(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102522
(43)【公開日】2023-07-25
(54)【発明の名称】シート制御装置、シート制御方法
(51)【国際特許分類】
B60N 2/90 20180101AFI20230718BHJP
B60N 2/06 20060101ALI20230718BHJP
B60N 2/22 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
B60N2/90
B60N2/06
B60N2/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022003053
(22)【出願日】2022-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】510123839
【氏名又は名称】ニデックモビリティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101786
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 秀行
(72)【発明者】
【氏名】今井 秀和
(72)【発明者】
【氏名】小澤 晃史
(72)【発明者】
【氏名】片山 陽太
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087AA02
3B087BA02
3B087BD03
3B087DE08
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】電動式シートによる挟み込みが発生した場合に、シートの反転動作によって乗員の安全が脅かされるのを防止する。
【解決手段】シート制御装置2は、シート30の動作を制御する制御部21a、21bと、シート30の移動中に発生した物体の挟み込みを検出する挟み込み検出部22と、シート30に乗員が着座しているか否かを検出する着座検出部9とを備えている。制御部21a、21bは、挟み込み検出部22が挟み込みを検出し、かつ、着座検出部9が乗員の着座を検出しなかった場合は、シート30を所定量だけ逆方向へ移動させる。また、制御部21a、21bは、挟み込み検出部22が挟み込みを検出し、かつ、着座検出部9が乗員の着座を検出した場合は、シート30を上記所定量より小さい量だけ逆方向へ移動させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の操作に基づいて目標位置まで自動的に移動する電動式シートの制御装置であって、
前記シートの動作を制御する制御部と、
前記シートの移動中に発生した物体の挟み込みを検出する挟み込み検出部と、
前記シートに乗員が着座しているか否かを検出する着座検出部と、を備え、
前記制御部は、
前記挟み込み検出部が挟み込みを検出し、かつ、前記着座検出部が乗員の着座を検出しなかった場合に、前記シートを所定量だけ逆方向へ移動させ、
前記挟み込み検出部が挟み込みを検出し、かつ、前記着座検出部が乗員の着座を検出した場合に、前記シートを前記所定量より小さい量だけ逆方向へ移動させる、ことを特徴とするシート制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシート制御装置において、
前記制御部は、前記シートに備わる前後方向に直進が可能な座部の動作を制御する第1制御部を含み、
前記第1制御部は、
前記挟み込み検出部が挟み込みを検出し、かつ、前記着座検出部が乗員の着座を検出しなかった場合に、前記座部を所定距離だけ逆方向へ移動させ、
前記挟み込み検出部が挟み込みを検出し、かつ、前記着座検出部が乗員の着座を検出した場合に、前記座部を前記所定距離より小さい距離だけ逆方向へ移動させる、ことを特徴とするシート制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載のシート制御装置において、
前記制御部は、前記シートに備わる前後方向に傾斜が可能な背もたれ部の動作を制御する第2制御部を含み、
前記第2制御部は、
前記挟み込み検出部が挟み込みを検出し、かつ、前記着座検出部が乗員の着座を検出しなかった場合に、前記背もたれ部を所定角度だけ逆方向へ移動させ、
前記挟み込み検出部が挟み込みを検出し、かつ、前記着座検出部が乗員の着座を検出した場合に、前記背もたれ部を前記所定角度より小さい角度だけ逆方向へ移動させる、ことを特徴とするシート制御装置。
【請求項4】
所定の操作に基づいて目標位置まで自動的に移動する電動式シートの制御方法であって、
前記シートの移動中に発生した物体の挟み込みを検出する手順と、
前記シートに乗員が着座しているか否かを検出する手順と、
挟み込みが検出され、かつ、乗員の着座が検出されなかった場合に、前記シートを所定量だけ逆方向へ移動させる手順と、
挟み込みが検出され、かつ、乗員の着座が検出された場合に、前記シートを前記所定量より小さい量だけ逆方向へ移動させる手順と、を含むことを特徴とするシート制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両などに装備された電動式のシートを制御する装置に関し、特に、異物の挟み込みを検出する機能を備えたシート制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動四輪車のような車両には、モータの回転により座部や背もたれ部が前後に移動する電動式のシートが装備されているものがある。このようなシートにおいて、座部や背もたれ部の位置を調整する場合、従来はシートの近傍に設けられた操作部を操作して位置調整を行っていた。一方、近年では、座部や背もたれ部の位置を、利用者の好みに応じた目標位置として予め登録しておき、乗車時にその目標位置まで座部や背もたれ部を自動的に移動させる、オート駆動機能を備えた車両が登場している。
【0003】
このようなオート駆動機能を備えた車両にあっては、たとえば、前席のシートと後席のシートとの間に人や物が存在している状態で、前席のシートの座部が自動的に後方へ移動(直進)すると、前後のシートの間に人や物が挟み込まれて、安全が脅かされるおそれがある。前席のシートの背もたれ部が自動的に後方へ移動(傾斜)する場合も同様である。このため、シート制御装置には、挟み込みを速やかに検出して、座部や背もたれ部を移動方向と逆の方向へ反転させることで挟み込みを解消する機能が要求される。
【0004】
挟み込みが発生すると、モータに加わる荷重の増加に伴って、モータに流れる電流が増加するとともに、モータの回転数が低下する。そこで、所定期間におけるモータの電流や回転数の変化量(差分)を検出し、その検出値を閾値と比較することにより、挟み込みが発生したか否かを判定することができる。特許文献1~6には、シートの位置制御における挟み込み検出の技術が開示されている。特許文献7には、シートクッションの跳ね上げに伴って発生する挟み込みが検出された場合の、シート位置の制御方法が記載されている。特許文献8には、シートに乗員が着座している場合は挟み込み検出の閾値を大きくすることで、シートが駆動不能となるのを防止する技術が記載されている。
【0005】
図8および
図9は、電動式のシート30による挟み込みが発生した場合の、基本的な動作を示している。シート30は、前後方向に直進が可能な座部31と、前後方向に傾斜が可能な背もたれ部32とを備えている。矢印Fは前方を表し、矢印Rは後方を表している。以下、座部31の前後方向の直進動作を「スライド動作」といい、背もたれ部32の前後方向の傾斜動作を「リクライニング動作」という。
【0006】
図8は、座部31のスライド動作中に挟み込みが発生した場合を示している。(a)はスライド動作前の状態であって、乗員50が着座した前席(ここでは運転席)のシート30は、乗員60が着座している後席のシート40から一定距離を隔てた位置にある。
【0007】
この状態で、乗員50が、座部31を後方Rの所定位置(目標位置)まで自動的に移動させるオート操作を行うと、(b)のように、座部31がスライド動作によりP方向へ移動するとともに、背もたれ部32も座部31と連動して移動する。つまり、シート30全体が後方Rへ移動する。このとき、目標位置が後席40に接近していると、破線aで示すように、移動中のシート30の一部が後席の乗員60の脚に当たる。このため、シート30がそれ以上移動できなくなって、両シート30、40の間に脚が挟み込まれた状態となる。X1は、挟み込みが生じたときの座部31の位置を示している。この挟み込みが検出されると、モータは(b)の状態でいったん停止した後、逆転する。このため、シート30の座部31は挟み込み位置X1から反転し、(c)のように、P方向と逆のP’方向へ移動する。これによってシート30、40の間隔が広がり、乗員60の脚の挟み込みが解消される。
【0008】
図9は、背もたれ部32のリクライニング動作中に挟み込みが発生した場合を示している。(a)はリクライニング動作前の状態であって、乗員50が着座した前席のシート30は、後席のシート40から一定距離を隔てた位置にある。前席のシート30と後席のシート40との間には、荷物Wが置かれている。
【0009】
この状態で、乗員50が、背もたれ部32を後方Rの所定位置(目標位置)まで自動的に移動させるオート操作を行うと、(b)のように、背もたれ部32がリクライニング動作によりQ方向へ移動する(座部31は移動しない)。このとき、背もたれ部32の傾斜角度が一定以上であると、破線bで示すように、移動中の背もたれ部32が荷物Wに当たる。このため、背もたれ部32がそれ以上移動できなくなって、両シート30、40の間に荷物Wが挟み込まれた状態となる。Y1は、挟み込みが生じたときの背もたれ部32の位置を示している。この挟み込みが検出されると、モータは(b)の状態でいったん停止した後、逆転する。このため、背もたれ部32は挟み込み位置Y1から反転し、(c)のように、Q方向と逆のQ’方向へ移動する。これによってシート30、40の間隔が広がり、荷物Wの挟み込みが解消される。
【0010】
しかしながら、
図8の場合において、反転後の座部31の移動量が大きいと、
図10に示すように、座部31の挟み込み位置X1から停止位置X4までの移動距離Cが長くなり、破線cで示すように、前席の乗員50の脚がダッシュボード71と座部31との間に挟まれるという事態が発生する。
【0011】
また、
図9の場合においても、反転後の背もたれ部32の移動量が大きいと、
図11に示すように、背もたれ部32の挟み込み位置Y1から停止位置Y4までの移動角度θcが大きくなり、破線dで示すように、前席の乗員50がステアリング72と背もたれ部32との間に挟まれるという事態が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】韓国特許公開第10-2020-0065312号
【特許文献2】韓国特許公開第10-2020-0065302号
【特許文献3】韓国特許公開第10-2013-0039104号
【特許文献4】中国特許公開第109278594号
【特許文献5】特開2016-129449号公報
【特許文献6】特開2007-131138号公報
【特許文献7】特開2004-210159号公報
【特許文献8】特開2021-95085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題は、電動式シートによる挟み込みが発生した場合に、シートの反転動作によって乗員の安全が脅かされるのを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係るシート制御装置は、所定の操作に基づいて目標位置まで自動的に移動する電動式シートの制御装置であって、シートの動作を制御する制御部と、シートの移動中に発生した物体の挟み込みを検出する挟み込み検出部と、シートに乗員が着座しているか否かを検出する着座検出部とを備えている。制御部は、 挟み込み検出部が挟み込みを検出し、かつ、着座検出部が乗員の着座を検出しなかった場合は、シートを所定量だけ逆方向へ移動させる。また、制御部は、挟み込み検出部が挟み込みを検出し、かつ、着座検出部が乗員の着座を検出した場合は、シートを上記所定量より小さい量だけ逆方向へ移動させる。
【0015】
このようにすれば、シートによる挟み込みが検出された場合に、シートに乗員が着座しておれば、シートの逆方向への移動量は、乗員が着座していない場合に比べて小さくなる。このため、シートの反転動作によって、シートに着座している乗員に新たな挟み込み(
図10、
図11)が発生する事態を回避でき、乗員の安全が確保される。
【0016】
本発明の第1の制御態様として、シートに備わる前後方向に直進が可能な座部の動作を、第1制御部により制御する場合が考えられる。この場合、第1制御部は、挟み込み検出部が挟み込みを検出し、かつ、着座検出部が乗員の着座を検出しなかった場合に、座部を所定距離だけ逆方向へ移動させる。また、第1制御部は、挟み込み検出部が挟み込みを検出し、かつ、着座検出部が乗員の着座を検出した場合に、座部を上記所定距離より小さい距離だけ逆方向へ移動させる。
【0017】
本発明による第2の制御態様として、シートに備わる前後方向に傾斜が可能な背もたれ部の動作を、第2制御部により制御する場合が考えられる。この場合、第2制御部は、挟み込み検出部が挟み込みを検出し、かつ、着座検出部が乗員の着座を検出しなかった場合に、背もたれ部を所定角度だけ逆方向へ移動させる。また、第2制御部は、挟み込み検出部が挟み込みを検出し、かつ、着座検出部が乗員の着座を検出した場合に、背もたれ部を上記所定角度より小さい角度だけ逆方向へ移動させる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、挟み込みが検出された場合に、乗員が着座しておればシートの逆方向への移動量が制限されるので、シートの反転動作によって乗員の安全が脅かされるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明のシート制御装置を備えた電動シートシステムのブロック図である。
【
図2】第1実施形態における前席着座なしの場合の動作を示した図である。
【
図3】第1実施形態における前席着座ありの場合の動作を示した図である。
【
図4】第1実施形態の制御手順を示したフローチャートである。
【
図5】第2実施形態における前席着座なしの場合の動作を示した図である。
【
図6】第2実施形態における前席着座ありの場合の動作を示した図である。
【
図7】第2実施形態の制御手順を示したフローチャートである。
【
図8】座部の移動による挟み込みを説明する図である。
【
図9】背もたれ部の移動による挟み込みを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態につき、図面を参照しながら説明する。図面を通して、同一の部分または対応する部分には、同一符号を付してある。以下では、車両に搭載されるシート制御装置を例に挙げる。
【0021】
図1は、本発明によるシート制御装置2と、これを用いた電動シートシステム100の一例を示している。電動シートシステム100は、たとえば自動四輪車のような車両に搭載されている。電動シートシステム100には、スライド操作部1a、リクライニング操作部1b、シート制御装置2、第1モータ駆動回路3a、第2モータ駆動回路3b、第1モータ電流検出部4a、第2モータ電流検出部4b、第1モータ回転数検出部5a、第2モータ回転数検出部5b、第1モータ6a、第2モータ6b、スライド機構7、リクライニング機構8、着座センサ9、およびシート30が備わっている。シート30は、モータ6a、6bによって駆動される電動式のシートである。
【0022】
スライド操作部1aには、2つのスイッチ11a、12aが設けられている。第1スイッチ11aは、シート30の座部31をα方向の目標位置まで自動でスライド動作させる際に操作する、オート駆動用のスイッチである。第2スイッチ12aは、座部31をα方向の任意の位置まで手動でスライド動作させる際に操作する、マニュアル駆動用のスイッチである。
【0023】
リクライニング操作部1bにも、2つのスイッチ11b、12bが設けられている。第1スイッチ11bは、シート30の背もたれ部32をβ方向の目標位置まで自動でリクライニング動作させる際に操作する、オート駆動用のスイッチである。第2スイッチ12bは、背もたれ部32をβ方向の任意の位置まで手動でリクライニング動作させる際に操作する、マニュアル駆動用のスイッチである。
【0024】
シート制御装置2は、第1制御部21a、第2制御部21b、挟み込み検出部22、着座検出部23、シート移動量算出部24、および目標位置記憶部25を備えている。
【0025】
第1制御部21aは、スライド操作部1aの各スイッチ11a、12aの操作状態、挟み込み検出部22の検出結果、着座検出部23の検出結果、およびシート移動量算出部24で算出された座部31の移動量などに基づいて、第1モータ6aの回転を制御するための制御信号を第1モータ駆動回路3aへ出力する。
【0026】
第2制御部21bは、リクライニング操作部1bの各スイッチ11b、12bの操作状態、挟み込み検出部22の検出結果、着座検出部23の検出結果、およびシート移動量算出部24で算出された背もたれ部32の移動量などに基づいて、第2モータ6bの回転を制御するための制御信号を第2モータ駆動回路3bへ出力する。
【0027】
挟み込み検出部22は、電流検出部4a、4bでそれぞれ検出された、第2モータ6a、6bの電流に基づいて、シート30による物体の挟み込みを検出する。モータ電流に基づく挟み込み検出の詳細については、よく知られているので説明を省略する。
【0028】
着座検出部23は、着座センサ9の検出信号に基づいて、シート30に乗員が着座しているか否かを検出する。
【0029】
シート移動量算出部24は、モータ回転数検出部5a、5bでそれぞれ検出された、モータ6a、6bの回転数に基づいて、座部31と背もたれ部32の各移動量を算出する。座部31の移動量は距離であり、背もたれ部32の移動量は角度である。モータ回転数検出部5a、5bは、たとえば、モータ6a、6bの回転と同期してパルス信号を出力する回転センサから構成されている。
【0030】
目標位置記憶部25には、各操作部1a、1bの第1スイッチ11a、11bによりシート30がオート駆動される場合の、目標位置が設定されている。各操作部1a、1bの第2スイッチ12a、12bを操作して、座部31や背もたれ部32の位置を好みの位置に調整した後、図示しない設定スイッチを操作することによって、当該位置が目標位置として目標位置記憶部25に記憶される。
【0031】
なお、シート制御装置2はマイクロコンピュータから構成されており、第1制御部21a、第2制御部21b、挟み込み検出部22、着座検出部23、およびシート移動量算出部24のそれぞれの機能は、実際にはソフトウェアによって実現されるが、ここでは便宜上、ハードウェアのブロックとして図示している。
【0032】
第1モータ駆動回路3aは、第1モータ6aを回転させるための駆動電圧を生成し、これを第1モータ6aへ供給する。第1モータ6aは、この駆動電圧により回転し、スライド機構7を介してシート30の座部31をα方向にスライド動作させる。スライド機構7は、第1モータ6aと座部31に連結されていて、第1モータ6aの回転運動を直線運動に変換する。
【0033】
第2モータ駆動回路3bは、第2モータ6bを回転させるための駆動電圧を生成し、これを第2モータ6bへ供給する。第2モータ6bは、この駆動電圧により回転し、リクライニング機構8を介してシート30の背もたれ部32をβ方向にリクライニング動作させる。リクライニング機構8は、第2モータ6bと背もたれ部32に連結されていて、第2モータ6bの回転をギア等を介して背もたれ部32へ伝達する。着座センサ9は、たとえば、シート30の座部31に設けられた圧力センサから構成され、乗員の着座の有無に応じた検出信号を出力する。
【0034】
次に、シート30の移動による挟み込みが発生した場合の動作について説明する。
図2~
図4は、第1実施形態の動作であって、座部31の移動によって挟み込みが発生した場合の動作を示している。
図5~
図7は、第2実施形態の動作であって、背もたれ部32の移動によって挟み込みが発生した場合の動作を示している。
【0035】
まず、第1実施形態の動作について説明する。
図2は、座部31による挟み込み発生時に、シート30に乗員が着座していない場合の動作である。
【0036】
図2の(a)は、動作前の状態(すなわち挟み込みが発生する前の状態)であって、乗員の着座のない前席のシート30は、後席のシート40から一定距離を隔てた位置にある。この状態で、ドアの外あるいは助手席にいる乗員によって、スライド操作部1aの第1スイッチ11aが操作されると、(b)のように、座部31が、スライド動作により目標位置に向ってP方向へ移動する。このとき、背もたれ部32も座部31と連動して移動する。そして、目標位置が後席のシート40に接近していて、座部31の移動距離が長くなると、破線aで示すように、後席の乗員60の脚が両シート30、40の間に挟み込まれた状態となる。X1は、挟み込みが生じたときの座部31の位置を示している(
図8と同じ)。
【0037】
この挟み込みが挟み込み検出部22によって検出されると、第1制御部21aは、第1モータ駆動回路3aへ停止指令信号を出力して、スライド動作用の第1モータ6aをいったん停止させる。その結果、座部31は、
図2の(b)の挟み込み位置X1でいったん停止する。
【0038】
その後、第1制御部21aは、第1モータ駆動回路3aへ逆転指令信号を出力して、第1モータ6aを逆転させる。このため、座部31は、
図2の(b)の挟み込み位置X1から反転し、(c)のように、P方向と逆のP’方向へ所定距離Aだけ移動し、停止位置X2で停止する。これによってシート30、40の間隔が広がり、乗員60の脚の挟み込みが解消される。
【0039】
図3は、座部31による挟み込み発生時に、シート30に乗員が着座している場合の動作である。
【0040】
図3の(a)は、動作前の状態であって、シート30に乗員50が着座している点を除いて、
図2の(a)と同じである。また、
図3の(b)は挟み込みが発生した状態であって、この場合も、シート30に乗員50が着座している点を除いて、
図2の(b)と同じである。
【0041】
挟み込み検出部22によって挟み込みが検出されると、
図2の場合と同様に、座部31は、
図3の(b)の挟み込み位置X1でいったん停止し、その後(c)のように反転して、P’方向へ移動する。このとき、座部31は、挟み込み位置X1から、
図2の(c)に示した距離Aよりも短い距離Bだけ移動し、停止位置X3で停止する。これによってシート30、40の間隔が広がり、乗員60の脚の挟み込みが解消される。
【0042】
ここで、距離Bは、両シート30、40の間に、後席の乗員60の移動や降車に支障がない程度の空間が形成され、かつ、前席の乗員50がダッシュボード71やステアリング72に衝突しないような距離に選定するのが好ましい。距離Bをこのように選定することで、距離Bが短くても(B<A)後席の乗員60の移動や降車に支障が生じず、また、
図10のような前席の乗員50の挟み込みが新たに発生するのを回避することができる。
【0043】
図4は、上述した第1実施形態における、シート制御装置2の第1制御部21aによる制御手順を示したフローチャートである。
【0044】
ステップS1で、スライド操作部1aの第1スイッチ11aが操作されると、ステップS2で、挟み込み検出部22による挟み込み検出の機能が起動される。続くステップS3では、第1制御部21aの制御の下で、第1モータ駆動回路3aが動作して第1モータ6aが回転し、前席のシート30の座部31を目標位置まで移動させるオート駆動が行われる。
【0045】
その後、ステップS4で、座部31のスライド動作による挟み込みが、挟み込み検出部22により検出されたか否かを判定する。挟み込みが検出されない場合は、ステップS11へ移行して、座部31が目標位置まで移動したか否かを判定し、目標位置まで移動してなければ、ステップS3へ戻ってオート駆動が継続される。そして、座部31が目標位置まで移動すると、ステップS10へ移行して、第1モータ6aが停止し、座部31も停止する。
【0046】
一方、ステップS4において、座部31による挟み込みが検出された場合は、ステップS5へ進んで、第1モータ6aを一時的に停止させ、座部31をいったん停止状態にする。続いてステップS6において、第1モータ6aを逆転させ、座部31の反転動作、すなわち
図2および
図3のP’方向への移動を開始する。
【0047】
次に、ステップS7において、着座検出部23の検出結果に基づき、前席のシート30に乗員50が着座しているか否かを判定する。判定の結果、シート30に乗員50が着座していない場合は、ステップS8へ進んで、座部31を前方(P’方向)へ距離Aだけ移動させる(
図2(c)参照)。そして、この移動が終わるとステップS10に進み、第1モータ6aが停止して、座部31も停止する。
【0048】
また、ステップS7の判定の結果、シート30に乗員50が着座している場合は、ステップS9へ進んで、座部31を前方(P’方向)へ距離Bだけ移動させる(
図3(c)参照)。そして、この移動が終わるとステップS10に進み、第1モータ6aが停止して、座部31も停止する。
【0049】
以上のように、第1実施形態においては、座部31による挟み込みが検出された場合に、乗員50の着座がなければ、座部31の反転移動量(距離A)を大きくし、乗員50の着座があれば、座部31の反転移動量(距離B)を小さくしている。このため、前席のシート30に乗員50が着座していない場合は、座部31の反転によって、シート30とシート40との間に十分なスペースが確保されるので、後席の乗員60の移動や降車が容易となる。一方、前席のシート30に乗員50が着座している場合は、座部31が反転してもその移動距離が短いので、
図10のような前席での挟み込みが発生する事態を回避でき、乗員50の安全が確保される。
【0050】
次に、第2実施形態の動作について説明する。
図5は、背もたれ部32による挟み込み発生時に、シート30に乗員が着座していない場合の動作である。
【0051】
図5の(a)は、動作前の状態(すなわち挟み込みが発生する前の状態)であって、乗員の着座のない前席のシート30は、後席のシート40から一定距離を隔てた位置にある。シート30とシート40との間には、荷物Wが置かれている。この状態で、ドアの外あるいは助手席にいる乗員によって、リクライニング操作部1bの第1スイッチ11bが操作されると、(b)のように、背もたれ部32が、リクライニング動作により目標位置に向ってQ方向へ移動する。このとき、座部31は移動しない。そして、背もたれ部32の目標位置までの傾斜角度が大きいと、破線bで示すように、移動中の背もたれ部32が荷物Wに当って、荷物Wが両シート30、40の間に挟み込まれた状態となる。Y1は、挟み込みが生じたときの座部31の位置を示している(
図9と同じ)。
【0052】
この挟み込みが挟み込み検出部22によって検出されると、第2制御部21bは、第2モータ駆動回路3bへ停止指令信号を出力して、リクライニング動作用の第2モータ6bをいったん停止させる。その結果、背もたれ部32は、
図5の(b)の挟み込み位置Y1でいったん停止する。
【0053】
その後、第2制御部21bは、第2モータ駆動回路3bへ逆転指令信号を出力して、第2モータ6bを逆転させる。このため、背もたれ部32は、
図5の(b)の挟み込み位置Y1から反転し、(c)のように、Q方向と逆のQ’方向へ所定角度θaだけ移動し、停止位置Y2で停止する。これによってシート30、40の間隔が広がり、荷物Wの挟み込みが解消される。
【0054】
図6は、背もたれ部32による挟み込み発生時に、シート30に乗員が着座している場合の動作である。
【0055】
図6の(a)は、動作前の状態であって、シート30に乗員50が着座している点を除いて、
図5の(a)と同じである。また、
図6の(b)は挟み込みが発生した状態であって、この場合も、シート30に乗員50が着座している点を除いて、
図5の(b)と同じである。
【0056】
挟み込み検出部22によって挟み込みが検出されると、
図5の場合と同様に、背もたれ部32は、
図6の(b)の挟み込み位置Y1でいったん停止し、その後(c)のように反転して、Q’方向へ移動する。この場合、背もたれ部32は、挟み込み位置Y1から、
図5の(c)に示した角度θaよりも小さい角度θbだけ移動し、停止位置Y3で停止する。これによってシート30、40の間隔が広がり、荷物Wの挟み込みが解消される。
【0057】
ここで、角度θbは、両シート30、40の間に、荷物Wの移動や取り出しに支障がない程度の空間が形成され、かつ、前席の乗員50がダッシュボード71やステアリング72に衝突しないような角度に選定するのが好ましい。角度θbをこのように選定することで、角度θbが小さくても(θb<θa)荷物Wの移動や取り出しに支障が生じず、また、
図11のような前席の乗員50の挟み込みが新たに発生するのを回避することができる。
【0058】
図7は、上述した第2実施形態における、シート制御装置2の第2制御部21bによる制御手順を示したフローチャートである。
【0059】
ステップS21で、リクライニング操作部1bの第1スイッチ11bが操作されると、ステップS22で、挟み込み検出部22による挟み込み検出の機能が起動される。続くステップS23では、第2制御部21bの制御の下で、第2モータ駆動回路3bが動作して第2モータ6bが回転し、前席のシート30の背もたれ部32を目標位置まで移動させるオート駆動が行われる。
【0060】
その後、ステップS24で、背もたれ部32のリクライニング動作による挟み込みが、挟み込み検出部22により検出されたか否かを判定する。挟み込みが検出されない場合は、ステップS31へ移行して、背もたれ部32が目標位置まで移動したか否かを判定し、目標位置まで移動してなければ、ステップS23へ戻ってオート駆動が継続される。そして、背もたれ部32が目標位置まで移動すると、ステップS30へ移行して、第2モータ6bが停止し、背もたれ部32も停止する。
【0061】
一方、ステップS24において、背もたれ部32による挟み込みが検出された場合は、ステップS25へ進んで、第2モータ6bを一時的に停止させ、背もたれ部32をいったん停止状態にする。続いてステップS26において、第2モータ6bを逆転させ、背もたれ部32の反転動作、すなわち
図5および
図6のQ’方向への移動を開始する。
【0062】
次に、ステップS27において、着座検出部23の検出結果に基づき、前席のシート30に乗員50が着座しているか否かを判定する。判定の結果、シート30に乗員50が着座していない場合は、ステップS28へ進んで、背もたれ部32を前方(Q’方向)へ角度θaだけ移動させる(
図5(c)参照)。そして、この移動が終わるとステップS30に進み、第2モータ6bが停止して、背もたれ部32も停止する。
【0063】
また、ステップS27の判定の結果、シート30に乗員50が着座している場合は、ステップS29へ進んで、背もたれ部32を前方(Q’方向)へ角度θbだけ移動させる(
図6(c)参照)。そして、この移動が終わるとステップS30に進み、第2モータ6bが停止して、背もたれ部32も停止する。
【0064】
以上のように、第2実施形態においては、背もたれ部32による挟み込みが検出された場合に、乗員50の着座がなければ、背もたれ部32の反転移動量(角度θa)を大きくし、乗員50の着座があれば、背もたれ部32の反転移動量(角度θb)を小さくしている。このため、前席のシート30に乗員50が着座していない場合は、背もたれ部32の反転によって、シート30とシート40との間に十分なスペースが確保されるので、荷物Wの移動や取り出しが容易となる。一方、前席のシート30に乗員50が着座している場合は、背もたれ部32が反転してもその移動角度が小さいので、
図11のような前席での挟み込みが発生する事態を回避でき、乗員50の安全が確保される。
【0065】
本発明では、以上述べた実施形態以外にも、以下のような種々の実施形態を採用することができる。
【0066】
前記の実施形態では、座部31のスライド動作による挟み込みが発生した場合と、背もたれ部32のリクライニング動作による挟み込みが発生した場合とを分けて説明したが、本発明は、座部31のスライド動作と背もたれ部32のリクライニング動作とが同時に行われて挟み込みが発生した場合にも適用することができる。
【0067】
前記の実施形態では、前席のシート30と後席のシート40との間で挟み込みが発生した場合を例に挙げたが、本発明はこれに限定されない。たとえば、前席と中間席と後席の3列のシートを備えた車両において、前席と中間席、あるいは中間席と後席との間で挟み込みが発生した場合にも、本発明を適用することができる。また、前席は運転席に限らず、助手席であってもよい。
【0068】
前記の実施形態では、
図2および
図3において、後席の乗員60の脚の挟み込みを例に挙げたが、挟み込みの対象は、
図5のような荷物Wであってもよい。また逆に、
図5および
図6において、挟み込みの対象は、
図2のような後席の乗員60の脚であってもよい。
【0069】
前記の実施形態では、着座センサ9に圧力センサを用いた例を挙げたが、本発明はこれに限定されない。たとえば、乗員の健康状態を監視するためにシート30に設けられた心拍センサや血圧センサなどを、着座センサ9として用いてもよい。また、他の手段として、車内に設置された監視カメラの撮影画像に基づいて、乗員の着座有無を検出してもよい。
【0070】
前記の実施形態では、モータ電流検出部4a、4bで検出されたモータ電流に基づいて挟み込みを検出したが、これに代えて、モータ回転数検出部5a、5bで検出されたモータ6a、6bの回転数に基づいて、挟み込みを検出してもよい。
【0071】
前記の実施形態では、
図1において、モータ駆動回路3a、3bがシート制御装置2の外部に設けられているが、これらのモータ駆動回路3a、3bをシート制御装置2に含めてもよい。また、モータ電流検出部4a、4bやモータ回転数検出部5a、5bや着座センサ9なども、シート制御装置2に含めてもよい。
【0072】
前記の実施形態では、車両に搭載されるシート制御装置を例に挙げたが、本発明は、車両以外の分野で用いられるシート制御装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0073】
1a スライド操作部
1b リクライニング操作部
2 シート制御装置
21a 第1制御部
21b 第2制御部
22 挟み込み検出部
23 着座検出部
24 シート移動量算出部
25 目標位置記憶部
3a 第1モータ駆動回路
3b 第2モータ駆動回路
4a 第1モータ電流検出部
4b 第2モータ電流検出部
5a 第1モータ回転数検出部
5b 第2モータ回転数検出部
6a 第1モータ
6b 第2モータ
7 スライド機構
8 リクライニング機構
9 着座センサ
30 シート
31 座部
32 背もたれ部
50 乗員
A 所定距離
B 所定距離より小さい距離
θa 所定角度
θb 所定角度より小さい角度