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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102352
(43)【公開日】2023-07-25
(54)【発明の名称】大便器
(51)【国際特許分類】
   E03D 11/08 20060101AFI20230718BHJP
   E03D 11/02 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
E03D11/08
E03D11/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022002768
(22)【出願日】2022-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横塚 裕也
(72)【発明者】
【氏名】林 佐登司
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 祥
(72)【発明者】
【氏名】神谷 昭範
【テーマコード(参考)】
2D039
【Fターム(参考)】
2D039AA02
2D039AD00
2D039DB00
(57)【要約】
【課題】所定の位置から凹部に洗浄水が流入し、汚物を良好に排出することができる大便器を提供する。
【解決手段】大便器1は、リム内壁面21Aを有するリム部20と、汚物受け面60Aを有する鉢部60と、第1連結面40Aを有する第1連結部40と、下部に設けられた凹部90と、を具備した便鉢部10を備えている。第1連結部40の後側領域の第1連結面40Aは、平面視において、凹部90内に形成される溜水面WSの左右両端WR,WLから便鉢部10の左右中心線CL1に平行に延びる一対の仮想平行線P1,P1の間に拡がる中央連結面47と、中央連結面47の左右両端縁から左右外方向に拡がる左右連結面49と、を有している。平面視における便鉢部10の中心10Cを通る鉛直面によって切断した鉛直断面形状において、中央連結面47の傾斜角度は、左右連結面49の傾斜角度よりも急である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リム内壁面を有するリム部と、
汚物受け面を有する鉢部と、
上端縁が前記リム内壁面の下端縁に連続し、下端縁が前記汚物受け面の上端縁に連続した連結面を有する連結部と、
下部に設けられた凹部と、
を具備した便鉢部を備えており、
前記連結部の後側領域の前記連結面は、
平面視において、前記凹部内に形成される溜水面の左右両端から前記便鉢部の左右中心線に平行に延びる一対の仮想平行線の間に拡がる中央連結面と、前記中央連結面の左右両端縁から左右外方向に拡がる左右連結面と、
を有しており、
平面視における前記便鉢部の中心を通る鉛直面によって切断した鉛直断面形状において、前記中央連結面の傾斜角度は、前記左右連結面の傾斜角度よりも急である大便器。
【請求項2】
前記連結部の後側領域の前記連結面は、
前記鉛直断面形状において、左右両側から左右中央に向かって長さが徐々に長くなる請求項1に記載の大便器。
【請求項3】
前記連結部の後側領域の前記連結面は、
前記鉛直断面形状において、左右両側から左右中央に向かって曲率半径が徐々に大きくなる請求項1及び請求項2のいずれか一項に記載の大便器。
【請求項4】
前記連結部の後側領域の前記連結面の下端縁は、左右中央が最も低い請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の大便器。
【請求項5】
前記連結部の後側領域の前記連結面は、左右中央よりも前記仮想平行線に近い領域において、前記鉛直断面形状における傾斜角度の変化が大きい請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の大便器。
【請求項6】
前記鉢部の後側領域の前記汚物受け面は、
平面視において、一対の前記仮想平行線の間に拡がる中央汚物受け面と、前記中央汚物受け面の左右両端縁から左右外方向に拡がる左右汚物受け面と、
を有しており、
前記鉛直断面形状において、前記中央汚物受け面の傾斜角度は、前記左右汚物受け面の傾斜角度よりも急である請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の大便器。
【請求項7】
前記鉢部の後側領域の前記汚物受け面は、左右両端縁から左右中央部に向けて下方に傾斜している請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の大便器。
【請求項8】
前記連結面の上端縁は、略同じ高さに延びている請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の大便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は大便器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は従来の大便器を開示している。この大便器は便鉢部を備えている。便鉢部は、リム部、鉢部、及び凹部を具備している。リム部は、左後側に第1吐水口を形成し、右前側に第2吐水口を形成している。鉢部は、棚面、及び汚物受け面を有している。棚面は、前方の一部を除いた汚物受け面の外周縁に連続している。棚面の外周縁はリム部のリム内周面の下端縁に連続している。凹部は、汚物受け面の内周縁に連続している。第1吐水口から吐水された洗浄水は、第1水流と第2水流を形成する。第1水流は、後方から凹部に流入する。第2水流は、凹部の後方に位置する棚面を通過して右側の汚物受け面を洗浄しつつ反時計回りに旋回する。第2吐水口から吐水された洗浄水は、第3水流と第4水流を形成する。第3水流は前方から凹部に流入する。第4水流は、反時計回りに旋回して第1吐水口から吐水される洗浄水に合流する。第4水流の一部は、後方から凹部に流入する。第4水流の残りは、第2水流に合流して凹部の後方に位置する棚面を通過して右側の汚物受け面を洗浄しつつ反時計回りに旋回する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-71007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された大便器は、凹部の後方に棚面を形成しているため、第1吐水口及び第2吐水口から吐水された洗浄水が凹部の後方を通過して旋回しやすい。このため、第1吐水口及び第2吐水口から吐水される洗浄水の流量が多かったり、水勢が強かったりすると、便鉢部内を旋回する水流が強くなるため、まとまった洗浄水が後方から凹部に流入しにくくなり、汚物排出が良好に行われないおそれがある。
【0005】
本開示は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、所定の位置から凹部に洗浄水が流入し、汚物を良好に排出することができる大便器を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の大便器は、リム内壁面を有するリム部と、汚物受け面を有する鉢部と、上端縁が前記リム内壁面の下端縁に連続し、下端縁が前記汚物受け面の上端縁に連続した連結面を有する連結部と、下部に設けられた凹部と、を具備した便鉢部を備えており、前記連結部の後側領域の前記連結面は、平面視において、前記凹部内に形成される溜水面の左右両端から前記便鉢部の左右中心線に平行に延びる一対の仮想平行線の間に拡がる中央連結面と、前記中央連結面の左右両端縁から左右外方向に拡がる左右連結面と、を有しており、平面視における前記便鉢部の中心を通る鉛直面によって切断した鉛直断面形状において、前記中央連結面の傾斜角度は、前記左右連結面の傾斜角度よりも急である。
【0007】
溜水面は、便器洗浄を実行していない状態において、大便器に貯留された封水の水面である。溜水面の左右両端は、溜水面の外周縁であって、便鉢部の左右中心線から左右方向に最も離れた部分である。平面視おける便鉢部の中心は、便鉢部の上端開口に対する左右中心線と前後中心線とが交差する点である。リム内壁面の上端周縁が便鉢部の上端開口の周縁に相当する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態1の大便器を示す平面図である。
図2図1の矢視D-D断面を示す断面図である。
図3図1の矢視E-E断面を示す断面図である。
図4図1の矢視D-D断面を示す断面斜視図である。
図5図1の矢視A-A断面の要部を示す断面図である。
図6図1の矢視B-B断面の要部を示す断面図である。
図7図1の矢視C-C断面の要部を示す断面図である。
図8図1の矢視D-D断面の要部を示す断面図である。
図9】便鉢部内の洗浄水の流れを示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の大便器1を具体化した実施形態1について、図面を参照しつつ説明する。以下の説明において、上下方向は、大便器1を水平な設置面に設置した状態における上下方向である。前後方向は、大便器1を水平な設置面に設置した状態において、便鉢部10に対してタンク載置部130が設けられている方向が後方であり、その逆方向が前方である。左右方向は、大便器1を水平な設置面に設置した状態において、前方から見た左右方向である。図1から図4において、上方向はX軸の正方向、下方向をX軸の負方向、前方向はZ軸の正方向、後方向はZ軸の負方向、左方向はY軸の正方向、右方向はY軸の負方向である。
【0010】
<実施形態1>
実施形態1の大便器1は、図1から図4に示すように、便鉢部10、便器排水路110、上壁部120、タンク載置部130、及び周壁部140を備えている。大便器1は、一体成形された陶器製である。便鉢部10は、上端から下方に向けて、リム部20、第1連結部40、鉢部60、第2連結部80、及び凹部90の順に設けられている。
【0011】
リム部20は、リム内壁部21及びリム上壁部23を有している。リム部20は便鉢部10の上端部を構成している。リム内壁部21は、便鉢部10の上部を一周している。リム内壁面21Aは、リム内壁部21の内方向を向いた面であり、便鉢部10の上部を一周する帯状である。リム内壁面21Aの上端周縁は、図1に示すように、平面視において、前端部の曲率半径が後端部の曲率半径よりも小さい略楕円形状である。リム内壁面21Aの上端部は、図2及び図3に示すように、下方に向けて徐々に傾斜が急になる湾曲面である。リム内壁面21Aの上端周縁は、リム内壁面21Aの上端部に形成された湾曲面の上端縁である。リム内壁面21Aの上端周縁は、便鉢部10の上端開口10Aの周縁に相当する。湾曲した上端部より下方のリム内壁面21Aは、下方に向けて僅かに内側に傾斜している。
【0012】
リム内壁部21の後部は、図1から図3に示すように、後述する給水空間150Sの前側壁部22を構成している。リム内壁部21は、後部の左右中央よりも左側に周方向に長いリム吐水口25が形成されている。リム吐水口25は、リム内壁部21を前後方向に貫通している。給水空間150S内において後述する洗浄水分配管150から吐出された洗浄水は、リム吐水口25から便鉢部10内に向けて吐水される。
【0013】
リム上壁部23は、リム内壁部21の上端周縁部に連続し、外方向に拡がっている。リム上壁部23は、リム内壁部21の上端周縁に沿って一周している。リム上壁面23Aは、リム上壁部23の上方を向いた面であり、水平に広がる環状の平面である。リム上壁面23Aは、平面視において、便鉢部10の左右中心線CL1に対して対称形状である。リム上壁面23Aの幅は、左右両側から前端部に向けて僅かに大きくなっている。
【0014】
第1連結部40は、図1から図8に示すように、リム内壁部21の下端周縁部に連続している。第1連結部40は、リム内壁部21の下端周縁に沿って一周している。第1連結面40Aは、第1連結部40の内方向を向いた面である。第1連結面40Aは、便鉢部10の左右中心線CL1を含む鉛直面に対して対称形状である。
【0015】
第1連結面40Aの上端縁は、リム内壁部21の下端周縁に沿って、略同じ高さで一周している。第1連結面40Aの上端縁は、第1連結面40Aの下端縁のどの部分よりも高い位置で延びている。第1連結面40Aの上端縁の最下端は、第1連結面40Aの下端縁の最上端よりも上に位置している。第1連結面40Aの上端縁は、後端が最も高い位置に延びている。第1連結面40Aの下端縁は、後端が最も低い位置に延びている。
【0016】
第1連結部40の前側領域の第1連結面40Aは、図1及び図2に示すように、上部連結面41、中間連結面43、及び下部連結面45を有している。第1連結部40の前側領域の左右両端部は、第1連結部40の前後中央領域の前端部に連続している。前後中央領域の第1連結部40は、便鉢部10の左右両側を前後方向に延びている。上部連結面41の左右両端縁は、第1連結部40の前後中央領域の第1連結面40Aに連続している。第1連結部40の前後中央領域の第1連結面40Aは、平面視において、幅が略一定である。
【0017】
第1連結部40の前後中央領域の後端部の夫々は、図1から図8に示すように、第1連結部40の後側領域の左右両端部に連続している。第1連結部40の後側領域の第1連結面40Aは、平面視において、左右両端部から左右中央部に向けて徐々に幅が広くなる。第1連結部40の後側領域の第1連結面40Aの下端縁は、下方に膨らむように湾曲し、左右中央が最も低くなっている(図3及び図4参照)。
【0018】
第1連結部40の後側領域の第1連結面40Aは、図1に示すように、中央連結面47と、中央連結面47の左右両端縁から左右外方向に拡がる左右連結面49と、を有している。中央連結面47は、平面視において、後述する凹部90内に形成される溜水面WSの左右両端WL,WRから便鉢部10の左右中心線CL1に平行に延びる一対の仮想平行線P1,P1の間に拡がっている。溜水面WSの左右両端WL,WRは、溜水面WSの外周縁であって、便鉢部10の左右中心線CL1から左右方向に最も離れた部分である。
【0019】
平面視における便鉢部10の中心10Cを通る鉛直面によって切断した鉛直断面形状(以下、「鉛直断面形状」という。)であって、図1の矢視A-A断面における左右連結面49の傾斜角度は、約43.0度である(図5参照)。平面視おける便鉢部10の中心10Cは、便鉢部10の上端開口10Aに対する左右中心線CL1と前後中心線CL2とが交差する点である。左右連結面49の傾斜角度は、鉛直断面形状において、左右連結面49の上端縁49Tと下端縁49Lとを結んだ直線の傾斜角度である。
【0020】
鉛直断面形状であって、図1の矢視B-B断面における中央連結面47の傾斜角度は、約44.6度である(図6参照)。鉛直断面形状であって、図1の矢視C-C断面における中央連結面47の傾斜角度は、約47.8度である(図7参照)。鉛直断面形状であって、図1の矢視D-D断面における中央連結面47の傾斜角度は、約48.9度である(図8参照)。中央連結面47の傾斜角度は、鉛直断面形状において、中央連結面47の上端縁47Tと下端縁47Lとを結んだ直線の傾斜角度である。
【0021】
第1連結面40Aは、便鉢部10の左右中心線CL1を含む鉛直面に対して対称形状である。このため、第1連結部40の後側領域の第1連結面40Aは、左右両端縁から左右中央に向けて、鉛直断面形状における傾斜角度が徐々に急になっている。鉛直断面形状において、中央連結面47の傾斜角度は、左右連結面49の傾斜角度よりも急である。鉛直断面形状である図1の矢視B-B断面の中央連結面47から図1の矢視C-C断面の中央連結面47までの傾斜角度の変化が、鉛直断面形状である図1の矢視A-A断面の左右連結面49から図1の矢視B-B断面の中央連結面47までの傾斜角度の変化、及び、鉛直断面形状である図1の矢視C-C断面の中央連結面47から図1の矢視D-D断面の中央連結面47までの傾斜角度の変化に比べて大きい。つまり、第1連結部40の後側領域の第1連結面40Aは、左右中央よりも仮想平行線P1に近い領域において、断面形状における傾斜角度の変化が大きい。
【0022】
第1連結部40の後側領域の第1連結面40Aは、図5から図8に示すように、鉛直断面形状において、左右両側から左右中央に向かって長さが徐々に長くなっている。第1連結部40の後側領域の第1連結面40Aの鉛直断面形状における曲率半径は、第1連結面40Aの上端縁47T、49Tと下端縁47L,49Lとの間において、変化している。第1連結部40の後側領域の第1連結面40Aの鉛直断面形状における曲率半径を第1連結部40の後側領域の第1連結面40Aの上端縁47T、49Tと下端縁47L,49Lとの間の第1連結面40Aの曲率半径の平均値とする。この場合、第1連結部40の後側領域の第1連結面40Aの鉛直断面形状における曲率半径は、左右両側から左右中央に向かって曲率半径が徐々に大きくなっている。
【0023】
鉢部60は、図1から図8に示すように、第1連結部40の下端周縁部に連続している。汚物受け面60Aは、鉢部60の便鉢部10の内側上方向を向いた面であり、外周縁から下方内側に向けて斜めに傾斜して拡がっている。汚物受け面60Aは、便鉢部10の左右中心線CL1を含む鉛直面に対して対称形状である。
【0024】
鉢部60の後側領域における汚物受け面60Aは、図1に示すように、平面視において、一対の仮想平行線P1.P1の間に拡がる中央汚物受け面61と、中央汚物受け面61の左右両端縁から左右外方向に拡がる左右汚物受け面63と、を有している。中央汚物受け面61の上端縁61Tは、図6から図8に示すように、中央連結面47の下端縁47Lに連続している。左右汚物受け面63の上端縁63Tは、左右連結面49の下端縁49Lに連続している。
【0025】
鉛直断面形状であって、図1の矢視A-A断面における左右汚物受け面63の傾斜角度は、約26.8度である(図5参照)。左右汚物受け面63の傾斜角度は、鉛直断面形状において、左右汚物受け面63の上端縁63Tと下端縁63Lとを結んだ直線の傾斜角度である。
【0026】
鉛直断面形状であって、図1の矢視B-B断面における中央汚物受け面61の傾斜角度は、約32.6度である(図6参照)。鉛直断面形状であって、図1の矢視C-C断面における中央汚物受け面61の傾斜角度は、約34.1度である(図7参照)。鉛直断面形状であって、図1の矢視D-D断面における中央汚物受け面61の傾斜角度は、約34.5度である(図8参照)。中央汚物受け面61の傾斜角度は、鉛直断面形状において、中央汚物受け面61の上端縁61Tと下端縁61Lとを結んだ直線の傾斜角度である。
【0027】
汚物受け面60Aは、便鉢部10の左右中心線CL1を含む鉛直面に対して対称形状である。このため、鉢部60の後側領域における汚物受け面60Aは、左右両端縁から左右中央に向けて、鉛直断面形状における傾斜角度が徐々に急になっている。鉛直断面形状において、中央汚物受け面61の傾斜角度は、左右汚物受け面63の傾斜角度よりも急である。
【0028】
鉢部60の後側領域における汚物受け面60Aは、図3から図8に示すように、上端縁から下端縁に向けて前方に傾斜しつつ、左右両端縁から左右中央部に向けて下方にも傾斜している。鉢部60の後側領域の汚物受け面60Aの下端縁は、下方に膨らむように湾曲し、左右中央が最も低くなっている(図3及び図4参照)。
【0029】
第2連結部80は、鉢部60の下端周縁部に連続している。第2連結部80は、鉢部60の下端周縁に沿って一周している。第2連結面80Aは、第2連結部80の便鉢部10の内方向を向いた面である。第2連結面80Aは、上端周縁から下方内側に向けて傾斜角度が徐々に急になるように湾曲しながら拡がっている。第2連結面80Aは、便鉢部10の左右中心線CL1を含む鉛直面に対して対称形状である。
【0030】
凹部90は、図2から図4に示すように、側壁部91及び底壁部93を有している。凹部90の側壁部91は、第2連結部80の下端周縁部に連続している。凹部90の側壁面91Aは、側壁部91の凹部90の内方向を向いた面であり、便鉢部10の下部を一周している。凹部90の側壁面91Aは、図1に示すように、平面視において、前端部の曲率半径が後端部の曲率半径よりも小さい略楕円形状である。凹部90の側壁面91Aは、下方に向けて僅かに内側に傾斜している。
【0031】
凹部90の底壁部93は、凹部90の側壁部91の下端周縁部に連続している。凹部90の底壁部93は、後部に便器排水路110に連通する流出口95が形成されている。凹部90の底壁面93Aは、底壁部93の上方を向いた面であり、流出口95に向けて僅かに下方向に傾斜している。
【0032】
便器排水路110は、図2に示すように、便鉢部10の凹部90の下端部に上流端部が連続し、凹部90の底壁部93に形成された流出口95に連通している。便器排水路110の上流部は、便鉢部10の凹部90の下部とともに溜水部Wを形成している。溜水部Wは封水が貯留される部分である。溜水面WSは、凹部90の底壁面93Aよりも僅かに上方に位置する。便器排水路110の下流端部は、図示しない排水接続管の上流端部に接続される。排水接続管の下流端部は図示しない床面に開口する排水管に接続される。
【0033】
上壁部120は、図1及び図2に示すように、便鉢部10のリム部20のリム上壁部23から後方に広がっている。上壁部120は、図示しない便座装置の取付けに利用される一対の便座取付ボルト穴121が形成されている。上壁部120の上方を向いた上壁面120Aは、リム上壁面23Aと同一平面上に拡がっている。上壁部120の下方には、洗浄水分配管150を収納する給水空間150Sが形成されている。給水空間150Sは、前端下面に水抜き流路150Dの上端部が連通している。水抜き流路150Dの下端部は溜水部W内に連通している。
【0034】
タンク載置部130は、上壁部120よりも後方に設けられている。タンク載置部130は、図示しない便器洗浄用タンクを載置する。タンク載置部130は、載置された便器洗浄用タンクよりも下方に洗浄水分配管150の上流部を配置する凹部が形成されている。洗浄水分配管150は、二股に分岐しており、タンク載置部130から給水空間150S内に延びて配置されている。洗浄水分配管150の上流端部に形成された流入口150Aは、上方に向けて開口している。洗浄水分配管150の下流端部に形成された2個の第1流出口150R及び第2流出口150Lは、給水空間150S内で開口している。第1流出口150Rは、第2流出口150Lより右側に開口している。洗浄水分配管150の流入口150Aは、タンク載置部130に載置された便器洗浄用タンクの洗浄水流出口に連通する。
【0035】
周壁部140は、大便器1の前部において、リム部20のリム上壁部23の外周縁から下方に広がる前側周壁部140Aと、大便器1の後部において、上下中間部から下方に広がり、前側周壁部140Aの左右後端縁に連続した後側周壁部140Bとを有している。前側周壁部140Aと後側周壁部140Bは、大便器1を設置面に設置した際に下端面が設置面に接触した状態となる。
【0036】
この大便器1は、便器洗浄を実行すると、図9に示すように、洗浄水分配管150の第1流出口150Rから突出された洗浄水と、第2流出口150Lから突出された洗浄水との一部が合流しつつリム吐水口25から便鉢部10内に向けて吐水される。第1流出口150Rから突出された洗浄水は、便鉢部10内をリム内壁面21Aに沿って旋回する第1主流F1を形成する。第2流出口150Lから突出された洗浄水は、リム吐水口25から直接的に凹部90へ後方から流入する第2主流F2を形成する。第1主流F1は、便鉢部10内を一周すると、第2主流F2とともに後方から凹部90へ流入する。
【0037】
この大便器1は、第1連結部40の後側領域の第1連結面40A、及び鉢部60の後側領域における汚物受け面60Aが左右両端縁から左右中央に向けて、鉛直断面形状における傾斜角度が徐々に急になっている。さらに、この大便器1は、鉢部60の後側領域における汚物受け面60Aが上端縁から下端縁に向けて前方に傾斜しつつ、左右両端縁から左右中央部に向けて下方にも傾斜している。このため、この大便器1は、リム吐水口25から吐水され、便鉢部10内をリム内壁面21Aに沿って一周した第1主流F1が、第1連結部40及び鉢部60の後側領域において、後方から凹部90に流入する流れに変化する。この大便器1は、第1主流F1と第2主流F2とが後方から凹部90に流入するため、汚物を良好に排出することができる。
【0038】
以上説明したように、実施形態1の大便器1は、リム内壁面21Aを有するリム部20と、汚物受け面60Aを有する鉢部60と、上端縁がリム内壁面21Aの下端縁に連続し、下端縁が汚物受け面60Aの上端縁に連続した第1連結面40Aを有する第1連結部40と、下部に設けられた凹部90と、を具備した便鉢部10を備えている。第1連結部40の後側領域の第1連結面40Aは、平面視において、凹部90内に形成される溜水面WSの左右両端WL,WRから便鉢部10の左右中心線CL1に平行に延びる一対の仮想平行線P1,P1の間に拡がる中央連結面47と、中央連結面47の左右両端縁から左右外方向に拡がる左右連結面49と、を有している。平面視における便鉢部10の中心10Cを通る鉛直面によって切断した鉛直断面形状において、中央連結面47の傾斜角度は、左右連結面49の傾斜角度よりも急である。
【0039】
この大便器1は、第1連結部40の後側領域の第1連結面40Aによって、便鉢部10内をリム内壁面21Aに沿って一周した第1主流F1を下方に向けた流れに誘導する。このため、この大便器1は、第1主流F1が後方から凹部90に流入し、汚物を良好に排出することができる。
【0040】
第1連結部40の後側領域の第1連結面40Aは、鉛直断面形状において、左右両側から左右中央に向かって長さが徐々に長くなる。この大便器1は、便鉢部10内をリム内壁面21Aに沿って一周した第1主流F1を下方に向けた流れに誘導し、第1連結面40Aに沿ってスムーズに流すことができる。このため、この大便器1は、第1主流F1が勢いよく後方から凹部90に流入し、汚物を良好に排出することができる。
【0041】
第1連結部40の後側領域の第1連結面40Aは、鉛直断面形状において、左右両側から左右中央に向かって曲率半径が徐々に大きくなる。この大便器1は、便鉢部10内をリム内壁面21Aに沿って一周した第1主流F1を下方に向けた流れに誘導し、第1連結面40Aに沿ってスムーズに流すことができる。このため、この大便器1は、第1主流F1が勢いよく後方から凹部90に流入し、汚物を良好に排出することができる。
【0042】
第1連結部40の後側領域の第1連結面40Aの下端縁は、左右中央が最も低い。この大便器1は、便鉢部10内をリム内壁面21Aに沿って一周した第1主流F1を下方に向けた流れに誘導し、第1連結面40Aに沿って下方に流すことができる。このため、この大便器1は、第1主流F1が勢いよく後方から凹部90に流入し、汚物を良好に排出することができる。
【0043】
第1連結部40の後側領域の第1連結面40Aは、左右中央よりも仮想平行線P1に近い領域において、鉛直断面形状における傾斜角度の変化が大きい。この大便器1は、便鉢部10内をリム内壁面21Aに沿って一周した第1主流F1を下方に向けた流れに誘導し、第1連結面40Aに沿ってスムーズに流すことができる。このため、この大便器1は、第1主流F1が勢いよく後方から凹部90に流入し、汚物を良好に排出することができる。
【0044】
鉢部60の後側領域の汚物受け面60Aは、平面視において、一対の仮想平行線P1,P1の間に拡がる中央汚物受け面61と、中央汚物受け面61の左右両端縁から左右外方向に拡がる左右汚物受け面63と、を有している。鉛直断面形状において、中央汚物受け面61の傾斜角度は、左右汚物受け面63の傾斜角度よりも急である。この大便器1は、第1連結部40の後側領域の第1連結面40A、及び鉢部60の後側領域の汚物受け面60Aによって、便鉢部10内をリム内壁面21Aに沿って一周した第1主流F1を下方に向けた流れに誘導する。このため、この大便器1は、第1主流F1が後方から凹部90に流入し、汚物を良好に排出することができる。
【0045】
鉢部60の後側領域の汚物受け面60Aは、左右両端縁から左右中央部に向けて下方に傾斜している。この大便器1は、便鉢部10内をリム内壁面21Aに沿って一周した第1主流F1を下方に向けた流れにより強く誘導する。このため、この大便器1は、第1主流F1が後方から凹部90に流入し、汚物を良好に排出することができる。
【0046】
第1連結面40Aの上端縁は、略同じ高さに延びている。このため、この大便器1は、意匠性が良好である。
【0047】
本開示は上記記述及び図面によって説明した実施形態1に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も技術的範囲に含まれる。
(1)第1連結部の後側領域の第1連結面は、鉛直断面形状において、左右両側から左右中央に向かって長さが徐々に変化しなくてもよいし、同じであってもよいし、最も長い部分が左右中央から左右方向にずれていてもよい。
(2)第1連結部の後側領域の第1連結面は、鉛直断面形状において、左右両側から左右中央に向かって曲率半径が徐々に大きくならなくてもよいし、同じであってもよいし、最も曲率半径が大きい部分が左右中央から左右方向にずれていてもよい。
(3)第1連結部の後側領域の第1連結面の下端縁の高さが一定であってもよいし、最も低い部分が左右中央から左右方向にずれていてもよい。
(4)鉢部の後側領域の汚物受け面は、鉛直断面形状において、傾斜角度が一定であってもよい。
(5)鉢部の後側領域の汚物受け面は、左右両端縁から左右中央部に向けて高さ方向に変化しなくてもよい。
(6)リム吐水口は複数個形成されていてもよい。
(7)リム吐水口は、便鉢部の左右中心線よりも右側、且つ前後中心線よりも前側におけるリム内壁部に形成されていてもよい。この場合、このリム吐水口から吐水される洗浄水は、後方に向けて便鉢部内に吐水される。
【符号の説明】
【0048】
1…大便器、10…便鉢部、10C…(便鉢部10の)中心、20…リム部、21A…リム内壁面、40…第1連結部(連結部)、40A…第1連結面(連結面)、47…中央連結面、49…左右連結面、60…鉢部、60A…汚物受け面、61…中央汚物受け面、63…左右汚物受け面、90…凹部、CL1…左右中心線、P1…仮想平行線、WS…溜水面
図1
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