(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102670
(43)【公開日】2023-07-25
(54)【発明の名称】オレフィン系重合体組成物、シーラントフィルム、無延伸フィルムおよびインフレーションフィルム
(51)【国際特許分類】
C08L 23/02 20060101AFI20230718BHJP
C08L 23/10 20060101ALI20230718BHJP
C08L 23/26 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
C08L23/02
C08L23/10
C08L23/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022003320
(22)【出願日】2022-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水間 貴大
(72)【発明者】
【氏名】神谷 希美
(72)【発明者】
【氏名】塩崎 七央
(72)【発明者】
【氏名】江川 真
(72)【発明者】
【氏名】三川 展久
(72)【発明者】
【氏名】山田 孝裕
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB03W
4J002BB05W
4J002BB12W
4J002BB12X
4J002BB14W
4J002BB15W
4J002BB15X
4J002BB16W
4J002BB16X
4J002BB17W
4J002BB20Y
4J002GF00
4J002GG01
4J002GG02
(57)【要約】
【課題】得られるフィルムの口開き性または耐ブロッキング性および低温ヒートシール性に優れるオレフィン系重合体組成物を提供すること。
【解決手段】示差走査熱量測定(DSC)により測定した融点(Tm)が120℃以上170℃以下であるプロピレン系重合体(A)、示差走査熱量測定(DSC)により測定した融点(Tm)が30℃以上、120℃未満であるオレフィン系重合体(B)及び要件(C-i)~(C-iii)を満たす超高分子量オレフィン系重合体の架橋物(C)を含有するオレフィン系重合体組成物、これを含むシーラントフィルム並びにこれから形成される層を含む無延伸フィルムおよびインフレーションフィルム
(C-i)135℃デカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]が5dl/g~50dl/g
(C-ii)平均粒子径d50が、3μm~30μm
(C-iii)目開き37μmメッシュ篩の通過量が95質量%以上。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
示差走査熱量測定(DSC)により測定した融点(Tm)が120℃以上170℃以下であるプロピレン系重合体(A)、
示差走査熱量測定(DSC)により測定した融点(Tm)が30℃以上、120℃未満であるオレフィン系重合体(B)、および、
下記要件(C-i)~(C-iii)を満たす超高分子量オレフィン系重合体の架橋物(C)、を含有するオレフィン系重合体組成物。
(C-i)135℃デカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]が5dl/g~50dl/g
(C-ii)平均粒子径d50が、3μm~30μm
(C-iii)目開き37μmメッシュ篩の通過量が95質量%以上
【請求項2】
前記プロピレン系重合体(A)および前記オレフィン系重合体(B)の合計量100質量%とした場合、前記プロピレン系重合体(A)の含有量が、10質量%~90質量%であり、かつ、前記オレフィン系重合体(B)の含有量が、10質量%~90質量%である請求項1に記載のオレフィン系重合体組成物。
【請求項3】
前記オレフィン系重合体(B)は、エチレン重合体(B1)、プロピレン重合体(B2)、および、1-ブテン重合体(B3)からなる群より選ばれる少なくとも1種のオレフィン系重合体を含む、請求項1または請求項2に記載のオレフィン系重合体組成物。
【請求項4】
前記超高分子量オレフィン系重合体の架橋物(C)の含有量が、前記(A)プロピレン系重合体、および、前記(B)オレフィン系重合体の合計100質量部とした場合、100ppm~10,000ppmである、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のオレフィン系重合体組成物。
【請求項5】
前記超高分子量オレフィン系重合体は、超高分子量エチレン重合体である、請求項1~請求項4いずれか1項に記載のオレフィン系重合体組成物。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のオレフィン系重合体組成物から形成される層を含有するシーラントフィルム。
【請求項7】
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のオレフィン系重合体組成物からなる無延伸フィルム。
【請求項8】
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のオレフィン系重合体組成物からなるインフレーションフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン系重合体組成物、シーラントフィルム、無延伸フィルムおよびインフレーションフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
オレフィン系重合体からなるフィルムは透明性、機械的特性等に優れるので、各種包装材料として広く用いられている。しかし、オレフィン系重合体より形成されるフィルム同士を、例えば、積層状、ロール状等に重ねた場合、フィルムが相互に密着する現象、いわゆるブロッキング現象が生じることが知られている。そこで従来から、オレフィン系重合体フィルムのブロッキング現象の抑制性(すなわち、耐ブロッキング性)を向上させるために、例えば、特許文献1には、アンチブロッキング剤を配合して、耐ブロッキング性を向上することが開示されている。
【0003】
また、例えば、特許文献2には、オレフィン系重合体フィルムのアンチブロッキング剤としては、微粉状のシリカ、ゼオライト、タルク、炭酸カルシウム、珪藻土類といった無機物質が開示されている。
また、例えば、特許文献3には、アクリル系樹脂粒子をアンチブロッキング剤に使用する方法が開示されている。
【0004】
例えば、特許文献4には、高密度ポリエチレン樹脂使用のインフレーション法フイルム製造の際に生じるフイルム表面にブリードする樹脂粉末、所謂粉ふきを解消するためのインフレーションフイルム成形樹脂組成物としてMFR0.05以上のポリエチレン樹脂100重量部に、ポリプロピレン樹脂1~30重量部及び平均粒径0.5~30μの無機物粉末1~50重量部を配合してなるインフレーションフイルム成形用マスターバッチが開示されている。例えば、特許文献5には、オレフィン系重合体と、特定の物性値を満たす超高分子量オレフィン系重合体に放射線を照射して架橋させた架橋超高分子量オレフィン系重合体と、を含有するオレフィン系重合体組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6-73202号公報
【特許文献2】特開昭49-23245号公報
【特許文献3】国際公開2009/044925号公報
【特許文献4】特開2000-319456号公報
【特許文献5】特開2013-245345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、特許文献2に記載のオレフィン系重合体フィルムのアンチブロッキング剤である無機物質は、硬度が高く、不定形のため、無機物質を表面に配したフィルム同士が擦れ合った際に、フィルムが傷つきやすくなるという問題がある。特許文献3に記載のアクリル系樹脂粒子では、オレフィン系重合体との親和性が不十分であることから、成膜時または二次加工時にアクリル系樹脂粒子からなるアンチブロッキング剤が脱落してしまう問題がある。特許文献4記載のインフレーション成形用樹脂組成物又はマスターバッチでは、耐ブロッキング性の具体的な検討はされていない。特許文献5に記載のオレフィン系フィルムでは、低温ヒートシール性についての具体的な検討までは至っていない。また、上記特許文献5では、インフレーション成形に対して、平滑なフィルム表面が得られるため高いブロッキング力を示すキャスト成形フィルムでの検討までは至っていない。
特許文献1~5に記載された従来のアンチブロッキング剤を単に用いただけでは、インフレーション成形におけるオレフィン系重合体フィルムの内層同士の剥がれ易さ(口開き性)は十分に解消されず、また更なる性能として、口開き性または耐ブロッキング性と低温ヒートシール性との両立も求められている。
【0007】
本発明に係る一実施形態が解決しようとする課題は、得られるフィルムの口開き性または耐ブロッキング性および低温ヒートシール性に優れるオレフィン系重合体組成物を提供することである。本発明に係る一実施形態が解決しようとする他の課題は、口開き性または耐ブロッキング性および低温ヒートシール性に優れるシーラントフィルム並びに無延伸フィルムを提供することである。また、本発明に係る一実施形態が解決しようとする他の課題は、口開き性および低温ヒートシール性に優れるインフレーションフィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 示差走査熱量測定(DSC)により測定した融点(Tm)が120℃以上170℃以下であるプロピレン系重合体(A)、
示差走査熱量測定(DSC)により測定した融点(Tm)が30℃以上、120℃未満であるオレフィン系重合体(B)、および、
下記要件(C-i)~(C-iii)を満たす超高分子量オレフィン系重合体の架橋物(C)、を含有するオレフィン系重合体組成物。
(C-i)135℃デカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]が5dl/g~50dl/g
(C-ii)平均粒子径d50が、3μm~30μm
(C-iii)目開き37μmメッシュ篩の通過量が95質量%以上
<2> 前記プロピレン系重合体(A)および前記オレフィン系重合体(B)の合計量100質量%とした場合、前記プロピレン系重合体(A)の含有量が、10質量%~90質量%であり、かつ、前記オレフィン系重合体(B)の含有量が、10質量%~90質量%である<1>に記載のオレフィン系重合体組成物。
<3> 前記オレフィン系重合体(B)は、エチレン重合体(B1)、プロピレン重合体(B2)、および、1-ブテン重合体(B3)からなる群より選ばれる少なくとも1種のオレフィン系重合体を含む、<1>または<2>に記載のオレフィン系重合体組成物。
<4> 前記超高分子量オレフィン系重合体の架橋物(C)の含有量が、前記(A)プロピレン系重合体、および、前記(B)オレフィン系重合体の合計100質量部とした場合、100ppm~10,000ppmである、<1>~<3>のいずれか1つに記載のオレフィン系重合体組成物。
<5> 前記超高分子量オレフィン系重合体は、超高分子量エチレン重合体である、<1>~<4>いずれか1つに記載のオレフィン系重合体組成物。
<6> <1>~<5>のいずれか1つに記載のオレフィン系重合体組成物から形成される層を含有するシーラントフィルム。
<7> <1>~<5>のいずれか1つに記載のオレフィン系重合体組成物からなる無延伸フィルム。
<8> <1>~<5>のいずれか1つに記載のオレフィン系重合体組成物からなるインフレーションフィルム。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る一実施形態によれば、得られるフィルムの口開き性または耐ブロッキング性および低温ヒートシール性に優れるオレフィン系重合体組成物が提供される。また、本発明に係る一実施形態によれば、口開き性または耐ブロッキング性および低温ヒートシール性に優れるシーラントフィルム並びに無延伸フィルムが提供される。また、本発明に係る一実施形態によれば、口開き性および低温ヒートシール性に優れるインフレーションフィルムが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の内容の説明は、本発明の代表的な実施形態に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されることはない。
本明細書において、「重合体」とは、単独重合体および共重合体を含む概念である。
本発明において「フィルム」とは平面上の成形物の総称であり、これにはフィルムの他、シート、膜(メンブレン)、テープなども含む概念である。
【0011】
本明細書において、数値範囲を示す「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
また、本明細書において、特に限定しない限りにおいて、組成物中の各成分、または、ポリマー中の各構成単位は1種単独で含まれていてもよいし、2種以上を併用してもよいものとする。
【0012】
本明細書において、組成物中の各成分、または、ポリマー中の各構成単位の量は、組成物中に各成分、または、ポリマー中の各構成単位に該当する物質または構成単位が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する該当する物質またはポリマー中に存在する複数の各構成単位の合計量を意味する。
本明細書において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
(オレフィン系重合体組成物)
本発明に係るオレフィン系重合体組成物は、示差走査熱量測定(DSC)により測定した融点(Tm)が120℃以上170℃以下であるプロピレン系重合体(A)(以下、「特定プロピレン系重合体(A)」ともいう。)、示差走査熱量測定(DSC)により測定した融点(Tm)が30℃以上、120℃未満であるオレフィン系重合体(B)(以下、「特定オレフィン系重合体(B)」ともいう。)、および、
下記要件(C-i)~(C-iii)を満たす超高分子量オレフィン系重合体の架橋物(C)、を含有する。
(C-i)135℃デカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]が5dl/g~50dl/g
(C-ii)平均粒子径d50が、3μm~30μm
(C-iii)目開き37μmメッシュ篩を少なくとも95質量%以上が通過
【0014】
発明者らが鋭意検討した結果、特定の範囲内に融点を有するプロピレン系重合体(A)と、特定の範囲内に融点を有するオレフィン系重合体(B)と、特定の超高分子量オレフィン系重合体の架橋物と、をオレフィン系重合体組成物に含有させることによって、得られるフィルムにおいて低温でのヒートシール強度(以下、「低温ヒートシール性」ともいう。)に優れ、かつ、インフレーション成形におけるフィルムの内層同士の剥がれ易さ(以下、単に「口開き性」ともいう。)または、キャスト成形の際におけるフィルム同士のブロッキング現象の抑制(耐ブロッキング性)に優れることを見出した。この理由は明らかではないが以下のように推察される。
【0015】
本発明に係るエチレン系共重合体組成物に含まれる特定の超高分子量オレフィン系の重合体の架橋物は、要件(C-i)~(C-iii)を満たすので、従来のオレフィン系重合体粒子と比較して、粒径が小さく、分子間が架橋されているため高分子量化されることによって、耐熱性が向上しており、溶融混練時に凝集することなく、重合体組成物全体にわたって粒子の微分散化が達成されていると考えられる。その結果、得られるフィルム中にポリマーの凝集成分の存在を低減させることでき、かつ、フィルム形成した場合でもフィルム表面に均一な凹凸を有しており、従来のアンチブロッキング剤である無機物粒子を含有するフィルムと比較して、特定の超高分子量オレフィン系の重合体の架橋物が滑落しにくいため、口開き性および耐ブロッキング性に優れると推定している。
また、本発明に係るオレフィン系重合体組成物は、特定の範囲内に融点を有するプロピレン系重合体(A)と、特定の範囲内に融点を有するオレフィン系重合体(B)と、を含有することで、ヒートシール時にオレフィン系重合体(B)が低温で融解し、対向するシーラント層のオレフィン系重合体(B)同士で融着するため、低温ヒートシール性にも優れると推定している。
以下、本発明に係るオレフィン系重合体組成物の各構成について説明する。
【0016】
<超高分子量オレフィン系重合体の架橋物(C)>
本発明に係るオレフィン系重合体組成物は、上記要件(C-i)~(C-iii)を満たす超高分子量オレフィン系重合体(以下、「特定超高分子量オレフィン系重合体」という場合がある。)の架橋物(C)(以下、単に「架橋物(C)」ともいう場合がある。)を含有する。
【0017】
<<特定超高分子量オレフィン系重合体>>
〔(C-i)〕
特定超高分子量オレフィン系重合体は、(C-i)135℃デカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]が5dl/g~50dl/gであるという要件を満たす。
本発明において、135℃デカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]が5dl/g以上のオレフィン系重合体を超高分子量オレフィン系重合体ということがある。
本発明において超高分子量オレフィン系重合体の135℃デカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]は5dl/g~50dl/gであり、5dl/g~40dl/gであることが好ましく、5dl/g~30dl/gであることがより好ましい。
極限粘度が5dl/g~50dl/gの範囲内にあると、耐摩耗性および自己潤滑性などに優れるので好ましい。
【0018】
〔(C-ii)〕
特定超高分子量オレフィン系重合体は、(C-ii)平均粒子径d50が、3μm~30μmであるという要件を満たす。
平均粒子径d50が30μm以下であると、後述する特定オレフィン系重合体(A)とのブレンドにより得られるフィルムの耐衝撃強度が向上し、また、得られるフィルムの外観がより良好になる点で好ましい。一方、平均粒子径d50が3μm以上であると、フィルム成形時の粒子のハンドリングが良好であることから好ましい。
超高分子量オレフィン系重合体の平均粒子径d50は、コールターカウンター法による重量基準粒度分布の測定によって求められ、粒形分布の積算値が50質量%となる値を意味する。
超高分子量オレフィン系重合体の平均粒子径d50は上記観点から、3μm~25μmであることが好ましく、3μm~20μmであることがより好ましく、3μm~15μmであることが更に好ましい。
【0019】
〔(C-iii)〕
特定超高分子量オレフィン系重合体は、(iii)目開き37μmメッシュ篩の通過量が95質量%以上であるという要件を満たす。
本明細書において、特定超高分子量オレフィン系重合体は、振動篩または超音波式振動篩を用い、篩にかける特定超高分子量オレフィン系重合体の全質量に対して、目開き37μmのメッシュ篩(Tyler#400)を95質量%以上通過するものを意味する。
目開き37μmメッシュ篩の通過量が95重量%より多いということは、超高分子量オレフィン系重合体中に粗大粒子の存在量が少ないことを意味する。粗大粒子の存在量が少ない場合、当該超高分子量オレフィン系重合体から製造される超高分子量オレフィン系重合体の架橋物(C)をオレフィン系重合体組成物に含有させた場合、超高分子量オレフィン系重合体(粒子)が組成物中に均一に分散されやすくなるため、口開き性、および、耐ブロッキング性の向上に効率よく寄与することになるため、好ましいと考えられる。
このような点から、目開き37μmメッシュ篩の通過量としては、90質量%以上通過するものであることが好ましく、95質量%以上通過するものであることがより好ましく、99質量%通過するものであることがさらに好ましい。
【0020】
特定超高分子量オレフィン系重合体の組成は、上記要件(C-i)~(C-iii)を満たせば特に制限はない。特定超高分子量オレフィン系重合体としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ-1-ブテン、ポリ-4-メチル-1-ペンテンなどの単独重合体、または、エチレンと少量の他のα-オレフィン、例えば、エチレンとプロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンまたは4-メチル-1-ペンテンなどとの共重合体が挙げられる。
これらの中でも、特定超高分子量オレフィン系重合体としては、低温ヒートシール性に優れる観点から、エチレン系の重合体(超高分子量のエチレン系重合体)であることが好ましく、エチレンの単独重合体(超高分子量エチレン重合体)であることがより好ましい。
【0021】
本発明において特定超高分子量オレフィン系重合体の製造方法は、特定超高分子量オレフィン系重合体が上記要件(C-i)~(C-iii)を満たすものであれば特に限定は無いが、例えば、以下(1)~(5)の文献に開示された方法により製造することができる。
(1)国際公開第2006/054696号
(2)国際公開第2008/013144号
(3)国際公開第2009/011231号
(4)国際公開第2010/074073号
(5)特開2012-131959号公報
【0022】
架橋物(C)は、特定超高分子量オレフィン系重合体の架橋物であり、特定超高分子量オレフィン系重合体を架橋させる方法としては、所望の効果が得られれば特に制限はない。
架橋方法としては、熱による架橋方法、活性光線、放射線などの照射による架橋方法等が挙げられ、これらの中でも、口開き性、および、耐ブロッキング性に優れる観点から、放射線による架橋方法であることが好ましい。
【0023】
特定超高分子量オレフィン系重合体に放射線を照射することによって、重合体中の分子鎖の切断と架橋が生じ、その結果、分子鎖が架橋点で結び合わされる。これより、ガラス転移温度または融点以上でも分子鎖が自由に流動しにくくなりすることができなくなり、高温特性が改善されやすくなり、さらに応力を受けても形態を保つことができ、機械的特性が保持されると本発明者らは推定している。
このような点から、架橋物(C)は、上記特定超高分子量オレフィン系重合体に放射線を照射して得られる架橋物であることが好ましい。
【0024】
放射線としては、特に制限はなく、例えば、α線、β線、γ線、電子線、イオン等が挙げられ、これらの中でも、電子線またはγ線が好適に挙げられる。
【0025】
放射線の照射線量は、使用する特定の超高分子量オレフィン系重合体を構成するモノマー種に応じて適宜設定することができ、通常20~700kGyであることが好ましく、100~500kGyであることがより好ましい。
照射線量が上記範囲内にある場合、超高分子量オレフィン系重合体の架橋反応を効率よく進行させることができる。また、このようにして得られた特定超高分子量オレフィン系重合体の架橋物(C)をオレフィン系重合体組成物に含有させると、特定超高分子量オレフィン系重合体の架橋物(C)(粒子)同士の再凝集を抑制することが可能となる。
【0026】
口開き性及び低温ヒートシール性を両立する観点から、超高分子量オレフィン系重合体の架橋物(C)の含有量が、オレフィン系重合体組成物の全質量に対して、100ppm(parts per million)~10,000ppmであることが好ましく、100ppm~5000ppmであることがより好ましい。
【0027】
口開き性および低温ヒートシールの観点から、超高分子量オレフィン系重合体の架橋物(C)の含有量が、(A)プロピレン系重合体、および、(B)オレフィン系重合体の合計100質量部に対して、100ppm(parts per million)~10,000ppmであることが好ましく、200ppm~8,000ppmであることがより好ましく、400ppm~4,000ppmであることが更に好ましく、500ppm~2,000ppmであることが特に好ましく、600ppm~1,500ppmであることが最も好ましい。
超高分子量オレフィン系重合体の架橋物(C)は、1種単独であってもよいし、2種以上を併用していてもよい。
【0028】
<特定プロピレン系重合体(A)>
特定プロピレン系重合体(A)は、示差走査熱量測定(DSC)により測定した融点(Tm)が120℃以上170℃以下である。
口開き性及び低温ヒートシール性を両立する観点から、特定プロピレン系重合体(A)の融点としては、121℃~155℃であることが好ましく、130℃~145℃であることが更に好ましい。上記示差走査熱量測定(DSC)により測定した融点(Tm)は、下記の測定条件により求められる。
【0029】
(測定条件)
融点(Tm)は、DSC測定装置を用い、200℃で10分間保持した後、降温速度10℃/分で-20℃まで冷却し、-20℃で1分間保持した後、再度昇温速度10℃/分で200℃まで昇温したときに観測される温度(融解ピークのピーク頂点の温度)として求めることができる。
【0030】
特定プロピレン系重合体(A)の融点を121℃以上170℃以下に調整する方法としては、一例として、モノマーフィード量等の重合条件を制御する方法が挙げられる。例えば、チーグラー・ナッタ系触媒で重合の場合はコモノマー含有率を20モル%未満に制御する方法、メタロセン系触媒で重合の場合はコモノマー含有率を10モル%未満に制御する方法が挙げられ、この方法により所望とする融点を有する特定プロピレン系重合体(A)が得られる。
【0031】
特定プロピレン系重合体(A)の組成は、融点が121℃以上、170℃以下であれば特に限定されないが、プロピレンの単独重合体(以下、「ホモPP:hPP」とも称する場合がある。)、主成分であるプロピレンと他のエチレンおよび/またはランダム共重合体(以下、「ランダムPP:rPP」とも称する場合がある。)、およびブロック共重合体(以下、「ブロックPP:bPP」とも称する場合がある。)などが挙げられる。
なお、プロピレンを主成分とするプロピレン系重合体において、プロピレンに由来する構成単位の含有量はプロピレン系重合体を構成する全構成単位の合計モル数に対して50モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがより好ましく、90モル%以上であることがより好ましい。
【0032】
特定プロピレン系重合体(A)としては、プロピレンとエチレンおよび/または炭素数4以上20以下のα-オレフィンを共重合させたランダム共重合体が好ましい。耐ブロッキング性と低温ヒートシール性のバランスを向上させるため、プロピレンとエチレンと炭素数4以上20以下のα-オレフィンとの共重合体が好ましく、プロピレン・エチレン・1-ブテン共重合体が特に好ましい。
【0033】
特定プロピレン系重合体(A)は、ASTM D1238に準拠して230℃、2.16kg荷重の条件で測定したメルトフローレート(MFR)が、0.1~100g/10minであることが好ましく、0.5~50g/10minであることがより好ましく、1~20g/10minであることが更に好ましい。
【0034】
特定プロピレン系重合体(A)の製造方法としては、公知の重合方法が挙げられ、例えば、チーグラー・ナッタ系触媒、メタロセン系触媒などの公知の触媒の存在下に、モノマーを気相法、バルク法、スラリー法などの公知の重合法により重合させる方法が挙げられる。
【0035】
特定プロピレン系重合体(A)の含有量(特定プロピレン系重合体(A)を複数有する場合はその合計量)としては、組成物の全質量に対して、10質量%~90質量%であることが好ましく、15質量%~70質量%であることがより好ましく、20質量%~60質量%であることが更に好ましく、20質量%~50質量%であることが特に好ましい。
特定プロピレン系重合体(A)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0036】
<特定オレフィン系重合体(B)>
特定オレフィン系重合体(B)は、示差走査熱量測定(DSC)により測定した融点(Tm)が30℃以上、120℃未満である。特定オレフィン系重合体(B)の融点は、30℃以上、120℃未満または融点が観測されなくてもよい。
特定オレフィン系重合体(B)は、示差走査熱量測定(DSC)により測定した融点(Tm)が30℃以上、120℃未満であるオレフィンを含む重合体であれば特に限定はされない。本発明に係るオレフィン系重合体(B)の融点が上記範囲内であると、低温ヒートシール性にも優れる。
【0037】
特定オレフィン系重合体(B)としては、α-オレフィンの単独重合体、および、α-オレフィンとα-オレフィン以外のモノマーとの共重合体等が挙げられる。
【0038】
特定オレフィン系重合体(B)としては、具体的には、エチレンの単独重合体、および、エチレンと炭素数3以上のα-オレフィンとの共重合体(すなわち、エチレン・α-オレフィン共重合体)等のエチレンを主成分とするエチレン系重合体(以下、「エチレン重合体(B1)」ともいう。)、プロピレンとエチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィンとの共重合体(すなわち、プロピレン・エチレン共重合体)等のプロピレンを主成分とするプロピレン系重合体(以下、「プロピレン重合体(B2)」ともいう。)、1-ブテンの単独重合体、および、1-ブテンとエチレン、プロピレンまたは炭素数5以上のα-オレフィンなどとの共重合体等の1-ブテンを主成分とする1-ブテン系重合体(以下、「1-ブテン重合体(B3)」ともいう。〕などの重合体が挙げられる。
【0039】
なお、エチレンを主成分とするエチレン系重合体において、エチレンに由来する構成単位の含有量は、エチレン系重合体を構成する全構成単位の合計モル数に対して50モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがより好ましく、90モル%以上であることがより好ましい。同様に、プロピレンを主成分とするプロピレン系重合体において、プロピレンに由来する構成単位の含有量はプロピレン系重合体を構成する全構成単位の合計モル数に対して50モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましく、70モル%以上であることがより好ましい。また同様に、1-ブテンを主成分とする1-ブテン系重合体において、1-ブテンに由来する構成単位の含有量は、1-ブテン系重合体を構成する全構成単位の合計モル数に対して50モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましく、70モル%以上であることがより好ましい。
【0040】
<<エチレン重合体(B1)>>
エチレン重合体(B1)において、エチレンと共重合される炭素数3以上のα-オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン等の炭素数3~20のα-オレフィンが挙げられる。これらの中でも、上記α-オレフィンとしては、強度と柔軟性、低温ヒートシール性改善性能のバランスに優れる観点から、1-ブテン、1-ヘキセン、および、1-オクテンが好ましい。
【0041】
エチレン重合体(B1)の具体例としては、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、および、エチレン・α-オレフィン共重合体などが挙げられる。
エチレンと共重合されるα-オレフィンは、1種単独であってもよいし、2種以上のα-オレフィンであってもよい。
【0042】
<<プロピレン重合体(B2)>>
プロピレン重合体(B2)において、プロピレンと共重合される炭素数4以上のα-オレフィンとしては、プロピレン以外の上記エチレン重合体(B1)におけるα-オレフィンが挙げられる。
プロピレン重合体(B2)としては、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体、または、プロピレン・エチレン・1-ブテン共重合体が好ましい。これらの中でも、プロピレン重合体(B2)としては、柔軟性に優れ、応力緩和を促進する観点から、プロピレン・エチレン共重合体、または、プロピレン・エチレン・1-ブテン共重合体であることが好ましい。
【0043】
低融点でも結晶性が高く、耐ブロッキング性が得られやすい観点から、プロピレン重合体(B2)としては、プロピレン・1-ブテン共重合体が好ましい。
プロピレンと共重合されるα-オレフィンは、1種であってもよいし、2種以上のエチレンを含むα-オレフィンであってもよい。
【0044】
<<1-ブテン重合体(B3)>>
1-ブテン重合体(B3)において、1-ブテンと共重合される炭素数5以上のα-オレフィンとしては、上記エチレン重合体(B1)における炭素数5以上のα-オレフィンが挙げられる。
1-ブテン重合体(B3)としては、口開き性および低温ヒートシール性の観点から、1-ブテン・エチレン共重合体、または、1-ブテン・プロピレン共重合体であることが好ましい。
【0045】
これらの中でも、1-ブテン重合体(B3)としては、融点が低く低温ヒートシール性に優れ、かつ耐ブロッキング性が得られやすい観点から、1-ブテン・エチレン共重合体、または、1-ブテン・プロピレン共重合体であることが好ましい。
1-ブテンと共重合されるα-オレフィンは1種であってもよいし、2種以上のエチレンまたはプロピレンを含むα-オレフィンであってもよい。
【0046】
特定オレフィン系重合体(B)の含有量(特定オレフィン系重合体(B)を複数種有する場合にはその合計含有量)としては、組成物の全質量に対して、10質量%~90質量%であることが好ましく、30質量%~85質量%であることがより好ましく、40質量%~80質量%であることが更に好ましく、50質量%~80質量%であることが特に好ましい。
特定オレフィン系重合体(B)は、1種類の重合体として含まれていてもよいし、2種類以上の共重合体として含まれていてもよい。また、特定オレフィン系重合体(B)は単独重合体と共重合体とが組み合わされたものであってもよい。
【0047】
口開き性および低温ヒートシール性に優れる観点から、特定オレフィン系重合体(B)としては、エチレン重合体(B1)、プロピレン重合体(B2)、および、1-ブテン重合体(B3)からなる群より選ばれる少なくとも1種のオレフィン系重合体を含むことが好ましく、プロピレン重合体(B2)および1-ブテン重合体(B3)からなる群より選ばれる少なくとも1種のオレフィン系重合体を含むことがより好ましく、重合体(B2)または1-ブテン重合体(B3)を含むことが更に好ましく、プロピレン・エチレン共重合体またはプロピレン・1-ブテン共重合体を含むことが特に好ましい。
プロピレン重合体(B2)または1-ブテン重合体(B3)を含む場合、これら重合体の融点が低くても、耐ブロッキング性が得られやすいという特徴を有する。
【0048】
特定オレフィン系重合体(B)は、ASTM D1238に準拠して230℃、2.16kg荷重の条件で測定したMFRが、0.1~100g/10minであることが好ましく、0.5~50g/minであることがより好ましく、1~20g/10minであることが更に好ましい。
【0049】
また、特定オレフィン系重合体(B)は、ASTM D1238に準拠して190℃、2.16kg荷重の条件で測定したMFRが、0.1~100g/10minであることが好ましく、0.5~50g/10minであることがより好ましく、1~20g/10minであることが更に好ましい。
【0050】
口開き性および低温ヒートシール性の観点から、本発明に係るオレフィン系重合体組成物は、プロピレン系重合体(A)および上記オレフィン系重合体(B)の合計量100質量%に対して、プロピレン系重合体(A)の含有量が10質量%~90質量%であり、かつ、オレフィン系重合体(B)の含有量が10質量%~90質量%であることが好ましく、プロピレン系重合体(A)の含有量が15質量%~70質量%であり、かつ、オレフィン系重合体(B)の含有量が30質量%~85質量%であることがより好ましく、プロピレン系重合体(A)の含有量が20質量%~60質量%であり、かつ、オレフィン系重合体(B)の含有量が50質量%~80質量%であることが更に好ましく、プロピレン系重合体(A)の含有量が20質量%~50質量%であり、かつ、オレフィン系重合体(B)の含有量が50質量%~80質量%であることが特に好ましい。ただし、プロピレン系重合体(A)および上記オレフィン系重合体(B)の合計量は100質量%である。
【0051】
〔添加剤〕
本発明のオレフィン系重合体組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、核剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、スリップ剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス、充填剤、上記超高分子量オレフィン系重合体の架橋物(C)以外のアンチブロッキング剤などを更に含んでいてもよい。
【0052】
核剤としては、ジベンジリデンソルビトール系核剤、リン酸エステル塩系核剤、ロジン系核剤、安息香酸金属塩系核剤、フッ素化ポリエチレン、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)リン酸ナトリウム、ピメリン酸やその塩、2,6-ナフタレン酸ジカルボン酸ジシクロヘキシルアミド等が挙げられる。
核剤の配合量としては、特に制限はないが、オレフィン系重合体組成物の全質量に対して0.1~1質量%程度であることが好ましい。配合タイミングに特に制限はなく、特定プロピレン系重合体(A)、特定オレフィン系重合体(B)または超高分子量オレフィン系重合体の重合反応中、もしくは、重合後、またはフィルム成形加工時に添加してもよい。
【0053】
酸化防止剤としては、公知の酸化防止剤が挙げられる。具体的には、ヒンダードフェノール化合物、イオウ系酸化防止剤、ラクトーン系酸化防止剤、有機ホスファイト化合物、有機ホスフォナイト化合物、またはこれらを数種類組み合わせたものが挙げられる。
【0054】
滑剤としては、例えば、ラウリル酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸などの飽和または不飽和脂肪酸のナトリウム、カルシウム、マグネシウム塩などが挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いてもよい。
またかかる滑剤の配合量は、オレフィン系重合体組成物100質量部とした場合、通常0.1~3100質量部、好ましくは0.1~2100質量部であることが好ましい。
【0055】
スリップ剤としては、ラウリル酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、エルカ酸、ヘベニン酸などの飽和もしくは不飽和脂肪酸のアミド、または、これらの飽和もしくは不飽和脂肪酸のビスアマイドを用いることが好ましい。これらのうちでは、エルカ酸アミドおよびエチレンビスステアロアマイドが特に好ましい。これらの脂肪酸アミドは、オレフィン系重合体組成物100質量部とした場合、0.01~100質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0056】
〔オレフィン系重合体組成物の製造方法〕
本発明に係るオレフィン系重合体組成物は、上述の超高分子量オレフィン系重合体の架橋物(C)、特定プロピレン系重合体(A)および特定オレフィン系重合体(B)の各成分を混合し、更に必要に応じて、後述する添加剤を混合することにより得ることができる。
【0057】
各成分の混合方法については、種々公知の方法が挙げられ、例えば、多段重合法、プラストミル、ヘンシェルミキサー、V-ブレンダー、リボンブレンダー、タンブラー、ブレンダー、ニーダールーダー等で混合する方法、あるいは混合後、一軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等で溶融混練後、造粒または粉砕する方法を採用することができる。当該方法により、各成分および添加剤が均一に分散混合された高品質のオレフィン系重合体組成物が得られる。
【0058】
上記オレフィン系重合体組成物の形状としては、特に制限はなく、ペレット状、シート状、ストランド状、チップ状等が挙げられる。また、上記オレフィン系重合体組成物に含まれる上述の超高分子量オレフィン系重合体の架橋物(C)、特定プロピレン系重合体(A)および特定オレフィン系重合体(B)の各成分を溶融混練後、直接成形品としてもよい。
【0059】
(シーラントフィルム)
本発明に係るシーラントフィルムは、上記オレフィン系重合体組成物から形成される層を含有することが好ましい。
オレフィン系重合体組成物から形成される層の形成方法として、特に制限はなく、公知の形成方法を用いることができる。層の形成方法としては、例えば、上記オレフィン系重合体組成物および必要に応じて添加剤等を混合し加熱溶融したのち、押出し成形機、インフレーション成形機等を用いてオレフィン系重合体組成物から形成される層を形成することができる。
【0060】
シーラントフィルムは、無延伸フィルムであってもよいし、延伸フィルムであってもよい。
シーラントフィルムが無延伸フィルムである場合、上記オレフィン系重合体組成物を用いて、例えば、一般的に用いられているキャスト成形機、インフレーション成形機などの公知のフィルム形成機を用いて無延伸シーラントフィルムを形成することができる。
【0061】
シーラントフィルムが延伸フィルムである場合、上記オレフィン系重合体組成物を用いてフィルムとして形成された後、このオレフィン系重合体組成物から形成されたフィルムを延伸処理してもよい。シーラントフィルムが延伸フィルムである場合、コシ(剛性)に優れる。
【0062】
シーラントフィルムの延伸方法としては、延伸フィルムを製造する公知の方法を用いることができる。具体的には、ロール延伸、テンター延伸、チューブラー延伸あるいは当該延伸方法の組み合わせ等を挙げられる。
延伸(面)倍率としては、1.5~50倍であることが好ましく、2~40倍であることが好ましい。
【0063】
低温ヒートシール性に優れる観点から、シーラントフィルムにおけるヒートシール強度としては、70℃以上80℃以下の温度範囲におけるヒートシール強度の最大値が、8N/15mm以上であるか、または、70℃以上80℃以下の温度範囲におけるヒートシール強度の最大値が8N/15mm未満であり、かつ、80℃を超え100℃以下の温度範囲におけるヒートシール強度の最大値が8N/15mm以上であることが好ましく、70℃以上80℃以下の温度範囲におけるヒートシール強度の最大値が、10N/15mm以上であるか、または、70℃以上80℃以下の温度範囲におけるヒートシール強度の最大値が10N/15mm未満であり、かつ、80℃を超え100℃以下の温度範囲におけるヒートシール強度の最大値が10N/15mm以上であることがより好ましい。
【0064】
シーラントフィルムの厚み(以下、「シーラント層の厚み」と称する場合がある。)としては、通常0.1~50μmであることが好ましく、0.3~40μmであることがより好ましく、0.5~25μmであることが更に好ましい。
シーラントフィルムを複数有するような積層体である場合には、シーラントフィルムをそれぞれ上記の厚みとするのが好ましい。
【0065】
シーラントフィルムの厚みの合計は、後述の基材層と合わせた全体の厚みの通常50%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましく、35%以下であることが更に好ましく、20%以下であることが特に好ましい。これにより積層体が基材層を主体とした単一素材に近づき、リサイクルが容易となる利点がある。
【0066】
-基材フィルム-
シーラントフィルムは、シーラントフィルムを支持するために、後述する基材フィルムを備える基材フィルム付きシーラントフィルムであってもよい。
基材フィルム付きシーラントフィルムである場合、基材フィルムとしては、ポリプロピレンフィルムであることが好ましい。
【0067】
上記ポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレンとしては、プロピレンの単独重合体およびプロピレンを主モノマーとする共重合体を挙げられる。共重合体の場合、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよい。プロピレンと共重合するモノマーとしては、プロピレン以外のα-オレフィン、ジエン化合物などが挙げられる。ポリプロピレン中のプロピレン含有量(プロピレンから誘導される構造単位)は85~100モル%であることが好ましく、90~99.5モル%であることがより好ましい。また、プロピレン以外の他のモノマーの含有量は、0~15モル%であることが好ましく、0.5~10モル%であることがより好ましい。
【0068】
プロピレンと共重合するプロピレン以外の他のα-オレフィンとしては、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン等の炭素数2または4~20のα-オレフィンなどが例示できる。
【0069】
ポリプロピレンの具体例としては、プロピレン単独重合体、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・1-ブテンランダム共重合体、プロピレン・1-ブテン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・1-ヘキセンランダム共重合体、プロピレン・3-メチル-1-ブテンランダム共重合体、プロピレン・4-メチル-1-ペンテンランダム共重合体などが挙げられる。
ポリプロピレンは1種単独で使用することもできるし、2種以上を併用することもできる。
【0070】
基材フィルムに用いられるポリプロピレンは、上記オレフィン系重合体組成物に含まれる特定プロピレン系重合体(A)、および/または上記プロピレン重合体(B2)と同じ重合体であってもよい。
【0071】
ポリプロピレンのMFRとしては、ASTM D1238に準拠して230℃、2.16kg荷重の条件で測定したMFRが0.1~10g/10minであることが好ましく、0.5~8g/10minであることがより好ましい。
ポリプロピレンの融点(Tm)としては、120~165℃であることが好ましく、135~150℃であることがより好ましい。
【0072】
ポリプロピレンの製造方法としては、特に制限はなく公知の製造方法が挙げられ、例えば、チーグラー・ナッタ系触媒、メタロセン系触媒などの公知の触媒の存在下に、モノマーを気相法、バルク法、スラリー法などの公知の重合法により重合させる製造方法が挙げられる。
【0073】
基材フィルムは上記シーラントフィルムよりも厚いことが好ましい。基材フィルムとシーラントフィルムとの積層体が単一素材に近づき、リサイクルが容易となる利点がある。
基材フィルムの厚みの合計は、積層体全体の厚みに対して通常50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、75%以上であることが更に好ましく、80%以上であることが特に好ましい。
基材フィルムは、通常厚みが10~200μmであることが好ましく、11~100μmであることがより好ましく、12~50μmであることが更に好ましい。
【0074】
基材フィルムは、上記ポリプロピレンから形成されたフィルムに延伸処理を施していない無延伸ポリプロピレンフィルム(CPPフィルム)および二軸延伸処理を施して得られる二軸延伸処理ポリプロピレンフィルム(OPPフィルム)から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
延伸方法としては、延伸フィルムを製造する公知の方法を用いることができ、具体的には、上述のシーラントフィルムの延伸方法が挙げられ、好ましい態様も同様である。
【0075】
基材フィルムは、必要に応じて添加剤を含んでいてもよく、添加剤としては、上記のシーラントフィルムにおける添加剤が挙げられる。
基材フィルムは、1層からなっていてもよく、複数の層からなっていてもよい。
【0076】
シーラントフィルムは、特定の機能を付与するため、上記基材フィルム以外の層(以下、「その他の層」)を更に含有していてもよい。その他の層としては、例えば、印刷層、バリア層およびエンボス加工層などの機能材層が挙げられる。
【0077】
機能材層としては、無機化合物や無機酸化物を蒸着させた樹脂フィルム、金属箔、特殊な機能を有する樹脂の塗布膜、絵柄が印刷された樹脂フィルム等が挙げられる。
【0078】
シーラントフィルムの態様としては、シーラントフィルム/基材フィルムの2層構造、シーラントフィルム/基材フィルム/シーラントフィルムの3層構造などが挙げられるが、これに限定されない。
シーラントフィルムと基材フィルムとの間に接着剤層を設けてもよい。
【0079】
シーラントフィルムが基材フィルムを備える場合、シーラントフィルムと基材フィルムとは共押出により積層してもよいし、押出ラミネーション、ドライラミネーションなど一般的なラミネート方法により積層してもよい。
シーラントフィルムと基材フィルムを共押出した上に、基材フィルムを更にラミネートしてもよい。
【0080】
シーラントフィルムが基材フィルムを備える場合、ドライラミネーション、ノンソルベントラミネーション、サンドラミネーション等により、接着層を介してシーラントフィルムと基材フィルムとを積層して製造してもよく、溶融押出しラミネートによりシーラントフィルムと基材フィルムとを積層して製造してもよい。
これらの中でも、ドライラミネーションまたは溶融押出ラミネーションで積層する方法が好適である。
【0081】
上記方法で製造されたシーラントフィルムを延伸してもよい。延伸方法としては、延伸フィルムを製造する公知の方法を用いることができる。具体的な延伸方法としては、上述のシーラントフィルムにおける延伸方法が挙げられ、好ましい延伸(面)倍率も同様である。
【0082】
上記シーラントフィルムは、低温ヒートシール性に優れる観点から、シーラントフィルム面同士を向かい合わせ、または、積層体フィルムのシーラントフィルムの熱融着層と他のフィルムとを向かい合わせ、その後、外表面側から所望容器形状になるようにその周囲の少なくとも一部をヒートシールすることによって、容器を製造することができる。また周囲を全てヒートシールすることにより、密封された袋状容器を製造することができる。この袋状容器の成形加工を内容物の充填工程と組み合わせると、すなわち、袋状容器の底部および側部をヒートシールした後内容物を充填し、次いで上部をヒートシールすることで包装体を製造することができる。この包装体は、スナック菓子やパン等の固形物、粉体、あるいは液体材料の自動包装装置に利用することができる。
【0083】
また、シーラントフィルムを予め真空成形や圧空成形等によりカップ状に成形した容器、射出成形等で得られた容器、あるいは紙基材から形成された容器等に内容物を充填し、その後シーラントフィルムを蓋材として被覆し、容器上部ないし側部をヒートシールすることにより、内容物を包装した容器が得られる。この容器は、即席麺、味噌、ゼリー、プリン、スナック菓子等の包装に好適に利用される。
【0084】
(無延伸フィルム)
本発明に係る無延伸フィルムは、口開き性および低温ヒートシール性を両立する観点から、上記オレフィン系重合体組成物から形成される層を含有することがより好ましい。
無延伸フィルムの厚みとしては、用途によっても異なるが、通常10~100μmであることが好ましく、20~80μmであることが好ましい。
【0085】
無延伸フィルムの形成方法としては、特に制限はなく、上記オレフィン系重合体組成物を用いて、例えば、押し出し成形する方法、または、一般的に用いられているキャスト成形機、インフレーション成形機などの公知のフィルム形成機を用いて無延伸フィルムを形成する方法が挙げられる。
【0086】
無延伸フィルムは、口開き性および低温ヒートシール性を両立する観点から、各種包装用分野、例えば、野菜、魚肉などの生鮮食品;スナック、麺類の乾燥食品、スープ、漬物などの水物食品などの各種食品包装用分野;錠剤、粉末、液体などの各種形態の医療品、医療周辺材料などに用いる医療関連品包装用分野;カセットテープ、電気部品などの各種電気機器包装用分野等、広範囲な包装用分野で使用することができる。
【0087】
(インフレーションフィルム)
本発明に係るインフレーションフィルムは、インフレーションフィルム成形時にも、安定して成形可能であり、また、口開き性および低温ヒートシール性に優れる観点から、上記オレフィン系重合体組成物から形成される層を含有することが好ましい。
インフレーションフィルムは上記オレフィン系重合体組成物から形成される単層のフィルムであってもよいし、上記オレフィン系重合体以外の他の重合体との多層フィルムであってもよい。
インフレーションフィルムは、特に、空冷インフレーションフィルム成形において、口開き性および低温ヒートシール性が、より発現され得る。
【0088】
インフレーションフィルムは、上記オレフィン系重合体組成物を、例えばインフレーションフィルム成形機を用いてインフレーションフィルム成形することにより、インフレーションフィルムを製造することができる。
【0089】
空冷インフレーションフィルム成形の条件としては、特に限定されないが、成形温度は使用する原料樹脂の融点以上300℃未満であることが好ましい。
また、膨比が1.1~5.0であることが好ましく、1.2~4.5であることがより好ましい。上記膨比とは、ダイスの径に対するバブル最大径の比を指す。
引取り速度としては、フィルム厚みと幅、押出量により決定され、製膜安定性を維持できる範囲で調整可能であるが、一般に、1~150m/分であることが好ましく、1~100m/分であることがより好ましい。
【0090】
インフレーションフィルムの厚みとしては、用途によっても異なるが、通常10~100μmであることが好ましく、20~80μmであることがより好ましい。
【0091】
インフレーションフィルムの用途としては、例えば、日用雑貨包装材、食品包材、食品容器、レトルト容器、保護フィルム、化粧フィルム・シート、シュリンクフィルム、輸液バッグ、熱融着フィルム、延伸フィルム、延伸用原料フィルム、医療容器等の材料が好適に挙げられる。
【実施例0092】
以下に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの施例に限定されない。
なお、本実施例の中で示した各物性測定は以下の方法によった。
【0093】
<プロピレン系重合体(A)>
rPP-1(A-1):ランダムポリプロピレン(MFR(230℃、2.16kg荷重、ASTM D1238に準拠):7g/10min、示差走査熱量測定(DSC)により測定した融点:138℃、プロピレン含有量:96モル%)
rPP-2(A-2):ランダムポリプロピレン(MFR(230℃、2.16kg荷重、ASTM D1238に準拠):2.2g/10min、示差走査熱量測定(DSC)により測定した融点:133℃、プロピレン含有量:95モル%)
【0094】
<オレフィン系重合体(B)>
BPR(B3-1):1-ブテン・プロピレン共重合体(MFR(230℃、2.16kg荷重、ASTM D1238に準拠):9g/10min、MFR(190℃、2.16kg荷重、ASTM D1238に準拠):4g/10min、示差走査熱量測定(DSC)により測定した融点:100℃、1-ブテン含有量:87モル%、プロピレン含有量:13モル%)
PER(B2-1):プロピレン・エチレン共重合体(MFR(230℃、2.16kg荷重、ASTM D1238に準拠):8g/10min、MFR(190℃、2.16kg荷重、ASTM D1238に準拠):3.7g/10min、示差走査熱量測定(DSC)により測定した融点:75℃、プロピレン含有量:87モル%、エチレン含有量:13モル%)
上記プロピレン系重合体(A)及びオレフィン系重合体(B)における示差走査熱量測定(DSC)により測定した融点は、上述の示差走査熱量測定(DSC)の測定方法および測定条件に従い測定した。
【0095】
<超高分子量オレフィン系重合体の架橋物(C)>
超高分子量ポリエチレン微粒子(三井化学株式会社製、ミペロン(登録商標)PM-200、極限粘度[η]=13.0dl/g、MFR(190℃、21.6kg荷重)=0.020g/10分、平均粒子径d50=10.5μm、目開き37μmメッシュ篩通過率>99質量%)に対して、照射線量200kGyの電子線を照射し、超高分子量ポリエチレン重合体の架橋物(C-1)を得た。
【0096】
<ヒートシール強度(HS強度)の測定方法>
ヒートシール強度は、以下の測定方法により測定した。
以下で得られた2枚の基材フィルム付きのシーラントフィルムを、シーラントフィルム面同士が対向するように2枚を重ね合わせたシーラントフィルムを用意した。
下部のシールバーを70℃に設定し、上部のシールバーを70℃、80℃、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃または160℃に設定し、0.2MPaの圧力で1秒間、シールバーの幅5mmで上記各温度にてヒートシールした後、放冷した。
次いで、ヒートシール済のシーラントフィルムからそれぞれ各温度にてヒートシールされた部分を含むように15mm幅でシーラントフィルムを切り取り試験片とした。各温度にてヒートシールされた各試験片について、クロスヘッドスピード300mm/分の条件でヒートシール部を180°方向に剥離した際の剥離強度(N/15mm)を測定した。得られた数値を下記の評価基準に従って評価した。評価基準が「A」および「B」の場合には、低温ヒートシール性に優れるといえる。
【0097】
-評価基準:〔低温ヒートシール性〕-
70℃以上80℃以下の温度範囲におけるヒートシール強度の最大値が、8N/15mm以上のものを「A」、
70℃以上80℃以下の温度範囲におけるヒートシール強度の最大値が8N/15mm未満であり、かつ、80℃を超え100℃以下の温度範囲におけるヒートシール強度の最大値が8N/15mm以上のものを「B」、
70℃以上100℃以下の温度範囲における最大のヒートシール強度の最大値が8N/15mm未満、かつ、100℃を超え120℃以下の温度範囲におけるヒートシール強度の最大値が8N/15mm以上のものを「C」、
70℃以上120℃未満の温度範囲におけるヒートシール強度の最大値が8N/15mm未満のものを「D」とした。
【0098】
<ブロッキング力の測定方法>
以下で得られるシーラントフィルムを200mm幅の短冊状にし、2枚の短冊状のフィルムのシーラント面同士が対向するように重ね合わせ、50℃のエアーオーブンに入れ、重ね合わせた短冊状のフィルムの上から20kgの荷重をかけ3日間養生した。その後、短冊状のフィルムをエアーオーブンから取り出し、2枚の短冊状のフィルムを200mm/minの速度で180°方向に剥離した際のブロッキング力を測定し、以下の評価基準に従って評価した。なお、ブロッキング力は、測定値が小さいほど、耐ブロッキング性に優れるといえる。
【0099】
-評価基準:-
「A」:ブロッキングが確認されない。
「B」:ブロッキング力が0N/mを超え10N/m未満である。
「C」:ブロッキング力が10N/m以上かつ100N/m未満である。
「D」:ブロッキング力が100N/m以上である。
【0100】
<口開き性の評価方法>
口開き性は以下の方法により測定した。インフレーション成形機にて下記で調製されたシーラントフィルム用樹脂組成物を内面(以下、「シーラント内面」ともいう。)、基材層用の樹脂rPP-2を外面として成形速度7、10、13、16、または20m/分で得られたインフレーションフィルムのそれぞれの外面にセロハンテープを貼り付けた後、セロハンテープを貼り付けた2つの面を180°方向に剥離することでシーラント内面同士の接着の有無を確認し、以下の評価基準に従って口開き性を評価した。
【0101】
-口開き性の評価基準-
「A」:インフレーション成形機における引き取りロールの引き取り速度20m/分の条件において、シーラント内面同士の剥離が確認された。
「B」:インフレーション成形機における引き取りロールの引き取り速度20m/分の条件において、シーラント内面同士の剥離が確認されなかった。
【0102】
(実施例1)
rPP-1(A-1):40質量部と、BPR(B3-1):60質量部と、上記(A-1)および(B-1)の合計100重量部に対して600ppmの超高分子量ポリエチレン(C-1)600ppmと、をブレンドしてシーラントフィルム用樹脂組成物(オレフィン系重合体樹脂組成物)を調製した。また、基材フィルム作製用にrPP-2(A-2)を準備した。
Tダイが接続された2台の押出機を用いて、上記シーラントフィルム用樹脂組成物、および、基材フィルム作製用のrPP-2をそれぞれの押出機に供給し、ダイおよび樹脂温度を230℃に設定し、各押出機の押出し量を調整して、共押出成形により、厚み50μmの無延伸の基材フィルムと厚み20μmの無延伸のシーラントフィルムとが積層された基材フィルム付きの無延伸シーラントフィルムを得た。得られた無延伸シーラントフィルムを用いて、上述のヒートシール強度の測定方法によりヒートシール強度を求めた。また、上述のブロッキング力の測定方法に従いブロッキング力を測定した。その結果を表1に示す。
【0103】
(実施例2および3並びに比較例1~4)
実施例2および3において、シーラントフィルム用樹脂組成物の組成を表1に示した組成に変更した以外は実施例1と同様にして、無延伸シーラントフィルムを製造した。なお、比較例1~4は、実施例1における超高分子量エチレン重合体の架橋物(C-1)をシリカ(平均粒子径3μm)に変更し、シーラントフィルム用樹脂組成物の組成を表1に示した組成に変更した以外は実施例1と同様にして無延伸シーラントフィルムを製造した。得られたフィルムをそれぞれ用いて、上述の測定方法によりヒートシール強度、およびブロッキング力を測定した。その結果を表1に示す。
【0104】
(実施例4)
rPP-1 (A-1):40質量部とBPR(B3-1):60質量部と上記(A-1)および(B-1)の合計100質量部に対して超高分子量ポリエチレン(C-1)4800ppmをブレンドしてシーラントフィルム用樹脂組成物(オレフィン系重合体樹脂組成物)を調製した。また、基材フィルム作製用に樹脂:rPP-2(A-2)を準備した。
シーラント用樹脂組成物を内面とし、基材層用の樹脂:rPP-2を外面となるようにそれぞれの押出機に供給し、インフレーション成形ダイ(ダイス径200mmφ、リップギャップ3.5mm)を使用し、樹脂温度が200℃に、上記シーラントフィルム用樹脂組成物から形成されるヒートシール層および上記基材フィルムである基材層の厚さが成形速度7m/分において20μmおよび50μmになるように各押出機の押出し量をそれぞれ設定し、共押出成形により厚さ70μmのインフレーションフィルムを得た。このフィルムを用いて、上述のヒートシール強度の測定方法によりヒートシール強度を求めた。その結果を表2に示す。
さらに、樹脂の押出量を固定したまま、引き取りロールの引き取り速度を10、13、16、または、20m/分に増大した。上記口開き性の評価方法に従い、引き取り速度20m/分で得られたフィルムのそれぞれの外面にセロハンテープを貼り付けた後、セロハンテープを剥離して、シーラント内面同士の接着の有無を確認し、上記評価基準に従い口開き性を評価した。結果を表2に示す。
【0105】
(比較例5および6)
超高分子量ポリエチレンの代わりにアンチブロッキング剤としてシリカ(平均粒子径3μm)に変更、または、アンチブロッキング剤を添加しなかったこと以外は実施例4と同様にしてインフレーションフィルムを製造した。得られたインフレーションフィルムを用いて、上述の測定方法によりヒートシール強度およびブロッキング力を測定した。また、上記評価基準に従い口開き性を評価した。それぞれの結果を表2に示す。
【0106】
(比較例7)
シーラントフィルム用樹脂組成物の組成を表2に示した組成に変更した以外は実施例4と同様にして、インフレーションフィルムを製造した。得られたインフレーションフィルムを用いて、上述の測定方法によりヒートシール強度およびブロッキング力を測定した。また、上記評価基準に従い口開き性を評価した。それぞれの結果を表2に示す。
【0107】
【0108】
【0109】
表1および表2中、「シール開始温度(≧8N/15mm)」欄は、ヒートシール強度が8N/15mm以上を示すヒートシール温度の最低温度を示している。例えば、実施例1における「シール開始温度(≧8N/15mm)」欄の「80」は、ヒートシール強度の値が8N/15mm以上を示すヒートシール温度80℃から120℃のうち、最も低い温度が80℃であることを表している。
また、表1および表2中の「-」とは、該当する値がないか、または、測定できなかったことを意味している。表2中のブロッキング力の結果である「接着無」とは、ブロッキングが確認されないことを意味している。
【0110】
本発明に係るオレフィン系重合体組成物より得られた実施例1~3のフィルムは、比較例1~4のフィルムと比べて、耐ブロッキング性および低温ヒートシール性の両方に優れていることが分かる。また、本発明に係る実施例4のインフレーションフィルムは、比較例5~7のインフレーションフィルムと比べて、口開き性および低温ヒートシール性の両方に優れることが分かる。