(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102353
(43)【公開日】2023-07-25
(54)【発明の名称】水洗式便器
(51)【国際特許分類】
E03D 11/13 20060101AFI20230718BHJP
E03D 11/02 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
E03D11/13
E03D11/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022002769
(22)【出願日】2022-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 佐登司
(72)【発明者】
【氏名】横塚 裕也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 祥
(72)【発明者】
【氏名】神谷 昭範
【テーマコード(参考)】
2D039
【Fターム(参考)】
2D039AA02
2D039AD00
2D039AD01
2D039AD04
2D039CA04
2D039DB04
(57)【要約】
【課題】連通部から流出する水によって使用者が不快に感じることを防止できる水洗式便器を提供する。
【解決手段】便鉢部11と、前記便鉢部11の上流側に設けられ、前記便鉢部11側に開口する吐水口31が形成された給水部14と、前記便鉢部11に流入した水が溜まる溜水部29と、前記給水部14から前記溜水部29まで延びる連通部15と、を備え、前記給水部14の水が前記連通部15を通って前記溜水部29に流出し始めるタイミングは、前記給水部14の水が前記吐水口31から前記便鉢部11に流出し始めるタイミングよりも後である。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
便鉢部と、
前記便鉢部の上流側に設けられ、前記便鉢部側に開口する吐水口が形成された給水部と、
前記便鉢部に流入した水が溜まる溜水部と、
前記給水部から前記溜水部まで延びる連通部と、を備え、
前記給水部の水が前記連通部を通って前記溜水部に流出し始めるタイミングは、前記給水部の水が前記吐水口から前記便鉢部に流出し始めるタイミングよりも後である、水洗式便器。
【請求項2】
前記連通部を通って前記溜水部に流出する水の流量の最大値は、前記吐水口から前記便鉢部に流出する水の流量の最大値よりも小さい、請求項1に記載の水洗式便器。
【請求項3】
前記便鉢部の下流側に設けられて前記溜水部を構成するトラップ部を備え、
前記便鉢部の下部には、前記トラップ部内に開口する流出口が形成され、
前記給水部の水が前記連通部を通って前記溜水部に流出し始めるタイミングは、前記給水部の水が前記吐水口から前記便鉢部に流出して前記流出口に到達するタイミングよりも後である、請求項1から請求項2までの何れか一項に記載の水洗式便器。
【請求項4】
前記給水部の水が前記連通部に流入し始めるタイミングは、前記給水部の水が前記吐水口から前記便鉢部に流出し始めるタイミングよりも後である、請求項1から請求項3までの何れか一項に記載の水洗式便器。
【請求項5】
前記給水部の水が前記連通部に流入し始めるタイミングは、前記給水部の水の水面が、前記吐水口の上縁よりも上昇した後である、請求項1から請求項4までの何れか一項に記載の水洗式便器。
【請求項6】
1度の便器洗浄において前記吐水口から前記便鉢部に流出する水の総量と、1度の便器洗浄において前記連通部を通って前記溜水部に流出する水の総量との比は、4:1~100:1である、請求項1から請求項5までの何れか一項に記載の水洗式便器。
【請求項7】
前記給水部の水が前記連通部を通って前記溜水部に流出し始めるタイミングを遅らせる遅延機構を備えている、請求項1から請求項6までの何れか一項に記載の水洗式便器。
【請求項8】
前記吐水口の開口面積と、前記連通部の前記給水部側の開口面積との比は、1:1~40:1である、請求項1から請求項7までの何れか一項に記載の水洗式便器。
【請求項9】
前記吐水口の開口面積と、前記連通部の流路面積のうち最大のものとの比は、1:1~20:1である、請求項1から請求項8までの何れか一項に記載の水洗式便器。
【請求項10】
前記連通部の上端開口から下端開口までの長さ寸法は、前記吐水口の下縁から前記溜水部までの距離よりも長い、請求項1から請求項9までの何れか一項に記載の水洗式便器。
【請求項11】
前記便鉢部の下流側に設けられたトラップ部を備え、
前記便鉢部の下部には、前記トラップ部内に開口する流出口が形成され、
前記流出口の開口面積と、前記連通部の前記溜水部側の開口面積との比は20:1~100:1である、請求項1から請求項10までの何れか一項に記載の水洗式便器。
【請求項12】
前記連通部を通って前記溜水部に流出する水が止まるタイミングは、前記吐水口から前記便鉢部に流出する水が止まるタイミングよりも後である、請求項1から請求項11までの何れか一項に記載の水洗式便器。
【請求項13】
前記給水部は、前記連通部の前記給水部側の開口に水を導入する導入部を備えている、請求項1から請求項12までの何れか一項に記載の水洗式便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水洗式便器に関する。
【背景技術】
【0002】
水洗式便器は、便鉢部と、便鉢部の上流側に設けられた給水部と、便鉢部に流入した水が溜まる溜水部と、を備えている。例えば下記特許文献1に記載された水洗式便器は、給水部から溜水部まで延びる連通部を備えている。給水部に残った水は、連通部を通って溜水部に流出する。この水洗式便器によれば、給水部をかびにくくできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような水洗式便器において、給水部から連通部に流入した水が空気を含んで溜水部に流出し、溜水面に泡ができることがある。使用者は、そのような泡を不快に感じる虞がある。
【0005】
本開示は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、連通部から流出する水によって使用者が不快に感じることを防止できる水洗式便器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の水洗式便器は、便鉢部と、前記便鉢部の上流側に設けられ、前記便鉢部側に開口する吐水口が形成された給水部と、前記便鉢部に流入した水が溜まる溜水部と、前記給水部から前記溜水部まで延びる連通部と、を備え、前記給水部の水が前記連通部を通って前記溜水部に流出し始めるタイミングは、前記給水部の水が前記吐水口から前記便鉢部に流出し始めるタイミングよりも後である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】水洗式便器を示す断面図であって、
図1のA-A位置における断面に相当する断面図
【
図4】連通部の上端開口を示す一部拡大断面図であって、
図1のB-B位置における断面に相当する断面図
【
図5】凹部の底壁の流出口を示す一部拡大断面図であって、
図1のC-C位置における断面に相当する断面図
【
図6】吐水口から便鉢部に流出する洗浄水の流れを説明する概略図
【発明を実施するための形態】
【0008】
<実施形態>
水洗式便器Tは、床置き式の便器である。水洗式便器Tは、
図1に示すように、便器本体10と、洗浄水配管50と、を備えている。便器本体10は、陶器製であり、便鉢部11と、トラップ部12と、排水接続部13と、給水部14と、連通部15と、を有している。トラップ部12は、便鉢部11の下流側に設けられている。排水接続部13は、トラップ部12の下流側に設けられている。排水接続部13は、図示しない床面の排水管に接続される。給水部14は、便鉢部11の上流側に設けられている。給水部14は、便鉢部11に便器洗浄用の水を供給する。洗浄水配管50は、給水部14の内部空間に配置されている。
【0009】
以下、各構成部材において、水洗式便器Tを床面に置いた状態における上側を上側、下側を下側、便鉢部11が設けられている側を前側、排水接続部13が設けられている側を後側、前側を向いて便器本体10に座る人を基準とした右側を右側、左側を左側として説明する。図面に示したX軸の正方向側は前側、X軸の負方向側は後側、Y軸の正方向側は上側、Y軸の負方向側は下側、Z軸の正方向側は右側、Z軸の負方向側は左側を示す。
【0010】
便鉢部11は、リム部16と、鉢部17と、凹部18とを有している。リム部16は、便鉢部11の上端部の全周に設けられている。リム部16は、上下方向に立ったリム内壁部19を有している。
【0011】
鉢部17は、リム内壁部19の下方に連なっている。鉢部17は、リム内壁部19の下端から凹部18に向かって次第に下がる傾斜をなしている。
【0012】
凹部18は、鉢部17の下方に連なり、下方に凹んだ形状をなしている。凹部18は、上下方向に立った周壁21と、周壁21の下端に設けられた底壁22とを有している。周壁21は、底壁22に向かって内側に傾斜している。底壁22は略水平をなしている。
【0013】
凹部18の底壁22には、流出口23が形成されている。流出口23は、底壁22の後部に設けられている。流出口23は、トラップ部12の内部に連通している。トラップ部12の内部には、排水接続部13の内部に達する排水路が形成されている。排水路は、流出口23から斜め下方に延び、トラップ部12のディップ24とウェア25とを通ったあと、下方に延びている。
【0014】
トラップ部12は、凹部18の底壁22から斜め後方に下がる下降部26と、下降部26の下端から斜め後方へ上がる上昇部27とを有している。凹部18及びトラップ部12のうち溜水面28より下側の部分は、水を溜める溜水部29を構成している。溜水面28は、トラップ部12のウェア25と同じ高さ位置に形成される。
【0015】
給水部14は、便器本体10の後部に設けられている。給水部14は、リム部16と同等の高さに位置している。給水部14の上面には、図示しない便器洗浄用タンクが取り付けられる。便器洗浄用タンクの水は、洗浄水配管50を通って給水部14の内部空間に流れ込む。給水部14の下面は、前下がりに傾斜している。
【0016】
給水部14には、便鉢部11側に開口する吐水口31が形成されている。吐水口31は、リム部16の後部に位置している。吐水口31は、リム内壁部19を貫通し、給水部14の内部空間を便鉢部11側へ開放している。吐水口31は、給水部14の水を便鉢部11側へ流出させる。給水部14の水のうち吐水口31から便鉢部11側に流出するものを洗浄水と称する。洗浄水は、吐水口31から便鉢部11へ流出し、リム部16から鉢部17に沿って旋回しつつ流下し、凹部18に流れ込む。
【0017】
吐水口31は、
図2に示すように、便鉢部11の左右方向中心Cよりも右側に設けられている。吐水口31は、前方から見ると、左右方向に長い形状をなしている。吐水口31の上下方向の寸法は、便鉢部11の左右方向中心Cに向かって増している。吐水口31の上縁31Uは、水平に延びている。吐水口31の下縁31Sは、便鉢部11の左右方向中心Cに向かって下向きに傾斜している。
【0018】
洗浄水配管50は、
図3に示すように、流入側端部51と流出側端部52とを有している。流入側端部51は、給水部14の後部に配置されている。流入側端部51は、便器洗浄用タンクに連結される。洗浄水配管50は、流入側端部51から2方向に分岐している。流出側端部52は、2つ設けられている。
【0019】
洗浄水配管50は、流入側端部51から一方向に延びる第一配管53と、流入側端部51から他方向に延びる第二配管54とを有している。第一配管53は、給水部14の内部における右側に配置されている。第一配管53は、給水部14の後部から前方に向かって左右方向中心C側に延びている。第一配管53の流出側端部52には、斜め右前方に向かって第一開口55が開口している。
【0020】
第二配管54は、給水部14の内部における左側に配置されている。第二配管54は、給水部14の後部から前方に向かって左右方向中心C側に延びている。第二配管54の前部54Fは、第二配管54の後部54Rの前端から右側に屈曲している。第二配管54の前部54Fは、後述する導入部38を左から右に横切っている。第二配管54の前端には、斜め右前方に向かって第二開口56が開口している。第二開口56は、第一開口55よりも前側に位置している。第二開口56は、第一開口55よりも右側を向いている。
【0021】
第一開口55及び第二開口56は、吐水口31の真後ろに位置している。第一開口55及び第二開口56は、
図2に示すように、前方から見ると、吐水口31を介して視認できる。第二開口56は、吐水口31の左端部に位置している。第一開口55は、第二開口56よりも右側に位置している。第一開口55は、第二開口56よりも上側に位置している。第一開口55の上端部は、吐水口31の上縁31Uよりも上側に位置している。第二開口56の下端部は、吐水口31の下縁31Sよりも下側に位置している。
【0022】
連通部15は、
図1に示すように、給水部14から溜水部29まで便鉢部11の後面に沿って上下方向に延びている。連通部15の上端は、給水部14の下端部に位置している。連通部15の上端開口34は、斜め上後方に開口している。連通部15の下端は、凹部18の底壁22よりも下側に位置している。連通部15の下端開口39は、鉛直方向に開口している。
【0023】
連通部15は、上流部32と下流部33とを有している。上流部32は、給水部14の前面から斜め下前方に延びている。上流部32は、鉢部17に沿っている。下流部33は、上流部32の下端から鉛直方向に垂下している。下流部33は、凹部18の周壁21に沿っている。
【0024】
連通部15の内部には、細長い空間が形成されている。連通部15の内部空間は、給水部14に残った水を溜水部29に流出させる水抜き用の通路である。給水部14の水のうち連通部15の内部空間に流出するものを排出水と称する。連通部15の内径寸法は、連通部15の延び方向に概ね一定である。連通部15には、他の部分よりも内径寸法が大きい拡幅部37が形成されている。拡幅部37は、下流部33の途中に設けられている。
【0025】
連通部15の内部空間は、
図4に示すように、前部35が方形状をなし、後部36が三角形状をなしている。
図4は、連通部15の流路方向に直交する断面である。連通部15の内部空間の幅寸法Wは、後部36よりも前部35において大きい。連通部15の内部空間の幅寸法Wは、連通部15の流路方向に直交する断面の左右方向の寸法である。
【0026】
連通部15は、
図2に示すように、便器本体10の左右方向中心Cに設けられている。連通部15は、前方から見ると直線状である。
【0027】
連通部15の上流側には、
図1及び
図2に示すように、導入部38が設けられている。導入部38は、給水部14の下面に形成されている。導入部38は、前後方向及び左右方向のいずれにおいても連通部15の上端開口34に向かって下がる傾斜をなしている。
図1に示すように、導入部38の上下方向の寸法は、後端に向かって次第に小さくなっている。導入部38は、吐水口31の下縁31Sよりも下側に位置している(
図2参照)。導入部38は、吐水口31の左端よりも左側に位置している。
【0028】
導入部38のXZ平面における面積は、連通部15の上端開口34から上側に向かって増している。YZ平面における導入部38の左右方向の寸法は、連通部15の上端開口34から上側に向かって次第に増している。XY平面における導入部38の前後方向の寸法は、連通部15の上端開口34から上側に向かって次第に増している。
【0029】
導入部38は、
図3に示すように、連通部15の上端開口34から給水部14の下面に沿って後方に延びている。導入部38の左右方向の寸法は、後端に向かって次第に小さくなっている。
【0030】
吐水口31の開口面積と、連通部15の上端開口34の開口面積との比は、3:1~30:1である。吐水口31の開口面積は、YZ平面に投影した面積である。連通部15の上端開口34の開口面積は、連通部15の流路方向に直交する断面の面積である。吐水口31の開口面積と、連通部15の拡幅部37の流路面積との比は、2:1~15:1である。拡幅部37の流路面積は、連通部15の流路面積のうち最大のものである。
【0031】
連通部15の上端開口34から下端開口39までの長さ寸法Lは、吐水口31の下縁31Sから溜水部29の溜水面28までの距離よりも長い。連通部15の長さ寸法Lは、連通部15の流路方向に沿った寸法である(
図1参照)。
【0032】
流出口23の開口面積と、連通部15の下端開口39の開口面積との比は、30:1~80:1である。流出口23の開口面積は、便器本体10の左右方向中心Cにおける周壁21の前端Pの位置でのXZ平面の面積である(
図1及び
図5参照)。
【0033】
図示しない便器用洗浄タンクには、便鉢部11を一回洗浄し得る量の水が予め貯留されている。便器洗浄を開始するための操作部(図示せず)を操作すると、便器洗浄用の水は、洗浄水配管50の第一開口55及び第二開口56の各々から給水部14の内部に流出する(
図6参照)。
【0034】
第一開口55から流出した水及び第二開口56から流出した水は、吐水口31において交差するようにして吐水口31から便鉢部11に流出する。その後、少量の水は、導入部38に流入する。吐水口31から流出した洗浄水は、リム内壁部19に沿って反時計方向に旋回する第一主流F1と、凹部18に直接向かう第二主流F2とを形成する。第一主流F1は、便鉢部11内を一周して便鉢部11の後部に戻り、吐水口31から流出する洗浄水に合流する。
【0035】
洗浄水の一部は、吐水口31から給水部14側に逆流し、第一開口55及び第二開口56から流出し続ける便器洗浄用の水と合わさって給水部14内の水の水位を上昇させる。給水部14の内部の水の水面が、吐水口31の上縁31Uよりも上昇する頃、導入部38に流入する水の量が増す。導入部38から連通部15に流入した排出水は、連通部15の内部空間を下端開口39に向かって流下する。排出水は、操作部を操作する前に連通部15内に存在した空気を下端開口39から溜水部29に押し出す。排出水によって空気が溜水部29に押し出されるタイミングは、洗浄水が溜水部29に到達した後である。
【0036】
吐水口31から流出した洗浄水は、流出口23に到達し、トラップ部12内に流れ込む。その後、連通部15の下端開口39から排出水が溜水部29に流出し始める。やがて、吐水口31から流出する洗浄水が止まる。給水部14に残存する水は導入部38に流れ込み、連通部15を通って溜水部に流出する。吐水口31から洗浄水が流出し終わった後、連通部15から溜水部29に流出する排出水は止まる。
【0037】
図7のグラフは、洗浄水の流量及び排出水の流量の変化を示す。洗浄水の流量は、単位時間当たりに吐水口31から流出する洗浄水の水量である。排出水の流量は、単位時間当たりに連通部15の下端開口39から流出する排出水の水量である。
図7に示すように、排出水が溜水部29に流出し始めるタイミングは、洗浄水が吐水口31から流出し始めるタイミングよりも後である。吐水口31から流出する洗浄水の流量は、流出開始の直後にピークを迎える。連通部15から流出する排出水の流量は、ほぼ一定である。排出水の流量の最大値は、洗浄水の流量の最大値よりも小さい。1度の便器洗浄において吐水口31から流出する洗浄水の総量と、連通部15から流出する排出水の総量との比は、4:1~20:1である。
【0038】
上記のように構成された実施形態によれば、以下の効果を奏する。水洗式便器Tは、便鉢部11と、給水部14と、溜水部29と、連通部15と、を備えている。給水部14は、便鉢部11の上流側に設けられている。溜水部29には、便鉢部11側に開口する吐水口31が形成されている。溜水部29には、便鉢部11に流入した水が溜まる。連通部15は、給水部14から溜水部29まで延びている。排出水が連通部15を通って溜水部29に流出し始めるタイミングは、洗浄水が吐水口31から便鉢部11に流出し始めるタイミングよりも後である。この構成によれば、連通部15から流出する排出水は、吐水口31から流出した洗浄水に紛れ込む。したがって、連通部15から流出する排出水によって使用者が不快に感じることを防止できる。
【0039】
排出水の流量の最大値は、洗浄水の流量の最大値よりも小さい。この構成によれば、排出水は、洗浄水に紛れ込みやすいから、排出水によって使用者が不快に感じることを防止できる。
【0040】
水洗式便器Tは、便鉢部11の下流側に設けられたトラップ部12を備えている。トラップ部12は、溜水部29を構成する。便鉢部11の下部には、トラップ部12内に開口する流出口23が形成されている。排出水が溜水部29に流出し始めるタイミングは、洗浄水が吐水口31から流出して流出口23に到達するタイミングよりも後である。この構成によれば、排出水は、洗浄水に確実に紛れ込むから、排出水によって使用者が不快に感じることを防止できる。
【0041】
排出水が連通部15に流入し始めるタイミングは、洗浄水が吐水口31から便鉢部11に流出し始めるタイミングよりも後である。この構成によれば、排出水は、洗浄水に紛れ込みやすいから、排出水によって使用者が不快に感じることを防止できる。
【0042】
排出水が連通部15に流入し始めるタイミングは、給水部14の水の水面が、吐水口31の上縁31Uよりも上昇した後である。この構成によれば、排出水は、洗浄水に紛れ込みやすいから、排出水によって使用者が不快に感じることを防止できる。
【0043】
1度の便器洗浄において吐水口31から流出する洗浄水の総量と、1度の便器洗浄において連通部15から流出する排出水の総量との比は、4:1~20:1である。1度の便器洗浄において吐水口31から流出する洗浄水の総量と、連通部15から流出する排出水の総量との比は、4:1~100:1の範囲内で適宜変更しても良い。1度の便器洗浄において吐水口31から流出する洗浄水の総量と、連通部15から流出する排出水の総量との比は、4:1~10:1であっても良い。この構成によれば、排出水は、洗浄水に紛れ込みやすいから、排出水によって使用者が不快に感じることを防止できる。
【0044】
排出水が溜水部29に流出し始めるタイミングを遅らせる遅延機構を備えている。このような構成によれば、排出水は、洗浄水に紛れ込みやすいから、排出水によって使用者が不快に感じることを防止できる。
【0045】
吐水口31の開口面積と、連通部15の上端開口34の開口面積との比は、3:1~30:1である。吐水口31の開口面積と、連通部15の上端開口34の開口面積との比は、1:1~40:1の範囲内で適宜変更しても良い。吐水口31の開口面積と、連通部15の上端開口34の開口面積との比は、5:1~20:1であっても良い。この構成によれば、給水部14の水は、吐水口31よりも連通部15に流れ込みにくいから、排出水が溜水部29に流出し始めるタイミングを遅らせることができる。
【0046】
吐水口31の開口面積と、連通部15の流路面積のうち最大のものとの比は、2:1~15:1である。連通部15の流路面積は、連通部15の流路方向に直交する断面積である。吐水口31の開口面積と、連通部15の拡幅部37の流路面積との比は、1:1~20:1の範囲内で適宜変更しても良い。吐水口31の開口面積と、連通部15の拡幅部37の流路面積との比は、3:1~10:1であっても良い。この構成によれば、排出水が溜水部29に流出し始めるタイミングを遅らせることができる。
【0047】
連通部15の上端開口34から下端開口39までの長さ寸法Lは、吐水口31の下縁31Sから溜水部29までの距離よりも長い。この構成によれば、排出水が溜水部29に流出し始めるタイミングを遅らせることができる。
【0048】
流出口23の開口面積と、連通部15の下端開口39の開口面積との比は、30:1~80:1である。流出口23の開口面積と、連通部15の下端開口39の開口面積との比は、20:1~100:1の範囲内で適宜変更しても良い。流出口23の開口面積と、連通部15の下端開口39の開口面積との比は、30:1~60:1であっても良い。この構成によれば、排出水が溜水部29に流出し始めるタイミングを遅らせることができる。
【0049】
連通部15を通って溜水部29に流出する排出水が止まるタイミングは、吐水口31から流出する洗浄水が止まるタイミングよりも後である。この構成によれば、給水部14内に残った水が連通部15を通って溜水部29に流出するから、給水部14内をかびにくくできる。
【0050】
給水部14は、連通部15の上端開口34に水を導入する導入部38を備えている。この構成によれば、給水部14に残った水が連通部15に流れ込みやすいから、給水部14内をかびにくくできる。
【0051】
<他の実施形態>
本開示は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本開示の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、吐水口31及び洗浄水配管50の位置や形状等を例示した。これに限らず、吐水口及び洗浄水配管の位置や形状等は適宜変更できる。例えば、吐水口、洗浄水配管の第一開口及び第二開口は、便器本体の左側に設けてもよいし、吐水口は、2つ以上設けてもよいし、洗浄水配管の開口は1つのみであってもよいし、3つ以上であってもよい。
(2)上記実施形態において排出水が溜水部29に流出し始めるタイミングは、洗浄水が流出口23に到達するタイミングよりも後である。これに限らず、排出水が溜水部に流出し始めるタイミングは、排出水の量が少量であれば、洗浄水が流出口に到達するタイミングより先であってもよい。
(3)上記実施形態において給水部14の水が連通部15に流入し始めるタイミングは、給水部14の水が吐水口31から便鉢部11に流出し始めるタイミングよりも後である。これに限らず、給水部の水が連通部に流入し始めるタイミングは、この水の量が少量であれば、給水部の水が吐水口から便鉢部に流出し始めるタイミングより先であってもよい。
(4)上記実施形態において給水部14の水が連通部15に流入し始めるタイミングは、給水部14の水の水面が、吐水口31の上縁31Uよりも上昇した後である。これに限らず、給水部の水が連通部に流入し始めるタイミングは、給水部の水の水面が、吐水口の上縁より下側にあるときであってもよい。
(5)上記実施形態において給水部14は、連通部15の上端開口34に水を導入する導入部38を備えている。これに限らず、給水部は導入部を備えなくてもよい。
(6)上記実施形態では、排出水によって空気が溜水部29に押し出されるタイミングは、洗浄水が溜水部29に到達した後である。これに限らず、排出水によって空気が溜水部に押し出されるタイミングは、洗浄水が溜水部に到達するより前であってもよい。
(7)上記実施形態において吐水口31は、便鉢部11の後部に設けられ、便鉢部11の左右方向中心Cよりも右側に位置している。これに限らず、吐水口は、便鉢部の前部(平面視した便鉢部における前後方向中心よりも前側の領域)に設けてもよいし、便鉢部の左右方向中心よりも左側に設けてもよい。吐水口を便鉢部の前部に設けた場合、吐水口から吐水される洗浄水は、後側に向かって鉢部に流出する。
(8)上記実施形態において連通部15は、便鉢部11の後端に設けられている。これに限らず、連通部は、便鉢部の後端よりも前方に設けてもよい。
(9)上記実施形態において連通部15は、便器本体10の左右方向中心Cに設けられている。これに限らず、連通部は、吐水口側に設けてもよい。
【符号の説明】
【0052】
L…給水部の水が連通部を通って溜水部に到達するまでの最短距離、T…水洗式便器、11…便鉢部、12…トラップ部、14…給水部、15…連通部、23…流出口、29…溜水部、31…吐水口、31U…吐水口の上縁、34…上端開口(給水部側の開口)、38…導入部、39…下端開口