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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102356
(43)【公開日】2023-07-25
(54)【発明の名称】便器
(51)【国際特許分類】
   E03D 11/13 20060101AFI20230718BHJP
   E03D 11/02 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
E03D11/13
E03D11/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022002772
(22)【出願日】2022-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 佐登司
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 駿介
(72)【発明者】
【氏名】八島 一哉
(72)【発明者】
【氏名】神谷 昭範
【テーマコード(参考)】
2D039
【Fターム(参考)】
2D039AA02
2D039AC02
2D039AD00
(57)【要約】
【課題】意匠性の良好な便器を提供する。
【解決手段】便器1は、周壁部30を有する便器本体10と、便器本体10における左右方向の側部に取り付けられ、周壁部30の表面に連続して外周面を構成するカバー20と、を備えている。便器本体10は、左右方向の外側を向いてカバー20の内側面20Aに対向し、カバー20の固定部(上側固定部22,23)が固定される固定面(上側固定面10D,10E)と、固定面よりも上方においてカバー20の上端面20Fに対向し、固定面に交差して拡がる下方を向いた下向き面10Bと、を有している。左右方向に拡がる鉛直断面形状において、カバー20の上端部は、下向き面10Bの外縁よりも内側に配置されている。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周壁部を有する便器本体と、
前記便器本体における左右方向の側部に取り付けられ、前記周壁部の表面に連続して外周面を構成するカバーと、
を備えており、
前記便器本体は、
左右方向の外側を向いて前記カバーの内側面に対向し、前記カバーの固定部が固定される固定面と、
前記固定面よりも上方において前記カバーの上端面に対向し、前記固定面に交差して拡がる下方を向いた下向き面と、
を有し、
左右方向に拡がる鉛直断面形状において、前記カバーの上端部は、前記下向き面の外縁よりも内側に配置されている便器。
【請求項2】
前記カバーの上端面は、前記下向き面に接触する請求項1に記載の便器。
【請求項3】
前記カバーは、上端縁の全体が直線状に前後方向に延びている請求項1及び請求項2のいずれか一項に記載の便器。
【請求項4】
前記下向き面は、前記便器本体の上面部の下面であり、
前記上面部は、前記下向き面の外縁に連続し、かつ前記上面部における上面に連続するR面取り状に、湾曲して拡がる湾曲面で形成された上面縁部を有している請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の便器。
【請求項5】
前記カバーの後端縁に連続して、前記周壁部の後端縁が延びている請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の便器。
【請求項6】
前記カバーの表面は上端から下方に向けて左右方向の内側に傾斜しており、
前記カバーの下方に位置する前記周壁部の表面は上端から下方に向けて左右方向の外側に傾斜している請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の便器。
【請求項7】
前記固定部は、前記カバーの内側面から突出して形成されている請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の便器。
【請求項8】
前記下向き面は、前記便器本体の上面部の下面であり、
前記下向き面と前記上面部における上面との間は中実である請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、便器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は従来の便器を開示している。この便器は、便器本体部と、化粧カバーとを備えている。便器本体部は、便器の外周面を構成する周壁を有している。化粧カバーは、周壁に連続して便器の外周面を構成している。この便器は、便器本体部に対して化粧カバーを撓み変形させた状態で取り付ける。これによって、この便器は、便器本体部に対して化粧カバーを密着させ、外観全体に一体感を持たせている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-64057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の便器の場合、便器本体部と化粧カバーとの接触面は斜面テーパー形状にされている。特に、化粧カバーの上部においては、上方斜め外方に向けて傾斜する斜面テーパー形状である。この場合、仮に撓み変形が緩み、各接触面間に隙間が生じた状態において便器上方から見下ろすと、隙間が目立ってしまい意匠性に劣る。
【0005】
本開示は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、意匠性の良好な便器を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本開示の一実施形態に係る便器は、周壁部を有する便器本体と、前記便器本体における左右方向の側部に取り付けられ、前記周壁部の表面に連続して外周面を構成するカバーと、を備えており、前記便器本体は、左右方向外側を向いて前記カバーの内側面に対向し、前記カバーの固定部が固定される固定面と、前記固定面よりも上方において前記カバーの上端面に対向し、前記固定面に交差して拡がる下方を向いた下向き面と、を有し、左右方向に拡がる鉛直断面形状において、前記カバーの上端部は、前記下向き面の外縁よりも内側に配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態1に係る便器を示す斜視図である。
図2】実施形態1に係る便器を示す平面図である。
図3】実施形態1に係る便器を示す正面図である。
図4】実施形態1に係る便器を示す側面図である。
図5】実施形態1に係る便器本体を示す側面図である。
図6図2のVI-VI線断面図である。
図7図3のVII-VII線断面図である。
図8】実施形態1に係るカバーを内側面側から見た側面図である。
図9図6の要部を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の便器を具体化した実施形態について、図面を参照しつつ説明する。以下の説明において、便器の前後、左右、上下の各方向は、便器を着座状態で使用する使用者から見た前後、左右、上下方向である。各図に示すX軸、Y軸、及びZ軸は、それぞれ前後方向、左右方向、及び上下方向を表す。X軸、Y軸、及びZ軸において、各軸の正方向をそれぞれ前方、左方、及び上方とする。
【0009】
<実施形態1>
【0010】
実施形態1に係る便器1は、洗い落とし式の水洗大便器である。便器1は、図1から図4に示すように、便器本体10と、カバー20とを備えている。便器本体10は周壁部30を有している。周壁部30の表面は、便器1における外周面を構成する。カバー20は便器本体10に取り付けられる。カバー20の表面は、周壁部30の表面とともに便器1における外周面を構成する。カバー20は、便器本体10の周壁部30の表面に連続する。
【0011】
便器本体10は、周壁部30に加えて、便鉢部40、上面部50、トラップ部60、導水部70、及びタンク設置部80を備えている。便器本体10は、これら周壁部30、便鉢部40、上面部50、トラップ部60、導水部70、及びタンク設置部80を鋳込み成形によって一体に形成した陶器製である。
【0012】
一般的な鋳込み成形では、型に泥しょうを注入して所定時間経過させることによって、泥しょうに含まれる泥成分を型表面に付着させて所望の肉厚の壁を形成する。この時、型表面から離れたところでは泥しょうは未硬化のままとなる。この部分の未硬化状態の泥しょうを排出することで、内部に中空の空間を形成可能である。本実施形態の便器本体10では、このような排泥によって、周壁部30と便鉢部40との間の空間、トラップ部60の内部空間、及び導水部70の内部空間を形成している。
【0013】
図1及び図2に示すように、便鉢部40は、汚物を受ける鉢面40Aを構成する。この鉢面40Aは、鋳込み成形においては、鋳込み型の型表面によって形成される。便鉢部40は、上端部が楕円状に開口した椀形状である。便鉢部40は、汚物を洗浄する洗浄水が流通する。便鉢部40の後部には吐水口40Bが形成されている。吐水口40Bは、タンク設置部80に設置される図示しないタンクから供給される洗浄水を便鉢部40内に吐出する。
【0014】
上面部50は、便器1における上面50Aを構成する。この上面50Aは、鋳込み成形においては、鋳込み型の型表面によって形成される。図1及び図2に示すように、上面部50は、便鉢部40の上端縁から前後左右の方向に水平に拡がっている。上面部50の外縁形状は、前後方向を長手方向とする楕円状である。上面部50の外縁には上面縁部51が設けられている。上面縁部51は、上面50Aがなす水平面に上端において連続するようにR面取り状に湾曲して拡がる湾曲面で形成されている。上面縁部51の下端は、上面部50における前部側においては周壁部30の上端に連続し、後部側においては上面部50における後述する凹部10Aの上端に連続している。上面部50における便鉢部40の後方部分は、図示しない便座装置が設置される。
【0015】
図4に示すように、トラップ部60は便鉢部40の下方に設けられている。トラップ部60は、便鉢部40の下端から後方に向けてS字状に上下に屈曲するいわゆるSトラップである。トラップ部60は、便鉢部40内を洗浄した洗浄水を排水として排出する流路となる空間を内部に形成している。鋳込み成形において、トラップ部60の外面は鋳込み型の型表面によって形成される。トラップ部60の内部空間は、外面を形成する鋳込み型の型表面から離れた部分の未硬化状態の泥しょうを排出することで形成される。
【0016】
導水部70は、図5から図7に示すように、上面部50における後方部分の下方であって、トラップ部60の上方に設けられている。導水部70は、タンク設置部80に設置される図示しないタンクから吐水口40Bに連なる洗浄水の流路となる空間を内部に形成している。導水部70は、トラップ部60と同様に、外面は鋳込み型の型表面によって形成され、内部空間は未硬化状態の泥しょうを排出することで形成される。
【0017】
タンク設置部80は、便器本体10における後部上面に設けられている。タンク設置部80には洗浄水が貯留される図示しない洗浄タンクが設置される。タンク設置部80は凹状に窪んで形成されている。タンク設置部80には、洗浄タンクの流出口に接続され、導水部70内の空間に差し込まれる分配管が配置される。鋳込み成形において、タンク設置部80は、下部の一部においてトラップ部60の内部空間に隣接し、前部の一部において導水部70の内部空間に隣接している。他の部位におけるタンク設置部80の表面は、鋳込み型の型表面によって形成される。
【0018】
周壁部30は、便器1における外周面を構成する。図3及び図4に示すように、周壁部30は、上面部50の外縁から下方に延びている。周壁部30は、上端から下端まで一連の曲面で形成されている。周壁部30は、便鉢部40及びトラップ部60を取り囲むように、便器本体10における前部から左右の側部に向けて湾曲して延びている。周壁部30は、正面視において、上下方向の中央部がくびれた一連の湾曲形状をなしている。周壁部30は、上下方向中央のくびれ部から上端側及び下端側に向けて、左右方向の外側に拡がる形態である。周壁部30の下端は、設置状態の便器1において、設置面となる床面に接触する。周壁部30の後端部は、上部において後述する凹部10Aが形成されており、下部において上下方向に延びる後端縁31を形成している。周壁部30の後端下部には、床面固定用の台座11が設けられている。
【0019】
図5から図7に示すように、便器本体10は一対の凹部10Aを有している。一対の凹部10Aは、便器本体10における左右の側部に形成されている。左右一対の凹部10Aは、概ね鏡面対称をなしている。各凹部10Aは、周壁部30の湾曲状の表面から、左右方向の内側に向けて凹状に窪んだ形態である。本実施形態の場合、凹部10Aは、周壁部30の後部上側が凹状に窪んだ形態である。すなわち、凹部10Aは、便器1の外周面の後部上側に形成されている。
【0020】
凹部10Aは、鋳込み成形によって一体に形成される便器本体10において、トラップ部60及び導水部70の一部を周壁部30と共通の鋳込み型で形成するという製造上の事情から形成される。すなわち、凹部10A内の面は、周壁部30の表面と同じ鋳込み型の型表面によって形成される。凹部10Aの内側面は、その全面が鋳込み型の型表面によって形成される。
【0021】
図5に示すように、凹部10Aの外縁の形状は、左右方向から見た側面視において、前後方向を長手方向とする長方形状をなしている。側面視における凹部10Aの上端縁は、前後方向に直線状に延びている。側面視における凹部10Aの下端縁は、前後方向に直線状に延びている。凹部10Aの下端縁は、便器本体10の上下方向の中心部に位置している。側面視における凹部10Aの前端縁は、上下方向に直線状に延びている。凹部10Aの後端は、後方に開放されている。
【0022】
図5から図7に示すように、凹部10A内には、下向き面10Bと、後向き面10Cと、複数の固定面10D,10E,10Fとが形成されている。下向き面10Bは、凹部10Aにおける上部の内縁に設けられており、下方を向いている。下向き面10Bは、凹部10Aにカバー20を嵌め込む際の嵌め込み方向に沿った面である。下向き面10Bは、凹部10Aの上端縁から左右方向の内側に向けて拡がっている。下向き面10Bは、外縁から内側に向かうにつれて、僅かに下方に傾斜している。この傾斜は、便器本体10を製造する際の鋳込み型を取り外す際のいわゆる抜き勾配程度の大きさの傾斜である。
【0023】
下向き面10Bは、上面部50の下面に相当する。下向き面10Bの外縁は、上面部50における上面縁部51の下端に連続している。下向き面10Bと上面部50における上面50Aとの間は中実に形成されている。すなわち、下向き面10Bと上面50Aとの間には、鋳込み成形時の排泥に起因する中空の空間は形成されておらず、便器本体10を構成する陶器材料で満たされている。
【0024】
図5から図7に示すように、後向き面10Cは、凹部10Aにおける前部の内縁に設けられており、後方を向いている。後向き面10Cは、凹部10Aにカバー20を嵌め込む際の嵌め込み方向に沿った面である。後向き面10Cは、凹部10Aの前端縁から左右方向の内側に拡がっている。後向き面10Cは、外縁から内側に向かうにつれて後方に傾斜している。
【0025】
図5から図7に示すように、複数の固定面10D,10E,10Fは、それぞれ左右方向の外側を向いた面である。複数の固定面10D,10E,10Fは、カバー20が凹部10Aに取り付けられた状態において、カバー20の内側面20Aに対向する。複数の固定面10D,10E,10Fは、カバー20が凹部10Aに取り付けられた状態において、カバー20の内側面20Aとの間に空間を形成して対向する。
【0026】
図5に示すように、複数の固定面10D,10E,10Fには、カバー20における後述する固定部22,23,24を固定するための面ファスナーM1がそれぞれ取り付けられている。複数の固定面10D,10E,10Fのうち、固定面10D,10Eは、凹部10A内の上端部において前後の端部にそれぞれ配置された第1上側固定面10D及び第2上側固定面10Eである。第1上側固定面10D及び第2上側固定面10Eは、本開示に係る固定面に対応する。固定面10Fは、凹部10A内の下端部において前後方向に拡がる下側固定面10Fである。
【0027】
図5に示すように、2箇所の上側固定面10D,10Eは、下向き面10Bにおける内端からそれぞれ下方に向けて拡がり、左右方向の外側を向いている。すなわち、各上側固定面10D,10Eは、それぞれ下向き面10Bに交差して拡がる外向きの面である。下向き面10Bを主体として換言すると、下向き面10Bは、各上側固定面10D,10Eの上端から、各上側固定面10D,10Eに対して交差する外側方向に拡がっている。下向き面10Bは、各上側固定面10D,10Eの上端から左右方向の外側に庇状に拡がっている。
【0028】
図7に示すように、第1上側固定面10Dは、便鉢部40を形成する壁の外側面に相当する。第1上側固定面10Dの背面側となる面は、便鉢部40における鉢面40Aの上端部に位置する。上述のように、鉢面40Aは、鋳込み成形においては、鋳込み型の型表面によって成形される。すなわち、便器本体10における第1上側固定面10Dを構成する壁は、外側面、内側面共に、鋳込み型の型表面によって形成される。第1上側固定面10Dは、鉢面40A側の表面形状に沿った形状をなしている。具体的には、第1上側固定面10Dは、図7に示すように、平面視において後方に向けて内側方向に湾曲している。
【0029】
図7に示すように、第2上側固定面10Eは、導水部70を形成する壁の外側面に相当する。第2上側固定面10Eの背面側となる面は、導水部70における内部空間を形成する面であり、鋳込み成形において未硬化状態の泥しょうを排出することで形成される面である。すなわち、便器本体10における第2上側固定面10Eを構成する壁は、外側面のみが鋳込み型の型表面によって形成される。
【0030】
図5及び図6に示すように、下側固定面10Fは、凹部10Aの下端部に位置する。下側固定面10Fは、凹部10Aの前後方向の全体に渡って拡がっている。下側固定面10Fは、凹部10Aの下端縁から左右方向の内側に向けて斜め上方に拡がっている。すなわち、下側固定面10Fは、左右方向の外側及び上方を向いた傾斜面である。下側固定面10Fの傾斜角度は、水平面に対して45°程度の大きな傾斜である。下側固定面10Fを形成する壁の背面側となる面は、便器本体10の下側面を形成する鋳込み型の型表面によって形成される。すなわち、便器本体10における下側固定面10Fを構成する壁は、外側面、内側面共に、鋳込み型の型表面によって形成される。
【0031】
カバー20は、凹部10Aに嵌め込まれて便器本体10に取り付けられる。カバー20は、合成樹脂製の板状である。図6及び図7に示すように、カバー20は、左右一対の凹部10Aのそれぞれに対応して左右一対設けられている。上述のように、凹部10Aは、鋳込み成形によって一体に形成される便器本体10において、トラップ部60及び導水部70の一部を周壁部30と共通の鋳込み型で形成するという製造上の事情から形成されるものである。便器1では、この凹部10Aにカバー20を嵌め込むことによって、トラップ部60及び導水部70を形成する外面を覆い隠すとともに、周壁部30に連続する意匠性の良好な外周面を構成するようにしている。左右一対のカバー20は、概ね鏡面対称な外形形状をなしている。
【0032】
図6に示すように、カバー20の表面は、上端から下方に向けて、左右方向の内側に傾斜している。周壁部30におけるカバー20の下方に位置する部分の表面は、上端から下方に向けて、左右方向の外側に傾斜している。すなわち、カバー20の表面は、周壁部30の表面に連続する意匠をなす形状で形成されている。図6に示すように、カバー20の表面は、左右方向に平行な鉛直断面において、中心部が左右方向内側に凹となる形態の湾曲形状をなしている。カバー20の表面は、前端から後方に向かうにつれて曲率が大きくなる形態の湾曲状である。便器1全体で見ると、便器1の外周面は、後方に向かうにつれて、上下方向中央部のくびれが大きくなる形態である。
【0033】
各カバー20の外形形状は、対応する各凹部10Aの開口がなす形状と同等である。具体的には、各カバー20の外形形状は、図4及び図8に示すように、左右方向から見た側面視において、前後方向に長い長方形状をなしている。側面視におけるカバー20の上端縁20B及び下端縁20Cは、それぞれ前後方向に直線状に延びている。側面視におけるカバー20の前端縁20Dは、上下方向に直線状に延びている。カバー20の後端縁20Eは、上端から下端に向かって前方に僅かに傾斜して直線状に延びている。図1に示すように、カバー20の後端縁20Eと、周壁部30の後端縁31とは、連続して延びている。このように、便器1では、カバー20の後端縁20Eに周壁部30の後端縁31が一連で延びる湾曲状の後端縁を形成している。
【0034】
図4及び図8に示すように、カバー20は、リブ21と、固定部22,23,24と、を有している。リブ21は、カバー20における後端縁20Eから内側に折れ曲がった形態である。リブ21は、板状をなすカバー20における補強部として機能する。リブ21は、カバー20が凹部10Aに嵌め込まれた状態においては、凹部10A内の一部を後方から覆い隠す目隠しとしても機能する。
【0035】
固定部22,23,24は、それぞれカバー20の内側面20Aから突出して設けられている。各固定部22,23,24には、面ファスナーM2がそれぞれ取り付けられている。各固定部22,23,24には、面ファスナーM2の取り付け位置を示すガイドリブGが形成されている。図4及び図8に示すように、本実施形態の場合、固定部22,23,24は3箇所設けられている。すなわち、カバー20は、便器本体10に対して3点で安定的に固定される。3つの固定部22,23,24は、カバー20における上部に設けられる第1上側固定部22及び第2上側固定部23と、カバー20における下部に設けられる下側固定部24である。第1上側固定部22及び第2上側固定部23は、本開示に係る固定部に対応する。
【0036】
図4及び図8に示すように、第1上側固定部22は、カバー20の上部における前端部に設けられている。第1上側固定部22は、凹部10Aにおける第1上側固定面10Dに面ファスナーM1,M2を介して固定される。図7に示すように、第1上側固定部22は、カバー20がなす湾曲状面とは異なり、第1上側固定面10Dがなす湾曲状面に沿った湾曲状面をなしている。
【0037】
図4及び図8に示すように、第2上側固定部23は、カバー20上部における後端部に設けられている。第2上側固定部23は、第1上側固定部22よりも上方に設けられている。第2上側固定部23は、凹部10Aにおける第2上側固定面10Eに面ファスナーM1,M2を介して固定される。図7に示すように、第2上側固定部23は、第2上側固定面10Eがなす湾曲状面に沿った湾曲状面をなしている。第2上側固定部23は、カバー20がなす湾曲状面に沿った湾曲状面をなしている。
【0038】
図4及び図8に示すように、下側固定部24は、カバー20の下端部における前後方向の中央部に設けられている。下側固定部24は、上側固定部22,23と比較して、前後方向の長さが長い。下側固定部24は、凹部10Aにおける下側固定面10Fに面ファスナーM1,M2を介して固定される。下側固定部24は、カバー20がなす湾曲状面とは異なり、下側固定面10Fがなす傾斜面に沿った傾斜面をなしている。具体的には、図6に示すように、下側固定部24は、下端においてカバー20の内側面20Aに接続され、上方に向かうにつれてカバー20の内側面20Aから離れるように傾斜して突出している。すなわち、下側固定部24は、斜め下方を向いている。これによって、下側固定部24は、カバー20の重さを面ファスナーM1,M2同士の係合方向に作用させつつ、下側固定面10Fに固定される。
【0039】
図9に示すように、カバー20の上端部は、便器1における左右方向に平行な鉛直断面で見た場合に、上面部50の外縁、すなわち下向き面10Bの外縁よりも左右方向の内側に配置される。カバー20は、左右方向に平行ないずれの鉛直断面においても、同断面における下向き面10Bの外縁よりも内側に配置される。カバー20が凹部10Aに嵌め込まれた状態において、カバー20の上端面20Fは、凹部10Aにおける下向き面10Bに対向する。本実施形態の場合、カバー20は、上端面20Fを下向き面10Bに接触させた状態で凹部10Aに嵌め込まれる。上端面20Fは、抜き勾配程度の傾斜で形成された下向き面10Bの傾斜角度と同程度の傾斜をもって形成されている。このため、上端面20Fは、下向き面10Bに対して面接触可能である。上端面20Fは、例えば、左右方向の外側部分において下向き面10Bに接触するように、下向き面10Bがなす傾斜よりも僅かに大きな傾斜角度としてもよい。
【0040】
図7に示すように、カバー20の前端部は、便器1の水平断面において、凹部10Aにおける後向き面10Cの外縁よりも左右方向の内側に配置される。カバー20は、いずれの水平断面においても、同断面における後向き面10Cの外縁よりも内側に配置される。この状態において、カバー20の前端面20Gは、凹部10Aにおける後向き面10Cに対向している。本実施形態の場合、カバー20は、前端面20Gを後向き面10Cに接触させた状態で凹部10Aに嵌め込まれる。上述のように、カバー20は、上端面20Fを下向き面10Bに接触させている。したがって、カバー20は、上端面20F及び前端面20Gを凹部10Aにおける下向き面10B及び後向き面10Cにそれぞれ接触させることによって、凹部10A内における位置決めがなされる。
【0041】
図7に示すように、本実施形態の場合、後向き面10Cの外縁には、周壁部30の表面との間にR面取り状の面取り部Rが設けられている。カバー20の前端部は、この面取り部Rよりも内側に配置される。このため、カバー20は、図7に示すように、周壁部30の表面よりも内側に控えた位置において、周壁部30の表面に連続する便器1の外周面を構成している。
【0042】
前端面20Gは、後向き面10Cの傾斜角度と同程度の傾斜をもって形成されている。このため、前端面20Gは、後向き面10Cに対して面接触可能である。前端面20Gは、例えば、左右方向の外側部分において後向き面10Cに接触するように、後向き面10Cがなす傾斜よりも僅かに大きな傾斜角度としてもよい。
【0043】
図6に示すように、カバー20の下端部は、左右方向に平行な鉛直断面で見た場合に、凹部10Aの下端縁よりも上方であって、左右方向の内側に配置される。この状態において、カバー20の下端面20Hは、凹部10Aにおける下側固定面10Fに隙間を空けた状態で対向している。これによって、下側固定部24は、カバー20の重さを面ファスナーM1,M2同士が圧着する方向に有効に作用させつつ、下側固定面10Fに対して固定される。
【0044】
本実施形態の場合、カバー20は、便器本体10に取り付けられた状態では、図2に示すように、その全体が上面部50の外縁よりも内側に位置する。図3に示すように、カバー20は、便器本体10に取り付けられた状態では、便器本体10によって隠されて前方からは視認不能である。各カバー20の外形形状は、対応する各凹部10Aの開口形状と比べて僅かに小さくされている。これによって、凹部10Aに嵌め込まれた状態のカバー20は、その全体が凹部10A内の空間に収まる。この状態において、カバー20の表面は、図6及び図7に示すように、周壁部30の表面よりも内側に一段控えた位置において、周壁部30の表面に連続する便器1の外周面を構成する。
【0045】
上記構成の便器1の作用及び効果について説明する。本実施形態に係る便器1は、便器本体10と、カバー20とを備えている。便器本体10は周壁部を有する。カバー20は、便器本体10における左右方向の側部に取り付けられ、周壁部30の表面に連続して便器1の外周面を構成する。便器本体10は、固定面としての第1上側固定面10D及び第2上側固定面10Eと、下向き面10Bとを有している。第1上側固定面10D及び第2上側固定面10Eは、左右方向の外側を向いてカバー20の内側面20Aに対向する。第1上側固定面10D及び第2上側固定面10Eには、カバー20における固定部としての第1上側固定部22及び第2上側固定部23が固定される。下向き面10Bは、第1上側固定面10D及び第2上側固定面10Eよりも上方においてカバー20の上端面20Fに対向し、第1上側固定面10D及び第2上側固定面10Eに交差して拡がる下方を向いた面である。そして、カバー20の上端部は、下向き面10Bの外縁よりも内側に配置されている。
【0046】
このような構成により、便器1は、カバー20の上端面20Fと下向き面10Bとの境界部位が使用者に直接的に視認されにくくなる。このため、便器1は、例えカバー20の上端面20Fと下向き面10Bとの間に隙間が生じた状態であっても、その隙間を使用者に視認させ難くすることができる。特に、例えば図6に示すように、便器1を上方から見下ろす使用者に対しては、下向き面10Bの外縁よりも内側にあるカバー20の上端部は下向き面10Bによって覆われた状態になるため、視認し難くなる。このように、便器1は、カバー20と便器本体10との間に隙間が生じている場合でも、その隙間を目立ちにくくすることができる。したがって、便器1は、良好な意匠性を実現できる。
【0047】
便器1において、下向き面10Bは、便器本体10における上面部50の下面である。そして、下向き面10Bと上面部50における上面50Aとの間は中実であり、便器本体10を構成する陶器材料で満たされている。すなわち、下向き面10Bと上面50Aとの間は、鋳込み成形時の排泥に起因する中空の空間は形成されていない。このため、便器1は、便器本体10における下向き面10Bと上面50Aとの間の高さ寸法を抑えることができる。
【0048】
便器1において、カバー20の上端面20Fは、下向き面10Bに接触している。このため、便器1は、カバー20の上端面20Fと下向き面10Bとの間の境界部位を使用者に一層視認させにくくすることができ、良好な意匠性を実現できる。カバー20は、上端面20Fを凹部10Aの下向き面10Bに接触させて取り付けられるため、凹部10Aに対するカバー20の上下方向の位置決めが容易である。
【0049】
便器1において、カバー20は、上端縁20Bの全体が直線状に前後方向に延びている。このため、例えば曲線状等にカバーの上端縁が延びている場合と比較して、カバー20の上端面20Fと下向き面10Bとの間の境界部位を使用者に視認させにくくすることができる。
【0050】
便器1において、下向き面10Bは、便器本体10における上面部50の下面である。そして、上面部50は、下向き面10Bの外縁に連続し、かつ上面部50における上面50Aに連続するR面取り状に、湾曲して拡がる湾曲面で形成された上面縁部51を有している。
【0051】
便器1においては、カバー20の後端縁20Eに連続して周壁部30の後端縁31が延びている。このため、便器1は、良好な意匠性を実現できる。
【0052】
便器1において、カバー20の表面は上端から下方に向けて左右方向の内側に傾斜している。このカバー20の下方に位置する周壁部30の表面は上端から下方に向けて左右方向外側に傾斜している。すなわち、便器1における外周面を構成するカバー20の表面、及び周壁部30の表面は、便器1における上端から下端にかけて凹状をなす一連の曲面状をなしている。このため、便器1は良好な意匠性を実現できる。
【0053】
便器1において、固定部としての第1上側固定部22及び第2上側固定部23は、それぞれカバー20の内側面20Aから突出して形成されている。このため、カバー20は、便器本体10側の表面形状に関わらず、所望の形状の表面で形成することができ、良好な意匠性を実現できる。
【0054】
便器1において、カバー20の上端部は、図2及び図7に示すように、便器本体10における周壁部30の表面よりも内側に控えて位置する。これによって、カバー20の上端面20Fと下向き面10Bとの境界部位は、上面部50の外縁によって覆われる。このため、図6に示すように、便器1を上方から見下ろす使用者からは、カバー20の上端面20Fと下向き面10Bとの境界部位は直接的には視認されにくい。その結果、仮に下向き面10Bと上端面20Fとの間に隙間が生じてしまっても、便器1を上方から見下ろす使用者からはその隙間が見えにくくなる。
【0055】
便器1は、カバー20を便器本体10に取り付けるに際し、カバー20の前端面20Gを凹部10Aにおける後向き面10Cに対して接触させるとともに、カバー20の前端部を後向き面10Cの外縁と周壁部30の表面との間の面取り部Rよりも内側に配置するようにしている。カバー20は、図3及び図6に示すように、便器本体10における周壁部30の表面よりも内側に控えて位置する。これによって、カバー20の前端面20Gと後向き面10Cとの境界部位は、面取り部Rによって覆われるため、図7に示すように、便器1を前方から見る使用者からは直接的には視認されにくい。その結果、仮に後向き面10Cと前端面20Gとの間に隙間が生じてしまっても、便器1を前方から見る使用者からはその隙間が見えにくくなる。
【0056】
便器1において、カバー20は、上端面20Fを凹部10Aの下向き面10Bに接触させるとともに、前端面20Gを凹部10Aの後向き面10Cに接触させて取り付けられる。このため、便器1は、凹部10Aに対するカバー20の上下方向及び前後方向の位置決めが容易である。
【0057】
カバー20は、便器本体10に対して面ファスナーM1,M2を介して取り付けられるため、着脱自在である。
【0058】
本開示は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本開示の技術的範囲に含まれる。
【0059】
カバーが左右一対設けられることは必須でない。カバーは、便器本体における左右側部の少なくとも一方に取り付けられていればよい。カバーが便器本体における左右側部に設けられる場合、これらのカバーが鏡面対称であることは必須でない。カバーが複数設けられる場合には、それぞれのカバーが異なる形状で形成されていてもよい。
【0060】
カバーの上端面を下向き面に接触させる場合、上端面全体が接触している必要はない。鋳込み成形による陶器製の便器本体、射出成形による樹脂製のカバー等、各部材の製造誤差等を考慮した場合、カバーの上端面は、その少なくとも一部、例えば上端面における前後方向の長さ範囲全体のうち、10パーセント程度の部分において下向き面に接触していればよい。
【0061】
カバーの前端面を後向き面に接触させる場合、前端面全体が接触している必要はない。カバーの前端面は、その少なくとも一部、例えば前端面における上下方向の長さ範囲全体のうち、10パーセント程度の部分において後向き面に接触させる形態であってもよい。
【0062】
カバーの外形形状、構成、材質等は上記実施形態に限定されない。カバーの上端縁は、その全体が前後方向に直線状に延びていなくてもよい。
【0063】
カバーにおける固定部は、1箇所のみ設けられていてもよいし、3箇所以上設けられていてもよい。カバーの便器本体に対する固定は、面ファスナーを用いた固定に限定されず、例えば、両面テープ、接着剤等による固定であってもよい。
【符号の説明】
【0064】
1…便器、10…便器本体、10B…下向き面、10D,10E…固定面(10D…第1上側固定面、10E…第2上側固定面)、20…カバー、20A…カバーの内側面、20B…カバーの上端縁、20E…カバーの後端縁、20F…カバーの上端面、22,23…固定部(22…第1上側固定部、23…第2上側固定部)、30…周壁部、31…周壁部の後端縁、50…上面部、51…上面縁部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9