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特開2023-10249卓越周波数の抽出装置、卓越周波数の抽出方法、卓越周波数の抽出プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023010249
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】卓越周波数の抽出装置、卓越周波数の抽出方法、卓越周波数の抽出プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01H 13/00 20060101AFI20230113BHJP
   G01C 7/04 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
G01H13/00
G01C7/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021114245
(22)【出願日】2021-07-09
(71)【出願人】
【識別番号】000142067
【氏名又は名称】株式会社共和電業
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100176337
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 賢
【テーマコード(参考)】
2G064
【Fターム(参考)】
2G064AA14
2G064AB01
2G064AB02
2G064AB11
2G064BA02
2G064CC02
2G064CC43
2G064CC52
(57)【要約】
【課題】一定間隔毎に入力される成分を含む信号の卓越周波数を精度よく抽出できる卓越周波数の抽出装置、卓越周波数の抽出方法、および、卓越周波数の抽出プログラムを提供する。
【解決手段】卓越周波数の抽出装置は、一定間隔毎に入力される成分を含む信号をフーリエ変換することによって、周波数スペクトルを算出する算出処理と、テンプレートマッチング法によって、前記周波数スペクトルから卓越周波数を抽出する抽出処理と、を実行する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定間隔毎に入力される成分を含む信号をフーリエ変換することによって、周波数スペクトルを算出する算出処理と、
テンプレートマッチング法によって、前記周波数スペクトルから卓越周波数を抽出する抽出処理と、を実行する
卓越周波数の抽出装置。
【請求項2】
前記抽出処理では、
前記周波数スペクトルのピーク波形を模したテンプレートの複数の点における値と、前記テンプレートの複数の点と対応する前記周波数スペクトルの複数の点におけるスペクトル強度とに基づいてマッチング値を算出し、
前記マッチング値に基づいて前記卓越周波数を抽出する。
請求項1に記載の卓越周波数の抽出装置。
【請求項3】
前記周波数スペクトルは、基本波、および、前記基本波の周波数に基づいて周波数を予測できる高調波または低調波を含み、
前記抽出処理では、前記テンプレートと前記基本波との前記マッチング値、および、前記テンプレートと前記高調波または前記低調波との前記マッチング値に基づいて、前記卓越周波数を抽出する
請求項2に記載の卓越周波数の抽出装置。
【請求項4】
一定間隔毎に入力される成分を含む信号をフーリエ変換することによって、周波数スペクトルを算出する算出ステップと、
テンプレートマッチング法によって、前記周波数スペクトルから卓越周波数を抽出する抽出ステップと、を含む
卓越周波数の抽出方法。
【請求項5】
一定間隔毎に入力される成分を含む信号をフーリエ変換することによって、周波数スペクトルを算出する算出ステップと、
テンプレートマッチング法によって、前記周波数スペクトルから卓越周波数を抽出する抽出ステップと、をコンピュータに実行させる
卓越周波数の抽出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、卓越周波数の抽出装置、卓越周波数の抽出方法、および、卓越周波数の抽出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
路面平坦性を評価する指標として、国際ラフネス指数が知られている。特許文献1は、国際ラフネス指数を算出する路面平坦性計測装置の一例を開示している。この路面平坦性計測装置は、例えば、試験車の車軸またはサスペンションの下部に取り付けられ、車軸方向に対して直交する上下方向の加速度を検出するセンサの検出結果に基づいて、国際ラフネス指数を算出する処理手段を備える。処理手段は、センサによって検出される加速度に基づいて、運動方程式を用いたクォーターカーシミュレーションの逆算によって路面プロファイルを算出し、算出した路面プロファイルを用いて、基準車におけるクォーターカーシミュレーションを実行することによって、国際ラフネス指数を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5226437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、路面プロファイルの算出においては、試験車のタイヤおよび車輪の組み合わせの重心位置が回転中心に位置していない場合、遠心力による振動が車輪の回転周期毎に発生する。この振動は、ばね下加速度に重畳されるため、路面プロファイルの計測には不要な成分であり、除去されることが好ましい。このため、例えば、一定間隔毎のばね下加速度をフーリエ変換することによって得られる周波数スペクトルから卓越成分の周波数(以下では、「卓越周波数」という)を抽出し、卓越周波数近傍に存在する成分をバンドストップフィルタ等によって除去することが考えられる。
【0005】
このとき、例えば、周波数スペクトルの中で単に大きな値となるピークの周波数を抽出する場合、定常的ではない特異成分を抽出するおそれがある。また、例えば、平滑化した周波数スペクトルの中で大きな値となる成分のピーク点の周波数を抽出した場合、平滑化したことによって、本来の卓越周波数からずれた周波数を抽出するおそれがある。このため、ばね下加速度のように、一定間隔毎に入力される成分を含む信号の卓越周波数を精度よく抽出できる方法が求められる。なお、このような課題は、圧力、電圧、および、変位等の一定間隔毎に入力される成分を含む信号の卓越周波数を抽出する場合でも同様に生じる。
【0006】
本発明は、一定間隔毎に入力される成分を含む信号の卓越周波数を精度よく抽出できる卓越周波数の抽出装置、卓越周波数の抽出方法、および、卓越周波数の抽出プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1観点に係る卓越周波数の抽出装置は、一定間隔毎に入力される成分を含む信号をフーリエ変換することによって、周波数スペクトルを算出する算出処理と、テンプレートマッチング法によって、前記周波数スペクトルから卓越周波数を抽出する抽出処理と、を実行する。
【0008】
上記卓越周波数の抽出装置によれば、テンプレートマッチング法を用いるため、周波数スペクトルから卓越周波数を精度よく抽出できる。
【0009】
本発明の第2観点に係る卓越周波数の抽出装置は、第1観点に係る卓越周波数の抽出装置であって、前記抽出処理では、前記周波数スペクトルのピーク波形を模したテンプレートの複数の点における値と、前記テンプレートの複数の点と対応する前記周波数スペクトルの複数の点におけるスペクトル強度とに基づいてマッチング値を算出し、前記マッチング値に基づいて前記卓越周波数を抽出する。
【0010】
上記卓越周波数の抽出装置によれば、卓越周波数の抽出の精度が高められる。
【0011】
本発明の第3観点に係る卓越周波数の抽出装置は、前記周波数スペクトルは、基本波、および、前記基本波の周波数に基づいて周波数を予測できる高調波または低調波を含み、前記抽出処理では、前記テンプレートと前記基本波との前記マッチング値、および、前記テンプレートと前記高調波または前記低調波との前記マッチング値に基づいて、前記卓越周波数を抽出する。
【0012】
上記卓越周波数の抽出装置によれば、抽出処理において、高調波または低調波を考慮してマッチング値を算出するため、卓越周波数の抽出の精度が一層高められる。
【0013】
本発明の第4観点に係る卓越周波数の抽出方法は、一定間隔毎に入力される成分を含む信号をフーリエ変換することによって、周波数スペクトルを算出する算出ステップと、テンプレートマッチング法によって、前記周波数スペクトルから卓越周波数を抽出する抽出ステップと、を含む。
【0014】
上記卓越周波数の抽出方法によれば、第1観点に係る卓越周波数の抽出装置と同様の効果が得られる。
【0015】
本発明の第5観点に係る卓越周波数の抽出プログラムは、一定間隔毎に入力される成分を含む信号をフーリエ変換することによって、周波数スペクトルを算出する算出ステップと、テンプレートマッチング法によって、前記周波数スペクトルから卓越周波数を抽出する抽出ステップと、をコンピュータに実行させる。
【0016】
上記卓越周波数の抽出プログラムによれば、第1観点に係る卓越周波数の抽出装置と同様の効果が得られる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に関する卓越周波数の抽出装置、卓越周波数の抽出方法、および、卓越周波数の抽出プログラムによれば、一定間隔毎に入力される成分を含む信号の卓越周波数を精度よく抽出できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態の路面平坦性計測システムの概略構成図。
図2】変位算出処理の処理手順の一例を示すフローチャート。
図3】リサンプリング処理の処理手順の一例を示すフローチャート。
図4】ばね下変位に関するデータと、試験車が移動した累積距離に関するデータとの関係の一例を示すグラフ。
図5】ばね下変位と等間隔距離軸との対応関係を示すグラフ。
図6】車両特性推定処理の処理手順の一例を示すフローチャート。
図7】ばね下加速度に関するデータと、試験車が移動した累積距離に関するデータとの関係の一例を示すグラフ。
図8】ばね下加速度と等間隔距離軸との対応関係を示すグラフ。
図9】空間周波数スペクトルのうちの卓越成分の空間周波数スペクトル、および、その周辺の模式図。
図10】テンプレートの模式図。
図11】基本波および高調波に対してテンプレートマッチング法を用いる場合の模式図。
図12】試験車のサスペンション、および、その周辺を示す正面図。
図13】路面プロファイル算出処理の処理手順の一例を示すフローチャート。
図14】第1試験の空間周波数スペクトルに関する図。
図15図14から空間周波数スペクトルのトレンド成分を除去した図。
図16】第1試験の空間周波数スペクトルの卓越成分を抽出した図。
図17】第2試験の空間周波数スペクトルに関する図。
図18図17から空間周波数スペクトルのトレンド成分を除去した図。
図19】第2試験の空間周波数スペクトルの卓越成分を抽出した図。
図20】第3試験の空間周波数スペクトルに関する図。
図21図20から空間周波数スペクトルのトレンド成分を除去した図。
図22】第3試験の空間周波数スペクトルの卓越成分を抽出できなかったことを示す図。
図23】第4試験の空間周波数スペクトルに関する図。
図24図23から空間周波数スペクトルのトレンド成分を除去した図。
図25】第4試験の空間周波数スペクトルの卓越成分を抽出した図。
図26】第5試験の試験結果を示す図。
図27】第6試験の試験結果を示す図。
図28】第7試験の試験結果を示す図。
図29】第8試験の試験結果を示す図。
図30】第9試験の試験結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る卓越周波数の抽出装置、および、これを備える路面平坦性計測システムについて説明する。
【0020】
<1.路面平坦性計測システム>
<1-1.路面平坦性計測システムの全体構成>
図1は、卓越周波数の抽出装置の一例である路面平坦性計測装置60を含む路面平坦性計測システム10(以下では、「システム10」という)の概略構成図である。システム10は、クォーターカーシミュレーションに基づいて、国際ラフネス指数(以下では、IRI(International Roughness Index)という)を再現性高く算出できるように構成されるシステムである。より詳細には、システム10は、クォーターカーシミュレーションに用いる路面プロファイルを再現性高く算出できるように構成されるシステムである。路面プロファイルは、道路上のある仮想線に沿って路面を切断した場合の2次元の表面形状であり、一定距離毎の路面の高さに関するデータである。システム10を構成する主な要素は、上下方向センサ20、左右方向センサ30、車速パルス発生装置40、取得装置50、および、路面平坦性計測装置60である。システム10の一部または全部は、計測対象の路面を走行する試験車100に搭載される。計測対象の路面は、例えば、舗装された公道における補修を検討している区間の路面、舗装された公道における任意の区間の路面、または、舗装された私有地の路面を含む。
【0021】
<1-2.上下方向センサ>
上下方向センサ20は、試験車100の車軸またはサスペンション120(図12参照)の下部に取り付けられ、車軸方向に対して直交する上下方向の加速度および速度の少なくとも一方を検出する。本実施形態では、上下方向センサ20は、試験車100の左側前輪110(図12参照)のサスペンション120の下部に取り付けられ、車軸方向に対して直交する上下方向の加速度を検出する加速度センサである。上下方向センサ20は、試験車100の右側前輪のサスペンション、左側後輪のサスペンション、または、右側後輪のサスペンションに取り付けられてもよい。上下方向センサ20は、試験車100の左側前輪の車軸、右側前輪の車軸、左側後輪の車軸、または、右側後輪の車軸に取り付けられてもよい。また、上下方向センサ20は、車軸方向に対して直交する上下方向の速度を検出する速度センサであってもよい。上下方向センサ20は、検出した加速度に関する信号を取得装置50に出力する。
【0022】
<1-3.左右方向センサ>
左右方向センサ30は、試験車100の車軸またはサスペンション120(図12参照)の下部に取り付けられ、上下方向と直交する左右方向の加速度および速度の少なくとも一方を検出する。本実施形態では、左右方向センサ30は、試験車100の左側前輪110のサスペンション120の下部に取り付けられ、上下方向に対して直交する左右方向の加速度を検出する加速度センサである。左右方向センサ30は、上下方向センサ20と隣接して配置される。左右方向センサ30は、上下方向に対して直交する左右方向の速度を検出する速度センサであってもよい。左右方向センサ30は、検出した加速度に関する信号を取得装置50に出力する。
【0023】
<1-4.車速パルス発生装置>
車速パルス発生装置40は、例えば、試験車100の速度メーター(図示略)の背面に配置され、試験車100の車軸の回転数に比例した周波数のパルス信号を発生させる。車速パルス発生装置40は、パルス信号を取得装置50、および、試験車100のエンジンを制御する制御装置(図示略)に出力する。
【0024】
<1-5.取得装置>
取得装置50は、上下方向センサ20から出力された上下方向の加速度に関する信号、左右方向センサ30から出力された左右方向の加速度に関する信号、および、車速パルス発生装置40が出力したパルス信号を取得し、これらの信号を路面平坦性計測装置60に出力する。
【0025】
<1-6.路面平坦性計測装置のハード構成>
路面平坦性計測装置60は、取得装置50と有線通信または無線通信できるように接続される。路面平坦性計測装置60は、本体61、入力装置62、および、出力装置63を有する。
【0026】
本体61は、記憶部61Aおよび制御部61Bを有する。記憶部61Aおよび制御部61Bは、バス64を介して通信できるように接続される。記憶部61Aは、例えば、ハードディスクまたはソリッドステートドライブである。記憶部61Aは、路面プロファイルの算出に関する1または複数のアプリケーションソフトウェア(以下では、「路面プロファイル算出ソフト」という)を記憶する。
【0027】
制御部61Bは、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を含み、後述する機能を実行する。制御部61Bは、入力装置62からの要求に応じて記憶部61Aに記憶されている路面プロファイル算出ソフトを実行する。制御部61Bが路面プロファイル算出ソフトを実行することによって、路面平坦性計測装置60には、1または複数の機能ブロックが構築される。
【0028】
入力装置62は、例えばキーボードであり、本体61と接続される。出力装置63は、例えば、液晶ディスプレイであり、本体61から出力された信号を受信できるように、本体61と接続される。なお、本体61、入力装置62、および、出力装置63は、ノート型パーソナルコンピュータのように、一体的に構成されてもよい。
【0029】
<1-7.路面平坦性計測装置のソフト構成>
制御部61Bが記憶部61Aに記憶されている路面プロファイル算出ソフトを実行することによって構成される機能ブロックは、例えば、路面プロファイル算出部70を含む。路面プロファイル算出部70は、上下方向センサ20および左右方向センサ30によって検出される加速度に基づいて、路面プロファイル算出処理を実行する。路面プロファイル算出処理は、ローパスフィルタ処理、変位算出処理、リサンプリング処理、タイヤ回転成分除去処理、横力成分除去処理、および、バンドパスフィルタ処理を含む。また、後述するように、路面プロファイル算出部70は、タイヤ回転成分除去処理においてタイヤ回転成分を除去するために、路面プロファイル算出処理よりも前に、空間周波数スペクトルから卓越周波数を抽出する車両特性推定処理を実行する。路面プロファイル算出部70は、車両特性推定処理において、テンプレートとの演算値を評価するマッチング法(以下では、「テンプレートマッチング法」という)を用いて卓越周波数を抽出する。以下では、各処理の詳細について説明する。
【0030】
<1-8.ローパスフィルタ処理>
ローパスフィルタ処理は、変位算出処理、リサンプリング処理、タイヤ回転成分除去処理、横力成分除去処理、および、バンドパスフィルタ処理よりも前に実行される処理である。路面プロファイル算出部70は、ローパスフィルタ処理において、上下方向センサ20によって検出された加速度、および、左右方向センサ30によって検出された加速度に双方向のローパスフィルタを施すことによって、路面凹凸に起因する試験車100の振動成分に関する周波数帯よりも高い周波数成分を除去する。路面凹凸に起因する試験車100の振動成分に関する周波数帯よりも高い周波数成分は、例えば、300Hz以上の周波数成分である。
【0031】
<1-9.変位算出処理>
変位算出処理は、ローパスフィルタ処理よりも後、かつ、リサンプリング処理よりも前に実行される処理である。路面プロファイル算出部70は、変位算出処理において、上下方向センサ20によって検出される加速度(以下では、「ばね下加速度」という)を積分することによって、サスペンション120の上下方向の速度(以下では、「ばね下速度」という)を算出し、ばね下速度を積分することによって、サスペンション120の上下方向の変位(以下では、「ばね下変位」という)を算出する。
【0032】
ばね下加速度、ばね下速度、および、ばね下変位は、以下の式(1)~(3)で表される。
ばね下加速度 f(t)=X’’(t)・・・(1)
ばね下速度 ∫f(t)dt=X’(t)+C1・・・(2)
ばね下変位 ∫∫f(t)dtdt=X(t)+C1・t+C2・・・(3)
【0033】
ばね下加速度を2回積分することによって得られるばね下変位には、周知のとおり、積分誤差が含まれる。すなわち、積分定数C1項に時間tがかかるため、時間とともに、登る坂道、または、下る坂道のような路面プロファイルとして算出される。仮に、ばね下加速度の波形に直流バイアスAが存在する場合、ばね下加速度を2回積分したばね下変位における積分誤差は、A/2・t2+C1・t+C2のような2次曲線となる。さらには、直流成分ではなく、温度ドリフト等の時間変化成分が存在する場合、さらに大きな積分誤差が生じるおそれがある。このため、本実施形態では、路面プロファイル算出部70は、変位算出処理において、ばね下加速度、ばね下速度、および、ばね下変位に対して、双方向のハイパスフィルタを施すことによって、路面凹凸に起因する試験車100の振動成分に関する周波数帯よりも低い低周波成分を除去する。
【0034】
図2は、変位算出処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。変位算出処理は、ローパスフィルタ処理よりも後、かつ、リサンプリング処理よりも前の任意のタイミングで開始される。
【0035】
ステップS11では、路面プロファイル算出部70は、ばね下加速度に双方向のハイパスフィルタを施す。このため、ばね下加速度に関して、バイアス成分および温度ドリフトが除去される。ステップS12では、路面プロファイル算出部70は、ばね下加速度を積分することによって、ばね下速度を算出する。ステップS13では、路面プロファイル算出部70は、ばね下速度に双方向のハイパスフィルタを施す。このため、ステップS12における積分定数に関するバイアスが除去される。ステップS14では、路面プロファイル算出部70は、ばね下速度を積分してばね下変位を算出する。ステップS15では、路面プロファイル算出部70は、ばね下変位に双方向のハイパスフィルタを施す。このため、ステップS14における積分定数に関するバイアスが除去される。
【0036】
<1-10.リサンプリング処理>
リサンプリング処理は、変位算出処理よりも後に実行される処理である。本実施形態では、路面プロファイル算出部70は、リサンプリング処理において、試験車100の累積移動距離に基づいて、等間隔距離軸を有する等間隔距離データを作成し、算出したばね下変位を等間隔距離データの等間隔距離軸と対応付ける。
【0037】
図3は、リサンプリング処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。リサンプリング処理は、変位算出処理よりも後の任意のタイミングで開始される。
【0038】
ステップS21では、路面プロファイル算出部70は、車速パルス発生装置40から車速パルスの信号、および、車速パルス係数を取得する。車速パルス係数は、車速パルスの1エッジあたりの距離である。なお、車速パルス係数は、予め記憶部61Aに記憶されていてもよい。
【0039】
ステップS22では、路面プロファイル算出部70は、車速パルスの信号に基づいて、車速パルスエッジを検出する。
【0040】
ステップS23では、路面プロファイル算出部70は、車速パルスエッジおよび車速パルス係数に基づいて、試験車100の累積移動距離を算出する。ステップS23では路面プロファイル算出部70は、車速パルスエッジの累積値と車速パルス係数とを乗算することによって、試験車100の累積移動距離を算出する。なお、車速パルスエッジの累積値と車速パルス係数とを乗算しただけでは、時間軸上で、同じ距離の値が複数サンプリングされる場合があるため、路面プロファイル算出部70は、車速パルスエッジの累積値と車速パルス係数とを乗算したデータを直線補間した単一増加傾向のデータを用いて、試験車100の累積移動距離を算出する。
【0041】
ステップS24では、路面プロファイル算出部70は、算出したばね下変位を等間隔距離データの等間隔距離軸と対応付ける。
【0042】
図4は、ばね下変位に関するデータ(以下では、「ばね下変位データ」という)と、試験車100の累積移動距離に関するデータ(以下では、「距離データ」という)との関係を示すグラフの一例である。ステップS24では、路面プロファイル算出部70は、ステップS23で算出した試験車100の累積移動距離に基づいて、図5に示される等間隔距離軸を有する等間隔距離データを作成し、算出したばね下変位を等間隔距離データの等間隔距離軸と対応付ける。図5に示される例では、路面プロファイル算出部70は、等間隔距離軸における距離値「2」毎にばね下変位を対応付ける。
【0043】
ステップS24において、等間隔距離軸を有する等間隔距離データの距離データと対応するばね下変位データが存在しない場合がある。その場合、路面プロファイル算出部70は、存在しないばね下変位データの直前および直後の値に基づいて、直線補間することによって、存在しないばね下変位データ(以下では、「補間データ」という)を生成する。図4および図5に示される例では、距離値「2」の場合のばね下変位データが存在しないため、路面プロファイル算出部70は、距離値「1」および距離値「3」のときのばね下変位データを直線補間することによって、距離値「2」の場合の補間データを生成する。同様に、距離値「6」の場合のばね下変位データが存在しないため、路面プロファイル算出部70は、距離値「5」および距離値「7」のときのばね下変位データを直線補間することによって、距離値「6」の場合の補間データを生成する。距離値「8」の場合のばね下変位データが存在しないため、路面プロファイル算出部70は、距離値「7」および距離値「9」のときのばね下変位データを直線補間することによって、距離値「8」の場合の補間データを生成する。距離値「12」の場合のばね下変位データが存在しないため、路面プロファイル算出部70は、距離値「11」および距離値「13」のときのばね下変位データを直線補間することによって、距離値「12」の場合の補間データを生成する。
【0044】
<1-11.タイヤ回転成分除去処理>
タイヤ回転成分除去処理は、ローパスフィルタ処理よりも後の任意のタイミングで開始される。本実施形態では、タイヤ回転成分除去処理は、リサンプリング処理よりも後に開始される。路面プロファイルの算出においては、試験車100のタイヤおよび車輪の組み合わせの重心位置が回転中心に位置していない場合、遠心力による振動が車輪の回転周期毎に発生する。この振動は、ばね下加速度に重畳されるため、路面プロファイルの計測には不要な成分であり、除去されることが好ましい。このため、路面プロファイル算出部70は、タイヤ回転成分除去処理において、車両特性推定処理で抽出した卓越周波数に基づいて、タイヤ回転成分に相当する卓越周波数成分を除去する。
【0045】
遠心力による振動の成分を除去する方法として、例えば、車輪の中心からタイヤの接地面までの距離であるタイヤの静的負荷半径を用いることが考えられる。車輪の中心からタイヤの接地面までの距離は、例えば、作業者によって巻き尺等で計測される。タイヤの静的負荷半径に基づいてタイヤ外周長を算出し、試験車100の車速をタイヤ外周長で除算することによって、タイヤ回転周波数を推定できる。この推定されたタイヤ回転周波数を中心周波数としてバンドストップフィルタを施すことによって、遠心力による振動の成分を除去できる。しかし、車輪の中心からタイヤの接地面までの距離の計測の際に作業者が数mm程度でも計測ミスを行った場合、バンドストップフィルタの効果が低下するおそれがある。
【0046】
遠心力による振動の成分を除去する別の方法として、例えば、一定時間毎のばね下加速度をフーリエ変換することによって得られる時間周波数スペクトルから卓越周波数を抽出し、卓越周波数近傍に存在する成分をバンドストップフィルタによって除去することが考えられる。しかし、試験車100の車速が一定ではない場合、時間周波数スペクトルにおける卓越成分の時間周波数も一定ではないため、卓越成分のピークが分散し、卓越周波数を精度よく抽出することが難しい。一方、空間周波数スペクトルであれば、試験車100の車速に関係なく、卓越成分のピークの山型の形状が分散しにくい、換言すれば、卓越成分のピークの山型の形状が保たれるため、卓越周波数を精度よく抽出できる。このため、本実施形態では、路面プロファイル算出部70は、路面プロファイル算出処理よりも前に空間周波数スペクトルから卓越周波数を抽出する車両特性推定処理を実行し、タイヤ回転成分除去処理において、空間周波数スペクトルから抽出された卓越周波数を用いて、タイヤ回転成分を除去する。
【0047】
例えば、時間周波数スペクトルまたは空間周波数スペクトルの中で単に大きな値となる成分の周波数を抽出する場合、定常的ではない特異成分を抽出するおそれがある。また、例えば、平滑化した時間周波数スペクトルまたは空間周波数スペクトルの中で大きな値となる成分のピーク点の周波数を抽出した場合、平滑化したことによって、本来の卓越周波数からずれた周波数を抽出するおそれがある。本実施形態では、このようなおそれを回避するためにも、路面プロファイル算出部70は、車両特性推定処理において、テンプレートマッチング法を用いて卓越周波数を抽出する。試験車100の車両特性の1つである卓越周波数は、試験車100の特性に変化がなければ、ほとんど変化しない。このため、車両特性推定処理は、通常、路面プロファイル算出処理の前に1回実行され、抽出された卓越周波数に関するデータがタイヤ回転成分除去処理に用いられる。なお、車両特性推定処理は、例えば、試験車100のタイヤが交換された場合等、試験車100の特性が変化すると予測される場合には、その都度実行されることが好ましい。以下では、車両特性推定処理について、詳細を説明する。
【0048】
<1-12.車両特性推定処理>
図6は、車両特性推定処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
路面プロファイル算出部70は、例えば、試験車100の走行が開始されたことに基づいて車両特性推定処理を開始する。別の例では、路面プロファイル算出部70は、試験車100の走行が終了し、かつ、入力装置62から入力される要求に基づいて、車両特性推定処理を開始する。なお、車両特性推定処理において試験車100が走行する路面は、平坦路または基準路である。なお、計測対象の路面が平坦路である場合、車両特性推定処理において、試験車100は、計測対象の路面を走行してもよい。
【0049】
ステップS31では、路面プロファイル算出部70は、取得装置50から計測データを取得する。計測データは、上下方向センサ20から出力される加速度、左右方向センサ30から出力される加速度、および、車速パルス発生装置40から出力される車速パルスを含む。記憶部61Aに車速パルス係数が記憶されていない場合、ステップS41において、路面プロファイル算出部70は、試験車100の制御装置から車速パルス係数を取得してもよい。
【0050】
ステップS32では、路面プロファイル算出部70は、ローパスフィルタ処理を実行する。ローパスフィルタ処理は、路面プロファイル算出処理で説明したローパスフィルタ処理と同様の処理である。
【0051】
ステップS33では、路面プロファイル算出部70は、リサンプリング処理と同様に試験車100の累積移動距離に基づいて、等間隔距離軸を有する等間隔距離データを作成する。路面プロファイル算出部70は、ばね下加速度を等間隔距離データの等間隔距離軸と対応付ける。
【0052】
図7は、ばね下加速度に関するデータ(以下では、「ばね下加速度データ」という)と、試験車100の累積移動距離に関するデータ(以下では、「距離データ」という)との関係を示すグラフの一例である。ステップS33では、路面プロファイル算出部70は、試験車100の累積移動距離に基づいて、図8に示される等間隔距離軸を有する等間隔距離データを作成し、ばね下加速度を等間隔距離データの等間隔距離軸と対応付ける。図8に示される例では、路面プロファイル算出部70は、等間隔距離軸における距離値「2」毎にばね下加速度を対応付ける。
【0053】
ステップS33において、等間隔距離軸を有する等間隔距離データの距離データと対応するばね下加速度データが存在しない場合がある。その場合、路面プロファイル算出部70は、存在しないばね下加速度データの直前および直後の値に基づいて、直線補間することによって、存在しないばね下加速度データ(以下では、「補間データ」という)を生成する。図7および図8に示される例では、距離値「2」の場合のばね下加速度データが存在しないため、路面プロファイル算出部70は、距離値「1」および距離値「3」のときのばね下加速度データを直線補間することによって、距離値「2」の場合の補間データを生成する。同様に、距離値「6」の場合のばね下加速度データが存在しないため、路面プロファイル算出部70は、距離値「5」および距離値「7」のときのばね下加速度データを直線補間することによって、距離値「6」の場合の補間データを生成する。距離値「8」の場合のばね下加速度データが存在しないため、路面プロファイル算出部70は、距離値「7」および距離値「9」のときのばね下加速度データを直線補間することによって、距離値「8」の場合の補間データを生成する。距離値「12」の場合のばね下加速度データが存在しないため、路面プロファイル算出部70は、距離値「11」および距離値「13」のときのばね下加速度データを直線補間することによって、距離値「12」の場合の補間データを生成する。以上のように、路面プロファイル算出部70は、ステップS33において、時間軸ではなく、空間(距離)軸で等間隔のばね下加速度データを作成する。
【0054】
ステップS34(算出処理)では、路面プロファイル算出部70は、ステップS33で作成した、距離軸で等間隔のばね下加速度データをフーリエ変換することによって、空間周波数スペクトルを算出する。
【0055】
ステップS35(抽出処理)では、路面プロファイル算出部70は、テンプレートマッチング法を用いて、空間周波数スペクトルから卓越周波数を抽出する。路面プロファイル算出部70は、抽出処理において、空間周波数スペクトルのピーク波形を模したテンプレート80の複数の点における値と、テンプレート80の複数の点と対応する空間周波数スペクトル90の複数の点におけるスペクトル強度とを乗算した値の和に基づいてマッチング値を算出し、マッチング値に基づいて卓越周波数を抽出する。
【0056】
図9は、空間周波数スペクトルのうちの卓越成分の空間周波数スペクトル90、および、その周辺の模式図である。図10は、テンプレート80の模式図である。テンプレートサイズは、距離軸で等間隔のばね下加速度データをフーリエ変換した際のデータ長、および、スペクトルに対する平滑化等の前処理に基づいて決められる。図10に示される例では、テンプレート80は、サイズ9のテンプレートである。テンプレート80は、サイズ9以外のサイズであってもよい。フーリエ変換の際のデータ長が長いほど空間周波数スペクトルの周波数分解能が高いため、換言すれば、細かいため、卓越成分がピンポイントの特徴点となる。仮に、それに合わせてピンポイントで急峻な波形のテンプレートを使用すると、特徴点ではないノイズにもマッチする可能性が高いため、幅の広い、換言すれば、データ数の多いテンプレートを用いる必要がある。平滑化を実施すれば、ノイズ成分が減ることによって、誤ってマッチングしにくくなるため、テンプレートサイズを小さくできる。
【0057】
路面プロファイル算出部70は、抽出処理において、テンプレート80の中心周波数νを所定の検索範囲内で移動させることによって、各位置でのマッチング値Mνを算出する。路面プロファイル算出部70は、各位置でのマッチング値Mνが最適値となる位置における周波数を卓越周波数として抽出する。本実施形態では、各位置でのマッチング値Mνの最適値は、最大値である。なお、所定の検索範囲は、市販されているタイヤのサイズに基づいてタイヤ回転成分が存在し得る周波数帯として予め設定される範囲である。マッチング値Mνは、テンプレート80の複数の点T1~T9における値AT1~AT9と、テンプレート80の複数の点T1~T9と対応する空間周波数スペクトル90の複数の点S1~S9におけるスペクトル強度BS1~BS9とを用いて、以下の式(4)によって算出される。
【0058】
Mν=AT1・BS1+AT2・BS2+・・・+AT8・BS8+AT9・BS9・・・(4)
【0059】
ところで、空間周波数スペクトルの卓越成分は、タイヤ外周長の逆数の周波数νRである基本波と、基本波の周波数に基づいて周波数を予測できる高調波とを含む場合がある。高調波は、例えば、基本波の整数倍の周波数である。仮に、空間周波数スペクトルから求めた卓越周波数が実際の基本波の周波数とずれている場合、高調波に対してバンドストップフィルタを施したとしても、高次の高調波になるほどフィルタバンドの位置(周波数)が大きくずれるため、高調波に相当する卓越成分を除去できないおそれがある。さらには、必要な空間周波数スペクトルを除去してしまうおそれがある。このため、本実施形態では、路面プロファイル算出部70は、抽出処理において、テンプレート80と基本波とのマッチング値、および、テンプレート80と高調波とのマッチング値に基づいて空間周波数スペクトルの卓越周波数を抽出する。
【0060】
図11は、基本波および高調波に対してテンプレートマッチング法を用いる場合の模式図である。図11に示される例では、空間周波数スペクトル200は、基本波200X、第1高調波210、第2高調波220、第3高調波230、および、第4高調波240を含む。なお、図11では、図面の簡略化のため、基本波200X、第1高調波210、第2高調波220、第3高調波230、および、第4高調波240をバー状で図示している。基本波200X、第1高調波210、第2高調波220、第3高調波230、および、第4高調波240の実際の形状は、図9に示されるようなスペクトル波形である。
【0061】
図11に示される例では、テンプレート80は、基本波テンプレート80X、第1テンプレート81、第2テンプレート82、第3テンプレート83、および、第4テンプレート84を含む。なお、図11では、図面の簡略化のため、基本波テンプレート80X、第1テンプレート81、第2テンプレート82、第3テンプレート83、および、第4テンプレート84をバー状で図示している。基本波テンプレート80X、第1テンプレート81、第2テンプレート82、第3テンプレート83、および、第4テンプレート84の実際の形状は、図10に示される山型である。
【0062】
路面プロファイル算出部70は、抽出処理において、基本波テンプレート80Xの中心周波数νを所定の検索範囲内で移動させることによって、総マッチング値MTを算出する。総マッチング値MTは、以下の式(5)によって算出される。
【0063】
MT=MRx+MR1+MR2+MR3+MR4・・・(5)
なお、値MRxは、基本波テンプレート80Xと基本波200Xとのマッチング値である。値MR1は、第1テンプレート81と第1高調波210とのマッチング値である。値MR2は、第2テンプレート82と第2高調波220とのマッチング値である。値MR3は、第3テンプレート83と第3高調波230とのマッチング値である。値MR4は、第4テンプレート84と第4高調波240とのマッチング値である。
【0064】
路面プロファイル算出部70は、抽出処理において、総マッチング値MTが最適値となる位置における周波数を卓越周波数として抽出する。なお、本実施形態では、総マッチング値MTの最適値は、最大値である。
【0065】
図6に示されるように、ステップS36では、路面プロファイル算出部70は、ステップS35で抽出した卓越周波数を記録する。
【0066】
<1-13.横力成分除去処理>
横力成分除去処理は、変位算出処理よりも後、かつ、リサンプリング処理よりも前または後に実行される処理である。本実施形態では、路面プロファイル算出部70は、横力成分除去処理を実施することによって、左右方向センサ30によって検出される左右方向の加速度に基づいて、上下方向センサ20によって検出される加速度を補正している。
【0067】
図12に示されるように、上下方向センサ20の感度軸XAと、左右方向センサ30の感度軸XBとのなす角θAが90°であり、キングピン角θBの場合、路面入力による上下加速度Az、および、旋回等による左右加速度Ayは、上下方向センサ20によって検出される加速度az、および、左右方向センサ30によって検出される加速度ayに基づいて、以下の式(6)、(7)によって、算出される。
【0068】
Az=az・cоsθB-ay・sinθB・・・(6)
Ay=az・sinθB+ay・cоsθB・・・(7)
【0069】
また、平坦な路面における旋回では、上下加速度Azは、実質的に0とみなすことができるため、上下方向センサ20によって検出される加速度az、および、左右方向センサ30によって検出される加速度ayに基づいて、キングピン角θBは、以下のように算出できる。
【0070】
az・cоsθB-ay・sinθB=0・・・(8)
az/ay=tanθB・・・(9)
θB=tan-1(az/ay)・・・(10)
【0071】
また、市街地等の舗装路を試験車100が走行している場合、サスペンション120の動きは、主に、ばねおよびダンパーの直動であるため、キングピン角θBは、ほとんど変化せず、キングピン角θBを一定値としてみなすことができる。このため、上記式(6)、(7)の三角関数も定数とみなすことができ、路面変位Dは、計測値dに基づいて、以下の式(11)、(12)によって算出できる。
【0072】
Dz=dz・cоsθB-dy・sinθB・・・(11)
θB=tan-1(dz/dy)・・・(12)
【0073】
このため、変位算出処理において算出されたばね下変位、および、左右方向センサ30によって検出された加速度を2回積分して算出された変位に基づいて、キングピン角θB、および、横力成分を除去したばね下変位を算出できる。
【0074】
<1-14.バンドパスフィルタ処理>
バンドパスフィルタ処理は、リサンプリング処理よりも後に実行される処理である。路面プロファイル算出部70は、バンドパスフィルタ処理において、算出したばね下変位に双方向のバンドパスフィルタを施すことによって、路面凹凸に起因する試験車100の振動成分に関する空間周波数帯よりも高い空間周波数成分、および、低い空間周波数成分を除去する。路面凹凸に起因する試験車100の振動成分に関する空間周波数帯よりも高い空間周波数成分は、例えば、10cycle/m以上の空間周波数成分である。路面凹凸に起因する試験車100の振動成分に関する空間周波数帯よりも低い空間周波数成分は、例えば、0.01cycle/m以下の空間周波数成分である。
【0075】
<1-15.路面プロファイル算出処理>
図13を参照して、路面プロファイル算出処理の処理手順の一例について説明する。
路面プロファイル算出部70は、例えば、試験車100の走行が開始されたことに基づいて路面プロファイル算出処理を開始する。別の例では、路面プロファイル算出部70は、試験車100の走行が終了し、かつ、入力装置62から入力される要求に基づいて、路面プロファイル算出処理を開始する。
【0076】
ステップS41では、路面プロファイル算出部70は、取得装置50から計測データを取得する。計測データは、上下方向センサ20から出力される加速度、左右方向センサ30から出力される加速度、および、車速パルス発生装置40から出力される車速パルスを含む。記憶部61Aに車速パルス係数が記憶されていない場合、ステップS41において、路面プロファイル算出部70は、試験車100の制御装置から車速パルス係数を取得してもよい。
【0077】
ステップS42では、路面プロファイル算出部70は、ローパスフィルタ処理を実行する。ステップS43では、路面プロファイル算出部70は、変位算出処理を実行する。ステップS44では、路面プロファイル算出部70は、リサンプリング処理を実行する。ステップS45では、路面プロファイル算出部70は、タイヤ回転成分除去処理を実行する。ステップS45では、路面プロファイル算出部70は、車両特性推定処理のステップS35で抽出した卓越周波数から求められる基本波および高調波の周波数を各々の中心周波数とするバンドストップフィルタを施すことによって、タイヤ回転成分に相当する卓越周波数成分を除去する。ステップS46では、路面プロファイル算出部70は、横力成分除去処理を実行する。ステップS47では、路面プロファイル算出部70は、バンドパスフィルタ処理を実行する。ステップS47が終了することによって、路面プロファイルが算出される。路面プロファイル算出部70は、算出した路面プロファイルに基づいて、公知のクォーターカーシミュレーションを実行することによって、IRIを算出する。
【0078】
<2.本実施形態の効果>
以上のように構成された卓越周波数の抽出装置の一例である路面平坦性計測装置60によれば、次の効果を得ることができる。
【0079】
<2-1>
路面平坦性計測装置60は、車両特性推定処理において、テンプレートマッチング法を用いるため、空間周波数スペクトルから卓越周波数を精度よく抽出できる。
【0080】
<2-2>
本実施形態では、一定間隔毎に入力される成分を含む信号が、一定距離毎に入力される試験車100のばね下加速度であり、算出処理によって算出された空間周波数スペクトルのスペクトル強度は、車速および計測区間によって異なる。このため、SSD(Sum of Squared Difference)およびSAD(Sum of Absolute Difference)等のテンプレートマッチング法によって、抽出処理を実行する場合、用意したテンプレートとの差分値も、車速および計測区間によって増減するため、目的とする卓越成分以外の特徴点の周波数を抽出するおそれがある。
【0081】
路面平坦性計測装置60によれば、テンプレート80の複数の点T1~T9における値AT1~AT9と、テンプレート80の複数の点T1~T9と対応する空間周波数スペクトル90の複数の点S1~S9におけるスペクトル強度BS1~BS9と、を乗算した値の和に基づいてマッチング値Mνを算出するため、マッチング値Mνの算出の精度が高められる。
【0082】
<2-3>
路面平坦性計測装置60によれば、車両特性推定処理の抽出処理において、テンプレート81~84と、第1高調波210~第4高調波240とのマッチング値MR1~MR4を考慮して卓越周波数を抽出する。このため、基本波200Xの空間周波数スペクトルが卓越していない場合でも、第1高調波210~第4高調波240を考慮することによって、卓越周波数を好適に抽出できる。なお、高調波の数は、一例である。高調波は、1つ~3つ、または、5つ以上の場合を含む。
【0083】
<3.本実施形態の路面平坦性計測装置の試験結果>
図14図29を参照して、第1試験~第8試験における空間周波数スペクトルの卓越周波数の抽出結果について説明する。なお、第1試験~第4試験は、車両特性推定処理に関する試験であり、第5試験~第8試験は、タイヤ回転成分除去処理に関する試験である。
【0084】
<3-1.第1試験の結果>
図14図16は、第1試験に関する図である。図14は、距離軸で等間隔のばね下加速度データをフーリエ変換することによって算出された空間周波数スペクトルである。図15は、図14からばね下加速度に関する空間周波数スペクトルのトレンド成分を除去したデータである。なお、トレンド成分とは、卓越成分のような局所的な特徴点とは異なり、広範囲にわたる分布および傾向に相当する成分である。図16は、空間周波数スペクトルの卓越成分の抽出結果である。第1試験では、試験車100の車速は、比較的高速の約80km/hである。第1試験では、抽出処理において、基本波のみに対してテンプレートマッチング法を適用した。
【0085】
図16に示されるように、第1試験では、基本波のみに対してテンプレートマッチング法を適用した場合であっても、抽出処理において、空間周波数スペクトルの卓越周波数を好適に抽出できることが確認された。これは、試験車100の車速が高い場合、タイヤが回転するときの遠心力も大きいため、基本波の卓越成分がより強調されるためであると考えられる。
【0086】
<3-2.第2試験の結果>
図17図19は、第2試験に関する図である。図17は、距離軸で等間隔のばね下加速度データをフーリエ変換することによって、算出された空間周波数スペクトルである。図18は、図17からばね下加速度に関する空間周波数スペクトルのトレンド成分を除去したデータである。図19は、空間周波数スペクトルの卓越成分の抽出結果である。第2試験では、試験車100の車速は、比較的高速の約80km/hである。第1試験では、抽出処理において、基本波および高調波に対してテンプレートマッチング法を適用した。
【0087】
図19に示されるように、第2試験では、抽出処理において、空間周波数スペクトルの卓越周波数を好適に抽出できることが確認された。これは、基本波および高調波に対してテンプレートマッチング法を適用しているため、および、試験車100の車速が高く、基本波の卓越成分がより強調されたためであると考えられる。
【0088】
<3-3.第3試験の結果>
図20図22は、第3試験に関する図である。図20は、距離軸で等間隔のばね下加速度データをフーリエ変換することによって、算出された空間周波数スペクトルである。図21は、図20からばね下加速度に関する空間周波数スペクトルのトレンド成分を除去したデータである。図22は、空間周波数スペクトルの卓越成分の抽出結果である。第3試験では、試験車100の車速は、比較的低速の0~50km/hである。第3試験では、抽出処理において、基本波のみに対してテンプレートマッチング法を適用した。
【0089】
図22に示されるように、第3試験では、抽出処理において、空間周波数スペクトルの卓越周波数を抽出できなかった。これは、試験車100の車速が低い場合、タイヤが回転するときの遠心力も小さく、基本波の卓越成分が極めて小さいためであると考えられる。
【0090】
<3-4.第4試験の結果>
図23図25は、第4試験に関する図である。図23は、距離軸で等間隔のばね下加速度データをフーリエ変換することによって、算出された空間周波数スペクトルである。図24は、図23からばね下加速度に関する空間周波数スペクトルのトレンド成分を除去したデータである。図25は、空間周波数スペクトルの卓越成分の抽出結果である。第4試験では、試験車100の車速は、比較的低速の0~50km/hである。第4試験では、抽出処理において、基本波および高調波に対してテンプレートマッチング法を適用した。
【0091】
図25に示されるように、第4試験では、抽出処理において、試験車100の車速が低いにも関わらず、空間周波数スペクトルの卓越周波数を好適に抽出できることが確認された。これは、基本波および高調波に対してテンプレートマッチング法を適用しているためであると考えられる。
【0092】
<3-5.第5試験~第8試験の結果>
図26図29は、第5試験~第8試験に関する図である。図26図29は、車両特性推定処理の抽出処理(ステップS35)において抽出した卓越周波数を試験車100の特性値として用いてばね下加速度データをフィルタリングした空間周波数スペクトルを示している。第5試験~第8試験では、試験車100の車速が異なる場合のばね下加速度の空間周波数スペクトルについて、テンプレートマッチング法によって抽出した卓越周波数に基づいて、卓越周波数成分と、それ以外の周波数成分とに分別した。図26は、第5試験の結果である。第5試験では、試験車100の車速は、20km/hである。図27は、第6試験の結果である。第6試験では、試験車100の車速は、40km/hである。図28は、第7試験の結果である。第7試験では、試験車100の車速は、60km/hである。図29は、第8試験の結果である。第8試験では、試験車100の車速は、80km/hである。
【0093】
図26図29に示されるように、試験車100の車速に関係なく、空間周波数スペクトルのタイヤ回転成分に相当する卓越周波数成分を好適に抽出できることが確認された。
【0094】
<3-6.第9試験の結果>
図30を参照して、第9試験におけるばね下変位の空間周波数スペクトルの卓越周波数成分の抽出結果について説明する。
【0095】
図30は、車両特性推定処理の抽出処理(ステップS35)において抽出した卓越周波数を試験車100の特性値として用いてばね下変位データをフィルタリングした空間周波数スペクトルを示している。第9試験では、ばね下変位の空間周波数スペクトルについて、テンプレートマッチング法によって抽出した卓越周波数に基づいて、卓越周波数成分と、それ以外の周波数成分とに分別した。
【0096】
図30に示されるように、路面プロファイルと同じ次元のばね下変位においても,空間周波数スペクトルのタイヤ回転成分に相当する卓越周波数成分を好適に抽出することが確認された。
【0097】
<4.変形例>
上記実施形態は本発明に関する卓越周波数の抽出装置、卓越周波数の抽出方法、および、卓越周波数の抽出プログラムが取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明に関する卓越周波数の抽出装置、卓越周波数の抽出方法、および、卓越周波数の抽出プログラムは、実施形態に例示された形態とは異なる形態を取り得る。その一例は、実施形態の構成の一部を置換、変更、もしくは、省略した形態、または、実施形態に新たな構成を付加した形態である。以下に実施形態の変形例の幾つかの例を示す。
【0098】
<4-1>
上記実施形態では、卓越周波数の抽出装置は、テンプレートマッチング法によって、試験車100のばね下加速度の空間周波数スペクトルの卓越成分を抽出したが、卓越成分を抽出する周波数スペクトルは、一定間隔毎に入力される成分の周波数スペクトルであれば、これに限定されない。例えば、卓越周波数の抽出装置は、変位、または、試験車100のばね下加速度とは異なる加速度に関する空間周波数スペクトルの卓越成分を抽出してもよい。変位は、例えば、路面形状の変位、舗装継ぎ目の変位、鉄道の線路の継ぎ目の変位、回転軸のブレである。これらの空間周波数スペクトルから卓越成分を除去することによって、平坦区間を算出できる。試験車100のばね下加速度とは異なる加速度は、例えば、無限軌道の履板、階段状または平坦状のエスカレータのステップによる振動である。これらの空間周波数スペクトルから卓越成分を除去することによって、定常成分を算出できる。その他、テンプレートマッチング法によって空間周波数スペクトルの卓越成分を抽出する技術は、例えば、ねじり共振、階段の昇降等の歩行に伴う負荷、および、視覚刺激等にも適用可能である。
【0099】
別の例では、卓越周波数の抽出装置は、テンプレートマッチング法によって、圧力、試験車100のばね下加速度とは異なる加速度、または、電圧に関する時間周波数スペクトルの卓越成分を抽出してもよい。圧力は、例えば、脈動である。圧力に関する時間周波数スペクトルから卓越成分を除去することによって、静圧を算出できる。試験車100のばね下加速度とは異なる加速度は、例えば、固有振動である。固有振動に関する時間周波数スペクトルから卓越成分を除去することによって、現象加速度を算出できる。電圧は、例えば、定常ノイズおよび発振である。定常ノイズおよび発振に関する時間周波数スペクトルから卓越成分を除去することによって、現象信号を算出できる。その他、卓越周波数の抽出装置は、スペクトルアナライザの電圧または電波、および、調律器の音波に関する時間周波数スペクトルの卓越成分を抽出してもよい。
【0100】
<4-2>
上記実施形態では、卓越周波数の抽出装置は、テンプレートマッチング法によって、基本波および高調波の卓越周波数を抽出したが、抽出する複数の周波数の関係を予め予測できる場合であれば、テンプレートマッチング法によって、卓越周波数を抽出できる。本実施形態のように,基本波が存在し得る周波数帯を予め予測できる場合、マッチングの精度向上、および、計算回数削減(処理の高速化)が可能となる。また、基本波の周波数に基づいて周波数を予測できる成分であればマッチング対象にできるため、高調波だけではなく、低調波の抽出においても有効である。なお、テンプレートマッチング法を適用できる予測できる成分の他の例としては、ナイキスト周波数で折り返された周波数に存在するエイリアシングノイズ等が挙げられる。
【0101】
<4-3>
上記実施形態では、車両特性推定処理を路面プロファイル算出部70が実行したが、車両特性推定処理を実行する主体は、路面プロファイル算出部70に限定されない。例えば、車両特性推定処理は、制御部61Bに構築される別の機能ブロック、または、路面平坦性計測装置60以外の別の装置に搭載される制御部に構築される機能ブロックが実行してもよい。この変形例では、制御部61Bに構築される別の機能ブロック、または、路面平坦性計測装置60以外の別の装置に搭載される制御部に構築される機能ブロックによって抽出された卓越周波数は、路面プロファイル算出部70に記録される。
【0102】
<4-4>
上記実施形態では、路面プロファイル算出処理の前に実行される車両特性推定処理によって抽出された卓越周波数を用いてタイヤ回転成分除去処理を実行した。しかし、路面プロファイル算出処理において、タイヤ回転成分除去処理よりも前に車両特性推定処理を実行して、その都度、抽出される卓越周波数を更新してもよい。
【0103】
<4-5>
上記実施形態では、テンプレートマッチング法において、テンプレート80の複数の点T1~T9における値AT1~AT9と、テンプレート80の複数の点T1~T9と対応する空間周波数スペクトル90の複数の点S1~S9におけるスペクトル強度BS1~BS9と、を乗算した値の和に基づいてマッチング値Mνを算出した。しかし、テンプレートマッチング法の具体的な方法は、任意に変更可能である。例えば、差分和または相関係数等に基づいて、マッチング値Mνを算出してもよい。
【0104】
<4-6>
上記実施形態における総マッチング値MTを算出する式(5)は、例えば、以下の式(13)に変更可能である。
MT=Wx・MRx+W1・MR1+W2・MR2+W3・MR3+W4・MR4・・・(13)
【0105】
なお、値Wxは、基本波テンプレート80Xと基本波200Xとのマッチング値の重み係数である。値W1は、第1テンプレート81と第1高調波210とのマッチング値の重み係数である。値W3は、第2テンプレート82と第2高調波220とのマッチング値の重み係数である。値W3は、第3テンプレート83と第3高調波230とのマッチング値の重み係数である。値W4は、第4テンプレート84と第4高調波240とのマッチング値の重み係数である。例えば、これらの重み係数Wx、W1、W2、W3、W4の関係をWx>W1>W2>W3>W4>0と設定することによって、基本波200Xに近い程、換言すれば、次数が低い程、重要視するようなマッチング評価を実施できる。
【0106】
<4-7>
路面プロファイル算出処理の内容は、任意に変更可能である。例えば、図13に示される路面プロファイル算出処理において、ローパスフィルタ処理、横力成分除去処理、および、バンドパスフィルタ処理の少なくとも1つを省略できる。また、横力成分除去処理を変位算出処理よりも後、かつ、リサンプリング処理よりも前に実行してもよい。
【0107】
<4-8>
上記実施形態では、路面プロファイル算出部70は、リサンプリング処理において、車速パルスに基づいて試験車100の移動の累積距離を算出したが、試験車100の車速に基づいて、試験車100の移動の累積距離を算出してもよい。ただし、本実施形態のように車速パルスに基づいて試験車100の移動の累積距離を算出する場合よりも、累積距離の算出精度は、試験車100の車速が変化する場合は、特に低くなる傾向にある。
【0108】
<4-9>
上記実施形態では、車速パルス係数は、記憶部61Aに予め記憶されていたが、例えば、計測対象の路面の長さが予め把握できている場合、路面プロファイル算出部70は、計測対象の路面の長さを試験車100が計測対象の路面を走行している間に得られる車速パルスエッジの累積値で除算することによって、車速パルス係数を算出してもよい。また、路面プロファイル算出部70は、GPS(Global Positioning System)等を用いて計測された試験車100の車速を車速パルス周波数で除算することによって、車速パルス係数を算出してもよい。路面プロファイル算出部70は、車速パルス周波数の算出において、例えば、任意の車速パルスエッジと次の車速パルスエッジとの間隔時間TXを求め、間隔時間TXの逆数1/TXをその間隔の平均周波数として算出する。路面プロファイル算出部70は、好ましい例では、算出された複数の平均周波数にローパスフィルタを施して平滑化することによって、車速パルス周波数を算出する。
【0109】
<4-10>
上記実施形態では、路面平坦性計測装置60は、取得装置50と有線通信または無線通信できるように接続されていたが、路面平坦性計測装置60と取得装置50とは、通信可能に接続されていなくてもよい。この場合、取得装置50によって取得された計測データ等の情報は、例えば、USBフラッシュメモリまたはSDメモリカード等の補助記憶装置に保存される。路面平坦性計測装置60は、補助記憶装置から計測データ等の情報を取得することによって、路面プロファイルを算出する。
【符号の説明】
【0110】
60 :路面平坦性計測装置(卓越周波数の抽出装置)
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