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特開2023-102386加工ケール又は加工大麦若葉の製造方法、及び加工ケール又は加工大麦若葉
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  • 特開-加工ケール又は加工大麦若葉の製造方法、及び加工ケール又は加工大麦若葉 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102386
(43)【公開日】2023-07-25
(54)【発明の名称】加工ケール又は加工大麦若葉の製造方法、及び加工ケール又は加工大麦若葉
(51)【国際特許分類】
   A23L 19/00 20160101AFI20230718BHJP
   A23L 7/10 20160101ALI20230718BHJP
【FI】
A23L19/00 A
A23L7/10 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022002840
(22)【出願日】2022-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】594117526
【氏名又は名称】こだま食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003085
【氏名又は名称】弁理士法人森特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】有田 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】馬上 元彦
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 綾子
(72)【発明者】
【氏名】淺野 優
【テーマコード(参考)】
4B016
4B023
【Fターム(参考)】
4B016LC02
4B016LE02
4B016LG05
4B016LP05
4B016LP08
4B016LP13
4B023LC02
4B023LE30
4B023LG05
4B023LP07
4B023LP14
4B023LQ01
4B023LT01
(57)【要約】
【課題】
食味が改善された固形状のケール又は大麦若葉を製造する方法を提供する。
【解決手段】
含水率を調整したケール又は大麦若葉を、押出機で加圧及び加熱する第1工程と、第1工程で処理したケール又は大麦若葉を乾燥する第2工程とを有する固形状の加工ケール又は加工大麦若葉の製造方法、及び加工ケール又は加工大麦若葉の粉末3gと蒸留水97gとを混合して、液量を100mlにして撹拌した分散液を調製し、撹拌終了後30分が経過した時点において、色が薄い上層と上層に比して色の濃い下層との境界線が55~98mlの範囲に位置する固形状の加工ケール又は加工大麦若葉である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
含水率を調整したケール又は大麦若葉を、押出機で加圧及び加熱する第1工程と、
第1工程で処理したケール又は大麦若葉を乾燥する第2工程とを有する固形状の加工ケール又は加工大麦若葉の製造方法。
【請求項2】
第1工程における加熱の温度は、40~300℃の範囲である請求項1に記載の固形状の加工ケール又は加工大麦若葉の製造方法。
【請求項3】
第1工程における加圧条件は、押出機の押出口から排出される直前の部分で測定した絶対圧力が、0.12~7.0MPaである請求項1又は2に記載の固形状の加工ケール又は加工大麦若葉の製造方法。
【請求項4】
固形状の加工ケール又は加工大麦若葉は粉末状であり、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定される粒度の累積分布(D50、メジアン径)が、1~300μmの範囲である請求項1ないし3のいずれかに記載の固形状の加工ケール又は加工大麦若葉の製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれかに記載の製造方法を実施した後における加工ケール又は加工大麦若葉のL、a*、b*、又はc*の値から、押出機で加圧及び加熱していないケール又は大麦若葉のL、a*、b*、又はc*の値を差し引いて求めた、ΔL、Δa*、Δb*、又はΔc*は、以下の範囲である請求項1ないし4のいずれかに記載の固形状の加工ケール又は加工大麦若葉の製造方法。
[ΔL*は、-1.1~-20であり、
Δa*は、-0.3~-4.5であり、
Δb*は、0.4~15であり、又は
Δc*は、0.5~15である]
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の製造方法で製造された加工ケール又は加工大麦若葉は、以下の沈降特性を備える固形状の加工ケール又は加工大麦若葉の製造方法:
加工ケール又は加工大麦若葉の粉末3gと蒸留水97gとを混合して、液量を100mlにして撹拌した分散液を調製し、
撹拌終了後30分が経過した時点において、色が薄い上層と上層に比して色の濃い下層との境界線が55~98mlの範囲に位置する。
【請求項7】
加工ケール又は加工大麦若葉の粉末3gと蒸留水97gとを混合して、液量を100mlにして撹拌した分散液を調製し、
撹拌終了後30分が経過した時点において、色が薄い上層と上層に比して色の濃い下層との境界線が55~98mlの範囲に位置する固形状の加工ケール又は加工大麦若葉。
【請求項8】
加工ケール又は加工大麦若葉のL、a*、b*、又はc*の値から、未加工のケール又は未加工の大麦若葉のL、a*、b*、又はc*の値を差し引いて求めた、ΔL、Δa*、Δb*、又はΔc*は、以下の範囲である固形状の加工ケール又は加工大麦若葉。
[ΔL*は、-1.1~-20であり、
Δa*は、-0.3~-4.5であり、
Δb*は、0.4~15であり、又は
Δc*は、0.5~15である]
【請求項9】
剤型は粉末状であり、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定される粒度の累積分布(D50、メジアン径)が、粒径が1~300μmの範囲である請求項7又は8に記載の固形状の加工ケール又は加工大麦若葉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工ケール又は加工大麦若葉の製造方法と加工ケール又は加工大麦若葉に関する。
【背景技術】
【0002】
以下に示す特許文献1又は特許文献2のように、乾燥したケールの粉末から造粒物を製造する方法が知られている。
【0003】
特許文献1の方法では、ケールの葉を熱水で加熱することによりブランチングを行い、加熱したケールを乾燥して、乾燥したケールをハンマーミルで粉砕する。粉末状のケールを、バスケット型湿式造粒機(菊水製作所)を用いて押し出して造粒する。押し出しによる造粒の際には、ケールの乾燥粉末に対して水を添加して捏和して、粉末を大きな塊に成形し、それに圧力をかけて網目状のダイスから押し出して造粒するとされている。このような方法で造粒することで、賦形剤及び結合剤が不要になるとされている。
【0004】
特許文献2の方法では、ケールの粉末を押出型造粒装置(不二パウダル株式会社)で押し出して造粒物を得るとされている。押し出しの際には、ケールの粉末に水を添加して撹拌して成形し、それを加圧しながらメッシュから押し出して造粒するとされている。このような方法で造粒することで、賦形剤、バインダー及び増粘剤が不要になるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-218964号公報
【特許文献2】特開2005-073557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ケールや大麦若葉は、食物繊維、カルシウムなどのミネラル、ビタミンなどの成分を多量に含んでいることから、健康食品の原料として使用されている。ケールや大麦若葉を加工して、サプリメントの原料としたり、青汁の原料としたりするなどされている。
【0007】
ケールや大麦若葉は、苦味が強く、独特の風味を有することから、これを倦厭するユーザーも多かった。特許文献1や特許文献2で開示されたケールの造粒物は、賦形剤、結合剤、又は増粘剤を添加しなくてもケールの粉末を顆粒状に成形できる点で優れたものである。しかしながら、これらの方法は、押出機で造粒物を得る方法が提案されているに過ぎず、押し出し処理の過程で加圧や加熱を伴うものではなく、ケールや大麦若葉の倦厭される食味を改善するものではなかった。
【0008】
本発明は、食味が改善された固形状のケール又は大麦若葉を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
含水率を調整したケール又は大麦若葉を、押出機で加圧及び加熱する第1工程と、第1工程で処理したケール又は大麦若葉を乾燥する第2工程とを有する固形状の加工ケール又は加工大麦若葉の製造方法により、上記の課題を解決する。
【0010】
上記の製造方法において、第1工程における加熱の温度は、40~300℃の範囲であることが好ましい。
【0011】
上記の製造方法において、第1工程における加圧条件は、押出機の押出口から排出される直前の部分で測定した絶対圧力が、0.12~7.0MPaであることが好ましい。
【0012】
上記の製造方法において、固形状の加工ケール又は加工大麦若葉は粉末状であり、例えば、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定される粒度の累積分布(D50、メジアン径)が、粒径が1~300μmの範囲となるように粉砕することができる。
【0013】
上記の製造方法は、上記いずれかに記載の製造方法を実施した後における加工ケール又は加工大麦若葉のL、a*、b*、又はc*の値から、押出機で加圧及び加熱していないケール又は大麦若葉のL、a*、b*、又はc*の値を差し引いて求めた、ΔL、Δa*、Δb*、又はΔc*は、以下の範囲である請求項1ないし4のいずれかに記載の固形状の加工ケール又は加工大麦若葉の製造方法としてもよい。ΔL*は、-1.1~-20であり、Δa*は、-0.3~-4.5であり、Δb*は、0.4~15であり、又はΔc*は、0.5~15である。
【0014】
上記の製造方法は、上記のいずれかに記載の製造方法で製造された加工ケール又は加工大麦若葉は、以下の沈降特性を備えるものであってもよい。加工ケール又は加工大麦若葉の粉末3gと蒸留水97gとを混合して、液量を100mlにして撹拌した分散液を調製し、撹拌終了後30分が経過した時点において、色が薄い上層と上層に比して色の濃い下層との境界線が55~98mlの範囲に位置する。
【0015】
上記の製造方法によれば、以下の沈降特性を有する加工ケール又は加工大麦若葉が得られる。すなわち、加工ケール又は加工大麦若葉の粉末3gと蒸留水97gとを混合して、液量を100mlにして撹拌した分散液を調製し、撹拌終了後30分が経過した時点において、色が薄い上層と上層に比して色の濃い下層との境界線が55~98mlの範囲に位置する固形状の加工ケール又は加工大麦若葉である。
【0016】
上記の製造方法によれば、以下の加工ケール又は加工大麦若葉が得られる。すなわち、加工ケール又は加工大麦若葉のL、a*、b*、又はc*の値から、未加工のケール又は未加工の大麦若葉のL、a*、b*、又はc*の値を差し引いて求めた、ΔL、Δa*、Δb*、又はΔc*は、以下の範囲である固形状の加工ケール又は加工大麦若葉である。ΔL*は、-1.1~-20であり、Δa*は、-0.3~-4.5であり、Δb*は、0.4~15であり、又はΔc*は、0.5~15である。
【0017】
上記の製造方法によれば、剤型は粉末状であり、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定される粒度の累積分布(D50、メジアン径)が、粒径が1~300μmの範囲である固形状の加工ケール又は加工大麦若葉が得られる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、食味が改善された固形状の加工ケール又は加工大麦若葉を製造する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】沈降試験における上層と下層との境界を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の固形状の加工ケール又は加工大麦若葉の製造方法と、固形状の加工ケール又は加工大麦若葉の好適な実施形態について説明する。
【0021】
本発明は、含水率を調整したケール又は大麦若葉を、押出機で加圧及び加熱する第1工程と、第1工程で処理したケール又は大麦若葉を乾燥する第2工程とを有する固形状の加工ケール又は加工大麦若葉の製造方法である。
【0022】
原料として使用することができるケールは、アブラナ科の緑葉野菜であり、緑葉と緑葉の軸を使用する。大麦若葉は、イネ科の穀物で大麦が穂をつける前の緑葉のことであり、当該緑葉を使用する。ケール又は大麦若葉共に、各種の品種を原料として使用することができる。
【0023】
ケール又は大麦若葉は、生のケール又は大麦若葉を乾燥することによりケール又は大麦若葉の含水率を調整し、これを押出機に投入してもよい。別の方法として、生のケール又は大麦若葉を保存又は輸送に適した含水率までいったん乾燥して、乾燥したケール又は大麦若葉に水を適用して含水率を調整し、これを押出機に投入してもよい。後者の方法では、原料の収穫期に依存せず、備蓄した原料を使用することができるので好ましい。
【0024】
原料とするケール又は大麦若葉(以下、ケール等と称する。)の乾燥は、公知の方法により実施すればよい。特に限定されるものではないが、乾燥に際しては、ケール等に含まれる酵素を失活して、経時的な品質の変化を防止する目的でブランチングを行ってもよい。また、原料とするケール等は、破砕又は粉砕したものを使用してもよい。
【0025】
ケール等は、上述の通り、乾燥又は水の適用により、含水率を調整したうえで押出機で加圧及び加熱する。ケール等の含水率は、特に限定されないが、押出機中におけるケール等の含水率が10~50質量%となるように調節することが好ましく、前記含水率が20~35質量%となるように調節することがより好ましい。含水率は、次式によって求められる。
含水率(質量%)=(A1-B1)÷A1
ただし、A1は、加熱乾燥前のケールの質量であり、B1は加熱乾燥後のケール等の質量であり、加熱条件は、試料5gに対して赤外線を照射することにより、試料を150℃で10分加熱する。
【0026】
含水率を調整することによって、例えば、ケール等を押出機で処理する際におけるケール等の焦げが防止され、水蒸気の潜熱によりケール等が効率的に加熱殺菌されやすくなる。また、含水率を調整することによって、押出機の内部で水蒸気が発生し、押出機内部の圧力が上昇しやすくなる。また、含水率を調整することにより、押出機から押し出されたケール等が固形状となりやすくなる。これにより、押し出されたケール等が、製造ラインにこびりついて歩留りを低下させたり、製造ラインを汚したりしにくくなり、押出後の行程においてケール等が取り扱いやすくなる。また、含水率を調整することで、ケール等の色に深みと鮮やかさがでやすくなる。
【0027】
乾燥したケール等の含水率を調整する方法は、特に限定されず、乾燥したケール等と水とを接触させればよい。乾燥したケール等の含水率を調整するには、例えば、公知の撹拌機でケール等と水とを撹拌しながら、ケール等の粒径が小さくなるように破砕又は粉砕を行ってもよい。また、押出機にケール等を供給する経路とは別の経路から水を注入して、含水率を調整してもよい。
【0028】
押出機は、公知の装置を使用すればよい。押出機としては、例えば、シリンダー内に一本以上の押出スクリューを内蔵するものを使用することができる。押出機は、シリンダーの外側に配された加熱ジャケットなどの加熱部により加熱されるように構成してもよい。また、シリンダーの軸方向に沿って、設定温度を変更することができるように構成されたものであってもよい。例えば、シリンダーの加熱部は、シリンダーの軸方向に沿って設けられる複数の加熱部から構成されており、加熱部ごとに設定温度を独立して設定できるように構成されたものであってもよい。
【0029】
加熱部が複数の加熱部から構成される場合は、例えば、第1加熱部の設定温度が40℃、第2加熱部の設定温度が100℃、第3加熱部の設定温度が150℃といったように、加熱条件を設定することができる。ケール等を順次、各加熱部で加熱されたシリンダー内を通過させることで、ケール等を異なる温度で加熱することができる。入口側の加熱部の温度を、奥側の加熱部よりも低めの温度に設定することで、原料が逆流することを防止することができる。
【0030】
ケール等を押出機で加圧及び加熱する際における加熱条件は、特に限定されないが、加熱部が複数の加熱部から構成される場合は、押出機における設定温度が、40~300℃の範囲となるようにすることが好ましく、40~250℃となるようにすることがより好ましく、40~200℃となるようにすることがさらに好ましく、50~180℃となるようにすることがさらに好ましい。複数の加熱部のうち、少なくとも一つの設定温度が、70℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましい。また、複数の加熱部の設定温度は、300℃以下であることが好ましい。
【0031】
ケール等を押出機で加圧及び加熱する際における加熱条件は、特に限定されないが、加熱部が単一の加熱部から構成される場合は、押出機における設定温度が、300℃以下にすることが好ましい。設定温度の下限値は、特に限定されないが、70℃以上とすることが好ましく、100℃以上とすることがより好ましい。
【0032】
ケール等を押出機で加圧及び加熱する際における加圧条件は、特に限定されないが、押出機の中で徐々に加圧され、押出機の押出口から排出される直前の部分で測定した絶対圧力が、0.12~7.0MPaとなるようにすることが好ましく、0.2~6.0MPaとなるようにすることがより好ましく、0.4~4.0MPaとなるようにすることがさらに好ましい。なお、圧力は、押出機内の設定温度を調節することによりケール等が膨張する程度を調節することによって調整することが可能であるし、押出機に内蔵されたスクリューの回転速度を調節することによって調整することが可能である。また、押出機に投入するケール等の投入量を調節することによっても圧力を調節することが可能である。
【0033】
ケール等を押出機で加圧及び加熱する際における加圧時間及び加熱時間は、特に限定されないが、5~60秒とすることが好ましく、10~40秒とすることがより好ましく、10~32秒とすることがさらに好ましい。
【0034】
詳細な機構は不明であるが、含水率を調整したケール等を押出機で加熱することによって、青臭さ、苦味、えぐみ、口ざわりなど好ましくない食味が低下し、香ばしさが付加され、食味が改善すると推測される。詳細な機構は不明であるが、含水率を調整したケール等を押出機で加熱することによって、ケール等の色味が改善するものと推測される。
【0035】
詳細な機構は不明であるが、含水率を調整したケール等を押出機で加圧して押し出す際に大気圧下に戻すことによって、ケール等が膨化し、ケール等が多孔質化し、ケール等を水に懸濁した際に沈降しにくくなると推測される。特に、乾燥させたケール等を原料として使用する際には、乾燥によりケール等が縮んでいる。そのようなケール等の含水率を調整し、押出機で加圧することによって、ケール等が膨化する作用により、沈降特性が顕著に改良されると推測される。
【0036】
押出機から押し出されたケール等は、公知の乾燥機等により、含水率を低下させて、固形状のケール等にする。これにより、加工ケール等の一般生菌や大腸菌、黴などが発生し、品質が損なわれることを防止することができる。必要に応じて、ケール等を粉砕してもよい。ケール等を粉砕する場合は、例えば、粉砕と乾燥とを同時に行うことができる装置を利用して、粉砕と乾燥とを同時に行ってもよい。また、例えば、ケール等を乾燥する前に、口金から押し出されたケール等を成形用のメッシュを通過させることにより顆粒状にし、その後、乾燥させてもよい。また、押し出されたケール等を顆粒状に成形するには、例えば、押出機の口金を顆粒状に成形するのに適した形状にしてもよい。また、例えば、押出機の口金から押し出されたケール等を塊状にして、乾燥させてもよい。
【0037】
押出機から押し出されたケール等を乾燥する際の含水率は、特に限定されないが、0.5~15質量%とすることが好ましく、0.5~12質量%とすることがさらに好ましい。ここでいう含水率とは、上記の同様の方法で測定したものである。
【0038】
固形状という場合、上述のように、粉末状、顆粒状、粉粒体状、塊状、又は棒状などの形態が含まれる。
【0039】
ケール等の剤型を粉末状にする場合は、特に限定されないが、例えば、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定した粒度の累積分布(D50、メジアン径)が、1~300μmの範囲になるように粉砕することができる。
【0040】
上記の製造方法によれば、例えば、以下のような固形状の加工ケール又は加工大麦若葉を得ることができる。上記の製造方法を実施した後におけるケール又は大麦若葉のL、a*、b*、又はc*の値から、押出機で加圧及び加熱していないケール又は大麦若葉のL、a*、b*、又はc*の値を差し引いて求めた、ΔL、Δa*、Δb*、又はΔc*が以下の範囲であるケール又は大麦若葉の粉末である。一例としては、例えば、ΔL*は、-1.1~-20であり、Δa*は、-0.3~-4.5であり、Δb*は、0.4~15であり、又はΔc*は、0.5~15である。他の例として、例えば、ΔL*は、-1.7~-15であり、Δa*は、-0.5~-4.5であり、Δb*は、0.7~9であり、又はΔc*は、0.8~9である。
【0041】
*については、値が大きいほど明るさが大きくなる。a*については、値が大きいほど赤が強く、値が小さいほど緑が強くなる。b*については、値が大きいほど黄が強く、値が小さいほど青が強くなる。c*については、値が大きいほど彩度が大きくなる。上記の固形状の加工ケール等は、処理前のケール等に比して、緑と黄が強くなり、明るさが小さくなり、鮮やかさが増し、肉眼で観察すると、黄緑に深みが増す。
【0042】
色差(ΔE*ab)については、特に限定されないが、例えば、加工前と加工後との差で、1.0~20.0程度の色差が生じさせることができる。
【0043】
上記の方法で製造した固形状のケール等は、水(白湯などの加熱した水を含む)、牛乳、アルコール、又は豆乳などの任意の飲料に懸濁することで、青汁用の原料として好適に使用することができる。また、ホウレンソウ、ブロッコリー、又はニンジンなど水分が多い任意の野菜や任意の果物と共にミキサーやジューサーで撹拌することで、スムージーの原料として好適に使用することができる。また、前記固形状のケール等は、水(白湯などの加熱した水を含む)、牛乳、又は豆乳などの任意の飲料と服用する散剤の原料として好適に使用することができる。また、前記固形状のケール等は、錠剤、顆粒、又は細剤の原料として好適に使用することができる。錠剤、顆粒、又は細剤に加工するに際して、前記固形状のケール等に添加物を配合せずにそのまま成形してもよいし、乳糖、麦芽糖、セルロース、又はデキストリンなどの賦形剤、結着剤、崩壊剤、又は増粘剤を加えて成型してよい。
【0044】
また、前記粒状の成型物は、ハードカプセル剤に充填してもよい。また、前記固形状のケール等を液状物又は食用油などに混ぜて柔軟性を有するカプセルの剤皮に充填してソフトカプセル剤としてもよい。前記固形状のケール等は、ゼリー、飴、ドレッシング、スープ、ふりかけ、製菓、製パン、洋菓子、和菓子、非常食、災害食、病院食、介護食、嚥下食、又は離乳食などの加工食品の原料として使用してもよい。
【0045】
上記の方法で製造した固形状のケール等は、従来の青汁に比して、液分と固形分とが分離しにくい。上記の方法で製造した固形状のケール等は、例えば、固形状のケール又は大麦若葉3gと蒸留水97gとを混合して、液量を100mlにして撹拌して青汁を調製し、撹拌終了後30分が経過した時点において、色が薄い上層と上層に比して色の濃い下層との境界線が55~98mlの範囲に位置する。前記色は、固形分であるケールの分散状態を反映したものである。なお、色の濃い下層は、上層に比して、より多くの加工ケール又は加工大麦若葉を含む。
【0046】
加工ケール等の粒度特性は、特に限定されないが、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定される粒度の累積分布(D50、メジアン径)が、例えば、1~300μmとしてもよいし、12~300μmとしてもよいし、20~300μmとしてもよい。上記の方法で製造した固形状のケール等は、従来の青汁に比して、液分と固形分とが分離しにくいという特性を有する。粒径を大きくしても沈降しにいので、粒径を大きくすれば、粉砕に要する労力を低減することが可能である。一方で、粒径を小さくすればより沈降しにくくなるので、粒径を小さくすることでより沈降しにくくすることが可能である。
【実施例0047】
以下、本発明の実施例を挙げて具体的に説明する。以下に示す実施例は、本発明の限られた実施例に過ぎず、本発明の技術的範囲は、以下に示す実施例に限定されるべきものではない。
【0048】
[実施例1](加熱条件134℃、ケール1)
生のケールを乾燥させたケール(ケール1)の破砕物と、水とを撹拌機で混合して、含水率が28~30質量%となるように含水率を調整した。撹拌機の撹拌子により、3ミリから10ミリ程度の大きさであった茶葉状のケールは、概ね2ミリ程度の大きさに破砕された。
【0049】
含水率を調整したケールを、押出機へ投入して、加圧下で加熱処理を行った。押出機は、2軸式のものであり、シリンダー内に2本のスクリューを内蔵する。スクリューを同方向に回転させることにより、含水率を調整したケールが混錬されながらシリンダー内を搬送される。シリンダー内を搬送される過程で、ケールには熱と剪断力と圧力とが作用する。ケールは、シリンダーの周囲に配された複数の加熱ジャケットによって、加熱される。
【0050】
含水率を調整したケールは、40℃から134℃の範囲で加熱温度が設定された複数の加熱ジャケットによって加熱され、絶対圧で2.0MPаに達するまで加圧される。複数の加熱ジャケットは、押出機の投入口の温度が低くなり、その後最高温度に達するように温度を設定した。圧力は、押出口の直前において測定した数値である。含水率を調整したケールを押出機に投入して排出されるまでの時間は約20秒である。
【0051】
押出機の口金から固形の棒状の成型物が連続的に吐出される。押し出された前記成型物を、カッターでミートボールの大きさ程度になるように順次切断する。切断した前記混合物を粉砕乾燥機に投入し、含水率が8質量%以下となるように、乾燥を行うと共に粉砕を行い、篩にかけて分級して、実施例1に係る加工ケールの粉末を得た。
【0052】
[比較例1](粉砕乾燥のみ、ケール1)
乾燥したケールの破砕物を撹拌機で破砕及び撹拌しながら含水率を調整する工程と、含水率を調整したケールを押出機で処理する工程とを省略し、茶葉状のケールの破砕物をそのまま粉砕乾燥機で粉砕及び乾燥して含水率を8質量%以下にした点以外は、実施例1と同様の方法により、比較例1に係る加工ケールの粉末を得た。
【0053】
【表1】
【0054】
[実施例2](加熱条件150℃、ケール1)
押出機で加熱する際に到達する最高温度を150℃に変更した点以外は、実施例1と同様の方法により、実施例2に係る加工ケール粉末を得た。
【0055】
[比較例2](粉砕乾燥のみ、ケール1)
比較例1と同様の方法により、比較例2に係る加工ケール粉末を得た。
【0056】
【表2】
【0057】
[実施例3](加熱条件134℃、ケール2)
実施例1の方法で使用したケールとは、産地が異なるケール(ケール2)を原料として使用した点以外は、実施例1と同様の方法により、実施例3に係る加工ケールの粉末を得た。
【0058】
[比較例3](粉砕乾燥のみ、ケール2)
原料として使用するケールを実施例3と同様のものに変更した点以外は、比較例1と同様の方法により、比較例3に係る加工ケールの粉末を得た。
【0059】
【表3】
【0060】
[実施例4](加熱条件150℃、ケール2)
原料として使用するケールを実施例3と同様のものに変更した点以外は、実施例2と同様の方法により、実施例4に係る加工ケールの粉末を得た。
【0061】
[比較例4](粉砕乾燥のみ、ケール2)
原料として使用するケールを実施例3と同様のものに変更した点以外は、比較例1と同様の方法により、比較例4に係る加工ケールの粉末を得た。
【0062】
【表4】
【0063】
[実施例5](121℃、大麦若葉)
原料として大麦若葉を使用し、押出機で加熱する際の最高到達温度を121℃にした点以外は、実施例1と同様の方法により、実施例5に係る加工大麦若葉の粉末を得た。
【0064】
[比較例5](粉砕乾燥のみ、大麦若葉)
原料として使用するケールを実施例5と同様の大麦若葉に変更し、比較例1と同様の方法により、比較例5に係る加工大麦若葉の粉末を得た。
【0065】
【表5】
【0066】
[色彩色差分析]
上記の各実施例に係る粉末と、各比較例に係る粉末とについて、コニカミノルタ社製の色彩色差計(CR-400)を使用して、CIE L*a*b*(CIELAB)に準拠して、L(明度)、a(+赤~-緑)、b(+黄~-青)、c(彩度)、h(色相)を測定した。なお、上記の各粉末は同条件で粉砕した。結果を以下の表1ないし表5に示す。結果は、3回の測定値の平均値である。各表における、ΔE*ab、ΔL*、Δa*、Δb*、又はΔc*は、表左端の比較例における該当項目の値を基準とするものであり、表左端の比較例における該当項目の値を減じることにより求めた差である。なお、ΔE*abは、次式により求めた。
ΔE*ab=[(ΔL*+(Δa*+(Δb*1/2
【0067】
各実施例の方法を実施する前の比較例に係る粉体に比して、各実施例の方法を実施した後の粉体では、ΔE*ab、ΔL*、Δa*、Δb*、又はΔc*の値が、表1ないし表5にまとめたように、変化していた。肉眼による観察では、各実施例の方法を実施した後の粉体は、各実施例の方法を実施する前の比較例に係る粉体に比して、色が深みのある鮮やかな黄緑に変化していた。
【0068】
[沈降試験]
各実施例に係る粉末3gと、25℃に調整した蒸留水97gをビーカーに入れて、複数回にわたりスプーンで粉末が蒸留水に均一に攪拌された状態となるまで撹拌した。撹拌した液体を100mlのメスシンダーに投入し、静置した。投入後30分が経過した時点において、粉体の沈降に伴って青汁の色味が薄くなった上層と、粉体を多量に含有し上層に比して色の濃い下層との界面(境界線)の容量値(ml)を測定した。図1に、上層と下層との界面を撮影した写真を一例として示す。下層の体積が大きいほど、粉体が沈降しにくく、粉体が蒸留水に分散した状態をより長い時間維持することができることを示す。図1の写真では、左側のサンプルは沈降が速く、右側のサンプルは沈降が遅い。
【0069】
表1ないし表5にまとめたように、各実施例の方法で得た粉体を用いて調整した青汁では、比較例に係る粉体で調整した青汁に比較して、30分経過後における下層の体積がより大きく、長時間にわたって粉体が蒸留水に分散した状態が維持されやすいことがわかる。このことから、粉体を蒸留水に懸濁して、青汁を調製した後において、青汁の品質に変化が少ないことがわかる。粉体を野菜ジュースの原料として使用した場合にも、粉体の経時的な沈降が生じにくくなる。
【0070】
[粒度特性]
各実施例、各比較例の粉体について、レーザー回析・散乱式粒度分布測定装置LMS-300(株式会社セイシン企業社製)を使用して、粒度分布を以下の測定条件で測定し、その値を基にして、粒度の累積分布(D50、メジアン径)を求めた。試料は、超音波分散槽に入れて、分散した試料にレーザー光線を照射し、その回折(散乱)を測定した。結果は、表1ないし表5に示した。
[測定条件]
分散溶媒:メタノール
超音波:15秒
分散時間:30秒
濃度上限:2500mV
濃度下限:500mV
試料密度:1.0g/cm3
屈折率:1.33
測定時間:5秒間
【0071】
[官能評価]
<概要>
実施例3に係る加工ケールの粉末と、実施例5に係る加工大麦若葉の粉末とについて、以下の方法により、複数名のパネルによる官能評価試験を実施した。官能評価試験は、実施例3については比較例3に係る加工ケールの粉末を比較対照用のブランクとして使用し、実施例5については比較例5に係る加工大麦若葉の粉末を比較対照用のブランクとして使用した。官能評価では、実施例3に係る加工ケールの粉末、実施例5に係る加工大麦若葉の粉末、ブランクに係る粉末を、ミネラルウォーター(サントリーフーズ株式会社、南アルプスの天然水(登録商標))に分散させて、3質量%の青汁を調製し、これを各パネルに供した。詳細な試験法は、以下の通りである。
【0072】
官能評価は、ブランクを0点に設定し、青臭さ、苦味、えぐみ、口ざわり、飲みやすさ、及びうま味の計6項目の評価項目について、それぞれ-2点から+2点までの5段階で各パネルに評価させた。ケールに関する試験のパネル構成は、表6に記載の通りであり、官能評価の結果は表7に記載の通りである。大麦若葉に関する試験のパネル構成は、表8に記載の通りであり、官能評価の結果は表9に記載の通りである。各項目の評価基準と点数は、以下の通りである。
【0073】
<青臭さ>
「青臭さ」は、飲用時における青々とした草のような香りが鼻に抜ける、または、未熟なトマトを切った時の香りの強さである。下記の5段階評価法により評価した。
2:かなり弱い
1:やや弱い
0:変わらない
-1:やや強い
-2:かなり強い
【0074】
<苦味>
「苦味」は、飲用時におけるゴーヤなど舌を刺激するような苦い味のことである。また、苦味に持続性はなく一瞬で消える。下記の5段階評価法で評価した。
2:かなり弱い
1:やや弱い
0:変わらない
-1:やや強い
-2:かなり強い
【0075】
<えぐみ>
「えぐみ」は、飲用時における舌にまとわりつくような不快な苦い味のことである。苦みとの違いは、舌にまとわりつきゴワゴワする感覚がある。また、えぐみには持続性がある。下記の5段階評価法で評価した。
2:かなり弱い
1:やや弱い
0:変わらない
-1:やや強い
-2:かなり強い
【0076】
<口ざわり>
「口ざわり」は、飲用物を口に入れた時の感覚である。心地よい感覚があれば口当たりがよい、不快な感覚があれば口ざわりが悪い。本実施例では下記の5段階評価法で評価した。
2:かなり良い
1:やや良い
0:変わらない
-1:やや悪い
-2:かなり悪い
【0077】
<飲み易さ>
「飲み易さ」は、飲用物を飲んだ時、飲み易いか飲みにくいかを比較することである。下記の5段階評価法で評価した。
2:かなり良い
1:やや良い
0:変わらない
-1:やや悪い
-2:かなり悪い
【0078】
<うま味>
「うま味」は、飲み物を口に含んで舌の上で転がしたとき、舌で感じるうま味の強弱のことである。本実施例では、下記の5段階評価法で評価した。
2:かなり強い
1:やや強い
0:変わらない
-1:やや弱い
-2:かなり弱い
【0079】
上記の官能試験は、(1)サンプルの提示、(2)官能評価項目のすり合わせ、(3)試し評価・校正、(4)本評価の順に行った。
【0080】
(1)サンプルの提示
官能評価におけるパネルのバイアス(偏り)を排除し、評価の精度を高めるために、サンプル提供を次の通りに設定した。25℃にしたサンプル40mlを、プラスチック製カップ(容量60ml)に注ぎ、ラップで蓋をした後、各パネルに提示した。
【0081】
(2)官能評価項目のすり合わせ
評価を実施するにあたり、パネル全体で討議し、官能検査用語の定義を示し、各評価項目の特性に対してすり合わせを行って、各パネルが共通認識を持つようにした。
【0082】
(3)試し評価・校正
実施例3に係る加工ケール粉末、実施例5に係る加工大麦若葉の粉末、それぞれの比較対照用に用意したブランクを各パネルに供し、各評価項目について強度評価の訓練を行った。訓練に際しては、パネル自身の評価結果を伝えることで、繰り返し評価における再現性を確認させた。
【0083】
(4)本評価
上述した訓練により各パネルの強度評価の妥当性を担保した後、各実施例又は各ブランクの粉末で調整したサンプルを用いて官能評価を行った。各官能評価は調製した飲用物を口に含み飲み込むことで評価した。
【0084】
【表6】
【0085】
【表7】
【0086】
【表8】
【0087】
【表9】
【0088】
表7及び表9には、各評価項目の平均値をまとめ、さらに、統計的仮説検定のt検定を行った。なお、表中における「no data」は、パネルが該当項目について明確に判断できなかったため、回答を差し控えたことを示す。表7に示した各項目の平均値から明らかなように、実施例3の加工ケールの粉末を用いて調整した青汁は、ブランクの青汁に比して、食味が改善されており、商品価値が高まっていることがわかる。同様に、表9に示した各項目の平均値から明らかなように、実施例5の加工大麦若葉の粉末を用いて調整した青汁は、ブランクの青汁に比して、食味が改善されており、商品価値が高まっていることがわかる。

図1