(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102430
(43)【公開日】2023-07-25
(54)【発明の名称】異常検出装置
(51)【国際特許分類】
B23K 9/095 20060101AFI20230718BHJP
B23K 31/00 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
B23K9/095 515Z
B23K31/00 K
B23K31/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022002904
(22)【出願日】2022-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(72)【発明者】
【氏名】小森 慎也
(72)【発明者】
【氏名】中川 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】中本 淳一
(57)【要約】
【課題】検査作業の労力を削減することができる異常検出装置を提供する。
【解決手段】アーク溶接を行っているときに対象物ごとに計測される溶接計測データを取得するとともに、溶接された対象物の外観検査により対象物ごとに得られる外観データを取得する取得部11と、取得された溶接計測データ及び外観データに基づいて、対象物の異常を検出する異常検出部12と、検出された異常に基づいて、対象物の異常情報を生成する情報生成部13と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーク溶接を行っているときに対象物ごとに計測される溶接計測データを取得する第1取得部と、
溶接された前記対象物の外観検査により前記対象物ごとに得られる外観データを取得する第2取得部と、
取得された前記溶接計測データ及び前記外観データに基づいて、前記対象物の異常を検出する異常検出部と、
検出された前記異常に基づいて、前記対象物の異常情報を生成する情報生成部と、
を備える異常検出装置。
【請求項2】
前記第1取得部は、前記溶接計測データに対応する第1位置情報をさらに取得し、
前記第2取得部は、前記外観データに対応する第2位置情報をさらに取得し、
前記情報生成部は、検出された前記異常に対応する前記第1位置情報及び前記第2位置情報に基づいて、前記異常が検出された異常箇所を特定し、特定した前記異常箇所に関する情報を前記異常情報に含めて生成する、
請求項1記載の異常検出装置。
【請求項3】
前記異常情報は、前記対象物にマーキングするためのマーキング情報を含み、
前記情報生成部は、前記溶接計測データに基づいて検出された前記異常及び前記外観データに基づいて検出された前記異常に基づいて、異常の発生パターンを特定し、特定した前記異常の発生パターンに対応する前記マーキング情報を生成する、
請求項1又は2記載の異常検出装置。
【請求項4】
前記情報生成部は、検出された前記異常に対応する前記対象物の手直し工程に関する情報を前記異常情報に含めて生成する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の異常検出装置。
【請求項5】
前記異常検出部は、取得された前記溶接計測データを異常検出用の閾値と比較することで前記対象物の異常を検出するとともに、取得された前記外観データを正常時の外観データと比較することで前記対象物の異常を検出する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の異常検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、アーク溶接における溶接不良を検査する検査装置が開示されている。この検査装置には、アーク溶接中に計測される溶接電流等の溶接計測データと、アーク溶接中に撮影されるビード画像等の外観データとが対応付けて記憶されている。このような検査装置において、検査員がいずれか一方のデータを表示させて、対象物の溶接状態を確認しているときに、そのデータの一部分を指定すると、指定した部分に対応する他方のデータを、一方のデータに並べて表示させることができる。これにより、一方のデータで溶接不良の疑いがある箇所が見つかった場合に、その箇所に対応する他方のデータを並べて表示させ、両方のデータを比較しながら溶接状態を確認することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の検査装置では、対象物のデータを検査員が一つずつ目視で確認し、溶接不良の疑いがある箇所ごとに両方のデータを照らし合わせながら溶接の良否を検査する必要がある。したがって、溶接状態を検査する作業に多大な労力がかかることになる。
【0005】
そこで、本発明は、検査作業の労力を削減することができる異常検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る異常検出装置は、アーク溶接を行っているときに対象物ごとに計測される溶接計測データを取得する第1取得部と、溶接された対象物の外観検査により対象物ごとに得られる外観データを取得する第2取得部と、取得された溶接計測データ及び外観データに基づいて、対象物の異常を検出する異常検出部と、検出された異常に基づいて、対象物の異常情報を生成する情報生成部と、を備える。
【0007】
この態様によれば、アーク溶接を行っているときに計測される溶接計測データと溶接された対象物の外観検査により得られる外観データとに基づいて対象物の異常を対象物ごとに検出し、その検出した異常に関する異常情報を生成することができる。これにより、作業員は、生成された異常情報に基づいて手直し作業を行うことが可能となる。
【0008】
上記態様において、第1取得部は、溶接計測データに対応する第1位置情報をさらに取得し、第2取得部は、外観データに対応する第2位置情報をさらに取得し、情報生成部は、検出された異常に対応する第1位置情報及び第2位置情報に基づいて、異常が検出された異常箇所を特定し、特定した異常箇所に関する情報を異常情報に含めて生成してもよい。
【0009】
この態様によれば、作業員は、異常情報に含まれる異常箇所に対して手直しを施すことができるため、手直し作業の精度を高めることが可能となる。
【0010】
上記態様において、異常情報は、対象物にマーキングするためのマーキング情報を含み、情報生成部は、溶接計測データに基づいて検出された異常及び外観データに基づいて検出された異常に基づいて、異常の発生パターンを特定し、特定した異常の発生パターンに対応するマーキング情報を生成してもよい。
【0011】
この態様によれば、作業員が、異常情報に含まれるマーキング情報に基づいて異常の発生パターンを認識し、その認識したパターンに対応する作業を行うことで手直しを施すことができるため、作業効率を高めることが可能となる。
【0012】
上記態様において、情報生成部は、検出された異常に対応する対象物の手直し工程に関する情報を異常情報に含めて生成してもよい。
【0013】
この態様によれば、作業員が、手直し工程に関する情報に基づいて手直し作業の内容を把握し、その把握した内容に基づいて手直しを施すことができるため、手直し作業の効率を高めることが可能となる。
【0014】
上記態様において、異常検出部は、取得された溶接計測データを異常検出用の閾値と比較することで対象物の異常を検出するとともに、取得された外観データを正常時の外観データと比較することで対象物の異常を検出してもよい。
【0015】
この態様によれば、異常検出用の閾値や正常時の外観データを用いて異常を検出することができるため、異常の検出精度を高めることが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、検査作業の労力を削減することができる異常検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態に係る異常検出装置を含む異常検出システムの概略構成を例示する模式図である。
【
図2】
図1に示す異常検出装置の構成を例示するブロック図である。
【
図3】
図1に示す異常検出装置の動作の一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。また、図面は模式的なものであるため、各構成要素の寸法や比率は実際のものとは相違する。
【0019】
[異常検出システム100]
図1は、実施形態に係る異常検出装置を含む異常検出システムの概略構成を例示する模式図である。同図に示すように、異常検出システム100は、例えば、異常検出装置1と、溶接工程2で用いられる溶接電源21、制御装置22及び溶接ロボット23と、外観検査工程3で用いられる制御装置31、外観検査ロボット32及びマーキングロボット33と、手直し工程4で用いられる表示装置41と、を備える。
【0020】
[溶接工程2]
溶接工程2は、溶接ロボット23が、ワーク(対象物)Wに対してアーク溶接を行う工程である。この溶接工程2では、例えば、溶接電源21、制御装置22及び溶接ロボット23が用いられる。
【0021】
溶接電源21は、制御装置22において設定される溶接ロボット用の施工条件に従って、溶接電流、溶接電圧及びワイヤ送給速度等を制御し、溶接ワイヤの先端とワークとの間にアークを発生させる。
【0022】
溶接ロボット用の施工条件には、例えば、溶接条件、溶接開始位置、溶接終了位置、溶接距離及び溶接トーチの姿勢が含まれる。溶接条件には、例えば、溶接電流、溶接電圧、溶接速度、ワイヤ送給速度及びワークの厚さが含まれる。
【0023】
制御装置22は、例えば、プロセッサ、メモリ及び通信インタフェースを含む制御ユニットにより構成される。プロセッサがメモリに格納された所定のプログラムを実行することで、溶接電源21や溶接ロボット23を制御する。
【0024】
溶接ロボット23は、制御装置22において設定される溶接ロボット用の施工条件に従ってアーク溶接を行う産業用ロボットである。具体的に、溶接ロボット23は、工場の床面等に固定されるベース部材上に設けられる多関節アームと、多関節アームの先端部に連結される溶接トーチと、多関節アームに固定されるワイヤ送給装置と、ワークWを設置する作業台とを有する。
【0025】
溶接工程2において、例えば、作業員が作業プログラムの実行を指示すると、制御装置22は、その指示に対応する作業プログラムの命令を順に実行する。例示的に、実行指示された命令が移動命令である場合、制御装置22は、溶接ロボット23の多関節アームのサーボモータを制御する。実行指示された命令が溶接開始命令である場合、制御装置22は、溶接電流及び溶接電圧の指令を溶接電源21に送信する。
【0026】
制御装置22から溶接電流及び溶接電圧の指令を受けた溶接電源21は、指令に対応する電流及び電圧を溶接ロボット23に出力する。溶接電源21は、アーク溶接中に取得した溶接計測データとその溶接計測データに対応する座標データとを異常検出装置1に送信する。溶接計測データは、アーク溶接を行っているときにワークWごとに計測される溶接に関するデータであり、例えば、ワーク識別NO、溶接電流、溶接電圧、溶接速度、ワイヤ送給速度を含む。ワーク識別NOは、ワークWを特定するための識別情報である。ワーク識別NOには、例えば、ライン作業で流れるワークWをカウンタで記録し、そのカウンタに対応する番号を割り当ててもよいし、ワークWにバーコードや二次元コードを付与し、それらのコードから読み取った番号を割り当ててもよい。
【0027】
[外観検査工程3]
外観検査工程3には、外観検査ロボット32が、溶接工程2で溶接されたワークWの外観を検査する工程と、マーキングロボット33が、外観検査後のワークWにマーキングする工程とが含まれる。この外観検査工程3では、例えば、制御装置31、外観検査ロボット32及びマーキングロボット33が用いられる。
【0028】
制御装置31は、例えば、プロセッサ、メモリ及び通信インタフェースを含む制御ユニットにより構成される。プロセッサがメモリに格納された所定のプログラムを実行することで、外観検査ロボット32やマーキングロボット33を制御する。
【0029】
外観検査ロボット32は、制御装置31において設定される外観検査ロボット用の施工条件に従って外観検査を行う産業用ロボットである。具体的に、外観検査ロボット32は、工場の床面等に固定されるベース部材上に設けられる多関節アームと、多関節アームの先端部に取り付けられるレーザセンサ等と、ワークWを設置する作業台とを有する。
【0030】
マーキングロボット33は、制御装置31において設定されるマーキングロボット用の施工条件に従ってマーキングを行う産業用ロボットである。具体的に、マーキングロボット33は、工場の床面等に固定されるベース部材上に設けられる多関節アームと、多関節アームの先端部に取り付けられるマーキング器具と、ワークWを設置する作業台とを有する。マーキング器具には、例えば、ペン、チョーク、スプレーが含まれる。
【0031】
外観検査工程3において、例えば、作業員が作業プログラムの実行を指示すると、制御装置31は、その指示に対応する作業プログラムの命令を順に実行する。例示的に、実行指示された命令が移動命令である場合、制御装置31は、外観検査ロボット32やマーキングロボット33の多関節アームのサーボモータを制御する。実行指示された命令が外観検査ロボット32に対する検査開始命令である場合、制御装置31は、外観検査開始の指令を外観検査ロボット32に送信する。実行指示された命令がマーキングロボット33に対するマーキング開始命令である場合に、制御装置31は、マーキング開始の指令をマーキングロボット33に送信する。
【0032】
制御装置22から外観検査開始の指令を受けた外観検査ロボット32は、レーザセンサを用いてワークWにある溶接ビードの外観データを取得する。外観データは、ワークWごとに生成され、ワーク識別NOを含む。外観検査ロボット32は、取得した外観データとその外観データに対応する座標データとを異常検出装置1に送信する。制御装置22からマーキング開始の指令を受けたマーキングロボット33は、マーキング器具を用いてワークWへのマーキングを開始する。
【0033】
ここで、溶接ロボット23及び外観検査ロボット32は、それぞれの座標系における位置を対応付けられるように調整することが好ましい。この場合、例えば、溶接ロボット23と外観検査ロボット32とのそれぞれにおける多関節アームの端部とワークとの位置関係が一致するようにキャリブレーションすることとしてもよい。二つの座標系を揃えた上で、例えば、溶接ロボット23と同じ教示プログラムを外観検査ロボット32に付与してもよい。この場合には、例えば、外観検査ロボット32が発見した異常箇所を、「溶接ビードの開始位置から○○だけ移動した箇所」のように特定することが可能となる。
【0034】
また、溶接ロボット23と外観検査ロボット32との間で、ワークWの座標系を用いて異常個所の情報を伝達することとしてもよい。この場合、例えば、溶接ロボット23と外観検査ロボット32との間で、「ワークWの基準点から見てどの位置に異常が発生した」のように伝達することが可能となる。
【0035】
[手直し工程4]
手直し工程4は、外観検査工程3のマーキング工程でマーキングされた目印に基づいて、作業員がワークWを手直しする工程である。この手直し工程4では、例えば、表示装置41が用いられる。
【0036】
表示装置41は、文字や映像等を表示するディスプレイ装置である。表示装置41は、異常検出情報を表示する。異常検出情報は、ワーク識別NOごとに生成される。異常検出情報には、例えば、溶接計測データ及び外観データごとに、異常が検出された異常箇所を示す情報が含まれる。異常箇所は、その異常箇所に対応する座標データにより表すことができる。例えば、一つの座標データにより異常箇所の位置を表すことや、異常の始点に対応する座標データと異常の終点に対応する座標データとの組により異常箇所の範囲を表すことができる。
【0037】
手直し工程4では、表示装置41に表示された異常検出情報を作業員が確認しながら、ワークにマーキングされた箇所に対応する手直し作業を行う。
【0038】
[異常検出装置1]
図2を参照して、異常検出装置1の構成について説明する。異常検出装置1は、機能的な構成として、例えば、制御部10、記憶部14及び通信部15を有する。
【0039】
記憶部14は、異常検出装置1における処理の実行に必要な各種のプログラムや各種の情報を記憶する。各種の情報として、例えば、ワーク検査情報がある。このワーク検査情報には、例えば、溶接計測データ、外観データ及び異常検出情報が含まれる。
【0040】
通信部15は、例えば、制御装置22や溶接電源21、制御装置31、表示装置41との間の通信を制御する。通信部15は、例えば、異常が検出されたワークWに対応するワーク検査情報を表示装置41に表示させる表示部としての機能を含む。
【0041】
[制御部10]
制御部10は、プロセッサがメモリに格納された所定のプログラムを実行することにより、例えば、取得部11、異常検出部12及び情報生成部13の各機能を実現する。制御部10が有する各機能について、以下に説明する。
【0042】
[取得部11]
取得部11は、アーク溶接を行っているときにワークWごとに計測される溶接計測データ、及びその溶接計測データに対応する座標データを第1座標データとして取得する。具体的に、取得部11は、制御部10からデータ取得開始命令を受信すると、取得した溶接計測データや第1座標データを記憶部14のデータバッファに格納する。取得部11は、制御部10からデータ取得終了命令を受信すると、データバッファへの格納を停止する。
【0043】
取得部11は、溶接されたワークWの外観検査によりワークWごとに得られる外観データ、及びその外観データに対応する座標データを第2座標データとして取得する。具体的に、取得部11は、制御部10からデータ取得開始命令を受信すると、取得した外観データや第2座標データを記憶部14のデータバッファに格納する。取得部11は、制御部10からデータ取得終了命令を受信すると、データバッファへの格納を停止する。
【0044】
なお、第1座標データ又は第2座標データは、異常検出部12により異常が検出された場合に取得することにしてもよい。この場合、異常が検出された溶接計測データに対応する座標データを第1座標データとして取得し、異常が検出された外観データに対応する座標データを第2座標データとして取得する。
【0045】
[異常検出部12]
異常検出部12は、取得部11により取得された溶接計測データ及び外観データに基づいて、ワークWの異常を検出する。
【0046】
具体的に、異常検出部12は、制御部10から異常検出処理開始命令を受信すると、データバッファに格納された溶接計測データと異常検出用の閾値とを比較することでワークWの異常を検出するとともに、データバッファに格納された外観データと正常時の外観データとを比較することでワークWの異常を検出する。
【0047】
[情報生成部13]
情報生成部13は、異常検出部12により検出された異常に基づいて、ワークWの異常情報を生成する。
【0048】
異常情報には、例えば、上述の異常検出情報、マーキング情報、及び手直し工程情報が含まれる。マーキング情報は、異常が検出されたワークWにマーキングするための情報である。手直し工程情報は、異常が検出されたワークWに対して施す手直しに関する情報である。手直し工程情報には、例えば、溶接不良の手直しが必要である旨のメッセージを含むことができる。
【0049】
情報生成部13は、検出された異常に対応する第1座標データ及び第2座標データに基づいて、異常が検出された異常箇所を特定し、特定した異常箇所に関する情報に基づいて異常検出情報を生成する。
【0050】
情報生成部13は、溶接計測データに基づいて検出された異常と、外観データに基づいて検出された異常とに基づいて、異常の発生パターンをワークWごとに特定し、特定した異常の発生パターンに基づいてマーキング情報を生成する。異常の発生パターンには、例えば、(1)溶接計測データと外観データの両方で共通して異常が検出される第1パターン、(2)溶接計測データのみで異常が検出される第2パターン、(3)外観データのみで異常が検出される第3パターンを含むことができる。異常の発生パターンごとに生成するマーキング情報について、以下に説明する。
【0051】
(1)第1パターン(溶接計測データと外観データの両方で異常が検出されるパターン)
第1パターンに対応する異常箇所では、溶接不良が発生している可能性が高いことが想定される。この場合、情報生成部13は、異常の始点から異常の終点まで、第1パターン用の目印を用いてマーキングさせるためのマーキング情報を生成する。異常の始点と異常の終点は、溶接計測データ又は外観データの異常箇所に対応する座標に基づいて特定することができる。目印は、各パターンを識別できるように、パターンごとに異なる色や模様等を用いて任意に設定することができる。
【0052】
ここで、溶接計測データと外観データの両方で共通して異常が検出される場合には、両方の異常箇所が一致する場合のみならず、異常箇所の一部が重なっている場合も含まれる。異常箇所の一部が重なっている場合を考慮すると、それぞれの異常箇所を区別できるように目印をマーキングすることが好ましい。例えば、溶接計測データの異常箇所と外観データの異常箇所とに対し、それぞれ異なる目印を設定し、それぞれの目印を並列させてマーキングすることができる。
【0053】
(2)第2パターン(溶接計測データのみで異常が検出されるパターン)
第2パターンに対応する異常箇所では、溶接ビードの外観には異常がないが、溶接ビードの内部に、例えば溶け込み不良等の不良が発生している可能性が高いことが想定される。この場合、情報生成部13は、異常の始点から異常の終点まで、第2パターン用の目印を用いてマーキングさせるためのマーキング情報を生成する。異常の始点と異常の終点は、溶接計測データの異常箇所に対応する座標に基づいて特定することができる。
【0054】
(3)第3パターン(外観データのみで異常が検出されるパターン)
第3パターンに対応する異常箇所では、例えば、狙い位置のずれや、アーク通過後に発生した不良(例えば、ピットやピンホール)等の溶接計測データに変化が現れない溶接不良が発生している可能性が高いことが想定される。この場合、情報生成部13は、異常の始点から異常の終点まで、第3パターン用の目印を用いてマーキングさせるためのマーキング情報を生成する。異常の始点と異常の終点は、外観データの異常箇所に対応する座標に基づいて特定することができる。
【0055】
情報生成部13は、表示装置41に表示させる手直し工程情報を生成する。例示的に、上記第1パターン及び第3パターンである場合に、情報生成部13は、手直し工程の作業員に対して、溶接不良の手直しが必要であることを喚起するためのメッセージを手直し工程情報に含めて生成する。また、上記第2パターンである場合に、情報生成部13は、手直し工程の作業員に対して、ワークWのうち特に裏側の状態を確認することを喚起するためのメッセージを手直し工程情報に含めて生成する。この場合、作業員が、例えば溶け込み不良であると判断した場合に、手直し作業を行うことになる。
【0056】
[異常検出装置1の動作]
次に、
図3を参照して、実施形態に係る異常検出装置1の動作について説明する。
【0057】
最初に、異常検出装置1の取得部11は、アーク溶接を行っているときにワークWごとに計測される溶接計測データを取得する(ステップS101)。
【0058】
続いて、異常検出装置1の取得部11は、溶接されたワークWの外観検査によりワークWごとに得られる外観データを取得する(ステップS102)。
【0059】
続いて、異常検出装置1の異常検出部12は、上記ステップS101で取得された溶接計測データ及び上記ステップS102で取得された外観データに基づいて、異常があるか否かを判定する(ステップS103)。この判定がNOである場合(ステップS103;NO)に、異常検出装置1は本動作を終了する。
【0060】
上記ステップS103の判定で異常があると判定された場合(ステップS103;YES)に、異常検出装置1の情報生成部13は、溶接計測データに基づいて検出された異常と外観データに基づいて検出された異常とに基づいて、異常の発生パターンをワークWごとに特定する(ステップS104)。
【0061】
続いて、異常検出装置1の情報生成部13は、上記ステップS104で特定した異常の発生パターンに基づいてマーキング情報を生成する(ステップS105)。
【0062】
続いて、異常検出装置1の情報生成部13は、表示装置41に表示させる手直し工程情報を生成する(ステップS106)。そして、異常検出装置1は、本動作を終了する。
【0063】
上述したように、実施形態に係る異常検出装置1によれば、溶接計測データ及び外観データを取得し、その取得した溶接計測データ及び外観データに基づいて、ワークWの異常をワークWごとに検出し、その検出した異常に関する異常情報を生成することができる。これにより、作業員は、異常検出装置1により生成された異常情報に基づいて手直し作業を行うことが可能となる。
【0064】
例えば、作業員は、異常情報に含まれる異常箇所に対して手直しを施すことができるようになる。これにより、手直し作業の精度を高めることが可能となる。
【0065】
また、作業員は、異常情報に含まれるマーキング情報に基づいて異常の発生パターンを認識し、その認識したパターンに対応する作業を行うことで手直しを施すことが可能となる。例えば、作業員は、上記第2パターンの場合にのみ、ワークWの状態を確認して、不良か否かを検査すればよい。これにより、作業員の検査負担を最小限に抑えることができ、作業効率を高めることが可能となる。
【0066】
このように、実施形態に係る異常検出装置1によれば、検査作業の労力を削減することが可能となる。
【0067】
また、実施形態に係る異常検出装置1を含む異常検出システム100では、溶接ロボット23と、外観検査ロボット32及びマーキングロボット33と、を別個に独立させて設けているため、溶接工程2と外観検査工程3とが別々の生産ラインで実施される態様にも柔軟に適用することが可能となる。
【0068】
[変形例]
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
【0069】
例えば、上述した実施形態では、外観検査工程3において、外観検査ロボット32とマーキングロボット33とを用いて作業しているが、ワークの外観を検査する工程とワークにマーキングする工程とを一つのロボットに作業させてもよい。
【0070】
また、上述した実施形態では、ワークの外観を検査する工程とワークにマーキングする工程とを外観検査工程3の中でまとめて行っているが、それぞれの工程を別工程に分離して独立して行うこととしてもよい。この場合、それぞれの工程ごとに制御装置を設けることが好ましい。
【0071】
また、上述した実施形態における各工程間や各ロボット間でワークWを搬送する際に、搬送ロボット(ハンドリングロボット)を用いてワークWを搬送することとしてもよい。例えば、溶接ロボット23の作業領域から外観検査ロボット32の作業領域までワークWを搬送する第1搬送ロボット、外観検査ロボット32の作業領域からマーキングロボット33の作業領域までワークWを搬送する第2搬送ロボット、及びマーキングロボット33の作業領域からの手直し工程4の作業領域までワークWを搬送する第3搬送ロボットをさらに備えることができる。
【0072】
また、上述した実施形態では、異常箇所を特定する際に、第1座標データ及び第2座標データを用いているが、座標データを用いて異常箇所を特定することに限定されない。ワークW上のいずれかの位置に対応する位置情報に基づいて異常箇所を特定できればよい。例えば、溶接開始位置(位置情報)から異常が発生するまでの経過時間を計測し、その計測した時間×溶接速度により異常箇所を特定してもよい。この場合、取得部11は、溶接計測データ及び第1位置情報と、外観データ及び第2位置情報とを取得し、情報生成部13は、異常検出部12により検出された異常に対応する第1位置情報及び第2位置情報に基づいて、異常箇所を特定すればよい。
【0073】
また、上述した実施形態において、例えばバーコードや二次元コードを用いてワークWにワーク識別NOを付与し、溶接工程2を実施する前にワーク識別NOを読み取る工程をさらに設けることとしてもよい。この場合、例えば、読み取ったワーク識別NOを、異常検出装置1に送信し、異常検出装置1が、ワーク識別NOに基づいてワーク検査情報を生成し、後続する工程で受信する溶接計測データ、外観データ及び異常検出情報をワーク識別NOに紐づけて記憶させてもよい。
【0074】
さらに、上述した実施形態において、異常検出装置1の異常検出部12が溶接計測データや外観データに基づいてワークWの異常を検出する際に、異常検出用の閾値や正常時の外観データと比較しているが、比較する値やデータは、これらに限定されない。ワークWの異常を検出することができる値やデータであればよく、上記の他にも、例えば、正常値や絶対値を用いて比較してもよい。
【符号の説明】
【0075】
1…異常検出装置、2…溶接工程、3…外観検査工程、4…手直し工程、10…制御部、11…取得部、12…異常検出部、13…情報生成部、14…記憶部、15…通信部、21…溶接電源、22…制御装置、23…溶接ロボット、31…制御装置、32…外観検査ロボット、33…マーキングロボット、41…表示装置、100…異常検出システム