(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102509
(43)【公開日】2023-07-25
(54)【発明の名称】積層セラミック電子部品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20230718BHJP
【FI】
H01G4/30 201G
H01G4/30 201F
H01G4/30 311E
H01G4/30 201D
H01G4/30 516
H01G4/30 517
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022003034
(22)【出願日】2022-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】森田 浩一郎
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC09
5E001AC10
5E001AE01
5E001AE02
5E001AE03
5E001AE04
5E001AF06
5E001AH01
5E001AH07
5E001AH09
5E001AJ03
5E082AA01
5E082AB03
5E082BC33
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE26
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG46
5E082GG10
5E082GG11
5E082GG12
5E082GG28
5E082JJ03
5E082JJ12
5E082JJ23
(57)【要約】
【課題】 クラックの発生を抑制することができる積層セラミック電子部品およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 積層セラミック電子部品100は、複数の誘電体層11と、複数の誘電体層11を介して積層され、互いに対向し、一端が露出するように設けられる複数の内部電極層12と、を有する素体10と、複数の内部電極層12が延伸される方向の端である素体10の側面に設けられ、複数の内部電極層12の一端と各々接し、共材23を含む第1外部電極21と、第1外部電極21上に設けられ、ガラス24を含み、第1外部電極21と同じ金属を主成分とする第2外部電極22と、を有する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の誘電体層と、前記複数の誘電体層を介して積層され、互いに対向し、一端が露出するように設けられる複数の内部電極層と、を有する素体と、
前記複数の内部電極層が延伸される方向の端である前記素体の側面に設けられ、前記複数の内部電極層の前記一端と各々接し、共材を含む第1外部電極と、
前記第1外部電極上に設けられ、ガラスを含み、前記第1外部電極と同じ金属を主成分とする第2外部電極と、を有する積層セラミック電子部品。
【請求項2】
前記第2外部電極は、前記複数の誘電体層および前記複数の内部電極層が積層される方向の端である前記素体の主面および前記素体の角部と接する、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項3】
前記複数の内部電極は、前記第1外部電極と同じ金属を主成分とする、請求項1または請求項2に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項4】
前記第1外部電極と前記第2外部電極とは直接接している、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項5】
前記共材は、金属酸化物である、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項6】
前記複数の内部電極層、前記第1外部電極、および前記第2外部電極は、ニッケルを主成分とし、
前記共材は、酸化アルミニウムまたはチタン酸バリウムの少なくとも一つを含む、請求項3から請求項5のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項7】
前記複数の内部電極、前記第1外部電極、および前記第2外部電極は、銅を主成分とし、
前記共材は、酸化アルミニウムまたはジルコン酸カルシウムの少なくとも一つを含む、請求項3から請求項5のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項8】
前記複数の内部電極が延伸される方向において、前記第1外部電極の厚さは、5μm以下である、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項9】
前記共材は、前記第1外部電極に対して5wt%以上20wt%以下含まれる、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項10】
前記第2外部電極上にメッキ層をさらに有する、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項11】
複数の誘電体層と、前記複数の誘電体層を介して積層され、互いに対向し、一端が露出するように設けられる複数の内部電極層と、を有する素体と、
前記複数の内部電極層が延伸される方向の端である前記素体の側面に設けられ、前記複数の内部電極層の前記一端に接する第1領域および前記第1領域を覆う第2領域を有し、前記第1領域は、前記第2領域より共材の含有量が多く、前記第2領域は、前記第1領域よりガラスの含有量が多い外部電極と、を有する積層セラミック電子部品。
【請求項12】
前記第2領域は、前記複数の誘電体層および前記複数の内部電極層が積層される方向の端である前記素体の主面および前記素体の角部と接する、請求項11に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項13】
前記複数の内部電極層は、前記外部電極と同じ金属を主成分とする、請求項11または請求項12に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項14】
前記共材は、金属酸化物である、請求項11から請求項13のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項15】
前記複数の内部電極層および前記外部電極は、ニッケルを主成分とし、
前記共材は、アルミナまたはチタン酸バリウムの少なくとも一つを含む請求項13または請求項14に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項16】
前記複数の内部電極層および前記外部電極は、銅を主成分とし、
前記共材は、アルミナまたはジルコン酸カルシウムの少なくとも一つを含む請求項13または請求項14に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項17】
前記外部電極上にメッキ層をさらに有する、請求項11から請求項16のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項18】
セラミックグリーンシートを形成する塗工工程と、
前記セラミックグリーンシート上に導電ペーストを用いて内部電極パターンを形成する印刷工程と、
前記セラミックグリーンシートを積層して未焼成の素体を得る圧着工程と、
前記未焼成の素体の側面に、共材を含む金属ペーストを形成する金属ペースト形成工程と、
前記未焼成の素体および前記金属ペーストを焼成し、前記金属ペーストから第1外部電極を形成する焼成工程と、
前記焼成工程後に、前記第1外部電極を覆ってガラスを含む第2外部電極を形成する第2外部電極形成工程と、を含む積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項19】
前記第2外部電極上にメッキ層を形成するメッキ工程をさらに含む、請求項18に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミック電子部品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話を代表とする高周波通信用システムにおいて、積層セラミック電子部品が用いられている。例えば、ノイズを除去するために、積層セラミックコンデンサが用いられている(例えば、特許文献1~4参照)。積層セラミック電子部品の外部電極には、Ag、Ni、Cuのような金属もしくは導電性樹脂などが一般的に使用される。中でもNiとCuが広く利用され、これらにCu、Ni、Snのメッキを施したものが一般的である。これは、耐還元性(Ni内部電極が酸化しない雰囲気で外部電極として働く)、耐イオンマイグレーション、内部電極とのコンタクト性確保、等価直列抵抗(ESR)を下げる、価格が安い、などの多くの好ましい理由による。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-098327号公報
【特許文献2】特開2018-014407号公報
【特許文献3】特開2019-195037号公報
【特許文献4】特開2020-155719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
外部電極は、後付けで形成されるものと、同時焼成で形成されるものの2種類がある。後付けの外部電極は、素体を焼成した後に、金属ペーストを塗布して焼き付けるものである。同時焼成の外部電極は、未焼成の素体に金属ペーストを塗布して素体と金属ペーストを同時に焼成するものである。これらのいずれの種類においても、素体にクラックが発生するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、クラックの発生を抑制することができる積層セラミック電子部品およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る積層セラミック電子部品は、複数の誘電体層と、前記複数の誘電体層を介して積層され、互いに対向し、一端が露出するように設けられる複数の内部電極層と、を有する素体と、前記複数の内部電極層が延伸される方向の端である前記素体の側面に設けられ、前記複数の内部電極層の前記一端と各々接し、共材を含む第1外部電極と、前記第1外部電極上に設けられ、ガラスを含み、前記第1外部電極と同じ金属を主成分とする第2外部電極と、を有する。
【0007】
上記積層セラミック電子部品において、前記第2外部電極は、前記複数の誘電体層および前記複数の内部電極層が積層される方向の端である前記素体の主面および前記素体の角部と接していてもよい。
【0008】
上記積層セラミック電子部品において、前記複数の内部電極は、前記第1外部電極と同じ金属を主成分としてもよい。
【0009】
上記積層セラミック電子部品において、前記第1外部電極と前記第2外部電極とは直接接していてもよい。
【0010】
上記積層セラミック電子部品において、前記共材は、金属酸化物であってもよい。
【0011】
上記積層セラミック電子部品において、前記複数の内部電極層、前記第1外部電極、および前記第2外部電極は、ニッケルを主成分とし、前記共材は、酸化アルミニウムまたはチタン酸バリウムの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0012】
上記積層セラミック電子部品において、前記複数の内部電極、前記第1外部電極、および前記第2外部電極は、銅を主成分とし、前記共材は、酸化アルミニウムまたはジルコン酸カルシウムの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0013】
上記積層セラミック電子部品における複数の内部電極が延伸される方向において、前記第1外部電極の厚さは、5μm以下であってもよい。
【0014】
上記積層セラミック電子部品において、前記共材は、前記第1外部電極に対して5wt%以上20wt%以下含まれていてもよい。
【0015】
上記積層セラミック電子部品は、前記第2外部電極上にメッキ層をさらに有していてもよい。
【0016】
本発明に係る他の積層セラミック電子部品は、複数の誘電体層と、前記複数の誘電体層を介して積層され、互いに対向し、一端が露出するように設けられる複数の内部電極層と、を有する素体と、前記複数の内部電極層が延伸される方向の端である前記素体の側面に設けられ、前記複数の内部電極層の前記一端に接する第1領域および前記第1領域を覆う第2領域を有し、前記第1領域は、前記第2領域より共材の含有量が多く、前記第2領域は、前記第1領域よりガラスの含有量が多い外部電極と、を有する。
【0017】
上記他の積層セラミック電子部品において、前記第2領域は、前記複数の誘電体層および前記複数の内部電極層が積層される方向の端である前記素体の主面および前記素体の角部と接していてもよい。
【0018】
上記他の積層セラミック電子部品において、前記複数の内部電極層は、前記外部電極と同じ金属を主成分としてもよい。
【0019】
上記他の積層セラミック電子部品において、前記共材は、金属酸化物であってもよい。
【0020】
上記他の積層セラミック電子部品において、前記複数の内部電極層および前記外部電極は、ニッケルを主成分とし、前記共材は、アルミナまたはチタン酸バリウムの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0021】
上記他の積層セラミック電子部品において、前記複数の内部電極層および前記外部電極は、銅を主成分とし、前記共材は、アルミナまたはジルコン酸カルシウムの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0022】
上記他の積層セラミック電子部品は、前記外部電極上にメッキ層をさらに有していてもよい。
【0023】
本発明に係る積層セラミック電子部品の製造方法は、セラミックグリーンシートを形成する塗工工程と、前記セラミックグリーンシート上に導電ペーストを用いて内部電極パターンを形成する印刷工程と、前記セラミックグリーンシートを積層して未焼成の素体を得る圧着工程と、前記未焼成の素体の側面に、共材を含む金属ペーストを形成する金属ペースト形成工程と、前記未焼成の素体および前記金属ペーストを焼成し、前記金属ペーストから第1外部電極を形成する焼成工程と、前記焼成工程後に、前記第1外部電極を覆ってガラスを含む第2外部電極を形成する第2外部電極形成工程と、を含む。
【0024】
上記積層セラミック電子部品の製造方法は、前記第2外部電極上にメッキ層を形成するメッキ工程をさらに含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、クラックの発生を抑制することができる積層セラミック電子部品およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】積層セラミックコンデンサの部分断面斜視図である。
【
図4】(a)および(b)は後付けの外部電極について説明するための図である。
【
図5】同時焼成の外部電極について説明するための図である。
【
図7】積層セラミックコンデンサの製造方法のフローを例示する図である。
【
図8】(a)および(b)は積層工程を例示する図である。
【
図9】(a)は塗布工程を例示する図であり、(b)は焼き付け工程を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しつつ、実施形態について説明する。
【0028】
図1は、実施形態に係る積層セラミックコンデンサ100の部分断面斜視図である。
図2は、
図1のA-A線断面図である。
図3は、
図1のB-B線断面図である。
図1~
図3で例示するように、積層セラミックコンデンサ100は、略直方体形状を有する素体10と、素体10のいずれかの対向する2端面に設けられた外部電極20a,20bとを備える。なお、素体10の当該2端面以外の4面のうち、積層方向の上面および下面以外の2面を側面と称する。外部電極20a,20bは、素体10の積層方向の上面、下面および2側面に延在している。ただし、外部電極20a,20bは、互いに離間している。
【0029】
素体10は、誘電体として機能するセラミック材料を含む誘電体層11と、金属を主成分とする内部電極層12とが、交互に積層された構成を有する。言い換えると、素体10は、互いに対向する複数の内部電極層12と、複数の内部電極層12の間に各々挟まれた誘電体層11と、を備えている。各内部電極層12が延伸される方向の端縁は、素体10の外部電極20aが設けられた端面と、外部電極20bが設けられた端面において、交互に露出している。それにより、各内部電極層12は、外部電極20aと外部電極20bとに、交互に導通している。その結果、積層セラミックコンデンサ100は、複数の誘電体層11が内部電極層12を介して積層された構成を有する。また、誘電体層11と内部電極層12との積層体において、積層方向の最外層には内部電極層12が配置され、当該積層体の上面および下面は、カバー層13によって覆われている。カバー層13は、セラミック材料を主成分とする。例えば、カバー層13は、誘電体層11と組成が同じであっても、異なっていても構わない。
【0030】
積層セラミックコンデンサ100のサイズは、例えば、長さ0.25mm、幅0.125mm、高さ0.125mmであり、または長さ0.4mm、幅0.2mm、高さ0.2mm、または長さ0.6mm、幅0.3mm、高さ0.3mmであり、または長さ0.6mm、幅0.3mm、高さ0.110mmであり、または長さ1.0mm、幅0.5mm、高さ0.5mmであり、または長さ1.0mm、幅0.5mm、高さ0.1mmであり、または長さ3.2mm、幅1.6mm、高さ1.6mmであり、または長さ4.5mm、幅3.2mm、高さ2.5mmであるが、これらのサイズに限定されるものではない。
【0031】
誘電体層11は、例えば、一般式ABO3で表されるペロブスカイト構造を有するセラミック材料を主相とする。なお、当該ペロブスカイト構造は、化学量論組成から外れたABO3-αを含む。例えば、当該セラミック材料として、BaTiO3(チタン酸バリウム),CaZrO3(ジルコン酸カルシウム),CaTiO3(チタン酸カルシウム),SrTiO3(チタン酸ストロンチウム),MgTiO3(チタン酸マグネシウム),ペロブスカイト構造を形成するBa1-x-yCaxSryTi1-zZrzO3(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦z≦1)等のうち少なくとも1つから選択して用いることができる。Ba1-x-yCaxSryTi1-zZrzO3は、チタン酸バリウムストロンチウム、チタン酸バリウムカルシウム、ジルコン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸カルシウムおよびチタン酸ジルコン酸バリウムカルシウムなどである。
【0032】
誘電体層11には、添加物が添加されていてもよい。誘電体層11への添加物として、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、希土類元素(イットリウム(Y)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホロミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)およびイッテルビウム(Yb))の酸化物、または、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、リチウム(Li)、ホウ素(B)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)もしくはケイ素(Si)を含む酸化物、または、コバルト、ニッケル、リチウム、ホウ素、ナトリウム、カリウムもしくはケイ素を含むガラスが挙げられる。
【0033】
内部電極層12は、ニッケル(Ni),銅(Cu),スズ(Sn)等の卑金属を主成分とする。内部電極層12として、白金(Pt),パラジウム(Pd),銀(Ag),金(Au)などの貴金属やこれらを含む合金を用いてもよい。
【0034】
図2で例示するように、外部電極20aに接続された内部電極層12と外部電極20bに接続された内部電極層12とが対向する領域は、積層セラミックコンデンサ100において静電容量を生じる領域である。そこで、当該静電容量を生じる領域を、容量部14と称する。すなわち、容量部14は、異なる外部電極に接続された隣接する内部電極層12同士が対向する領域である。
【0035】
外部電極20aに接続された内部電極層12同士が、外部電極20bに接続された内部電極層12を介さずに対向する領域を、エンドマージン15と称する。また、外部電極20bに接続された内部電極層12同士が、外部電極20aに接続された内部電極層12を介さずに対向する領域も、エンドマージン15である。すなわち、エンドマージン15は、同じ外部電極に接続された内部電極層12が異なる外部電極に接続された内部電極層12を介さずに対向する領域である。エンドマージン15は、静電容量を生じない領域である。エンドマージン15は、容量部14の誘電体層11と同じ組成であってもよく、異なる組成であってもよい。
【0036】
図3で例示するように、素体10において、素体10の2側面から内部電極層12に至るまでの領域をサイドマージン16と称する。すなわち、サイドマージン16は、上記積層構造において積層された複数の内部電極層12が2側面側に延びた端部を覆うように設けられた領域である。サイドマージン16も、静電容量を生じない領域である。サイドマージン16は、容量部14の誘電体層11と同じ組成であってもよく、異なる組成であってもよい。
【0037】
ここで、外部電極について検討する。まず、誘電体層11用のセラミックグリーンシートに内部電極層12用の内部電極パターンが印刷された積層単位が複数積層された未焼成の素体を焼成した後に、下地層を焼き付けてからメッキ層を形成することで得られる、後付けの外部電極について説明する。
【0038】
図4(a)および
図4(b)は、後付けの外部電極について説明するための図である。
図4(a)および
図4(b)では、素体10のハッチを省略してある。
図4(a)で例示するように、焼成後の素体10に、金属ペーストに熱処理を施すことで、下地層31を焼き付ける。焼き付けの熱処理を低温にするために、金属ペーストに低融点のガラス32が添加される。焼成後の素体10は高い強度を有しているため、下地層31を焼き付ける際に、クラックなどの発生を抑制することができる。しかしながら、ガラス32が素体10と反応し、下地層31の接合部にクラック40が入ることがある。
【0039】
また、素体10の焼成時に、内部電極層12の引き出し部が、焼結過程の収縮に起因して素体10の内部に引っ込むことがある。この場合、下地層31と内部電極層12との電気的コンタクトが得られないおそれがある。そこで、素体10の表面を削ることによって内部電極層12の引き出し部を露出することが考えられる。しかしながら、工程が煩雑化し、コストがかかる。また、機械的ダメージが残るおそれもある。
【0040】
ガラス32を用いないことにすると、焼き付けの熱処理を高温にする必要がある。この場合、内部電極層12の引き出し部が素体10の内部に引っ込むとともに、
図4(b)で例示するように、内部電極層12の各位置の球状化が進み、内部電極層12の連続率が低下するおそれがある。
【0041】
また、素体10を焼成した際に、炉内の僅かな酸素によって、内部電極層12の引き出し部の最表面が酸化し、下地層31と内部電極層12との電気的コンタクトが得られないおそれがある。
【0042】
次に、誘電体層11用のセラミックグリーンシートに内部電極層12用の内部電極パターンが印刷された積層単位が複数積層された未焼成の素体に、下地層用の金属ペーストを塗布し、同時に焼成し、その後にメッキ層を形成することで得られる同時焼成の外部電極について説明する。
【0043】
図5は、同時焼成の外部電極について説明するための図である。
図5では、素体10のハッチを省略してある。焼成時の素体の収縮と下地層33の収縮とのミスマッチに起因して、下地層33の接合部にクラック40が発生するおそれがある。そこで、金属酸化物粉などの共材34を金属ペーストに添加し、金属ペーストの収縮を遅らせる手法がとられる。しかしながら、下地層33に所定の厚みが要求されるため、焼成時の素体の収縮と下地層33の収縮とのミスマッチに起因してやはりクラック40が入ることがある。
【0044】
また、下地層33と内部電極層12との電気的コンタクトが確保されるものの、
図5で例示するように、共材34が下地層33の外表面に露出する。この場合、メッキが乗らず、メッキ不良が生じるおそれがある。
【0045】
そこで、本実施形態に係る外部電極20a,20bは、クラックの発生を抑制することができる構成を有している。また、本実施形態に係る外部電極20a,20bは、内部電極層12との電気的コンタクトを確保することができ、内部電極層12の連続率低下を抑制することができ、メッキ不良を抑制することができる構成を有している。
【0046】
図6は、外部電極20bの拡大断面図である。
図6では、素体10のハッチを省略してある。
図6で例示するように、外部電極20bは、第1外部電極21上に第2外部電極22が設けられた構造を有する。第1外部電極21は、共材23を含んでいる。第2外部電極22は、ガラス24を含んでいる。第1外部電極21および第2外部電極22の主成分は、共通している。第2外部電極22上に、メッキ層25が設けられている。
【0047】
第1外部電極21は、共材23を含んでいるため、素体10と同時焼成によって形成される。第2外部電極22は、ガラス24を含んでいるため、素体10の焼成後に後付けによって形成される。
【0048】
素体10と第1外部電極21とを同時焼成する過程では、第2外部電極22を形成することから、第1外部電極21だけを厚く形成しなくてもよい。したがって、第1外部電極21を同時焼成する際の応力が緩和され、クラックの発生を抑制することができる。また、第2外部電極22と素体10との間に第1外部電極21が配置されるため、ガラス24の素体10への拡散が抑制され、クラックの発生が抑制される。また、ガラス24を含む第2外部電極22は低温(例えば、800℃程度)で焼き付けることができるため、クラックの発生が抑制される。なお、第1外部電極21の主成分と第2外部電極22の主成分とが同じ金属であるため、第1外部電極21と第2外部電極22との間に強固な接合が得られ、ストレスが印加されても界面剥離が抑制される。
【0049】
以上のことから、本実施形態に係る外部電極20bは、クラックの発生を抑制することができる。外部電極20aも外部電極20bと同様の積層構造を有しているため、外部電極20aもクラックの発生を抑制することができる。
【0050】
また、内部電極層12と第1外部電極21とが一体化するため、内部電極層12の引き出し部の引っ込みに起因する電気的コンタクト不良が抑制される。また、第2外部電極22は比較的低温で焼き付けることができるため、内部電極層12の連続率低下を抑制することができる。また、第1外部電極21が第2外部電極22によって覆われるため、共材23の表面露出が抑制され、メッキ不良を抑制することができる。なお、第2外部電極22の外表面にガラス24が露出しても、ガラス相は、共材と異なり、表面に染み出した液相が固化した非常に薄いガラス膜として存在するため、メッキ前の一般的な表面処理(機械的あるいは化学的処理)で簡単に剥離させることができる。
【0051】
第2外部電極22を低温で焼き付けることができることから、第2外部電極22を厚く形成してもクラックの発生を抑制することができる。したがって、製品仕様に合わせて第2外部電極22の厚さを調整することができる。第2外部電極22上に形成されるメッキの材料や層数は、自由に設定することができる。
【0052】
第2外部電極22は、素体10の上面、下面、および2側面の少なくともいずれかと、その角部(コバ部)とに接するように延在していることが好ましい。角部は、素体10の角において曲率を有する部分である。この構成では、第1外部電極21は、第2外部電極22が素体10と接する箇所までは延在しない。この構成においては、第1外部電極21と素体10との接触界面が小さくなるため、素体10と第1外部電極21との同時焼成時におけるクラックの発生を抑制することができる。
【0053】
なお、同時焼成時には素体10の上面、下面、および2側面でクラックが発生する可能性が高いため、これらの領域まで第1外部電極21を延在させないことで、クラック発生を効果的に抑制することができる。また、積層セラミックコンデンサの外部電極は、部品実装上の要請から、上面、下面、および2側面へ回り込む外部電極の寸法が製品仕様によって定められていることがある。このような場合に、第2外部電極22を延在させればよいことになる。
【0054】
内部電極層12の主成分は、第1外部電極21の主成分と同じ金属であることが好ましい。この場合、第1外部電極21と内部電極層12との合金化が抑制され、素体10内での内部電極層12の体積膨張が抑制される。それにより、体積膨張に起因するクラックを抑制することができる。例えば、第1外部電極21の主成分がニッケルである場合に、内部電極層12の主成分もニッケルであることが好ましい。第1外部電極21の主成分が銅である場合に、内部電極層12の主成分も銅であることが好ましい。
【0055】
第2外部電極22は、第1外部電極21上に、直接接して設けられていることが好ましい。この場合、同じ金属を主成分とする第1外部電極21と第2外部電極22との間に、より強固な接合が得られ、ストレスが印加されても界面剥離が抑制される。
【0056】
共材23の材料は、特に限定されるものではないが、ガラスではない金属酸化物(セラミック)であることが好ましい。この場合、同時焼成時に、第1外部電極21の収縮が遅延し、素体10と第1外部電極21の収縮差が小さくなり、クラックの発生が抑制される。例えば、共材23として、誘電体層11の主成分セラミックを用いることができる。その他、共材23として、チタン酸バリウム(BaTiO3)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)、ジルコン酸カルシウム(CaZrO3)などを用いることができる。
【0057】
内部電極層12、第1外部電極21、および第2外部電極22の主成分がニッケルである場合には、共材23は、酸化アルミニウムまたはチタン酸バリウムであることが好ましい。ニッケルを内部電極層12に使う場合の誘電体層11の主相としてはチタン酸バリウムが一般的であり、共材としては誘電体層11に拡散しても誘電体層11の構造と電気特性の変性を最小限とするものが好ましいためである。
【0058】
内部電極層12、第1外部電極21、および第2外部電極22の主成分が銅である場合には、共材23は、酸化アルミニウムまたはジルコン酸カルシウム(CaZrO3)であることが好ましい。銅を内部電極層12に使う場合の誘電体層11の主相としてはジルコン酸カルシウムが一般的であり、共材としては誘電体層11に拡散しても誘電体層11の構造と電気特性の変性を最小限とするものが好ましいためである。
【0059】
内部電極層12が延びる方向(外部電極20aと外部電極20bとが対向する方向)において、第1外部電極21の厚さは、5μm以下であることが好ましい。この場合、第1外部電極21が薄くなり、素体10と第1外部電極21とを同時焼成しても、素体10と第1外部電極21との収縮差に起因する応力が小さくなり、クラックの発生を抑制することができる。当該第1外部電極21の厚さは、3μm以下であることがより好ましく、2μm以下であることがさらに好ましい。
【0060】
第1外部電極21における共材23の含有量が少ないと、素体10と第1外部電極21との間の収縮差に起因する応力が減殺しきれず、クラックが発生するおそれがある。そこで、第1外部電極21における共材23の含有量に下限を設けることが好ましい。一方、第1外部電極21における共材23の含有量が多いと、第1外部電極21と第2外部電極22との間の接合が阻害され、固着強度が低下するおそれがある。そこで、第1外部電極21における共材23の含有量に上限を設けることが好ましい。例えば、第1外部電極21における共材23の含有量は、第1外部電極21の全体に対して5wt%以上、20wt%以下であることが好ましい。この場合、第1外部電極21と第2外部電極22との間の固着量がアンカー効果によって強化され、界面剥離が抑制される。第1外部電極21における共材23の含有量は、第1外部電極21の全体に対して7wt%以上、15wt%以下であることがより好ましく、10wt%以上、13wt%以下であることがさらに好ましい。
【0061】
第2外部電極22におけるガラス24の材料は、特に限定されるものではないが、第2外部電極22の焼き付け温度に応じて選択される。例えば、ガラス24の材料は、酸化シリコン(SiO2)を骨格とするガラスに、Li、B、Al、Ba、Sr、Znなどが含まれたものであることが好ましい。
【0062】
第2外部電極22におけるガラス24の含有量が少ないと、素体10との密着が不十分で剥離のおそれがある。そこで、第2外部電極22におけるガラス24の含有量に下限を設けることが好ましい。一方、第2外部電極22におけるガラス24の含有量が多いと、第1外部電極21との接合が不十分で剥離のおそれがある。そこで、第2外部電極22におけるガラス24の含有量に上限を設けることが好ましい。例えば、第2外部電極22におけるガラス24の含有量は、第2外部電極22の全体に対して3wt%以上、18wt%以下であることが好ましく、4wt%以上、12wt%以下であることがより好ましく、5wt%以上、8wt%以下であることがさらに好ましい。
【0063】
なお、共材は、金属成分の焼結を遅らせる目的であるから、同一層内で焼結促進剤であるガラスが併用されることはない。したがって、第1外部電極21が同時焼成の外部電極であるか否かは、共材が含まれているか否かで判別することができる。他方で、第2外部電極22は、ガラスを含むことから、比較的低温(例えば1100℃以下)の熱処理で後付けされたものであると判明する。共材もガラスも含まれない純粋な金属膜は、スパッタなどで形成された膜であるため、本実施形態に係る第1外部電極21とも第2外部電極22とも異なるものである。
【0064】
第2外部電極22を焼き付ける過程で、共材23が第2外部電極22内に拡散し、ガラス24が第1外部電極21内に拡散することもある。この場合には、第1外部電極21(第1領域)では、第2外部電極22よりも共材23の含有量が多く、ガラス24の含有量が少なくなる。第2外部電極22(第2領域)では、第1外部電極21よりも共材23の含有量が少なく、ガラス24の含有量が多くなる。
【0065】
続いて、積層セラミックコンデンサ100の製造方法について説明する。
図7は、積層セラミックコンデンサ100の製造方法のフローを例示する図である。
【0066】
(原料粉末作製工程)
まず、誘電体層11を形成するための誘電体材料を用意する。誘電体層11に含まれるAサイト元素およびBサイト元素は、通常はABO3の粒子の焼結体の形で誘電体層11に含まれる。例えば、BaTiO3は、ペロブスカイト構造を有する正方晶化合物であって、高い誘電率を示す。このBaTiO3は、一般的に、二酸化チタンなどのチタン原料と炭酸バリウムなどのバリウム原料とを反応させてチタン酸バリウムを合成することで得ることができる。誘電体層11の主成分セラミックの合成方法としては、従来種々の方法が知られており、例えば固相法、ゾル-ゲル法、水熱法等が知られている。本実施形態においては、これらのいずれも採用することができる。
【0067】
得られたセラミック粉末に、目的に応じて所定の添加化合物を添加する。添加化合物としては、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、希土類元素(イットリウム(Y)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホロミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)およびイッテルビウム(Yb))の酸化物、または、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、リチウム(Li)、ホウ素(B)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)もしくはケイ素(Si)を含む酸化物、または、コバルト、ニッケル、リチウム、ホウ素、ナトリウム、カリウムもしくはケイ素を含むガラスが挙げられる。これらのうち、主としてSiO2が焼結助剤として機能する。
【0068】
例えば、セラミック原料粉末に添加化合物を含む化合物を湿式混合し、乾燥および粉砕してセラミック材料を調製する。例えば、上記のようにして得られたセラミック材料について、必要に応じて粉砕処理して粒径を調節し、あるいは分級処理と組み合わせることで粒径を整えてもよい。以上の工程により、誘電体材料が得られる。
【0069】
(積層工程)
次に、得られた原料粉末に、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂等のバインダと、エタノール、トルエン等の有機溶剤と、可塑剤とを加えて湿式混合する。得られたスラリを使用して、例えばダイコータ法やドクターブレード法により、基材51上にセラミックグリーンシート52を塗工して乾燥させる。基材51は、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムである。
【0070】
次に、
図8(a)で例示するように、セラミックグリーンシート52上に、内部電極パターン53を成膜する。
図8(a)では、一例として、セラミックグリーンシート52上に4層の内部電極パターン53が所定の間隔を空けて成膜されている。内部電極パターン53が成膜されたセラミックグリーンシート52を、積層単位とする。
【0071】
内部電極パターン53には、内部電極層12の主成分金属の金属ペーストを用いる。成膜の手法は、印刷、スパッタ、蒸着などであってもよい。
【0072】
次に、セラミックグリーンシート52を基材51から剥がしつつ、
図8(b)で例示するように、積層単位を積層する。
【0073】
次に、積層単位が積層されることで得られた積層体の上下にカバーシート54を所定数(例えば2~10層)だけ積層して熱圧着させ、所定チップ寸法(例えば1.0mm×0.5mm)にカットする。
図8(b)の例では、点線に沿ってカットする。カバーシート54は、セラミックグリーンシート52と同じ成分であってもよく、添加物が異なっていてもよい。
【0074】
(塗布工程)
このようにして得られたセラミック積層体を、N
2雰囲気で脱バインダ処理した後に、
図9(a)で例示するように、第1外部電極21となる金属ペースト26をディップ法などで塗布する。金属ペースト26には、共材23を含ませる。例えば、金属ペースト26は、積層体において、内部電極パターン53が露出する2端面に塗布する。
【0075】
(焼成工程)
その後、酸素分圧10-5~10-8atmの還元雰囲気中で1100~1300℃で10分~2時間焼成する。このようにして、素体10と第1外部電極21とを同時焼成することができる。
【0076】
(再酸化処理工程)
その後、N2ガス雰囲気中において600℃~1000℃で再酸化処理を行ってもよい。
【0077】
(焼き付け工程)
次に、
図9(b)で例示するように、第1外部電極21上に、第2外部電極22となる金属ペースト27をディップ法などで塗布する。金属ペースト27には、ガラス24が含まれる。例えば、金属ペースト27は、積層体において、内部電極層12が露出する2端面以外の4面の少なくともいずれかまで延在するように塗布する。その後、金属ペースト27を、例えば700℃~900℃程度で焼き付けることで、第2外部電極22を形成する。
【0078】
(めっき処理工程)
その後、めっき処理により、第2外部電極22上に、Cu,Ni,Sn等の金属コーティングを行ってもよい。
【0079】
本実施形態に係る製造方法によれば、素体10と第1外部電極21とを同時焼成する過程では、第2外部電極22を形成することから、第1外部電極21だけを厚く形成しなくてもよい。したがって、第1外部電極21を同時焼成する際の応力が緩和され、クラックの発生を抑制することができる。また、第2外部電極22と素体10との間に第1外部電極21が配置されるため、ガラス24の素体10への拡散が抑制され、クラックの発生が抑制される。またガラス24を含む第2外部電極22は低温(例えば、800℃程度)で焼き付けることができるため、クラックの発生が抑制される。なお、第1外部電極21の主成分と第2外部電極22の主成分とが同じ金属であるため、第1外部電極21と第2外部電極22との間に強固な接合が得られ、ストレスが印加されても界面剥離が抑制される。以上のことから、本実施形態に係る外部電極20bは、クラックの発生を抑制することができる。外部電極20aも外部電極20bと同様の積層構造を有しているため、外部電極20aもクラックの発生を抑制することができる。
【0080】
なお、上記各実施形態は、セラミック電子部品の一例として積層セラミックコンデンサについて説明したが、それに限られない。例えば、上記各実施形態の構成は、バリスタやサーミスタなどの、他の積層セラミック電子部品に適用することもできる。
【実施例0081】
以下、実施形態に係る積層セラミックコンデンサを作製し、特性について調べた。
【0082】
(実施例)
平均粒径150nmのBaTiO3を主原料とし、Ho2O3、MgO、MnCO3、SiO2を微量添加して混合した粉体を、有機溶剤に分散させスラリとした後にバインダを加え、PETフィルム上に所定厚みで塗工し、乾燥させ、セラミックグリーンシートを得た。その上に、Niの内部電極ペーストを印刷して内部電極パターンを形成した。得られた積層単位を100枚積層後、Niを印刷していないセラミックグリーンシートで上下を挟み圧着した。圧着後に3216形状の小片にカットし、N2雰囲気中で熱処理(脱バインダ処理)した。その後、小片の内部電極層が露出している2端面に、Niの金属ペースト(BaTiO3粉末を10wt%含む)をディップで形成した後、N2-H2-H2Oの混合ガス中、1250℃で焼成した。この際のディップ量は、焼結後の第1外部電極の厚みが平均5μm以下になる量に調整した。焼成後のサンプルにNiの金属ペースト(Si-Li-Zn-Oからなるガラスを20wt%含む)をディップした。ディップ量は、上面、下面、および2側面に回り込む寸法が約0.5mmとなるように調整した。N2雰囲気で800℃、10minの条件で第2外部電極を焼き付けた。その後、第2外部電極の上に、Cu、Ni、Snの順で電解メッキを形成した。
【0083】
得られた積層セラミックコンデンサは、共材を含んだ第1外部電極の外側を、共材を含まずにガラスを含んだ第2外部電極が覆う構造になっていることを確認した。具体的には、大量に作成されたチップの中からランダムに抽出した20個を樹脂に埋めて研磨することで断面を出した試料を作製し、光学顕微鏡および走査型電子顕微鏡(SEM)によって20個すべてが、設計した構造であることを確認した。
【0084】
(比較例1)
比較例1では、第1外部電極のみを厚み30μmに厚塗りし、第2外部電極を形成しなかった。その他の条件は、実施例と同様とした。
【0085】
(比較例2)
比較例2では、第1外部電極を形成せずに、第2外部電極を形成した。その他の条件は、実施例と同様とした。
【0086】
(分析)
実施例および比較例1,2のそれぞれについて、100個のサンプルを基板に実装して機械的ストレス試験を行い、クラックの有無を確認した。具体的には、試験基板であるガラスエポキシ基板にリフローはんだ付けした後、支点間隔90mmで基板裏から加圧速度0.5mm/秒で荷重を加え、たわみ量1mmまで曲げて10秒保持して荷重を抜くという動作を1サイクルとして、これを200サイクル繰り返した。その後、はんだに熱を加えて基板から取り外し、クラックの確認をした。具体的には、超音波探傷検査(SAT)で確認し、クラックの有無を確認した。念のため、SEMで内部電極層と外部電極とのコンタクト界面を確認し、ガラスとの反応相や内部電極の合金化相がないことを確認した。表1に結果を示す。
【表1】
【0087】
比較例1では、SATまたはSEMで、100サンプル中、4サンプルにクラックが発生していることが確認された。これは、第2外部電極を形成しなかったことで、第1外部電極を厚くせざるを得なかったからであると考えられる。比較例2では、SATまたはSEMで、100サンプル中、65サンプルにクラックが発生していることが確認された。これは、第1外部電極を形成しなかったことで、ガラスが素体に拡散したからであると考えられる。これらに対して、実施例では、いずれのサンプルにもクラックが発生しないことを確認した。これは、共材を含む第1外部電極上に、ガラスを含み第1外部電極と同じ金属を主成分とする第2外部電極を形成したことで、第1外部電極を厚くせずに済み、ガラスの拡散も抑制されたからであると考えられる。
【0088】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。