(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102420
(43)【公開日】2023-07-25
(54)【発明の名称】冷凍サイクル装置への冷媒充填方法
(51)【国際特許分類】
F25B 45/00 20060101AFI20230718BHJP
【FI】
F25B45/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022002892
(22)【出願日】2022-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】510118880
【氏名又は名称】株式会社 ナンバ
(74)【代理人】
【識別番号】100091373
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 剛
(72)【発明者】
【氏名】難波 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】難波 昇一
(57)【要約】
【課題】レシーバータンクの容量、蒸発器、配管長等の情報がなくても、容易に適正な充填量を充填することができる冷凍サイクル装置への冷媒充填方法を提供することを目的とする。
【解決手段】冷凍サイクル装置1内に冷媒を充填する方法であって、前記冷凍サイクル装置1は、この冷凍サイクル装置1内で生じた気泡を検知する気泡検知装置2を備えたものであり、前記冷媒を前記冷凍サイクル装置1に充填するに際し、前記冷凍サイクル装置1を運転させた状態で前記気泡検知装置2が前記気泡を検知している間は前記冷媒の充填を継続し、前記気泡検知装置2が前記気泡を検知しなくなった時点で前記冷媒の充填を停止する冷凍サイクル装置への冷媒充填方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍サイクル装置に冷媒を充填する方法であって、前記冷凍サイクル装置は、この冷凍サイクル装置内で生じた気泡を検知する気泡検知装置を備えたものであり、前記冷媒を前記冷凍サイクル装置に充填するに際し、前記冷凍サイクル装置を運転させた状態で前記気泡検知装置が前記気泡を検知している間は前記冷媒の充填を継続し、前記気泡検知装置が前記気泡を検知しなくなった時点で前記冷媒の充填を停止することを特徴とする冷凍サイクル装置への冷媒充填方法。
【請求項2】
請求項1記載の冷凍サイクル装置への冷媒充填方法において、前記気泡検知装置は、前記冷凍サイクル装置のレシーバータンクと膨張弁との間にして該レシーバータンクの下流側且つ該膨張弁の上流側に設けられていることを特徴とする冷凍サイクル装置への冷媒充填方法。
【請求項3】
請求項1~2いずれか1項に記載の冷凍サイクル装置への冷媒充填方法において、前記気泡検知装置は、超音波を送信する超音波送信部と、前記超音波送信部と対向状態に設けられ該超音波送信部が送信した前記超音波を受信する超音波受信部とを備え、前記超音波送信部が前記超音波を送信し、且つ、前記超音波受信部が前記超音波を受信できない状態が生じた場合、気泡を検知したと判断するように構成されていることを特徴とする冷凍サイクル装置への冷媒充填方法。
【請求項4】
請求項1~3いずれか1項に記載の冷凍サイクル装置への冷媒充填方法において、前記冷凍サイクル装置の圧縮機の吸入口側から気体状態の冷媒を充填することを特徴とする冷凍サイクル装置への冷媒充填方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍設備や空調設備等に用いられる冷凍サイクル装置に適正量の冷媒を充填することができる冷凍サイクル装置への冷媒充填方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、冷凍設備等の冷凍サイクル装置に冷媒を充填する場合、様々な方法で冷凍機の大きさ(レシーバータンクの容量)、蒸発器、配管長等を計算して充填量を決定し、その決定した量の冷媒を充填している。
【0003】
しかしながら、上記のような方法で算出された充填量は正確性に乏しく、適正な充填量に対して過充填若しくは過少充填となることがあり、過充填の場合、冷媒コストが上がる問題や装置トラブルの原因となり、また、漏洩が発生した場合、直ぐに気付くことができず、多量の冷媒(例えばフロンガス)を大気中に放出してしまう問題が生じる。また、過少充填の場合、冷凍能力が適正値に比べて低下し、この冷凍能力の低下により冷凍サイクル装置の稼働時間が増加しランニングコスト(電力費等)が増加してしまう問題が生じてしまう。
【0004】
さらに、上記従来法においては、レシーバータンクの容量、蒸発器、配管長等に関する数値情報がない場合、その数値を調べて測定しなければならず、その作業は非常に厄介なものであった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述のような従来の冷媒充填方法に係る問題に鑑みなされたものであり、レシーバータンクの容量、蒸発器、配管長等の情報がなくても、容易に適正な充填量を充填することができる冷凍サイクル装置への冷媒充填方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0007】
冷凍サイクル装置1に冷媒を充填する方法であって、前記冷凍サイクル装置1は、この冷凍サイクル装置1内で生じた気泡を検知する気泡検知装置2を備えたものであり、前記冷媒を前記冷凍サイクル装置1に充填するに際し、前記冷凍サイクル装置1を運転させた状態で前記気泡検知装置2が前記気泡を検知している間は前記冷媒の充填を継続し、前記気泡検知装置2が前記気泡を検知しなくなった時点で前記冷媒の充填を停止することを特徴とする冷凍サイクル装置への冷媒充填方法に係るものである。
【0008】
また、請求項1記載の冷凍サイクル装置への冷媒充填方法において、前記気泡検知装置2は、前記冷凍サイクル装置1のレシーバータンク3と膨張弁4との間にして該レシーバータンク3の下流側且つ該膨張弁4の上流側に設けられていることを特徴とする冷凍サイクル装置への冷媒充填方法に係るものである。
【0009】
また、請求項1~2いずれか1項に記載の冷凍サイクル装置への冷媒充填方法において、前記気泡検知装置2は、超音波を送信する超音波送信部5と、前記超音波送信部5と対向状態に設けられ該超音波送信部5が送信した前記超音波を受信する超音波受信部6とを備え、前記超音波送信部5が前記超音波を送信し、且つ、前記超音波受信部6が前記超音波を受信できない状態が生じた場合、気泡を検知したと判断するように構成されていることを特徴とする冷凍サイクル装置への冷媒充填方法に係るものである。
【0010】
また、請求項1~3いずれか1項に記載の冷凍サイクル装置への冷媒充填方法において、前記冷凍サイクル装置1の圧縮機7の吸入口7a側から気体状態の冷媒を充填することを特徴とする冷凍サイクル装置への冷媒充填方法に係るものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上述のようにしたから、レシーバータンクの容量、蒸発器、配管長等の情報がなくても、過充填、過少充填となることなく、容易に適正な充填量を充填することができる画期的な冷凍サイクル装置への冷媒充填方法となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施例における気泡検知装置の取り付け位置を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0014】
冷凍サイクル装置1は、冷媒の充填量が適正量より少ない場合、レシーバータンク3において、冷媒は飽和液線を超えることができず、冷媒の一部が気泡(フラッシュガス)として残る現象が生じる。本発明はこの現象を利用したものである。
【0015】
本発明は、冷凍サイクル装置1を運転させた状態で、この冷凍サイクル装置1に備えられた気泡検知装置2で冷凍サイクル装置1内に気泡が発生しているか否かを確認しながら、すなわち、気泡検知装置2が気泡を検知しているか否かを確認しながら、気泡検知装置2が気泡を検知している間は冷媒の充填を継続し、気泡検知装置2が気泡を検知しなくなった時点で冷媒の充填を停止する。
【0016】
これにより、冷凍サイクル装置1に過充填、過少充となることなく、適正な充填量を充填することができるものである。
【0017】
具体的には、充填開始後、しばらくの間は冷媒の充填量が適正量よりも少ないため、冷凍能力が所定の能力(冷凍サイクル装置の適正な冷凍能力)まで上がらず、レシーバータンク3において、冷媒は過冷却に至らず気泡が残ってしまう。よって、この間、気泡検知装置2は気泡を検知し続けることになる。
【0018】
その後、冷媒の充填量が適正量になることで冷凍サイクル装置1が所定の(適正な)冷凍能力となり、凝縮器8における冷媒の気化が抑制され、気泡が発生しなくなり、さらにレシーバータンク3に流入した冷媒が過冷却されることで、気泡検知装置2の気泡の検知がなくなる。
【0019】
このように、気泡検知装置2が気泡を検知している間は冷凍サイクル装置1内の冷媒の充填量が適正値より少なく、気泡検知装置2が気泡を検知しなくなったら冷凍サイクル装置1内の冷媒の充填量が適正値になったと判断できるから、気泡検知装置2によりこの冷凍サイクル装置1内の気泡の発生の有無を確認することで、充填量が少ないか適正かを判断することができることとなる。
【0020】
したがって、本発明は、冷凍機の大きさ(レシーバータンク3の容量)、蒸発器11、配管長等の情報がなくても、過充填、過少充填となることなく、容易に適正な充填量を充填することができる画期的な冷凍サイクル装置への冷媒充填方法となる。なお、前記適正量とは冷凍サイクル装置1が適正な冷凍能力を発揮することができる必要最小限の冷媒量を意味する。
【実施例0021】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0022】
本実施例は、冷凍サイクル装置1に冷媒を充填する方法であって、前記冷凍サイクル装置1は、この冷凍サイクル装置1内で生じた気泡を検知する気泡検知装置2を備えたものであり、前記冷媒を前記冷凍サイクル装置1に充填するに際し、前記冷凍サイクル装置1を運転させた状態で前記気泡検知装置2が前記気泡を検知している間は前記冷媒の充填を継続し、前記気泡検知装置2が前記気泡を検知しなくなった時点で前記冷媒の充填を停止する冷凍サイクル装置への冷媒充填方法である。
【0023】
まず、本実施例において、冷凍サイクル装置1に備えられる気泡検知装置2について説明する。
【0024】
気泡検知装置2は、
図1に示すように、超音波送信部5、超音波受信部6及び超音波受信判断部9を備える構成である。
【0025】
超音波送信部5は、気泡の存在により伝搬が遮断される周波数(例えば10MHz以下、好ましくは5MHz以下、より好ましくは3MHz以下)の超音波を送信するように構成されている。
【0026】
また、超音波受信部6は、超音波送信部5と対向状態に設けられ、超音波送信部5が送信した超音波を受信するように構成されている。
【0027】
具体的には、超音波送信部5及び超音波受信部6は、市販されている一般的な超音波流量計に用いられるクランプオンタイプの流量センサ(本実施例は、周波数1MHzの超音波を送受信するタイプ)が設けられている。
【0028】
また、超音波送信部5及び超音波受信部6は、冷凍サイクル装置1のレシーバータンク3と膨張弁4との間にして、レシーバータンク3の下流側且つ膨張弁4の上流側に設けられている。
【0029】
具体的には、本実施例は、図示するように、レシーバータンク3の下流側に超音波送信部5及び超音波受信部6(気泡検知装置2)が設けられている。なお、超音波送信部5及び超音波受信部6(気泡検知装置2)の取り付け位置は前記の位置に限定されるものではなく、例えば、膨張弁4の近傍を取り付け位置としても良い。
【0030】
また、超音波受信判断部9は、超音波送信部5からの超音波を送信している信号(以下、「超音波送信信号」という。)と、超音波受信部6からの超音波送信部5が送信した超音波を受信している信号(以下、「超音波受信信号」という。)とを受信し、超音波送信部5からの超音波送信信号を受信し、且つ、超音波受信部6からの超音波受信信号を受信しなかった場合、超音波送信部5と超音波受信部6との間の超音波の送受信が気泡の存在により遮断されたと判断して気泡検知の信号を出力するように構成されている。
【0031】
具体的には、超音波受信判断部9は、超音波送信部5と超音波受信部6とに接続され、超音波送信部5からの超音波送信信号と、超音波受信部6からの超音波受信信号とを受信するように構成されると共に、超音波送信信号を受信し、且つ、超音波受信信号も受信している場合は、気泡の検知なし(気泡の発生なし)と判断し、超音波送信信号を受信し、且つ、超音波受信信号を受信していない場合は、気泡の検知あり(気泡の発生あり)と判断し、その判断結果を結果表示部10(例えば、表示モニタ、音声、発光手段など)に出力するように構成されている。
【0032】
なお、超音波受信判断部9及び結果表示部10に関しては、例えば、IoTを利用しデータをサーバーに送信しパソコンやスマートフォン等で管理するように構成しても良い。
【0033】
次に本実施例の冷媒充填方法について詳述する。
【0034】
本実施例は、冷凍サイクル装置1を運転させた状態で、気泡検知装置2が気泡を検知している間は冷媒の充填を継続し、気泡検知装置2が気泡を検知しなくなった時点で冷媒の充填を停止する。
【0035】
具体的には、気泡検知装置2の結果表示部10(本実施例では表示モニタ10)に表示される気泡の検知の有無を確認しながら、冷凍サイクル装置1の圧縮機7の吸入口7a側から気体状態の冷媒を充填する。
【0036】
また、本実施例においては、より効率的に充填作業を行うため、気泡検知装置2を用いた充填を行う前に、予め冷凍サイクル装置1内に適宜な量の冷媒を充填する。
【0037】
具体的には、前記適宜な量とは、例えば、レシーバータンク3の容量、蒸発器11、配管長等が既知の場合、これらから算出した充填量の1/2~2/3程度(できるだけ多い方が良い)であり、本実施例では、この量の冷媒を、気泡検知装置2を用いた充填作業の前に、レシーバータンク3の出口側から液体状態で充填する。これにより、気泡検知装置2を確認しながらの気体状態の冷媒の充填作業時間を短くすることができ、より効率的に充填作業を行うことができる。
【0038】
また、気泡検知装置2による気泡の検知がなくなり冷媒の充填を停止した後、所定時間(例えば1~2日)放置した後、再度、気泡検知装置2により気泡の発生の有無を確認し、気泡検知装置2による気泡の検知がない場合、作業終了となる。
【0039】
なお、本実施例において、初期充填量は記録し、例えばユニット内に表示しておくことが好ましく、また、その後、例えば、漏洩が発生した場合、修理後においても、同様に充填量を記録に残さなければならない。
【0040】
また、本実施例は、全てを自動化することも可能である。
【0041】
本実施例の作用効果について以下に説明する。
【0042】
本実施例は、気泡検知装置2が気泡を検知している間は冷凍サイクル装置1内の冷媒の充填量が適正値より少なく、気泡検知装置2が気泡を検知しなくなったら冷凍サイクル装置1内の冷媒の充填量が適正値になったと判断できるから、気泡検知装置2によりこの冷凍サイクル装置1内の気泡の発生の有無を確認することで、充填量が少ないか適正かを判断することができ、これにより、レシーバータンク3の容量、蒸発器11、配管長等の情報がなくても、過充填、過少充填となることなく、容易に適正な充填量を充填することができる。
【0043】
したがって、本実施例は、新規の冷凍設備の冷凍サイクル装置1への冷媒充填作業に用いることができることは勿論のこと、例えば、既設の冷凍設備の冷凍サイクル装置1において、冷媒の漏洩が生じ、冷凍サイクル装置1内の冷媒残量が不明な状態であっても、冷凍サイクル装置1に対して、過充填、過少充填となることなく、容易に適正な充填量を充填することができ、よって、冷媒残量がわからないため充填量がわからず、一旦、冷凍サイクル装置1内の冷媒を全て回収し、所定の充填量の冷媒を充填するといった無駄な作業を行う必要もなくなり、冷媒コストの低減効果も発揮する。
【0044】
また、本実施例は、従来のレシーバータンク3の容量、蒸発器11、配管長等から充填量を算出する方法(従来法)と組み合わせることで、より効率的に充填作業を行うことができる。
【0045】
また、本実施例は、過充填、過少充填となることなく、適正な充填量、すなわち、冷凍サイクル装置1が適正な冷凍能力を発揮する必要最小充填量を充填することができるから、冷媒の過充填、過少充填に起因する装置トラブルが可及的に低減され、さらに、冷媒コスト、電力コストの低減効果も発揮する。
【0046】
また、本実施例の気泡検知装置2は、充填作業時以外は、冷凍サイクル装置1の漏洩検知装置として使用することができる。
【0047】
すなわち、適正量の冷媒を充填した冷凍サイクル装置1に漏洩が生じた場合、冷媒量の低下により冷凍能力が低下し、凝縮器8において冷媒の温度が上がり、冷媒の一部が気化し気泡が発生する現象が生じるから、通常運転時において、気泡検知装置2で冷凍サイクル装置1における気泡の発生の有無を確認することで、早期に冷媒の漏洩を発見することができ、しかも、本実施例の冷媒充填方法で冷媒を充填した場合、冷凍サイクル装置1には、必要最小冷媒充填量の冷媒が充填されているから、漏洩が生じた場合、直ぐに気泡が発生し、気泡検知装置2で検知することができるから、早期に漏洩を発見することができ、冷媒漏洩量を最小限に抑えることができ、地球温暖化防止の観点においても優れた効果を発揮することができる。
【0048】
また、漏洩対処後、冷媒を補充する際も、本実施例の冷媒充填方法で冷媒を充填することで、冷媒充填量が冷媒の漏洩量となるから、正確な冷媒漏洩量を容易に把握することができる。
【0049】
なお、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。