IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 理想科学工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-搬送装置 図1
  • 特開-搬送装置 図2
  • 特開-搬送装置 図3
  • 特開-搬送装置 図4
  • 特開-搬送装置 図5
  • 特開-搬送装置 図6
  • 特開-搬送装置 図7
  • 特開-搬送装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102439
(43)【公開日】2023-07-25
(54)【発明の名称】搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 5/22 20060101AFI20230718BHJP
【FI】
B65H5/22 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022002916
(22)【出願日】2022-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128451
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 隆一
(72)【発明者】
【氏名】坂本 匡祥
【テーマコード(参考)】
3F049
【Fターム(参考)】
3F049FB02
3F049FB03
3F049LA01
3F049LB05
(57)【要約】
【課題】印刷媒体の反りを十分に抑制し、印刷媒体の汚染やインクジェットヘッドの損傷を防止することができる搬送装置を提供する。
【解決手段】印刷媒体Pを吸着して搬送する搬送ベルト11と、搬送ベルト11の搬送方向に延設される可撓性を有するシート部材30であって、一部の範囲が印刷媒体Pにおける搬送方向に延びる端部に重なるように搬送ベルト11上に載置されることによって、上記一部の範囲以外の範囲が搬送ベルト11に吸着するシート部材30とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体を吸着して搬送する搬送部と、
前記搬送部の搬送方向に延設される可撓性を有するシート部材であって、一部の範囲が前記印刷媒体における前記搬送方向に延びる端部に重なるように前記搬送部上に載置されることによって、前記一部の範囲以外の範囲が前記搬送部に吸着するシート部材とを備えた搬送装置。
【請求項2】
前記シート部材の前記搬送方向の上流側の端部を保持する保持部を有し、
前記保持部が、前記シート部材の上流側の端部から延びる部分を撓ませて傾斜させることによって、前記シート部材が前記搬送部の搬送面に向けて付勢するように前記シート部材を保持する請求項1記載の搬送装置。
【請求項3】
前記保持部が、前記搬送方向に直交する方向に延設されたスリットを有し、前記保持部の鉛直方向下面から前記スリット内を通して前記シート部材の上流側の端部を保持することによって前記傾斜を形成する請求項2記載の搬送装置。
【請求項4】
前記保持部が、前記搬送部の搬送面に対して鉛直方向に所定の間隔を空けて重ねて設置される2枚の板部材であって、上流側から下流側に向けて下がるように傾斜する傾斜面が形成された2枚の板部材を有し、前記2枚の板部材の間を通して前記シート部材の上流側の端部を保持することによって前記傾斜を形成する請求項2記載の搬送装置。
【請求項5】
前記搬送部の吸引力を制御する制御部を有し、
前記制御部が、前記搬送方向に直交する方向の前記印刷媒体の幅に応じて前記吸引力を変更する請求項1から4いずれか1項記載の搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷媒体を搬送する搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、紙またはフィルムなどからなる印刷媒体を搬送しつつ、インクジェットヘッドから印刷媒体に対してインクを吐出して印刷を施すインクジェット印刷装置が提案されている。
【0003】
このようなインクジェット印刷装置における印刷媒体の搬送装置として、搬送ベルトを用いた搬送装置が提案されている。具体的には、搬送ベルトの印刷媒体の搬送面の裏側の面に対向させて吸引ファンを設け、吸引ファンの回転によって搬送ベルトに形成された多数の吸引孔に負圧を発生させ、これにより搬送ベルトに印刷媒体を吸着させる搬送装置が提案されている。
【0004】
ここで、搬送装置によって印刷媒体を搬送する際、印刷媒体に反り(カール)があると印刷媒体がインクジェットヘッドに接触し、印刷媒体が汚れたり、インク吐出面が損傷してしまうおそれがある。
【0005】
そこで、たとえば特許文献1においては、印刷媒体の端部に向けて負圧を大きくすることによって、印刷媒体のサイドの反りを抑制する搬送装置が提案されている。
【0006】
また、特許文献2では、印刷媒体の浮き上がりを抑制する搬送装置として、印刷媒体の搬送方向に並べて配置されるインクジェットヘッド間に、印刷媒体の搬送方向に直交する方向に延設された回転ローラを設け、この回転ローラによって印刷媒体の浮き上がりを押さえる搬送装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010-228262号公報
【特許文献2】特開2013-28132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1のように印刷媒体の端部の負圧を大きくすることによって、印刷媒体のサイドの反りを抑制することができるが、封筒などで発生する強い反りに対しては負圧の制御だけでは確実に反りを抑制することができない場合がある。また、負圧を大きくしても、印刷媒体の端部の位置に吸引孔が配置されていないと、印刷媒体の最端部を吸引することができないため、十分に反りを抑制することができない場合がある。
【0009】
また、特許文献2の構成では、回転ローラがない場所では印刷媒体の浮きを押さえることができないため、印刷媒体がインクジェットヘッドに接触するおそれがある。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑み、印刷媒体の反りを十分に抑制し、印刷媒体の汚染やインクジェットヘッドの損傷を防止することができる搬送装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の搬送装置は、印刷媒体を吸着して搬送する搬送部と、搬送部の搬送方向に延設される可撓性を有するシート部材であって、一部の範囲が印刷媒体における搬送方向に延びる端部に重なるように搬送部上に載置されることによって、上記一部の範囲以外の範囲が搬送部に吸着するシート部材とを備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明の搬送装置によれば、搬送方向に延設される可撓性を有するシート部材であって、一部の範囲が印刷媒体の端部に重なるように搬送部上に載置されることによって、上記一部の範囲以外の範囲が搬送部に吸着するシート部材を備えるようにしたので、搬送部へのシート部材の吸着によって、シート部材によって印刷媒体の端部を押圧することができるので、印刷媒体の反りを十分に抑制することができ、印刷媒体の汚染やインクジェットヘッドの損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の搬送装置の一実施形態を用いたインクジェット印刷装置の概略構成を示す図
図2】搬送ユニットおよびシート部材を上方から見た図
図3】シート部材および保持機構を取り外した状態を示す外観斜視図
図4図3に示す保持機構のA-A線断面図を示す図
図5】インクジェット印刷装置の制御系の概略構成を示すブロック図
図6】シート部材のその他の実施形態を示す図
図7】保持機構のその他の実施形態を示す図
図8図7に示す保持機構40のB-B線断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の搬送装置の一実施形態を用いたインクジェット印刷装置について詳細に説明する。図1は、本実施形態のインクジェット印刷装置1の概略構成図である。なお、図1に矢印で示す上下左右が、本実施形態のインクジェット印刷装置1における上下左右方向とする。また、図1の紙面に対して手前側を前方向、奥側を後方向とする。
【0015】
本実施形態のインクジェット印刷装置1は、図1に示すように、搬送ユニット10と、画像形成部20とを備えている。
【0016】
搬送ユニット10は、搬送ベルト11と、プラテンローラ12と、吸引ファン13と、搬送ローラ14とを備えている。本実施形態においては、搬送ユニット10が、本発明の搬送部に相当する。
【0017】
搬送ベルト11およびプラテンローラ12は、インクジェット印刷装置1の筐体から直接または筐体に設けられた筐体以外の部材から間接的に吊り下げられて支持されている。
【0018】
搬送ベルト11は、環状ベルトであって、印刷媒体Pを吸着するための多数の吸引孔11a(図2に示す白丸)が形成されている。プラテンローラ12は、印刷媒体Pの搬送方向に直交する方向に延設されるローラである。本実施形態では、図1に示すように、4本のプラテンローラ12が設けられている。
【0019】
搬送ベルト11は、上述した4つのプラテンローラ12に掛け渡されており、4つのプラテンローラ12が回転することによって、搬送ベルト11が移動し、搬送ベルト11に吸着された印刷媒体Pが搬送される。本実施形態では、プラテンローラ12は、図1における時計回り回転する。これにより搬送ベルト11に吸着された印刷媒体Pが、図1における左から右に向かって搬送される。図1に示す左側が搬送方向上流側であり、右側が搬送方向下流側である。
【0020】
搬送ベルト11における印刷媒体Pの搬送面の裏側には、上流側と下流側とで2つの吸引ファン13が設けられている。吸引ファン13が回転することによって、搬送ベルト11の吸引孔11aに負圧が発生し、これにより搬送ベルト11に印刷媒体Pが吸着する。
【0021】
搬送ベルト11の上方には、7本の搬送ローラ14が設けられている。搬送ローラ14は、搬送ベルト11の上方近傍に設けられ、印刷媒体Pの搬送方向に直交する方向に延設されるローラである。搬送ローラ14は、搬送方向について所定の間隔を空けて配置される。具体的には、後述する各ラインヘッド21の搬送方向両側にそれぞれ設けられる。各搬送ローラ14は、図1における時計回りに回転し、その直下で搬送される印刷媒体Pを上方から押圧しながら下流側に送り出すローラである。
【0022】
各搬送ローラ14によって印刷媒体Pが押圧されることによって、印刷媒体Pの反りを抑制することができるが、上述したように搬送ローラ14と搬送ローラ14との間、すなわちラインヘッド21の直下においては、印刷媒体Pの反りを押圧することができないため、印刷媒体Pがインクジェットヘッドに接触し、印刷媒体Pが汚染されたり、インク吐出面が損傷したりするおそれがある。
【0023】
そこで、本実施形態のインクジェット印刷装置1は、搬送ローラ14およびラインヘッド21と搬送ベルト11の搬送面との間に、シート部材30が設けられる。
【0024】
シート部材30は、印刷媒体Pの搬送方向に延設される可撓性を有するシート状の部材である。シート部材30は、たとえばPET(polyethylene terephthalate)から形成される。シート部材30の材料としては、PETに限らず、シート部材30が自重によって撓む程度の可撓性を有する材料であれば、その他の樹脂などの材料を用いてもよい。
【0025】
シート部材30は、その一部の範囲が印刷媒体Pにおける搬送方向に延びる端部に重なるように、搬送ベルト11の搬送面上に配置される。図2は、図1に示す搬送ユニット10およびシート部材30を上方から見た図である。図2では、印刷媒体Pとして、長形3号の封筒が搬送ベルト11によって搬送される例を示している。
【0026】
図2に示すように、シート部材30は、搬送方向に延設されるものであり、その一部の範囲が、封筒における搬送方向に延びる端部に重なるように設置されている。本実施形態では、封筒の両端部に重なるように、2枚のシート部材30が設置される。シート部材30と封筒の端部とが重なる範囲W1の幅は10mm程度であり、シート部材30の封筒と重ならない範囲W2の幅は50mm程度である。
【0027】
シート部材30と封筒が重ならない範囲W2は、搬送ベルト11の吸引によって、搬送ベルト11の搬送面に吸着する。そして、シート部材30における重ならない範囲W2の吸着によって、シート部材30と封筒が重なる範囲W1に対して下方に力が働き、この力によってシート部材30が重なる封筒の端部が、下方に向けて押圧される。このシート部材30による封筒の端部の押圧によって、ラインヘッド21の直下における封筒の反りを十分に抑制することができ、封筒がインクジェットヘッドに接触し、封筒が汚染されたり、インク吐出面が損傷するのを防止することができる。
【0028】
なお、シート部材30が封筒の端部と重なる範囲W1の幅と重ならない範囲W2の幅については、上述した例に限らず、印刷媒体Pの印刷範囲、印刷媒体Pの反りの強さ、吸引ファン13の吸引力、およびシート部材30に要求される押圧力などを考慮して適宜設定される。
【0029】
また、シート部材30の上流側の端部は、保持機構31によって保持される。保持機構31は、搬送ベルト11の搬送方向に直交する方向の両側に設けられた金属部材32に対してネジ止めされるが、着脱可能に構成されている。たとえば反りが少ない印刷媒体Pに対して印刷処理を施す場合には、保持機構31とともにシート部材30は取り外し可能に構成されている。
【0030】
図3は、シート部材30および保持機構31を取り外した状態を示す外観斜視図である。
【0031】
保持機構31は、たとえば金属やプラスチックなどから形成されるものであり、図2および図3に示すように、搬送方向に直交する方向に延設される細長い長方形の板状部材である。保持機構31には、シート部材30を取り付けるための開口部33,34が形成されている。
【0032】
図4は、図3に示す保持機構31の開口部33のA-A線断面図を示す図である。保持機構31の開口部33には、保持機構31の上面31aから少し下がった位置に段差が形成されている。この保持機構31の段差の下側の面がシート取り付け面31bであり、シート取り付け面31b上に、シート部材30の端部が取り付けられる。シート部材30の端部は、たとえば両面テープや糊などによってシート取り付け面上31b上に取り付けられる。
【0033】
また、保持機構31の開口部33には、搬送方向に直交する方向に延設されたスリットSが形成されている。シート部材30の上流側の端部(シート取り付け面31bに取り付けられた部分)から延びる部分がスリットS内を通されて、保持機構31の下側に配置される。
【0034】
保持機構31は、上述したようにスリットS内を通してシート部材30の上流側の端部をシート取り付け面31bで保持し、シート部材30の上流側の端部から延びる部分を保持機構31の下側に配置することによって、シート取り付け面31bと保持機構31の下面31cとの段差により、シート部材30の上流側の端部から延びる部分を撓ませ傾斜面CLを形成する。本実施形態においては、スリットSの搬送方向の幅は、6mm程度であり、シート取り付け面31bと保持機構31の下面31cとの段差は、2mm程度である。
【0035】
保持機構31は、上述したようにシート部材30の上流側の端部から延びる部分を撓ませて傾斜させることによって、シート部材30が搬送ベルト11の搬送面に向けて付勢するようにシート部材30を保持する。このように、シート部材30が搬送ベルト11の搬送面に向けて付勢することによって、シート部材30が重なる印刷媒体Pの端部に対する押圧力をより大きくすることができる。また、保持機構31は、スリットS内をシート部材30を通すことによって傾斜面CLを形成するようにしたので、部品点数を増やすことなく、省スペースな構成でシート部材30を傾斜させることができる。
【0036】
傾斜面CLの搬送面に対する傾斜角度θは、30度程度であるが、20度以上40度以下であることが好ましい。傾斜角度θを20度以上とすることによって、シート部材30の押圧力をより大きくすることができる。また、傾斜角度θを40度以下とすることによって、シート部材30の傾斜面CLへの印刷媒体Pの先端の衝突を抑制することができ、印刷媒体Pの先端をシート部材30と搬送面との間にスムーズに送ることができる。
【0037】
搬送ベルト11に供給された印刷媒体Pは、その下流側の端部が、保持機構31と搬送ベルト11の搬送面との間に挿入される。保持機構31の上流側の下面には、図4に示すように傾斜面31dが形成されている。傾斜面31dは、下流側から上流側に向けて上がるような傾斜面である。傾斜面31dの搬送面に対する傾斜角度は、20度程度である。このように傾斜面31dを形成することによって、保持機構31と搬送ベルト11の搬送面との間に形成される印刷媒体Pの挿入口の上下方向の間隔を大きくすることができる。これにより、印刷媒体Pの保持機構31への衝突を抑制することができる。
【0038】
そして、保持機構31と搬送ベルト11の搬送面との間に挿入された印刷媒体Pは、搬送ベルト11によって下流側に搬送され、シート部材30と搬送面との間に挿入される。シート部材30が下方に配置される保持機構31の下面31cの上流端には、下面31cに連続する傾斜面31eが形成されている。傾斜面31eは、傾斜面31dと同様に、下流側から上流側に向けて上がるような傾斜面である。傾斜面31eの搬送面に対する傾斜角度は、45度程度である。
【0039】
このようにシート部材30の上面と保持機構31との接触部分を直角ではなく傾斜面とすることによって、シート部材30の上面に対する単位面積当たりの圧力を小さくすることができるので、シート部材30に対する負荷を小さくし、シート部材30の耐久性を向上させることができる。
【0040】
そして、シート部材30と搬送面との間に挿入された印刷媒体Pは、所定の搬送速度で画像形成部20に向けて搬送される。
【0041】
画像形成部20は、図1に示すように、搬送ユニット10の搬送ベルト11に対向する位置に設けられ、6つのラインヘッド21と、ヘッドホルダ22とを備えている。
【0042】
各ラインヘッド21は、インクを吐出する複数のノズルを有するインクジェットヘッドを複数備えている。
【0043】
各ラインヘッド21は、それぞれ印刷媒体Pの搬送方向に直交する方向に延設されるものであり、搬送ユニット10によって搬送される印刷媒体Pに対してインクを吐出するものである。6つのラインヘッド21は、図1に示すように、印刷媒体Pの搬送経路に沿って所定の間隔を空けて配列されている。6つのラインヘッド21は、それぞれ異なる色(例えばブラック、シアン、マゼンタ、イエロー、グレーおよび上記の色以外の特殊な色)のインクを吐出するものである。
【0044】
ヘッドホルダ22は、各ラインヘッド21が設置される部材である。ヘッドホルダ22は、箱型の支持部材から構成されており、ヘッドホルダ22の底面には、各ラインヘッド21が有する各インクジェットヘッドが嵌め込まれて設置される複数の設置孔が形成されている。設置孔は貫通孔であって、各インクジェットヘッドのインク吐出面がヘッドホルダ22の底面外側に露出して配置されるように形成されている。
【0045】
そして、上述したように印刷媒体Pの搬送方向に延びる端部がシート部材30によって押圧されながら、画像形成部20の直下を印刷媒体Pが搬送され、各ラインヘッド21から印刷媒体Pに対してインクが吐出されることによって、印刷媒体Pに対して印刷処理が施される。
【0046】
図5は、本実施形態のインクジェット印刷装置1の制御系の概略構成を示すブロック図である。制御部50は、CPU(Central Processing Unit)、半導体メモリおよびハードディスクなどを備えている。制御部50は、半導体メモリまたはハードディスクなどの記憶媒体に予め記憶されたプログラムを実行し、かつ電気回路を動作させることによって、インクジェット印刷装置1の各部の動作を制御するものである。
【0047】
特に、本実施形態の制御部50は、吸引ファン13の駆動モータに印加される駆動電圧のデューティ比を変更することによって、その回転数を制御する。
【0048】
ここで、シート部材30と印刷媒体Pが重ならない範囲の幅(図2に示すW2)と吸引ファン13の駆動モータに印加される駆動電圧のデューティ比との組み合わせと、シート部材30が印刷媒体Pの搬送方向に延びる端部に及ぼす押圧力(低、中、高)との関係を下表1に示す。下表1に示すように、駆動電圧のデューティ比が同じ場合、シート部材30と印刷媒体Pが重ならない範囲の幅が大きくなるほど押圧力は大きくなる。また、シート部材30と印刷媒体Pが重ならない範囲の幅が同じ場合、デューティ比が大きくなるほど押圧力は大きくなる。
【0049】
【表1】
【0050】
したがって、本実施形態では、搬送方向に直交する方向についてのシート部材30の設置位置は固定とした場合において、制御部50は、搬送方向に直交する方向の印刷媒体Pの幅が大きいほど駆動電圧のデューティ比が大きくなるように制御する。すなわち、制御部50は、シート部材30と印刷媒体Pが重ならない範囲の幅が小さくなるほど駆動電圧のデューティ比が大きくなるように制御する。これにより、印刷媒体Pの大きさに関わらず、シート部材30の印刷媒体Pの端部に対する押圧力を維持することができ、印刷媒体Pの反りを適切に抑制することができる。
【0051】
なお、本実施形態においては、上述したように搬送方向に直交する方向についてのシート部材30の設置位置は固定とし、印刷媒体Pの幅に応じて吸引ファン13の駆動電圧のデューティ比を変更するようにしたが、このような制御に限らず、たとえば吸引ファン13の駆動電圧のデューティ比は固定とし、印刷媒体Pの幅に応じて、搬送方向に直交する方向についてのシート部材30の設置位置を変更するようにしてもよい。具体的には、シート部材30と印刷媒体Pとが重ならない範囲の面積が一定となるように、印刷媒体Pの幅に応じてシート部材30の設置位置を変更するようにしてもよい。このような構成によっても、印刷媒体Pの大きさに関わらず、シート部材30の印刷媒体Pの端部に対する押圧力を維持することができ、印刷媒体Pの反りを適切に抑制することができる。
【0052】
搬送方向に直交する方向についてのシート部材30の設置位置を変更については、搬送方向に直交する方向についてシート部材30を移動させる移動機構を保持機構31に設けるようにすればよい。シート部材30の移動は、手動で行うようにしてもよいし、印刷媒体Pの幅に応じて自動で行うようにしてもよい。
【0053】
また、上記実施形態においては、シート部材30を長方形で形成するようにしたが、これに限らず、図6に示すように、L字型で形成するようにしてもよい。すなわち、シート部材30が、搬送方向の延設される部分と搬送方向に直交する方向に延設される部分とから構成されていてもよい。印刷媒体Pがシート部材30と搬送ベルト11の搬送面との間の挿入口に挿入される際、たとえば印刷媒体Pの下流側端部の中央に反りがあると保持機構31に衝突してスムーズに搬送できない可能性がある。そこで、図6に示すようにシート部材30をL字型で形成することによって、印刷媒体Pの下流側端部の中央の反りを抑制することができ、保持機構31への衝突を防止することができる。
【0054】
また、上記実施形態においては、保持機構31のスリットS内にシート部材30を通すことによって、シート部材30に傾斜面CLを形成するようにしたが、傾斜面CLを形成するための構成としては、これに限らず、その他の如何なる構成でもよい。
【0055】
図7は、スリットSではなく、傾斜面を有する2枚の板部材を用いてシート部材30に傾斜面CLを形成する保持機構40の構成を示す外観斜視図である。具体的には、保持機構40は、搬送ベルト11の搬送面に対して鉛直方向に所定の間隔を空けて重ねて設置される第1の板部材41と第2の板部材42を有する。第1の板部材41の上に、所定の間隔を空けて第2の板部材42が配置される。
【0056】
図8は、図7に示す保持機構40のB-B線断面図である。第1の板部材41と第2の板部材42との鉛直方向の間隔は、シート部材30の厚さよりも広い間隔に設定されており、第1の板部材41と第2の板部材42との間をシート部材30が通過可能に構成されている。
【0057】
第1の板部材41は、シート部材30の上流側の端部が取り付けられるシート取り付け面41aを有する水平部分41bと、その水平部分41bから上流側に向けて延設される斜面部分41cと、水平部分41bから下流側に向けて延設される斜面部分41dとから構成されている。斜面部分41cおよび斜面部分41dは、上流側から下流側に向けて下がるように傾斜する傾斜面を有する。
【0058】
第2の板部材42は、第1の板部材41の水平部分41bに対向して設けられた水平部分42aと、その水平部分42aから下流側に向けて延設される斜面部分42bとから構成されている。斜面部分42bは、上流側から下流側に向けて下がるように傾斜する傾斜面を有する。
【0059】
そして、シート部材30は、第1の板部材41と第2の板部材42の間を通され、その上流側の端部が第1の板部材41のシート取り付け面41a上に取り付けられる。シート部材30の上流側の端部は、たとえば両面テープや糊などによってシート取り付け面41a上に取り付けられる。
【0060】
そして、シート部材30の上流側の端部から延設される部分が、第1の板部材41の斜面部分41dと第2の板部材42の斜面部分42bとの間を通されることによって、シート部材30の上流側の端部から延びる部分が撓み、傾斜面CLが形成される。傾斜面CLの搬送面に対する傾斜角度θは、20度以上40度以下であることが好ましい。
【0061】
保持機構40は、上述したようにシート部材30の上流側の端部から延びる部分を撓ませて傾斜させることによって、シート部材30が搬送ベルト11の搬送面に向けて付勢するようにシート部材30を保持する。このように、シート部材30が搬送ベルト11の搬送面に向けて付勢することによって、シート部材30が重なる印刷媒体Pの端部に対する押圧力をより大きくすることができる。また、保持機構40は、第1の板部材41と第2の板部材42との間をシート部材30を通すことによって傾斜面CLを形成するようにしたので、スリットのような加工をすることなく、より簡易な工法にて作成することができる。
【0062】
本発明の搬送装置に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記)
【0063】
本発明の搬送装置においては、シート部材の搬送方向の上流側の端部を保持する保持部を有し、保持部は、シート部材の上流側の端部から延びる部分を撓ませて傾斜させることによって、シート部材が搬送部の搬送面に向けて付勢するようにシート部材を保持することができる。
【0064】
本発明の搬送装置において、保持部は、搬送方向に直交する方向に延設されたスリットを有し、保持部の鉛直方向下面からスリット内を通してシート部材の上流側の端部を保持することによって傾斜を形成することができる。
【0065】
本発明の搬送装置において、保持部は、搬送部の搬送面に対して鉛直方向に所定の間隔を空けて重ねて設置される2枚の板部材であって、上流側から下流側に向けて下がるように傾斜する傾斜面が形成された2枚の板部材を有し、2枚の板部材の間を通してシート部材の上流側の端部を保持することによって傾斜を形成することができる。
【0066】
本発明の搬送装置においては、搬送部の吸引力を制御する制御部を有し、制御部は、搬送方向に直交する方向の印刷媒体の幅に応じて吸引力を変更することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 インクジェット印刷装置
10 搬送ユニット
11 搬送ベルト
11a 吸引孔
12 プラテンローラ
13 吸引ファン
14 搬送ローラ
20 画像形成部
21 ラインヘッド
22 ヘッドホルダ
30 シート部材
31 保持機構
31b シート取り付け面
32 金属部材
33,34 開口部
40 保持機構
41 第1の板部材
41a シート取り付け面
41b 水平部分
41c,41d 斜面部分
42 第2の板部材
42a 水平部分
42b 斜面部分
50 制御部
CL 傾斜面
P 印刷媒体
S スリット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8