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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102488
(43)【公開日】2023-07-25
(54)【発明の名称】胴部分割体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16J 12/00 20060101AFI20230718BHJP
   B29C 70/16 20060101ALI20230718BHJP
   B29C 70/32 20060101ALI20230718BHJP
   B29C 70/68 20060101ALI20230718BHJP
   F17C 1/06 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
F16J12/00 A
B29C70/16
B29C70/32
B29C70/68
F17C1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022003000
(22)【出願日】2022-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】308039414
【氏名又は名称】株式会社FTS
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大脇 優介
(72)【発明者】
【氏名】日高 優次
【テーマコード(参考)】
3E172
3J046
4F205
【Fターム(参考)】
3E172AA03
3E172AA05
3E172AB01
3E172BA01
3E172BB03
3E172BB12
3E172BB17
3E172BC03
3E172BD03
3E172CA19
3E172DA90
3J046AA14
3J046BA02
3J046CA04
3J046DA05
3J046EA02
4F205AA36
4F205AD05
4F205AD12
4F205AD16
4F205AG07
4F205AH55
4F205HA02
4F205HA23
4F205HA33
4F205HA37
4F205HA46
4F205HB01
4F205HB11
4F205HC02
4F205HK04
4F205HK05
4F205HL02
4F205HT22
(57)【要約】
【課題】所望の形状や厚さのバリア層を形成し得る胴部分割体の製造方法を提供する。
【解決手段】胴部分割体の製造方法は、胴部基体50の内周面を覆うように第1バリア層60を設け、胴部基体50と第1バリア層60とを有し、ドーム部分割体30と合体することによって圧力容器10を構成する胴部分割体20を製造する。バリア性を有するフィルム部材70をマンドレル80の外周に筒状になるように巻き付けて第1バリア層60を形成し、第1バリア層60に樹脂含浸繊維55を巻き付け、樹脂を硬化させることによって胴部基体50を形成し、胴部分割体20をマンドレル80から引き抜く。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴部基体と、前記胴部基体の内周面を覆うバリア層とを有し、ドーム部分割体と合体することによって圧力容器を構成する胴部分割体の製造方法であって、
バリア性を有するフィルム部材をマンドレルの外周に筒状になるように巻き付けて前記バリア層を形成し、
前記バリア層に樹脂含浸繊維を巻き付け、樹脂を硬化させることによって前記胴部基体を形成するとともに、前記胴部基体と前記バリア層を一体化させ、
前記胴部分割体を前記マンドレルから離脱させる胴部分割体の製造方法。
【請求項2】
前記フィルム部材を前記マンドレルに巻き付ける過程で、前記フィルム部材を前記マンドレルの外周面の所定位置に保持部材で保持しつつ、前記フィルム部材を前記外周面に巻き回し、前記フィルム部材の一端部に対して他端部を接合し、
前記保持部材は、前記フィルム部材における前記一端部よりも前記他端部寄りの位置を保持する請求項1に記載の胴部分割体の製造方法。
【請求項3】
前記胴部基体よりも前記マンドレルの軸に沿う幅寸法が大きいシート状の前記フィルム部材を、前記マンドレルの外周に筒状になるように巻き付けて前記バリア層を形成する請求項1又は請求項2に記載の胴部分割体の製造方法。
【請求項4】
前記胴部基体よりも前記マンドレルの軸に沿う幅寸法が小さい帯状の前記フィルム部材を、前記マンドレルの外周に筒状になるようにらせん状に巻き付けて前記バリア層を形成する請求項1又は請求項2に記載の胴部分割体の製造方法。
【請求項5】
前記マンドレルに対する前記バリア層の巻き付け範囲が、前記マンドレルに対する前記胴部基体の巻き付け範囲よりも大きい請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の胴部分割体の製造方法。
【請求項6】
加熱して樹脂を硬化させることによって前記胴部基体を形成し、
前記バリア層の線膨張係数は、前記マンドレルの線膨張係数よりも大きい請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の胴部分割体の製造方法。
【請求項7】
加熱して樹脂を硬化させることによって前記胴部基体を形成し、
前記バリア層の線膨張係数は、前記胴部基体の線膨張係数よりも大きい請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の胴部分割体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胴部分割体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示される圧力容器は、ガスバリア性を有するライナと、その外側を覆うFRP製の外殻とを備えている。ライナは、高密度ポリエチレン等の合成樹脂で構成されている。外殻は、炭素繊維及びガラス繊維を含む繊維束で構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-21099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の圧力容器は、ライナの外周面にフィラメントワインディングによって繊維束を巻き付けて外殻を形成する。そのため、ライナの剛性の確保のために、バリア性の確保に必要な厚み以上の厚みでライナを形成していた。これにより、圧力容器の製造コストが増大する等の問題が生じていた。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、所望の形状や厚さのバリア層を形成し得る胴部分割体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の胴部分割体の製造方法は、
胴部基体と、前記胴部基体の内周面を覆うバリア層とを有し、ドーム部分割体と合体することによって圧力容器を構成する胴部分割体の製造方法であって、
バリア性を有するフィルム部材をマンドレルの外周に筒状になるように巻き付けて前記バリア層を形成し、
前記バリア層に樹脂含浸繊維を巻き付け、樹脂を硬化させることによって前記胴部基体を形成するとともに、前記胴部基体と前記バリア層を一体化させ、
前記胴部分割体を前記マンドレルから離脱させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、バリア性を有するフィルム部材をマンドレルの外周に筒状になるように巻き付けてバリア層を形成する。そのため、フィルム部材の幅寸法、及びマンドレルへの巻き数を調整することで、所望の形状や厚さのバリア層を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1の圧力容器をあらわす側面図である。
図2】圧力容器の断面図である。
図3図2における胴部分割体とドーム部分割体の境界部付近を拡大して示す断面図である。
図4】胴部分割体の製造工程を説明する説明図であり、(A)は、マンドレルにフィルム部材の一端部を固定する工程の説明図であり、(B)は、フィルム部材の両端を接合する工程の説明図であり、(C)は、第1バリア層の外周に樹脂含浸繊維を巻き付ける工程の説明図であり、(D)は、樹脂を硬化させて胴部分割体を形成する工程の説明図であり、(E)は、マンドレルから胴部分割体を引き抜く工程の説明図である。
図5】実施例2の胴部分割体の製造工程の一部を説明する説明図であり、(A)は、マンドレルにフィルム部材を巻き付ける工程の説明図であり、(B)は、フィルム部材の両端を接合する工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の胴部分割体の製造方法は、前記フィルム部材を前記マンドレルに巻き付ける過程で、前記フィルム部材を前記マンドレルの外周面の所定位置に保持部材で保持しつつ、前記フィルム部材を前記外周面に巻き回し、前記フィルム部材の一端部に対して他端部を接合することが好ましい。前記保持部材は、前記フィルム部材における前記一端部よりも前記他端部寄りの位置を保持することが好ましい。このように、保持部材がフィルム部材における一端部よりも他端部寄りの位置を保持するため、フィルム部材の一端部と他端部を接合する際に、保持部材と他端部が干渉することを防ぐことができる。
【0010】
本発明の胴部分割体の製造方法は、前記胴部基体よりも前記マンドレルの軸に沿う幅寸法が大きいシート状の前記フィルム部材を、前記マンドレルの外周に筒状になるように巻き付けて前記バリア層を形成することが好ましい。このように、胴部基体よりもマンドレルの軸に沿う幅寸法が大きいシート状のフィルム部材を用いることで、胴部基体よりも幅寸法が小さいフィルム部材を用いる場合に比べて、同じ幅寸法のバリア層を形成する際のフィルム部材の巻き工程数を低減することができる。
【0011】
本発明の胴部分割体の製造方法は、前記胴部基体よりも前記マンドレルの軸に沿う幅寸法が小さい帯状の前記フィルム部材を、前記マンドレルの外周に筒状になるようにらせん状に巻き付けて前記バリア層を形成することが好ましい。このように、胴部基体よりもマンドレルの軸に沿う幅寸法が小さい帯状のフィルム部材を用いると、フィルム部材の巻き数を調整することで、バリア層の幅寸法及び径を変更することができる。
【0012】
本発明の胴部分割体の製造方法材は、前記マンドレルに対する前記バリア層の巻き付け範囲が、前記マンドレルに対する前記胴部基体の巻き付け範囲よりも大きいことが好ましい。これにより、胴部基体に対して軸方向にバリア層を張り出させることができ、胴部基体の軸方向の端面までバリア層で覆うことができる。
【0013】
本発明の胴部分割体の製造方法は、加熱して樹脂を硬化させることによって前記胴部基体を形成し、前記バリア層の線膨張係数は、前記マンドレルの線膨張係数よりも大きいことが好ましい。これにより、加熱後に温度が低下した後に、マンドレルとバリア層の間に隙間が生じてバリア層がマンドレルから離れ易くなり、バリア層をマンドレルから離脱させ易くなる。
【0014】
本発明の胴部分割体の製造方法は、加熱して樹脂を硬化させることによって前記胴部基体を形成し、前記バリア層の線膨張係数は、前記胴部基体の線膨張係数よりも大きいことが好ましい。これにより、バリア層と胴部基体との間に隙間が生じにくくなり、バリア層と胴部基体との密着性を高めることができる。
【0015】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1を図1図4を参照して説明する。
【0016】
(圧力容器の構成)
本実施例の圧力容器10は、図1に示すように、円筒カプセル形状である。圧力容器10は、例えば、車両に搭載され、高圧の水素ガスの充填容器として用いられる。なお、図1図4に示す圧力容器10では、径の大きさや軸方向の長さ、各層の厚さ等は誇張して描かれており、図1図4に示す形態はあくまで一例である。
【0017】
圧力容器10は、図2に示すように、胴部分割体20と、ドーム部分割体30と、外部補強層40と、を備えている。圧力容器10は、胴部分割体20とドーム部分割体30とを合体して構成される。外部補強層40は、合体した胴部分割体20及びドーム部分割体30を包囲している。圧力容器10には、図1に示すように、口金11が設けられている。なお、図2では、口金11が組み付けられる前の圧力容器10を示している。圧力容器10は、バリア性を有する。本実施例1において、バリア性は、圧力容器10内に充填された流体(水素ガスなど)が圧力容器10を透過して圧力容器10の外部へ漏出することを防止又は抑制する特性と定義する。
【0018】
胴部分割体20は、図2に示すように、胴部基体50と、第1バリア層60と、を有している。胴部基体50は、軸方向(軸線Lに沿う方向)に長い円筒状である。胴部基体50の内径寸法は、全長に亘って一定である。胴部基体50の外径寸法は、後述する凹部51を除いて全長に亘って一定である。胴部基体50は、例えば、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)等の繊維強化樹脂からなる。胴部基体50は、例えば繊維束(図示略)に液状の熱硬化性樹脂を含浸させたもの、または繊維束に含浸した熱硬化性樹脂を半硬化状態にしたもの(プリプレグ繊維)を、例えばフィラメントワインディング法によってフープ巻きで形成されている。繊維束は、炭素繊維、ガラス繊維、ケプラ繊維等からなる糸状の繊維を束ねたものである。
【0019】
胴部基体50の外周面における軸方向両端には、図3に示すように、凹部51が設けられている。凹部51は、軸周りの全周に亘って設けられている。胴部基体50において凹部51が設けられる部分は、胴部基体50のその他の部分(軸方向中央側の部分)に比べて薄肉になっている。凹部51の外形寸法は、軸方向外側に向かって小さくなっている。凹部51は、第1テーパ部51Aと、第2テーパ部51Bと、を具備している。第1テーパ部51A及び第2テーパ部51Bによって、二段の傾斜が構成されている。第1テーパ部51Aの傾斜角度の方が、第2テーパ部51Bの傾斜角度の方よりも大きくなっている。
【0020】
第1バリア層60は、図2に示すように、胴部基体50の内周面を覆うように設けられている。第1バリア層60は、本開示の「バリア層」の一例に相当する。第1バリア層60は、バリア性を有している。第1バリア層60の材料として、例えばEVOH(エチレン-ビニルアルコール共重合体)、PA6(ナイロン6)等が用いられる。第1バリア層60は、圧力容器10内に貯留される流体が外部へ透過することを遮断又は抑制することを目的として用いられている。
【0021】
第1バリア層60は、図3に示すように、胴部基体50の軸方向両端を覆っている。胴部基体50の軸方向両端からそれぞれ張り出した第1バリア層60の軸方向両端が、折り返されて胴部基体50の外周面における軸方向両端を覆っている。具体的には、第1バリア層60は、凹部51(第1テーパ部51A、第2テーパ部51B)、第1端面52A、及び第2端面52Bを覆っている。第1端面52Aは、胴部基体50の軸方向の端面である。第2端面52Bは、第2テーパ部51Bに対して軸方向中央側に連なる端面である。
【0022】
ドーム部分割体30は、図2に示すように、ドーム部基体31と、第2バリア層32と、を有している。ドーム部基体31は、胴部基体50の長手方向の端部に連なる半球状の部分である。ドーム部基体31は、胴部基体50から離れるにつれて縮径している。ドーム部基体31の厚さは、胴部基体50の厚さ(凹部51を除く部分の厚さ)よりも小さくなっている。ドーム部基体31は、例えば、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)等の繊維強化樹脂からなる。ドーム部基体31は、例えば繊維束(図示略)に液状の熱硬化性樹脂を含浸させたもの、または繊維束に含浸した熱硬化性樹脂を半硬化状態にしたもの(プリプレグ繊維)を、例えばハンドレイアップ法により積層させ、球殻状に成形した成形品を半分に分割して形成される。繊維束は、炭素繊維、ガラス繊維、ケプラ繊維等からなる糸状の繊維を束ねたものである。ドーム部分割体30の頂部には、図1に示すように、口金11が設けられる。
【0023】
第2バリア層32は、図2に示すように、ドーム部基体31の内周面を覆うように設けられている。第2バリア層32は、第1バリア層60と同様の構成である。第2バリア層32の胴部分割体20側の端部は、ドーム部基体31の端面31Aを覆っている。
【0024】
図3に示すように、胴部分割体20の端部がドーム部分割体30の端部の内側に挿入され、胴部分割体20とドーム部分割体30とが合体する。胴部分割体20の端部(より具体的には第1テーパ部51A、第2テーパ部51B、第2端面52B)を覆う第1バリア層60と、ドーム部分割体30の端部を覆う第2バリア層32が接触している。互いに接触する第1バリア層60と第2バリア層32は、胴部分割体20の端部とドーム部分割体30の端部によって押しつぶされて反発力(復元力)が生じ、胴部基体50とドーム部基体31との間の境界部のシール性が確保される。
【0025】
外部補強層40は、例えば、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)等の繊維強化樹脂からなる。外部補強層40は、胴部分割体20の外周の全領域、及びドーム部分割体30の外周の全領域を覆うように形成されている。外部補強層40は、例えばフィラメントワインディング法によって、ヘリカル巻きで形成されている。外部補強層40は、軸線L(図2参照)を中心として回転する胴部分割体20及びドーム部分割体30に対して、これらの外面に例えば繊維束(図示略)に液状の熱硬化性樹脂を含浸させたもの、または繊維束に含浸した熱硬化性樹脂を半硬化状態にしたもの(プリプレグ繊維)を巻き付けることによって形成されている。繊維束は、炭素繊維、ガラス繊維、ケプラ繊維等からなる糸状の繊維を束ねたものである。
【0026】
(胴部分割体の製造方法)
次に、胴部分割体20の製造方法について説明する。まず、図4(A)に示すように、バリア性を有するフィルム部材70の一端部71側を、円柱状のマンドレル80の外周面に固定する。フィルム部材70の材料として、例えばEVOH(エチレン-ビニルアルコール共重合体)、PA6(ナイロン6)等が用いられる。フィルム部材70は、シート状である。マンドレル80の材料は、例えば金属(アルミニウムや鉄等)等が用いられる。
【0027】
フィルム部材70の幅寸法(マンドレル80の軸81に沿う方向の幅寸法)は、後の工程で形成される胴部基体50の幅寸法(マンドレル80の軸81に沿う方向の幅寸法)よりも大きくなるように設定されている。すなわち、マンドレル80に対する第1バリア層60の巻き付け範囲を、マンドレル80に対する胴部基体50の巻き付け範囲よりも大きくする。
【0028】
図4(A)に示すように、フィルム部材70の一端部71側を、マンドレル80の外周面の所定位置において保持部材90で保持する。フィルム部材70の一端部71は、マンドレル80の軸81に平行となるように配置される。保持部材90は、例えば金属材料によって構成されている。保持部材90は、ブロック状に構成されている。保持部材90におけるフィルム部材70と接触する面(押圧面)は、平坦でもよく、フィルム部材70の外周面に対応した湾曲面として構成されていてもよい。フィルム部材70の一端部71側を、マンドレル80の外周面と保持部材90の押圧面によって挟持する。保持部材90によって、フィルム部材70における一端部71よりも他端部72寄り(他端部72に数ミリ近い位置等)の位置を保持する。これにより、フィルム部材70の両端部71,72を接合する際に、保持部材90と他端部72が干渉することを防ぐことができる。
【0029】
続いて、図4(B)に示すように、フィルム部材70の他端部72側をマンドレル80の外周面に筒状に巻き回し、他端部72を一端部71に接合する。フィルム部材70の両端部71,72の接合は、例えば保持部材90を用いた加圧及び加熱によって行われる。これにより、円筒状の第1バリア層60が形成される。このように、マンドレル80を用いて、フィルム部材70を基体として巻き付けにより第1バリア層60を形成するため、フィルム部材70の幅寸法、及びマンドレル80への巻き数を調整することで、所望の形状や厚さの第1バリア層60を形成することができる。また、シート状のフィルム部材70を基体として用いることによって、少ない巻き数のフィルム部材70によって第1バリア層60を形成することができ、フィルム部材70の使用量を低減することができる。
【0030】
続いて、図4(C)に示すように、第1バリア層60の外周面に樹脂含浸繊維55を巻き付ける。樹脂含浸繊維55は、例えば繊維束(炭素繊維の束等)に液状の熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂等)を含浸させたもの、繊維束に含浸した熱硬化性樹脂を半硬化状態にしたもの(プリプレグ繊維)である。樹脂含浸繊維55は、フィラメントワインディング工法で第1バリア層60に巻き付けられる。マンドレル80に対する胴部基体50の巻き付け範囲を、マンドレル80に対する第1バリア層60の巻き付け範囲よりも小さくする。樹脂含浸繊維55の巻き付け時に、上述した凹部51が形成されるように、軸方向両端の樹脂含浸繊維55の束の厚みを小さくしてもよい。なお、凹部51は、軸方向において樹脂含浸繊維55の巻き付け厚さを均一にしておき、胴部分割体20の形成後に切削等により形成してもよい。
【0031】
続いて、樹脂含浸繊維55に含まれる樹脂を硬化させる。例えば、150℃で40分間加熱することで、樹脂含浸繊維55に含まれる樹脂を硬化させる。これにより、図4(D)に示すように、円筒状の胴部基体50が形成される。第1バリア層60の軸方向の両端60Aが、胴部基体50の軸方向両端よりも外側に張り出している。胴部基体50に対して軸方向に第1バリア層60を張り出させることで、胴部基体50の軸方向の端面(より具体的には、図3に示す凹部51、第1端面52A、及び第2端面52B)まで第1バリア層60で覆うことができる。加熱によって胴部基体50と第1バリア層60とが密着し、胴部基体50と第1バリア層60とが一体化した胴部分割体20が形成される。
【0032】
ここで、第1バリア層60の線膨張係数は、マンドレル80の線膨張係数よりも大きく設定されている。例えば、第1バリア層60がEVOH(エチレン-ビニルアルコール共重合体)で構成され、マンドレル80がアルミニウムで構成される。そのため、加熱後に温度が低下した後に、第1バリア層60がマンドレル80から離れ易くなり、マンドレル80と第1バリア層60の間に隙間が生じ易く、後に続く工程で第1バリア層60をマンドレル80から離脱させ易くなる。
【0033】
また、第1バリア層60の線膨張係数は、胴部基体50の線膨張係数よりも大きく設定されている。そのため、第1バリア層60と胴部基体50との間に隙間が生じにくくなり、第1バリア層60と胴部基体50との密着性を高めることができる。
【0034】
続いて、図4(E)に示すように、胴部分割体20をマンドレル80から離脱させる。胴部分割体20の離脱時、樹脂硬化時の加熱の余熱により胴部分割体20が50℃程度になっていてもよい。
【0035】
(本実施例の効果)
以下、本実施例1の効果について説明する。本実施例1の胴部分割体の製造方法では、バリア性を有するフィルム部材70をマンドレル80の外周に筒状になるように巻き付けて第1バリア層60を形成する。そのため、フィルム部材70の幅寸法、及びマンドレル80への巻き数を調整することで、所望の形状や厚さの第1バリア層60を形成することができる。これにより、バリア層形成用の金型が不要になり、胴部分割体20の製造コストを低減することができる。また、従来は、バリア層をマンドレルに見立ててフィラメントワインディング法で樹脂含浸繊維を巻き付けていたため、バリア層の剛性を確保するためにバリア性確保に必要な厚さ以上にバリア層を厚くしていた。これに対して、本実施例1の胴部分割体の製造方法では、第1バリア層60に、マンドレルの機能を持たせる必要がなく、第1バリア層60の薄肉化が可能になり、製造コストの低減を図ることができる。
【0036】
本実施例1の胴部分割体の製造方法は、保持部材90がフィルム部材70における一端部71よりも他端部72寄りの位置を保持するため、フィルム部材70の一端部71と他端部72を接合する際に、保持部材90と他端部72が干渉することを防ぐことができる。
【0037】
本実施例1の胴部分割体の製造方法は、胴部基体50よりもマンドレル80の軸81に沿う幅寸法が大きいシート状のフィルム部材70を、マンドレル80の外周に筒状になるように巻き付けて第1バリア層60を形成する。このように、胴部基体50よりもマンドレル80の軸81に沿う幅寸法が大きいシート状のフィルム部材70を用いることで、胴部基体50よりも幅寸法が小さいフィルム部材70を用いる場合に比べて、同じ幅寸法の第1バリア層60を形成する際のフィルム部材70の巻き工程数を低減することができる。
【0038】
本実施例1の胴部分割体の製造方法材は、マンドレル80に対する第1バリア層60の巻き付け範囲が、マンドレル80に対する胴部基体50の巻き付け範囲よりも大きい。これにより、胴部基体50に対して軸方向に第1バリア層60を張り出させることができ、胴部基体50の軸方向の第1端面52Aまで第1バリア層60で覆うことができる。
【0039】
本実施例1の胴部分割体の製造方法は、加熱して樹脂を硬化させることによって胴部基体50を形成する。第1バリア層60の線膨張係数は、マンドレル80の線膨張係数よりも大きい。これにより、加熱後に温度が低下した後に、マンドレル80と第1バリア層60の間に隙間が生じて第1バリア層60がマンドレル80から離れ易くなり、第1バリア層60をマンドレル80から離脱させ易くなる。
【0040】
本実施例1の胴部分割体の製造方法は、加熱して樹脂を硬化させることによって胴部基体50を形成し、第1バリア層60の線膨張係数は、胴部基体50の線膨張係数よりも大きい。これにより、第1バリア層60と胴部基体50との間に隙間が生じにくくなり、第1バリア層60と胴部基体50との密着性を高めることができる。
【0041】
<実施例2>
以下、本発明を具体化した実施例2を、図5を参照して説明する。実施例2の胴部分割体の製造方法は、フィルム部材の巻き付け方が実施例1と異なっており、その他の構成は実施例1と同様である。そのため、実施例1と同じ構成には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0042】
実施例2の胴部分割体20の製造方法では、バリア性を有するフィルム部材270として、図5に示すような帯状のものを用いる。フィルム部材270の材料は、フィルム部材70と同様であり、例えばEVOH(エチレン-ビニルアルコール共重合体)、PA6(ナイロン6)等が用いられる。
【0043】
フィルム部材270の幅寸法(マンドレル80の軸81に沿う方向の幅寸法)は、後の工程で形成される胴部基体50の幅寸法(マンドレル80の軸81に沿う方向の幅寸法)よりも小さくなるように設定されている。そして、マンドレル80に対する第1バリア層260の巻き付け範囲を、マンドレル80に対する胴部基体50の巻き付け範囲よりも大きくする。
【0044】
図5(A)に示すように、フィルム部材270の一端部をマンドレル80の外周面の所定位置に固定しつつ、フィルム部材270の他端部側をマンドレル80の外周に筒状になるようにらせん状に巻き付ける。
【0045】
続いて、図5(B)に示すように、フィルム部材270の他端部をその他の箇所に接合し、第1バリア層260を形成する。このように、胴部基体50よりもマンドレル80の軸81に沿う幅寸法が小さい帯状のフィルム部材270を用いることで、フィルム部材270の巻き数を調整することで、第1バリア層60の幅寸法及び径を変更することができる。そのため、フィルム部材70のマンドレル80への巻き数を調整することで、所望の形状や厚さの第1バリア層60を形成することができる。
【0046】
樹脂含浸繊維55の巻き付け工程、樹脂の硬化、胴部分割体20のマンドレル80からの引き抜き工程は、実施例1と同様である。
【0047】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例1,2において、マンドレル80が円柱状であったが、その他の形状(断面楕円形の柱状等)であってもよい。
(2)上記実施例1,2において、フィルム部材70の両端部71,72の接合が加圧及び加熱によって行われたが、超音波溶接等を用いてもよい。
【符号の説明】
【0048】
10…圧力容器
11…口金
20…胴部分割体
30…ドーム部分割体
31…ドーム部基体
31A…端面
32…第2バリア層
40…外部補強層
50…胴部基体
51…凹部
51A…第1テーパ部
51B…第2テーパ部
52A…第1端面
52B…第2端面
55…樹脂含浸繊維
60…第1バリア層(バリア層)
60A…端
70…フィルム部材
71…一端部
72…他端部
80…マンドレル
81…軸
90…保持部材
260…第1バリア層
270…フィルム部材
L…胴部分割体の軸線
図1
図2
図3
図4
図5