(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102621
(43)【公開日】2023-07-25
(54)【発明の名称】車両用加飾品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C25D 13/00 20060101AFI20230718BHJP
C25D 13/06 20060101ALI20230718BHJP
C25D 1/00 20060101ALI20230718BHJP
B32B 15/04 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
C25D13/00 308C
C25D13/06 C
C25D1/00 371
B32B15/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022003222
(22)【出願日】2022-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(71)【出願人】
【識別番号】598007779
【氏名又は名称】鳥居工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】522015733
【氏名又は名称】株式会社GMT
(74)【代理人】
【識別番号】100147913
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 義敬
(74)【代理人】
【識別番号】100165423
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 雅久
(74)【代理人】
【識別番号】100091605
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100197284
【弁理士】
【氏名又は名称】下茂 力
(72)【発明者】
【氏名】横居 智也
(72)【発明者】
【氏名】吉田 和正
(72)【発明者】
【氏名】山中 正枝
(72)【発明者】
【氏名】中沢 嗣夫
(72)【発明者】
【氏名】奈須 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】谷中 善武
(72)【発明者】
【氏名】高萩 大輔
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AB16A
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100CC00B
4F100CC00C
4F100DD01A
4F100EH46B
4F100EH46C
4F100GB32
4F100HB21A
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】従来の車両用加飾品は、鋼材を用いることで、デザイン加工が難しく、製造コストを低減し難いという課題があった。
【解決手段】
本発明の車両用加飾品10は、ニッケル基材11と、ニッケル基材11の表面11Aに形成される第1の塗膜層12と、第1の塗膜層12の表面12Aに形成される第2の塗膜層13と、を有する。そして、ニッケル基材11は、第1及び第2の塗膜層12,13の膜厚よりも厚い板厚を有する。この構造により、ニッケル基材11は、車両用加飾品10の母材として機能を果たし、車両用加飾品10は、車両用部品として所望の剛性、耐久性及び使用感を満たすことが出来る。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のアウタパネルに貼り付けて使用される車両用加飾品であって、
ニッケル基材と、
前記ニッケル基材の表面に形成される第1の塗膜層と、
前記第1の塗膜層の表面に形成される第2の塗膜層と、を備え、
前記ニッケル基材の板厚は、前記第1の塗膜層の膜厚及び前記第2の塗膜層の膜厚よりも厚くなることを特徴とする車両用加飾品。
【請求項2】
前記ニッケル基材の前記表面には、凹凸形状による装飾が施されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用加飾品。
【請求項3】
前記第2の塗膜層の前記膜厚は、少なくとも40μm以上あることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用加飾品。
【請求項4】
電気鋳造法によりニッケル基材を形成する第1工程と、
前記ニッケル基材の表面にカチオン電着法により第1の塗膜層を形成する第2工程と、
前記第1の塗膜層の表面にスプレー塗装法により第2の塗膜層を形成する第3工程と、を有することを特徴とする車両用加飾品の製造方法。
【請求項5】
前記第1工程では、前記ニッケル基材の前記表面に凹凸形状による装飾を施すことを特徴とする請求項4に記載の車両用加飾品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気鋳造法により所望の板厚に形成されたニッケル基材を備えた車両用加飾品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来の自動車用部品に用いられる塗装ステンレス鋼部材が開示されている。塗装ステンレス鋼部材は、ステンレス鋼基材上にウッドストライクニッケルメッキ層を形成し、ウッドストライクニッケルメッキ層上にカチオン電着塗膜層を形成して、構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
塗装ステンレス鋼部材では、ステンレス鋼基材とカチオン塗膜層との間にウッドストライクニッケルメッキ層を形成することで、ステンレス鋼基材上に形成される強固な酸化被膜を除去し、また、再度酸化被膜が形成されることを防止する。そして、ウッドストライクニッケルメッキ層上にカチオン電着塗膜層を形成することで、薄膜塗装にて十分な塗装密着性及び耐食性を実現している。
【0005】
しかしながら、従来の自動車用部品では、ステンレス鋼基材が用いられることで、上述したように、ウッドストライクニッケルメッキ層の形成工程が必要となり、製造コストを低減し難いという課題がある。
【0006】
また、ステンレス鋼基材は、耐食性に優れるが、材質としての硬度が高く、切削加工やプレス加工等の装飾加工が難しいという課題がある。特に、ステンレス鋼基材の表面に細かい凹凸形状によるデザインを加工することが難しく、例えば、フェーエルリッドガーニッシュの様に、意匠面の狭い車両用部品に対して、凹凸形状によるデザインを施すことが難しい。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みて成されたものであり、電気鋳造法により所望の板厚に形成されたニッケル基材を備えた車両用加飾品およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態である車両用加飾品では、車両のアウタパネルに貼り付けて使用される車両用加飾品であって、ニッケル基材と、前記ニッケル基材の表面に形成される第1の塗膜層と、前記第1の塗膜層の表面に形成される第2の塗膜層と、を備え、前記ニッケル基材の板厚は、前記第1の塗膜層の膜厚及び前記第2の塗膜層の膜厚よりも厚くなることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の一実施形態である車両用加飾品の製造方法では、電気鋳造法によりニッケル基材を形成する第1工程と、前記ニッケル基材の表面にカチオン電着法により第1の塗膜層を形成する第2工程と、前記第1の塗膜層の表面にスプレー塗装法により第2の塗膜層を形成する第3工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一実施形態である車両用加飾品は、ニッケル基材と、ニッケル基材の表面に形成される第1の塗膜層と、第1の塗膜層の表面に形成される第2の塗膜層と、を有する。そして、ニッケル基材の板厚は、第1及び第2の塗膜層の膜厚よりも厚くなる。この構造により、ニッケル基材は、車両用加飾品の母材として機能を果たし、車両用加飾品は、車両用部品として所望の剛性、耐久性及び使用感を満たすことが出来る。
【0011】
また、本発明の一実施形態である車両用加飾品の製造方法では、電気鋳造法によりニッケル基材を形成する第1工程と、ニッケル基材の表面にカチオン電着法により第1の塗膜層を形成する第2工程と、第1の塗膜層の表面にスプレー塗装法により第2の塗膜層を形成する第3工程と、を有する。この製造方法により、ニッケル基材の板厚を車両用加飾品の母材として機能を果たす厚みに形成すると共に、ニッケル基材の表面に微細な凹凸形状のデザインを施すことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態である車両用加飾品を説明する斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態である車両用加飾品を説明する断面図である。
【
図3】本発明の他の実施形態である車両用加飾品の製造方法を説明する工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
最初に、本発明の一実施形態に係る車両用加飾品10について図面に基づき詳細に説明する。尚、本実施形態の説明の際には、同一の部材には原則として同一の符番を用い、繰り返しの説明は省略する。
【0014】
図1は、本実施形態の車両用加飾品10を説明する斜視図である。
図2は、本実施形態の車両用加飾品10を説明する断面図である。
【0015】
図1に示す如く、車両用加飾品10は、車両のアウタパネルに両面テープ等を介して貼り付けて使用され、車両の意匠面を形成する部材である。車両用加飾品10は、例えば、社名や車種名等の文字等を含むデザインが立体的に形成されたシート状の部材である。そして、車両用加飾品10は、例えば、車両のフューエルフィラーリッド装置の給油フラップの表面に貼り付けられ、車両の意匠面として用いられる。
【0016】
図2では、
図1に示す車両用加飾品10のA-A線方向の断面を示す。車両用加飾品10は、主に、ニッケル基材11と、ニッケル基材11の表面11Aに形成される第1の塗膜層12と、第1の塗膜層12の表面12Aに形成される第2の塗膜層13と、を有し、3層の積層構造となる。そして、車両用加飾品10をアウタパネル上面に貼り付ける際には、ニッケル基材11の裏面11Bに両面テープ等の接着層が形成される。尚、図示していないが、予め、ニッケル基材11の裏面11Bに接着層及び剥離紙を形成し、車両用加飾品10として5層の積層構造となる場合でも良い。
【0017】
ニッケル基材11は、例えば、電気鋳造法により形成される板材であり、その板厚が、0.15から0.45mmの範囲内にて形成される。車両用加飾品10は、シート状の部材として取り扱われ、ニッケル基材11が、第1及び第2の塗膜層12,13よりも厚い板材となることで、車両用加飾品10の母材として機能する。
【0018】
つまり、車両用加飾品10のデザインにもよるが、ニッケル基材11の板厚としては、その大部分が0.3mm程度有していることが好ましい。上述したように、車両用加飾品10は、アウタパネルの上面に貼り付けて使用されるため、車両用加飾品10は、ニッケル基材11の板厚により、車両用部品として所望の剛性、耐久性及び使用感を満たすことが出来る。
【0019】
ここで、本実施形態では、ニッケル基材11が、電気鋳造法により形成されることで、母型に形成される凹凸形状に応じたデザインが、ニッケル基材11の表面11A側に装飾される。そして、ニッケル基材11は、デザインによる凹凸形状となるが、ニッケル基材11の板厚t1は、均一に略同一の厚みとして形成される。
【0020】
また、車両用加飾品10では、アルミニウム鋼板やステンレス鋼板等の板材を用いることなく、電気鋳造法によるニッケル基材11が母材として用いられる。この構造により、母型に形成できる凹凸形状の範囲内において、微細な凹凸形状や曲線等のデザインが、ニッケル基材11の表面11Aに装飾される。そして、給油フラップのような狭い領域においても、デザイン性に優れた車両用加飾品10が形成される。
【0021】
第1の塗膜層12は、例えば、カチオン電着法により形成され、その膜厚は、15μmから25μmの範囲内にて形成される。第1の塗膜層12は、黒色のエポキシ樹脂系塗料を主材料として形成される膜であり、ニッケル基材11の表面11Aの微細な凹凸形状の隙間に対しても、均一な膜厚であり、密着性の高い膜として形成される。また、第1の塗膜層12は、カチオン電着法により形成されることで、ピンホールが発生し難い膜として形成される。つまり、第1の塗膜層12は、防錆性能に優れ、耐防食性も高い膜として機能する。
【0022】
上述したように、第1の塗膜層12は、ニッケル基材11の表面11Aに形成される。ニッケル基材11自体も防錆性能に優れた材質であるが、その表面11Aにピンホールが形成され難い第1の塗膜層12が形成される。この構造により、長年の使用においてもニッケル基材11まで水が浸入し、錆びが発生し難くなり、防錆性能や耐防食性に優れた車両用加飾品10が実現される。
【0023】
第2の塗膜層13は、例えば、スプレー塗装法により形成され、その膜厚は、40μmから50μmの範囲内にて形成される。第2の塗膜層13は、主に、黒色のポリエステル樹脂系塗料を主材料として形成される膜であり、ニッケル基材11の表面11A上にトップコート膜として形成される。
【0024】
本実施形態では、第1及び第2の塗膜層12,13が黒色にて形成され、ニッケル基材11の凹凸形状のデザインを被膜することで、高級感を有する車両用加飾品10が実現される。また、第2の塗膜層13の膜厚として40μm以上を有するように形成されることで、車両の外装加飾品としての機能を果たすことが出来る。
【0025】
次に、本発明の他の実施形態に係る車両用加飾品10の製造方法について図面に基づき詳細に説明する。以下の説明では、
図1から
図2を用いて説明した車両用加飾品10と同一の部材には同一の符番を用い、繰り返しの説明は省略する。
【0026】
図3は、本実施形態の車両用加飾品10の製造工程を説明する工程図である。
【0027】
図3に示す如く、車両用加飾品10の製造方法では、主に、電気鋳造法を用いて、車両用加飾品10のニッケル基材11を形成する第1工程と、カチオン電着法を用いて、ニッケル基材11の表面11Aに第1の塗膜層12を形成する第2工程と、スプレー塗装法を用いて、第1の塗膜層12の表面12Aに第2の塗膜層13を形成する第3工程と、を備える。
【0028】
第1工程は、主に、ニッケル浴を準備する工程と、母型を準備する工程と、電気鋳造法によるニッケル基材11の形成工程と、母型からニッケル基材11の剥離及び切断工程と、を有する。
【0029】
最初に、ニッケル浴の準備工程では、浴組成として、例えば、スルファミン酸ニッケル298.7g/L、塩化ニッケル3.1g/L、ホウ酸26.1g/L、浴のpH3.96、比重1.176、浴の温度49度からなるニッケル浴を準備する。尚、ニッケル浴の浴組成の管理として、濃度60%のスルファミン酸ニッケル31L、ホウ酸9.8gを適宜補給することで、上記浴組成を維持する。
【0030】
次に、母型の準備工程では、母型の成形面に
図1に示す凹凸形状によるデザインの逆パターンの凹凸形状によるデザインが形成された母型を準備する。上述したように、車両用加飾品10は、車両のアウタパネルの上面に貼り付けて使用されるため、車両用部品として所望の剛性、耐久性及び使用感を満たす必要がある。
【0031】
そこで、母型の成形面には、切削加工等により上記デザインに対応した凹凸形状が形成されるが、ニッケル基材11の板厚が0.15mmから0.45mmの範囲内となるように、上記凹凸形状が形成される。
【0032】
そして、本工程の電気鋳造法では、母型の成形面の凹凸形状が精度良く再現されるため、上記成形面のキズや変形等の外観検査が行われると共に、上記成形面に、例えば、有機溶剤を薄く塗布し剥離被膜層を形成する。
【0033】
次に、ニッケル基材11の形成工程では、母型を陰極として、上記ニッケル浴内に浸漬させた後、浴温度を50度に維持しながら、1.3A/dm2から4.0A/dm2の範囲内にて電流密度を適宜調整しながら連続的に通電を行う。
【0034】
本実施形態では、電気鋳造法の電解条件として、400AHから500AHの範囲内にて行うことで、上述した板厚の範囲内において、ニッケル基材11の板厚として、均一な略同一の厚みのニッケル基材11を形成する。そして、上記電解条件を変えて行った実証実験では、上記電解条件が400AHより小さくなることで、ニッケル基材11の板厚が0.15mmより薄くなる箇所が発生すると共に、上記電解条件が500AHより大きくなることで、ニッケル基材11の板厚が0.45mmよりも厚くなる箇所が発生することが分かった。
【0035】
以上より、ニッケル基材11の形成工程では、上記電解条件が400AHから500AHの範囲内にて行われることで、ニッケル基材11の板厚が0.15mm以上0.45mm以下の範囲内にて収められ、所望の歩留まりを満たした量産が可能となる。そして、ニッケル基材11の板厚のばらつきを抑制することで、車両用加飾品10が、車両用部品として所望の剛性、耐久性及び使用感を満たす。
【0036】
次に、ニッケル基材11の剥離工程では、例えば、母型を加熱あるいは冷却することで、熱膨張の違いを利用し、剥離被膜層及びニッケル基材11を母型から一体に剥離する。そして、ニッケル基材11は、母型の成形面の形状に合わせて、例えば、四方形状に形成される。
【0037】
ニッケル基材11の切断工程では、
図1に示す車両用加飾品10の外形に沿って、例えば、30mm程度外側を切断し、余分な領域を除去することで、その後の塗膜層の形成工程における材料コストを低減する。
【0038】
その後、ニッケル基材11の表面11Aの剥離被膜層の洗浄除去を行うと共に、ニッケル基材11に形成されたデザインの外観検査等を行い、次の第2工程へと移行する。
【0039】
図示したように、第2工程は、主に、カチオン電着浴を準備する工程と、カチオン電着法による第1の塗膜層12の形成工程と、ニッケル基材11の切断工程と、を有する。
【0040】
最初に、カチオン電着浴の準備工程では、塗料液として、例えば、黒色のエポキシ樹脂系塗料を準備する。そして、塗料液の温度は、29度から31度の範囲内、塗料液のpHは5.6から6.2の範囲内にて管理される。
【0041】
次に、第1の塗膜層12の形成工程では、第1工程にて形成されたニッケル基材11を準備し、ニッケル基材11を搬送用ラックに設置した後、前処理工程として、脱脂工程によりニッケル基材11に付着した油分や汚れを除去すると共に、被膜処理工程によりニッケル基材11の表面にリン酸亜鉛皮膜を形成する。
【0042】
次に、ニッケル基材11が設置された搬送用ラックを塗料液内に浸漬し、ニッケル基材11を陰極とし、カチオン電着浴槽内の隔膜室内に設置した極板を陽極として、例えば、150Vから200Vの範囲内にて電圧を印加し、直流電流を流すことで、ニッケル基材11の表面に第1の塗膜層12を形成する。
【0043】
上述したように、本実施形態では、第1の塗膜層12の膜厚は、15μmから25μmの範囲内にて形成される。そして、第1の塗膜層12は、カチオン電着法により形成されることで、ニッケル基材11の表面11Aの微細な凹凸形状の隙間に対しても、均一な膜厚であり、密着性の高い膜として形成される。また、第1の塗膜層12は、ピンホールが発生し難い膜として形成されることで、防錆性能に優れ、耐防食性も高い膜として機能する。
【0044】
次に、後処理工程として、洗浄工程によりニッケル基材11を水洗洗浄した後、乾燥炉にて第1の塗膜層12を焼付けし硬化させることで、ニッケル基材11と第1の塗膜層12との密着性が得られる。
【0045】
次に、ニッケル基材11の切断工程では、第1の塗膜層12が形成されたニッケル基材11を準備し、プレス成形により
図1に示す車両用加飾品10の外形に沿ってニッケル基材11を切断する。具体的には、第1工程にて残した30mm程度の外側部分を切断する。その後、第1の塗膜層12の外観検査やニッケル基材11等のバリ検査等を行い、次の第3工程へと移行する。
【0046】
図示したように、第3工程は、主に、第1の塗膜層12の形成されたニッケル基材11の研磨工程と、第2の塗膜層13の形成工程と、を有する。
【0047】
最初に、ニッケル基材11の研磨工程では、第2工程にて第1の塗膜層12が形成されたニッケル基材11を準備する。そして、ニッケル基材11の外周端部が丸まるように研磨をすると共に、ニッケル基材11及び第1の塗膜層12のバリ検査を行う。
【0048】
次に、第2の塗膜層13の形成工程では、塗料液として、例えば、黒色のポリエステル樹脂系塗料を準備する。塗料液は、撹拌機にて10分攪拌され、その粘度が約20秒から25秒となる。そして、スプレー装置を用いて、ニッケル基材11の第1の塗膜層12の表面12Aに対して、例えば、霧化圧0.1MPa、吐出量0.4g/秒、塗布パターン1.5回転等の塗装条件により、塗料液を塗布する。
【0049】
次に、第2の塗膜層13が塗布されたニッケル基材11を内部温度150度の乾燥炉にて30分乾燥させることで、ニッケル基材11の表面11A上に第2の塗膜層13が形成される。上述したように、本実施形態では、第2の塗膜層13の膜厚は、40μmから50μmの範囲内にて形成される。そして、第2の塗膜層13は、ニッケル基材11の表面11A上にトップコート膜として形成されると共に、その膜厚として40μm以上有することで、車両の外装加飾品としての機能を果たすことが出来る。
【0050】
本実施形態では、車両用加飾品10の製造方法として、上記第1工程から第3工程により、ニッケル基材11の表面11Aに第1及び第2の塗膜層12,13を形成する場合について説明したが、この場合に限定するものではない。第2の塗膜層13を形成した後に、第4工程として、ニッケル基材11の裏面11Bに両面テープ等の接着層を形成し、その接着層の表面に剥離紙を形成する場合でも良い。この場合には、車両用加飾品10は5層の積層構造として形成される。尚、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲にて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0051】
10 車両用加飾品
11 ニッケル基材
12 第1の塗膜層
13 第2の塗膜層