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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102503
(43)【公開日】2023-07-25
(54)【発明の名称】プローブカードおよび検査システム
(51)【国際特許分類】
   G01R 1/073 20060101AFI20230718BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
G01R1/073 E
H01L21/66 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022003026
(22)【出願日】2022-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000153018
【氏名又は名称】株式会社日本マイクロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100070024
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 宣行
(72)【発明者】
【氏名】成田 寿男
(72)【発明者】
【氏名】廣田 英輝
(72)【発明者】
【氏名】下澤 省吾
【テーマコード(参考)】
2G011
4M106
【Fターム(参考)】
2G011AA10
2G011AA16
2G011AB07
2G011AC14
2G011AE03
2G011AF07
4M106BA01
4M106DD10
4M106DD23
4M106DD30
(57)【要約】
【課題】真空吸着によってテスタヘッドに接続され、且つ、プローブとプローブ基板との接続が確保されるプローブカードおよび検査システムを提供する。
【解決手段】プローブカードは、プローブを保持するプローブガイドと、プローブガイドに積層されたプローブ基板を備える。プローブ基板は、テスタヘッドに対向する第1面およびプローブガイドに対向する第2面を有し、第1面から第2面に貫通するスルーホールが設けられている。真空吸着によって、プローブ基板がテスタヘッドに当接した状態でスルーホールの内部が排気されることにより、プローブガイドがプローブ基板に当接する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査体に接触させるプローブが装着され、真空吸着によってテスタヘッドに接続されるプローブカードであって、
前記プローブを保持するプローブガイドと、
前記プローブガイドに積層され、前記テスタヘッドに対向する第1面および前記プローブガイドに対向する第2面を有し、前記第1面から前記第2面に貫通するスルーホールが設けられたプローブ基板と
を備え、
真空吸着によって、前記プローブ基板が前記テスタヘッドに当接した状態で前記スルーホールの内部が排気されることにより前記プローブガイドが前記プローブ基板に当接する、プローブカード。
【請求項2】
前記プローブガイドは、前記プローブ基板と対向する前記プローブガイドの上面に配置された凹部を有し、
前記凹部が、前記プローブガイドと前記プローブ基板が積層された状態において、前記第2面に形成された前記スルーホールの開口部と連続する位置に配置されている、
請求項1に記載のプローブカード。
【請求項3】
複数の前記凹部が、前記プローブガイドの前記プローブが貫通するガイド穴の形成された領域の残余の領域に形成され、
複数の前記凹部が相互に連通し、
前記凹部と前記ガイド穴が連通していない、
請求項2に記載のプローブカード。
【請求項4】
前記プローブガイドに複数の前記ガイド穴がアレイ状に配置され、
前記凹部が、
前記プローブガイドの外縁に沿って連続して形成されている外縁部分と、
前記外縁部分に連通し、複数の前記ガイド穴の相互間の領域に連続して配置された内部部分と
を有する、請求項3に記載のプローブカード。
【請求項5】
前記プローブガイドと前記プローブ基板の境界を外部と遮断する真空シール機構を更に備える、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のプローブカード。
【請求項6】
前記スルーホールは、前記プローブ基板が前記テスタヘッドに当接する際に、前記テスタヘッドの内部に形成された空洞部と前記スルーホールが連通する場所に形成されている、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のプローブカード。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のプローブカードと、
排気装置を有する前記テスタヘッドと
を備え、
前記排気装置が前記スルーホールの内部を排気して、真空吸着によって前記プローブガイドおよび前記プローブ基板を一体的に前記テスタヘッドに接続させる、検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査体の検査に使用されるプローブカードおよび検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路などの被検査体の電気的特性をウェハの状態で検査するために、被検査体に接触させるプローブが装着されたプローブカードが用いられている。被検査体の検査に使用するテスタは、電気的な特性を測定する測定装置および測定装置に接続するテスタヘッドを有する。被検査体の検査では、テスタヘッドにプローブカードが接続される。真空吸着を用いてプローブカードをテスタヘッドに接続する方法が検討されている(特許文献1参照。)。
【0003】
プローブカードに、プローブを保持するプローブガイド、およびプローブに接続する配線パターンが形成されたプローブ基板を積層した構成が使用されている。真空吸着により、プローブカードの上側に位置するプローブ基板がテスタヘッドに吸着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-288286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プローブ基板がテスタヘッドに吸着されることにより、プローブカードの下側に位置するプローブガイドが撓むなどして、プローブガイドに保持されたプローブとプローブ基板との接続が阻害される問題が生じる。本発明は、真空吸着によってテスタヘッドに接続され、且つ、プローブとプローブ基板との接続が確保されるプローブカードおよび検査システムを提供することを目的とする。
【0006】
本発明の一態様によれば、プローブを保持するプローブガイドと、プローブガイドに積層されたプローブ基板を備えるプローブカードが提供される。プローブ基板は、テスタヘッドに対向する第1面およびプローブガイドに対向する第2面を有し、第1面から第2面に貫通するスルーホールが設けられている。真空吸着によって、プローブ基板がテスタヘッドに当接した状態でスルーホールの内部が排気されることにより、プローブガイドがプローブ基板に当接する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、真空吸着によってテスタヘッドに接続され、且つ、プローブとプローブ基板との接続が確保されるプローブカードおよび検査システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る検査システムの構成を示す模式図である。
図2図2は、図1の領域Aを拡大した模式的な断面図である。
図3図3は、実施形態に係るプローブカードの真空吸着していない状態を示す模式図である。
図4図4は、比較例のプローブカードの構成を示す模式図である。
図5図5は、他の比較例のプローブカードの構成を示す模式図である。
図6A図6Aは、テスタの構成を示す模式図である。
図6B図6Bは、テスタの測定部の構成を示す模式図である。
図7図7は、実施形態に係る検査システムを有するテスタを用いた検査方法を説明するためのフローチャートである。
図8図8は、実施形態に係るプローブカードのプローブガイドの構成を示す模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各部の厚みの比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。以下に示す実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の実施形態は、構成部品の材質、形状、構造、配置などを下記のものに特定するものでない。
【0010】
図1に示す本発明の実施形態に係る検査システム1は、検査対象のウェハ200に形成された被検査体の検査に使用される。検査システム1は、図1に示すように、プローブカード10、プローブ20、テスタヘッド30を備える。図1の領域Aを拡大した断面図を図2に示す。
【0011】
プローブカード10は、被検査体に接触させるプローブ20が装着されている。詳細を後述するように、プローブカード10は、真空吸着によってテスタヘッド30に接続される。プローブカード10は、プローブ20を保持するプローブガイド11と、プローブガイド11に積層されたプローブ基板12を有する。
【0012】
プローブガイド11は、図2に示すように、プローブガイド11の上面111から下面112までプローブガイド11を貫通するガイド穴113を有する。プローブガイド11は、ガイド穴113の内部をプローブ20が通過した状態で、プローブ20を保持する。例えば図2に示すように、プローブ20が外径の異なる部分が連結した構成であり、ガイド穴113が内径の異なる部分が連通した構成である。プローブ20の外径の太い部分の端部が、ガイド穴113の内径が細くなる部分に当接することにより、プローブ20がプローブガイド11から落下することが防止される。また、ガイド穴113の位置を適切に設定することにより、プローブ20を所定の位置に配置することができる。
【0013】
プローブガイド11の下面112から延伸するプローブ20の先端部が、ウェハ200に対向する。ウェハ200は、チャック40に搭載される。図示を省略した吸着装置がチャック40に装着され、ウェハ200がチャック40に真空吸着される。
【0014】
検査システム1は垂直動作式プローブカードであり、被検査体の検査時に、プローブ20の先端部が被検査体と接触する。図1では、プローブ20が被検査体に接触していない状態を示している。測定時には、例えばウェハ200を搭載したチャック40が上昇して、プローブ20の先端部が被検査体に接触する。
【0015】
プローブガイド11は、プローブ基板12と対向する上面111に、凹部110が形成されている。凹部110は、ガイド穴113が形成された領域の残余の領域に形成されている。凹部110とガイド穴113は連通していない。
【0016】
プローブ基板12は、テスタヘッド30に対向する第1面121およびプローブガイド11に対向する第2面122を有する。第1面121から第2面122に貫通するスルーホール120が、プローブ基板12に設けられている。凹部110は、プローブガイド11とプローブ基板12が積層された状態において、第2面122に形成されたスルーホール120の開口部と連続する位置に配置されている。つまり、プローブ基板12の第2面122に形成されたスルーホール120が、プローブガイド11に配置された凹部110と連続する。
【0017】
テスタヘッド30は、プローブカード10のプローブ基板12の第1面121に配置されている。テスタヘッド30の内部に空洞部300が形成されている。プローブ基板12の第1面121と対向するテスタヘッド30の表面に、空洞部300の開口部が形成されている。つまり、空洞部300の開口部は、第1面121に向いている。テスタヘッド30の空洞部300とプローブ基板12のスルーホール120が連続するように、テスタヘッド30とプローブ基板12は配置されている。言い換えると、スルーホール120は、プローブ基板12がテスタヘッド30に当接する際に、テスタヘッド30の内部に形成された空洞部300とスルーホール120が連通する場所に形成されている。
【0018】
プローブガイド11の上面111に露出するプローブ20の基端部は、プローブ基板12の第2面122に配置された配線パターンと接続する。第2面122に配置された配線パターンは、プローブ基板12の第1面121に配置された配線パターンと、プローブ基板12の内部に配置された内部配線によって接続される。第2面122に配置された配線パターンは、テスタヘッド30に設けられた電極端子に接続される。テスタヘッド30の電極端子は、テスタの測定装置(図示略)と電気的に接続する。
【0019】
テスタヘッド30に、空洞部300とダクト32でつながる排気装置31が装着されている。排気装置31は、空洞部300の内部を排気する。空洞部300の内部が排気されることにより、空洞部300の内部が大気より低圧の状態になる。その結果、プローブ基板12の第1面121に配置された配線パターンがテスタヘッド30の電極端子と接触した状態で、プローブ基板12がテスタヘッド30に真空吸着される。
【0020】
更に、空洞部300の内部が排気されることにより、スルーホール120の内部が排気される。スルーホール120の内部の排気に伴い、プローブガイド11の凹部110の内部が排気される。このため、スルーホール120の内部および凹部110の内部が大気より低圧の状態になる。その結果、プローブ20の基端部がプローブ基板12の第2面122に配置された配線パターンと接続した状態で、真空吸着によりプローブガイド11がプローブ基板12に当接する。つまり、検査システム1によれば、真空吸着を用いてプローブガイド11とプローブ基板12を一体的にテスタヘッド30に接続させることができる。以下において、真空吸着を用いてプローブガイド11とプローブ基板12を一体的にテスタヘッド30に接続させる動作を「吸着コンタクト」とも称する。
【0021】
上記のように、検査システム1では、真空吸着によって、プローブ基板12がテスタヘッド30に当接すると略同時に、プローブガイド11がプローブ基板12に当接する。すなわち、プローブ基板12がテスタヘッド30に当接した状態でスルーホール120の内部が排気されることにより、プローブガイド11がプローブ基板12に当接する。このとき、ウェハ200に形成された被検査体とテスタの測定装置は、プローブ20、プローブカード10およびテスタヘッド30を介して、電気的に接続される。つまり、検査システム1により、被検査体とテスタの測定装置の間で信号が送受信される。
【0022】
図1に示したプローブカード10に接続する搬送用ツバ13は、プローブカード10を搬送する際にプローブカード10を保持するための持ち手である。プローブカード10とテスタヘッド30の接続する領域は、真空シート50によって外部から遮蔽される。真空シート50の内部は、大気圧よりも低圧に維持することができる。
【0023】
プローブガイド11の上面111に凹部110を配置することにより、真空吸着される面積が広がる。そのため、プローブガイド11をプローブ基板12に吸着する吸着力が増大する。なお、プローブガイド11が撓まないように、プローブガイド11の上面111の全域にわたって凹部110を配置することが好ましい。また、複数の凹部110を、プローブガイド11の上面111に形成してもよい。そして、複数の凹部110を相互に連通してもよい。凹部110を相互に連通することにより、少なくとも1箇所で凹部110をプローブ基板12のスルーホール120と連続させることにより、すべての凹部110の内部を排気できる。すべての凹部110を連通した場合は、プローブ基板12のスルーホール120は1つであってもよい。
【0024】
真空吸着を用いてプローブカード10をテスタヘッド30に接続していない場合は、図3に示すように、プローブガイド11とプローブ基板12は離れている。搬送用ツバ13を持ち手としてプローブカード10を搬送する際にプローブガイド11が落下しないように、図3に示すように、プローブ基板12の外縁に配置された固定リング60によってプローブガイド11の外縁を支持してもよい。なお、被検査体の検査時にプローブ20が最も縮んだ状態において、固定リング60の下端がウェハ200に接触しない必要がある。例えば、プローブ基板12の外縁に形成した凹部に固定リング60を配置することにより、固定リング60の下端のプローブカード10の下面からはみ出す部分を小さくする。
【0025】
吸着コンタクトにより、プローブ20の基端部はプローブ基板12に押し当てられる。検査していない期間でのプローブ20からプローブ基板12にかかる押圧を、「予圧」とも称する。検査システム1では、吸着コンタクトによりプローブ基板12に予圧がかかる。予圧により、プローブ20の基端部をプローブ基板12と常時接触させることができる。予圧は、プローブ20の本数やプローブガイド11の剛性に応じて、プローブガイド11が撓まないように設定される。
【0026】
プローブ基板12をプローブ20に接触させない状態が続くと、プローブ20の基端部やプローブ基板12の配線パターンの表面が酸化したり汚れが付着したりする。また、プローブ基板12とプローブ20の間で接触と非接触を繰り返すと、プローブ基板12やプローブ20に破損が生じるおそれがある。その結果、プローブ基板12とプローブ20の接触不良が生じる。常時接触により、プローブ基板12とプローブ20の接触不良の発生を抑制できる。
【0027】
図3に示すように、固定リング60とプローブガイド11の間に真空シール機構70を配置してもよい。真空シール機構70は、プローブガイド11とプローブ基板12の境界を外部と遮断する。真空シール機構70により、真空吸着の開始時におけるプローブガイド11とプローブ基板12の境界からの真空漏れを抑制できる。真空シール機構70には、例えばOリングなどが使用される。
【0028】
プローブガイド11には、撓みを抑制するために高剛性の材料を使用する。更に、ウェハ200の熱膨張係数および検査時のプローブガイド11の到達温度に起因してプローブ20の先端部の位置が変化することに対応した材料を、プローブガイド11に使用する。すなわち、プローブ20の先端部の位置が、被検査体の電極パッドからはみ出さない余裕(パッドエッジマージン)を確保できる熱膨張率の材料を、プローブガイド11に使用する。
【0029】
ところで、例えばポゴピンなどの軸方向に伸縮自在なプローブがプローブ20に使用される。伸縮自在なプローブ20により、コンタクトを確実にすることができる。一方、伸縮自在なプローブ20を使用することにより、プローブ基板12にプローブ20からの押圧(以下、「荷重」とも称する。)がかかる。また、プローブ20を被検査体に押し付けるオーバードライブにより、検査時のプローブ基板12の荷重は増大する。特に、面積の大きいウェハ200において多数の被検査体を同時に検査する一括テストの場合は、プローブ20の本数が多数であるため、プローブ基板12の荷重が大きい。
【0030】
例えば、直径が300nmのウェハ200の一括テストでは、被検査体であるチップの小型化により、プローブカード10に装着するプローブ20の本数が数万本以上になる。その場合、プローブ基板12の荷重は100kgf以上である。このため、プローブ基板12の荷重に耐えるために、検査システムの筐体は重厚となる問題が生じていた。筐体が重厚になると、検査システムの接地面積(フットプリント)が大きくなり、検査コストが増大する。
【0031】
真空吸着を用いてプローブカードをテスタヘッドに吸着させることにより、検査システムの筐体を小型化することができる。しかし、検査システムを実装するスペースを狭くするために、プローブの長さを短くし、プローブガイドを薄くする必要がある。このため、テスタヘッドにプローブ基板を吸着する方法を採用した検査システムでは、以下のような問題が生じる。
【0032】
図4に、検査システム1の比較例として、第1の比較プローブカード10M1を示す。第1の比較プローブカード10M1では、プローブガイド11M1とプローブ基板12M1を、固定ネジ30Mによって接続している。このため、固定ネジ30Mを配置するためのスペースがプローブカードに必要になり、プローブカードの小型化が阻害される。そして、プローブカードの組み立て工程が煩雑である。更に、固定ネジ30Mを通過させるネジ穴から、真空漏れが生じるおそれがある。また、固定ネジ30Mと固定ネジ30Mの間で、プローブガイド11M1が自重により撓むおそれがある。プローブガイド11M1が撓むことにより、プローブガイド11M1に配置されたプローブ20の基端部はプローブ基板12M1と常時接触ができない。
【0033】
図5に、検査システム1の他の比較例として、第2の比較プローブカード10M2を示す。第2の比較プローブカード10M2では、プローブガイド11M2の外縁とプローブ基板12M2の外縁を、固定具60Mによって接続している。第2の比較プローブカード10M2では、プローブガイド11M2の外縁のみがプローブ基板12M2に接続されている。このため、プローブガイド11M2の中央部が、与圧により図5に示すように撓むおそれがある。プローブガイド11M2の中央部が撓むことにより、プローブガイド11M2に配置されたプローブ20の基端部はプローブ基板12M2と常時接触ができない。
【0034】
上記の比較例に対して、検査システム1では、真空吸着によりプローブガイド11とプローブ基板12を一体的にテスタヘッド30に接続する。そのため、プローブガイド11とプローブ基板12を接続するための固定ピンや固定具が不要である。したがって、検査システム1によれば、プローブカードの小型化が可能であり、プローブ20とプローブ基板12の常時接触が可能である。
【0035】
以上に説明したように、検査システム1によれば、真空吸着によってプローブカード10がテスタヘッド30に接続され、且つ、プローブ20とプローブ基板12との接続を確保することができる。
【0036】
図1に示す検査システム1は、例えば図6Aおよび図6Bに示すテスタ100などに好適に使用される図6Aに示すように、テスタ100は、ウェハ200を搬送する搬送部102と、搬送部102に隣接して配置された複数の測定部103を有する。図6Bに示すように、テスタ100は6つの測定部103を有する。
【0037】
搬送口101から搬送部102に搬入されたウェハ200は、搬送部102によって測定部103に搬送される。そして、それぞれの測定部103において、ウェハ200に形成された被検査体の特性の検査が行われる。測定部103での検査が終了したウェハ200は、搬送部102により測定部103から搬送口101に搬送される。
【0038】
以下において、テスタ100のように複数の測定部103を有するテスタを、「マルチステージテスタ」とも称する。テスタ100が6つの測定部103を有する例を示したが、マルチステージテスタの測定部103の数6つに限られない。マルチステージテスタのそれぞれの測定部103において、上記に説明した真空吸着方式による吸着コンタクトが実行される。
【0039】
メモリデバイスなどの半導体装置の製造工程においては、製造コストの低減のために、ウェハの大型化やチップサイズの小型化が進められている。その結果、1枚のウェハに形成されるチップの個数が非常に大きくなっている。このため、1枚のウェハの検査に要する時間を短縮することによるスループット向上が求められている。
【0040】
スループット向上のために、プローバの台数を増加させる対策が考えられる。しかし、プローバの台数を増加させると、製造ラインにおけるプローバの設置面積が増加する問題を生じる。また、プローバの台数を増加させると、装置コストも増加する。一方、マルチステージテスタを用いた検査によれば、複数のウェハのチップを同時に検査できるため、スループットが向上する。更に、マルチステージテスタによれば、テスタの設置面積の増加や装置コストの増加を抑制できる。
【0041】
特にマルチステージテスタでは、プローブカードは、非常に限られた狭い空間に配置される。例えば、図6Bに示すように、測定部103の内部にプローブカードが配置される。このため、真空吸着によりプローブガイド11とプローブ基板12を一体的にテスタヘッド30に接続することにより小型化した検査システム1は、マルチステージテスタに好適に使用される。
【0042】
以下に、図7を参照して、プローブカード10を用いたテスタ100が行う検査方法の例を説明する。
【0043】
まず、ステップS10において、プローブカード10をテスタ100の内部に搬送する。例えば、テスタヘッド30およびチャック40が配置された測定部103にプローブカード10を搬送する。
【0044】
ステップS20において、上記に説明したように真空吸着を用いてプローブカード10をテスタヘッド30に吸着させる吸着コンタクトを行う。吸着コンタクトにより、プローブ基板12に予圧がかかる。
【0045】
ステップS30において、プローブ20の先端部の位置を測定する。プローブ20の先端部の位置の情報は、後述するステップS60でのウェハ200とプローブ20の位置合わせに使用される。
【0046】
ステップS40において、ウェハ200をテスタ100の測定部103に搬送する。測定部103に搬送されたウェハ200は、チャック40に搭載される。そして、ステップS50において、ウェハ200がチャック40に真空吸着される。
【0047】
ステップS60において、チャック40に搭載されたウェハ200とプローブ20の位置合わせを行う。具体的には、ステップS30で測定されたプローブ20の先端部の位置の情報を用いて、ウェハ200に形成された被検査体の電極パッドとプローブ20の先端部の位置合わせを行う。
【0048】
ステップS70において、プローブ20の先端部をウェハ200に接触させる。このとき、プローブカード10に対するチャック40の位置を相対的に変化させることにより、プローブ20の先端部をウェハ200に接触させる。更に、オーバードライブを実行するために、真空吸着を用いてウェハ200にプローブ20の先端部を押し付ける動作(以下、「真空コンタクト」とも称する。)が実行される。その後、ステップS80において、ウェハ200に形成された被検査体の検査が開始される。
【0049】
上記のステップS20の吸着コンタクトおよびステップS50の真空吸着では、吸着により生じる圧力についてあまり考慮する必要がない。したがって、任意の高い真空度での吸着を実行してもよい。一方、ステップS70の真空コンタクトにおいては、高い真空度での強い吸着により、プローブ20やウェハ200が破損する可能性がある。真空コンタクトにおいては、プローブ20やウェハ200が破損しないように真空度を調整する必要がある。
【0050】
既に説明したように、プローブガイド11に配置するすべての凹部110が相互に連通している場合には、凹部110の1箇所がプローブ基板12のスルーホール120と連続していればよい。図8に、プローブガイド11の凹部110の配置例を示す。図8に示すように、プローブ20が貫通する複数のガイド穴113が配置されていない領域に、凹部110が配置される。
【0051】
図8に示したプローブガイド11では、複数のガイド穴113がアレイ状に配置されている。そして、凹部110が、プローブガイド11の外縁に沿って連続して形成されている外縁部分と、外縁部分に連通する内部部分を有する。内部部分は、複数のガイド穴113の相互間の領域に連続してストライプ状に配置されている。
【0052】
ガイド穴113は、ウェハ200に形成される被検査体の電極パッドの位置に対応して配置される。このため、被検査体と被検査体の間のウェハ200のスクライブラインに対応するプローブガイド11の位置に、凹部110を配置してもよい。
【0053】
図8に示したプローブガイド11の凹部110のサイズの例を以下に検討する。予圧を50kgf以上とする場合、1atmがほぼ1kgf/cm2として、凹部110のサイズは50cm2以上である。この場合、例えば、幅3mm×長さ1650mmの凹部110をプローブガイド11に形成する。凹部110の深さは任意であるが、凹部110の深さを例えば0.5mm以上にする。
【0054】
プローブガイド11の破損などにより凹部110とガイド穴113が連通してしまうと、真空破壊が生じるおそれがある。このため、凹部110とガイド穴113との間隔は、凹部110の深さ程度以上であることが好ましい。
【0055】
(その他の実施形態)
上記のように本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0056】
例えば、上記では、上面111に凹部110が配置されているプローブガイド11を示した。しかし、プローブ基板12のスルーホール120の内部を排気することによりプローブ基板12にプローブガイド11を吸着できるのであれば、プローブガイド11に凹部110が配置されていなくてもよい。その場合、プローブガイド11に撓みが生じないように、プローブ基板12の第2面122の全面にわたって複数のスルーホール120の開口部を配置する。このとき、必要な与圧の大きさに応じて、スルーホール120の開口部の総面積を設定する。例えば、予圧を50kgf以上とする場合、上記の凹部110のサイズと同様に、第2面122におけるスルーホール120の開口部の総面積を50cm2以上にする。
【0057】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態などを含むことはもちろんである。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0058】
1…検査システム
10…プローブカード
11…プローブガイド
12…プローブ基板
20…プローブ
30…テスタヘッド
40…チャック
110…凹部
120…スルーホール
121…第1面
122…第2面
200…ウェハ
300…空洞部
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8