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特開2023-102644ボトル型缶およびボトル型缶用粗形材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102644
(43)【公開日】2023-07-25
(54)【発明の名称】ボトル型缶およびボトル型缶用粗形材
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/46 20060101AFI20230718BHJP
【FI】
B65D1/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022003264
(22)【出願日】2022-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000208455
【氏名又は名称】大和製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083998
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 丈夫
(74)【代理人】
【識別番号】100096644
【弁理士】
【氏名又は名称】中本 菊彦
(72)【発明者】
【氏名】榎木 泰史
(72)【発明者】
【氏名】石川 晃
【テーマコード(参考)】
3E033
【Fターム(参考)】
3E033AA02
3E033BA09
3E033CA05
3E033DA03
3E033DB01
(57)【要約】
【課題】薄肉化あるいは軽量化が可能であって、かつロールオンキャッピングを行っても開栓に欠陥の生じないボトル型缶およびその粗形材を提供する。
【解決手段】円筒状の胴部に上側で径が次第に小さくなる肩部4が連なって形成されるとともに、肩部4の上端中央部に筒状の口頸部5が連なって形成され、口頸部5の先端部がカール部7とされ、口頸部5のうちカール部7の下側の部分に雄ねじ部8が形成され、雄ねじ部8の下側の部分に凸ビード部9が形成されているアルミニウム合金からなるボトル型缶1であって、カール部7の内径が30mm以上であり、カール部7の軸線方向に測った寸法である高さが1.9mm~2.0mm以下であり、カール部7の半径方向に測った寸法である厚さが1.2mm~1.4mm以下であり、カール部7における壁厚t7が、雄ねじ部8における壁厚t8より厚い。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の胴部の上端側に上側で径が次第に小さくなる肩部が連なって形成されるとともに、前記肩部の上端中央部に筒状の口頸部が連なって形成され、前記口頸部の先端部が外向きに曲がって巻いているカール部とされ、前記口頸部のうち前記カール部の下側の部分に雄ねじ部が形成され、前記雄ねじ部の下側の部分に外側に凸となっているビード部が形成されているアルミニウム合金からなるボトル型缶において、
前記カール部の内径が30mm以上であり、
前記カール部の軸線方向に測った寸法である高さが1.9mm以上かつ2.0mm以下であり、
前記カール部の半径方向に測った寸法である厚さが1.2mm以上かつ1.4mm以下であり、
前記カール部における壁厚が、前記雄ねじ部における壁厚より厚い
ことを特徴とするボトル型缶。
【請求項2】
請求項1に記載のボトル型缶において、
前記雄ねじ部にねじ嵌合するキャップを更に有し、
前記キャップは、前記ビード部を包み込んで係合しているバンド部を離脱可能に備え、
前記キャップを前記口頸部に対して回転させて、前記バンド部を離脱させるとともに前記雄ねじ部から抜き取った際の前記ビード部の外径のうち長軸径と短軸径との差が0.3mm以下である
ことを特徴とするボトル型缶。
【請求項3】
請求項1または2に記載のボトル型缶において、
前記雄ねじ部における壁厚は、0.28mm以上かつ0.31mm以下であることを特徴とするボトル型缶。
【請求項4】
円筒状の胴部の上端側に上側で径が次第に小さくなる肩部が連なって形成されるとともに、前記肩部の上端中央部に筒状の口頸部が連なって形成され、前記口頸部の先端部が外向きに曲がって巻いているカール部とされ、前記口頸部のうち前記カール部の下側の部分に雄ねじ部が形成され、前記雄ねじ部の下側の部分に外側に凸となっているビード部が形成されているアルミニウム合金からなるボトル型缶の製造に用いられるボトル型缶用粗形材において、
前記胴部に加工される円筒状の胴部相当部と、
前記胴部相当部の上側に連続して設けられ、前記肩部に加工される円筒状の肩部相当部と、
前記肩部相当部の上側に連続して設けられ、前記口頸部に加工される円筒状の口頸部相当部と、
前記口頸部相当部の上端部であって、前記カール部に加工される円筒状のカール部相当部とを備え、
前記カール部相当部の壁厚が、前記口頸部相当部の壁厚より厚い
ことを特徴とするボトル型缶用粗形材。
【請求項5】
請求項4に記載のボトル型缶用粗形材において、
前記口頸部相当部の壁厚が、前記胴部相当部の壁厚より厚いことを特徴とするボトル型缶用粗形材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム合金を素材としたボトル型の金属缶に関し、特にキャップをねじによって取り付けたいわゆるリシール性のあるボトル型缶、およびそのボトル型缶の製造に用いられる粗形材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のボトル型缶の一例が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載されたボトル型缶は、金属薄板を絞り・しごき加工することにより胴部と底部とを一体に成形するいわゆるツーピース缶であって、胴部の上部に続けて設けられている口頸部(もしくは口首部)に雄ねじ部が形成されている。その雄ねじ部より先端側の部分が口部であって、そのエッジ部(周縁部)は外向きにカーリングされている。また、ねじ部の下側に続く部分には、外側に帯状に凸となるビード部が形成されている。
【0003】
このボトル型缶を封止するキャップは、ロールオンキャッピングと称される方法で取り付けられる。すなわち、口頸部とほぼ同じ径の単純な筒状のキャップ粗形材を口頸部に被せるとともに、上側から押さえ付けてキャップ粗形材のコーナ部を上記のカーリング加工された口部の開口端に押し付け、その状態で、ロールを筒状の部分の外周側で公転させつつ筒状の部分を口頸部に押し付けて、筒状の部分を口頸部のねじ部に倣わせてねじ成形する。併せて、キャップ粗形材の下端部(ピルファープルーフバンドとなる部分の下端部)を上記のビード部を下側から抱き込むように絞り変形させる。したがって、このロールオンキャッピングの際に口頸部には、上側からの押し付け力(打栓力と称される)が掛かる。ボトル型缶を軽量化し、また素材の量を少なくするためにボトル型缶を薄肉化すると、口頸部や口頸部から胴部に到る部分などの強度が低下し、上記の打栓力で座屈が生じる恐れがある。このような不都合を解消するために特許文献1に記載されたボトル型缶では、上記のビード部の下側に繋がっている部分を、断面形状が「S」字をなすように加工して、座屈が生じやすい箇所の剛性あるいは強度を高くしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6817106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のロールオンキャッピングについて簡単に説明すると、図1は一般的なロールオンキャッピングを行っている状態を模式的に示しており、キャッピングの対象物であるボトル型缶100は、その胴部101の上側に繋がる肩部102を有している。肩部102は、上側が絞られているテーパもしくはドーム状の部分であって、胴部101に繋がっている部分を絞り加工することにより形成されている。その肩部102の上端部に口頸部103が連続している。この口頸部103の軸線方向での中間部分がねじ加工されて雄ねじ部104となっている。また、口頸部103の上端が開口していて、ここが口部となっており、その周辺部は外向きにカーリングされてカール部105となっている。さらに、ねじ部104の下側の部分には、外側に帯状に凸となっているビード部106が形成されている。なお、このビード部106は、その形状からカブラ部と称されることがある。
【0006】
この口頸部103に取り付けられるキャップ粗形材107は、底部(もしくは天板部)を有する単純な円筒状(キャップ形状)をなしていて口頸部103に上側から被せられる。キャップ粗形材107は、プッシャブロック108によって、カール部105に向けて上側から押し付けられ、同時にキャップ粗形材107のコーナ部がカール部105に密着するように圧潰される。一方、雄ねじ部104の外周側にはねじ成形ロール109が配置されており、そのねじ成形ロール109がキャップ粗形材107の円筒部分を雄ねじ部104に押し付けつつ公転し、こうしてキャップ粗形材107の円筒部分が、雄ねじ部104に沿った雌ねじに加工される。なお、そのねじ加工と並行して、裾締めロール110がキャップ粗形材107の下端部をビード部106の下側に向けて押し込み、その結果、ピルファープルーフバンドに相当する部分がビード部106を下側から包み込んだ状態で係合する。
【0007】
このようにロールオンキャッピングを行うと、ボトル型缶100には、プッシャブロック108がキャップ粗形材107を上側から押さえ付けることによるいわゆる打栓力が下向きに掛かり、これが座屈の原因になる。特許文献1に記載の発明では、上述した断面「S」字状の部分を作ることにより、座屈強度を大きくしている。しかしながら、口頸部103には、ねじ成形ロール109がねじ加工を行うことによって半径方向での内向きの荷重が掛かり、その荷重が口頸部103を押し潰すように作用する。図2は、その状況を説明しており、3つのねじ成形ロール109が口頸部103の外周側に等間隔に配置されており、したがって口頸部103は、ねじ成形ロール109によって押される部分が内側に撓み、それらの部分の間の部分が図2に破線で示すように外側に凸となるように撓む。その撓み箇所は、ねじ成形ロール109が図2に矢印で示す方向に公転することにより、ねじ成形ロール109の公転方向に順次移動する。そして、ねじ加工が終了してねじ成形ロール109が口頸部103の半径方向で外側に離れると、その時点で口頸部103に生じている変形がそのまま、もしくはわずかなスプリングバック後の変形が、口頸部103に残ってしまう。その変形は、口頸部103がわずかに楕円形となる変形であるからオーバル変形と称されることがあり、したがってこのような変形が生じたボトル型缶100にあっては、開栓するべくキャップを回した場合、楕円の短軸の部分が長軸の部分を乗り越える際にキャップと口頸部との擦りが生じ、そのために開栓力が大小に変化し、あるいは擦り音が生じるなど、ボトル型缶の品質を損なう要因となる。また、キャップが口頸部103に傾いて被さり、その結果、キャップ内面のシール材とカール部105との密着度合いが損なわれて、内容物が漏れ出すおそれがある。従来では、特許文献1に記載されているように、ロールオンキャッピングの際の打栓力に対する対応が検討されていたが、口頸部のオーバル変形については検討されておらず、未だ改善の余地があった。
【0008】
本発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであって、薄肉化あるいは軽量化が可能であって、かつロールオンキャッピングを行っても開栓に欠陥の生じないボトル型缶およびその粗形材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の目的を達成するために、円筒状の胴部の上端側に上側で径が次第に小さくなる肩部が連なって形成されるとともに、前記肩部の上端中央部に筒状の口頸部が連なって形成され、前記口頸部の先端部が外向きに曲がって巻いているカール部とされ、前記口頸部のうち前記カール部の下側の部分に雄ねじ部が形成され、前記雄ねじ部の下側の部分に外側に凸となっているビード部が形成されているアルミニウム合金からなるボトル型缶において、前記カール部の内径が30mm以上であり、前記カール部の軸線方向に測った寸法である高さが1.9mm以上かつ2.0mm以下であり、前記カール部の半径方向に測った寸法である厚さが1.2mm以上かつ1.4mm以下であり、前記カール部における壁厚が、前記雄ねじ部における壁厚より厚いことを特徴とするものである。
【0010】
本発明のボトル型缶においては、前記雄ねじ部にねじ嵌合するキャップを更に有し、前記キャップは、前記ビード部を包み込んで係合しているバンド部を離脱可能に備え、前記キャップを前記口頸部に対して回転させて、前記バンド部を離脱させるとともに前記雄ねじ部から抜き取った際の前記ビード部の外径のうち長軸径と短軸径との差が0.3mm以下であってよい。
【0011】
本発明のボトル型缶においては、前記雄ねじ部における壁厚は、0.28mm以上かつ0.31mm以下であってよい。
【0012】
また、本発明は、円筒状の胴部の上端側に上側で径が次第に小さくなる肩部が連なって形成されるとともに、前記肩部の上端中央部に筒状の口頸部が連なって形成され、前記口頸部の先端部が外向きに曲がって巻いているカール部とされ、前記口頸部のうち前記カール部の下側の部分に雄ねじ部が形成され、前記雄ねじ部の下側の部分に外側に凸となっているビード部が形成されているアルミニウム合金からなるボトル型缶の製造に用いられるボトル型缶用粗形材であって、前記胴部に加工される円筒状の胴部相当部と、前記胴部相当部の上側に連続して設けられ、前記肩部に加工される円筒状の肩部相当部と、前記肩部相当部の上側に連続して設けられ、前記口頸部に加工される円筒状の口頸部相当部と、前記口頸部相当部の上端部であって、前記カール部に加工される円筒状のカール部相当部とを備え、前記カール部相当部の壁厚が、前記口頸部相当部の壁厚より厚いことを特徴とするものである。
【0013】
本発明のボトル型缶用粗形材においては、前記口頸部相当部の壁厚が、前記胴部相当部の壁厚より厚くてよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るボトル型缶は、カール部の内径が30mm以上での金属缶である。また、雄ねじ部ならびにビード部が設けられていることにより、キャップがロールオン成形によって口頸部に取り付けられて封止される。したがって、形状の点では、ロールオン成形(キャッピング)の際の半径方向に係る成形荷重によって、雄ねじ部に変形が生じやすくなっている。これに対して、カール部の高さが1.9mm以上かつ2.0mm以下であり、またカール部の厚さが1.2mm以上かつ1.4mm以下であり、しかもカール部における壁厚が雄ねじ部における壁厚より厚いから、カール部の剛性が十分に大きく、キャッピングの際に雄ねじ部に変形が生じても、カール部の変形はほぼ発生せず、もしくはわずかであり、少なくともキャッピングの際の荷重が取り除かれた場合のスプリングバックによって、カール部の変形はほぼ是正される。これに対して、雄ねじ部に倣う形状への成形(ねじ成形)によって雄ねじ部に半径方向での変形が生じるとしても、その変形は、剛性の大きいカール部によって制限された変形であり、また成形荷重を取り除いた場合には、カール部に倣う形状に引き戻される。すなわち、雄ねじ部より厚肉で剛性の大きいカール部を雄ねじ部に隣接して設けてあることにより、キャッピングに伴う雄ねじ部の変形が防止もしくは抑制される。すなわち、本発明では、雄ねじ部の構造を変えることなく、これに隣接するカール部の構造を工夫することにより、雄ねじ部の変形を防止もしくは抑制している。その結果、開栓するべくキャップを回した場合に、キャップをスムースに、あるいはいわゆる引っ掛かりを生じることなく回すことができ、開栓性に欠陥のないボトル型缶を得ることができる。また、雄ねじ部を薄肉化できるので、ボトル型缶の軽量化を図り、また材料消費量を抑制して地球環境への負荷を低減できる。
【0015】
また、本発明においては、最初に開栓した場合に、キャップを取り外した後のビード部の変形量である長軸径(最大外径)と短軸径(最小外径)との差が0.3mm以下となるように構成したので、開栓性に欠陥のないボトル型缶を得ることができる。
【0016】
さらに、本発明に係る粗形材によれば、胴部相当部に対して肩部相当部ならびに口頸部相当部を例えば絞り・しごき加工して所定の肩部ならびに口頸部に成形し、さらに口頸部の先端部をカール部に成形すると、それぞれの部分の壁厚がそのまま維持され、あるいは変化するとしても壁厚の厚薄の関係が維持される。したがって、全体を薄肉化しても、カール部の壁厚を雄ねじ部の壁厚より厚くでき、その結果、ロールオンキャップングを行うとしても、雄ねじ部の変形をカール部で防止もしくは抑制して開栓性に欠陥のないボトル型缶を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】ロールオンキャッピングを説明するための説明図である。
図2】ロールオンキャッピング時のねじ成形ロールの相対位置および口頸部の変形状態を説明するための模式図である。
図3】本発明に係るボトル型缶の一例を示す正面図である。
図4】その口頸部を拡大して示す部分的な断面図である。
図5】カール部の変形量(歪量)を説明するための模式図である。
図6】本発明に係る粗形材の一例を示す断面図である。
図7】(A)は粗形材を絞り・しごき加工して肩部、口頸部を形成した状態の断面図、(B)はその口頸部を拡大して示す部分的な断面図である。
図8】(A)は比較例1に用いた粗形材の一部を示す断面図、(B)は比較例2に用いた粗形材の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を図に示す実施形態を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は本発明を実施した場合の一例に過ぎないのであって、本発明を限定するものではない。
【0019】
図3は本発明に係るボトル型缶1の一例を示しており、主として飲料用の缶として構成されている。このボトル型缶1は、アルミニウム合金製のいわゆるツーピース缶であって、胴部2と底部3とが一体になっており、これは、例えばアルミニウム製薄板を絞り・しごき成形し、開いている端部側を次第に絞り成形することにより得られる。胴部2は円筒状であって、その上側に連なって肩部4が設けられている。この肩部4は、後に説明する口頸部5に繋がる部分であって、上側で次第に径が小さくなるテーパ状もしくはドーム状になっている。
【0020】
肩部4の先端中央部に連なって口頸部5が形成されている。口頸部5は、キャップCを取り付けるため、また注ぎ口あるいは飲み口となる口部6のための部分であり、円筒状をなしている。図4にこの口頸部5の一部の縦断面を示しており、その口部6すなわち口頸部5の先端部は、外向きに曲げて巻き込むようにカーリングされてカール部7となっている。そのカール部7の下側に繋がっている部分にねじ溝が形成されており、この部分が雄ねじ部8となっている。さらに、この雄ねじ部8の直下に、外側に凸となっている帯状のビード部9が形成されている。このビード部9は、前掲の図1に示すビード部106と同様の部分であって、ピルファープルーフバンド(バンド部)Bを巻き掛けさせる凸部である。
【0021】
図3に示すボトル型缶1は、口部6を広口化した金属缶であり、その口部6であるカール部7の内径Dは30mm以上になっている。一例として呼称φ38の広口ボトル型缶である。なお、胴部2の外径は66mm(φ66)である。また、カール部7の高さHは、1.9mm以上かつ2.0mm以下であり、またカール部7の厚さWは1.2mm以上かつ1.4mm以下である。さらに、壁厚について説明すると、材料の削減やボトル型缶1の軽量化などのために、雄ねじ部8が薄肉化されていてその壁厚t8は0.28mm以上かつ0.31mm以下に設定されるとともに、カール部7の壁厚t7はそれより厚く(例えば0.33mm程度)に設定されている。なお、雄ねじ部8の壁厚t8は、平坦に近い箇所で測った厚さであり、一例として雄ねじ部8の下端部(ビード部9との境界部分)での壁厚である。また、カール部7の壁厚t7は口部6の内周壁となっている部分の壁厚である。さらに、ここに示した壁厚t7,t8は、平均値であり、局部ではこれらの寸法範囲を外れていることがある。
【0022】
ここで、雄ねじ部8の壁厚t8の下限値を0.28mmとしたのは、それより薄肉であると雄ねじ部8の強度が不足して過剰に変形が生じてしまい、またこの程度の肉厚であれば、薄肉化や材料の削減効果が得られるからである。また、上側のカール部7との間隔が短く、そのような短い間隔で大きい壁厚差を設定することが困難であるからである。一方、雄ねじ部8の壁厚t8の上限値を0.31mmとしたのは、それより厚くすれば、雄ねじ部8の変形(歪み)の防止に効果があるものの、雄ねじ部8を薄肉化して材料量を削減する目的を達成できないからである。
【0023】
本発明に係る上記のボトル型缶1においても、前掲の図1を参照して説明したロールオンキャッピングによってキャップCが取り付けられる。その場合、前掲の図2に示したように雄ねじ部8に変形あるいはたわみが生じ、それにつられてカール部7にひずみが生じる。そして、上記のボトル型缶1は、カール部7の変形量もしくはひずみ量(これらをまとめて変形量とする)が以下の範囲に収まるように構成されている。すなわち、キャップCを取り付けた状態では、カール部7はキャップに覆われていてその変形量を測定することができないので、ロールオンキャッピングの後、最初に(初めて)キャップを取り外した際に測定した変形量をカール部7の変形量とする。また、カール部7の問題となる変形は、前述したオーバル変形であるから、長軸径と短軸径との差を変形量とする。長軸径d1は、図5に破線で示すように、楕円形に変形した後の最も大きい(長い)直径であり、短軸径d2は、長軸に直交する方向に測った最も小さい(短い)直径である。本発明に係る上記のボトル型缶1は、この長軸径d1と短軸径d2との差が0.3mm以下となるように構成されている。言い換えれば、カール部7の壁厚t7は、長軸径d1と短軸径d2との差が0.3mm以下となるように、またロールオンキャッピングの際のねじ成形荷重に応じて、前述した寸法の範囲内で適宜の壁厚に設定されている。
【0024】
本発明に係るボトル型缶1は、アルミニウム合金製薄板を素材として、これに絞り・しごき加工を施すことにより、製造することができる。図6は、その製造過程における粗形材10を、壁厚を誇張して示す断面図である。ここに示す粗形材10は、アルミニウム合金製薄板を底の付いた筒状に成形し、上端開口部をトリミングした状態のいわゆる中間材である。上下方向でのほぼ中央部から下側の部分が前述した胴部2に加工される胴部相当部2Aであり、その胴部相当部2Aの上側に繋がっている部分が前述した肩部4に加工される肩部相当部4Aであり、その肩部相当部4Aと同じ形状であって肩部相当部4Aに連続している部分が前記口頸部5に加工される口頸部相当部5Aであり、その口頸部相当部5Aから上端開口部までの部分が外側にカーリングされて前述したカール部7とされるカール部相当部7Aとされている。これらの各部の外径はほぼ同じであるが、壁厚はそれぞれ異なっており、カール部相当部7Aの壁厚t7Aが口頸部相当部5Aの壁厚t5Aより厚くなっている。この口頸部相当部5Aの壁厚t5Aとその下側の肩部相当部4Aの壁厚t4Aとは同一になっており、その下側の胴部相当部2Aの壁厚t2Aは肩部相当部4Aの壁厚t4Aより薄くなっている。
【0025】
上記の肩部相当部4Aに絞り加工あるいはしごき加工を施して、肩部相当部4Aを上側ほど径が小さくなるテーパ状もしくはドーム状に成形する。また、それに続く部分である口頸部相当部5Aを円筒状に成形し、さらにカール部相当部7Aを口頸部相当部5Aより小径の円筒状に成形する。このように加工した後の形状を図7に断面図で示してある。なお、図7の(A)は全体の断面図、(B)は部分断面図である。また、これらの図においても各部分の壁厚を誇張してある。この図7に示すように、各部分の壁厚は、加工を行うことによって、図6に示す粗形材10での壁厚から幾分変化することがあるものの、その壁厚の相互の差は維持されている。そして、口頸部相当部5Aにねじ成形加工やビード部成形加工を施し、またカール部相当部7Aに外巻きのカーリング加工を施すことにより、図1に示すボトル型缶1とされる。したがって、粗形材10における各部の壁厚は、上述した絞り加工あるいはしごき加工を経た後に、ボトル型缶1の各部の壁厚の範囲に入る厚さに設定されている。
【0026】
なお、各部の壁厚の調整は、図6に示す粗形材10を成形する際に、使用するパンチに段差を付けておき、胴部相当部2Aの壁厚t2Aを最も薄くし、肩部相当部4Aならびに口頸部相当部5Aの壁厚t4A,t5Aをやや厚くし、さらにカール部相当部7Aの壁厚t7Aを最大とするように、段階的に壁厚を漸増させることによって行うことができる。他の方法として、口頸部相当部5Aならびにカール部相当部7Aを成形する金型におけるクリアランスを調整し、カール部相当部7Aを絞り加工することに伴う材料厚みの変化を利用して、カール部相当部7Aの壁厚t7Aを口頸部相当部5Aの壁厚t5Aより厚くする方法であってもよい。
【0027】
上述した本発明に係るボトル型缶1では、前述したロールオンキャッピングによって前記口頸部5にキャップCを取り付けることができ、その場合、前述した雄ねじ部8にキャップを螺合させるねじ成形を行い、それに伴う成形荷重が口頸部5に半径方向で外側から掛かって、口頸部5(雄ねじ部8)を変形させる要因になる。また、カール部7には、雄ねじ部8の変形に引き摺られて、カール部7を変形させる荷重が作用する。雄ねじ部8は、素材量の削減あるいは軽量化のために薄肉化され、その分、その剛性が小さくなっているが、カール部7は雄ねじ部8よりも壁厚が厚く、その剛性が大きいことにより、変形量が少なくなっている。また、加工の終了に伴って荷重を取り除いた場合にスプリングバックによって正規の円形に戻りやすくなっている。結局、カール部7がその正規の形状もしくはそれに近い形状を維持する。
【0028】
また、その成形過程のロールオンキャッピングでのねじ成形の際に雄ねじ部8の変形(図2に示すような変形)が生じているが、その変形量が薄肉化によって幾分大きくなるとしても、雄ねじ部8自体がスプリングバックによって正規の円筒状に戻ろうとするだけでなく、正規の形状もしくはそれに近い形状を維持するカール部7によって雄ねじ部8の変形ならびに残留変形が解消もしくは抑制される。その結果、本発明のボトル型缶1では、雄ねじ部8の前述したいわゆるオーバル変形が抑制されることにより、開栓時のキャップCが引っ掛かりを生じることなくスムースに回転し、いわゆる開栓性が良好になる。
【0029】
本発明の効果を確認するために行った実施例および比較例を次に示す。
【0030】
[実施例]
アルミニウム合金の薄板コイルからブランクを切り出し、そのブランクに絞りしごき加工を施して、外径が66mm(φ66)の円筒状粗形材を形成した後、開口部をトリミングし、さらに開口部を縮径するとともに肩部と口頸部とを加工した。さらに口頸部相当部にねじ加工を行い、開口部には、カール高さが1.9~2.0mm、厚さが1.2~1.4mmのカール成形を施し、ボトル型缶とした。作成したボトル型缶は、2種類の口径のものであって、呼称φ33(カール部内径25.05mm)および呼称φ38(カール部内径31.07mm)とした。雄ねじ部の壁厚は0.31mm、カール部の壁厚は0.33mmである。なお、前掲の図1は呼称φ38の広口ボトル型缶を示す。
【0031】
2種類の口径のボトル型缶のそれぞれに、水を充填し、キャップを被せて、ねじをロールオン加工して口頸部にカシメることにより、ボトル型缶を密封した。その後1日置いて、手で開栓し、その際の手での感触テストと、カール部の円形歪測定(カール部外径平均歪量)を10缶ずつ行った。円形歪み測定は、カール部の外径を20°ずつ回転させてレーザ測定器で光計測し、その最大外径と最小外径との差(max-min)として測定した。その結果を表1にまとめて示してある。なお、表1で、開栓性とは、キャップの最小内径の部分が雄ねじ部の最大外径の箇所を回転方向に乗り越える際にキャップと雄ねじ部とが擦れて抵抗感を示し、また擦り音が生じるか否かであり、「〇」印はそのような抵抗感や擦り音が生じず、もしくは極めて僅かであることを示し、製品として問題がないとの評価を下し得ることを示す。これに対して「×」印は抵抗感あるいは擦り音を明確に感じ取ることができ、製品としては不合格と評価したことを示す。
【0032】
[比較例1]
全体としての形状は本発明の実施例と同様とし、雄ねじ部の壁厚をカール部の壁厚と同じにした。図8の(A)は、比較例1に用いた粗形材20の一部を示す断面図であり、雄ねじ部に加工される口頸部相当部25の壁厚t25と、カール部に加工されるカール部相当部27の壁厚t27とのそれぞれは0.33mmであり、ボトル型缶に成形した後において、各壁厚はほぼそのまま維持される。この比較例1のボトル型缶は、従来の構成のボトル型缶である。
【0033】
この比較例1のボトル型缶に水を充填するとともに、ロールオン加工によってキャップを取り付けて密閉するなど、上記の実施例と同様の処理を行って開栓性のテストを行った。結果を表1に示してある。
【0034】
[比較例2]
全体としての形状は本発明の実施例と同様とし、軽量化ならびに材料の削減とを意図して全体を薄肉化し、雄ねじ部の壁厚とカール部の壁厚とを、0.31mmの同じ厚さにした。すなわち、図8の(B)は、比較例2に用いた粗形材30の一部を示す断面図であり、雄ねじ部に加工される口頸部相当部35の壁厚t35と、カール部に加工されるカール部相当部37の壁厚t37とのそれぞれは0.31mmであり、ボトル型缶に成形した後において、各壁厚はほぼそのまま維持される。この比較例2のボトル型缶は、従来の構成のボトル型缶の全体を薄肉化して軽量化したものである。
【0035】
この比較例2のボトル型缶に水を充填するとともに、ロールオン加工によってキャップを取り付けて密閉するなど、上記の実施例と同様の処理を行って開栓性のテストを行った。結果を表1に示してある。
【表1】
【0036】
表1に示す結果から、キャッピング後のカール部の歪は、カール部の径が大きくなるに伴い、大きくなる傾向であることが判明した。これは、ロールオン加工のロール位置が前掲の図2に示すように配置され、口頸部の外周を3個のロールが回転加工するので、口径が大きいほどねじ成形ロール同士の距離が長くなり、ねじ成形ロールが公転するのに伴って材料が公転方向へ寄せられ、口径が大きくなるほど、歪が大きくなるために起きたと考えられた。また、ロールオン加工では、前述したようにプレッシャーブロックによってカール部はキャップと圧接させられ、その状態ではほぼ円形を保持しているが、成形後にプレッシャーブロックを取り除いた際に、雄ねじ部の歪を規制する拘束力が低下し、それに伴ってカール部も歪むものと推察された。言い換えれば、カール部は雄ねじ部に引き摺られて変形するものの、雄ねじ部はカール部の剛性が抵抗となって変形が抑制されているものと考えられる。
【0037】
本発明の実施例では、カール部の壁厚を雄ねじ部の壁厚より厚くして剛性を維持している。すなわち、カール部外径平均歪量が0.3mmを下回っている。これに対して、比較例2のうち、口径(カール部内径)が30mmより小さいφ33の缶であればカール外径平均歪量が0.3mmを下回っているが、口径(カール部内径)が31.07mmのいわゆる広口缶にあっては、カール部外径平均歪量が0.36mmに増大していた。このようなカール部の歪の大小により、本発明の実施例では、開栓性が良好であり、これに対して比較例2のうち広口ボトル型缶では、キャップを開栓方向に回した場合に、擦れにより抵抗感が生じ、開栓性が悪化していた。なお、比較例1のボトル型缶は、カール部外径平均歪量が少なく、また開栓性が良好であったが、材料の削減あるいは軽量化に資することはできない。
【0038】
上述したように、カール部外径平均歪量が0.29mmであっても開栓性が良好であるのに対して、0.36mmでは開栓性が悪化し、製品としては不合格であるから、本発明では、ロールオンキャッピング後に初めて開栓した状態でのカール部の歪量(オーバル変形とした場合の長軸径と短軸径との差)が0.3mm以下となる構造とした。
【0039】
なお、表1には特には記載していないが、座屈強度を測定したところ、実施例および比較例1,2のいずれも、規格である1275N以上の強度を示し、強度の点での問題はなかった。
【0040】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されないことは前述したとおりであり、したがって上述した各壁厚の具体的な値は、一例に過ぎないのであり、本発明では、それらの値とは異なる壁厚であってもよい。いずれにしても、設計上決められている座屈強度を充足する範囲内の壁厚であればよく、その範囲で特許請求の範囲に記載した構成を備えていればよい。
【符号の説明】
【0041】
1 ボトル型缶
2 胴部
2A 胴部相当部
3 底部
4 肩部
4A 肩部相当部
5 口頸部
5A 口頸部相当部
6 口部
7 カール部
7A カール部相当部
8 雄ねじ部
9 ビード部
10 粗形材
108 プッシャブロック
109 ねじ成形ロール
110 裾締めロール
B ピルファープルーフバンド
C キャップ
D 内径
H 高さ
W 厚さ
d1 長軸径
d2 短軸径
t2A,t4A,t5A,t7A,t7,t8 壁厚
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8