(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102355
(43)【公開日】2023-07-25
(54)【発明の名称】水洗式便器
(51)【国際特許分類】
E03D 11/13 20060101AFI20230718BHJP
E03D 11/02 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
E03D11/13
E03D11/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022002771
(22)【出願日】2022-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 祥
(72)【発明者】
【氏名】横塚 裕也
(72)【発明者】
【氏名】林 佐登司
(72)【発明者】
【氏名】神谷 昭範
【テーマコード(参考)】
2D039
【Fターム(参考)】
2D039AA02
2D039AC02
2D039AD00
2D039AD04
2D039CA04
2D039CB02
(57)【要約】
【課題】溜水部の水の深さを十分に確保しつつ、便鉢部の上面から溜水面までを浅くできる壁排水用の水洗式便器を提供する。
【解決手段】便鉢部20と、前記便鉢部20の下流側に設けられたトラップ部30と、前記トラップ部30の下流側に設けられて壁の排水管に接続される排水接続部50と、を有する便器本体10を備え、前記トラップ部30の外形の下端35は、前記排水接続部50の外形の下端53よりも下側に位置し、前記便鉢部20内の溜水面71は、前記排水接続部50の下流端の開口51の中心51Cよりも上側に位置している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
便鉢部と、
前記便鉢部の下流側に設けられたトラップ部と、
前記トラップ部の下流側に設けられて壁の排水管に接続される排水接続部と、を有する便器本体を備え、
前記トラップ部の外形の下端は、前記排水接続部の外形の下端よりも下側に位置し、前記便鉢部内の溜水面は、前記排水接続部の下流端の開口の中心よりも上側に位置している、水洗式便器。
【請求項2】
前記排水接続部は、前方から後方に向かって下向きに延びている、請求項1に記載の水洗式便器。
【請求項3】
前記排水接続部の後端は、前記便器本体の下端における後端よりも前側に位置している、請求項1から請求項2までの何れか一項に記載の水洗式便器。
【請求項4】
前記便器本体は、前記トラップ部と前記排水接続部との間に連通部を有し、
前記連通部の内部の左右方向の寸法は、前記排水接続部の中心線に交差する面上の前記排水接続部の内径寸法よりも大きい、請求項1から請求項3までの何れか一項に記載の水洗式便器。
【請求項5】
前記トラップ部の外形の下端を通って前記トラップ部の中心線に直交する鉛直な面と、前記トラップ部の中心線との交点を最下点とし、
前記トラップ部のウェアを通って前記トラップ部の中心線と直交する鉛直な面と、前記トラップ部の中心線との交点を最上点とし、
前記トラップ部の入り口の中心と前記最下点とを通る仮想線の水平面に対する角度を第一角度とし、
前記最下点と前記最上点とを通る仮想線の水平面に対する角度を第二角度としたとき、
第二角度は、第一角度よりも大きい、請求項1から請求項4までの何れか一項に記載の水洗式便器。
【請求項6】
前記便器本体は、前記トラップ部と前記排水接続部との間に連通部を有し、
前記トラップ部の外形の下端を通り前記トラップ部の中心線に直交する鉛直な面と、前記トラップ部の中心線との交点を最下点とし、
前記トラップ部のウェアを通り前記トラップ部の中心線と直交する鉛直な面と、前記トラップ部の中心線との交点を最上点とし、
前記トラップ部の入り口の中心と最下点とを通る仮想線の水平面に対する角度を第一角度とし、
前記最上点と前記排水接続部の上流端開口の中心とを通る仮想線の水平面に対する角度を第三角度としたとき、
前記第三角度は、前記第一角度よりも大きい、請求項1から請求項5までの何れか一項に記載の水洗式便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水洗式便器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば下記特許文献1に記載されているように、壁の排水管に対応した壁排水用の水洗式便器が知られている。壁排水用の水洗式便器は、便鉢部と、便鉢部の下流側に設けられたトラップ部と、壁の排水管に接続される排水接続部と、を備えている。便鉢部の下端部及びトラップ部は、水を溜める溜水部を構成している。溜水部に溜められた水は、排水管側から便鉢部側への臭気の移動を防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
便鉢部の鉢面のうち溜水面までの部分には、汚れが付着しやすい。上記のような水洗式便器において、溜水部の水の深さを十分に確保しつつ、便鉢部の上面から溜水面までを浅くしたい、という要望があった。
【0005】
本開示は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、溜水部の水の深さを十分に確保しつつ、便鉢部の上面から溜水面までを浅くできる壁排水用の水洗式便器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の水洗式便器は、便鉢部と、前記便鉢部の下流側に設けられたトラップ部と、前記トラップ部の下流側に設けられて壁の排水管に接続される排水接続部と、を有する便器本体を備え、前記トラップ部の外形の下端は、前記排水接続部の外形の下端よりも下側に位置し、前記便鉢部内の溜水面は、前記排水接続部の下流端の開口の中心よりも上側に位置しているものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】水洗式便器を示す断面図であって、
図1のA-A位置における断面に相当する断面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
<実施形態>
水洗式便器Tは、床置き式の便器である。水洗式便器Tの便器本体10は、陶器製であり、
図1に示すように、便鉢部20と、トラップ部30と、連通部40と、排水接続部50と、給水部60と、周壁部80とを有している。トラップ部30は、便鉢部20の下流側に設けられている。連通部40は、トラップ部30の下流側に設けられている。排水接続部50は、連通部40の下流側に設けられている。水洗式便器Tは壁排水用であり、排水接続部50は、図示しない壁の排水管に接続される。床面から排水芯までの壁の排水管の高さ寸法は170mmである。給水部60は、便鉢部20の上流側に設けられている。周壁部80は、便鉢部20及びトラップ部30の周囲を囲っている。水洗式便器Tは、水の落差による流水作用で汚物を押し流す洗い落とし式便器である。
【0009】
以下、各構成部材において、水洗式便器Tを床面に置いた状態における上側を上側、下側を下側、排水接続部50が設けられている側を後側、便鉢部20が設けられている側を前側、前側を向いて便器本体10に座る人を基準とした右側を右側、左側を左側として説明する。図面に示したX軸の正方向側は前側、X軸の負方向側は後側、Y軸の正方向側は上側、Y軸の負方向側は下側、Z軸の正方向側は右側、Z軸の負方向側は左側を示す。
【0010】
便器本体10の後部上面には、図示しない便器洗浄用タンクが取り付けられる。便器洗浄用タンクの水は、給水部60の内部に形成された給水空間61に流れ込む。
【0011】
便鉢部20は、リム部21と、鉢部22と、凹部23とを有している。リム部21は、便鉢部20の上端部の概ね全周に設けられている。リム部21は、上下方向に立った形態をなしている。リム部21には、吐水口24が開口している。吐水口24は、リム部21の後部に形成されている。吐水口24は、給水空間61を前方へ開放し、給水空間61から便鉢部20へ洗浄水を吐出する。
【0012】
鉢部22は、リム部21の下方に連なっている。鉢部22は、リム部21の下端から凹部23に向かって次第に下がる傾斜をなしている。
【0013】
凹部23は、鉢部22の下方に連なり、下方に凹んだ形状をなしている。洗浄水は、リム部21から鉢部22に沿って旋回しつつ流下し、凹部23に流れ込む。
【0014】
凹部23の底壁25よりも上側に、溜水面71が形成される。溜水面71は、トラップ部30のウェア32と同じ高さ位置に形成される。凹部23及びトラップ部30のうち溜水面71より下側の部分は、溜水部70を構成している。
【0015】
凹部23の底壁25には、流出口26が形成されている。底壁25は略水平をなしている。底壁25の高さ位置は、便器本体10の上下方向中心よりも上側に位置している。
【0016】
流出口26は、排水路13に連通している。排水路13は、トラップ部30の内部及び連通部40の内部に形成されている。排水路13は、流出口26から斜め下方に延び、トラップ部30のディップ31とウェア32とを通ったあと、連通部40の内部を下方に延びて、排水接続部50の内部に達する。
【0017】
排水路13のうち流出口26からディップ31を含むYZ平面までを第1下降流路14、ディップ31を含むYZ平面からウェア32を含むYZ平面までを上昇流路15、ウェア32を含むYZ平面から排水接続部50の上流端までを第2下降流路16と称する。第1下降流路14は、流出口26から斜め後方へ下がっている。上昇流路15は、第1下降流路14の下流端から斜め後方へ上っている。第2下降流路16は、上昇流路15の下流端から斜め後方へ下がっている。
【0018】
流出口26は、トラップ部30の入り口である。トラップ部30の中心線30Lは、流出口26の中心P1から下流側に延びている。ディップ31を含むYZ平面は、トラップ部30の外形の下端35を通っている。トラップ部30の外形の下端35を通ってトラップ部30の中心線30Lと直交する鉛直な面とトラップ部30の中心線30Cとの交点を最下点P2と称する。ウェア32を含むYZ平面は、トラップ部30の中心線30Lと直交する鉛直な面である。ウェア32を含むYZ平面とトラップ部30の中心線30Cとの交点を最上点P3と称する。
【0019】
トラップ部30は、中心線30Lに沿って延びた管状をなしている。トラップ部30は、第1下降流路14を内部に形成する下降部33と、上昇流路15を内部に形成する上昇部34とを有している。トラップ部30のウェア32は、凹部23の底壁25よりも上側に位置している。
【0020】
上昇流路15の長さ寸法15Lは、第2下降流路16の長さ寸法16Lよりも大きい。上昇流路15の長さ寸法15Lは、トラップ部30の中心線30Lに沿った寸法である。第2下降流路16の長さ寸法16Lは、便器本体10左右方向中央のXY平面上における連通部40の概ね中心に沿った寸法である。
【0021】
連通部40は、
図2に示すように、左右の側壁42と、天井壁43とを有している。連通部40の内部には連通空間41が形成されている。連通空間41は、給水空間61の真下に位置している。連通空間41のYZ平面上の左右方向の寸法41Lは、給水空間61のYZ平面上の左右方向61Lの寸法よりも小さい。連通空間41に、第2下降流路16が形成されている。
【0022】
排水接続部50は、
図1に示すように、中心線50Lに沿って延びた円筒状をなしている。排水接続部50の内径寸法は、中心線50Lを中心として一定である。排水接続部50の中心線50Lは、上流側から下流側に向かって下向きに傾斜して延びている。排水接続部50の中心線50Lの傾斜角度は、水平面(XZ平面)に対して約10度である。排水接続部50は、便器本体10の後面17から斜め下後方に突出している。排水接続部50の外形の後端52は、便器本体10の下端12における後端18よりも前側に位置している。便器本体10の下端12は、便器本体10の下端である。排水接続部50の下流端開口51の外形の上端55は、排水接続部50の外形の後端52と一致している。下流端開口51の外形の上端55は、ディップ31よりも上側に位置している。下流端開口51の外形の上端55は、ウェア32と同等の高さに位置している。
【0023】
便器本体10の下端12は、周壁部80の下端であり床面に設置される。便器本体10の下端12を下方から見ると、
図3に示すように、前後方向に長い環状である。便器本体10の下端12の前部は、円弧状をなし、後部は直線状をなしている。便器本体10の下端12の前後方向の寸法10Dは、便器本体10の上端11の前後方向の寸法10Uよりも大きい(
図1参照)。
【0024】
図1に示すように、トラップ部30の外形の下端35は、排水接続部50の外形の下端53よりも下側に位置している。溜水面71は、排水接続部50の下流端開口51の中心51Cよりも上側に位置している。便器本体10の上端11から溜水面71までの高さ寸法H1は、溜水面71から便器本体10の下端12までの高さ寸法H2よりも小さい。
【0025】
図2に示すように、鉛直面(YZ平面)上の連通空間41の左右方向の寸法41Lは、排水接続部50の中心線50Lに交差する面上の排水接続部50の内径寸法54よりも大きい。
【0026】
上記のように構成された実施形態によれば、以下の効果を奏する。水洗式便器Tは、便鉢部20と、トラップ部30と、排水接続部50と、を有する便器本体10を備えている。トラップ部30は、便鉢部20の下流側に設けられている。排水接続部50は、トラップ部30の下流側に設けられて壁の排水管に接続される。トラップ部30の外形の下端35は、排水接続部50の外形の下端53よりも下側に位置している。便鉢部20内の溜水面71は、排水接続部50の下流端開口51の中心51Cよりも上側に位置している。この構成によれば、溜水部70の水の深さを十分に確保しつつ、便鉢部20の上面から溜水面71までを浅くできる。
【0027】
排水接続部50は、前方から後方に向かって下向きに延びている。この構成によれば、洗浄水は、排水接続部50の内部を下向きに流れて壁の排水管に流出するから、洗浄水を良好に排出できる。
【0028】
排水接続部50の後端は、便器本体10の下端12における後端18よりも前側に位置している。この構成によれば、便器本体10を壁に近づけて配置できるから、トイレ室のスペースを有効利用できる。
【0029】
便器本体10は、トラップ部30と排水接続部50との間に連通部40を有している。連通部40の内部の連通空間41における第2下降流路16の延び方向に交差する面上の連通空間41の左右方向の寸法41Lは、排水接続部50の中心線50Lに交差する面上の排水接続部50の内径寸法54よりも大きい。この構成によれば、排水接続部50の内部と比べて左右方向に広い連通空間41が排水接続部50の上流側に形成されているから、連通空間41、特にウェア32の近傍に汚物等を詰まりにくくできる。
【0030】
図1に示すように、流出口26の中心P1と最下点P2とを通る仮想線L1の水平面に対する角度を第一角度α1とし、最下点P2と最上点P3とを通る仮想線L2の水平面に対する角度を第二角度α2としたとき、第二角度α2は、第一角度α1よりも大きい。この構成によれば、トラップ部30の屈曲部を緩やかにすることで、汚物、紙等をスムーズに通過させることができる。これによって、洗浄水は、トラップ部30の屈曲部をスムーズに流れるから、トラップ部30の最下点P2を過ぎた下流側のよどみを小さくできる。
【0031】
図1に示すように、最上点P3と排水接続部50の上流端開口の中心P4とを通る仮想線L3の水平面に対する角度を第三角度α3としたとき、第三角度α3は、第一角度α1よりも大きい。この構成によれば、洗浄水の逆流を抑制できる。汚物、紙等を、重力によって流し去ることができる。第三角度α3は、第二角度α2より大きいとなおよい。
【0032】
<他の実施形態>
本開示は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本開示の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、壁の排水管の高さ位置を例示した。これに限らず、壁の排水管の高さ位置はどのような高さであってもよい。
(2)上記実施形態において排水接続部50の中心線50Lは、上流側から下流側に向かって下向きに延びている。これに限らず、排水接続部の中心線は、水平方向に延びていてもよいし、上流側から下流側に向かって上向きに延びていてもよい。
(3)上記実施形態において排水接続部50の後端52は、便器本体10の下端12における後端18よりも前側に位置している。これに限らず、排水接続部の後端は、便器本体の下端の後端よりも後側に位置していてもよい。
(4)上記実施形態において連通空間41の左右方向の寸法41Lは、排水接続部50の内径寸法54よりも大きい。これに限らず、連通空間の左右方向の寸法は、排水接続部の内径寸法より小さくてもよい。
(5)上記実施形態において吐水口24は、便鉢部20の後部の右側に設けられている。これに限らず、吐水口は、便鉢部の前部(平面視した便鉢部における前後方向中心よりも前側の領域)に設けてもよいし、便鉢部の左右方向中心よりも左側に設けてもよい。吐水口を便鉢部の前部に設けた場合、吐水口から吐水される洗浄水は、後側に向かって鉢部に流出する。
【符号の説明】
【0033】
α1…第一角度、α2…第二角度、α3…第三角度、L1…トラップ部の入り口の中心と最下点とを通る仮想線、L2…最下点と最上点とを通る仮想線、L3…最上点と排水接続部の上流端開口の中心とを通る仮想線、T…水洗式便器、12…便器本体の下端、18…下端における後端、20…便鉢部、30…トラップ部、30L…トラップ部の中心線、32…ウェア、35…トラップ部の外形の下端、40…連通部、41…連通空間、41L…左右方向の寸法、50…排水接続部、50L…排水接続部の中心線、51…下流端開口(排水接続部の下流端の開口)、51C…中心、52…排水接続部の後端、53…排水接続部の外形の下端、54…内径寸法、71…溜水面、P1…トラップ部の入り口の中心、P2…最下点、P3…最上点、P4…排水接続部の上流端開口の中心