(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102523
(43)【公開日】2023-07-25
(54)【発明の名称】監視システム
(51)【国際特許分類】
H04N 7/18 20060101AFI20230718BHJP
H04N 23/66 20230101ALI20230718BHJP
H04N 23/60 20230101ALI20230718BHJP
【FI】
H04N7/18 D
H04N7/18 E
H04N5/232 030
H04N5/232
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022003055
(22)【出願日】2022-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100093104
【弁理士】
【氏名又は名称】船津 暢宏
(72)【発明者】
【氏名】林 豊彦
【テーマコード(参考)】
5C054
5C122
【Fターム(参考)】
5C054CA04
5C054CC02
5C054CF06
5C054CF07
5C054CG02
5C054CG07
5C054EA01
5C054EA03
5C054EA05
5C054FC12
5C054FD03
5C054FE12
5C054FE28
5C054FF02
5C054FF03
5C054FF06
5C054HA19
5C054HA31
5C122DA11
5C122EA57
5C122EA63
5C122EA66
5C122FA18
5C122FH04
5C122FK40
5C122FK41
5C122GC02
5C122GC14
5C122HA82
5C122HA88
5C122HB01
(57)【要約】
【課題】 LiDAR等のローカル座標系の位置情報と監視カメラのローカル座標系の位置情報を自動的に収集して、監視空間全体のグローバル座標系に展開することで、設置工事の際のLiDAR等と監視カメラの位置情報の登録を自動化し、システム運用までの調整作業を低減・短縮できる監視システムを提供する。
【解決手段】 統合管理サーバ4は、複数のLiDAR1の緯度/経度の情報からグローバル座標系を生成し、各LiDAR1で生成された各々のローカル座標系を検出された監視カメラ2を含む検出物が重なるようにローカル座標系の合成を行い、更に合成したローカル座標系を生成したグローバル座標系に展開し、当該グローバル座標系を基に複数の監視カメラ2の位置を特定し、監視カメラ2を制御する監視システムである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のリモートセンシング装置と、複数の監視カメラと、監視に関する処理を行う統合管理サーバとが無線ネットワークで接続される監視システムであって、
前記統合管理サーバは、前記リモートセンシング装置の位置情報からグローバル座標系を生成し、前記各リモートセンシング装置が検出した前記監視カメラを含む検出物に対するローカル座標系を各々取得し、前記検出物が重なるように前記各ローカル座標系を合成し、当該合成したローカル座標系を前記グローバル座標系に展開することを特徴とする監視システム。
【請求項2】
統合管理サーバは、各々取得したローカル座標系について、検出された検出物の位置座標がずれている場合には、リモートセンシング装置からの距離の平均値を算出し、当該平均値と検出された距離との差分により前記位置座標のずれ量を補正して合成したローカル座標系をグローバル座標系に展開することを特徴とする請求項1記載の監視システム。
【請求項3】
統合管理サーバは、周期的に合成したローカル座標系をグローバル座標系に展開する処理を繰り返すことを特徴とする請求項1又は2記載の監視システム。
【請求項4】
統合管理サーバは、グローバル座標系に示される検出物の位置座標に監視カメラを指向させるよう制御することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の監視システム。
【請求項5】
統合管理サーバは、リモートセンシング装置で検出された検出物の点群データを含む矩形をグローバル座標系で形成し、前記矩形の中心座標に監視カメラが指向した場合に、前記監視カメラの画像を表示する端末装置に、当該画像中に前記検知物と対応する前記矩形をオーバーレイ表示させることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載の監視システム。
【請求項6】
統合管理サーバは、発報における正報の場合のリモートセンシング装置のデータを蓄積し、当該データを用いて機械学習し、検知に当該機械学習の結果を用いることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか記載の監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数台のLiDAR(Light Detection And Ranging/リモートセンシング装置)と可動式監視カメラを用いた監視システムに係り、特に、システム構築に必要なパラメータを容易に設定できる監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
[従来の技術]
従来の監視システムは、LiDAR等のセンサの位置情報と監視カメラの位置情報を設置工事の際に手動でシステム側にパラメータの登録する必要があり、運用開始まで時間を要していた。
【0003】
また、各種センサと監視カメラの連動システムは存在するが、LiDAR等が検知した検知対象物と監視カメラの映像を合成表示するシステムはなかった。
【0004】
[関連技術]
尚、関連する先行技術として、特許第6823211号公報「複数のセンサを含む自律車両の位置特定のための方法」(特許文献1)がある。
特許文献1には、自動運転車について自動運転のために複数のセンサを使用して地上車両の位置を特定することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、従来の監視システムでは、設置工事の際に、LiDAR等のセンサの位置情報と監視カメラの位置情報を手動で登録しているため、システム運用開始まで多大な調整作業が発生し、設置工事からシステム運用開始まで時間とコストが掛かっていたという問題点があった。
【0007】
また、LiDAR等が検知した検知対象物と監視カメラの映像を合成表示するシステムがないため、監視対象物を監視映像の中にオーバーレイ表示できず、検知物を即座に把握ることができないという問題点があった。
【0008】
尚、特許文献1には、LiDAR等の位置情報と監視カメラの位置情報の登録を自動化し、LiDAR等が検知した監視対象物を監視カメラの監視映像にオーバーレイ表示する構成について記載がない。
【0009】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、LiDAR等のローカル座標系の位置情報と監視カメラのローカル座標系の位置情報を自動的に収集して、監視空間全体のグローバル座標系に展開することで、設置工事の際のLiDAR等と監視カメラの位置情報の登録を自動化し、システム運用までの調整作業を低減・短縮できる監視システムを提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、LiDAR等が検知した監視対象物を監視カメラの監視映像の中にオーバーレイ表示して、検知物を容易に把握することができる監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、複数のリモートセンシング装置と、複数の監視カメラと、監視に関する処理を行う統合管理サーバとが無線ネットワークで接続される監視システムであって、統合管理サーバが、リモートセンシング装置の位置情報からグローバル座標系を生成し、各リモートセンシング装置が検出した監視カメラを含む検出物に対するローカル座標系を各々取得し、検出物が重なるように各ローカル座標系を合成し、合成したローカル座標系をグローバル座標系に展開することを特徴とする。
【0012】
本発明は、上記監視システムにおいて、統合管理サーバが、各々取得したローカル座標系について、検出された検出物の位置座標がずれている場合には、リモートセンシング装置からの距離の平均値を算出し、当該平均値と検出された距離との差分により位置座標のずれ量を補正して合成したローカル座標系をグローバル座標系に展開することを特徴とする。
【0013】
本発明は、上記監視システムにおいて、統合管理サーバが、周期的に合成したローカル座標系をグローバル座標系に展開する処理を繰り返すことを特徴とする。
【0014】
本発明は、上記監視システムにおいて、統合管理サーバが、グローバル座標系に示される検出物の位置座標に監視カメラを指向させるよう制御することを特徴とする。
【0015】
本発明は、上記監視システムにおいて、統合管理サーバが、リモートセンシング装置で検出された検出物の点群データを含む矩形をグローバル座標系で形成し、矩形の中心座標に監視カメラが指向した場合に、監視カメラの画像を表示する端末装置に、当該画像中に検知物と対応する矩形をオーバーレイ表示させることを特徴とする。
【0016】
本発明は、上記監視システムにおいて、統合管理サーバが、発報における正報の場合のリモートセンシング装置のデータを蓄積し、当該データを用いて機械学習し、検知に当該機械学習の結果を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、複数のリモートセンシング装置と、複数の監視カメラと、監視に関する処理を行う統合管理サーバとが無線ネットワークで接続され、統合管理サーバが、リモートセンシング装置の位置情報からグローバル座標系を生成し、各リモートセンシング装置が検出した監視カメラを含む検出物に対するローカル座標系を各々取得し、検出物が重なるように各ローカル座標系を合成し、合成したローカル座標系をグローバル座標系に展開する監視システムとしているので、複数の監視カメラの位置を特定し、監視カメラの位置情報の登録を自動化できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図5】不審者を検知した際のグローバル座標系のイメージ図である。
【
図6】不審者を検知した際の検知画像のイメージ図である。
【
図7】検知枠を画像にオーバーレイ表示するための処理イメージ図である。
【
図8】グローバル座標系のXY平面のイメージ図である。
【
図9】グローバル座標系のXZ平面のイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る関しシステム(本システム)は、複数のリモートセンシング装置(LiDAR)の緯度/経度の情報からグローバル座標系を生成し、各LiDARで生成された各々のローカル座標系を検出された監視カメラを含む検出物が重なるようにローカル座標系の合成を行い、更に合成したローカル座標系を生成したグローバル座標系に展開し、当該グローバル座標系を基に複数の監視カメラの位置を特定し、当該監視カメラを制御するもので、監視カメラの位置情報の登録を自動化でき、検出物に対する監視カメラの制御も自動化できるものである。
【0020】
また、本システムは、LiDARで検出された検出物の点群データを含む矩形をグローバル座標系で形成し、矩形の中心座標に監視カメラが指向した場合に、監視カメラの画像を表示する端末装置に、当該画像中に検知物と対応する矩形をオーバーレイ表示するものであり、検知物の把握を容易にできるものである。
【0021】
[本システム:
図1]
本システムの構成について
図1を参照しながら説明する。
図1は、本システムの概略構成図である。
本システムは、
図1に示すように、センサとなる複数のリモートセンシング装置(LiDAR)1と、複数の可動式監視カメラ(監視カメラ)2と、無線ネットワーク3と、統合管理サーバ4と、操作端末5とを基本的に備えている。
【0022】
LiDAR1と監視カメラ2は、無線ネットワーク3に無線により接続している。
また、統合管理サーバ4と操作端末5は有線で無線ネットワーク3に接続している。
【0023】
ここで、本システムの前提条件を説明する。
LiDAR1は、監視空間において地面に対して水平に設置されるようになっている。
また、地面は水平で勾配がないものとする。
また、LiDAR1のセンシングにより形成された個別の座標系を「ローカル座標系」とし、統合管理サーバ4が監視空間全体として統合された座標系を「グローバル座標系」と記述する。
【0024】
[本システムの各部]
次に、本システムの各部について具体的に説明する。
[LiDAR1]
LiDAR1は、リモートセンシング装置で、レーザー発光器と光センサとを備え、レーザー発光器から発射(発光)されたレーザー光の反射光を光センサが受光して監視対象物(検出物)の方向と距離を検出し、統合管理サーバ4に送信する。そして、統合管理サーバ4は、検出された監視対象物の方向と距離、更に時刻情報に基づいて移動軌跡情報、移動速度情報、点群密度情報を取得する。この監視対象物の方向と距離が各LiDAR1のローカル座標系を生成するのに使用される。
【0025】
また、LiDAR1は、互いに検知範囲がオーバーラップするよう配置される。
また、LiDAR1は、GPS(Global Positioning System)機能を内蔵し、設置位置の緯度/経度の位置情報(緯度/経度情報)を、無線ネットワーク3を介して他のLiDAR1と統合管理サーバ4に送信する。
統合管理サーバ4は、収集した全てのLiDAR1の緯度/経度情報を元にグローバル座標系を生成することになる。
【0026】
更に、LiDAR1は、隣接するLiDAR1から照射されたレーザー光の方向と隣接するLiDAR1の緯度/経度情報からローカル座標における隣接するLiDAR1の位置情報(ローカル位置情報)を算出する。具体的算出方法は後述する。
【0027】
[監視カメラ2]
監視カメラ2は、可動式監視カメラであり、統合管理サーバ4からのパン/チルト/ズームの制御値を受信して、それらの制御値により検出物に指向する。検出物への指向制御については後述する。
【0028】
[無線ネットワーク3]
無線ネットワーク3は、第5世代(5G)等の無線通信を実現する通信ネットワークである。
無線ネットワーク3には、LiDAR1と監視カメラ2とが無線接続し、統合管理サーバ4と操作端末5とが有線接続する。
【0029】
[統合管理サーバ4]
本システムの統合管理サーバ4は、基本的には、グローバル座標系生成処理、ローカル座標系の統合処理、グローバル座標系展開(反映/変換)処理、検知処理、発報処理、学習処理等を行うようになっている。
尚、これら処理を複数の処理装置で分散させるようにしてもよい。
【0030】
統合管理サーバ4は、構成として制御部、記憶部、インタフェース部を備え、記憶部に記憶された処理プログラムが制御部で動作して上記各処理の機能を実現している。
また、記憶部には、ローカル座標系、グローバル座標系のデータを記憶しており、検知に関するデータ、監視カメラ2の制御のデータも記憶している。
インタフェース部は、統合管理サーバ4を無線ネットワーク3に接続するためのものである。
【0031】
[グローバル座標系生成処理]
統合管理サーバ4は、全てのLiDAR1の緯度/経度情報から監視空間全体のグローバル座標系を生成する。グローバル座標系の具体的な生成については後述する。
【0032】
[ローカル座標系統合処理]
また、統合管理サーバ4は、各LiDAR1がセンシングすることにより得られる隣接するLiDAR1や障害物、監視カメラ2の座標を各LiDAR1から取得し、それら座標がプロットされたローカル座標系を取得し、更にローカル座標系を合成する。ローカル座標系の具体的な合成については後述する。
【0033】
[グローバル座標系展開処理]
また、統合管理サーバ4は、合成したローカル座標系をグローバル座標系に展開(反映)する。当該グローバル座標系に監視カメラ2の位置座標が特定されるので、監視カメラ2の位置情報を統合管理サーバ4に自動で登録できるものである。グローバル座標系の具体的な生成・展開については後述する。
【0034】
[検知処理]
また、統合管理サーバ4は、LiDAR1で監視対象物が検知(検出)されると、検出された対象物の方向と距離の情報をLiDAR1から受信し、ローカル座標系での座標(位置)を特定し、更にグローバル座標系に展開してグローバル座標系における座標(位置)を特定し、当該座標の方向に監視カメラ2が指向するよう制御する。
【0035】
[発報処理]
また、統合管理サーバ4は、指向制御した監視カメラ2の撮影映像を操作端末5の表示部に表示し、注意喚起のために発報を行う。
そして、操作端末5で、監視員が発報された内容を確認して、「正報」又は「誤報」を入力し、その入力結果が統合管理サーバ4に送信される。
【0036】
[学習処理]
また、統合管理サーバ4は、操作端末5で入力された「正報」におけるLiDAR1のセンシングデータを記憶部に蓄積しておき、そのデータを教師データとしてAI(Artificial Intelligence)に機械学習させ、学習済AIモデルを用いて検知処理を行うようにする。これにより、「正報」として検知される精度を向上させることができる。
【0037】
[操作端末5]
操作端末5は、指向制御された監視カメラ2の撮影映像を統合管理サーバ4からの制御により表示部に表示して、スピーカから発報を行い、入力部から監視員の「正報」又は「誤報」の入力があると、統合管理サーバ4に「正報」又は「誤報」の情報を送信する端末装置である。
【0038】
[本システムの処理概略:
図2]
次に、本システムにおける処理の概略について
図2を参照しながら説明する。
図2は、本システムの処理概略のフロー図である。
本システムの統合管理サーバ4は、
図2に示すように、無線ネットワーク3に接続するLiDAR1の緯度/経度情報からグローバル座標系を生成する(S1)。
【0039】
次に、統合管理サーバ4は、各LiDAR1のセンシングによる測定結果からそれぞれのローカル座標系を取得する(S2)。
更に、統合管理サーバ4は、各ローカル座標系を合成する(S3)。この合成の際に、誤差の補正を行う。
そして、合成されたローカル座標系を生成されたグローバル座標系に展開(反映/変換)する(S4)。
【0040】
また、LiDAR1で新たな検出物が検出(検知)されると、統合管理サーバ4は、検知処理を行う(S5)。
具体的には、LiDAR1が不審事象(不審者又は不審物等)を検知すると、当該不審事象のローカル座標系での検知座標を統合管理サーバ4に送信し、統合管理サーバ4は、ローカル座標系の検知座標を受信する。
【0041】
次に、統合管理サーバ4は、不審事象に対する監視カメラ2の制御を行う(S6)。
具体的には、統合管理サーバ4は、グローバル座標系における監視カメラ2の位置座標とローカル座標系の検知座標から距離と方向を算出し、監視カメラ2を不審事象へ指向するよう制御する。
【0042】
そして、統合管理サーバ4は、注意喚起のため操作端末5に発報させ、操作端末5に指向制御された監視カメラ2の撮影画像が表示出力させる(S7)。
ここで、操作端末5では、監視員は発報事象が不審事象であった場合は「正報」と登録し、発報事象が草木等であった場合は「誤報」と登録し、それら情報が統合管理サーバ4に送信される。
【0043】
更に、統合管理サーバ4は、発報毎に移動軌跡情報、移動速度情報、点群密度情報を紐付けて記憶部に記憶し、「正報」の場合のこれら情報が機械学習用の教師データとして記憶部に記憶する(S8)。
そして、これら教師データを、AIを用いて機械学習させ、不審事象のみを検知し、誤報を抑制して検知精度を向上させるようにする。
上記処理が終了すると、処理S2に戻って周期的に処理を繰り返す。
【0044】
[グローバル座標系:
図3]
次に、統合管理サーバ4で生成されるグローバル座標系について
図3を参照しながら説明する。
図3は、グローバル座標系のイメージ図である。
統合管理サーバ4は、LiDAR1から送信された緯度/経度情報から無線ネットワーク3に接続する全てのLiDAR1の緯度/経度の平均値を算出し、その平均値の座標点を原点(中心点)とするグローバル座標系を生成する。
【0045】
図3において、LiDAR1a~1dの緯度/経度情報からグローバル座標系の中心点が求められ、グローバル座標系のメッシュが形成され、当該メッシュ上にLiDAR1a~1dの位置が設定される。メッシュのサイズは、任意であり、
図3では、監視カメラ2の位置が示されているが、これはローカル座標系の合成後に表示されるものである。
【0046】
[ローカル座標系の合成]
そして、LiDAR1のレーザー照射範囲が正面180°とした場合、LiDAR1で検出された隣接するLiDAR1のレーザー照射方向からLiDAR1のローカル座標系の方向を認識し、重複して検出されたLiDAR1と障害物の位置座標が重なるようにローカル座標系を合成し、生成したグローバル座標系に展開(変換)する。この際に、監視カメラ2も障害物と同様に検出され、この位置情報もローカル座標系に設定され、更に、グローバル座標系に設定される。つまり、監視カメラ2の位置情報が自動で取得されたことになる。
尚、ローカル座標系の合成は、
図4を用いて説明する。
【0047】
[ローカル座標系:
図4]
次に、各LiDAR1で形成されるローカル座標系について
図4を参照しながら説明する。
図4は、ローカル座標系のイメージ図である。
図4(a)は、LiDAR1aがセンシングした結果のローカル座標系であり、
図4(b)は、LiDAR1bがセンシングした結果のローカル座標系を示している。
【0048】
図4(a)(b)を比較すると、障害物6の位置とセンシングした他方のLiDAR1の位置がずれている(一致していない)ことが分かる。これは、各LiDAR1で検知誤差が発生しているものである。そこで、統合管理サーバ4は、ローカル座標系を補正して合成する。
【0049】
[誤差の補正]
具体的には、それぞれのローカル座標系(
図4では2つのローカル座標系)で同時に検知された障害物6に対して、LiDAR1からの距離の平均値を算出する。
この平均値と検出された距離との差分を両座標系のずれ量(誤差)として、ローカル座標系を合成してグローバル座標系を生成する際にずれ量だけ補正して合成する。
【0050】
統合管理サーバ4は、LiDAR1、監視カメラ2や障害物6を含むグローバル座標系を背景データとして登録する。
統合管理サーバ4は、定周期で(周期的に)背景データに対する背景差分処理を行い、変化を検知した際に不審事象として発報する。また、障害物6等の固定物が時間変化で位置座標に変化が発生した場合、振動や経年変化等でLiDAR1の向きがずれてレーザー照射角が変化したものと見なし警報を上げる。
【0051】
[不審者検知のグローバル座標系:
図5]
図5は、不審者を検知した際のグローバル座標系のイメージ図である。
ここで、
図5は平面で記述しているが、実際は3次元座標であるため不審者の検知座標7はZ座標(高さ情報)を有する。統合管理サーバ4は、LiDAR1で検知された点群データを全て包括する矩形の中心座標を算出し、中心座標に対して監視カメラ2を制御して指向させる。
【0052】
監視カメラ2を不審者に向けて指向する技術としては、複数のセンサが不審者を検知し、制御装置が、複数のプリセット位置を予め登録し、複数のセンサから出力された位置座標に基づいて不審者の移動予測を行い、更に不審者の移動方向から不審者の顔の向きを算出して、センサによって検知された不審者の位置に対して監視カメラの視野角を変更することで追尾するものがある(特開2009-273006「監視装置及び監視システム」参照)。
上記以外の技術としては、特許第5161045号「監視システム及び監視方法」に記載がある。
【0053】
[不審者の検知画像:
図6]
図6は、不審者を検知した際の検知画像のイメージ図である。ここで、監視カメラ2で検知された検知画像21内に不審者の検知画像22が矩形で設定される。
中心座標が属する地面に対して垂直な平面の中で映像として映し出されている範囲が中心座標までの距離に対する可動式カメラの画角である。
【0054】
この画角の最小点が画角の左下の座標点であり、最大点が画角の右上の座標点となる。
統合管理サーバ4は、矩形の左下と右上の座補点と画角の左下と右上の座補点から画面全体における矩形の大きさと位置を算出して当該情報を操作端末5へ通知する。
操作端末5は、この矩形の位置情報を基に矩形を映像にオーバーレイ表示させる。
【0055】
[オーバーレイ表示:
図7~9]
次に、オーバーレイ表示について
図7~9を参照しながら説明する。
図7は、検知枠を画像にオーバーレイ表示するための処理イメージ図であり、
図8は、グローバル座標系のXY平面のイメージ図であり、
図9は、グローバル座標系のXZ平面のイメージ図である。
説明を簡略化するために監視カメラ2の位置をグローバル座標系の原点、検知枠中心のZ座標は「0」(ゼロ)とする。監視カメラ2は検知対象物(不審者)の位置(距離と方向)に応じて自動で指向するため検知対象物(不審者)は検知画面の中心に捉えられる。
【0056】
図7において、監視カメラ2が検知している検知画像21内に不審者と検知枠22が示されている。そして、検知画像21の左下の点211、検知画像21の右上の点212、検知枠22の左下の点221、検知枠22の右上の点222、水平画角の左端の点213、水平画角の右端の点214、垂直画角の下端の点215、垂直画角の上端の点216が示されている。
また、グローバル座標系のXY平面において、
図8では、監視カメラ2の水平画角(水平角度:θ
H)23が示され、グローバル座標系のXZ平面において、
図9では、監視カメラ2の垂直画角(水平角度:θ
V)24が示されている。
【0057】
不審者のX座標をLとすると、213~216の各点の座標(X,Y,Z)は以下となる。
213の座標(L,-Ltan(θH/2),0)
214の座標(L,Ltan(θH/2),0)
215の座標(L,0,-Ltan(θV/2))
216の座標(L,0,Ltan(θV/2))
【0058】
以上から211と212の座標は以下となる。
211の座標(L,-Ltan(θH/2),-Ltan(θV/2))
212の座標(L,Ltan(θH/2),Ltan(θV/2))
【0059】
以上から検知画像の各端の点に相当する座標が求められる。
次に検知枠22の221と222の点に相当する座標を求める。
LiDAR1で検知された不審者の点群座標を(X1,Y1,Z1)、(X2,Y2,Z2)、(X3,Y3,Z3)、・・・(Xn,Yn,Zn)とし、点群の中のX、Y、Zの絶対値の最大値をXmax 、Ymax、Zmaxとする。
【0060】
検知枠22をYZ平面(Xは固定)上の矩形とし、不審者に対して20%大きな矩形を検知枠22とした場合、221と222の座標(X,Y,Z)は以下となる。
221の座標(L,-1.2Ymax,-1.2Zmax)
222の座標(L,1.2Ymax,1.2Zmax)
【0061】
上記説明では検知対象物に対して検知枠に20%の余裕を持たせているが、LiDAR1による検知・捕捉能力と検知対象物の移動速度から余裕の程度はシステムに応じて決定される。
以上から検知画像21内の各点の座標値が求められ、画像の中に検知対象物(不審者)を包括する検知枠22を座標値に従ってオーバーレイ表示することができる。
【0062】
本システムによれば、LiDAR1や監視カメラ2の設置工事の際、検知に必要な設定や調整を手動で行う必要がなくなり工事期間を短縮、工事コストを削減することが可能となる。
また、運用の中で機械学習を行うことで運用期間と共に検知精度を向上させることが可能となる。
更に、LiDAR1が検知した検知対象物を操作端末5の表示部の監視映像の中にオーバーレイ表示することで発報時に検知物を即座に把握することが可能となる。
【0063】
[実施の形態の効果]
本システムによれば、統合管理サーバ4が、複数のLiDAR1の緯度/経度の情報からグローバル座標系を生成し、各LiDAR1で生成された各々のローカル座標系を検出された監視カメラ2を含む検出物が重なるようにローカル座標系の合成を行い、更に合成したローカル座標系を生成したグローバル座標系に展開し、当該グローバル座標系を基に複数の監視カメラ2の位置を特定し、監視カメラ2の指向を制御するようにしているので、監視カメラの位置情報の登録を自動化でき、検出物に対する監視カメラの制御も自動化できる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、LiDAR等のローカル座標系の位置情報と監視カメラのローカル座標系の位置情報を自動的に収集して、監視空間全体のグローバル座標系に展開することで、設置工事の際のLiDAR等と監視カメラの位置情報の登録を自動化し、システム運用までの調整作業を低減・短縮できる監視システムに好適である。
【符号の説明】
【0065】
1(1a~1d)…LiDAR、 2(2A,2B)…監視カメラ、 3…無線ネットワーク、 4…統合管理サーバ、 5…操作端末、 6…障害物、 7…検知画像、 21…検知画像、 22…検知枠、 23…水平画角(水平角度:θH)、 24…垂直画角(水平角度:θV)、 211…検知画像の左下の点、 212…検知画像の右上の点、 213…水平画角の左端の点、 214…水平画角の右端の点、 215…垂直画角の下端の点、 216…垂直画角の上端の点、 221…検知枠の左下の点、 222…検知枠の右上の点