(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102371
(43)【公開日】2023-07-25
(54)【発明の名称】酒粕の凍結乾燥食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
C12G 3/022 20190101AFI20230718BHJP
A23L 5/00 20160101ALN20230718BHJP
A23L 3/44 20060101ALN20230718BHJP
【FI】
C12G3/022 119V
A23L5/00 A
A23L3/44
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022002803
(22)【出願日】2022-01-12
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】522015010
【氏名又は名称】有限会社すえひろ
(74)【代理人】
【識別番号】100131026
【弁理士】
【氏名又は名称】藤木 博
(74)【代理人】
【識別番号】100194124
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 まゆみ
(72)【発明者】
【氏名】新城 希子
【テーマコード(参考)】
4B022
4B035
4B115
【Fターム(参考)】
4B022LA04
4B022LB06
4B022LJ01
4B035LC16
4B035LE05
4B035LG19
4B035LG48
4B035LP01
4B035LP24
4B035LP43
4B115AG05
4B115AG07
4B115CN06
4B115CN98
(57)【要約】
【課題】ブロック状で食感の良い酒粕の凍結乾燥食品を得ることができる酒粕の凍結乾燥食品の製造方法を提供する。
【解決手段】酒粕と、水とを含む組成物を加熱する加熱工程(ステップS110)と、加熱工程の後、組成物を凍結乾燥する凍結乾燥工程(ステップS120)とを含んでいる。加熱工程(ステップS110)は、酒粕と、水とを含む組成物を沸騰させる第1加熱工程(ステップS111)と、第1加熱工程の後、85℃以上95℃以下の温度で加熱する第2加熱工程(ステップS112)とを含むことが好ましい。凍結乾燥工程(ステップS120)では、凍結乾燥前の組成物における酒粕と水との割合を、酒粕100質量部に対して水400質量部以上600質量部以下の範囲内とすることが好ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酒粕と、水とを含む組成物を加熱する加熱工程と、
前記加熱工程の後、前記組成物を凍結乾燥し、ブロック状の酒粕の凍結乾燥食品を得る凍結乾燥工程とを含み、
前記凍結乾燥工程において、凍結乾燥前の前記組成物における酒粕と水との割合は、酒粕100質量部に対して水400質量部以上600質量部以下とする
ことを特徴とする酒粕の凍結乾燥食品の製造方法。
【請求項2】
前記加熱工程は、
酒粕と、水とを含む組成物を沸騰させる第1加熱工程と、
第1加熱工程の後、前記組成物に糖質系甘味料を加え、85℃以上95℃以下の温度で、水を加えながら、1時間30分以上加熱する第2加熱工程と
を含むことを特徴とする請求項1記載の酒粕の凍結乾燥食品の製造方法。
【請求項3】
前記加熱工程において、前記組成物に糖質系甘味料を添加することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の酒粕の凍結乾燥食品の製造方法。
【請求項4】
前記凍結乾燥工程において、凍結乾燥前の前記組成物における酒粕と水との割合は、酒粕100質量部に対して水450質量部以上550質量部以下とすることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1に記載の酒粕の凍結乾燥食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酒粕を用いたブロック状の凍結乾燥食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酒粕は、清酒を製造するときに副産物として一時期に大量に生産されるものである。酒粕は、従来より、食べ物や飲み物等に利用されているが、そのまま常温で長期間保存することが難しい。そこで、例えば、凍結乾燥により粉末とし、長期保存を可能とすることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、従来の方法により得られるのは粉末状の凍結乾燥物であり、ブロック状の凍結乾燥物を得ることはできなかった。なお、凍結乾燥では、原料にアルコールや糖分があるとブロック状にすることが難しいことが知られている。そのため、従来の酒粕の凍結乾燥物は、お湯などの飲料に溶かして飲むのが主な食べ方であり、そのまま食べることは難しかった。例えば、メレンゲの焼き菓子のように、ブロック状で、食感もよい凍結乾燥物を得ることができれば、そのまま簡単に食することができ、酒粕の用途を広げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような問題に基づきなされたものであり、ブロック状で食感の良い酒粕の凍結乾燥食品を得ることができる酒粕の凍結乾燥食品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の酒粕の凍結乾燥食品の製造方法は、酒粕と、水とを含む組成物を加熱する加熱工程と、加熱工程の後、組成物を凍結乾燥し、ブロック状の酒粕の凍結乾燥食品を得る凍結乾燥工程とを含み、凍結乾燥工程において、凍結乾燥前の組成物における酒粕と水との割合は、酒粕100質量部に対して水400質量部以上600質量部以下とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の酒粕の凍結乾燥食品の製造方法によれば、酒粕と水とを含む組成物を加熱した後、酒粕と水との割合を所定の範囲内とした組成物を凍結乾燥するようにしたので、ブロック状の酒粕の凍結乾燥食品を容易に得ることができる。また、食感もサクッとした軽い口当たりとすることができるので、そのまま手軽に美味しく食べることができ、新しい酒粕の食品を提供することができる。更に、お湯や水、牛乳等の飲料に溶かして食することもでき、食のバリエーションを広げることもできる。
【0007】
また、加熱工程に、酒粕と、水とを含む組成物を沸騰させる第1加熱工程と、第1加熱工程の後、組成物に糖質系甘味料を加え、85℃以上95℃以下の温度で、水を加えながら、1時間30分以上加熱する第2加熱工程とを含むようにすれば、アルコールを十分に飛ばして良好なブロック状の凍結乾燥物を得ることができると共に、よりサクッとした食感で、かつ、より滑らかな口当たりとすることができる。
【0008】
更に、組成物に糖質系甘味料を添加するようにすれば、サクッとした食感の甘味物としてそのまま食することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る酒粕の凍結乾燥食品の製造方法を表す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施の形態に係る酒粕の凍結乾燥食品の製造方法の流れを表すものである。この酒粕の凍結乾燥食品の製造方法は、ブロック状の酒粕の凍結乾燥食品を製造するものであり、酒粕と、水とを含む組成物を加熱する加熱工程(ステップS110)と、加熱工程の後、組成物を凍結乾燥し、ブロック状の酒粕の凍結乾燥食品を得る凍結乾燥工程(ステップS120)とを含んでいる。
【0012】
組成物は、主原料である酒粕に加えて、調味料等の添加物を含んでいてもよい。主原料は酒粕のみとすることが好ましい。酒粕の風味を生かすことができ、かつ、サクッとした食感の凍結乾燥食品を得ることができるからである。添加物としては、糖質系甘味料や塩等が挙げられる。糖質系甘味料を添加することにより、甘味として食することができる。糖質系甘味料は、炭水化物に分類される甘味料であり、砂糖、でん粉由来の糖、その他の糖、糖アルコール等が挙げられる。中でも、糖質系甘味料としては、砂糖、でん粉由来の糖、その他の糖が好ましい。酒粕の風味を損ねることなく優しい甘みを加えることができるからである。また、甘味料としては、糖質系甘味料のみを用いることが好ましく、砂糖、でん粉由来の糖、及び、その他の糖からなる群のうちの少なくとも1種のみを用いるようにすればより好ましい。自然の原料に基づくものであり、自然の甘味を得られるからである。
【0013】
加熱工程(ステップS110)は、例えば、酒粕と、水とを含む組成物を沸騰させる第1加熱工程(ステップS111)と、第1加熱工程の後、85℃以上95℃以下の温度で加熱する第2加熱工程(ステップS112)とを含むことが好ましい。
【0014】
第1加熱工程(ステップS111)では、例えば、酒粕に水を加えて、必要に応じてかき混ぜながら沸騰させる。酒粕と水との割合は、例えば、酒粕100質量部に対して、水を400質量部以上600質量部以下とすることが好ましい。沸騰させている時間は、例えば、3分から30分程度とすることができる。
【0015】
第2加熱工程(ステップS112)では、例えば、糖質系甘味料や塩等の添加物を加え、必要に応じてかき混ぜながら85℃以上95℃以下の温度で加熱することが好ましい。糖質系甘味料や塩の添加量は好みに応じて任意に決定することができる。糖質系甘味料の添加量は、例えば、酒粕100質量部に対して15質量部から35質量部とすることができ、塩の添加量は、例えば、酒粕100質量部に対して0.1質量部から2質量部とすることができる。
【0016】
加熱時間は、1時間30分以上とすることが好ましく、1時間50分以上3時間以下とすればより好ましい。加熱時間、すなわち煮込み時間が短いと、アルコールを十分に飛ばすことができず、ブロック状の凍結乾燥物を得ることが難しくなるからである。また、加熱時間を必要以上に長くすると、製造に時間と手間がかかってしまうからである。加熱は、必要に応じて、水を加えながら行うことが好ましい。なお、加熱終了時における酒粕と水との割合は、酒粕100質量部に対して水が400質量部以上600質量部以下となるようにすることが好ましい。
【0017】
凍結乾燥工程(ステップS120)では、例えば、組成物を容器に入れて、凍結乾燥機により凍結乾燥することが好ましい。具体的には、例えば、-40℃以下の温度で凍結した後、真空にし、-20℃から30℃の温度で乾燥させることが好ましい。凍結乾燥工程において、凍結乾燥前の組成物における酒粕と水との割合は、酒粕100質量部に対して水400質量部以上600質量部以下の範囲内とすることが好ましく、酒粕100質量部に対して水450質量部以上550質量部以下の範囲内とすればより好ましい。すなわち、酒粕100質量部に対して水400質量部以上600質量部以下、より好ましくは水450質量部以上550質量部以下とした組成物を凍結乾燥することが好ましい。このように水の量を調整することにより、サクッとした食感のブロック状の凍結乾燥食品を得ることができるからである。凍結乾燥する際の組成物の厚みは、例えば、0.5mmから2.5cmとすることが好ましい。
【0018】
このように、本実施の形態によれば、酒粕と水とを含む組成物を加熱した後、酒粕と水との割合を所定の範囲内とした組成物を凍結乾燥するようにしたので、ブロック状の酒粕の凍結乾燥食品を容易に得ることができる。また、食感もサクッとした軽い口当たりとすることができるので、そのまま手軽に美味しく食べることができ、新しい酒粕の食品を提供することができる。更に、お湯や水、牛乳等の飲料に溶かして食することもでき、食のバリエーションを広げることもできる。加えて、冷たい水や牛乳等の冷たい飲料にも簡単に溶け、高い水戻り性を得ることができる。
【0019】
また、加熱工程(ステップS110)に、酒粕と、水とを含む組成物を沸騰させる第1加熱工程(ステップS111)と、第1加熱工程の後、組成物に糖質系甘味料を加え、85℃以上95℃以下の温度で、水を加えながら、1時間30分以上加熱する第2加熱工程(ステップS112)とを含むようにすれば、アルコールを十分に飛ばして良好なブロック状の凍結乾燥物を得ることができると共に、よりサクッとした食感で、かつ、より滑らかな口当たりとすることができる。
【0020】
更に、組成物に糖質系甘味料を添加するようにすれば、サクッとした食感の甘味物としてそのまま食することができる。
【実施例0021】
(実施例)
まず、酒粕100質量部に対して水を400質量部から600質量部の割合で加えた組成物をかき混ぜながら沸騰させ、3分から20分程度保持した。次いで、沸騰させた組成物に三温糖と塩と水とを添加し、かき混ぜながら85℃から95℃の温度で1時間30分以上加熱した。加熱中には、定期的に水を添加した。加熱終了時における酒粕と水との割合は、酒粕100質量部に対して水が400質量部から600質量部となるようにした。加熱終了後、酒粕100質量部に対して水400質量部から600質量部の範囲内とした組成物を凍結乾燥機により凍結乾燥した。その結果、ブロック状の酒粕の凍結乾燥食品が得られた。食べたところ、弱い力で簡単に崩れるサクッとした軽い食感で、そのまま手軽に美味しく食べることができた。酒粕の風味も十分に得られた。また、お湯や牛乳に溶かしても、酒粕の風味が十分に得られ、おいしく食することができた。冷たい水にも簡単に溶け、高い水戻り性が得られた。
【0022】
(比較例)
加熱工程及び凍結乾燥工程における凍結乾燥前の酒粕100質量部に対する水の割合を、400質量部よりも少なく、又は、600質量部よりも多くしたことを除き、他は実施例と同様にして酒粕の凍結乾燥食品を製造した。その結果、水の割合を400質量部よりも少なくした場合には、きれいなブロック状の凍結乾燥食品は得られず、不揃いな固まり状であった。また、不揃いな固まり状のものは、硬めであり、弱い力では崩すことができなかった。一方、水の割合を600質量部よりも多くした場合には、ブロック状の凍結乾燥食品は得られず、粉末状に近い状態であった。
【0023】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態及に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態では、各工程について具体的に説明したが、全ての工程を含んでいなくてもよく、また、他の工程を含んでいてもよい。更に、各工程における具体的な条件は一例を示したものであり、異なっていてもよい。加えて、上記実施の形態では、添加物として、糖質系甘味料と塩を例に挙げて説明したが、添加物は添加しなくてもよく、また、他の添加物を添加してもよい。
前記凍結乾燥工程において、凍結乾燥前の前記組成物における酒粕と水との割合は、酒粕100質量部に対して水450質量部以上550質量部以下とすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の酒粕の凍結乾燥食品の製造方法。