、予測対象の電力需要は、気象などの自然要因の影響を受けて変動することが知られている。近年において、このような自然要因などの様々なデータをもとに、数理的手法を用いた電力需要の予測モデルの開発が行われている。
【0003】
例えば、特許文献1は、過去の月別電力消費量の年間変動の形状の相関を利用して、予測対象の日の電力需要を予測する技術を開示している。また、特許文献2は、ニューラルネットワークを利用して過去の電力需要の実績データおよび気象情報を用いた予測モデルを構築し、予測対象の日の電力需要を予測する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4261471号公報
【特許文献2】特許第3707589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の技術によれば、電力需要の予測対象期間は比較的短期であり、1か月以上先までの比較的長期の電力需要の予測は困難であった。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、比較的長期の電力需要の予測を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明に係る電力需要予測装置は、平年値と比較した確率的な気象の予報値に基づいて、過去の観測期間のうちの第1観測期間での電力需要の推論値から、対象期間に予測される電力需要を抽出する抽出部と、抽出された前記予測される電力需要を提示する提示部とを備え、前記推論値は、事前に構築された推論モデルに基づいて、前記第1観測期間での気象の観測値である第1観測値に対して推論された値であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る電力需要予測装置において、さらに、前記過去の観測期間のうちの第2観測期間での気象の観測値である第2観測値と電力需要の実測値との関係を学習して構築された前記推論モデルに、前記第1観測期間で観測された前記第1観測値を入力して、前記推論モデルを演算することにより前記第1観測期間での電力需要の前記推論値を求める推論部を備え、前記推論部によって求められた前記推論値は前記抽出部に入力されてもよい。
【0009】
また、本発明に係る電力需要予測装置において、さらに、前記第2観測期間での前記第2観測値と前記実測値との関係を学習して前記推論モデルを構築する学習部を備え、前記第2観測期間は、前記対象期間の季節の区分に関する情報に応じて設定され、前記推論部は、前記推論モデルを前記学習部から読み出して前記推論モデルの演算を行ってもよい。
【0010】
また、本発明に係る電力需要予測装置において、前記気象の観測値は、前記過去の観測期間の気温の平均値である前記平年値に対する値の高低によって複数の階級に区分される気温の観測値であり、前記平年値と比較した確率的な気象の前記予報値は、予報に係る気温の分布が前記複数の階級の各々に該当する確率で表され、前記抽出部は、前記第1観測期間での前記第1観測値が取りうる階級に対応する前記推論値を、前記予報値が示す前記複数の階級の各々の確率で重みを付けした平均値を用いて前記予測される電力需要を抽出してもよい。
【0011】
上述した課題を解決するために、本発明に係る電力需要予測方法は、平年値と比較した確率的な気象の予報値に基づいて、過去の観測期間のうちの第1観測期間での電力需要の推論値から、対象期間に予測される電力需要を抽出する抽出ステップと、抽出された前記予測される電力需要を提示する提示ステップとを備え、前記推論値は、事前に構築された推論モデルに基づいて、前記第1観測期間での気象の観測値である第1観測値に対して推論された値であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る電力需要予測方法において、さらに、前記過去の観測期間のうちの第2観測期間での気象の観測値である第2観測値と電力需要の実測値との関係を学習して構築された前記推論モデルに、前記第1観測期間で観測された前記第1観測値を入力して、前記推論モデルを演算することにより前記第1観測期間での電力需要の前記推論値を求める推論ステップを備え、前記推論ステップによって求められた前記推論値は前記抽出ステップで用いられてもよい。
【0013】
また、本発明に係る電力需要予測方法において、さらに、前記第2観測期間での前記第2観測値と前記実測値との関係を学習して前記推論モデルを構築する学習ステップを備え、前記第2観測期間は、前記対象期間の季節の区分に関する情報に応じて設定され、前記推論ステップは、前記学習ステップで構築された前記推論モデルを記憶部から読み出して前記推論モデルの演算を行ってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、平年値と比較した確率的な気象の予報値に基づいて予測を行うので、比較的長期の電力需要を予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る電力需要予測装置を含む電力需要予測システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、第1の実施の形態に係る電力需要予測装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、第1の実施の形態に係る電力需要予測装置に入力される長期予報の一例を説明するための図である。
【
図4】
図4は、第1の実施の形態に係る電力需要予測装置において用いられる気象データの一例を説明するための図である。
【
図5】
図5は、第1の実施の形態に係る電力需要予測装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図6】
図6は、第1の実施の形態に係る電力需要予測装置によって提示される電力需要の予測結果の例を説明するための図である。
【
図7】
図7は、第1の実施の形態に係る電力需要予測装置によって提示される電力需要の予測結果の例を説明するための図である。
【
図8】
図8は、第2の実施の形態に係る電力需要予測装置を含む電力需要予測システムの構成を示すブロック図である。
【
図9】
図9は、第2の実施の形態に係る電力需要予測装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施の形態について、
図1から
図9を参照して詳細に説明する。なお、本実施の形態では、気象の観測値および予報値とは、気温の観測値および予報値である場合を例に挙げて説明する。
【0017】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る電力需要予測装置1を備える電力需要予測システムの構成を示すブロック図である。本実施の形態に係る電力需要予測システムは、平年値と比較した確率的な気象の長期予報である気象の予報値に基づいて、1か月以上先までの比較的長期の電力需要を予測する。
【0018】
図1に示すように、電力需要予測システムは、気象予報データ記憶部10と、気象データ記憶部11と、電力需要予測装置1とを備えている。電力需要予測装置1と、気象予報データ記憶部10および気象データ記憶部11とは、ネットワークNWを介して接続されている。気象予報データ記憶部10および気象データ記憶部11は、例えば、外部の気象情報システムが備えるデータベースである。
【0019】
電力需要予測装置1は、気象予報データ記憶部10から、電力需要の予測を行う対象期間の平年値と比較した確率的な気象予報を取得する。気象予報データ記憶部10に記憶されている気象予報は、予測対象施設の地点や地理的地域での気温の長期予報である。例えば、気象庁が発表する季節予報の3か月予報を用いることができる。
【0020】
また、電力需要予測装置1は、気象データ記憶部11から、過去の観測期間のうちの設定された第1観測期間での気象の観測値(第1観測値)を取得する。気象データ記憶部11に記憶されている気象の観測値は、予測対象の施設の地点や地理的地域で観測された気温のデータである。例えば、アメダス(AMeDAS:Automated Meteorological Data Acquisition System)によって収集された過去30年間の気温の観測データを第1観測期間での第1観測値として用いることができる。
【0021】
[電力需要予測装置の機能ブロック]
電力需要予測装置1は、抽出部12、推論部13、提示部14、および第1記憶部15を備える。電力需要予測装置1は、例えば、電力需要の予測対象施設に設置され、予測対象の施設における3か月先までの比較的長期の電力需要を予測する。
【0022】
抽出部12は、平年値と比較した確率的な気象の予報値に基づいて、過去の観測期間のうちの第1観測期間での電力需要の推論値から、対象期間に予測される電力需要を抽出する。抽出部12は、気象予報データ記憶部10から取得した気象の予報値を用いて予測される電力需要を抽出する。前述したように、本実施の形態では、過去の第1観測期間での推論値として過去30年間での推論値が採用される。
【0023】
抽出部12が用いる平年値と比較した確率的な気象の予報値は、予測対象施設の地点や地理的地域における気温の1か月予報、あるいは、3か月予報などの長期予報である。長期予報に係る予報期間は、電力需要の予測を行いたい予測対象期間の長さに対応する。例えば、本実施の形態では、抽出部12は、3か月先までの電力需要を抽出するため、気温の3か月予報に基づいて抽出処理を行う。
【0024】
図3は、抽出部12が用いる、平年値と比較した確率的な気象の予報値の例を示す模式図である。
図3の(a)、(b)、および(c)は、気温の3か月予報を月ごとに表している。平年値と比較した確率的な気温の予報値は、予報に係る気温の分布が平年値に対する値の高低によって複数の階級に区分されている。また、平年値は、過去30年間の気温の観測データの平均値である。また、この平年値に対して気温は、3つの階級、すなわち、平年値よりも高い「高」、平年値と同等である「並」、および平年値よりも低い「低」に区分される。
【0025】
図3の(a)~(c)は、都道府県ごとの気温の平年値と比較した、1か月先、2か月先、および3か月先の気温が3つの階級「高」、「並」、「低」のそれぞれとなる確率を色の濃淡で表している。
【0026】
図3の(a)に示すように、例えば、北海道では、1か月先の気温の予報値が平年値よりも低くなる確率が10(%)、平年並みの確率が30(%)、平年値よりも高い確率が60(%)である。また、
図3の(a)に示すように、1か月先の本州の各県では、平年値よりも低くなる確率が20(%)、平年並みの確率が40(%)、平年値よりも高い確率が40(%)である。同様に、
図3の(b)は、2か月先の気温が階級「高」、「並」、および「低」となる確率を示し、
図3の(c)は3か月先の気温が階級「高」、「並」、および「低」となる確率を示している。
【0027】
このように、抽出部12は、予測対象施設の地域における3か月先の気温の予報の確率値を入力として用いる。例えば、
図3の(a)~(c)に示す気温の3か月予報の例において、北海道に位置する施設での2021年3月の時点から3か月先までの電力需要を予測する場合を考える。この場合、抽出部12は、2021年4月の気温の予報値「低:並:高(%):10:30:60」、2021年5月の気温の予報値「低:並:高(%):20:40:40」、および2021年6月の気温の予報値「低:並:高(%):20:30:50」を入力として用いる。
【0028】
図1に戻り、抽出部12は、過去30年間での気温の観測データ(第1観測値)に対して予め推論された電力需要の推論値を用いて、予測対象期間において予測される電力需要を抽出する。本実施の形態では、抽出部12は、後述の推論部13によって求められた過去30年間での電力需要の推論値を用いる。
【0029】
推論部13は、事前に構築された推論モデル15aを用いて、過去30年間での気象の観測データに対する電力需要の推論値を求める。詳細は後述するが、推論モデル15aは、過去の観測期間のうちの設定された第2観測期間での気温の観測データ(第2観測値)と電力需要の実測値との関係が事前の学習により構築されたモデルである。推論部13は、推論モデル15aに対して、過去30年間で観測された気象の値を入力して、推論モデル15aを演算することにより過去30年間での電力需要の推論値を求める。
【0030】
より詳細には、推論部13は、外部の気象情報システムの気象データ記憶部11から取得した過去30年間の気温の観測データを、未知の入力データとして推論モデル15aに与え、予測対象施設において過去30年の期間で推論される電力需要の値を求める。推論モデル15aは、例えば、外部のサーバなどで事前に過去の気温と電力需要との関係を学習して構築され第1記憶部15に記憶されている。
【0031】
提示部14は、抽出部12によって抽出された対象期間に予測される電力需要を提示する。例えば、提示部14は、電力需要予測装置1が備える表示装置107に、1か月ごとなど設定された期間ごとの電力需要の予測結果を表示する。
【0032】
第1記憶部15は、抽出部12が予測される電力需要の値を抽出する際に用いる気温の平年値および階級区分に関する値を記憶する。また、第1記憶部15は、推論部13が推論処理に用いる、事前に構築された推論モデル15aを記憶する。第1記憶部15には、予測対象施設での電力需要の実測値が記憶されている。さらに、第1記憶部15は、提示部14が予測される電力需要を表示する際の予測結果のデータ処理に関する情報を記憶する。
【0033】
ここで、抽出部12が、予測対象施設における3か月先(2021年4月~6月)までに予測される電力需要を抽出する処理を例に挙げて、
図4を参照してより詳細に説明する。
【0034】
本実施の形態では、抽出部12は、確率を考慮した電力需要の平均値、つまり期待値計算を利用して過去30年間の電力需要の推論値から、予測対象期間において予測される電力需要の値を抽出する。
【0035】
図4のデータaは、気象データ記憶部11から取得された過去30年間の気温の観測データと、対応する電力需要の推論値とを示している。具体的には、
図4のデータaの例では、過去30年分(1991年~2020年)の4月の気温の昇順で並べられた電力需要の推論値が示されている。前述したように、本実施の形態では、気温は平年値と比較した3つの階級「高」、「並」、および「低」に区分される。
図4のデータaの例では、上から10年分の気温は階級「低」に区分され、中段の10年分の気温は階級「並」に区分され、下から10年分の気温は階級「高」に区分されている。また、
図4のデータaにおいて、破線四角形で囲んだ領域は、気温の平年値に対する3つの階級「高」、「並」、および「低」の区分に対応付けられた電力需要の推論値を示している。
【0036】
図4のデータbは、
図3で説明したように、抽出部12が気象予報データ記憶部10から取得した3か月先までの気温の長期予報の1か月分の値であり、気温の確率を階級ごとに示している。つまり、
図4は、例えば、予測対象施設の地域において、1か月先、つまり2021年4月の気温が平年より高くなる確率が70%(「高:70%」)、平年並みとなる確率が20%(「並:20%」)、および平年より低くなる確率が10%(「低:10%」)とされる長期予報を示している。
【0037】
抽出部12は、過去30年間の気温の観測データでの電力需要の推論値のうちから、気温の長期予報の確率に応じた一定の推論値を期待値計算に利用する。より具体的には、抽出部12は、
図4のデータbに示される2021年4月における気温の長期予報の確率値(「高:70%」、「並:20%」、「低:10%」)に応じた数の電力需要の推論値を、
図4の式cによる期待値計算に利用する。
【0038】
より詳細には、抽出部12は、気温の長期予報が示す各階級の確率値の大小に応じて、各階級区分から選択する電力需要の推論値の範囲を調整する。例えば、気温の長期予報の3つの階級の確率値のうち、階級「高」の確率値が最も高い場合、抽出部12は、3つの階級「高」、「並」、「低」の各々の区分内で気温の値が高い方の電力需要の推論値を3つの階級「高」、「並」、「低」のそれぞれから選択して期待値計算に用いる。したがって、この場合、階級「高」に属する電力需要の推論値のうち、対応付けられている気温の値がより高い電力需要の推論値が選択される。また、階級「並」に属する電力需要の推論値のうち、対応付けられている気温の値がより高い電力需要の推論値が選択される。同様に、階級「低」に属する電力需要の推論値のうち、対応付けられている気温の値がより高い電力需要の推論値が選択される。
【0039】
一方において、気温の長期予報の3つの階級の確率値のうち、階級「低」の確率値が最も高い場合、抽出部12は、過去30年間の観測データの気温に対応する電力需要の推論値において、3つの階級区分内において気温の値が低い方の電力需要の推論値を選択して期待値を計算する。したがって、この場合、階級「高」に属する電力需要の推論値のうち、対応付けられている気温の値がより低い電力需要の推論値が選択される。また、階級「並」に属する電力需要の推論値のうち、対応付けられている気温の値がより高い電力需要の推論値が選択される。同様に、階級「低」に属する電力需要の推論値のうち、対応付けられている気温の値がより低い電力需要の推論値が選択される。
【0040】
図4の例を用いて説明すると、データbが示す気温の長期予報の確率値は、階級「高」の値「70%」が最も高い。このことから、
図4の点線矢印「7年分」に示すように、データaに含まれる階級「高」に区分されているデータのうち、気温の値が高い方から7年分の電力需要の推論値が選択される。また、
図4の点線矢印「2年分」に示すように、データaに含まれる階級「並」に区分されるデータのうち気温の値が高い方から2年分の電力需要の推論値が選択される。同様に
図4の点線矢印「1年分」に示すように、階級「低」に区分されるデータのうち気温の値が高い方から1年分の電力需要の推論値が選択される。
【0041】
このように、抽出部12は、過去30年間における気温の観測データの値が取りうる階級「高」、「並」、および「低」に対応する電力需要の推論値を、気温の長期予報が示すこれらの3つの階級の各々の確率で重み付けした平均値、つまり期待値を用いて予測対象期間において予測される電力需要を抽出する。
図4の式cで表されるように、予測される電力需要は、期待値={[階級「高」から選択された7年分の電力需要の推論値]+[階級「並」から選択された2年分の電力需要の推論値]+[階級「低」から選択された1年分の電力需要の推論値]/[10年]}、を計算することで抽出される。また、
図4に示す2021年4月における期待値の計算と同様に、2021年5月および6月についてもそれぞれ期待値を計算し、予測対象期間で予測される電力需要を抽出することができる。
【0042】
上述したように、抽出部12は、気温の長期予報が示す各階級の確率値の大小に応じて、各階級区分から選択する電力需要の推論値の範囲を調整する処理、および、選択した電力需要の推論値に基づいて期待値を計算する処理を含む抽出処理を行う。なお、抽出部12は、各階級区分に含まれる電力需要の推論値の平均値を利用して期待値を計算してもよい。
【0043】
なお、上述した抽出部12においては、各月初日から末日までの範囲の予報データに係る月単位の3か月先までの長期予報を用いる場合を例示した。しかし、1か月分の予報の具体的な範囲は、月初日から末日までである場合に限らない。例えば、3月28日~4月27日までを4月分の予報データの範囲としたものであってもよい。この場合、抽出部12は、例えば、1991年~2020年の3月28日~4月27日での過去の気温の観測データを、過去30年間の観測データとして用い、2021年3月28日~4月27日に予測される電力需要を抽出することができる。
【0044】
[電力需要予測装置のハードウェア構成]
次に、上述した機能を有する電力需要予測装置1を実現するハードウェア構成の一例について、
図2を用いて説明する。
【0045】
図2に示すように、電力需要予測装置は、例えば、バス101を介して接続されるプロセッサ102、主記憶装置103、通信インターフェース104、補助記憶装置105、入出力I/O106を備えるコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。また、電力需要予測装置1は、バス101を介して接続される表示装置107を備えることができる。
【0046】
主記憶装置103には、プロセッサ102が各種制御や演算を行うためのプログラムが予め格納されている。プロセッサ102と主記憶装置103とによって、
図1に示した抽出部12、および推論部13の各機能が実現される。
【0047】
通信インターフェース104は、電力需要予測装置1と各種外部電子機器との間をネットワーク接続するためのインターフェース回路である。通信インターフェース104より、
図1で説明した抽出部12が用いる、気象予報データ、過去の気象データや、推論部13が用いる推論モデル15aが、ネットワークNWを介して外部端末より受信される構成としてもよい。
【0048】
補助記憶装置105は、読み書き可能な記憶媒体と、その記憶媒体に対してプログラムやデータなどの各種情報を読み書きするための駆動装置とで構成されている。補助記憶装置105には、記憶媒体としてハードディスクやフラッシュメモリなどの半導体メモリを使用することができる。
【0049】
補助記憶装置105は、電力需要予測装置1が実行する電力需要予測プログラムを格納するプログラム格納領域を有する。補助記憶装置105によって、
図1で説明した第1記憶部15が実現される。また、補助記憶装置105には、気温の平年値、平年値と比較した気温の高低の階級区分に関する情報、および期待値計算の式に関する情報が記憶されている。さらには、例えば、上述したデータやプログラムやなどをバックアップするためのバックアップ領域などを有していてもよい。
【0050】
入出力I/O106は、外部機器からの信号を入力したり、外部機器へ信号を出力したりするI/O端子により構成される。
【0051】
表示装置107は、有機ELディスプレイや液晶ディスプレイなどによって構成される。表示装置107によっても
図1で説明した提示部14を実現することができる。
【0052】
ここで、補助記憶装置105のプログラム格納領域に格納されているプログラムは、本明細書で説明する電力需要予測方法の順序に沿って時系列に処理が行われるプログラムであってもよく、並列に、あるいは呼び出しが行われたときなどの必要なタイミングで処理が行われるプログラムであってもよい。また、プログラムは、1つのコンピュータにより処理されるものでもよく、複数のコンピュータによって分散処理されるものであってもよい。
【0053】
[電力需要予測装置の動作]
図5は、本実施の形態に係る電力需要予測装置1の動作を示すフローチャートである。 まず、抽出部12は、外部の気象情報システムの気象予報データ記憶部10から、例えば、ネットワークNWを介して取得した、平年値と比較した確率的な気象の予報値を入力する(ステップS1)。具体的には、抽出部12は、気象予報データ記憶部10から取得した3か月先までの気温の長期予報を入力する。なお、ステップS1において、抽出部12は、ネットワークNWを介して取得された予報値を入力する場合に限らず、USBメモリなどの可搬型メモリに事前に記憶された予報値を読み出して入力する構成としてもよい。
【0054】
次に、推論部13は、第1記憶部15から読みだした推論モデル15aに対して、過去30年間の気温の観測データを未知の入力として与え、推論モデル15aにしたがった演算を行い、過去30年間の気温の観測データに対する電力需要の推論値を求める(ステップS2)。
【0055】
次に、抽出部12は、ステップS1で入力された気温の長期予測の確率値を利用して、ステップS2で求められた電力需要の推論値に関する期待値を計算する(ステップS3)。具体的には、ステップS1で入力された気温の長期予報において、ある1か月の各階級の確率値が、「高」:70%、「並」:20%、「低」:10%である場合に、抽出部12は、ステップS2で求められた過去30年間の電力需要の推論値を、「高」:70%、「並」:20%、「低」:10%の各々の確率で重みづけした平均値を計算する。
【0056】
さらに、ステップS3において期待値を計算する際に、気温の長期予報の確率値が3つの階級「高」、「並」、および「低」のうち、階級「高」の確率値が最も高い場合には、抽出部12は、これらの階級「高」、「並」、および「低」の各区間内で気温が高い方のデータから、各階級の電力需要の推論値を選択することができる。
【0057】
また、気温の長期予報の確率値が3つの階級「高」、「並」、および「低」のうち、階級「低」の確率値が最も高い場合には、抽出部12は、これらの階級「高」、「並」、および「低」の各区間内で気温が低い方のデータから、各階級の電力需要の推論値を選択することができる。
【0058】
このように、抽出部12は、気温の長期予報が示す各階級の確率値の大小に応じて、各階級区間から選択する電力需要の推論値の範囲を調整する。
【0059】
次に、抽出部12は、ステップS3で計算した期待値から、予測対象期間において予測される電力需要を求める(ステップS4)。具体的には、抽出部12は、長期予報に係る予報期間に応じて、ステップS3の期待値を計算することができる。例えば、長期予報が1か月ごとの3か月予報であれば、抽出部12は、ステップS3の期待値を1か月分ごとに計算し、3か月先までの電力需要を求めることができる。
【0060】
次に、提示部14は、表示装置107に、ステップS4で求められた電力需要の予測結果を提示する(ステップS5)。
【0061】
図6および
図7は、提示部14によって提示される電力需要の予測結果の例を示す図である。
図6の領域dには、予測対象の期間「4月」、「5月」、「6月」ごとに、「予測結果(kWh)」、「昨年実績(kWh)」、および「昨年比」が互いに関連付けて表示されている。
【0062】
図7は、
図6の予測結果の例を、表示装置107が月ごとの棒グラフで表示する例を示している。
図7の横軸は、予測対象期間である「2021年4月」、「2021年5月」、および「2021年6月」を示し、縦軸は電力量[kWh]を示している。また、棒グラフのデータeは、電力需要の昨年実績値を表し、データfは予測結果の電力需要の値を表している。
図7に示すように、3か月先までの電力需要を昨年度の実績値と比較可能な形態で表示することで、長期の電力需要の把握がより容易となる。
【0063】
提示部14は、さらに、予測された電力需要を、予測対象施設に含まれる個別の区画あるいは設定された複数の区画ごとに分けてグラフ表示することができる。あるいは、提示部14は、複数の地点で予測された電力需要をより広域の予測データとしてグラフ表示してもよい。
【0064】
なお、説明した実施の形態では、推論部13が、事前に構築された推論モデル15aを第1記憶部15から読み出して推論処理を行う場合について説明した。しかし、推論部13による推論処理は、外部のサーバで行う構成としてもよい。この場合、抽出部12は、ネットワークNWを介して外部のサーバから電力需要の推論値を取得する。また、この場合、推論モデル15aは、外部のサーバに格納されている。
【0065】
以上説明したように、第1の実施の形態に係る電力需要予測装置1によれば、平年値と比較した確率的な気象の長期予報に基づいて電力需要を予測するので、比較的長期の電力需要の予測を行うことができる。
【0066】
また、電力需要予測装置1によれば、過去30年間の気温の観測データがとり得る階級に対応する過去30年間の電力需要の推論値を、長期予報が示す複数の階級各々の確率で重み付けした平均値を用いるので、1か月以上先までの比較的長期の電力需要の予測を、より容易に行うことができる。
【0067】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、以下の説明では、上述した第1の実施の形態と同じ構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0068】
第1の実施の形態では、抽出部12は、推論部13が予め推論した、過去の観測期間のうちの第1観測期間、つまり過去30年間での電力需要の推論値を取得する場合について説明した。また、推論部13は、事前に構築された推論モデル15aを第1記憶部15から読み出して推論処理を行う場合について説明した。これに対し、第2の実施の形態では、さらに、学習部16を備え、推論モデル15aの学習処理を行う。
【0069】
図8に示すように、本実施の形態に係る電力需要予測システムは、電力需要予測装置1A、気象予報データ記憶部10、気象データ記憶部11、および学習データ記憶部17を備える。
【0070】
[電力需要予測装置の機能ブロック]
図8に示すように、本実施の形態に係る電力需要予測装置1Aは、抽出部12、推論部13、提示部14、第1記憶部15、および学習部16を備える。本実施の形態に係る電力需要予測装置1Aは、学習部16を備える点において第1の実施の形態に係る電力需要予測装置1と構成が異なる。以下、第1の実施の形態と異なる構成を中心に説明する。
【0071】
学習部16は、過去の観測期間のうちの予め設定された過去の第2観測期間での気温の観測値である第2観測値と、過去の第2観測期間での電力需要の実測値との関係を学習して推論モデル15aを構築する。第2観測期間は、予測対象期間の季節の区分に関する情報に応じて設定され、具体的には、予測対象期間の季節や長さに応じて設定される。例えば、学習部16は、予測対象期間の季節や長さに応じて前年度の5か月分や1年分の気温の観測データおよび予測対象施設での電力需要の実測値を学習データとして用いることができる。また、抽出部12が、2021年4月から6月までの電力需要を予測する場合には、2020年3月から7月までの昨年度5か月分の気温の観測データおよび電力需要の実測値を学習データとすることができる。
【0072】
ここで、学習データを取得する期間である過去の第2観測期間について説明する。前述したように、過去の第1観測期間は、推論部13が推論処理を行い電力需要の推論値を求める対象の期間であり、本実施の形態では、過去30年間の気温の観測データに対する推論値が求められている。一方において、学習データを取得する過去の第2観測期間は、上記のとおり予測対象期間の季節や長さに応じて設定され、過去の第1観測期間とは重複しない過去の期間とすることができる。
【0073】
具体的には、過去の第2観測期間は、過去の第1観測期間とは重複しない期間である場合の他、過去の第1観測期間にその一部が含まれる場合、および第1観測期間に含まれる場合がある。例えば、2025年の電力需要を予測する場合には、第1観測期間として1991年~2020年の30年間が用いられ、学習データに係る第2観測期間として、2024年の気温の観測データを用いる場合が考えられる。
【0074】
学習部16は、学習データ記憶部17から推論モデル15aを構築するための学習データを取得し、公知の機械学習アルゴリズムを用いて学習処理を行う。また、学習部16は、学習データとして用いる過去の気温の観測データが気象情報システムにおいて更新されるごとに、更新された気象データに基づいて推論モデル15aを再度学習して構築することができる。
【0075】
学習データ記憶部17には、学習部16が推論モデル15aを構築するために用いる学習データが記憶されている。より詳細には、学習データ記憶部17は、昨年度の気温の観測データと、予測対象施設での昨年度の電力需要の実測値とからなる学習データを記憶することができる。
【0076】
[電力需要予測装置の動作]
次に、上述した構成を有する電力需要予測装置1Aの動作について、
図9のフローチャートを参照して説明する。まず、抽出部12は、ネットワークNWを介して気象予報データ記憶部10から取得した、平年値と比較した確率的な気象の予報値を入力する(ステップS1)。具体的には、抽出部12は、気象予報データ記憶部10から取得した気温の3か月予報を入力する。なお、ステップS1において、抽出部12は、ネットワークNWを介して取得された予報値を入力する場合に限らず、USBメモリなどの可搬型メモリに記憶された予報値を読み出して入力する構成としてもよい。
【0077】
次に、学習部16は、学習データを学習データ記憶部17から取得して推論モデル15aを構築する(ステップS20)。具体的には、学習部16は、公知の機械学習アルゴリズムを用いて、設定された第2観測期間で観測された気温と、その期間での電力需要の実測値との関係を学習する。例えば、電力需要の予測対象期間が3か月である場合に、学習部16は、前年度における5か月間の気温の観測データと、当該5か月間での電力需要の実測値とからなる学習データを用いることができる。学習部16によって構築された推論モデル15aは、第1記憶部15に記憶される。
【0078】
次に、推論部13は、ステップS20で構築された推論モデル15aを第1記憶部15から読み出して、電力需要の推論値を求める(ステップS2)。より詳細には、推論部13は、推論モデル15aに、未知の入力として、過去30年間の気温の観測データを与えて、推論モデル15aにしたがった演算を行い、過去30年間の電力需要の推論値を求める。
【0079】
次に、抽出部12は、ステップS1で入力された気温の長期予測の確率値を利用して、ステップS2で取得された電力需要の推論値に関する期待値を計算する(ステップS3)。次に、抽出部12は、ステップS3で計算した期待値から、予測対象期間において予測される電力需要を求める(ステップS4)。具体的には、抽出部12は、長期予報に係る予報期間に応じてステップS3の期待値を計算することができる。例えば、長期予報が1か月ごとの3か月予報であれば、抽出部12は、ステップS3の期待値を1か月分のデータごとに計算し、3か月先までに予測される電力需要を求めることができる。
【0080】
次に、提示部14は、ステップS4で求められた電力需要の予測結果を表示装置107に提示させる(ステップS5)。
【0081】
以上説明したように、第2の実施の形態に係る電力需要予測装置1Aによれば、学習部16が過去の気温の観測データと過去の電力需要の実測値との関係を学習して推論モデル15aを構築するので、過去の気温の観測データが更新されるごとに推論モデル15aを再構築することができ、より精度の高い電力需要の長期予測が可能となる。
【0082】
なお、説明した実施の形態では、一つの電力需要予測装置1にすべての機能部が設けられている場合について説明した。しかし、電力需要予測装置1が備える各機能部は、一つのコンピュータとして実現される場合以外にも、ネットワーク上に分散した構成とすることもできる。
【0083】
また、説明した実施の形態では、電力需要予測装置1は、1か月ごとの気温の3か月予報を長期予報として用いる場合を例に挙げて説明した。しかし、長期予報は、3か月予報に限らず、1か月予報などの他の期間に係る長期予報を用いてもよい。また、1か月予報はさらに各週の予報を含む場合であってもよい。例えば、1か月予報が第1週目、第2週目、および第3~4週目の予報値を有する予報データであってもよい。この場合、電力需要予測装置1の抽出部12は、長期予報に係る予報期間に応じて、上記第1週目、第2週目、および第3~4週目ごとの期待値を計算し、予測される電力需要を求めることができる。
【0084】
以上、本発明の電力需要予測装置および電力需要予測方法における実施の形態について説明したが、本発明は説明した実施の形態に限定されるものではなく、請求項に記載した発明の範囲において当業者が想定し得る各種の変形を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0085】
1…電力需要予測装置、10…気象予報データ記憶部、11…気象データ記憶部、12…抽出部、13…推論部、14…提示部、15…第1記憶部、15a…推論モデル、101…バス、102…プロセッサ、103…主記憶装置、104…通信インターフェース、105…補助記憶装置、106…入出力I/O、107…表示装置、NW…ネットワーク。