(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102419
(43)【公開日】2023-07-25
(54)【発明の名称】地中変位計とトンネル函体群の変位計測方法
(51)【国際特許分類】
G01C 15/00 20060101AFI20230718BHJP
E21D 9/093 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
G01C15/00 102Z
G01C15/00 104A
E21D9/093 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022002889
(22)【出願日】2022-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591284601
【氏名又は名称】株式会社演算工房
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 正嘉
(72)【発明者】
【氏名】林 稔
(72)【発明者】
【氏名】松村 匡樹
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054AA02
2D054AA05
2D054AC01
2D054GA04
2D054GA62
2D054GA65
2D054GA82
(57)【要約】
【課題】地中変位計の一端を固定点に設置することを不要にしながら、計測精度の高い変位計測を実現する地中変位計と、この地中変位計を用いたトンネル函体群の変位計測方法を提供する。
【解決手段】地中変位計40は、屈曲自在で、その軸方向Lに複数の三軸重力加速度センサ15を備えている変位計本体10と、変位計本体10の軸方向Lの一端側に取付けられている取付治具20と、取付治具20に設置されている測量用ターゲット30とを有する。取付治具20は、変位計本体10に着脱自在に取り付けられる取り付け部21と、取り付け部21から軸方向Lに延びている延長部22と、延長部22の一端に設けられて、測量用ターゲット30が着脱自在に設置されるターゲット設置部23とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈曲自在で、その軸方向に複数の三軸重力加速度センサを備えている、変位計本体と、
前記変位計本体の軸方向の一端側に取付けられている、取付治具と、
前記取付治具に設置されている、測量用ターゲットと、を有することを特徴とする、地中変位計。
【請求項2】
前記取付治具は、
前記変位計本体に着脱自在に取り付けられる、取り付け部と、
前記取り付け部から前記軸方向に延びている、延長部と、
前記延長部の一端に設けられて、前記測量用ターゲットが着脱自在に設置される、ターゲット設置部とを有していることを特徴とする、請求項1に記載の地中変位計。
【請求項3】
前記変位計本体に対する前記取付治具の取付位置と、前記測量用ターゲットの中心位置との間の少なくとも相対距離が既知となるようにして、前記取付治具を介して前記地中変位計に対して前記測量用ターゲットが設置されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の地中変位計。
【請求項4】
前記測量用ターゲットが、以下の形態のいずれか一種である、
(1)異なる方向から照射されるレーザーに対応する二つの再帰反射材からなるリフレクターが、共通の回動軸に対して回動自在に取り付けられている、第一形態、
(2)ホルダの上に、ガラス製で湾曲状の再帰反射材からなるリフレクターが露出している、第二形態、
(3)測量用プリズムである、第三形態、であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の地中変位計。
【請求項5】
地中において、複数のトンネル函体が連接されることにより形成されるトンネル函体群の変位計測方法であって、
前記トンネル函体群の内部には、屈曲自在でその軸方向に複数の三軸重力加速度センサを備えている地中変位計を設置し、該トンネル函体群の先頭側に位置する一つもしくは複数のトンネル函体、もしくは、該トンネル函体群の後方側に位置する一つもしくは複数のトンネル函体の内部にある前記地中変位計の一端側に、取付治具を介して測量用ターゲットを設置する、A工程と、
測量用基準ターゲットを備えている発進基地からトラバース測量により、前記測量用ターゲットの三次元座標を求める、B工程と、有していることを特徴とする、トンネル函体群の変位計測方法。
【請求項6】
前記トンネル函体群は、その全延長が鉛直面内もしくは水平面内に延設する縦断線形が円形のトンネルであり、
前記A工程では、前記トンネル函体群を形成する各トンネル函体のうち、前記円形の径方向内側の側面もしくは径方向外側の側面に沿って前記地中変位計を設置することを特徴とする、請求項5に記載のトンネル函体群の変位計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中変位計とトンネル函体群の変位計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地滑り地帯や護岸、橋梁、トンネル、鉄道、ダム、山留壁等、様々な構造物や地盤の変位計測が、地中変位計等を用いて行われている。地中変位計は、例えば所定長さのセグメントやパイプが相互に屈曲自在に接続されることによって形成されており、各セグメントには傾斜センサ等が内蔵されている。
従来の地中変位計を用いた変位計測方法は、例えば地中変位計の一端を、計測対象地盤等の所定深度まで埋設して固定点とし、固定点を基準として、地中変位計の各途中点や他端の変位量を傾斜センサ等による測定値に基づいて特定する方法により行われている。すなわち、変位計測に際して固定点を設けることが必須となっていることから、例えば地中の深部に固定点がある場合は、地中変位計の一端を固定点に設置するまでの作業に手間と時間を要するといった課題がある。
また、地中変位計の備える各傾斜センサ等の位置する各計測点に関する計測値は、計測前の初期値からの相対変位量であり、各計測点の三次元座標を特定するものではない。そのため、各計測点の変位後の三次元座標は、固定点等の基準点の三次元座標に関する計測精度の影響を受けることになり、各計測点の計測精度に関して改善の余地がある。
【0003】
以上のことから、地中変位計の一端を固定点に設置することを不要にしながら、計測精度の高い変位計測を実現する地中変位計が望まれる。
【0004】
ここで、特許文献1には、地中変位測定点のボーリング孔に挿入されて、地中の変位を求めるようにした地中変位測定装置が提案されている。この地中変位測定装置は、連結杆部とセンサ杆部が連結されることにより構成され、センサ杆部には、傾斜によるギャップの変化から角度を検出するセンサユニットと、センサユニットの検出信号を電気信号に変換する変換器ユニットとを備えている。連結杆部とセンサ杆部とが連結されて単位長さの地中変位計とし、この地中変位計が測定範囲に応じて複数本連結される。
【0005】
一方、特許文献2には、地中変位計測システムが提案されている。この地中変位計測システムは、地盤内に穿孔された直径100mm程の孔に直径75mm程の円筒状の地中埋設管が埋設され、地中埋設管の外周面にはその中心軸回り90度ごとに板状の突設部が設けられ、地中埋設管の外周面に設けられた複数の突設部上には、地中埋設管の軸方向に沿って光ファイバセンサがそれぞれ配設されることにより構成されている。地中埋設管の内部には、車輪を備えた傾斜計がワイヤで懸吊され、地中埋設管の軸方向に沿って地中埋設管の内部に設けられた溝を車輪が走行することにより、地中埋設管の内部を傾斜計が移動できるようになっており、地中埋設管と地盤との間には充填材が充填されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10-185633号公報
【特許文献2】特開2005-61985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の地中変位測定装置と特許文献2に記載の地中変位計測システムはいずれも、複数のセンサのそれぞれの初期値からの相対変位を計測するものであることから、上記するように各計測点の計測精度に改善の余地がある技術であることに変わりはない。
【0008】
本発明は、地中変位計の一端を固定点に設置することを不要にしながら、計測精度の高い変位計測を実現する地中変位計と、この地中変位計を用いたトンネル函体群の変位計測方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成すべく、本発明による地中変位計の一態様は、
屈曲自在で、その軸方向に複数の三軸重力加速度センサを備えている、変位計本体と、
前記変位計本体の軸方向の一端側に取付けられている、取付治具と、
前記取付治具に設置されている、測量用ターゲットと、を有することを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、屈曲自在で複数の三軸重力加速度センサを備えている変位計本体の一端側に取付治具が取付けられ、取付治具に対して測量用ターゲットが設置されていることにより、変位計本体の他端を固定点に設置することなく、変位計本体の一端にある測量用ターゲットの三次元座標を測定することが可能になる。
また、この測量用ターゲットの三次元座標と、複数の三軸重力加速度センサの計測値等に基づき、変位計本体の途中位置の三次元座標を高精度に特定することができる。
例えば、トンネル周囲や地滑り地帯等における地盤変状計測においては、地中変位計の他端を地中の所定深度における固定点に設置することなく、当該地中変位計の他端を任意の深度位置に設置し、地中変位計の一端を例えば地上に位置合わせし、この一端に取付治具を介して測量用ターゲットを設置しておくことで、地上において変位後の測量用ターゲットの三次元座標を容易に計測することができる。また、この三次元座標に基づいて、地中変位計の途中の計測点における三次元座標を特定することができる。
【0011】
また、本発明による地中変位計の他の態様において、
前記取付治具は、
前記変位計本体に着脱自在に取り付けられる、取り付け部と、
前記取り付け部から前記軸方向に延びている、延長部と、
前記延長部の一端に設けられて、前記測量用ターゲットが着脱自在に設置される、ターゲット設置部とを有していることを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、取付治具が取り付け部を備えていることで変位計本体への取り付け性が良好になり、取付治具がターゲット設置部を備えていることで測量用ターゲットの取り付け性が良好になる。さらに、取付治具が変位計本体の軸方向に延びている延長部を備えていることで、地盤の変位計測等においては、延長部を地表面から上方に突出させて、測量用ターゲットを地上の計測可能な高さレベルに設置することが可能になる。
【0013】
また、本発明による地中変位計の他の態様は、
前記変位計本体に対する前記取付治具の取付位置と、前記測量用ターゲットの中心位置との間の少なくとも相対距離が既知となるようにして、前記取付治具を介して前記地中変位計に対して前記測量用ターゲットが設置されていることを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、変位計本体に対する取付治具の取付位置と、測量用ターゲットの中心位置との間の少なくとも相対距離が既知であることにより、測量用ターゲットの三次元座標が測定されると、この三次元座標と各三軸重力加速度センサの計測値等とに基づいて、各三軸重力加速度センサの三次元座標を高精度に特定することができる。
ここで、「少なくとも相対距離が既知」とは、相対距離のみが既知であることの他に、取付治具及び測量用ターゲットが地中変位計の軸方向からずれている場合は、さらにこの軸方向からの相対角度も含まれる。
【0015】
また、本発明による地中変位計の他の態様は、
前記測量用ターゲットが、以下の形態のいずれか一種である、
(1)異なる方向から照射されるレーザーに対応する二つの再帰反射材からなるリフレクターが、共通の回動軸に対して回動自在に取り付けられている、第一形態、
(2)ホルダの上に、ガラス製で湾曲状の再帰反射材からなるリフレクターが露出している、第二形態、
(3)測量用プリズムである、第三形態、であることを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、地中変位計として、二つの再帰反射材が共通の回動軸に対して回動自在に取り付けられているリフレクター(第一形態)や、ガラス製で湾曲状の再帰反射材からなるリフレクター(第二形態)、一般の測量用プリズム(第三形態)のいずれか一種が適用されることにより、計測対象に応じた計測可能性と計測効率性のある測量用ターゲットを選定することができる。
例えば、第一形態や第二形態を適用することにより、曲線区間を備えたトンネル函体群の縦断線形(の変位計測)の中でも、曲線区間における効率的な計測を実現できる。
【0017】
また、本発明によるトンネル函体群の変位計測方法の一態様は、
地中において、複数のトンネル函体が連接されることにより形成されるトンネル函体群の変位計測方法であって、
前記トンネル函体群の内部には、屈曲自在でその軸方向に複数の三軸重力加速度センサを備えている地中変位計を設置し、該トンネル函体群の先頭側に位置する一つもしくは複数のトンネル函体、もしくは、該トンネル函体群の後方側に位置する一つもしくは複数のトンネル函体の内部にある前記地中変位計の一端側に、取付治具を介して測量用ターゲットを設置する、A工程と、
測量用基準ターゲットを備えている発進基地からトラバース測量により、前記測量用ターゲットの三次元座標を求める、B工程と、有していることを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、トンネル函体群の内部に、屈曲自在で複数の三軸重力加速度センサを備えている地中変位計を設置し、トンネル函体群の先頭側もしくは後方側に位置するトンネル函体の内部にある地中変位計の一端側に、取付治具を介して測量用ターゲットを設置しておき、トラバース測量によって測量用ターゲットの三次元座標を求めることにより、トンネル函体群の複数の測定点の三次元座標を高精度に測定することができる。
【0019】
ここで、「トンネル函体群の先頭側に位置する一つもしくは複数のトンネル函体の内部にある地中変位計の一端側に、取付治具を介して測量用ターゲットを設置する」形態は、例えば推進工法を適用してトンネル函体群を施工する際の計測方法である。先頭側に位置する一つもしくは複数のトンネル函体には、先頭に位置する一つのトンネル函体、先頭に位置する二つのトンネル函体等や、例えば先頭から二つ目のトンネル函体や三つ目のトンネル函体等を意味している。
掘進機の後方に位置してトンネル函体群の先頭に位置する例えば一つのトンネル函体の内部の地中変位計に測量用ターゲットを設置すると、推進工法において先頭のトンネル函体は常にトンネル函体群の先頭に位置していることから、トンネル函体群の先頭のトンネル函体の推進に応じた三次元座標を随時計測することができる。また、トンネル函体群の途中に位置するトンネル函体や後方に位置するトンネル函体の各三次元座標も、先頭に位置するトンネル函体と同様に随時計測することができる。
【0020】
また、「トンネル函体群の後方側に位置する一つもしくは複数のトンネル函体の内部にある地中変位計の一端側に、取付治具を介して測量用ターゲットを設置する」形態は、例えばシールド工法を適用してトンネル函体群を施工する際の計測方法である。
本態様の変位計測方法は、水平面内や傾斜面内等で直線の縦断線形を有するトンネル函体群の変位計測に適用できることは勿論であるが、屈曲自在な地中変位計を利用することから、曲線区間を備えたトンネル函体群の変位計測に好適である。
この変位計測方法において適用される測量用ターゲットには、上記するように、二つの再帰反射材が共通の回動軸に対して回動自在に取り付けられているリフレクター(第一形態)や、ガラス製で湾曲状の再帰反射材からなるリフレクター(第二形態)、一般の測量用プリズム(第三形態)のいずれか一種を適用できるが、曲線区間を備えたトンネル函体群の変位計測においては、第一形態もしくは第二形態の適用が望ましい。
【0021】
また、本発明によるトンネル函体群の変位計測方法の他の態様において、
前記トンネル函体群は、その全延長が鉛直面内もしくは水平面内に延設する縦断線形が円形のトンネルであり、
前記A工程では、前記トンネル函体群を形成する各トンネル函体のうち、前記円形の径方向内側の側面もしくは径方向外側の側面に沿って前記地中変位計を設置することを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、トンネル函体群が、鉛直面内もしくは水平面内に延設する縦断線形が円形のトンネルである場合、すなわち、トンネル函体群の全区間が曲線区間であって変位計測の難易度が極めて高いトンネル函体群に対しても、高精度で効率的な変位計測を実現できる。また、「各トンネル函体の円形の径方向内側の側面に沿って地中変位計を設置する」ことにより、地中変位計の延長を可及的に短くしながら各トンネル函体の地中変位を計測でき、「各トンネル函体の円形の径方向外側の側面に沿って地中変位計を設置する」ことにより、三次元レーザー測定器による視準範囲を可及的に長くすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の地中変位計とトンネル函体群の変位計測方法によれば、地中変位計の一端を固定点に設置することを不要にしながら、計測精度の高い変位計測を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施形態に係る地中変位計の一例を示す図である。
【
図3】実施形態に係る変位計測方法により変位計測される、トンネル函体群の一例を示す図である。
【
図4】掘進機とトンネル函体群の先頭側に位置する複数のトンネル函体と、トンネル函体群の内部に配設されている地中変位計を示す図である。
【
図5】実施形態に係る変位計測方法の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、実施形態に係る地中変位計とトンネル函体群の変位計測方法について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0026】
[実施形態に係る地中変位計]
はじめに、
図1及び
図2を参照して、実施形態に係る地中変位計の一例について説明する。ここで、
図1は、実施形態に係る地中変位計の一例を示す図であり、
図2は、測量用ターゲットの他の例を示す図である。
【0027】
地中変位計40は、屈曲自在で、その軸方向Lに複数(図示例は四つ)の三軸重力加速度センサ15を備えている変位計本体10と、変位計本体10の軸方向Lの一端側に取付けられている取付治具20と、取付治具20に設置されている測量用ターゲット30とを有する。ここで、変位計本体10の軸方向Lはその長手方向と同義である。
【0028】
変位計本体10は、複数(図示例は四つ)のセンサセグメント11を有し、隣接するセンサセグメント11同士が関節12を介してX1方向に屈曲自在に接続されることにより構成されている。ここで、関節12は、例えば三軸方向に回転もしくは回動自在である、多関節である。各センサセグメント11の先端の内部に三軸重力加速度センサ15が内蔵されている。
【0029】
ここで、三軸重力加速度センサ15は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems:微小電気機械システム)等のセンサである。
【0030】
取付治具20は、変位計本体10に着脱自在に取り付けられる取り付け部21と、取り付け部21から軸方向Lに延びている延長部22と、延長部22の一端に設けられて、測量用ターゲット30が着脱自在に設置されるターゲット設置部23とを有している。
【0031】
取り付け部21は、例えば二つの半割部材21aが不図示の蝶番を介して回動自在に形成されており、二つの半割部材21aの内部にセンサセグメント11の端部を収容し、二つの半割部材21aを回動させて双方の端部同士を固定することにより、取り付け部21がセンサセグメント11の側面を挟持しながら固定される。
【0032】
延長部22は、センサセグメント11の軸方向Lに沿って延設する部材であり、端部に位置するセンサセグメント11から所定の離間を置いた位置に測量用ターゲット30を位置合わせするための部材である。例えば、地中変位計40が地盤に埋設されて使用される場合、地表近傍にセンサセグメント11の端部が配設され、そこから延長部22の長さだけ地上に突出した位置に、測量用ターゲット30を位置合わせすることができる。
【0033】
ターゲット設置部23は、測量用ターゲット30が固定される部材であり、固定対象の測量用ターゲットに応じて様々な形態が適用される。
【0034】
例えば、屈曲自在な変位計本体10を不図示のリールに巻装しておき、リールから変位計本体10を巻き出しながらその延長を延ばすことができる。以下で説明するトンネル函体群の変位計測方法では、掘進機の発進基地にリールを設置しておき、トンネル函体群の施工に応じて変位計本体10を順次巻き出しながらその長さを延ばして使用する。
【0035】
図1に示す測量用ターゲット30は、ホルダ31の上に、ガラス製で湾曲状(図示例は半球状)の再帰反射材からなるリフレクター32が露出しているターゲット(第二形態)である。再帰反射材からなるリフレクター32は、三次元レーザー測定器60(
図5参照)から照射されたレーザーLSの照射角度θ1と同じ反射角度θ1で、レーザーLSを三次元レーザー測定器60に反射させる。三次元レーザー測定器60は自身の三次元座標が特定されており、三次元レーザー測定器60がリフレクター32にて反射したレーザーLSを受光し、リフレクター32までの距離計測、水平角計測、及び高度角計測(測距と測角)を行うことができる。ここで、三次元レーザー測定器60には、トータルステーションも含まれる。
【0036】
また、
図1に示すように、湾曲状(半球状)の再帰反射材からなるリフレクター32を適用することにより、様々な方向からレーザーLSを入射させ、入射角度と同じ角度で反射させることができるため、一般的な測量用ターゲットのように、計測者が三次元レーザー測定器に対して測量用ターゲットを正対させる操作を不要にでき、さらには、以下で説明する曲線区間を備えたトンネル函体群の変位計測のように、曲線区間において、リフレクター32を挟む位置にある二台の三次元レーザー測定器にて効率的な変位計測を行うことができる。
【0037】
リフレクター32の中心位置と、センサセグメント11の端部との間の相対距離tは既知となっている。そのため、三次元レーザー測定器にてリフレクター32の中心位置を視準して三次元座標を測定すると、この基点の三次元座標と、各センサセグメント11がその先端に内蔵している三軸重力加速度センサ15による計測値と、センサセグメント11の長さとに基づいて、各センサセグメント11の先端における三次元座標が特定される。
【0038】
従って、センサセグメント11の長さがトンネル函体の長さに設定されている場合は、掘進方向の先頭に位置するトンネル函体の先端にある測量用ターゲット30の三次元座標が測定され、この三次元座標と各トンネル函体の先端にある三軸重力加速度センサ15の計測値とセンサセグメント11(トンネル函体)の長さに基づいて、各トンネル函体の地中における三次元座標(絶対座標)が特定され、各トンネル函体の地中変位量が特定される。
【0039】
ここで、取付治具20の長手方向と変位計本体10の軸方向Lが一致していない場合は、軸方向Lに対する取付治具20の相対角度も既知としておき、ともに既知である相対距離tと相対角度とに基づいて、リフレクター32の三次元座標から取付治具20の取り付けられているセンサセグメント11の先端の三次元座標を特定することが可能になる。
【0040】
図2に、他の形態の測量用ターゲット50を示している。この測量用ターゲット50は、異なる方向から照射されるレーザーLSに対応する二つの再帰反射材からなるリフレクター53,54(プリズム)が、共通の回動軸51に対してX2方向に回動自在に取り付けられているターゲット(第一形態)である。
【0041】
測量用ターゲット30と同様に、測量用ターゲット50も例えば二台の三次元レーザー測定器を使って測量を行う際に視準するためのターゲットである。測量用ターゲット50が備えるリフレクター53,54は、それぞれ対応する三次元レーザー測定器に正対されるように、回動軸51を中心として所望に回動される。
【0042】
回動軸51は、環状のリング体52の径方向に架け渡されており、回動軸51の両端が不図示の留め金具を介してリング体52に固定される。リング体52には、連結部55を介してホルダ56が取り付けられる。ホルダ56は、測量用ターゲット50を取付治具のターゲット設置部に設置するための部材である。
【0043】
三次元レーザー測定器による測量にて視準される再帰反射材からなるリフレクター53,54は、三次元レーザー測定器から照射されたレーザーを反射させるガラス製の反射体であり、入射角θ2で入射したレーザーを平行に反射光として戻すためのコーナーキューブリフレクタを備えている。
【0044】
測量用ターゲットとしては、一般に使用される測量用プリズム(第三形態で図示略)が適用されてもよいが、以下で説明する曲線区間を備えたトンネル函体群の変位計測には、計測可能性と計測効率性の観点から測量用ターゲット30,50のいずれか一方が適用されるのがよい。
【0045】
図示する地中変位計40によれば、屈曲自在で複数の三軸重力加速度センサ15を備えている変位計本体10の一端側に取付治具20が取付けられ、取付治具20に対して測量用ターゲット30が設置されていることにより、変位計本体10の他端を固定点に設置することなく、変位計本体10の一端にある測量用ターゲット30の三次元座標を測定することができる。また、この測量用ターゲット30の三次元座標と、複数の三軸重力加速度センサ15の計測値やセンサセグメント11の長さ等に基づき、変位計本体10の途中位置の三次元座標を高精度に特定することができる。
【0046】
[実施形態に係るトンネル函体群の変位計測方法]
次に、
図3乃至
図5を参照して、実施形態に係るトンネル函体群の変位計測方法の一例について説明する。ここで、
図3は、実施形態に係る変位計測方法により変位計測されるトンネル函体群の一例を示す図である。また、
図4は、掘進機とトンネル函体群の先頭側に位置する複数のトンネル函体と、トンネル函体群の内部に配設されている地中変位計を示す図であり、
図5は、実施形態に係る変位計測方法の一例を説明する図である。
【0047】
図3に示す例では、地中Gにおいて施工済みの本線トンネルHT(例えば本線シールドトンネル)と、その側方にあるランプトンネルRT(例えばランプシールドトンネル)とを地中で接続して拡幅するに当たり、ランプトンネルRTを利用してその下方に鉛直に延設する発進基地となる立坑Tを施工する。
【0048】
立坑Tは、鉛直方向に所定間隔で配設される切梁Kにより、土圧や土水圧を支保しながら所定深度まで造成され、立坑Tの下方に反力架台Sを設置し、反力架台Sに対して元押しジャッキBJを備える元押し装置BDを設置する。
【0049】
ランプトンネルRTから立坑Tを介して、元押し装置BDの前方にトンネル函体80(推進函体)が順次吊り下ろされ、推進方向前方に位置する掘進機70の後方において複数のトンネル函体80が連接され、複数のトンネル函体80により形成されるトンネル函体群90が地中GをY方向に推進されることにより、鉛直面内にある円周トンネル100を施工する。
【0050】
この円周トンネル100の施工に際して、トンネル函体群90の延伸に応じて随時各トンネル函体80の地中変位を計測する際に、実施形態に係る変位計測方法を適用する。
【0051】
ここで、
図3に示す円周トンネル100の施工に際しては、連接される複数のトンネル函体群90が一定の長さとなった段階で、その後方に中押しジャッキNJが設置され、元押しジャッキBJと中押しジャッキNJの双方のジャッキ推力によりトンネル函体群90が推進されるようになっている。図示例では、三基の中押しジャッキNJの前後に、トンネル函体群90により形成される四つの計測単位AR1,AR2,AR3,AR4を設け、各計測単位AR1,AR2,AR3,AR4において固有の計測を行うようにしている。
【0052】
掘進機70に近い計測単位AR1は、トンネル函体群90の中でも推進方向前方に位置する計測単位である。計測単位AR1から後方側に順に、計測単位AR2,AR3,AR4が続く。
【0053】
図4に示すように、掘進機70は、前胴71と後胴72を備え、双方の間に不図示の推進ジャッキ(掘進機自身の推進の他にも、掘進機の方向制御を行うジャッキ)を備えている。掘進機70の正面視形状は、例えば横長の矩形であり、その前面には、例えば複数のカッタヘッド73が配設されている。
【0054】
各カッタヘッド73には、その側方からコピーカッタ74が出入り自在に内蔵されており、余掘り部Eの造成の際には、各カッタヘッド73からコピーカッタ74が外側へ張り出し、カッタヘッド73の回転に応じて回転するコピーカッタ74により、余掘り部Eの造成が行われる。この際、コピーカッタ74の張り出し長の調整により、余掘り部Eの大きさを所望に調整できる。
【0055】
カッタヘッド73が回転しながら掘進機70が計画縦断線形に沿って掘進方向に掘進する過程で、掘進機70と後続のトンネル函体群90の側方には、所定幅の余掘り部Eが造成され、掘進機70から余掘り部Eに対して滑材Uが充填される。正面視矩形の掘進機70の周囲には、所定幅の矩形枠状の余掘り部Eが造成されることになる。
【0056】
計測単位AR1の先頭に位置するトンネル函体80から後方の各トンネル函体80に亘り、それらの内部には変位計本体10が設置されており、各トンネル函体80の長さとセンサセグメント11の長さが同一もしくは略同一であり、トンネル函体80のリング継手81と地中変位計40の関節12が位置合わせされている。
【0057】
計測単位AR1の先頭に位置するトンネル函体80の端部には、取付治具20を介して測量用ターゲット30が位置合わせされている。
【0058】
図3に示す立坑Tから掘進機70が地中Gに掘進し、後続のトンネル函体80が順次押し出されて一定長さのトンネル函体群90が形成された段階で、トンネル函体群90の変位計測を実施する。
【0059】
立坑Tの下端には、測量用ターゲット30E(測量用基準ターゲットの一例)が設置されており、この測量用ターゲット30Eの三次元座標は、上方のランプトンネルRTからの計測により測定されている。ここで、測量用ターゲット30Eには、上記する第一形態乃至第三形態のいずれの測量用ターゲットが適用されてもよい。
【0060】
当初、地中Gには、
図3における計測単位AR1のみしか形成されていない。計測単位AR1が地中Gに形成される途中段階(例えば計測単位AR1の半分の長さ範囲が施工された段階)において、トンネル函体群90の内部に三次元レーザー測定器60Aを設置する。また、先頭のトンネル函体80の端部には、取付治具20を介して測量用ターゲット30が設置されている(以上、A工程)。
【0061】
そこで、トラバース測量により、立坑Tにあって三次元座標が既知の測量用ターゲット30Eを三次元レーザー測定器60Aにて視準した後、掘進方向前方にある測量用ターゲット30を視準して測距と測角を行うことにより、三次元レーザー測定器60にて測量用ターゲット30の三次元座標(
図4におけるP1(x1,y1,z1))を測定する(以上、B工程)。
【0062】
また、測量用ターゲット30の三次元座標が測定されることにより、この三次元座標と、後続の各トンネル函体80の先端にある三軸重力加速度センサ15による計測値やセンサセグメント11の長さ(トンネル函体80の長さ)に基づいて、各トンネル函体80の先端の三次元座標(
図4において、先頭から二基目の先端位置の三次元座標P2(x2,y、z2)や三基目の先端位置の三次元座標P3(x3,y3,z3)等)を特定することができる。
【0063】
計測単位AR1の推進が進行し、計測単位AR1を構成するトンネル函体群90が地中Gに形成された段階では、三次元レーザー測定器60Aにて視準可能な後方位置において、別途の測量用ターゲット30Aを設置する。
【0064】
計測単位AR1に次いで計測単位AR2が地中Gに形成される過程で、計測単位AR2を構成するトンネル函体群90の内部にある三次元レーザー測定器60Bによってトラバース測量を行い、立坑Tにある測量用ターゲット30Eを視準した後、掘進方向前方の計測単位AR1にある測量用ターゲット30Aを視準する。この視準により、三次元レーザー測定器60Bにて測量用ターゲット30Aの三次元座標が測定される。
【0065】
次に、計測単位AR1にある三次元レーザー測定器60Aにて、あらためてトラバース測量を行う。具体的には、三次元レーザー測定器60Bにて三次元座標が測定された測量用ターゲット30Aを視準した後、掘進方向前方にある測量用ターゲット30を視準して、トンネル函体群90の先頭にある測量用ターゲット30の三次元座標をあらためて測定する。
【0066】
推進工法では、推進の過程で掘進機70が蛇行し、施工されるトンネル函体群90の縦断線形が計画線形からずれる地中変位が生じ得る。そこで、この変位計測では、長さが随時延長されるトンネル函体群90の後方に測量用ターゲット30を随時設置しながら、発進基地T側にある三次元レーザー測定器60にて発進基地Tにある測量用ターゲット30Eを視準し、次いで前方にある他の測量用ターゲット30を視準するトラバース測量を行って測量用ターゲット30の三次元座標を測定する。そして、
図5に示すように、前方にある別途の三次元レーザー測定器60にて同様にトラバース測量を行い、後方にあって三次元座標が既に測定されている測量用ターゲット30を視準した後、トンネル函体群90の先頭のトンネル函体80にある測量用ターゲット30を視準することにより、トンネル函体群90の先頭にある測量用ターゲット30の最新の三次元座標を測定することができる。
【0067】
図3に戻り、計測単位AR2に次いで、計測単位AR3を構成するトンネル函体群90が地中Gに施工される。計測単位AR3の内部には、固有の三次元レーザー測定器60Cと測量用ターゲット30Cが設置される。さらに、計測単位AR3に次いで、計測単位AR4を構成するトンネル函体群90が地中Gに施工される。計測単位AR4の内部には、固有の三次元レーザー測定器60Dと測量用ターゲット30Dが設置される。
【0068】
計測単位AR4の内部のうち、発進基地T側には別途の三次元レーザー測定器60Eも設置され、三次元レーザー測定器60Eによるトラバース測量から順に、三次元レーザー測定器60D,60C,60B,60Aの順にトラバース測量が実行されることで、円周トンネル100の複数の測定位置における地中の三次元座標(絶対座標)が測定され、各測定位置における地中変位量が特定される。
【0069】
図示する変位計測方法によれば、図示例のように曲線区間を有していて難易度が極めて高いトンネル函体群90の変位計測においても、高精度で効率的な変位計測を実現できる。
【0070】
尚、実施形態に係るトンネル函体群の変位計測方法は、図示例のように鉛直面内における円周トンネル100の施工の際の変位計測の他にも、水平面内における円周トンネルや縦断線形が直線のトンネル等、様々な縦断線形のトンネルの施工の際に適用できる。
【0071】
また、実施形態に係るトンネル函体群の変位計測方法は、図示例のように推進工法の他にも、シールド工法を用いたトンネルの施工の際にも適用できる。シールド工法を用いたトンネル施工時の変位計測では、図示例と反対に、トンネル函体群の後方側に位置する一つもしくは複数のトンネル函体の内部にある地中変位計の一端側に、取付治具を介して測量用ターゲットを設置し、トラバース測量を順次行う方法が適用される。
【0072】
上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0073】
10:変位計本体
11:センサセグメント
12:関節
15:三軸重力加速度センサ
20:取付治具
21:取り付け部
22:延長部
23:ターゲット設置部
30、30A,30B,30C,30D,30E:測量用ターゲット(第二形態)
31:ホルダ
32:リフレクター
40:地中変位計
50:測量用ターゲット(第一形態)
51:回動軸
52:リング体
53,54:リフレクター
55:連結部
56:ホルダ
60,60A,60B,60C,60D,60E:三次元レーザー測定器
70:掘進機
71:前胴
72:後胴
73:カッタヘッド
74:コピーカッタ
80:トンネル函体
81:リング継手
90:トンネル函体群
100:円周トンネル
L:軸方向
LS:レーザー
G:地盤(地中)
HT:本線トンネル
RT:ランプトンネル
T:立坑(発進基地)
K:切梁
S:反力架台
BD:元押し装置
BJ:元押しジャッキ
NJ:中押しジャッキ
AR1,AR2,AR3,AR4:計測単位
E:余掘り部
U:滑材