(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102685
(43)【公開日】2023-07-25
(54)【発明の名称】検査端末、検査端末の運転方法、および、検査端末を制御する制御プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/20 20230101AFI20230718BHJP
【FI】
G06Q10/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022003340
(22)【出願日】2022-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】宮前 嘉夫
(72)【発明者】
【氏名】坂根 雅人
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 三香子
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC15
(57)【要約】
【課題】利便性を大きく損なうことなく、データサーバにおける情報の競合を回避しうる検査端末を実現する。
【解決手段】入力装置31と、表示装置31と、通信装置32と、記憶装置34と、演算装置35と、を備え、所定の要件を満たす検査データが、データサーバ4と通信可能なときのみ編集可能なロック対象検査データに指定されており、演算装置35が、データサーバ4との通信の可否を判定する通信判定機能と、プラントの地図上に複数の検査対象設備のそれぞれを表すオブジェクトを表示する配置図画面を、表示装置31に表示させる配置図表示機能と、を実行可能であり、通信判定機能においてデータサーバ4と通信不能と判定されたときに、配置図表示機能において、ロック対象検査データに関連付けられるオブジェクトと、その他のオブジェクトと、を異なる態様で表示する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントに配置された複数の検査対象設備の検査に用いられる検査端末であって、
使用者からの入力操作を受付可能な入力装置と、
使用者に対して情報を表示可能な表示装置と、
データサーバと通信可能な通信装置と、
前記プラントに係る地図データ、および、複数の前記検査対象設備のいずれかに関連付けられた検査データ、を記憶可能な記憶装置と、
演算装置と、を備え、
所定の要件を満たす前記検査データが、前記データサーバと通信可能なときのみ編集可能なロック対象検査データに指定されており、
前記演算装置が、
前記通信装置を介した前記データサーバとの通信の可否を判定する通信判定機能と、
前記記憶装置に記憶されている前記地図データおよび前記検査データに基づいて、前記プラントの地図上に複数の前記検査対象設備のそれぞれを表すオブジェクトを表示する配置図画面を、前記表示装置に表示させる配置図表示機能と、を実行可能であり、
前記通信判定機能において前記データサーバと通信不能と判定されたときに、前記配置図表示機能において、前記ロック対象検査データに関連付けられる前記オブジェクトと、その他の前記オブジェクトと、を異なる態様で表示する検査端末。
【請求項2】
前記検査データが、当該検査データが前記データサーバとの同期対象であるか否かを表す同期属性値を含み、
前記同期属性値が前記同期対象である前記検査データが、前記ロック対象検査データに指定されている請求項1に記載の検査端末。
【請求項3】
前記検査データが、当該検査データに関連付けられている前記検査対象設備の重要度を表す重要度属性値を含み、
前記重要度属性値が所定の閾値を超える前記検査データが、前記ロック対象検査データに指定されている請求項1または2に記載の検査端末。
【請求項4】
現在位置を特定可能な位置特定装置をさらに備え、
前記通信装置が、さらに、他の検査端末と通信可能であり、
前記通信判定機能において、さらに、前記他の検査端末との通信の可否を判定し、
前記演算装置が、
前記通信判定機能において前記他の検査端末と通信不能と判定されたときに、前記位置特定装置によって特定される前記現在位置の近傍にある前記検査対象設備に関連付けられている前記ロック対象検査データについて、前記ロック対象検査データとしての指定を一時的に解除するロック制御機能を、さらに実行可能である請求項1~3のいずれか一項に記載の検査端末。
【請求項5】
前記通信装置が、前記他の検査端末との通信を、100mW以下の出力で実行する請求項4に記載の検査端末。
【請求項6】
プラントに配置された複数の検査対象設備の検査に用いられる検査端末であって、
使用者からの入力操作を受付可能な入力装置と、
使用者に対して情報を表示可能な表示装置と、
他の検査端末と通信可能な通信装置と、
現在位置を特定可能な位置特定装置と、
前記プラントに係る地図データ、および、複数の前記検査対象設備のいずれかに関連付けられた検査データ、を記憶可能な記憶装置と、
演算装置と、を備え、
前記演算装置が、
前記通信装置を介した前記他の検査端末との通信の可否を判定する通信判定機能と、
前記記憶装置に記憶されている前記地図データおよび前記検査データに基づいて、前記プラントの地図上に複数の前記検査対象設備のそれぞれを表すオブジェクトを表示する配置図画面を、前記表示装置に表示させる配置図表示機能と、を実行可能であり、
前記通信判定機能において前記他の検査端末と通信可能と判定されたときに、前記配置図表示機能において、前記位置特定装置によって特定される前記現在位置の近傍にある前記検査対象設備に関連付けられている前記検査データに関連付けられる前記オブジェクトと、その他の前記オブジェクトと、を異なる態様で表示する検査端末。
【請求項7】
プラントに配置された複数の検査対象設備の検査に用いられる検査端末の運転方法であって、
前記検査端末が、
使用者からの入力操作を受付可能な入力装置と、
使用者に対して情報を表示可能な表示装置と、
データサーバと通信可能な通信装置と、
前記プラントに係る地図データ、および、複数の前記検査対象設備のいずれかに関連付けられた検査データ、を記憶可能な記憶装置と、
演算装置と、を備え、
所定の要件を満たす前記検査データが、前記データサーバと通信可能なときのみ編集可能なロック対象検査データに指定されており、
前記演算装置に、
前記通信装置を介した前記データサーバとの通信の可否を判定する通信判定工程と、
前記記憶装置に記憶されている前記地図データおよび前記検査データに基づいて、前記プラントの地図上に複数の前記検査対象設備のそれぞれを表すオブジェクトを表示する配置図画面を、前記表示装置に表示させる配置図表示工程と、を実行させ、
前記通信判定工程において前記データサーバと通信不能と判定したときに、前記配置図表示工程において、前記ロック対象検査データに関連付けられる前記オブジェクトと、その他の前記オブジェクトと、を異なる態様で表示する運転方法。
【請求項8】
プラントに配置された複数の検査対象設備の検査に用いられる検査端末の運転方法であって、
前記検査端末が、
使用者からの入力操作を受付可能な入力装置と、
使用者に対して情報を表示可能な表示装置と、
他の検査端末と通信可能な通信装置と、
現在位置を特定可能な位置特定装置と、
前記プラントに係る地図データ、および、複数の前記検査対象設備のいずれかに関連付けられた検査データ、を記憶可能な記憶装置と、
演算装置と、を備え、
前記演算装置に、
前記通信装置を介した前記他の検査端末との通信の可否を判定する通信判定工程と、
前記記憶装置に記憶されている前記地図データおよび前記検査データに基づいて、前記プラントの地図上に複数の前記検査対象設備のそれぞれを表すオブジェクトを表示する配置図画面を、前記表示装置に表示させる配置図表示工程と、を実行させ、
前記通信判定工程において前記他の検査端末と通信可能と判定したときに、前記配置図表示工程において、前記位置特定装置によって特定される前記現在位置の近傍にある前記検査対象設備に関連付けられている前記検査データに関連付けられる前記オブジェクトと、その他の前記オブジェクトと、を異なる態様で表示する運転方法。
【請求項9】
プラントに配置された複数の検査対象設備の検査に用いられる検査端末を制御する制御プログラムであって、
前記検査端末が、
使用者からの入力操作を受付可能な入力装置と、
使用者に対して情報を表示可能な表示装置と、
データサーバと通信可能な通信装置と、
前記プラントに係る地図データ、および、複数の前記検査対象設備のいずれかに関連付けられた検査データ、を記憶可能な記憶装置と、
演算装置と、を備え、
所定の要件を満たす前記検査データが、前記データサーバと通信可能なときのみ編集可能なロック対象検査データに指定されており、
前記演算装置によって実行されたときに、
前記通信装置を介した前記データサーバとの通信の可否を判定する通信判定機能と、
前記記憶装置に記憶されている前記地図データおよび前記検査データに基づいて、前記プラントの地図上に複数の前記検査対象設備のそれぞれを表すオブジェクトを表示する配置図画面を、前記表示装置に表示させる配置図表示機能と、を前記演算装置に実行させ、
前記通信判定機能において前記データサーバと通信不能と判定されたときに、前記配置図表示機能において、前記ロック対象検査データに関連付けられる前記オブジェクトと、その他の前記オブジェクトと、を異なる態様で表示する制御プログラム。
【請求項10】
プラントに配置された複数の検査対象設備の検査に用いられる検査端末を制御する制御プログラムであって、
前記検査端末が、
使用者からの入力操作を受付可能な入力装置と、
使用者に対して情報を表示可能な表示装置と、
他の検査端末と通信可能な通信装置と、
現在位置を特定可能な位置特定装置と、
前記プラントに係る地図データ、および、複数の前記検査対象設備のいずれかに関連付けられた検査データ、を記憶可能な記憶装置と、
演算装置と、を備え、
前記演算装置によって実行されたときに、
前記通信装置を介した前記他の検査端末との通信の可否を判定する通信判定機能と、
前記記憶装置に記憶されている前記地図データおよび前記検査データに基づいて、前記プラントの地図上に複数の前記検査対象設備のそれぞれを表すオブジェクトを表示する配置図画面を、前記表示装置に表示させる配置図表示機能と、を前記演算装置に実行させ、
前記通信判定機能において前記他の検査端末と通信可能と判定されたときに、前記配置図表示機能において、前記位置特定装置によって特定される前記現在位置の近傍にある前記検査対象設備に関連付けられている前記検査データに関連付けられる前記オブジェクトと、その他の前記オブジェクトと、を異なる態様で表示する制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラントに配置された複数の検査対象設備の検査に用いられる検査端末、ならびに、当該検査端末の運転方法および当該検査端末を制御する制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
石油化学プラントや火力発電プラントなどのプラントの敷地内には、当該プラントの操業に供される種々の流体を流通させる配管が敷設されている。配管に損傷が生じると、流体を流通させることができずプラントの操業に支障をきたすのみならず、流体の漏洩によって従業員や周辺環境に被害を及ぼすおそれがある。このような事態を未然に防ぐため、プラントに敷設された配管に対して、定期的または不定期の診断が行われる。
【0003】
一般的に、プラントの操業に供される流体は多岐にわたり、またこれらの流体をプラント内の各所において利用に供する必要があるため、プラント内には多数の配管が相当な延長距離にわたって敷設されている。このように、配管の数量および延長距離が多大であるため、配管の診断履歴も相当な情報量となりうる。そのため、かかる診断履歴情報をいかに効率よく、整理された状態で管理するかは、プラント管理における重要な課題だといえる。
【0004】
たとえば特開2017-4279号公報(特許文献1)には、プラント管理に供されうる情報収集システムが開示されており、当該システムは、情報収集端末装置と、当該情報収集端末から送信されてくる入力情報を収集する情報収集サーバ装置と、を備える。特許文献1のシステムによれば、情報収集端末装置を持った作業者が各種の機器や設備などが設置されている現場に赴き、情報収集端末装置に点検結果が入力されることで、入力情報が情報収集サーバ装置に蓄積される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のようなシステムを運用する際には、複数の端末装置が同時に稼働することになるため、各端末装置とデータサーバとの間での情報の同期がなされていないと、端末装置間で情報の競合が生じるおそれがある。端末装置およびデータサーバの双方が常に通信可能であれば、競合の問題は生じにくいが、当該システムが運用されるプラントが市街地から遠い場所に立地する場合などに、十分な携帯電話ネットワークを利用できず、端末装置とデータサーバとの常時接続が難しい場合があった。
【0007】
競合の問題を避けるためには、端末装置とデータサーバとの接続が確立されている場合のみに、端末装置が情報の入力を受け付けるようにする方策を取りうる。しかし、端末装置が利用できるネットワーク資源が乏しい環境では、そのような方策を取ると、利便性を大きく損なうおそれがある。
【0008】
そこで、利便性を大きく損なうことなく、データサーバにおける情報の競合を回避しうる検査端末の実現が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る第一の検査端末は、プラントに配置された複数の検査対象設備の検査に用いられる検査端末であって、使用者からの入力操作を受付可能な入力装置と、使用者に対して情報を表示可能な表示装置と、データサーバと通信可能な通信装置と、前記プラントに係る地図データ、および、複数の前記検査対象設備のいずれかに関連付けられた検査データ、を記憶可能な記憶装置と、演算装置と、を備え、所定の要件を満たす前記検査データが、前記データサーバと通信可能なときのみ編集可能なロック対象検査データに指定されており、前記演算装置が、前記通信装置を介した前記データサーバとの通信の可否を判定する通信判定機能と、前記記憶装置に記憶されている前記地図データおよび前記検査データに基づいて、前記プラントの地図上に複数の前記検査対象設備のそれぞれを表すオブジェクトを表示する配置図画面を、前記表示装置に表示させる配置図表示機能と、を実行可能であり、前記通信判定機能において前記データサーバと通信不能と判定されたときに、前記配置図表示機能において、前記ロック対象検査データに関連付けられる前記オブジェクトと、その他の前記オブジェクトと、を異なる態様で表示することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る第一の運転方法は、プラントに配置された複数の検査対象設備の検査に用いられる検査端末の運転方法であって、前記検査端末が、使用者からの入力操作を受付可能な入力装置と、使用者に対して情報を表示可能な表示装置と、データサーバと通信可能な通信装置と、前記プラントに係る地図データ、および、複数の前記検査対象設備のいずれかに関連付けられた検査データ、を記憶可能な記憶装置と、演算装置と、を備え、所定の要件を満たす前記検査データが、前記データサーバと通信可能なときのみ編集可能なロック対象検査データに指定されており、前記演算装置に、前記通信装置を介した前記データサーバとの通信の可否を判定する通信判定工程と、前記記憶装置に記憶されている前記地図データおよび前記検査データに基づいて、前記プラントの地図上に複数の前記検査対象設備のそれぞれを表すオブジェクトを表示する配置図画面を、前記表示装置に表示させる配置図表示工程と、を実行させ、前記通信判定工程において前記データサーバと通信不能と判定したときに、前記配置図表示工程において、前記ロック対象検査データに関連付けられる前記オブジェクトと、その他の前記オブジェクトと、を異なる態様で表示することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る第一の制御プログラムは、プラントに配置された複数の検査対象設備の検査に用いられる検査端末を制御する制御プログラムであって、前記検査端末が、使用者からの入力操作を受付可能な入力装置と、使用者に対して情報を表示可能な表示装置と、データサーバと通信可能な通信装置と、前記プラントに係る地図データ、および、複数の前記検査対象設備のいずれかに関連付けられた検査データ、を記憶可能な記憶装置と、演算装置と、を備え、所定の要件を満たす前記検査データが、前記データサーバと通信可能なときのみ編集可能なロック対象検査データに指定されており、前記演算装置によって実行されたときに、前記通信装置を介した前記データサーバとの通信の可否を判定する通信判定機能と、前記記憶装置に記憶されている前記地図データおよび前記検査データに基づいて、前記プラントの地図上に複数の前記検査対象設備のそれぞれを表すオブジェクトを表示する配置図画面を、前記表示装置に表示させる配置図表示機能と、を前記演算装置に実行させ、前記通信判定機能において前記データサーバと通信不能と判定されたときに、前記配置図表示機能において、前記ロック対象検査データに関連付けられる前記オブジェクトと、その他の前記オブジェクトと、を異なる態様で表示することを特徴とする。
【0012】
これらの構成によれば、データサーバと通信可能なときのみ編集可能なロック対象検査データに係るオブジェクトと、その他のオブジェクトとが異なる態様で表示されるので、使用者が、ロックされていない検査データを特定しやすい。これによって、データサーバとの通信ができない状況であっても、ロックされていない検査データに対する作業を実施できるので、利便性が損なわれにくい。その上で、ロック対象検査データを確実に識別できるので、情報の競合を回避しうる。
【0013】
本発明に係る第二の検査端末は、プラントに配置された複数の検査対象設備の検査に用いられる検査端末であって、使用者からの入力操作を受付可能な入力装置と、使用者に対して情報を表示可能な表示装置と、他の検査端末と通信可能な通信装置と、現在位置を特定可能な位置特定装置と、前記プラントに係る地図データ、および、複数の前記検査対象設備のいずれかに関連付けられた検査データ、を記憶可能な記憶装置と、演算装置と、を備え、前記演算装置が、前記通信装置を介した前記他の検査端末との通信の可否を判定する通信判定機能と、前記記憶装置に記憶されている前記地図データおよび前記検査データに基づいて、前記プラントの地図上に複数の前記検査対象設備のそれぞれを表すオブジェクトを表示する配置図画面を、前記表示装置に表示させる配置図表示機能と、を実行可能であり、前記通信判定機能において前記他の検査端末と通信可能と判定されたときに、前記配置図表示機能において、前記位置特定装置によって特定される前記現在位置の近傍にある前記検査対象設備に関連付けられている前記検査データに関連付けられる前記オブジェクトと、その他の前記オブジェクトと、を異なる態様で表示することを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る第二の運転方法は、プラントに配置された複数の検査対象設備の検査に用いられる検査端末の運転方法であって、前記検査端末が、使用者からの入力操作を受付可能な入力装置と、使用者に対して情報を表示可能な表示装置と、他の検査端末と通信可能な通信装置と、現在位置を特定可能な位置特定装置と、前記プラントに係る地図データ、および、複数の前記検査対象設備のいずれかに関連付けられた検査データ、を記憶可能な記憶装置と、演算装置と、を備え、前記演算装置に、前記通信装置を介した前記他の検査端末との通信の可否を判定する通信判定工程と、前記記憶装置に記憶されている前記地図データおよび前記検査データに基づいて、前記プラントの地図上に複数の前記検査対象設備のそれぞれを表すオブジェクトを表示する配置図画面を、前記表示装置に表示させる配置図表示工程と、を実行させ、前記通信判定工程において前記他の検査端末と通信可能と判定したときに、前記配置図表示工程において、前記位置特定装置によって特定される前記現在位置の近傍にある前記検査対象設備に関連付けられている前記検査データに関連付けられる前記オブジェクトと、その他の前記オブジェクトと、を異なる態様で表示することを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る第二の制御プログラムは、プラントに配置された複数の検査対象設備の検査に用いられる検査端末を制御する制御プログラムであって、前記検査端末が、使用者からの入力操作を受付可能な入力装置と、使用者に対して情報を表示可能な表示装置と、他の検査端末と通信可能な通信装置と、現在位置を特定可能な位置特定装置と、前記プラントに係る地図データ、および、複数の前記検査対象設備のいずれかに関連付けられた検査データ、を記憶可能な記憶装置と、演算装置と、を備え、前記演算装置によって実行されたときに、前記通信装置を介した前記他の検査端末との通信の可否を判定する通信判定機能と、前記記憶装置に記憶されている前記地図データおよび前記検査データに基づいて、前記プラントの地図上に複数の前記検査対象設備のそれぞれを表すオブジェクトを表示する配置図画面を、前記表示装置に表示させる配置図表示機能と、を前記演算装置に実行させ、前記通信判定機能において前記他の検査端末と通信可能と判定されたときに、前記配置図表示機能において、前記位置特定装置によって特定される前記現在位置の近傍にある前記検査対象設備に関連付けられている前記検査データに関連付けられる前記オブジェクトと、その他の前記オブジェクトと、を異なる態様で表示することを特徴とする。
【0016】
これらの構成によれば、直接に通信可能な他の検査端末が存在する状況に限って、近傍にある検査対象設備を情報の競合が生じるおそれがある検査対象設備であるとして、当該検査対象設備に対応するオブジェクトを他のオブジェクトと異なる態様で表示するので、利便性を大きく損なうことなく、データサーバにおける情報の競合を回避しうる。
【0017】
以下、本発明の好適な態様について説明する。ただし、以下に記載する好適な態様例によって、本発明の範囲が限定されるわけではない。
【0018】
本発明に係る検査端末は、一態様として、前記検査データが、当該検査データが前記データサーバとの同期対象であるか否かを表す同期属性値を含み、前記同期属性値が前記同期対象である前記検査データが、前記ロック対象検査データに指定されていることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、データサーバとの同期が必要な検査データをロック対象検査データとして指定できるので、同期が必要なデータについての競合を回避しやすい。
【0020】
本発明に係る検査端末は、一態様として、前記検査データが、当該検査データに関連付けられている前記検査対象設備の重要度を表す重要度属性値を含み、前記重要度属性値が所定の閾値を超える前記検査データが、前記ロック対象検査データに指定されていることが好ましい。
【0021】
この構成によれば、比較的重要度が高い検査対象設備に係る検査データをロック対象検査データとして指定できるので、重要度が高いデータについての競合を回避しやすい。
【0022】
本発明に係る検査端末は、一態様として、現在位置を特定可能な位置特定装置をさらに備え、前記通信装置が、さらに、他の検査端末と通信可能であり、前記通信判定機能において、さらに、前記他の検査端末との通信の可否を判定し、前記演算装置が、前記通信判定機能において前記他の検査端末と通信不能と判定されたときに、前記位置特定装置によって特定される前記現在位置の近傍にある前記検査対象設備に関連付けられている前記ロック対象検査データについて、前記ロック対象検査データとしての指定を一時的に解除するロック制御機能を、さらに実行可能であることが好ましい。
【0023】
この構成によれば、直接に通信可能な他の検査端末が存在しない状況において、近傍にある検査対象設備について情報の競合が生じるおそれが小さいとして、ロック対象検査データとしての指定を一時的に解除するので、競合のリスクを高めることなく利便性を向上できる。
【0024】
本発明に係る検査端末は、一態様として、前記通信装置が、前記他の検査端末との通信を、100mW以下の出力で実行することが好ましい。
【0025】
この構成によれば、同じ検査対象設備の近傍に存在すると推定される他の検査端末を十分に検出しうるので、実用上で必要な限度で、競合のリスクを高めることなく利便性を向上できる。
【0026】
本発明のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】実施形態に係る検査システムの構成を示す図である。
【
図2】実施形態に係る配管の敷設状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明に係る検査端末、運転方法、および制御プログラムの実施形態について、図面を参照して説明する。以下では、石油化学プラントや火力発電プラントなどのプラントPの敷地内に敷設された配管群2(
図2)の検査に供される検査システム1を例として説明する。
【0029】
〔装置構成およびシステム構成〕
まず、本実施形態に係る検査システム1および診断対象とする配管群2について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る検査システム1は、互いに通信可能に構成された検査端末3およびデータサーバ4を備える。ここで、検査端末3は、本発明に係る検査端末の一実施形態である。検査員は、プラントPの敷地内に敷設された多数の配管21(検査対象設備の例である。)からなる配管群2の各所を検査し、検査の結果を検査端末3に入力する。検査端末3に入力された不具合情報はデータサーバ4に送信され、ここに記憶される。
【0030】
図2に示すように、配管21は、配管21の長手方向に沿って離間して複数設けられたラック22に支持された状態で敷設されている。ラック22は水平方向に配管21の直径よりも大きな幅を有し、複数の配管21を水平方向に並べて受容できる。また、ラック22は上下方向に複数の階層を有し、当該複数の階層のそれぞれに複数の配管21を受容できる。すなわち、敷地を有効に利用するため、配管21は水平方向および上下方向に集約して敷設されている。
【0031】
プラントP内における各配管21の特定の部分は、各配管21に割り当てられた配管名21a、各ラック22に割り当てられたラック番号22a、および、各ラック22の各階層に割り当てられた階層番号22b、によって特定される。たとえば、
図2中にEx1の符号を付した箇所は、「51番配管」、「34番ラック直上」、および「階層2F」の各情報により特定される。同様に、
図2中にEx2の符号を付した箇所は、「61番配管」、「34番ラックと35番ラックとの間」、および「階層1F」の各情報により特定される。
【0032】
図1に示すように、検査システム1は検査端末3およびデータサーバ4を備える。検査端末3は、タッチパネル31(入力装置の例かつ表示装置の例である。)、通信装置32、位置特定装置33、記憶装置34、および演算装置35を有する。データサーバ4は、通信装置41、記憶装置42、および演算装置43を有する。
【0033】
(検査端末の構成)
タッチパネル31は、当分野において公知のタッチパネルとして実装されている。タッチパネル31は、使用者からの入力操作を受付可能であるとともに、使用者に対して情報を表示可能な装置である。
【0034】
通信装置32は、携帯電話モジュール321、無線LANモジュール322、および近距離無線通信モジュール323、を含む。通信装置32は、以下に説明するように、データサーバ4と通信可能であるとともに、他の検査端末3Aとも通信可能である。
【0035】
携帯電話モジュール321は、携帯電話回線に接続可能な公知モジュールである。通信速度の観点から、携帯電話モジュール321が、第4世代移動通信システム以降の無線通信システムとして構成される携帯電話回線に接続可能なモジュールであることが好ましい。
【0036】
無線LANモジュール322は、無線LANネットワークに接続可能な公知のモジュールである。通信速度の観点から、IEEE802.11ax、IEEE802.11ac、IEEE802.11nなどの、比較的高速な通信が可能な規格に適合するモジュールであることが好ましい。
【0037】
携帯電話モジュール321および無線LANモジュール322は、検査端末3(通信装置32)とデータサーバ4(通信装置41)との間の通信を担う。すなわち、検査端末3は、携帯電話モジュール321または無線LANモジュール322を介してネットワークNに接続し、ネットワークNを介してデータサーバ4と通信する。ここで、ネットワークNは、インターネットやイントラネットなどでありうる。
【0038】
近距離無線通信モジュール323は、比較的近傍に位置する同種のモジュールと通信可能な公知のモジュールであり、たとえばBluetooth(登録商標)規格に対応するモジュールでありうる。より具体的には、近距離無線通信モジュール323は、100mW以下の出力で通信するモジュールでありうる。この構成の近距離無線通信モジュール323は、半径100m程度の通信範囲を有する。たとえば、Bluetooth(登録商標)規格の場合、100mW以下の出力で通信するモジュールは、Bluetooth(登録商標)クラス1に適合するモジュールとして規定されている。
【0039】
近距離無線通信モジュール323は、検査端末3間相互の通信を担う。すなわち、二台の検査端末3は、互いの近距離無線通信モジュール323を介して、相互に通信可能である。
【0040】
位置特定装置33は、検査端末3の現在位置を特定可能な装置である。より具体的には、位置特定装置33は、GPSモジュールに代表される全球測位衛星システム(GNSS)のモジュールとして実装されている。
【0041】
記憶装置34は、プラントPに係る地図データ、および、複数の配管21のいずれかに関連付けられた検査データ、を記憶している。また、記憶装置34には、検査端末3の制御プログラム(本実施形態に係る制御プログラムの例である。)も格納されている。記憶装置34は、ハードディスクドライブやソリッドステートドライブなどの公知の記憶装置として実装されうる。
【0042】
演算装置35は、検査端末3において実行される種々の演算処理を実行する装置であり、CPUなどの公知の演算装置として実装されうる。
【0043】
(データサーバの構成)
通信装置41は、LANモジュールとして実装されている。データサーバ4が通常据え置き型で設置されていることに鑑み、当該LANモジュールは、有線、無線の別を問わない。データサーバ4は、通信装置41を介してネットワークNに接続し、ネットワークNを介して検査端末3と通信する。
【0044】
記憶装置42は、検査端末3から受信した検査データ、および、検査端末3を使用する複数の使用者に係る情報を含む使用者データベース、を記憶している。また、記憶装置42には、データサーバ4の制御プログラムも格納されている。記憶装置42は、ハードディスクドライブやソリッドステートドライブなどの公知の記憶装置として実装されうる。
【0045】
演算装置43は、データサーバ4において実行される種々の演算処理を実行する装置であり、CPUなどの公知の演算装置として実装されうる。
【0046】
〔検査データの構成〕
検査データは、配管群2(配管21)に対する検査の結果を示すデータである。検査データは、複数の配管21のいずれかに関連づけられている。より詳細には、検査データは、属性値として、データID、配管属性値、流体属性値、日時属性値、使用者属性値、重要度属性値、同期属性値、検査結果属性値、およびロック属性値を含む。
【0047】
配管属性値は、検査データが関連づけられるべき配管21の部分(以下、「検査箇所」という。)を表す情報であり、検査対象の箇所を特定する役割を果たす。検査データは、配管属性値として、たとえば、配管名21a、ラック番号22a、および階層番号22bをそれぞれ表すテキストデータを含む。また、配管属性値は、配管名21a等の情報に替えて、または併せて、検査対象の箇所の位置を特定する情報(経度および緯度など)を含んでいてもよい。さらに、配管属性値は、検査箇所の配管21の機能を表す情報をさらに含んでいてもよい。たとえば、配管属性値には、当該検査箇所の配管21の区分(主管、枝管など)を表す情報が含まれうる。
【0048】
流体属性値は、検査箇所に流通する流体を表す情報である。検査データは、流体属性値として、たとえば、配管21に流通する流体の名称を表すテキストデータ、当該流体の圧力および流量を表す数値データ、などを含む。
【0049】
日時属性値は、検査箇所に対する検査が行われた日時を表す情報である。たとえば、日時属性値として、検査データの編集が行われた瞬間の日時が自動的に取得される。
【0050】
使用者属性値は、検査データを入力した使用者を表す情報である。検査データは、使用者属性値として、たとえば、当該検査データを入力した使用者のIDを表すテキストデータを含む。検査端末3の使用者は、それぞれ個別に付与されたIDとパスワードとの組を用いて検査端末3にログインした状態で検査データの入力を行う。使用者属性値としては、検査データが入力された際にログインしている使用者のIDが自動的に使用される。
【0051】
重要度属性値は、検査箇所の重要度を表す情報である。検査データは、重要度属性値として、たとえば、いくつかの所定の重要度水準のうちの一つの水準を表す数値データを含む。重要度属性値は、検査端末3の使用者が自由に設定できるようにしてもよいし、配管属性値や流体属性値などに基づいて自動的に決定されるようにしてもよい。
【0052】
同期属性値は、検査データがデータサーバ4との同期対象であるか否かを表す情報である。同期属性値が「1」である検査データはデータサーバ4にアップロードされ、同期属性値が「0」である検査データはデータサーバ4にアップロードされない。たとえば、過去に検査を行った箇所に対して再度検査を行う場合は、当該箇所に関連づけられている検査データがデータサーバ4から検査端末3にダウンロードされ、ダウンロードされた検査データを更新する形で再度の検査の結果が入力される。この場合の検査データは、同期属性値が「1」になっており、再度の検査の結果が入力されたのちに、更新された検査データがデータサーバ4にアップロードされ、データサーバ4(記憶装置42)に記憶されている検査データが更新される。
【0053】
一方、検査端末3の使用者が新規に点検を行った箇所の検査データについては、使用者が同期属性値を任意に選択できる。このとき、同期属性値が「0」に設定された検査データは、当該検査データを作成した検査端末3(記憶装置34)にのみ記憶される。
【0054】
検査結果属性値は、検査箇所に対する検査の結果を表す情報である。検査データは、たとえば、検査結果属性値として、検査箇所に対する検査の結果を表すテキストデータを含み、不具合の有無、種類、程度などを特定できるようにしてある。検査結果属性値は、使用者が任意のテキストを入力できるようにしてもよいし、あらかじめ設定された候補の中から使用者が選択するようにしてもよい。
【0055】
ロック属性値は、検査データの編集がデータサーバ4との通信の可否によって制限されるか否かを表す情報である。ロック属性値が「1」である検査データは、原則として、データサーバ4との通信が可能な場合にのみ編集可能である。一方、ロック属性値が「0」である検査データは、原則として、データサーバ4との通信の可否に関わらず編集可能である。
【0056】
ロック属性値は、他の属性値に連動して設定されうる。たとえば、同期属性値が「1」である検査データは、データサーバ4との同期が必要な検査データであるので、データサーバ4との通信ができない状態で編集がなされると、後に検査データの競合が生じるおそれがある。そのため、同期属性値が「1」である検査データは、ロック属性値が「1」に設定される。また、たとえば、重要度属性値が所定の閾値を超える検査データは、管理精度を高める必要があるため、データサーバ4との通信ができない状態での編集がなされるべきではない。そのため、重要度属性値が所定の閾値を超える検査データは、ロック属性値が「1」に設定される。以下では、ロック属性値が「1」に設定されている検査データ(所定の要件を満たす検査データの例である。)を、ロック対象検査データという。
【0057】
なお、検査データは、上記に説明した他の属性値を含んでいてもよい。他の属性値としては、たとえば、検査箇所における不具合に対する処置情報を示す処置属性値、検査箇所を撮影した画像データを含む画像属性値、などが例示される。
【0058】
〔検査端末の制御プログラムの構成〕
本実施形態において、検査端末3側では、検査データ編集機能、通信判定機能、配置図表示機能、およびロック制御機能が実行される。これらの各機能は、検査端末3の演算装置35によって実行される制御プログラムにより実現される。なお、以下に説明する各機能の他に、データサーバ4との間で検査データを授受する機能も実行されるが、データサーバと端末装置との間でデータを授受する機能として公知の機能であるので、説明を省略する。
【0059】
(1)検査データ編集機能
検査データ編集機能は、タッチパネル31を介して使用者から入力された入力操作に従って、検査データを編集する機能である。検査データ編集機能を実行する際は、編集対象の検査データに含まれる各属性値が、タッチパネル31に表示される。本実施形態では、配置図画面5(
図3)に重ねて編集ウィンドウ6が表示され、当該編集ウィンドウ6に対して操作を加えることで、検査データの編集を行うことができる。このとき、使用者が任意に編集できる属性値(たとえば配管属性値である。)と、任意には編集できない属性値(たとえば日時属性値である。)とが、異なる態様で表示される。
【0060】
(2)通信判定機能
通信判定機能は、通信装置32(携帯電話モジュール321および無線LANモジュール322)を介したデータサーバ4との通信が可能であるか否か、および、通信装置32(近距離無線通信モジュール323)を介した他の検査端末3Aとの通信が可能であるか否か、を判定する機能である。通信判定機能はバックグラウンドで実行されうる。
【0061】
データサーバ4との通信の可否の判定は、たとえば、定期的にデータサーバ4との通信が実際に試みることによって行われる。また、代替的な構成として、携帯電話モジュール321および無線LANモジュール322が受信する電波の強度に基づいて、データサーバ4との通信の可否を判定してもよい。
【0062】
他の検査端末3Aとの通信の可否の判定は、たとえば、同種の近距離無線通信モジュール323との通信を定期的に試みることによって行われる。近距離無線通信モジュール323がBluetooth(登録商標)規格に対応するモジュールである場合は、アドバタイジングパケットの送受信を介して、通信の可否が判定されうる。他の検査端末3Aとの通信が可能であることは、近距離無線通信モジュール323の通信圏内(たとえば半径100m程度の範囲である。)、すなわち検査端末3の近傍に、他の検査端末3Aが存在することを意味する。
【0063】
(3)配置図表示機能
配置図表示機能は、タッチパネル31に配置図画面5(
図3)を表示する機能である。配置図画面5、記憶装置34に記憶されている地図データおよび検査データに基づいて、タッチパネル31にプラントPの地
図51を表示するとともに、複数の検査箇所のそれぞれを表すオブジェクト52を当該地
図51上に表示した画面である。それぞれのオブジェクト52は検査データに関連づけられており、検査データの配管属性値に従って地
図51上における各オブジェクト52の位置が決定される。すなわち、検査データが関連づけられるべき配管21が実際に存在する位置を表す地
図51上の位置に、当該検査データに基づいて作成されたオブジェクト52が表示される。
【0064】
なお、配置図画面5には、配置図画面5に表示されている地
図51のプラントP内における位置を特定するための、図番53、プラント地
図54、およびラック
図55が表示される。
【0065】
タッチパネル31に配置図画面5が表示されている状態で、いずれかのオブジェクト52にタッチすると、当該オブジェクト52に関連づけられている検査データを対象とする編集ウィンドウ6が表示され、検査データ編集機能に遷移する。これによって、検査端末3の使用者は、編集すべき検査データを直感的に選択できる。
【0066】
通信判定機能において、データサーバ4と通信不能と判定されたときは、配置図表示機能において、ロック対象検査データに関連づけられるオブジェクト52Aと、その他のオブジェクト52Bとが異なる態様で表示される。換言すれば、各オブジェクト52の表示態様が、検査データのロック属性値を参照して決定される。具体的には、ロック対象検査データに関連づけられるオブジェクト52Aは相対的に薄い色(たとえば灰色)で表示され、その他の検査データに関連づけられるオブジェクト52Bは相対的に濃い色(たとえば黒色)で表示される。そして、薄い色で表示されているオブジェクト52Aにタッチしても、検査データ編集機能への遷移が行われない。一方、濃い色で表示されているオブジェクト52Bにタッチすると、タッチされたオブジェクトに関連づけられる検査データを対象とする検査データ編集機能に遷移する。
【0067】
一方、通信判定機能において、データサーバ4と通信可能と判定されたときは、全てのオブジェクト52が同じ態様で表示される。この場合は、いずれのオブジェクト52にタッチしても、タッチされたオブジェクト52に関連づけられる検査データを対象とする検査データ編集機能への遷移が行われる。
【0068】
なお、オブジェクト52の表示態様の区別は、上記に例示したような色による区別に限定されない。たとえば、オブジェクト52の形状、動き(たとえば点灯と点滅)、大きさなどの違いによって区別してもよい。また、ロック対象検査データに関連づけられるオブジェクト52Aを表示しないようにしてもよい。この場合も、オブジェクト52Aが無色のオブジェクトとして表示されていると捉えれば、オブジェクト52Bと異なる態様で表示されているといえる。
【0069】
(4)ロック制御機能
ロック制御機能は、所定の要件を満たす検査データについて、ロック対象検査データとしての指定の有無(すなわちロック属性値)を一時的に変更する機能である。
【0070】
ロック制御機能の第一の機能は、所定の要件を満たすロック対象検査データについて、ロック対象検査データとしての指定を一時的に解除する機能である。具体的には、所定の要件を満たすロック対象検査データのロック属性値が、一時的に「0」に変更される。所定の要件とは、当該ロック対象検査データに関連づけられている検査箇所の近傍に検査端末3が位置すること、および、当該検査端末3の近傍に他の検査端末3Aが存在しないこと、の二つである。
【0071】
一つ目の要件が満たされているか否かは、位置特定装置33によって特定される検査端末3の現在位置に基づいて判定される。検査端末3の現在位置と、ロック対象検査データの配管属性値によって特定される検査箇所の位置と、の乖離が所定の閾値以下である場合に、一つ目の要件が満たされていると判定する。
【0072】
二つ目の要件が満たされているか否かは、通信判定機能における他の検査端末3Aとの通信可否の判定結果に基づいて判定される。通信判定機能において、他の検査端末3Aと通信不能だと判定されているときに、二つ目の要件が満たされていると判定する。
【0073】
一つ目の要件が満たされていることは、検査端末3がロック対象検査データに関連づけられている検査箇所の近傍に位置することを意味する。また、二つ目の要件が満たされていることは、近傍に他の検査端末3Aが存在しないことを意味する。これらを合わせて考慮すると、二つの要件がいずれも満たされていることは、検査端末3がロック対象検査データに関連づけられている検査箇所の近傍に位置し、かつ、当該検査箇所の近傍に他の検査端末3Aが存在しないことを意味する。この状況では、当該検査箇所の検査データについて競合が生じるおそれが小さいため、ロック対象検査データとしての指定を一時的に解除しても、問題が生じる可能性が小さい。
【0074】
ロック制御機能の第二の機能は、所定の要件を満たす検査データを、一時的にロック対象検査データとして指定する機能である。具体的には、所定の要件を満たすロック対象検査データのロック属性値が、一時的に「1」に変更される。所定の要件とは、当該ロック対象検査データに関連づけられている検査箇所の近傍に検査端末3が位置すること、および、当該検査端末3の近傍に他の検査端末3Aが存在すること、の二つである。ここで、一つ目の要件は、第一の機能の一つ目の要件と同じである。また、二つ目の要件は、第二の機能の二つ目の要件の反対の要件である。
【0075】
一つ目の要件が満たされていることは、検査端末3がロック対象検査データに関連づけられている検査箇所の近傍に位置することを意味する。また、二つ目の要件が満たされていることは、近傍に他の検査端末3Aが存在することを意味する。これらを合わせて考慮すると、二つの要件がいずれも満たされていることは、検査端末3がロック対象検査データに関連づけられている検査箇所の近傍に位置し、かつ、当該検査箇所の近傍に他の検査端末3Aが存在することを意味する。この場合、複数の使用者が同一の検査箇所の検査を実行しようとしていることが推定されるため、検査データの競合が生じる可能性が高い状況にあるといえる。そのため、当該検査データを一時的にロック対象検査データとして指定して、競合を回避するのである。
【0076】
第一の機能および第二の機能のいずれが作用した場合も、配置図表示機能の動作は、一時的に変更されたロック属性値に従う。すなわち、ロック制御機能においてロック対象検査データとしての指定が一時的に解除された場合は、データサーバ4との通信ができない状態であっても、当該ロック対象検査データに関連づけられるオブジェクトが濃い色で表示される。そして、当該ロック対象検査データに関連づけられるオブジェクトにタッチすると、タッチされたオブジェクトに関連づけられる検査データを対象とする検査データ編集機能への遷移が行われる。
【0077】
また、ロック制御機能において検査データが一時的にロック対象検査データとして指定された場合は、データサーバ4との通信ができる状態であっても、当該検査データに関連づけられるオブジェクトが薄い色で表示される。そして、当該検査データに関連づけられるオブジェクトにタッチしても、検査データ編集機能への遷移が行われない。
【0078】
なお、第一の機能および第二の機能のいずれについても、それぞれにおいて指定される二つの要件が満たされなくなったときに、一時的に変更されたロック属性値が元の値に戻される。
【0079】
〔データサーバの制御プログラムの構成〕
本実施形態において、データサーバ4側では、照会機能、更新機能、判定機能、および競合処理機能が実行される。これらの各機能は、データサーバ4の演算装置43によって実行される制御プログラムにより実現される。なお、以下に説明する各機能の他に、検査端末3との間で検査データを授受する機能も実行されるが、データサーバと端末装置との間でデータを授受する機能として公知の機能であるので、説明を省略する。
【0080】
(1)照会機能
照会機能は、新たに入力された検査データの使用者属性値を、記憶装置42に記憶されている使用者データベースに照会して、使用者属性値により特定される使用者に係る情報を使用者データベースから取得する機能である。ここで、「新たに入力された検査データ」とは、検査端末3に新たに入力され、または検査端末3において新たに編集されたのちに、データサーバ4にアップロードされた検査データをいう。使用者データベースの各レコードには、使用者属性値をキーとして、当該使用者属性値により特定される使用者の氏名、熟練度、資格、経験年数、検査回数などの情報が属性として格納されている。したがって、照会機能を実行することによって、新たに入力された検査データに係る検査を実施した使用者の氏名、熟練度、資格、経験年数、検査回数などを特定できる。
【0081】
(2)更新機能
更新機能は、新たに入力された検査データに関連付けられている検査箇所に係る過去の検査データを、新たに入力された検査データにより更新する機能である。新たに入力された検査データが、過去の検査データを更新しうる検査データであるか否かは、配管属性値および日時属性値に基づいて判定される。すなわち、ある配管属性値を含む検査データは、同一の配管属性値を含む新しい検査データによって更新されうる。また、複数の検査データの新旧は、日時属性値に基づいて判定される。
【0082】
(3)判定機能
判定機能は、新たに入力された検査データを入力した使用者に係る情報に基づいて、更新機能を実行するか否かを判定する機能である。ここで判定に用いる使用者に係る情報は、新たに入力された検査データを対象とする照会機能の実行により特定されたものである。以下では、判定機能において実行されうる四つの機能について説明するが、必ずしも全ての機能が実行されなくてもよい。
【0083】
判定機能の第一の機能として、配管属性値を考慮した判定が行われうる。たとえば、使用者の熟練度に応じて、検査データを更新する権限を有する配管21の区分(主管、枝管など)をあらかじめ設定しておけば、新たに入力された検査データを入力した使用者の熟練度と、当該検査データの配管属性値により特定される配管21の区分と、の組合せに基づいて、更新工程を実行するか否かを判定できる。たとえば、熟練度が所定の水準に満たない使用者には、枝管についてのみ検査データを更新する権限を付与し、主管については当該権限を付与しない、とする運用であれば、当該使用者によって入力された主管に係る検査データは、データサーバ4における当該主管の検査データの更新には使用されないことになる。
【0084】
また、第一の機能の別の態様として、使用者の資格に応じて、検査データを更新する権限を有する配管21の階層(階層番号22b)があらかじめ設定されている場合は、新たに入力された検査データを入力した使用者の資格と、当該検査データの配管属性値により特定される階層番号22bと、の組合せに基づいて、更新工程を実行するか否かを判定できる。これは、高所作業の資格を有する使用者にのみ、所定の水準以上の高さにある配管21の検査データの更新を許可する、という運用である。
【0085】
判定機能の第二の機能として、流体属性値を考慮した判定が行われうる。たとえば、使用者の熟練度や資格などに応じて、検査データを更新する権限を有する配管21の流体の性質(流体の種類、圧力、流量など)をあらかじめ設定しておけば、新たに入力された検査データを入力した使用者の情報と、当該検査データの流体属性値により特定される配管21の流体と、の組合せに基づいて、更新工程を実行するか否かを判定できる。たとえば、水や空気などの比較的危険性が低い流体が流通する、圧力および流量が比較的小さい、などの要件を満たす配管21については、技能水準が比較的低い使用者であっても検査データの更新を許可する一方で、水素などの比較的危険性が高い流体が流通する、圧力または流量が比較的大きい、などの要件を満たす配管21については、技能水準が比較的高い使用者にのみ検査データの更新を許可する、という運用が可能になる。
【0086】
判定機能の第三の機能として、重要度属性値を考慮した判定が行われうる。たとえば、使用者の熟練度や資格などに応じて、検査データを更新する権限を有する配管21の重要度の範囲をあらかじめ設定しておけば、新たに入力された検査データを入力した使用者の情報と、当該検査データの重要度属性値により特定される配管21の重要度と、の組合せに基づいて、更新工程を実行するか否かを判定できる。この機能においても、重要度の高低に応じて、検査データの更新が許容される使用者の技能水準を制限する運用が可能である。
【0087】
判定機能の第四の機能として、使用者に係る情報のみに基づく判定が行われうる。たとえば、検査回数が所定の閾値に満たない使用者には、OJTとして検査の実施、検査端末3への検査データの入力、およびデータサーバ4への検査データのアップロードを行わせるものの、当該検査データをデータサーバ4の検査データの更新には使用しない、という運用であれば、新たに入力された検査データを入力した使用者の検査回数に基づいて、更新工程を実行するか否かを判定すればよい。
【0088】
判定機能は、上記に例示したいずれの機能においても、使用者の技能水準を表しうる情報を考慮するとともに、さらに必要に応じて検査箇所の特性を考慮に入れて、更新機能を実行するか否かを判定する、という技術的思想に基づく。これによって、必要な技能を有さない使用者によって、検査データが不適切に更新されることを防止できる。
【0089】
(4)競合処理機能
競合処理機能は、複数の検査データが競合したときに、データサーバ4の検査データの更新に用いる検査データを選択する機能である。ここで、複数の検査データが競合するとは、たとえば、複数の検査データの各々の日時属性値により特定される日時の差が、所定の閾値(以下、競合閾値という。)以内であることをいう。なお、競合処理機能は、競合する複数の検査データのそれぞれが、競合が生じない状況においては、判定機能において更新機能を実行すると判定される検査データであることを前提とする。また、複数の検査データのそれぞれについて、照会機能が実行される。
【0090】
競合処理機能では、複数の検査データのそれぞれに関連づけられたそれぞれの使用者に係る情報に基づいて、複数の検査データのうちのいずれの検査データを更新機能に使用するかを選択する。ここで、使用者に係る情報とは、当該情報に基づいて各検査データを入力した使用者の技能水準の優劣を決定しうる情報であり、たとえば使用者の熟練度、資格、経験年数、検査回数などである。すなわち、複数の検査データが競合したときに、最も熟練度が高い、最も高度の資格を有する、などの条件を満たす使用者によって入力された検査データが、最も信頼性が高い検査データであるとの仮定に基づき、当該検査データを更新機能に使用するのである。これによって、より信頼性が高い検査データを、データサーバ4に蓄積できる。
【0091】
また、競合処理機能の別の態様として、重要度属性値をさらに考慮してもよい。たとえば、重要度属性値が所定の閾値以下である検査データについては、競合閾値を比較的小さな値に設定して競合していると判定されにくくする一方で、重要度属性値が所定の閾値を超える検査データについては、競合閾値を比較的大きな値に設定して競合の判定を厳密に行う。この構成であれば、競合処理の発生を重要度が高い検査箇所に限定して、演算処理量の抑制と検査の信頼性の向上とを両立しうる。
【0092】
〔その他の実施形態〕
最後に、本発明に係る検査端末、運転方法、制御プログラムのその他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0093】
上記の実施形態では、検査端末3が、入力装置であり表示装置でもあるタッチパネル31を有する構成を例として説明した。しかし、本発明に係る検査端末において、入力装置と表示装置とが別体で設けられていてもよい。かかる入力装置としては、ボタン、レバー、キーボード、マイクなどの公知の入力装置を使用できる。また、かかる表示装置としては、液晶ディスプレイなどが例示される。
【0094】
上記の実施形態では、データサーバ4の演算装置43によって、照会機能、更新機能、および判定機能が実行される構成を例として説明した。しかし、本発明において、これらの機能の一部または全部が、検査端末の演算装置によって実行されてもよい。たとえば、検査端末にログインする使用者のIDに基づいて、検査端末側で判定機能を実行してもよい。
【0095】
その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の範囲はそれらによって限定されることはないと理解されるべきである。当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜改変が可能であることを容易に理解できるであろう。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変された別の実施形態も、当然、本発明の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は、たとえばプラントの検査に供される検査端末、ならびに、当該検査端末の運転方法および当該検査端末を制御する制御プログラムに利用できる。
【符号の説明】
【0097】
1 :検査システム
2 :配管群
21 :配管
21a :配管名
22 :ラック
22a :ラック番号
22b :階層番号
3 :検査端末
3A :他の検査端末
31 :タッチパネル
32 :通信装置
321 :携帯電話モジュール
322 :無線LANモジュール
323 :近距離無線通信モジュール
33 :位置特定装置
34 :記憶装置
35 :演算装置
4 :データサーバ
41 :通信装置
42 :記憶装置
43 :演算装置
5 :配置図画面
51 :オブジェクト
52 :図番
53 :プラント地図
54 :ラック図
6 :編集ウィンドウ
N :ネットワーク
P :プラント