(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102521
(43)【公開日】2023-07-25
(54)【発明の名称】シート制御装置、シート制御方法
(51)【国際特許分類】
B60N 2/90 20180101AFI20230718BHJP
B60N 2/06 20060101ALI20230718BHJP
B60N 2/22 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
B60N2/90
B60N2/06
B60N2/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022003052
(22)【出願日】2022-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】510123839
【氏名又は名称】ニデックモビリティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101786
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 秀行
(72)【発明者】
【氏名】片山 陽太
(72)【発明者】
【氏名】小澤 晃史
(72)【発明者】
【氏名】今井 秀和
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087AA02
3B087BA02
3B087BD03
3B087DE08
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】シートの座部と背もたれ部の双方の動作中に発生した様々なパターンの挟み込みを迅速かつ的確に解消する。
【解決手段】シート制御装置2は、シート30の座部31の動作を制御する第1制御部21aと、シート30の背もたれ部32の動作を制御する第2制御部21bと、座部31と背もたれ部32の少なくとも一方の動作による物体の挟み込みを検出する挟み込み検出部22とを備えている。挟み込み検出部22が、座部31と背もたれ部32の双方の動作中に挟み込みを検出した場合、第1制御部21aは、挟み込みが発生する前の座部31の動作方向に応じて、当該座部31を挟み込みのない状態とする制御を行い、第2制御部21bは、挟み込みが発生する前の背もたれ部32の動作方向に応じて、当該背もたれ部32を挟み込みのない状態とする制御を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
座部と背もたれ部とを有する電動式シートの動作を制御するシート制御装置であって、
前記座部の動作を制御する第1制御部と、
前記背もたれ部の動作を制御する第2制御部と、
前記座部と前記背もたれ部の少なくとも一方の動作による物体の挟み込みを検出する挟み込み検出部と、を備え、
前記挟み込み検出部が、前記座部と前記背もたれ部の双方の動作中に挟み込みを検出した場合に、
前記第1制御部は、挟み込みが発生する前の前記座部の動作方向に応じて、当該座部を挟み込みのない状態とする制御を行い、
前記第2制御部は、挟み込みが発生する前の前記背もたれ部の動作方向に応じて、当該背もたれ部を挟み込みのない状態とする制御を行う、ことを特徴とするシート制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシート制御装置において、
前記挟み込みが発生する前の前記座部の動作方向が、挟み込みが発生するおそれのある第1方向であり、かつ、前記挟み込みが発生する前の前記背もたれ部の動作方向が、挟み込みが発生するおそれのある第2方向である場合は、
前記第1制御部は、前記座部が前記第1方向と逆の第3方向へ動作するように制御を行い、
前記第2制御部は、前記背もたれ部が前記第2方向と逆の第4方向へ動作するように制御を行う、ことを特徴とするシート制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載のシート制御装置において、
前記挟み込みが発生する前の前記座部の動作方向が、挟み込みが発生するおそれのある第1方向と逆の第3方向であり、かつ、前記挟み込みが発生する前の前記背もたれ部の動作方向が、挟み込みが発生するおそれのある第2方向である場合は、
前記第1制御部は、前記座部が停止するように制御を行い、
前記第2制御部は、前記背もたれ部が前記第2方向と逆の第4方向へ動作するように制御を行う、ことを特徴とするシート制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載のシート制御装置において、
前記挟み込みが発生する前の前記座部の動作方向が、挟み込みが発生するおそれのある第1方向と逆の第3方向であり、かつ、前記挟み込みが発生する前の前記背もたれ部の動作方向が、挟み込みが発生するおそれのある第2方向である場合は、
前記第1制御部は、前記座部が前記第3方向への動作を継続するように制御を行い、
前記第2制御部は、前記背もたれ部が前記第2方向と逆の第4方向へ動作するように制御を行う、ことを特徴とするシート制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載のシート制御装置において、
前記挟み込みが発生する前の前記座部の動作方向が、挟み込みが発生するおそれのある第1方向であり、かつ、前記挟み込みが発生する前の前記背もたれ部の動作方向が、挟み込みが発生するおそれのある第2方向と逆の第4方向である場合は、
前記第1制御部は、前記座部が前記第1方向と逆の第3方向へ動作するように制御を行い、
前記第2制御部は、前記背もたれ部が停止するように制御を行う、ことを特徴とするシート制御装置。
【請求項6】
請求項1に記載のシート制御装置において、
前記挟み込みが発生する前の前記座部の動作方向が、挟み込みが発生するおそれのある第1方向であり、かつ、前記挟み込みが発生する前の前記背もたれ部の動作方向が、挟み込みが発生するおそれのある第2方向と逆の第4方向である場合は、
前記第1制御部は、前記座部が前記第1方向と逆の第3方向へ動作するように制御を行い、
前記第2制御部は、前記背もたれ部が前記第4方向への動作を継続するように制御を行う、ことを特徴とするシート制御装置。
【請求項7】
座部と背もたれ部とを有する電動式シートの動作を制御する方法であって、
前記座部と前記背もたれ部の双方の動作中に物体の挟み込みを検出する手順と、
前記挟み込みが検出された場合に、挟み込みが発生する前の前記座部の動作方向に応じて、当該座部を挟み込みのない状態とする制御を行う手順と、
前記挟み込みが検出された場合に、挟み込みが発生する前の前記背もたれ部の動作方向に応じて、当該背もたれ部を挟み込みのない状態とする制御を行う手順と、を含むことを特徴とするシート制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両などに装備された電動式のシートを制御する装置に関し、特に、異物の挟み込みを検出する機能を備えたシート制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動四輪車のような車両には、モータの回転により座部や背もたれ部が前後に移動する電動式のシートが装備されているものがある。このようなシートにおいて、座部や背もたれ部の位置を調整する場合、従来はシートの近傍に設けられた操作部を操作して位置調整を行っていた。一方、近年では、座部や背もたれ部の位置を、利用者の好みに応じた目標位置として予め登録しておき、乗車時にその目標位置まで座部や背もたれ部を自動的に移動させる、オート駆動機能を備えた車両が登場している。
【0003】
このようなオート駆動機能を備えた車両にあっては、たとえば、前席のシートと後席のシートとの間に人や物が存在している状態で、前席のシートの座部が自動的に後方へ移動(直進)すると、前後のシートの間に人や物が挟み込まれて、安全が脅かされるおそれがある。前席のシートの背もたれ部が自動的に後方へ移動(傾斜)する場合も同様である。このため、シート制御装置には、挟み込みを速やかに検出して、座部や背もたれ部を移動方向と逆の方向へ反転させることで挟み込みを解消する機能が要求される。
【0004】
挟み込みが発生すると、モータに加わる荷重の増加に伴って、モータに流れる電流が増加するとともに、モータの回転数が低下する。そこで、所定期間におけるモータの電流や回転数の変化量(差分)を検出し、その検出値を閾値と比較することにより、挟み込みが発生したか否かを判定することができる。特許文献1~6には、シートの位置制御における挟み込み検出の技術が開示されている。特許文献7には、シートクッションの跳ね上げに伴って発生する挟み込みが検出された場合の、シート位置の制御方法が記載されている。
【0005】
図10および
図11は、電動式のシート30による挟み込みが発生した場合の、基本的な動作を示している。シート30は、前後方向に直進が可能な座部31と、前後方向に傾斜が可能な背もたれ部32とを備えている。矢印Fは前方を表し、矢印Rは後方を表している。以下、座部31の前後方向の直進動作を「スライド動作」といい、背もたれ部32の前後方向の傾斜動作を「リクライニング動作」という。
【0006】
図10は、座部31のスライド動作中に挟み込みが発生した場合を示している。(a)はスライド動作前の状態であって、乗員50が着座した前席(ここでは運転席)のシート30は、乗員60が着座している後席のシート40から一定距離を隔てた位置にある。
【0007】
この状態で、乗員50が、座部31を後方Rの所定位置(目標位置)まで自動的に移動させるオート操作を行うと、(b)のように、座部31がスライド動作によりP方向へ移動するとともに、背もたれ部32も座部31と連動して移動する。つまり、シート30全体が後方Rへ移動する。このとき、目標位置が後席40に接近していると、破線aで示すように、移動中のシート30の一部が後席の乗員60の脚に当たる。このため、シート30がそれ以上移動できなくなって、両シート30、40の間に脚が挟み込まれた状態となる。この挟み込みが検出されると、モータは(b)の挟み込み位置でいったん停止した後、逆転する。このため、シート30の座部31は挟み込み位置から反転し、(c)のように、P方向と逆のP’方向へ移動する。これによってシート30、40の間隔が広がり、乗員60の脚の挟み込みが解消される。
【0008】
図11は、背もたれ部32のリクライニング動作中に挟み込みが発生した場合を示している。(a)はリクライニング動作前の状態であって、乗員50が着座した前席のシート30は、後席のシート40から一定距離を隔てた位置にある。前席のシート30と後席のシート40との間には、荷物80が置かれている。
【0009】
この状態で、乗員50が、背もたれ部32を後方Rの所定位置(目標位置)まで自動的に移動させるオート操作を行うと、(b)のように、背もたれ部32がリクライニング動作によりQ方向へ移動する(座部31は移動しない)。このとき、座部31の座面に対する背もたれ部32の傾斜角度が一定以上であると、破線aで示すように、移動中の背もたれ部32が荷物80に当たる。このため、背もたれ部32がそれ以上移動できなくなって、両シート30、40の間に荷物80が挟み込まれた状態となる。この挟み込みが検出されると、モータは(b)の挟み込み位置でいったん停止した後、逆転する。このため、背もたれ部32は挟み込み位置から反転し、(c)のように、Q方向と逆のQ’方向へ移動する。これによってシート30、40の間隔が広がり、荷物80の挟み込みが解消される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】韓国特許公開第10-2020-0065312号
【特許文献2】韓国特許公開第10-2020-0065302号
【特許文献3】韓国特許公開第10-2013-0039104号
【特許文献4】中国特許公開第109278594号
【特許文献5】特開2016-129449号公報
【特許文献6】特開2007-131138号公報
【特許文献7】特開2004-210159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述した動作は、座部31のみがP方向へ移動して挟み込みが発生した場合(
図10)と、背もたれ部32のみがQ方向へ移動して挟み込みが発生した場合(
図11)の動作である。しかしながら、シート30による挟み込みは、座部31と背もたれ部32の双方が同時に、それぞれスライド動作とリクライニング動作を行うことによっても発生する。また、それらの動作の際に、座部31と背もたれ部32が同じ方向に移動するとは限らず、両者が互いに逆の方向に移動することもある。このため、座部と背もたれ部の動作の態様に応じて、様々な挟み込みのパターンが存在することになる。
【0012】
本発明は、シートの座部と背もたれ部の双方の動作中に発生した様々なパターンの挟み込みを迅速かつ的確に解消することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るシート制御装置は、座部と背もたれ部とを有する電動式シートの動作を制御するシート制御装置であって、座部の動作を制御する第1制御部と、背もたれ部の動作を制御する第2制御部と、座部と背もたれ部の少なくとも一方の動作による物体の挟み込みを検出する挟み込み検出部とを備えている。挟み込み検出部が、座部と背もたれ部の双方の動作中に挟み込みを検出した場合、第1制御部は、挟み込みが発生する前の座部の動作方向に応じて、当該座部を挟み込みのない状態とする制御を行う。また、第2制御部は、挟み込みが発生する前の背もたれ部の動作方向に応じて、当該背もたれ部を挟み込みのない状態とする制御を行う。
【0014】
本発明による第1の制御態様としては、挟み込みが発生する前の座部の動作方向が、挟み込みが発生するおそれのある第1方向であり、かつ、挟み込みが発生する前の背もたれ部の動作方向が、挟み込みが発生するおそれのある第2方向である場合の制御態様が考えられる。この場合、第1制御部は、座部が第1方向と逆の第3方向へ動作するように制御を行い、第2制御部は、背もたれ部が第2方向と逆の第4方向へ動作するように制御を行う。
【0015】
本発明による第2の制御態様としては、挟み込みが発生する前の座部の動作方向が、挟み込みが発生するおそれのある第1方向と逆の第3方向であり、かつ、挟み込みが発生する前の背もたれ部の動作方向が、挟み込みが発生するおそれのある第2方向である場合の制御態様が考えられる。この場合、第1制御部は、座部が停止するように制御を行い、第2制御部は、背もたれ部が第2方向と逆の第4方向へ動作するように制御を行う。
【0016】
この第2の制御態様において、第1制御部は、座部を停止させる替わりに、座部が第3方向への動作を継続するように制御を行ってもよい。
【0017】
本発明による第3の制御態様としては、挟み込みが発生する前の座部の動作方向が、挟み込みが発生するおそれのある第1方向であり、かつ、挟み込みが発生する前の背もたれ部の動作方向が、挟み込みが発生するおそれのある第2方向と逆の第4方向である場合の制御態様が考えられる。この場合、第1制御部は、座部が第1方向と逆の第3方向へ動作するように制御を行い、第2制御部は、背もたれ部が停止するように制御を行う。
【0018】
この第3の制御態様において、第2制御部は、背もたれ部を停止させる替わりに、背もたれ部が第4方向への動作を継続するように制御を行ってもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、シートの座部と背もたれ部の双方の動作中に様々なパターンの挟み込みが発生した場合でも、これに対応することが可能となり、挟み込みを迅速かつ的確に解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明のシート制御装置を備えた電動シートシステムのブロック図である。
【
図2】挟み込み発生時の動作(第1の制御態様)を示した図である。
【
図3】挟み込み発生時の動作(第2の制御態様)を示した図である。
【
図4】挟み込み発生時の動作(第3の制御態様)を示した図である。
【
図5】座部と背もたれ部の動作態様を示したテーブルである。
【
図6】シート制御装置における制御手順を示したフローチャートである。
【
図7】第2の制御態様における他の動作例を示した図である。
【
図8】第3の制御態様における他の動作例を示した図である。
【
図9】座部と背もたれ部の動作態様の他の例を示したテーブルである。
【
図10】座部の移動による挟み込みを説明する図である。
【
図11】背もたれ部の移動による挟み込みを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態につき、図面を参照しながら説明する。図面を通して、同一の部分または対応する部分には、同一符号を付してある。以下では、車両に搭載されるシート制御装置を例に挙げる。
【0022】
図1は、本発明によるシート制御装置2と、これを用いた電動シートシステム100の一例を示している。電動シートシステム100は、たとえば自動四輪車のような車両に搭載されている。電動シートシステム100には、スライド操作部1a、リクライニング操作部1b、シート制御装置2、第1モータ駆動回路3a、第2モータ駆動回路3b、第1モータ電流検出部4a、第2モータ電流検出部4b、第1モータ回転数検出部5a、第2モータ回転数検出部5b、第1モータ6a、第2モータ6b、スライド機構7、リクライニング機構8、およびシート30が備わっている。シート30は、モータ6a、6bによって駆動される電動式のシートである。
【0023】
スライド操作部1aには、2つのスイッチ11a、12aが設けられている。第1スイッチ11aは、シート30の座部31をα方向の目標位置まで自動でスライド動作させる際に操作する、オート駆動用のスイッチである。第2スイッチ12aは、座部31をα方向の任意の位置まで手動でスライド動作させる際に操作する、マニュアル駆動用のスイッチである。
【0024】
リクライニング操作部1bにも、2つのスイッチ11b、12bが設けられている。第1スイッチ11bは、シート30の背もたれ部32をβ方向の目標位置まで自動でリクライニング動作させる際に操作する、オート駆動用のスイッチである。第2スイッチ12bは、背もたれ部32をβ方向の任意の位置まで手動でリクライニング動作させる際に操作する、マニュアル駆動用のスイッチである。
【0025】
シート制御装置2は、第1制御部21a、第2制御部21b、挟み込み検出部22、シート移動量算出部23、および目標位置記憶部24を備えている。
【0026】
第1制御部21aは、スライド操作部1aの各スイッチ11a、12aの操作状態、挟み込み検出部22の検出結果、およびシート移動量算出部23で算出された座部31の移動量などに基づいて、第1モータ6aの回転を制御するための制御信号を第1モータ駆動回路3aへ出力する。
【0027】
第2制御部21bは、リクライニング操作部1bの各スイッチ11b、12bの操作状態、挟み込み検出部22の検出結果、およびシート移動量算出部23で算出された背もたれ部32の移動量などに基づいて、第2モータ6bの回転を制御するための制御信号を第2モータ駆動回路3bへ出力する。
【0028】
挟み込み検出部22は、電流検出部4a、4bでそれぞれ検出された、第2モータ6a、6bの電流に基づいて、シート30による物体の挟み込みを検出する。モータ電流に基づく挟み込み検出の詳細については、よく知られているので説明を省略する。
【0029】
シート移動量算出部23は、モータ回転数検出部5a、5bでそれぞれ検出された、モータ6a、6bの回転数に基づいて、座部31と背もたれ部32の各移動量を算出する。座部31の移動量は距離であり、背もたれ部32の移動量は角度である。モータ回転数検出部5a、5bは、たとえば、モータ6a、6bの回転と同期してパルス信号を出力する回転センサから構成されている。
【0030】
目標位置記憶部24には、各操作部1a、1bの第1スイッチ11a、11bによりシート30がオート駆動される場合の、目標位置が設定されている。各操作部1a、1bの第2スイッチ12a、12bを操作して、座部31や背もたれ部32の位置を好みの位置に調整した後、図示しない設定スイッチを操作することによって、当該位置が目標位置として目標位置記憶部24に記憶される。
【0031】
なお、シート制御装置2はマイクロコンピュータから構成されており、第1制御部21a、第2制御部21b、挟み込み検出部22、およびシート移動量算出部23のそれぞれの機能は、実際にはソフトウェアによって実現されるが、ここでは便宜上、ハードウェアのブロックとして図示している。
【0032】
第1モータ駆動回路3aは、第1モータ6aを回転させるための駆動電圧を生成し、これを第1モータ6aへ供給する。第1モータ6aは、この駆動電圧により回転し、スライド機構7を介してシート30の座部31をα方向にスライド動作させる。スライド機構7は、第1モータ6aと座部31に連結されていて、第1モータ6aの回転運動を直線運動に変換する。
【0033】
第2モータ駆動回路3bは、第2モータ6bを回転させるための駆動電圧を生成し、これを第2モータ6bへ供給する。第2モータ6bは、この駆動電圧により回転し、リクライニング機構8を介してシート30の背もたれ部32をβ方向にリクライニング動作させる。リクライニング機構8は、第2モータ6bと背もたれ部32に連結されていて、第2モータ6bの回転をギア等を介して背もたれ部32へ伝達する。
【0034】
次に、シート30の座部31および背もたれ部32による挟み込みが発生した場合の動作について説明する。座部31のみの移動中に挟み込みが発生した場合の動作は、
図10で説明した動作と同じである。また、背もたれ部32のみの移動中に挟み込みが発生した場合の動作は、
図11で説明した動作と同じである。
【0035】
図2~
図4は、座部31と背もたれ部32の双方の移動中に挟み込みが発生した場合の動作を示している。以下、これらについて詳細に説明する。
【0036】
図2は、前述した第1の制御態様による動作を示している。第1の制御態様では、座部31と背もたれ部32が同じ方向に動作して挟み込みが発生する。
図2の(a)は、動作前の状態(すなわち挟み込みが発生する前の状態)であって、前席のシート30は後席のシート40から一定距離を隔てた位置にある。この状態で、スライド操作部1aの第1スイッチ11a、およびリクライニング操作部1bの第1スイッチ11bが操作されると、(b)のように、座部31が、スライド動作により目標位置に向ってP方向へ移動するとともに、背もたれ部32が、リクライニング動作により目標位置に向ってQ方向へ移動する。そして、破線aで示すように、後席の乗員60の脚が両シート30、40の間に挟み込まれた状態となる。
【0037】
この挟み込みが挟み込み検出部22によって検出されると、第1制御部21aは、第1モータ駆動回路3aへ停止指令信号を出力して、スライド動作用の第1モータ6aをいったん停止させる。また、第2制御部21bも、第2モータ駆動回路3bへ停止指令信号を出力して、リクライニング動作用の第2モータ6bをいったん停止させる。その結果、座部31と背もたれ部32は、
図2の(b)の位置でいったん停止する。
【0038】
その後、第1制御部21aは、第1モータ駆動回路3aへ逆転指令信号を出力して、第1モータ6aを逆転させる。また、第2制御部21bも、第2モータ駆動回路3bへ逆転指令信号を出力して、第2モータ6bを逆転させる。このため、座部31と背もたれ部32は、
図2の(b)の位置から反転し、(c)のように、座部31はP方向と逆のP’方向へ移動し、背もたれ部32はQ方向と逆のQ’方向へ移動する。これによってシート30、40の間隔が広がり、乗員60の脚の挟み込みが解消される。
【0039】
図2に示した座部31が移動するP方向、および背もたれ部32が移動するQ方向は、後席のシート40に乗員60が着座している場合、または、後述の
図4のように、前席のシート30と後席のシート40との間に荷物70が置かれている場合に、挟み込みが発生するおそれのある移動方向である。P方向およびQ方向は、それぞれ本発明における「第1方向」および「第2方向」に相当する。また、P’方向およびQ’方向は、挟み込みを解消する方向であって、それぞれ本発明における「第3方向」および「第4方向」に相当する。以下の
図3と
図4においても同様である。
【0040】
図3は、前述した第2の制御態様による動作を示している。第2の制御態様では、座部31と背もたれ部32が異なる方向に動作して挟み込みが発生する。
図3の(a)は、動作前の状態であって、前席のシート30は後席のシート40から比較的近い距離にある。この状態で、スライド操作部1aの第1スイッチ11a、およびリクライニング操作部1bの第1スイッチ11bが操作されると、(b)のように、座部31が、スライド動作により目標位置に向ってP’方向へ移動するとともに、背もたれ部32が、リクライニング動作により目標位置に向ってQ方向へ移動する。すなわち、座部31と背もたれ部32は、互いに反対の方向に移動する。
【0041】
この場合、座部31はP’方向へ移動するので挟み込みを発生させないが、背もたれ部32はQ方向へ移動するので、その傾斜角度が大きくなると、破線aで示すように、後席の乗員60の脚が背もたれ部32とシート40との間に挟み込まれた状態となる。
【0042】
この挟み込みが挟み込み検出部22によって検出されると、第1制御部21aは、第1モータ駆動回路3aへ停止指令信号を出力して、第1モータ6aを停止させる。また、第2制御部21bも、第2モータ駆動回路3bへ停止指令信号を出力して、第2モータ6bをいったん停止させる。その結果、座部31と背もたれ部32は、
図3の(b)の位置で停止する。
【0043】
その後、第1制御部21aは、第1モータ駆動回路3aへの停止指令信号の出力を継続して、第1モータ6aを停止状態に維持する。一方、第2制御部21bは、第2モータ駆動回路3bへ逆転指令信号を出力して、第2モータ6bを逆転させる。その結果、
図3の(c)のように、座部31は(b)の位置から移動しないが、背もたれ部32は(b)の位置から反転し、Q方向と逆のQ’方向へ移動する。これによって背もたれ部32とシート40との間隔が広がり、乗員60の脚の挟み込みが解消される。
【0044】
図4は、前述した第3の制御態様による動作を示している。第3の制御態様では、第2の制御態様と同様に、座部31と背もたれ部32が異なる方向に動作して挟み込みが発生するが、それぞれの動作方向が第2の制御態様の場合と逆になる。
【0045】
図4の(a)は、動作前の状態であって、シート30の背もたれ部32は、後席のシート40から比較的近い距離にある。シート30とシート40との間には、荷物70が置かれている。この状態で、スライド操作部1aの第1スイッチ11a、およびリクライニング操作部1bの第1スイッチ11bが操作されると、(b)のように、座部31が、スライド動作により目標位置に向ってP方向へ移動するとともに、背もたれ部32が、リクライニング動作により目標位置に向ってQ’方向へ移動する。すなわち、座部31と背もたれ部32は、互いに反対の方向に移動する(それぞれの移動方向は
図3と逆になる)。この場合、背もたれ部32はQ’方向へ移動するので、挟み込みを発生させないが、座部31はP方向へ移動するので、その移動量が大きくなると、破線aで示すように、荷物70が座部31とシート40との間に挟み込まれた状態となる。
【0046】
この挟み込みが挟み込み検出部22によって検出されると、第1制御部21aは、第1モータ駆動回路3aへ停止指令信号を出力して、第1モータ6aをいったん停止させる。一方、第2制御部21bも、第2モータ駆動回路3bへ停止指令信号を出力して、第2モータ6bを停止させる。その結果、座部31と背もたれ部32は、
図4の(b)の位置で停止する。
【0047】
その後、第1制御部21aは、第1モータ駆動回路3aへ逆転指令信号を出力して、第1モータ6aを逆転させる。一方、第2制御部21bは、第2モータ駆動回路3bへの停止指令信号の出力を継続して、第2モータ6bを停止状態に維持する。その結果、
図4の(c)のように、背もたれ部32は(b)の位置から移動しないが、座部31は(b)の位置から反転し、P方向と逆のP’方向へ移動する。これによって座部31とシート40との間隔が広がり、荷物70の挟み込みが解消される。
【0048】
以上のように、本実施形態においては、座部31と背もたれ部32の双方の動作中に挟み込みが検出された場合、第1制御部21aは、挟み込みが発生する前の座部31の動作方向(PまたはP’)に応じて、座部31を挟み込みのない状態とする制御(反転または停止)を行い、第2制御部21bは、挟み込みが発生する前の背もたれ部32の動作方向(QまたはQ’)に応じて、背もたれ部32を挟み込みのない状態とする制御(反転または停止)を行う。このため、本発明によれば、様々なパターンの挟み込みが発生した場合でも、これに対応することができる。以下、具体的に説明する。
【0049】
図5は、挟み込み検出前における座部31と背もたれ部32の各動作状態に対して、挟み込み検出後に座部31と背もたれ部32をどのように動作させるかを表したテーブルである。
【0050】
図5の(1)の場合は、座部31が停止していて、背もたれ部32が前方(Q’方向)へ移動しているので、挟み込みは発生しない。(3)の場合は、座部31も背もたれ部32も停止しているので、当然挟み込みは発生しない。(4)の場合は、座部31も背もたれ部32も前方(P’方向、Q’方向)へ移動しているので、挟み込みは発生しない。(6)の場合は、座部31が前方(P’方向)へ移動していて、背もたれ部32は停止しているので、挟み込みは発生しない。
【0051】
挟み込みが発生するのは、以下に述べる(2)、(5)、(7)、(8)、(9)の場合である。このうち、(2)と(9)は従来から行われている制御態様であり、(5)、(7)、(8)が本発明に特有の制御態様となる。
【0052】
図5の(2)の場合は、挟み込み検出前に、座部31は停止しているが、背もたれ部32が後方(Q方向)へ移動していることで、挟み込みが発生する。挟み込み検出後は、座部31は停止したままであり、背もたれ部32は前方(Q’方向)へ移動するので、挟み込みが解消される。この場合の動作は、
図11で説明した動作と同じである。
【0053】
図5の(9)の場合は、挟み込み検出前に、背もたれ部32は停止しているが、座部31が後方(P方向)へ移動していることで、挟み込みが発生する。挟み込み検出後は、背もたれ部32は停止したままであり、座部31は前方(P’方向)へ移動するので、挟み込みが解消される。この場合の動作は、
図10で説明した動作と同じである。
【0054】
図5の(5)の場合は、挟み込み検出前に、座部31は前方(P’方向)へ移動しているが、背もたれ部32が後方(Q方向)へ移動していることで、挟み込みが発生する。挟み込み検出後は、座部31は停止し、背もたれ部32は前方(Q’方向)へ移動するので、挟み込みが解消される。この場合の動作は、
図3で説明した第2の制御態様の動作となる。
【0055】
図5の(7)の場合は、挟み込み検出前に、背もたれ部32は前方(Q’方向)へ移動しているが、座部31が後方(P方向)へ移動していることで、挟み込みが発生する。挟み込み検出後は、座部31は前方(P’方向)へ移動し、背もたれ部32は停止するので、挟み込みが解消される。この場合の動作は、
図4で説明した第3の制御態様の動作となる。
【0056】
図5の(8)の場合は、挟み込み検出前に、座部31が後方(P方向)へ移動しており、背もたれ部32も後方(Q方向)へ移動していることで、挟み込みが発生する。挟み込み検出後は、座部31は前方(P’方向)へ移動し、背もたれ部32も前方(Q’方向)へ移動するので、挟み込みが解消される。この場合の動作は、
図2で説明した第1の制御態様の動作となる。
【0057】
このようにして、本発明によれば、
図10と
図11に示した挟み込みだけでなく、
図2~
図4に示した挟み込みが発生した場合にも、座部31と背もたれ部32の動作の態様に応じて、挟み込みを迅速かつ的確に解消することができる。
【0058】
図6は、
図1のシート制御装置2における制御手順を示したフローチャートである。ステップS1で第1スイッチ11a、11bが操作されると、ステップS2で、挟み込み検出部22による挟み込み検出の機能が起動される。続くステップS3では、制御部21a、21bの制御の下で、モータ駆動回路3a、3bが動作してモータ6a、6bが回転し、シート30のオート駆動が開始される。その後は、ステップS4~S10と、ステップS11~S17とが並行して実行される。
【0059】
ステップS4で、座部31のスライド動作による挟み込みが、挟み込み検出部22により検出されると、ステップS5で座部31のスライド動作を停止させるとともに、ステップS6で背もたれ部32のリクライニング動作を停止させる。その後、ステップS7で、挟み込み発生前の座部31の動作方向(スライド方向)が後方(P方向)か否かを判定し、後方であれば、ステップS8で座部31を前方(P’方向)へ移動させる。そして、ステップS9で座部31が所定量だけ移動すると、ステップS10で座部31のスライド動作を停止させる。
【0060】
一方、ステップS11で、背もたれ部32のリクライニング動作による挟み込みが、挟み込み検出部22により検出されると、ステップS12で座部31のスライド動作を停止させるとともに、ステップS13で背もたれ部32のリクライニング動作を停止させる。その後、ステップS14で、挟み込み発生前の背もたれ部32の動作方向(リクライニング方向)が後方(Q方向)か否かを判定し、後方であれば、ステップS15で背もたれ部32を前方(Q’方向)へ移動させる。そして、ステップS16で背もたれ部32が所定量だけ移動すると、ステップS17で背もたれ部32のリクライニング動作を停止させる。
【0061】
また、ステップS18で第2スイッチ12a、12bが操作された場合は、ステップS19において、制御部21a、21bの制御の下で、モータ駆動回路3a、3bが動作してモータ6a、6bが回転し、シート30のマニュアル駆動が開始される。そして、ステップS20で第2スイッチ12a、12bの操作が解除されると、ステップS21でモータ6a、6bが停止して、シート30は停止する。すなわち、第2スイッチ12a、12bが操作されている間だけ、座部31のスライド動作と背もたれ部32のリクライニング動作が行われる。
【0062】
本発明では、以上述べた実施形態以外にも、以下のような種々の実施形態を採用することができる。
【0063】
前記の実施形態では、
図3において、背もたれ部32により挟み込みが発生した場合に、座部31を停止させる制御を行ったが、これに代えて、
図7の(c)のように、座部31がP’方向(前方)へのスライド動作を継続するような制御を行ってもよい。P’方向への移動は、シート40との間で挟み込みを発生させるおそれがないからである。本発明における「座部を挟み込みのない状態とする制御」には、このような座部31のP’方向への動作継続も含まれる。
図7の場合の動作は、
図9のテーブルの(5)のようになる。
【0064】
同様に、前記の実施形態では、
図4において、座部31により挟み込みが発生した場合に、背もたれ部32を停止させる制御を行ったが、これに代えて、
図8の(c)のように、背もたれ部32がQ’方向(前方)へのリクライニング動作を継続するような制御を行ってもよい。Q’方向への移動も、シート40との間で挟み込みを発生させるおそれがないからである。本発明における「背もたれ部を挟み込みのない状態とする制御」には、このような背もたれ部32のQ’方向への動作継続も含まれる。
図8の場合の動作は、
図9のテーブルの(7)のようになる。
【0065】
前記の実施形態では、モータ電流検出部4a、4bで検出されたモータ電流に基づいて挟み込みを検出したが、これに代えて、モータ回転数検出部5a、5bで検出されたモータ6a、6bの回転数に基づいて、挟み込みを検出してもよい。
【0066】
前記の実施形態では、
図1において、モータ駆動回路3a、3bがシート制御装置2の外部に設けられているが、これらのモータ駆動回路3a、3bをシート制御装置2に含めてもよい。また、モータ電流検出部4a、4bやモータ回転数検出部5a、5bも、シート制御装置2に含めてもよい。
【0067】
前記の実施形態では、車両に搭載されるシート制御装置を例に挙げたが、本発明は、車両以外の分野で用いられるシート制御装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0068】
1a スライド操作部
1b リクライニング操作部
2 シート制御装置
21a 第1制御部
21b 第2制御部
22 挟み込み検出部
23 シート移動量算出部
24 目標位置記憶部
3a 第1モータ駆動回路
3b 第2モータ駆動回路
4a 第1モータ電流検出部
4b 第2モータ電流検出部
5a 第1モータ回転数検出部
5b 第2モータ回転数検出部
6a 第1モータ
6b 第2モータ
7 スライド機構
8 リクライニング機構
30 シート
31 座部
32 背もたれ部
P 第1方向
Q 第2方向
P’ 第3方向
Q’ 第4方向