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特開2023-10242駆動制御装置、駆動装置、車輪及び車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023010242
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】駆動制御装置、駆動装置、車輪及び車両
(51)【国際特許分類】
   B60L 15/20 20060101AFI20230113BHJP
   B60B 33/00 20060101ALN20230113BHJP
   B62D 57/02 20060101ALN20230113BHJP
【FI】
B60L15/20 S
B60B33/00 X
B62D57/02 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021114230
(22)【出願日】2021-07-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 智樹
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 紘
(72)【発明者】
【氏名】木島 洸貴
【テーマコード(参考)】
5H125
【Fターム(参考)】
5H125AA11
5H125AB01
5H125BA05
5H125CA01
5H125EE08
(57)【要約】
【課題】複数のモータの間の回転速度の速度差を高精度に維持する。
【解決手段】駆動制御装置は、第1回転対象を回転させる第1モータに対する第1指令値を出力し、第1回転対象とは異なる第2回転対象を回転させる第2モータに対する第2指令値を出力する指令値出力部と、第1指令値と第1指令値に基づいて作動する第1モータの出力軸の回転速度である第1回転速度との差である第1速度偏差、及び、第2指令値と第2指令値に基づいて作動する第2モータの出力軸の回転速度である第2回転速度との差である第2速度偏差を算出する算出部と、第1速度偏差と第2速度偏差とに基づいて参照値を算出し、算出した参照値を用いて第2指令値を補正する補正部とを備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1回転対象を回転させる第1モータに対する第1指令値を出力し、前記第1回転対象とは異なる第2回転対象を回転させる第2モータに対する第2指令値を出力する指令値出力部と、
前記第1指令値と前記第1指令値が入力される場合の前記第1モータの出力軸の回転速度である第1回転速度との差である第1速度偏差、及び、前記第2指令値と前記第2指令値が入力される場合の前記第2モータの出力軸の回転速度である第2回転速度との差である第2速度偏差を算出し、前記第1速度偏差と前記第2速度偏差とに基づいて参照値を算出し、前記参照値を用いて前記第2モータに入力される前記第2指令値を補正する演算部と
を備える駆動制御装置。
【請求項2】
前記第1モータの出力軸は、減速比が第1値である第1減速器を介して前記第1回転対象に接続され、
前記第2モータの出力軸は、減速比が第2値である第2減速器を介して前記第2回転対象に接続され、
前記演算部は、前記第1速度偏差に前記第1値を乗じた値と、前記第2速度偏差に前記第2値を乗じた値との差分を算出し、算出した前記差分を前記第2値で割った値を前記参照値として算出する
請求項1に記載の駆動制御装置。
【請求項3】
前記演算部は、出力された前記第2指令値から前記参照値を差し引くことで前記第2指令値を補正する
請求項2に記載の駆動制御装置。
【請求項4】
第1回転対象を回転させる第1モータと、
前記第1回転対象とは異なる第2回転対象を回転させる第2モータと、
前記第1モータに対する第1指令値を出力し前記第2モータに対する第2指令値を出力する指令値出力部と、前記第1指令値と前記第1指令値が入力される場合の前記第1モータの出力軸の回転速度である第1回転速度との差である第1速度偏差、及び、前記第2指令値と前記第2指令値が入力される場合の前記第2モータの出力軸の回転速度である第2回転速度との差である第2速度偏差を算出し、前記第1速度偏差と前記第2速度偏差とに基づいて参照値を算出し、前記参照値を用いて前記第2モータに入力される前記第2指令値を補正する演算部と、を有する駆動制御装置と
を備える駆動装置。
【請求項5】
前記第1モータが前記第1回転対象を回転させるためのトルクよりも、前記第2モータが前記第2回転対象を回転させるためのトルクの方が小さい
請求項4に記載の駆動装置。
【請求項6】
第1モータにより車軸周りに回転する車輪本体と、
前記車輪本体に平行なアーム回転軸周りに回動可能となるように前記車輪本体に支持され、前記車輪本体の回転に伴って第2モータにより収容位置と突出位置との間で回動するアームと、
前記第1モータに対する第1指令値を出力し前記第2モータに対する第2指令値を出力する指令値出力部と、前記第1指令値と前記第1指令値が入力される場合の前記第1モータの出力軸の回転速度である第1回転速度との差である第1速度偏差、及び、前記第2指令値と前記第2指令値が入力される場合の前記第2モータの出力軸の回転速度である第2回転速度との差である第2速度偏差を算出し、前記第1速度偏差と前記第2速度偏差とに基づいて参照値を算出し、前記参照値を用いて前記第2モータに入力される前記第2指令値を補正する演算部と、を有する駆動制御装置と
を備える車輪。
【請求項7】
第1モータ及び第2モータにより車軸周りに回転可能であり、前記第1モータの回転速度と前記第2モータの回転速度との速度差に応じて前記車軸に直交する旋回軸周りに旋回可能に設けられた車輪本体と、
前記第1モータに対する第1指令値を出力し前記第2モータに対する第2指令値を出力する指令値出力部と、前記第1指令値と前記第1指令値が入力される場合の前記第1モータの出力軸の回転速度である第1回転速度との差である第1速度偏差、及び、前記第2指令値と前記第2指令値が入力される場合の前記第2モータの出力軸の回転速度である第2回転速度との差である第2速度偏差を算出し、前記第1速度偏差と前記第2速度偏差とに基づいて参照値を算出し、前記参照値を用いて前記第2モータに入力される前記第2指令値を補正する演算部と、を有する駆動制御装置と
を備える車輪。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載の車輪と、
前記車輪を前記車軸周りに回転可能に支持する車体と
を備える車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、駆動制御装置、駆動装置、車輪及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のモータを同期制御する駆動制御装置の構成が知られている。例えば、特許文献1には、複数のモータに対して同一の回転速度の指令値が入力される場合に、各モータにおいて出力値が同一となるように制御する駆動制御装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-178510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の駆動制御装置は、複数のモータに対して異なる回転速度の指令値が入力される場合に、当該回転速度の差を維持するように制御する構成とはなっていない。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、複数のモータの間の回転速度の速度差を高精度に維持可能な駆動制御装置、駆動装置、車輪及び車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る駆動制御装置は、第1回転対象を回転させる第1モータに対する第1指令値を出力し、前記第1回転対象とは異なる第2回転対象を回転させる第2モータに対する第2指令値を出力する指令値出力部と、前記第1指令値と前記第1指令値が入力される場合の前記第1モータの出力軸の回転速度である第1回転速度との差である第1速度偏差、及び、前記第2指令値と前記第2指令値が入力される場合の前記第2モータの出力軸の回転速度である第2回転速度との差である第2速度偏差を算出し、前記第1速度偏差と前記第2速度偏差とに基づいて参照値を算出し、前記参照値を用いて前記第2モータに入力される前記第2指令値を補正する演算部とを備える。
【0007】
この構成によれば、第1モータにおける回転速度の速度偏差と第2モータにおける回転速度の速度偏差とに基づいて参照値を算出し、算出した参照値に基づいて第2モータの第2指令値が補正される。このため、例えば外乱の影響を受けた場合等においても、外乱に応じて第2指令値が補正されるため、第1モータの第1回転速度と第2モータの第2回転速度との速度差を精度よく維持可能となる。
【0008】
上記の駆動制御装置において、前記第1モータの出力軸は、減速比が第1値である第1減速器を介して前記第1回転対象に接続され、前記第2モータの出力軸は、減速比が第2値である第2減速器を介して前記第2回転対象に接続され、前記算出部は、前記第1速度偏差に前記第1値を乗じた値と、前記第2速度偏差に前記第2値を乗じた値との差分を算出し、算出した前記差分を前記第2値で割った値を前記参照値として算出する。この構成により、第1モータの出力軸、第2モータの出力軸がそれぞれ第1減速器、第2減速器を介して第1回転対象、第2回転対象に接続される場合、第1減速器、第2減速器の各減速比を参照値に反映させることができる。このため、第2指令値を精度よく補正することが可能となる。
【0009】
上記の駆動制御装置において、前記演算部は、前記指令値出力部から出力された前記第2指令値に前記参照値を加えることで前記第2指令値を補正する。この構成により、第2指令値を精度よく補正することが可能となる。
【0010】
本開示の一態様に係る駆動装置は、第1回転対象を回転させる第1モータと、前記第1回転対象とは異なる第2回転対象を回転させる第2モータと、前記第1モータに対する第1指令値を出力し前記第2モータに対する第2指令値を出力する指令値出力部と、前記第1指令値と前記第1指令値が入力される場合の前記第1モータの出力軸の回転速度である第1回転速度との差である第1速度偏差、及び、前記第2指令値と前記第2指令値が入力される場合の前記第2モータの出力軸の回転速度である第2回転速度との差である第2速度偏差を算出し、前記第1速度偏差と前記第2速度偏差とに基づいて参照値を算出し、前記参照値を用いて前記第2モータに入力される前記第2指令値を補正する演算部と、を有する駆動制御装置とを備える。
【0011】
この構成により、第1モータの第1回転速度と第2モータの第2回転速度との差を高精度に維持可能な駆動装置を提供できる。
【0012】
上記の駆動装置において、前記第1モータが前記第1回転対象を回転させるためのトルクよりも、前記第2モータが前記第2回転対象を回転させるためのトルクの方が小さい。この構成により、発生させるトルクが小さい第2モータの第2指令値を補正することになるため、第1モータを補正する場合に比べて精度よく補正することができる。
【0013】
本開示の一態様に係る車輪は、第1モータにより車軸周りに回転する車輪本体と、前記車輪本体に平行なアーム回転軸周りに回動可能となるように前記車輪本体に支持され、前記車輪本体の回転に伴って第2モータにより収容位置と突出位置との間で回動するアームと、前記第1モータに対する第1指令値を出力し前記第2モータに対する第2指令値を出力する指令値出力部と、前記第1指令値と前記第1指令値が入力される場合の前記第1モータの出力軸の回転速度である第1回転速度との差である第1速度偏差、及び、前記第2指令値と前記第2指令値が入力される場合の前記第2モータの出力軸の回転速度である第2回転速度との差である第2速度偏差を算出し、前記第1速度偏差と前記第2速度偏差とに基づいて参照値を算出し、前記参照値を用いて前記第2モータに入力される前記第2指令値を補正する演算部と、を有する駆動制御装置とを備える。
【0014】
この構成により、車輪本体及びアームの少なくとも一方が外乱等の影響を受ける場合においても、第1モータと第2モータとの間の回転速度の速度差を高精度に維持可能となるため、回転時の安定性を維持することができる。
【0015】
本開示の一態様に係る車輪は、第1モータ及び第2モータにより車軸周りに回転可能であり、前記第1モータの回転速度と前記第2モータの回転速度との速度差に応じて前記車軸に直交する旋回軸周りに旋回可能に設けられた車輪本体と、前記第1モータに対する第1指令値を出力し前記第2モータに対する第2指令値を出力する指令値出力部と、前記第1指令値と前記第1指令値が入力される場合の前記第1モータの出力軸の回転速度である第1回転速度との差である第1速度偏差、及び、前記第2指令値と前記第2指令値が入力される場合の前記第2モータの出力軸の回転速度である第2回転速度との差である第2速度偏差を算出し、前記第1速度偏差と前記第2速度偏差とに基づいて参照値を算出し、前記参照値を用いて前記第2モータに入力される前記第2指令値を補正する演算部と、を有する駆動制御装置とを備える。
【0016】
この構成により、車輪本体が外乱等の影響を受ける場合においても、第1モータと第2モータとの間の回転速度の速度差を高精度に維持可能となるため、回転時及び旋回時の安定性を維持することができる。
【0017】
本開示の一態様に係る車両は、上記の車輪と、前記車輪を前記車軸周りに回転可能に支持する車体とを備える。
【0018】
この構成により、回転時の安定性を維持することが可能な車輪を備えるため、安定した走行が可能な車両を提供できる。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、複数のモータの間の回転速度の速度差を高精度に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本実施形態に係る駆動装置の一例を示す模式図である。
図2図2は、駆動装置における制御内容の一例を示す制御ブロック図である。
図3図3は、本実施形態に係る車輪の一例を示す図である。
図4図4は、図3におけるA-A断面に沿った構成を示す図である。
図5図5は、車輪のアームが突出した状態の一例を示す図である。
図6図6は、車輪を搭載する車両の構成例を模式的に示す図である。
図7図7は、車両の動作の一例を示す図である。
図8図8は、車両の動作の一例を示す図である。
図9図9は、車両の動作の一例を示す図である。
図10図10は、車両の動作の一例を示す図である。
図11図11は、車両の動作の一例を示す図である。
図12図12は、車両の動作の一例を示す図である。
図13図13は、他の例に係る車両を示す図である。
図14図14は、駆動輪の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本開示を実施するための形態につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本開示が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0022】
[駆動制御装置及び駆動装置]
図1は、本実施形態に係る駆動装置100の一例を示す模式図である。図1に示すように、駆動装置100は、駆動源10及び駆動制御装置20を備える。駆動源10は、第1モータ11と、第2モータ12と、第1エンコーダ13と、第2エンコーダ14とを有する。
【0023】
第1モータ11及び第2モータ12は、例えば同様の構成を有している。本実施形態において、例えば第1モータ11がマスター側であり、第2モータ12がスレーブ側として説明するが、これに限定されない。第1モータ11及び第2モータ12は、例えば、インナーロータ式のモータである。第1モータ11及び第2モータ12は、例えば、ステータと、電力が供給されることによってステータに対して回転するロータと、ロータと共に回転する出力軸11a、12aとを含む。第1エンコーダ13は、第1モータ11の出力軸11aの回転速度である第1回転速度N1を検出する。第2エンコーダ14は、第2モータ12の出力軸12aの回転速度である第2回転速度N2を検出する。
【0024】
第1モータ11の出力軸11aは、第1減速器15を介して第1回転対象17に接続される。第1回転対象17は、第1モータ11の駆動力により回転又は回動する。第1減速器15は、例えば複数の歯車を用いて構成される。第1減速器15は、減速比が第1値G1である。
【0025】
第2モータ12の出力軸12aは、第2減速器16を介して第2回転対象18に接続される。第2回転対象18は、第2モータ12の駆動力により回転又は回動する。第2減速器16は、例えば複数の歯車を用いて構成される。第2減速器16は、減速比が第2値G2である。例えば第2値G2は、第1値G1よりも小さい値に設定することができるが、これに限定されない。
【0026】
駆動制御装置20は、駆動源10を制御する。駆動制御装置20は、CPU(Central Processing Unit)等の処理装置と、RAM(Random Access Memory)又はROM(Read Only Memory)等の記憶装置を有する。駆動制御装置20は、指令値出力部21と、演算部22とを備える。
【0027】
図2は、駆動装置100における制御内容の一例を示す制御ブロック図である。指令値出力部21は、第1出力部21a及び第2出力部21bを有する。第1出力部21aは、第1モータ11に対する第1指令値C1を設定して出力する。第1出力部21aは、第1回転対象17に所定の第1トルクが付与されるように、第1モータ11の出力軸15aを回転させる値として第1指令値C1を設定する。第1指令値C1は、第1モータ11のドライバ11bに入力される。第1モータ11は、ドライバ11bに入力された第1指令値C1に基づいて出力軸11aを回転させる。第1エンコーダ13は、出力軸11aの回転速度(第1回転速度N1)を検出する。
【0028】
第2出力部21bは、第2モータ12に対する第2指令値C2を設定して出力する。本実施形態において、第2出力部21bは、第2回転対象18に第1トルクよりも小さい第2トルクが付与されるように、第2モータ12の出力軸16aを回転させる値として第2指令値C2を設定することができる。第2指令値C2は、第2モータ12のドライバ12bに入力される。第2モータ12は、ドライバ12bに入力された第2指令値C2に基づいて出力軸12aを回転させる。第2エンコーダ14は、出力軸12aの回転速度(第2回転速度N2)を検出する。
【0029】
演算部22は、速度偏差算出部23、24と、乗算値算出部25、26と、差分算出部27と、参照値算出部28と、補正演算部29とを有する。演算部22は、第1速度偏差E1及び第2速度偏差E2を算出し、第1速度偏差E1と第2速度偏差E2とに基づいて参照値RNを算出し、参照値RNを用いて第2モータ12に入力される第2指令値C2を補正する。
【0030】
速度偏差算出部23は、第1指令値C1と、当該第1指令値C1が入力される場合の第1モータ11の第1回転速度N1とを取得する。速度偏差算出部23は、第1指令値C1と第1回転速度N1との差である第1速度偏差E1を算出する。速度偏差算出部24は、第2指令値C2と、当該第2指令値C2が入力される場合の第2モータ12の第2回転速度N2とを取得する。速度偏差算出部24は、第2指令値C2と第2回転速度N2との差である第2速度偏差E2を算出する。
【0031】
乗算値算出部25は、第1速度偏差E1に第1減速器15の減速比である第1値G1を乗じた乗算値(E1・G1)を算出する。乗算値算出部26は、第2速度偏差E2に第2減速器16の減速比である第2値G2を乗じた乗算値(E2・G2)を算出する。差分算出部27は、乗算値(E1・G1)と乗算値(E2・G2)との差分を求める。参照値算出部28は、当該差分を第2減速器16の減速比である第2値G2で割った値を参照値RNとして求める。つまり、参照値RNは、以下の式で表すことができる。
【0032】
RN=(E1・G1-E2・G2)/G2
=E1・G1/G2-E2
【0033】
補正演算部29は、第2モータ12に入力される第2指令値C2から参照値RNを差し引く。演算部22は、乗算値算出部25、乗算値算出部26、差分算出部27、参照値算出部28及び補正演算部29による各演算を行うことで、第2指令値C2を補正することができる。第2指令値C2の補正が行われた場合、補正後の第2指令値(C2-RN)が第2モータ12のドライバ12bに入力される。
【0034】
以上のように、本実施形態に係る駆動制御装置20は、第1回転対象17を回転させる第1モータ11に対する第1指令値C1を出力し、第1回転対象17とは異なる第2回転対象18を回転させる第2モータ12に対する第2指令値C2を出力する指令値出力部21と、第1指令値C1と第1指令値C1が入力される場合の第1モータ11の出力軸11aの回転速度である第1回転速度N1との差である第1速度偏差E1、及び、第2指令値C2と第2指令値C2が入力される場合の第2モータ12の出力軸12aの回転速度である第2回転速度N2との差である第2速度偏差E2を算出し、第1速度偏差E1と第2速度偏差E2とに基づいて参照値RNを算出し、参照値RNを用いて第2モータ12に入力される第2指令値C2を補正する演算部22とを備える。
【0035】
この構成によれば、第1モータ11における回転速度の第1速度偏差E1と第2モータ12における回転速度の第2速度偏差E2とに基づいて参照値RNを算出し、算出した参照値RNに基づいて第2モータの第2指令値C2が補正される。このため、例えば外乱の影響を受けた場合等においても、外乱に応じて第2指令値C2が補正されるため、第1モータ11の第1回転速度N1と第2モータ12の第2回転速度N2との速度差を精度よく維持することができる。
【0036】
本実施形態に係る駆動制御装置20において、第1モータ11の出力軸11aは、減速比が第1値G1である第1減速器15を介して第1回転対象17に接続され、第2モータ12の出力軸12aは、減速比が第2値G2である第2減速器16を介して第2回転対象18に接続され、演算部22は、第1速度偏差E1に第1値G1を乗じた値と、第2速度偏差E2に第2値G2を乗じた値との差分を算出し、算出した差分を第2値G2で割った値を参照値RNとして算出する。この構成により、第1モータ11の出力軸11a、第2モータ12の出力軸12aがそれぞれ第1減速器15、第2減速器16を介して第1回転対象17、第2回転対象18に接続される場合、第1減速器15、第2減速器16の各減速比を参照値RNに反映させることができる。このため、第2指令値C2を精度よく補正することが可能となる。
【0037】
本実施形態に係る駆動制御装置20において、演算部22は、出力された第2指令値C2から参照値RNを差し引くことで第2指令値C2を補正する。この構成により、第2指令値C2を精度よく補正することが可能となる。
【0038】
本実施形態に係る駆動装置100は、第1回転対象17を回転させる第1モータ11と、第1回転対象17とは異なる第2回転対象18を回転させる第2モータ12と、第1モータ11に対する第1指令値C1を出力し、第2モータ12に対する第2指令値C2を出力する指令値出力部21と、第1指令値C1と第1指令値C1が入力される場合の第1モータ11の出力軸11aの回転速度である第1回転速度N1との差である第1速度偏差E1、及び、第2指令値C2と第2指令値C2が入力される場合の第2モータ12の出力軸12aの回転速度である第2回転速度N2との差である第2速度偏差E2を算出し、第1速度偏差E1と第2速度偏差E2とに基づいて参照値RNを算出し、参照値RNを用いて第2モータ12に入力される第2指令値C2を補正する演算部22とを有する駆動制御装置20とを備える。この構成により、第1モータ11の第1回転速度N1と第2モータ12の第2回転速度N2との差を高精度に維持可能な駆動装置100を提供できる。
【0039】
本実施形態に係る駆動装置100において、第1モータ11が第1回転対象17を回転させるためのトルクよりも、第2モータ12が第2回転対象を回転させるためのトルクの方が小さい。この構成により、発生させるトルクが小さい第2モータ12の第2指令値C2を補正することになるため、第1モータ11を補正する場合に比べて精度よく補正することができる。
【0040】
[車輪及び車両]
次に、本実施形態に係る車輪及び車両について説明する。図3は、本実施形態に係る車輪200の一例を示す図である。図4は、図3におけるA-A断面に沿った構成を示す図である。図5は、車輪200のアーム40が突出した状態の一例を示す図である。以下の説明において、車輪200が段差を走破する方向へ回転する場合の回転方向を正方向R1といい、正方向R1とは反対側の回転方向を逆方向R2という。車輪200が正方向R1に回転する場合の進行方向は、図3において右方向である。正方向R1は、図3において、時計方向である。逆方向R2は、図3において、反時計方向である。また、正面とは、車輪200が正方向R1へ回転する場合の進行方向側の面を示し、側面とは、車輪200が自走車に搭載される際における車体の外側又は内側寄りの面を示す。図4において、外側は、左方であり、内側は、右方である。
【0041】
図3から図5に示す車輪200は、宅配ロボット、無人搬送台車、搬送用カート、電動車いす、掃除ロボット、パートナーロボット等の自走車に搭載される駆動輪である。自走車は、例えば、左右対称に車輪200が配置される四輪車両(例えば、後述の図6参照)が想定されるが、本開示ではこれに限定されない。車輪200は、車輪本体30と、アーム40と、車輪駆動部50と、アーム駆動部60と、支持部70と、駆動制御装置80とを備える。
【0042】
車輪本体30は、車軸部材31に装着される。車軸部材31は、軸心が車軸Awに一致する円柱状の軸部材である。車軸部材31は、後述の支持部70に対して車軸Aw周りに回動可能に設けられる。車軸部材31は、支持部70の第1貫通孔71に挿通し、軸受B1を介して支持部70に対して車軸Aw周りに回動可能に支持される。車軸部材31は、車軸Awの軸方向の一端が後述のアーム駆動部60の出力軸62に連結される。車軸部材31は、車軸Awの軸方向の他端に歯車34が固定される。
【0043】
歯車34は、外周面に歯部34aが形成される外歯車である。歯車34は、軸心が車軸Awに一致するように、車軸部材31に固定される。歯部34aは、後述のアーム40の基部41に形成される歯部41aと噛み合う。歯車34及び基部41は、例えば上記した駆動装置100の実施形態における第2減速器16に相当する構成である。
【0044】
車輪本体30は、車軸Aw周りに車軸部材31に対して回動可能に設けられる。車輪本体30は、実施形態において、後述の支持部70の外側面70a側に隣接して設けられる。車輪本体30は、上記した駆動装置100の実施形態における第1回転対象17に相当する構成である。車輪本体30は、貫通孔32と、環状凹部33と、外輪部35と、3つのアーム支持軸36と、3つの規制部37と、歯車38と、を含む。
【0045】
貫通孔32は、車輪本体30を車軸Aw方向に貫通する。貫通孔32は、車軸Aw方向の両端が開口する。貫通孔32には、車軸部材31が挿通される。車輪本体30は、貫通孔32において、軸受B2を介して、車軸部材31に対して車軸Aw周りに回動可能に支持される。また、車輪本体30は、貫通孔32、軸受B2、車軸部材31、及び軸受B1を介して、後述の支持部70に対して車軸Aw周りに回動可能に支持される。
【0046】
環状凹部33は、車輪本体30のうち支持部70に対向する第1面30aに設けられる。環状凹部33は、車軸Aw周りに形成される環状の凹部である。環状凹部33には、後述する歯車38が配置される。
【0047】
外輪部35は、軸心が車軸Awに一致する円筒状である。外輪部35は、車輪本体30の外周面を構成する。外輪部35は、周方向に沿って取り付けられる環状のタイヤ部(不図示)を有してもよい。タイヤ部は、例えば、ゴム等で形成され、走行時における接地面から受ける車輪本体30への衝撃を吸収する。
【0048】
アーム支持軸36は、軸心がアーム回転軸Aaに一致する円柱状の軸部材である。アーム回転軸Aaは、車軸Awと平行である。アーム支持軸36は、本実施形態において、1つの車輪200に対して3つ設けられる。それぞれのアーム支持軸36は、車輪本体30のうち第1面30aに対して裏面側の第2面30bから突出して設けられる。第2面30bは、車輪200が自走車に搭載される際に車体の外側に面する側面である。アーム支持軸36は、後述のアーム40に挿通し、軸受B3を介してアーム40をアーム回転軸Aa周りに回動可能に支持する。3つのアーム支持軸36に対応する3つのアーム回転軸Aaは、車軸Awとの距離が全て等しい。また、3つのアーム回転軸Aaは、車軸Aw周りに回転対称かつ等間隔に設けられる。アーム支持軸36は、本実施形態では3つ設けられるが、2つ以下又は4つ以上設けられてもよい。アーム支持軸36は、後述のアーム40が設けられる数に対応して、1つのアーム40に対して1つずつ設けられる。
【0049】
規制部37は、後述のアーム40のアーム回転軸Aa周りの一方向への回転範囲を規制するストッパ部材である。規制部37は、アーム40に接触することによって、アーム40の一方向への回転範囲を規制する。なお、一方向は、後述する突出方向Rpである。規制部37は、実施形態において、1つの車輪200に対して3つ設けられる。3つの規制部37は、車軸Aw周りに回転対称かつ等間隔に設けられる。すなわち、3つの規制部37は、対応するアーム40を、同一の回転角度で規制する。規制部37は、後述のアーム40が設けられる数に対応して、1つのアーム40に対して1つずつ設けられる。
【0050】
歯車38は、外周面に歯部38aが形成される外歯車である。歯車38は、軸心が車軸Awに一致するように、環状凹部33の内周面33aに固定される。歯部38aは、後述の車輪駆動部50の歯車53の歯部53aと噛み合う。歯車38は、車軸Aw周りに車輪本体30と一体で回転する。本実施形態において、歯車38は、歯車53と直接噛み合って歯車53の回転方向と反対方向に回転するが、この構成に限定されない。歯車38は、歯車53とは別の歯車を介して回転が伝達されてもよいし、歯車53の回転方向と同方向に回転するように設けられてもよい。歯車38及び歯車53は、上記した駆動装置100の実施形態における第1減速器15に相当する構成である。
【0051】
アーム40は、本実施形態において、1つの車輪200に対して3つ設けられる。それぞれのアーム40には、車輪本体30のアーム支持軸36が挿通される。それぞれのアーム40は、車輪本体30のアーム支持軸36によって、対応するアーム回転軸Aa周りに回動可能に支持される。アーム40は、図3に示す収容位置と、図5に示す突出位置との間で、アーム回転軸Aa周りに回動可能である。アーム40は、基部41及び爪部42を有する。アーム40は、上記した駆動装置100の実施形態における第2回転対象18に相当する構成である。
【0052】
基部41は、アーム支持軸36を囲う円筒部分を有し、当該円筒部分の外周面に歯部41aを有する。歯部41aは、アーム回転軸Aa周りに複数設けられる。歯部41aは、上記した車軸部材31に固定される歯車34の歯部34aと噛み合う。基部41は、歯部41aが歯車34の歯部34aと噛み合うことにより、車軸部材31が回転する場合に当該車軸部材31の回転方向とは反対方向に回転する。爪部42は、基部41から車輪本体30の径方向の外側に延び出し、車輪本体30の周方向に沿って屈曲した形状を有する。
【0053】
アーム40は、突出方向Rpに回転することにより、収容位置から突出位置に車輪本体30に対して相対的に移動する。突出方向Rpは、アーム回転軸Aa周りかつ逆方向R2と同方向の回転方向である。突出方向Rpは、図3及び図5において、アーム回転軸Aaを中心とした反時計方向である。アーム40が突出位置にある場合、爪部42は、車輪本体30の外周より径方向外側に突出した状態となる。
【0054】
アーム40は、収容方向Rsに回転することにより、突出位置から収容位置に車輪本体30に対して相対的に移動する。収容方向Rsは、アーム回転軸Aa周りかつ正方向R1と同方向の回転方向である。収容方向Rsは、図3及び図5において、アーム回転軸Aaを中心とした時計方向である。アーム40が収容位置にある場合、爪部42は、車輪本体30の外周より径方向内側に収容される。
【0055】
車輪駆動部50は、後述の支持部70に対して車輪本体30を車軸Aw周りに回動させる。車輪駆動部50は、第1モータ51を有する。第1モータ51は、車輪本体30の回転駆動源である。第1モータ51は、上記した駆動装置100の実施形態における第1モータ11に相当する構成であり、例えば、インナーロータ式のモータである。第1モータ51は、例えば、ステータと、電力が供給されることによってステータに対して回転するロータと、ロータと共に回転する出力軸52とを含む。出力軸52は、上記した駆動装置100の実施形態における第1モータ11の出力軸11aに相当する構成である。また、第1モータ51は、出力軸52の回転速度を検出する第1エンコーダ54を有する。
【0056】
出力軸52は、軸心が車軸Awと平行な回転軸Adに一致する円柱状の軸部材である。出力軸52は、後述の支持部70に対して回転軸Ad周りに回動可能に設けられる。出力軸52は、支持部70の第2貫通孔73に挿通し、軸受B5を介して支持部70に対して回転軸Ad周りに回動可能に支持される。出力軸52には、歯車53が固定される。
【0057】
歯車53は、外周面に歯部53aが形成される外歯車である。歯車53は、軸心が回転軸Adに一致するように出力軸52に固定される。歯部53aは、車輪本体30の歯車38に形成される歯部38aと噛み合う。第1モータ51によるトルクは、出力軸52、歯車53及び歯車38を介して車輪本体30に伝達される。
【0058】
第1モータ51は、車輪200が搭載される自走車の車体側に設けられた電源(不図示)から電力が供給される。第1モータ51は、電力が供給されることによって、車輪本体30を回転軸Ad周りに回転させる。第1モータ51の出力軸52の回転方向及び回転速度は、後述の駆動制御装置80によって制御される。
【0059】
アーム駆動部60は、後述の支持部70に対して車軸部材31を車軸Aw周りに回動させる。アーム駆動部60は、第2モータ61を含む。第2モータ61は、車軸部材31の回転駆動源である。第2モータ61によるトルクは、車軸部材31の歯車34を介してアーム40に伝達される。
【0060】
第2モータ61は、上記した駆動装置100の実施形態における第2モータ12に相当する構成であり、例えば、インナーロータ式のモータである。第2モータ61は、例えば、ステータと、電力が供給されることによってステータに対して回転するロータと、ロータと共に回転する出力軸62と、を含む。出力軸62は、車軸Awと同軸である。出力軸62は、車軸部材31に挿通して固定される。出力軸62は、上記した駆動装置100の実施形態における第2モータ12の出力軸12aに相当する構成である。また、第2モータ61は、出力軸62の回転速度を検出する第2エンコーダ64を有する。
【0061】
第2モータ61は、車輪200が搭載される自走車の車体側に設けられた電源(不図示)から電力が供給される。第2モータ61は、電力が供給されることによって、車軸部材31を車軸Aw周りに回転させる。第2モータ61の出力軸62の回転方向及び回転速度は、後述の駆動制御装置80によって制御される。
【0062】
支持部70は、車軸部材31、アーム駆動部60及び車輪駆動部50を支持する。支持部70は、実施形態において、車軸Aw方向に厚みを有する板形状を含む。支持部70は、実施形態において、車軸部材31を介して外側面70a側に車輪本体30を支持する。外側面70aは、車輪200が自走車に搭載される際に車体の外側に面する面である。支持部70は、第1貫通孔71と、第1筒状部72と、第2貫通孔73と、第2筒状部74と、を含む。
【0063】
第1貫通孔71は、軸心が車軸Awと一致するように設けられる。第1貫通孔71には、車軸部材31が挿通する。第1貫通孔71は、軸受B1を介して車軸部材31を車軸Aw周りに回動可能であるように支持する。
【0064】
第1筒状部72は、支持部70の内側面70b側に突出するように設けられる。内側面70bは、外側面70aと反対側の面であって、車輪200が自走車に搭載される際に車体の内側寄りに面する側面である。第1筒状部72の内周面は、第1貫通孔71に連通する。第1筒状部72は、第2モータ61の筐体を支持する。
【0065】
第2貫通孔73は、軸心が回転軸Adと一致するように設けられる。第2貫通孔73には、車輪駆動部50の出力軸52が挿通する。第2貫通孔73は、軸受B5を介して出力軸52を回転軸Ad周りに回動可能であるように支持する。
【0066】
第2筒状部74は、支持部70の内側面70b側に突出するように設けられる。第2筒状部74の内周面は、第2貫通孔73に連通する。第2筒状部74は、第1モータ51の筐体を支持する。
【0067】
支持部70は、例えば、後述の図7に示すように、車輪200が搭載される自走車(車両300)の車体201に固定される。支持部70が車体201に固定されることによって、車体201に対して、車輪200の車軸Aw及び回転軸Adが固定される。なお、支持部70は、車体201と一体で設けられてもよい。
【0068】
駆動制御装置80は、車輪本体30及びアーム40の回転方向及び回転速度を各々制御する。具体的には、駆動制御装置80は、本実施形態において、第1モータ51の出力軸52及び第2モータ61の出力軸62の回転方向及び回転速度を各々制御する。駆動制御装置80は、例えば、車輪200が搭載される自走車の車体側に設けられる。駆動制御装置80は、上記した駆動装置100の実施形態における駆動制御装置20に相当する構成であり、駆動制御装置20と同様の機能を有している。つまり、駆動制御装置80は、駆動制御装置20の指令値出力部21及び演算部22と同様の機能を有する指令値出力部81及び演算部82を有している。
【0069】
駆動制御装置80において、指令値出力部81は、例えば、車軸部材31の正方向R1への回転速度が車輪本体30の正方向R1への回転速度より大きくなるように指令値(第1指令値、第2指令値)を設定して第1モータ51及び第2モータ61へ出力することで、第1モータ51及び第2モータ61を制御する。この場合、車軸部材31が車輪本体30に対して正方向R1へ相対回転する。このように、車軸部材31が車輪本体30に対して正方向R1へ相対回転するように駆動制御装置80が車軸部材31及び車輪本体30の回転方向及び回転速度を制御した場合、アーム40は収容位置から突出位置へ向かう突出方向Rpに回転する。
【0070】
指令値出力部81は、例えば、車軸部材31の正方向R1への回転速度が車輪本体30の正方向R1への回転速度より小さくなるように指令値(第1指令値、第2指令値)を設定して第1モータ51及び第2モータ61へ出力することで、第1モータ51及び第2モータ61を制御する。この場合、車軸部材31が車輪本体30に対して逆方向R2へ相対回転する。このように、車軸部材31が車輪本体30に対して逆方向R2へ相対回転するように駆動制御装置80が車軸部材31及び車輪本体30の回転方向及び回転速度を制御した場合、アーム40は突出位置から収容位置へ向かう収容方向Rsに回転する。
【0071】
指令値出力部81は、例えば、車軸部材31の正方向R1への回転速度が車輪本体30の正方向R1への回転速度と等しくなるように指令値(第1指令値、第2指令値)を設定して第1モータ51及び第2モータ61へ出力することで、第1モータ51及び第2モータ61を制御する。この場合、車軸部材31が車輪本体30に対して相対回動しない。このように、車軸部材31が車輪本体30に対して相対回動しないように駆動制御装置80が車軸部材31と車輪本体30とが同回転方向かつ同回転速度で回転させる制御をした場合、アーム40は、車輪本体30に対する相対位置を維持する。
【0072】
駆動制御装置80において、演算部82は、第1モータ51における第1速度偏差及び第2モータ61における第2速度偏差を算出し、算出結果に基づいて参照値を算出し、参照値を用いて第2モータ61に入力される第2指令値を補正する。第2指令値の補正が行われた場合、補正後の第2指令値が第2モータ61のドライバ(不図示)に入力される。
【0073】
次に、車輪200の適用例としての車両300の構成について、図6を参照して説明する。図6は、車輪200を搭載する車両300の構成例を模式的に示す図である。図6において、車輪200が段差の走破が可能な方向へ回転する場合の車両300の進行方向が、車両300の前方である。すなわち、車両300の前方は、図6において、右方である。また、図6は、車両300を右方から視た側面図である。
【0074】
適用形態の車両300は、車体201と、4つの車輪200(左側に配置される車輪200は不図示)と、を備える台車である。車体201には、例えば、第1モータ51及び第2モータ61(図3参照)に供給する電力の電源、第1モータ51及び第2モータ61の回転方向及び回転速度を制御する駆動制御装置80、進行方向の段差を検出する検出装置等が搭載される。検出装置は、例えば、段差までの距離を検出する赤外線センサ等のセンサを含んでもよい。検出装置は、例えば、段差を撮像する撮像部を含み、撮像画像に基づいて段差を検出してもよい。
【0075】
4つの車輪200は、支持部70を介して車体201に固定される。4つの車輪200は、車体201の左右前後に配置される。これにより、車輪200の車軸Aw及び回転軸Adが車体201に固定される。車輪200は、適用形態において、支持部70の上端部が、車体201の下面に固体される。車両300は、適用形態において、4つの車輪200が左右前後に配置されるが、車輪200を自走車に適用する場合、3つ以上の車輪200を備えればよい。車両300の左右方向への旋回は、操舵にステアリング装置を用いるのではなく、右側の車輪200と左側の車輪200との回転速度差を用いる。
【0076】
次に、車両300の動作について説明する。図7から図12は、車両300の動作の一例を示す図である。図7に示すように、車両300は、段差に到達せず、平地走行中である。この場合、車輪200は、車軸部材31と車輪本体30とが同回転方向かつ同回転速度で回転するよう、駆動制御装置80が第1モータ51及び第2モータ61を制御することにより、アーム40の収容位置を維持させる。
【0077】
車輪200のアーム40が図3に示す収容位置にある場合、爪部42は、車輪本体30の外周より径方向内側に収容された状態であり、車輪200の走行面に接して外力を受けることがない。車輪200は、アーム40が図1に示す収容位置にある場合、爪部42が車輪本体30の外周より径方向外側に突出しないため、円形を保ち、通常の車輪と同様な走行が可能である。
【0078】
車輪本体30のアーム支持軸36は、車輪本体30と共に車軸Aw周りに回動する。車軸部材31、すなわち歯車34が車輪本体30と同回転方向かつ同回転速度で回転する(相対回転しない)場合、アーム40の歯部41aに対して歯車34が回転しないので、収容位置にあるアーム40は、収容位置から移動しない。すなわち、平地走行時においては、車軸部材31と車輪本体30とが同回転方向かつ同回転速度で回転するように、駆動制御装置80が第1モータ51及び第2モータ61を制御することにより、アーム40の収容位置を維持させる。
【0079】
図8に示すように、車両300が段差に接近する場合、車輪200は、車軸部材31の正方向R1への回転速度が車輪本体30の正方向R1への回転速度より大きくなるように、駆動制御装置80が第1モータ51及び第2モータ61を制御する。この制御により、アーム40が収容位置から突出位置へ移動する。車輪200は、爪部42の先端部の接地点Pcを支点として、車輪本体30が走行面から浮き上がる。
【0080】
この制御において、駆動制御装置80は、車軸部材31、すなわち歯車34の正方向R1への回転速度が車輪本体30の正方向R1への回転速度より大きくなるようにする。この場合、アーム40の歯部41aに対して相対的に歯車34が正方向R1に回転する。このため、アーム40は、アーム回転軸Aa周りに突出方向Rpに回転する。この回転により、収容位置にあるアーム40は突出位置へ移動する。駆動制御装置80は、アーム40が突出位置に移動した後、歯車34が車輪本体30と同回転方向かつ同回転速度で回転する(相対回転しない)ように制御する。この制御により、車輪200は、アーム40が突出位置を維持した状態で回転する。車両300は、前輪側の車輪200が段差に到達するまで、爪部42を突出させた状態で走行を続ける。
【0081】
なお、アーム40を突出方向Rpに回転させるタイミングは、前輪側の車輪200が段差に到達してぶつかった時でもよい。すなわち、段差の接近を撮像装置等で検出する場合は、前輪側の車輪200が段差に到達する前に予めアーム40を突出方向Rpに回転させてもよいが、例えば、加速度センサ等で段差への衝突を検出する場合は、前輪側の車輪200が段差に到達してぶつかった時に突出方向Rpに回転させる。
【0082】
図9に示すように、車両300の前輪側の車輪200が段差に到達する場合、前輪側の車輪200の前方側に位置する爪部42は、先端部が段差の上面に引っ掛かった状態となる。このように爪部42の先端部を段差に引っ掛けることによって、段差の走破が可能である。なお、爪部42の車軸Aw周りの回転位置によって、爪部42が段差に引っ掛からないことがある。このような場合は、爪部42の1つが、段差の上面に引っ掛かるまで、車輪200が段差の手前で正方向R1に空転することによって、逆方向R2側に隣接する爪部42が段差に引っ掛かる。
【0083】
図10に示すように、車輪200は、さらに正方向R1に回転する。これにより、前輪側の車輪200は、段差の上面に接地する爪部42を支点として段差に乗り上げる。車輪200は、さらに正方向R1に回転する。この際、前輪側の車輪200は、段差の上面を走行し、後輪側の車輪200は、段差下の走行面を走行する。
【0084】
図11に示すように、車輪200は、さらに正方向R1に回転する。これにより、後輪側の車輪200は、段差の上面に接地する爪部42を支点として段差に乗り上げる。車輪200は、さらに正方向R1に回転する。これにより、図12に示すように、前輪側の車輪200及び後輪側の車輪200は、段差の上面を走行する。
【0085】
前輪側の車輪200及び後輪側の車輪200が段差を走破した後、駆動制御装置80は、車軸部材31の正方向R1への回転速度が車輪本体30の正方向R1への回転速度より小さくなるように、駆動制御装置80が第1モータ51及び第2モータ61を制御する。この制御により、車輪200は、アーム40を突出位置から収容位置へ移動させる。
【0086】
アーム40が収容位置に達した後、駆動制御装置80は、車軸部材31と車輪本体30とが同回転方向かつ同回転速度で回転するように、第1モータ51及び第2モータ61を制御する。この制御により、車輪200は、アーム40の収容位置を維持した状態で回転する。
【0087】
段差走行時において、駆動制御装置80は、車軸部材31の正方向R1への回転速度が車輪本体30の正方向R1への回転速度より大きくなるように、第1モータ51及び第2モータ61を制御する。この制御により、アーム40が収容位置から突出位置へ移動するように車輪200が変形する。この際、駆動制御装置80は、例えば、第2モータ61の出力軸62の正方向R1の回転速度を維持したまま、第1モータ51の出力軸52の正方向R1の回転を停止させる、又は回転速度を落とすことによって、車軸部材31の正方向R1への回転速度が車輪本体30の正方向R1への回転速度より大きくなるように制御してもよい。
【0088】
アーム40が図5に示す突出位置に達した後は、車軸部材31と車輪本体30とが同回転方向かつ同回転速度で回転するように、駆動制御装置80が第1モータ51及び第2モータ61を制御することにより、アーム40の突出位置を維持させる。
【0089】
車軸部材31、すなわち歯車34の正方向R1への回転速度が車輪本体30の正方向R1への回転速度より小さい場合、アーム40の歯部41aに対して相対的に歯車34が逆方向R2に回転するので、アーム40は、アーム回転軸Aa周りに収容方向Rsに回転し、突出位置にあるアーム40は、突出位置から収容位置へ移動する。
【0090】
すなわち、段差走行を終えて平地走行に移行する時は、車軸部材31の正方向R1への回転速度が車輪本体30の正方向R1への回転速度より小さくなるように、駆動制御装置80が第1モータ51及び第2モータ61を制御することにより、アーム40を突出位置から収容位置へ移動させて車輪200を円形に変形させる。この際、駆動制御装置80は、例えば、第1モータ51の出力軸52の正方向R1の回転速度を維持したまま、第2モータ61の出力軸62の正方向R1の回転を停止させる、又は回転速度を落とすことによって、車軸部材31の正方向R1への回転速度が車輪本体30の正方向R1への回転速度より小さくなるように制御してもよい。
【0091】
アーム40が図3に示す収容位置に達した後は、車軸部材31と車輪本体30とが同回転方向かつ同回転速度で回転するように、駆動制御装置80が第1モータ51及び第2モータ61を制御することにより、アーム40の収容位置を維持させる。これにより、車輪200は、再び円形を保って通常の車輪と同様な走行が可能となる。
【0092】
アーム40が収容位置にあり、爪部42が車輪本体30の外周より径方向内側に配置されている場合、走行面に接触する車輪200が当該走行面から外力を受ける。また、アーム40が突出位置にあり、爪部42が車輪本体30の外周より径方向外側に突出している場合、走行面に接触するアーム40が当該走行面から外力を受ける。この外力は、車輪本体30を回転させる第1モータ51の回転速度及びアーム40を回転させる第2モータ61の回転速度を制御する際の外乱となる場合がある。つまり、車輪本体30及びアーム40の少なくとも一方が外力を受ける場合、第1モータ51の回転速度と第2モータ61の回転速度との速度差が外力により変化してしまう場合がある。
【0093】
これに対して、駆動制御装置80は、第1モータ51における第1速度偏差及び第2モータ61における第2速度偏差を算出し、算出結果に基づいて参照値を算出し、参照値を用いて第2モータ61に入力される第2指令値を補正する。第2指令値の補正が行われた場合、補正後の第2指令値が第2モータ61のドライバ(不図示)に入力される。このため、車輪本体30及びアーム40の少なくとも一方が外力を受ける場合であっても、第1モータ51の回転速度と第2モータ61の回転速度との速度差の変動を抑制することができる。
【0094】
以上のように、本実施形態に係る車輪200は、第1モータ51により車軸周りに回転する車輪本体30と、車輪本体30に平行なアーム回転軸Aa周りに回動可能となるように車輪本体30に支持され、車輪本体30の回転に伴って第2モータ61により収容位置と突出位置との間で回動するアーム40と、第1モータ51に対する第1指令値を出力し、第2モータ61に対する第2指令値を出力する指令値出力部81と、第1指令値と第1指令値が入力される場合の第1モータ51の出力軸52の回転速度である第1回転速度との差である第1速度偏差、及び、第2指令値と第2指令値が入力される場合の第2モータ61の出力軸62の回転速度である第2回転速度との差である第2速度偏差を算出し、第1速度偏差と第2速度偏差とに基づいて参照値を算出し、参照値を用いて第2モータ61に入力される第2指令値を補正する演算部82と駆動制御装置80とを備える。
【0095】
この構成により、車輪本体30及びアーム40の少なくとも一方が外乱等の影響を受ける場合においても、第1モータ51と第2モータ61との間の回転速度の速度差を高精度に維持可能となるため、回転時の安定性を維持することができる。
【0096】
本実施形態に係る車両300は、上記の車輪200と、車輪200を車軸Aw周りに回転可能に支持する車体201とを備える。この構成により、回転時の安定性を維持することが可能な車輪200を備えるため、安定した走行が可能な車両300を提供できる。
【0097】
[車輪及び車両の他の例]
次に、車輪及び車両の他の例について説明する。図13は、他の例に係る車両400を模式的に示す図である。図13に示すように、車両400は、車体401と、取手部402と、駆動輪(車輪)403と、従動輪404とを有する。
【0098】
車体401は、例えば荷物等を積載可能な荷台等である。車体401は、例えば鋼製のフレームである。車両400の進行方向の前方側において、車体401の両側部に従動輪404がそれぞれ1つずつ取り付けられている。また、進行方向の後方側において、車体401の両側部に駆動輪403がそれぞれ1つずつ取り付けられている。また、車体401の後方側の端部には、上方に向けて取手部402が設けられている。
【0099】
図14は、駆動輪403の例を模式的に示す図である。図14に示すように、駆動輪403は、駆動源410及び駆動制御装置420を備える駆動装置405と、連結機構430と、車輪本体440とを有する。
【0100】
駆動源410は、第1モータ411及び第2モータ412を有する。第1モータ411、第2モータ412は、それぞれ上記した駆動装置100の実施形態における第1モータ11、第2モータ12に相当する構成であり、例えば、インナーロータ式のモータである。第1モータ411及び第2モータ412は、例えば、ステータと、電力が供給されることによってステータに対して回転するロータと、ロータと共に回転する出力軸411a、412aとを含む。第1モータ411は、出力軸411aの回転速度を検出する第1エンコーダ413を有する。第2モータ412は、出力軸412aの回転速度を検出する第2エンコーダ414を有する。
【0101】
駆動制御装置420は、駆動輪403における車輪本体440の回転動作及び旋回動作を制御する。具体的には、駆動制御装置420は、本実施形態において、第1モータ411の出力軸411a及び第2モータ412の出力軸412aの回転方向及び回転速度を各々制御する。駆動制御装置420は、上記した駆動装置100の実施形態における駆動制御装置20に相当する構成であり、駆動制御装置20と同様の機能を有している。つまり、駆動制御装置420は、駆動制御装置20の指令値出力部21及び演算部22と同様の機能を有する指令値出力部421及び演算部422を有している。
【0102】
連結機構430は、駆動源410と車輪本体440とを連結する。連結機構430は、第1モータ411の回転速度と第2モータ412の回転速度との速度差に応じて、駆動源410の駆動力により車輪本体440が車軸Ax周り方向に回転及び旋回軸As周り方向に旋回するように、駆動源410の駆動力を車輪本体440に伝達する。
【0103】
連結機構430は、第1歯車機構431と、ベルト機構432と、円筒軸433と、第2歯車機構434と、出力歯車機構435と、斜歯歯車機構436と、ベルト機構437と、操舵アーム438と、クランク439とを有する。
【0104】
第1歯車機構431は、外歯車431a及び傘歯車431bを有する。外歯車431aは、第1モータ411の出力軸411aに固定される。傘歯車431bは、外歯車431a及び後述する出力歯車435aと噛み合う。
【0105】
ベルト機構432は、プーリ432a、432b及びベルト432cを有する。プーリ432aは、第2モータ412の出力軸412aに固定される。プーリ432bは、後述する円筒軸433に固定される。ベルト432cは、プーリ432aとプーリ432bとの間にかけ渡され、プーリ432aの回転をプーリ432bに伝達する。
【0106】
円筒軸433は、第1モータ411の出力軸411aを囲うように配置される。円筒軸433は、例えば不図示のベアリング等を介して出力軸411aと軸心を共有し、かつ出力軸411aに対して独立して回転可能となるように配置される。
【0107】
第2歯車機構434は、外歯車434a及び傘歯車434bを有する。外歯車434aは、円筒軸433に固定される。傘歯車434bは、外歯車434a及び後述する出力歯車435aと噛み合う。
【0108】
出力歯車機構435は、出力歯車435a及び軸部材435bを有する。出力歯車435aは、外歯車であり、上記した傘歯車431b及び傘歯車434bと噛み合う。軸部材435bは、一端に出力歯車435aが固定され、他端に後述する斜歯歯車436aが固定される。軸部材435bは、クランク439に回転可能に支持される。
【0109】
斜歯歯車機構436は、斜歯歯車436a、436b及び軸部材436cを有する。斜歯歯車436aは、出力歯車機構435の軸部材435bと一体で回転する。斜歯歯車436bは、軸部材436cに固定され、斜歯歯車436aと噛み合う。軸部材436cは、出力歯車機構435の軸部材435bと軸心が交差するように配置され、斜歯歯車436bと一体で回転する。
【0110】
ベルト機構437は、プーリ437a、437b及びベルト437cを有する。プーリ437aは、斜歯歯車機構436の軸部材436cに固定され、当該軸部材436cと一体で回転する。プーリ437bは、車輪本体440に固定され、車輪本体440と一体で車軸Aw周りの方向に回転する。ベルト437cは、プーリ437aの回転をプーリ437bに伝達する。
【0111】
操舵アーム438は、モータ支持機構450に連結される。モータ支持機構450は、第1モータ411及び第2モータ412を支持する。操舵アーム438は、不図示の軸受けを介して第1モータ411の出力軸411aを回転可能に支持する。操舵アーム438は、不図示の軸受を介して円筒軸433を回転可能に支持する。旋回軸As中心に出力歯車435aが回動すると、出力歯車435aが固定される軸部材435bを支持する操舵アーム438が回動する。操舵アーム438が回動すると、当該操舵アーム438に支持されるクランク439と、クランク439に支持される車輪本体440とが回動する。
【0112】
クランク439は、操舵アーム438に保持され、斜歯歯車機構436の軸部材436cを支持する。操舵アーム438は、クランク439を介して出力歯車機構435、斜歯歯車機構436及びベルト機構437と、車輪本体440とを支持する。
【0113】
なお、連結機構430の構成は、上記した構成に限定されず、異なる構成であってもよい。例えば、連結機構430は、歯車の種類、配置等が上記構成とは異なっていてもよい。
【0114】
車輪本体440は、車軸部材441と、車輪本体442とを有する。車軸部材441は、プーリ437bに固定される。車輪本体442は、車軸部材441に固定される。車輪本体442は、プーリ437b及び車軸部材441と一体で車軸Ax周り方向に回転する。車輪本体440は、クランク439を介して操舵アーム438に支持される。このため、車輪本体440は、旋回軸Asを中心として旋回する。
【0115】
外歯車431aと外歯車434aとが同一の方向にかつ同一の回転速度で回転する場合、両者の間に回転速度の速度差がない。このため、それぞれ傘歯車431b及び傘歯車434bを介して噛み合う出力歯車435aは回転しない。また、この場合、外歯車431aが出力歯車435aを旋回軸As周りに旋回させようとする力と、外歯車434aを旋回軸As周りに旋回させようとする力とが、互いに同一の方向に作用している。このため、出力歯車435aが回転することなく、旋回軸Asを中心に旋回する。出力歯車435aが旋回軸Asを中心に旋回すると、出力歯車435aと共に操舵アーム438が旋回軸Asを中心に旋回する。これにより、車輪本体440は、旋回軸Asを中心として旋回し、進行方向が変更される。
【0116】
外歯車431aと外歯車434aとが逆の方向にかつ同一の回転速度で回転する場合、両者の回転速度の絶対値が同一であるが、回転方向は逆となる。この場合、両者の間に回転速度の速度差が生じる。このため、それぞれ傘歯車431b及び傘歯車434bを介して出力歯車435aが回転する。また、この場合、両者の回転速度の絶対値が同一であるため、外歯車431aが出力歯車435aを旋回軸As周りに旋回させようとする力と、外歯車434aが出力歯車435aを旋回軸As周りに旋回させようとする力とが、互いに打ち消し合ってゼロとなる。この場合、出力歯車435aの旋回軸Asを中心とした回転は生じない。このため、出力歯車435aが旋回することなく、回転軸Abを中心に回転する。出力歯車435aが回転軸Abを中心に回転する場合、その回転がベルト機構437を介して車輪本体440に伝達され、車輪本体440が車軸Aw周りの方向に回転する。
【0117】
外歯車431aが所定の回転速度で一方向に回転し、外歯車434aが回転しない場合、両者の間に回転速度の速度差が生じる。また、出力歯車435aに対しては、旋回軸As周りに旋回させようとする力が作用する。このため、出力歯車435aは、回転軸Abを中心に回転し、かつ旋回軸Asを中心に旋回する。この場合、車輪本体440は、車軸Awの周りに回転しながら旋回軸Asを中心として旋回する。
【0118】
以上のように、本実施形態に係る駆動輪403は、第1モータ411及び第2モータ412により車軸Aw周りに回転可能であり、第1モータ411の回転速度と第2モータ412の回転速度との速度差に応じて車軸Awに直交する旋回軸As周りに旋回可能に設けられた車輪本体440と、第1モータ411に対する第1指令値を出力し、第2モータ412に対する第2指令値を出力する指令値出力部421と、第1指令値と第1指令値が入力される場合の第1モータ411の出力軸411aの回転速度である第1回転速度との差である第1速度偏差、及び、第2指令値と第2指令値が入力される場合の第2モータ412の出力軸412aの回転速度である第2回転速度との差である第2速度偏差を算出し、第1速度偏差と第2速度偏差とに基づいて参照値を算出し、参照値を用いて第2モータ412に入力される第2指令値を補正する演算部422とを有する駆動制御装置420とを備える。
【0119】
この構成により、車輪本体440が外乱等の影響を受ける場合においても、第1モータ411と第2モータ412との間の回転速度の速度差を高精度に維持可能となるため、回転時及び旋回時の安定性を維持することができる。
【0120】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。例えば、上記実施形態において、駆動制御装置20は、第1モータ11のトルクが第2モータ12のトルクよりも大きい場合に、トルクが小さい側の第2モータ12の回転速度を補正する場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。駆動制御装置20は、トルクが大きい側のモータ又はトルクがほぼ同程度のモータの回転速度を補正するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0121】
10,410 駆動源
11,51,411 第1モータ
11a,12a,15a,16a,52,62,411a,412a 出力軸
11b,12b ドライバ
12,61,412 第2モータ
13,54,413 第1エンコーダ
14,64,414 第2エンコーダ
15 第1減速器
16 第2減速器
20,80,420 駆動制御装置
21,81,421 指令値出力部
22,82,422 演算部
30,440,442 車輪本体
31,441 車軸部材
34,38,53 歯車
36 アーム支持軸
40 アーム
41 基部
42 爪部
50 車輪駆動部
60 アーム駆動部
100,405 駆動装置
200 車輪
201,401 車体
300,400 車両
403 駆動輪
430 連結機構
431 第1歯車機構
432,437 ベルト機構
433 円筒軸
434 第2歯車機構
435 出力歯車機構
436 斜歯歯車機構
438 操舵アーム
439 クランク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14