(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102388
(43)【公開日】2023-07-25
(54)【発明の名称】防水措置構造、及び、防水措置構造に用いられる止水体
(51)【国際特許分類】
F16L 5/02 20060101AFI20230718BHJP
F16L 5/00 20060101ALI20230718BHJP
F16J 15/14 20060101ALI20230718BHJP
F16J 15/10 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
F16L5/02 J
F16L5/00 J
F16L5/00 P
F16L5/00 Q
F16J15/14 B
F16J15/10 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022002842
(22)【出願日】2022-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】390009999
【氏名又は名称】日動電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】蘆田 洋
【テーマコード(参考)】
3J040
【Fターム(参考)】
3J040AA01
3J040AA15
3J040AA17
3J040BA01
3J040EA16
3J040EA22
3J040FA08
3J040HA21
(57)【要約】
【課題】長尺体と筒状体との間からの水の侵入を適切に防止することができる防水処置構造を提供する。
【解決手段】区画体1の貫通孔2に挿入配設される円筒状のスリーブ材3と、スリーブ材3の一端部に取り付けられ、スリーブ材3から導出される長尺体4を囲繞する可撓性及び防水性を有する防水筒状体5と、防水筒状体5と長尺体4との重合部位において防水筒状体5の内面側に配置され、伸縮性及び止水性を有すると共にスリーブ材3から導出される長尺体4を挿通する挿通部を備える止水体Bと、防水筒状体5と長尺体4との重合部位を防水筒状体5の外面側から止水体Bを収縮させる状態で緊締する緊締材7と、が設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
区画体の貫通孔に挿入配設される円筒状のスリーブ材と、
前記スリーブ材の一端部に取り付けられ、前記スリーブ材から導出される長尺体を囲繞する可撓性及び防水性を有する防水筒状体と、
前記防水筒状体と前記長尺体との重合部位において前記防水筒状体の内面側に配置され、伸縮性及び止水性を有すると共に前記スリーブ材から導出される前記長尺体が挿通される挿通部を備える止水体と、
前記防水筒状体と前記長尺体との重合部位を前記防水筒状体の外面側から前記止水体を収縮させる状態で緊締する緊締材と、が設けられている防水措置構造。
【請求項2】
請求項1記載の防水措置構造に用いられる前記止水体であって、
外形形状が円柱状に形成された止水体本体に、前記止水体本体の軸心方向に沿って貫通する円孔状の前記挿通部と、前記止水体本体の外縁から前記挿通部に亘って形成された孔径変更用切れ込みとを備え、
前記孔径変更用切れ込みは、前記止水体本体の径方向の外縁側に行くに従って前記止水体本体の周方向にずれる形状に形成されている止水体。
【請求項3】
前記止水体本体は、前記止水体本体の外縁から前記止水体本体の中心に向けて、前記挿通部に接続されない状態で挿通用切れ込みを備えている請求項2に記載の止水体。
【請求項4】
前記止水体本体は、前記止水体本体の前記軸心方向の端部が前記軸心方向の中央部より前記径方向に大きい鼓形状に形成されている請求項2又は3に記載の止水体。
【請求項5】
前記止水体本体は、前記挿通部を複数備えている請求項2から4の何れか一項に記載の止水体。
【請求項6】
前記挿通部を塞ぐように前記挿通部内に設置する塞ぎ部材が着脱自在に備えられている請求項5に記載の止水体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、区画体の貫通孔に挿入配設される円筒状のスリーブ材と、スリーブ材の一端部に取り付けられ、スリーブ材から導出される長尺体を囲繞する可撓性及び防水性を有する防水筒状体とが設けられている防水措置構造、及び、その防水措置構造に用いられる止水体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、区画体(1)の貫通孔(2)に挿入配設される円筒状のスリーブ材(3)と、スリーブ材(3)の一端部に取り付けられ、スリーブ材(3)から導出される長尺体(4)を囲繞する可撓性を有する筒状体(耐熱筒状体5)と、筒状体(5)と長尺体(4)との重合部位を筒状体(5)の外面側から緊締する緊締材(B)と、が設けられている措置構造が示されている。この特許文献1の措置構造では、筒状体(5)を耐熱性を有する耐熱筒状体(5)としており、防火措置構造としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した措置構造では、筒状体の先端部において筒状体の外面側から緊締材によって緊締することで筒状体の先端部からの水の侵入がある程度防止されているが、可撓性を有する長尺体がよれる等によって長尺体と筒状体との間に隙間が形成される場合があり、このように形成された隙間から水が侵入する虞があった。
【0005】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、長尺体と筒状体との間からの水の侵入を適切に防止することができる防水処置構造及びその防水措置構造に用いられる止水体を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1特徴構成は、区画体の貫通孔に挿入配設される円筒状のスリーブ材と、
前記スリーブ材の一端部に取り付けられ、前記スリーブ材から導出される長尺体を囲繞する可撓性及び防水性を有する防水筒状体と、
前記防水筒状体と前記長尺体との重合部位において前記防水筒状体の内面側に配置され、伸縮性及び止水性を有すると共に前記スリーブ材から導出される前記長尺体が挿通される挿通部を備える止水体と、
前記防水筒状体と前記長尺体との重合部位を前記防水筒状体の外面側から前記止水体を収縮させる状態で緊締する緊締材と、が設けられている点にある。
【0007】
本構成によれば、防水筒状体と長尺体との間に形成される隙間を止水性を有する止水体で塞ぐことができると共に、防水筒状体と長尺体との重合部位において防水筒状体の外面側から緊締材によって緊締することによって防水筒状体と共に止水体を縮径変形させることで、防水筒状体と止水体との間や長尺体と止水体との間に隙間が存在してた場合でも、その隙間を止水体で塞ぐことができ、防水筒状体と長尺体との間から水が侵入することを適切に防止できる。
【0008】
本発明の第2特徴構成は、防水措置構造に用いられる前記止水体であって、
外形形状が円柱状に形成された止水体本体に、前記止水体本体の軸心方向に沿って貫通する円孔状の前記挿通部と、前記止水体本体の外縁から前記挿通部に亘って形成された孔径変更用切れ込みとを備え、
前記孔径変更用切れ込みは、前記止水体本体の径方向の外縁側に行くに従って前記止水体本体の周方向にずれる形状に形成されている点にある。
【0009】
本構成によれば、止水体本体における孔径変更用切れ込みの両側にある部分を孔径変更用切れ込みに沿って互いに逆方向にずらすことで、挿通部の形状を円形又はそれに近い形状に維持しながら挿通部の大きさを変更することができる。そのため、挿通部に挿通させる長尺体の太さが変わった場合でも挿通部の内形を長尺体の太さに対応したものに変更させることができるため、様々な太さの長尺体を挿通部に挿通させることができながら長尺体と止水体本体との間から水が侵入することを適切に防止できる。
【0010】
本発明の第3特徴構成は、前記止水体本体は、前記止水体本体の外縁から前記止水体本体の中心に向けて、前記挿通部に接続されない状態で挿通用切れ込みを備えている点にある。
【0011】
本構成によれば、長尺体が、挿通部に挿通させた場合に長尺体と止水体本体との間に隙間ができ易い比較的細い場合でも、その細い長尺体を挿通用切れ込み内に挿通させることで、細い長尺体と止水体本体との間に形成される隙間を小さくすることができる。そのため、細い長尺体を止水体本体に挿通させながら細い長尺体と止水体本体との間から水が侵入することを適切に防止することができる。
また、挿通用切れ込みは挿通部に接続されていないため、細い長尺体を挿通用切れ込みの外縁側の端部から差し込んで挟み込むことで、細い長尺体を容易に挿通用切れ込み内に位置させることができるため細い長尺体を挿通用切れ込み内に設置し易くなる。
【0012】
本発明の第4特徴構成は、前記止水体本体は、前記止水体本体の前記軸心方向の端部が前記軸心方向の中央部より前記径方向に大きい鼓形状に形成されている点にある。
【0013】
本構成によれば、止水体本体における軸心方向の中央部を径方向の外側から緊締材によって緊締して収縮させることで、その緊結材に対して軸心方向の両側には止水本体部の比較的大径の端部が存在しているため、その止水体本体の端部によって緊締材が軸心方向に位置ずれすることを防止できる。
【0014】
本発明の第5特徴構成は、前記止水体本体は、前記挿通部を複数備えている点にある。
【0015】
本構成によれば、長尺体が複数本ある場合でも、その複数本の長尺体を別々の挿通部に挿通させることで、長尺体同士の間に形成される隅間も止水体本体によって塞ぐことができる。
【0016】
本発明の第6特徴構成は、前記挿通部を塞ぐように前記挿通部内に設置する塞ぎ部材が着脱自在に備えられている点にある。
【0017】
本構成によれば、複数の挿通部のうちの長尺体を挿通させない挿通部に塞ぎ部材を装着することで、長尺体を挿通させていない挿通部から水が侵入することを防止し易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図4】挿通部から塞ぎ部材を取り外した止水具の正面図
【
図9】(a)挿通部の通常状態、(b)挿通部の縮径状態、(c)挿通部の拡径状態
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る防水措置構造、及び、防水措置構造に用いられる止水体について説明する。
図1及び
図2に示すように、防水措置構造Aには、区画体1(
図2参照)の貫通孔2に挿入配設される円筒状のスリーブ材3と、スリーブ材3の一端部に取り付けられ、スリーブ材3から導出される長尺体4を囲繞する可撓性及び防水性を有する防水筒状体5と、が設けられている。更に、防水措置構造Aには、防水筒状体5と長尺体4との重合部位において防水筒状体5の内面側に配置され、伸縮性及び止水性を有すると共にスリーブ材3から導出される長尺体4が挿通される挿通部12を備える止水体Bと、防水筒状体5と長尺体4との重合部位を防水筒状体5の外面側から止水体Bを収縮させる状態で緊締する緊締材7と、が設けられている。
【0020】
区画体1は、建築物内の空間を区画形成する防火性の構造体であり、例えば、空間を鉛直方向に区画形成する防火壁部(
図2参照)、又は、空間を水平方向に区画形成する防火床部(又は防火天井部)である。また、区画体1の構成材としては、例えば、鉄筋コンクリート(RC)、軽量気泡コンクリート(ALC)、石膏ボード等を例示することができる。
区画体1の貫通孔2に挿通される長尺体4としては、給排水用配管、配線・配管用等のさや管4A(
図2、
図6から
図8、
図10参照)、空調装置用の冷媒配管、電源線やリモコン線等の電気ケーブル4B(
図6から
図8参照)、光ファイバーケーブル、同軸ケーブル、LANケーブル、制御ケーブル等を例示することができる。また、これらの長尺体4の断面形状としては、円形や長円形等がある。
【0021】
本実施形態では、
図2に示すように、区画体1に、区画体1の壁厚み方向に貫通する円孔状の貫通孔2が形成され、この貫通孔2における壁厚み方向の両側端部にある開口部の夫々に対して措置具Dが装着されている。一対の措置具Dの夫々は、スリーブ材3とそのスリーブ材3に取り付けられた防水筒状体5とを備えている。また、一対の措置具Dのうちの一方(
図2における左側の措置具D)には、止水体Bが装着されており、防水措置構造Aとなってる。
【0022】
次に、防水措置構造Aの各構成について説明するが、
図2に示すように区画体1に防水措置構造Aを適用した状態に基づいて方向を定義して説明する。つまり、止水体Bや措置具Dの軸心に沿う方向と区画体1の壁厚み方向とは同じ方向としており、以下、単に軸心方向Lと称する。また、軸心方向Lにおいて、スリーブ材3に対して止水体Bが存在する側を外側L1と称する。
【0023】
まず、スリーブ材3について詳述する。
図1及び
図2に示すように、スリーブ材3は、区画体1の貫通孔2に挿入されるスリーブ本体3Bとスリーブ材3の外側L1の端部に備えられた鍔部3Aとを備えている。
鍔部3Aは、貫通孔2の内径よりも大径で、且つ、区画体1における貫通孔2の開口周縁に外側L1から当接可能な円形状に形成されている。
スリーブ本体3Bは、貫通孔2における軸心方向Lの長さの半分以下の長さを有し、且つ、貫通孔2の内径よりも僅かに小なる外径に形成された円筒状に形成されている。また、このスリーブ本体3Bの軸心方向Lの一箇所又は複数箇所(本実施形態では3箇所)には、貫通孔2の内径よりも大径で、且つ、薄肉の円環状の抜止め突起3Cが一体形成されている。そのため、区画体1の貫通孔2に対してスリーブ材3を押し込み挿入したとき、スリーブ材3の抜止め突起3Cは撓み変形しながら貫通孔2内に入り込み、撓み変形した抜止め突起3Cの先端は貫通孔2の内面に食い込み気味に接触し、スリーブ材3の抜け出しが抑制される。
【0024】
次に、防水筒状体5について詳述する。
防水筒状体5は、可撓性及び防水性を備えたシート材を筒状に形成して、スリーブ材3から外側L1に導出される長尺体4を囲繞可能に構成されている。本実施形態では、防水筒状体5は、可撓性及び防水性を備えた複層構造のアルミ箔ラミネート5Aを筒状に形成して構成されている。具体的には、
図1に示すように、二枚の長方形状のアルミ箔ラミネート5Aを重ね合わせ、その重ね合わされた両アルミ箔ラミネート5Aの長辺側の側縁部分5B同士を気密状態で熱融着により帯状に接着して筒状に構成してある。防水筒状体5は、複層構造のアルミ箔ラミネート5Aによって構成されていることで、可撓性及び防水性に加えて、耐熱性も有している。
そして、筒状に構成したアルミ箔ラミネート5Aをスリーブ材3の鍔部3Aに外装し、アルミ箔ラミネート5Aの筒内面層を構成するポリエチレンフィルムと、ポリエチレン製の鍔部3Aの外周面とを気密状態で熱融着により固着してある。
【0025】
次に、止水体Bについて詳述する。
図2に示すように、止水体Bは、長尺体4を挿通させた状態で防水筒状体5の外側L1の端部内に装着されており、長尺体4と防水筒状体5との間に形成される隙間を塞ぎ、長尺体4と防水筒状体5との間からスリーブ材3内に水が侵入することを防いでいる。そして、
図1、
図3から
図5に示すように、止水体Bは、伸縮性を有すると共に外形形状が円柱状に形成されている。
【0026】
止水体Bは、外形形状が円柱状に形成された止水体本体11に、止水体本体11の軸心方向Lに沿って貫通する円孔状の挿通部12と、止水体本体11の外縁11Aから挿通部12に亘って形成された孔径変更用切れ込み13とを備えている。また、止水体本体11は、止水体本体11の外縁11Aから止水体本体11の中心に向けて挿通部12に接続されない状態で形成された挿通用切れ込み14を備えている。
尚、円孔状とは、円形及びそれに近い形の孔を表しており、円孔状には、円形、楕円形、卵形、長円形、オーバル形、五角形以上の多角形の孔を含んでいる。また同様に、円柱状とは、円柱及びそれに近い形を表しており、端面が上述のような円形及びそれに近い形のものである。
【0027】
図5に示すように、止水体本体11は、小径部11Bと、この小径部11Bより径方向Rに大きい大径部11Cとを備えており、軸心方向Lにおいて径の大きさが異なる部分を有する形状に形成されている。
本実施形態では、止水体本体11の軸心方向Lの中央部が小径部11Bとなり、止水体本体11の軸心方向Lの両側端部が大径部11Cとなっており、軸心方向Lの中央部から端部に向けて漸次大径となる形状となっている。つまり、止水体本体11は、止水体本体11の軸心方向Lの端部が軸心方向Lの中央部より径方向Rに大きい鼓形状に形成されている。
【0028】
図3及び
図4に示すように、止水体本体11は、挿通部12を複数備えている。本実施形態では、止水体本体11は、挿通部12を3つ備えており、それら3つの挿通部12は、周方向Cに沿って等間隔に並ぶ状態で備えられている。そして、複数の挿通部12の夫々に対して孔径変更用切れ込み13が形成されており、本実施形態では、孔径変更用切れ込み13は3箇所に形成されている。また、挿通用切れ込み14は、周方向Cに並ぶ挿通部12の間の夫々に形成されており、本実施形態では、挿通用切れ込み14は3箇所に形成されている。尚、
図3は、挿通部12に後述する塞ぎ部材15を装着した状態を示しており、
図4は、挿通部12から塞ぎ部材15から取り外した状態を示している。
【0029】
孔径変更用切れ込み13は、止水体本体11の外縁側R1に行くに従って止水体本体11の周方向Cにずれる形状に形成されている。
本実施形態では、孔径変更用切れ込み13は、止水体本体11の外縁側R1に行くに従って周方向Cの一方側C1に漸次ずれる円弧状に形成されている。説明を加えると、孔径変更用切れ込み13は、曲率半径が挿通部12の内縁12Aの曲率半径より大きい円弧に形成されている。そして、孔径変更用切れ込み13の径方向Rの中心側R2の端部が、挿通部12の内縁12Aの周方向Cの他方側C2の端部に対して接線方向から接続されている。また、孔径変更用切れ込み13の径方向Rの外縁側R1の端部が、止水体本体11の外縁11Aに対して周方向Cの他方側C2の角度が鋭角となるように当該外縁11Aに接続されている。
【0030】
このように、止水体本体11における挿通部12より外縁側R1が孔径変更用切れ込み13によって分割されているため、止水体本体11の外縁側R1を通して長尺体4を挿通部12に挿通させることができ、長尺体4を挿通部12に挿通させ易くなっている。
また、止水体本体11における孔径変更用切れ込み13の両側にある部分を孔径変更用切れ込み13に沿って互いに逆方向にずらすことで、挿通部12の形状を円形又はそれに近い形状に維持しながら挿通部12の大きさを変更することができる。
具体的には、
図9(a)に示す通常状態から、
図9(b)に示す縮径状態のように、孔径変更用切れ込み13の周方向Cの一方側C1の部分を周方向Cの他方側C2の部分に対して径方向Rの中心側R2に移動させ、孔径変更用切れ込み13の周方向Cの一方側C1の部分を挿通部12の内面に重ならせることで、挿通部12を小さくできる。
また、
図9(a)に示す状態から、
図9(c)に示す拡径状態のように、孔径変更用切れ込み13の周方向Cの一方側C1の部分を周方向Cの他方側C2の部分に対して径方向Rの中心側R2に移動させ、孔径変更用切れ込み13の周方向Cの他方側C2の部分によって挿通部12の内面を形成させることで、挿通部12を大きくできる。尚、この場合、孔径変更用切れ込み13の周方向Cの一方側C2の部分によって止水体本体の外面の一部が形成されるため、見かけ上、孔径変更用切れ込み13は短くなる。
そのため、挿通部12に挿通させる長尺体4の太さが変わった場合でも挿通部12の大きさを長尺体4の太さに対応した大きさに変更させることができるため、様々な太さの長尺体4を挿通部12に挿通させることができながら長尺体4と止水体本体11との間から水が侵入することを適切に防止できる。
【0031】
図3及び
図4に示すように、挿通用切れ込み14は、径方向Rに沿って直線状に形成されている。
本実施形態では、周方向Cに隣り合う2つの挿通部12の間に形成されている。そして、挿通用切れ込み14の径方向Rの外縁側R1の端部が、止水体本体11の外縁11Aに対して法線方向から接続されている。また、挿通用切れ込み14の径方向Rの中心側R2の端部は、挿通部12に接続されておらず、周方向Cに隣り合う2つの挿通部12の間に位置している。
【0032】
図6から
図8に示すように、挿通部12に挿通させるには細い長尺体4を挿通用切れ込み14に挿通させることで、その細い長尺体4と止水体本体11との間に形成される隙間を小さくした状態で長尺体4を止水体本体11に挿通させることができる。そのため、細い長尺体4を止水体本体11に挿通させながら細い長尺体4と止水体本体11との間から水が侵入することを適切に防止することができる。
また、挿通用切れ込み14は挿通部12に接続されていないため、細い長尺体4を挿通用切れ込み14の外縁側R1の端部から差し込んで挟み込むことで、細い長尺体4を容易に挿通用切れ込み14内に位置させることができるため挿通用切れ込み14内に設置し易くなる。
【0033】
図3に示すように、止水体Bは、止水体本体11の挿通部12を塞ぐように挿通部12内に設置する塞ぎ部材15を着脱自在に備えている。つまり、塞ぎ部材15は、止水体本体11の厚みと同じ厚みを有する円柱状に形成されており、止水体本体11の挿通部12に長尺体4を挿通させる場合は、挿通部12内から塞ぎ部材15を外して挿通部12を開口させることで挿通部12に長尺体4を挿通させることができる。また、挿通部12に長尺体4を挿通させない場合は、挿通部12内に塞ぎ部材15を装着することで、挿通部12を塞ぎ部材15によって塞ぐことができる。 そのため、複数の挿通部12のうちに長尺体4を挿通させない挿通部12がある場合に、その挿通部12に塞ぎ部材15を装着することで、長尺体4を挿通させていない挿通部12から水が侵入することを防止し易くなる。
【0034】
止水体B(止水体本体11及び塞ぎ部材15)は、水を通さない材質であって弾性変形可能な材質で構成されている。本実施形態では、止水体Bは、独立気泡構造体又は半連続気泡構造のゴム発泡体や樹脂発泡体によって構成されている。具体的には、止水体Bは、半連続気泡構造のEPDM発泡体によって構成されている。このように、止水体Bは、止水体本体11及び塞ぎ部材15を水を通さない材質で構成することで止水性を有しており、止水体本体11及び塞ぎ部材15を弾性変形可能な材質で構成することで伸縮性を有している。また、本実施形態では、プレス加工による打ち抜きによって板状の発泡体から止水体本体11を形成すると共に止水体本体11に挿通部12を形成し、挿通部12を形成することで生じた発泡体を塞ぎ部材15としている。止水体本体11と塞ぎ部材15とは完全に分離していてもよいが、プレス加工において止水体本体11と塞ぎ部材15とが一部繋がっている状態で形成し、止水体本体11を使用する際に止水体本体11から塞ぎ部材15を分離させるようにしてもよい。
【0035】
図2に示すように、防水筒状体5と複数本の長尺体4との重合部位のうち、スリーブ材3の鍔部3Aに近い第1設定緊締位置P1と防水筒状体5の他端側に偏倚した第2設定緊締位置P2との二箇所を、それぞれ緊締材7で緊締されている。
特に、
図2及び
図10における左側の措置具D(防水措置構造A)の第2設定緊締位置P2では、
図10に示すように防水筒状体5内に止水体本体11を挿入した状態で、
図2に示すように緊締材7で緊締されている。
【0036】
本実施形態では、緊締材7として、樹脂製の結束バンド(例えば、市販されているインシュロック(登録商標))を用いている。
この緊締材7は、
図1に示すように、一側面に多数の係合凹部を等ピッチで形成してあるバンド部7Aの基端部に、当該バンド部7Aの先端側から挿入可能で、且つ、挿入部位の係合凹部と係合してバンド本体の抜け出しを阻止する係合爪を備えた筒状係止部7Bを一体形成して構成されている。
【0037】
図6から
図8には、止水体Bの第1使用状態から第3使用状態を例示している。尚、
図5から
図7に示す何れの使用状態でも、緊締材7を更に緊締し、止水体Bを一層収径変形させることが可能である。
【0038】
図6に示す第1使用状態では、2つの挿通部12を利用して2本の長尺体4(円形のさや管4A)が挿通されていると共に、1つの挿通用切れ込み14を利用して1本の長尺体4(長円形の電気ケーブル4B)が挿通させている。そして、長尺体4が挿通されていない1つの挿通部12には塞ぎ部材15が装着されている。この第1使用状態は、例えば、給湯・給水用のものであり、3本の長尺体4として、給湯用のさや管4A、給水用のさや管4A、電気ケーブル4Bが止水体本体11に挿通されている。尚、第1使用状態では、2本のさや管4Aとして、その外径が挿通部12の孔径と同じものを用いている。これら2本のさや管4Aは、
図9(a)に示すような通常状態の挿通部12に挿通されている。
【0039】
図7に示す第2使用状態では、第1使用状態と同様に、2つの挿通部12を利用して2本の長尺体4(円形のさや管4A)が挿通されていると共に、1つの挿通用切れ込み14を利用して1本の長尺体4(長円形の電気ケーブル4B)が挿通させているが、2本のさや管4Aのうちの右下のさや管4Aとして、外径が挿通部12の孔径より小さいものを用いている。この外径が小さいさや管4Aは、
図9(b)に示すような縮径状態の挿通部12に挿通されている。
【0040】
図8に示す第3使用状態では、第1使用状態と同様に、2つの挿通部12を利用して2本の長尺体4(円形のさや管4A)が挿通されていると共に、1つの挿通用切れ込み14を利用して1本の長尺体4(長円形の電気ケーブル4B)が挿通させているが、2本のさや管4Aのうちの右下のさや管4Aとして、外形が挿通部12の孔径より大きいものを用いている。この外径が大きいさや管4Aは、
図9(c)に示すような拡径状態の挿通部12に挿通されている。
【0041】
そして、
図2に示すように、防水筒状体5と長尺体4との重合部位のうち、緊締材7で緊締処理された長手方向の二箇所(第1設定緊締位置P1及び第2設定緊締位置P2)において、防水筒状体5と長尺体4との間の隙間及び複数本の長尺体4の隣接間に形成される隙間を減少することができる。
特に、防水措置構造Aにおける緊締材7で緊締処理された第2設定緊締位置P2においては、防水筒状体5と共に止水体Bが長尺体4の外形や防水筒状体5の内形に沿った形状に縮径変形して、この止水体Bによって防水筒状体5と止水体Bとの間や長尺体4と止水体Bとの間に存在している隙間を塞ぐことができ、防水筒状体5と長尺体4との間から水が侵入することを適切に防止できる。
【0042】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0043】
(1)上記実施形態では、上記実施形態では、円柱形状の止水体本体11として、止水体本体11を鼓形状とする例を説明した。しかし、円柱形状の止水体本体11としては、円柱状や、それに近い形状であればよく、円錐台形状等でもよい。
【0044】
(2)上記実施形態では、孔径変更用切れ込み13を、円弧に形成する例を説明した。しかし、このような構成に限定されない。例えば、孔径変更用切れ込み13を、直線状に形成してもよく、また、径方向Rの外縁側R1に行くに従って曲率半径を大きくした円弧状又は曲率半径を小さくした円弧状(渦巻状)に形成してもよい。
【0045】
(3)上記実施形態では、挿通部12を3つ備えている構成を例として説明した。しかし、このような構成に限定されない。例えば、挿通部12を、1つ又は2つ、或いは、4つ以上備える構成としてもよい。
【0046】
(4)上記実施形態では、孔径変更用切れ込み13を複数の挿通部12の夫々に対して備える構成を例として説明した。しかし、このような構成に限定されない。例えば、孔径変更用切れ込み13を複数の挿通部12の一部に対してのみ備える、又は、挿通部12の孔径を変形させる必要がない場合は孔径変更用切れ込み13を備えない構成としてもよい。
【0047】
(5)上記実施形態では、挿通用切れ込み14を3箇所に備える構成を例として説明した。しかし、このような構成に限定されない。例えば、挿通用切れ込み14を1箇所又は2箇所、或いは、4箇所以上に備える構成としてもよく、細い長尺体4を挿通させない場合に挿通用切れ込み14を備えない構成としてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 区画体
2 貫通孔
3 スリーブ材
4 長尺体
5 防水筒状体
7 緊締材
11 止水体本体
11A 外縁
12 挿通部
13 孔径変更用切れ込み
14 挿通用切れ込み
15 塞ぎ部材
A 防水措置構造
B 止水体
C 周方向
L 軸心方向
R 径方向
R1 外縁側