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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023010244
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】超音波流量計及び流量演算方法
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/66 20220101AFI20230113BHJP
【FI】
G01F1/66 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021114236
(22)【出願日】2021-07-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】弁理士法人山王内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】夏 園
(72)【発明者】
【氏名】小原 太輔
【テーマコード(参考)】
2F035
【Fターム(参考)】
2F035DA13
2F035DA14
2F035DA19
(57)【要約】
【課題】ゼロクロス点を用いて流量計測を行う場合でも、従来に対して計測誤差を低減可能とする。
【解決手段】受信信号を取得する受信信号取得部401及び受信信号取得部402と、複数の単位計測工程毎に、ゼロクロス点までの時間を複数回計測するゼロクロス点計測部403及びゼロクロス点計測部404と、ゼロクロス点計測部403による計測結果とゼロクロス点計測部404による計測結果との時間差を算出する時間差算出部405と、前半ゼロクロス点での時間差の平均値を算出する平均値算出部406と、後半ゼロクロス点での時間差の平均値を算出する平均値算出部407と、平均値算出部406による算出結果と平均値算出部407による算出結果との差分を、補正値として算出する差分算出部408と、時間差算出部405による算出結果及び差分算出部408により算出された補正値に基づいて、測定対象である流体の流量を演算する流量演算部409とを備えた。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の超音波センサにより受信された受信信号を取得する第1の受信信号取得部と、
他方の超音波センサにより受信された受信信号を取得する第2の受信信号取得部と、
前記第1の受信信号取得部による取得結果に基づいて、複数の単位計測工程毎に、送信の開始からゼロクロス点までの時間を複数回計測する第1のゼロクロス点計測部と、
前記第2の受信信号取得部による取得結果に基づいて、複数の単位計測工程毎に、送信の開始からゼロクロス点までの時間を複数回計測する第2のゼロクロス点計測部と、
前記第1のゼロクロス点計測部による計測結果と前記第2のゼロクロス点計測部による計測結果との時間差を算出する時間差算出部と、
前記時間差算出部による算出結果に基づいて、前半ゼロクロス点での時間差の平均値を算出する第1の平均値算出部と、
前記時間差算出部による算出結果に基づいて、後半ゼロクロス点での時間差の平均値を算出する第2の平均値算出部と、
前記第1の平均値算出部による算出結果と前記第2の平均値算出部による算出結果との差分を、補正値として算出する差分算出部と、
前記時間差算出部による算出結果及び前記差分算出部により算出された補正値に基づいて、測定対象である流体の流量を演算する流量演算部と
を備えた超音波流量計。
【請求項2】
前記第1の平均値算出部は、平均値の算出をN回繰返して平均化することで、最終的な平均値を算出し、
前記第2の平均値算出部は、平均値の算出をN回繰返して平均化することで、最終的な平均値を算出する
ことを特徴とする請求項1記載の超音波流量計。
【請求項3】
第1の受信信号取得部が、一方の超音波センサにより受信された受信信号を取得するステップと、
第2の受信信号取得部が、他方の超音波センサにより受信された受信信号を取得するステップと、
第1のゼロクロス点計測部が、前記第1の受信信号取得部による取得結果に基づいて、複数の単位計測工程毎に、送信の開始からゼロクロス点までの時間を複数回計測するステップと、
第2のゼロクロス点計測部が、前記第2の受信信号取得部による取得結果に基づいて、複数の単位計測工程毎に、送信の開始からゼロクロス点までの時間を複数回計測するステップと、
時間差算出部が、前記第1のゼロクロス点計測部による計測結果と前記第2のゼロクロス点計測部による計測結果との時間差を算出するステップと、
第1の平均値算出部が、前記時間差算出部による算出結果に基づいて、前半ゼロクロス点での時間差の平均値を算出するステップと、
第2の平均値算出部が、前記時間差算出部による算出結果に基づいて、後半ゼロクロス点での時間差の平均値を算出するステップと、
差分算出部が、前記第1の平均値算出部による算出結果と前記第2の平均値算出部による算出結果との差分を、補正値として算出するステップと、
流量演算部が、前記時間差算出部による算出結果及び前記差分算出部により算出された補正値に基づいて、測定対象である流体の流量を演算するステップと
を有する超音波流量計による流量演算方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、超音波を用いて流量の計測を行う超音波流量計及び流量演算方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一対の超音波センサにより送受信される超音波の伝播時間差に基づいて、測定対象である流体の流量を計測する超音波流量計が知られている。
このような超音波流量計に関し、受信信号のゼロクロス点を予め定められた数だけ検出し、当該ゼロクロス点までの超音波の伝搬時間を計測し、当該伝搬時間に基づいて流体の流量を求める方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-242091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、一対の超音波センサは、センサ特性の差により、温度に伴って、流量計測で用いられる時間差(伝播時間差)のゼロ点がドリフトする現象がある。そして、このドリフトの変動量は、ゼロクロス点によって異なる。そのため、従来技術のように受信信号における違う箇所のゼロクロス点を用いて流量計測を行う場合、ドリフトの変動量が大きいゼロクロス点が用いられて計測誤差が大きくなる可能性がある。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、ゼロクロス点を用いて流量計測を行う場合でも、従来に対して計測誤差を低減可能な超音波流量計を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る超音波流量計は、一方の超音波センサにより受信された受信信号を取得する第1の受信信号取得部と、他方の超音波センサにより受信された受信信号を取得する第2の受信信号取得部と、第1の受信信号取得部による取得結果に基づいて、複数の単位計測工程毎に、送信の開始からゼロクロス点までの時間を複数回計測する第1のゼロクロス点計測部と、第2の受信信号取得部による取得結果に基づいて、複数の単位計測工程毎に、送信の開始からゼロクロス点までの時間を複数回計測する第2のゼロクロス点計測部と、第1のゼロクロス点計測部による計測結果と第2のゼロクロス点計測部による計測結果との時間差を算出する時間差算出部と、時間差算出部による算出結果に基づいて、前半ゼロクロス点での時間差の平均値を算出する第1の平均値算出部と、時間差算出部による算出結果に基づいて、後半ゼロクロス点での時間差の平均値を算出する第2の平均値算出部と、第1の平均値算出部による算出結果と第2の平均値算出部による算出結果との差分を、補正値として算出する差分算出部と、時間差算出部による算出結果及び差分算出部により算出された補正値に基づいて、測定対象である流体の流量を演算する流量演算部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、上記のように構成したので、ゼロクロス点を用いて流量計測を行う場合でも、従来に対して計測誤差を低減可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る超音波流量計の構成例を示す図である。
図2】実施の形態1における演算部の構成例を示す図である。
図3】ゼロクロス点を説明するための図である。
図4】実施の形態1における演算部の動作例を示すフローチャートである。
図5】ゼロクロス点毎の時間差におけるゼロ点のドリフトを説明するための図である。
図6】実施の形態1における演算部で用いられる各種パラメータの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
図1は実施の形態1に係る超音波流量計の構成例を示す図である。
超音波流量計は、超音波を用いて流体に対する計測を行う。この超音波流量計は、図1に示すように、測定管1、超音波センサ2、超音波センサ3及び演算部4を備えている。
【0010】
測定管1は、内部に測定対象である流体が流れる円筒状部材である。
【0011】
超音波センサ2は、測定管1の側壁における上流側に取付けられ、測定管1内で超音波センサ3との間で超音波の送受信を行う超音波トランスデューサである。すなわち、超音波センサ2は、測定管1内で下流側(超音波センサ3)に対して超音波を送信し、下流側(超音波センサ3)からの超音波を受信信号として受信する。
【0012】
超音波センサ3は、測定管1の側壁における下流側に取付けられ、測定管1内で超音波センサ2との間で超音波の送受信を行う超音波トランスデューサである。すなわち、超音波センサ3は、測定管1内で上流側(超音波センサ2)に対して超音波を送信し、上流側(超音波センサ2)からの超音波を受信信号として受信する。
【0013】
なお、超音波センサ2及び超音波センサ3の位置関係は、超音波センサ2及び超音波センサ3で用いられる超音波の伝搬経路に応じて設計される。
【0014】
演算部4は、超音波センサ2による送受信結果及び超音波センサ3による送受信結果に基づいて、測定管1内における流体の流量を演算する。
【0015】
この演算部4は、図2に示すように、受信信号取得部(第1の受信信号取得部)401、受信信号取得部(第2の受信信号取得部)402、ゼロクロス点計測部(第1のゼロクロス点計測部)403、ゼロクロス点計測部(第2のゼロクロス点計測部)404、時間差算出部405、平均値算出部(第1の平均値算出部)406、平均値算出部(第2の平均値算出部)407、差分算出部408及び流量演算部409を備えている。
【0016】
なお、演算部4は、IC(Integrated Circuit)、システムLSI(Large Scale Integration)等の処理回路、又はメモリ等に記憶されたプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)等により実現される。
【0017】
受信信号取得部401は、超音波センサ2により受信された受信信号を取得する。
【0018】
受信信号取得部402は、超音波センサ3により受信された受信信号を取得する。
【0019】
ゼロクロス点計測部403は、受信信号取得部401による取得結果に基づいて、送信の開始からゼロクロス点までの時間を複数回計測する。ゼロクロス点計測部403は、上記の処理を、複数の受信信号毎(単位計測工程毎)に実施する。
なお、例えば図3に示すように、ゼロクロス点は、受信の開始後、受信信号の強度が閾値(閾値電圧)を超えた後に当該受信信号の強度がゼロとなる点である。なお、このゼロクロス点は、通常、受信信号の受信開始点から当該受信信号が最大振幅となる点までに生じた点が計測対象とされる。図3において、上段は超音波の送信波形を示し、下段は超音波の受信波形(受信信号の波形)を示している。また、図3において、符号31は受信開始点を示し、符号32は閾値を示し、符号33はゼロクロス点を示し、符号34は受信信号が最大振幅となる点を示している。また、ゼロクロス点計測部403が1回の単位計測工程において、時間の計測を行うゼロクロス点の数は、事前に設定される。また、単位計測工程の回数は、事前に設定される。
【0020】
ゼロクロス点計測部404は、受信信号取得部402による取得結果に基づいて、送信の開始からゼロクロス点までの時間を複数回計測する。ゼロクロス点計測部404は、上記の処理を、複数の受信信号毎(単位計測工程毎)に実施する。
なお、ゼロクロス点計測部404が1回の単位計測工程において、時間の計測を行うゼロクロス点の数は、事前に設定される。また、単位計測工程の回数は、事前に設定される。
【0021】
なお、受信信号取得部401,402及びゼロクロス点計測部403,404による動作は、1系統の回路で実現可能である。すなわち、順方向の送受信と逆方向の送受信とに応じて、上記回路と超音波センサ2,3の接続が切替えられることで、上記の動作を実現可能である。
【0022】
時間差算出部405は、ゼロクロス点計測部403による計測結果とゼロクロス点計測部404による計測結果との時間差を算出する。この際、まず、時間差算出部405は、ゼロクロス点毎に、ゼロクロス点計測部403による各単位計測工程での計測結果を平均化することで、平均値を算出する。同様に、時間差算出部405は、ゼロクロス点毎に、ゼロクロス点計測部404による各単位計測工程での計測結果を平均化することで、平均値を算出する。そして、時間差算出部405は、ゼロクロス点毎に上記2つの平均値の差分を算出することで、各ゼロクロス点での時間差を算出する。
【0023】
平均値算出部406は、時間差算出部405による算出結果に基づいて、前半ゼロクロス点での時間差の平均値を算出する。
なお、前半ゼロクロス点は、受信信号の受信開始点から当該受信信号が最大振幅となる点までに生じた複数個のゼロクロス点を時間順に並べた際に、受信開始点に近い1つ以上のゼロクロス点を指す。
【0024】
平均値算出部407は、時間差算出部405による算出結果に基づいて、後半ゼロクロス点での時間差の平均値を算出する。
なお、後半ゼロクロス点は、受信信号の受信開始点から当該受信信号が最大振幅となる点までに生じた複数個のゼロクロス点を時間順に並べた際に、受信開始点から遠い1つ以上のゼロクロス点を指し、前半ゼロクロス点より後に生じたゼロクロス点である。
【0025】
差分算出部408は、平均値算出部406により算出された平均値と、平均値算出部407により算出された平均値との差分を、補正値として算出する。
【0026】
流量演算部409は、時間差算出部405による算出結果及び差分算出部408による算出結果に基づいて、測定管1内における流体の流量を算出する。この際、まず、流量演算部409は、時間差算出部405により算出された時間差を、差分算出部408により算出された補正値で補正する。そして、流量演算部409は、補正値で補正した時間差(補正後の時間差)に基づいて、流体の流量を算出する。流量演算部409の動作原理は、補正後の時間差を用いる点以外は、従来の流量演算の原理を採用可能であり、その説明を省略する。
【0027】
次に、図2に示す実施の形態1における演算部4の動作例について、図4を参照しながら説明する。
ここで、一対の超音波センサ2,3は、センサ特性の差により、温度に伴って、流体計測で用いられる時間差(伝播時間差)のゼロ点がドリフトする現象がある。このドリフトの変動幅が所定の範囲内であれば、超音波流量計の計測精度は満たされる。一方、図5に示すように、上記流量計測で用いられる時間差をゼロクロス点毎に分解すると、時間軸における後ろのゼロクロス点になる程、温度変化による影響がより大きくなっていることがわかる。
【0028】
そして、超音波流量計による流量計測において、前半ゼロクロス点の時間差だけを用いると、系統誤差(温度変化に伴うゼロ点のドリフト等)は小さくなるが、SNが悪く、平均算出に使えるゼロクロス点の数も少なくなり、偶然誤差が大きくなってしまう。SNは、信号(S)とノイズ(N)との比である。偶然誤差は、測定者がコントロールできない偶然によるものであり、測定回数を増やすこと等によりその影響を減らせる。
一方、超音波流量計による流量計測において、後半ゼロクロス点の時間差を用いると、SNはよく、偶然誤差は小さくなるが、系統誤差が大きくなってしまう。
【0029】
そこで、実施の形態1に係る超音波流量計では、前半ゼロクロス点での時間差から系統誤差を定量し、その値を利用して後半ゼロクロス点での時間差を補正した上で、流量計測を行う。これにより、実施の形態1に係る超音波流量計では、偶然誤差を低く抑えたまま、系統誤差を低減可能となる。
【0030】
図2に示す実施の形態1における演算部4の動作例では、図4に示すように、まず、受信信号取得部401及び受信信号取得部402は、受信信号を取得する(ステップST401)。
すなわち、受信信号取得部401は、超音波センサ2により受信された受信信号を取得する。
同様に、受信信号取得部402は、超音波センサ3により受信された受信信号を取得する。
【0031】
次いで、ゼロクロス点計測部403及びゼロクロス点計測部404は、単位計測工程毎に、送信の開始からゼロクロス点までの時間を複数回計測する(ステップST402)。
すなわち、ゼロクロス点計測部403は、単位計測工程毎に、受信信号取得部401による取得結果に基づいて、送信の開始からゼロクロス点までの時間を複数回計測する。
同様に、ゼロクロス点計測部404は、単位計測工程毎に、受信信号取得部402による取得結果に基づいて、送信の開始からゼロクロス点までの時間を複数回計測する。
【0032】
図3では、ゼロクロス点計測部403及びゼロクロス点計測部404が、1回の単位計測工程において、6点のゼロクロス点の時間を計測した場合を示している。また、単位計測工程の回数は、例えば31回である。
【0033】
なお、ゼロクロス点計測部403により計測された、k回目の単位計測工程におけるm番目のゼロクロス点の時間を順ZCm(k)と表す。
また、ゼロクロス点計測部404により計測された、k回目の単位計測工程におけるm番目のゼロクロス点の時間を逆ZCm(k)と表す。
【0034】
次いで、時間差算出部405は、下式(1)に示すように、ゼロクロス点計測部403による計測結果とゼロクロス点計測部404による計測結果との時間差(ZCmΔt)を算出する(ステップST403)。この際、まず、時間差算出部405は、ゼロクロス点毎に、ゼロクロス点計測部403による各単位計測工程での計測結果を平均化することで、平均値を算出する。同様に、時間差算出部405は、ゼロクロス点毎に、ゼロクロス点計測部404による各単位計測工程での計測結果を平均化することで、平均値を算出する。そして、時間差算出部405は、ゼロクロス点毎に上記2つの平均値の差分を算出することで、各ゼロクロス点での時間差を算出する。
ZCmΔt=(Σ逆ZCm(k)/k)-(Σ順ZCm(k)/k) (1)
【0035】
次いで、平均値算出部406は、時間差算出部405による算出結果に基づいて、前半ゼロクロス点での時間差の平均値を算出する(ステップST404)。この際、例えば、平均値算出部406は、下式(2)に示すように、1番目から4番目のゼロクロス点での時間差の平均値(Δt1_2_3_4)を算出する。なお、平均値算出部406は、標準偏差を維持するため、N平均を実施することで、すなわち、上記の平均値の算出をN回(複数回)繰返して平均化することで、最終的な平均値(Δt1_2_3_4_N)を算出してもよい。Nは、偶然誤差の影響を低減するのに十分な数とされる。
Δt1_2_3_4=(ZC1Δt+ZC2Δt+ZC3Δt+ZC4Δt)/4 (2)
【0036】
次いで、平均値算出部407は、時間差算出部405による算出結果に基づいて、後半ゼロクロス点での時間差の平均値を算出する(ステップST405)。この際、例えば、平均値算出部407は、下式(3)に示すように、5番目と6番目のゼロクロス点での時間差の平均値(Δt5_6)を算出する。なお、平均値算出部407は、標準偏差を維持するため、N平均を実施することで、すなわち、上記の平均値の算出をN回(複数回)繰返して平均化することで、最終的な平均(Δt5_6_N)を算出してもよい。Nは、偶然誤差の影響を低減するのに十分な数とされる。
Δt5_6=(ZC5Δt+ZC6Δt)/2 (3)
【0037】
次いで、差分算出部408は、平均値算出部406により算出された平均値と、平均値算出部407により算出された平均値との差分を、補正値として算出する(ステップST406)。この際、上記の例では、下式(4)のように、差分算出部408は、5番目と6番目のゼロクロス点での時間差の平均値から、1番目から4番目のゼロクロス点での時間差の平均値を差し引くことで、差分値(補正値)を算出する。この補正値は、後半ゼロクロス点での時間差における系統誤差を低減するための補正値である。
補正値=Δt5_6_N-Δt1_2_3_4_N (4)
【0038】
次いで、流量演算部409は、時間差算出部405による算出結果及び差分算出部408による算出結果に基づいて、測定管1内における流体の流量を算出する(ステップST407)。この際、上記の例では、まず、流量演算部409は、下式(5)に示すように、5番目と6番目のゼロクロス点での時間差の平均値から補正値を差し引くことで、補正後の5番目と6番目のゼロクロス点での時間差の平均値(補正後Δt5_6)を算出する。これにより、流量演算部409は、ZC5Δt及びZC6Δtの標準偏差を維持しつつ、ZC5Δt及びZC6Δtの温度特性をZC1Δt~ZC4Δtの温度特性に近づくように補正することができる。そして、流量演算部409は、下式(6)に示すように、1番目と2番目のゼロクロス点での時間差の平均値、3番目と4番目のゼロクロス点での時間差の平均値、及び、補正後の5番目と6番目のゼロクロス点での時間差の平均値の平均値を算出することで、補正後の時間差(補正後Δt)を算出する。そして、流量演算部409は、この補正後の時間差を用いて、流体の流量を演算する。
補正後Δt5_6=Δt5_6-補正値 (5)
補正後Δt=(Δt1_2+Δt3_4+補正後Δt5_6)/3 (6)
【0039】
図6は実施の形態1における演算部4で用いられる各種パラメータの値の一例を示している。
【0040】
なお上記では、一例として、演算部4が、Δt5_6とΔt1_2_3_4を用いて補正値を得る場合を示した。しかしながら、これに限らず、演算部4は、他の前半ゼロクロス点での時間差と後半ゼロクロス点での時間差を用いて補正値を得てもよい。すなわち、演算部4が用いるゼロクロス点の数、前半ゼロクロス点に含めるゼロクロス点の数、及び、後半ゼロクロス点に含めるゼロクロス点の数は、上記の例に限らない。また、演算部4は、Rise-Fallペア(偶数個のゼロクロス点)の平均をとることで、基準電位(0点)のずれ及び信号強度(傾き)の変化に伴うゼロクロス点の誤差を緩和できる。
【0041】
このように、実施の形態1に係る超音波流量計では、前半ゼロクロス点での時間差と後半ゼロクロス点での時間差とを比較し、後半ゼロクロス点での系統誤差が前半ゼロクロス点での系統誤差と同じ水準になるように補正を行う。これにより、実施の形態1に係る超音波流量計では、全体の系統誤差を低減することが可能となる。
【0042】
なお、単位計測工程を増やして前半ゼロクロス点での時間差を用いることで、計測精度(偶然誤差)を維持しつつ、系統誤差(温度変化に伴うゼロ点のドリフト等)を減らす方法も考えられる。しかしながら、単位計測工程を増やすと、電力及びメモリの消費が増えてしまう。
これに対し、実施の形態1に係る超音波流量計において、単位計測工程数を増やさずに、偶然誤差の増加を防ぐためには、補正後の後半ゼロクロス点での時間差の偶然誤差と補正前の後半ゼロクロス点での時間差の偶然誤差とを同じ水準に保つ必要がある。
一方、前半ゼロクロス点での時間差と後半ゼロクロス点での時間差との関係は短期間では変わらない。すなわち、短時間(N平均の間)では、前半ゼロクロス点での時間差と後半ゼロクロス点での時間差の差が大きく変化しない。そのため、N平均が利用可能である。
【0043】
そこで、実施の形態1に係る超音波流量計では、前半ゼロクロス点での時間差と後半ゼロクロス点での時間差との差を一定時間で平均化する。これにより、補正後の後半ゼロクロス点での時間差の偶然誤差を減らすことができる。
【0044】
例えば、Δt1_2_3_4の標準偏差をAとし、Δt5_6の標準偏差をBとする。
この場合、平均回数がN回の場合でのΔt1_2_3_4の標準偏差は、A/(N)^0.5となる。
また、平均回数がN回の場合でのΔt5_6の標準偏差は、B/(N)^0.5となる。
【0045】
この場合、補正値はΔt5_6_N-Δt1_2_3_4_Nであるため、補正値の標準偏差は、((B/(N)^0.5)^2+(A/(N)^0.5)^2)^0.5となる。
また、補正後Δt5_6はΔt5_6-補正値であるため、補正後Δt5_6の標準偏差は、(B^2+(補正値の標準偏差)^2)^0.5となる。
【0046】
そして、この補正後Δt5_6の標準偏差と、補正前のΔt5_6の標準偏差(B)とを同じ水準に保つ場合、Bと比べて補正値の標準偏差を十分小さく抑える必要がある。よって、実施の形態1に係る超音波流量計では、平均回数(N)を調整することで、補正値の標準偏差を十分小さく抑える。すなわち、補正後Δt5_6の標準偏差と、補正前のΔt5_6の標準偏差(B)とを同じ水準(例えば、差が1%以内)に保つように平均回数(N)を調整する。
【0047】
以上のように、この実施の形態1によれば、超音波流量計は、超音波センサ2により受信された受信信号を取得する受信信号取得部401と、超音波センサ3により受信された受信信号を取得する受信信号取得部402と、受信信号取得部401による取得結果に基づいて、複数の単位計測工程毎に、送信の開始からゼロクロス点までの時間を複数回計測するゼロクロス点計測部403と、受信信号取得部402による取得結果に基づいて、複数の単位計測工程毎に、送信の開始からゼロクロス点までの時間を複数回計測するゼロクロス点計測部404と、ゼロクロス点計測部403による計測結果とゼロクロス点計測部404による計測結果との時間差を算出する時間差算出部405と、時間差算出部405による算出結果に基づいて、前半ゼロクロス点での時間差の平均値を算出する平均値算出部406と、時間差算出部405による算出結果に基づいて、後半ゼロクロス点での時間差の平均値を算出する平均値算出部407と、平均値算出部406による算出結果と平均値算出部407による算出結果との差分を、補正値として算出する差分算出部408と、時間差算出部405による算出結果及び差分算出部408により算出された補正値に基づいて、測定対象である流体の流量を演算する流量演算部409とを備えた。これにより、実施の形態1に係る超音波流量計は、ゼロクロス点を用いて流量計測を行う場合でも、従来に対して計測誤差を低減可能となる。
【0048】
なお、本願発明はその発明の範囲内において、実施の形態の任意の構成要素の変形、若しくは実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 測定管
2 超音波センサ
3 超音波センサ
4 演算部
401 受信信号取得部(第1の受信信号取得部)
402 受信信号取得部(第2の受信信号取得部)
403 ゼロクロス点計測部(第1のゼロクロス点計測部)
404 ゼロクロス点計測部(第2のゼロクロス点計測部)
405 時間差算出部
406 平均値算出部(第1の平均値算出部)
407 平均値算出部(第2の平均値算出部)
408 差分算出部
409 流量演算部
図1
図2
図3
図4
図5
図6