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特開2023-102689繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物、中間基材、及び前記中間基材の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102689
(43)【公開日】2023-07-25
(54)【発明の名称】繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物、中間基材、及び前記中間基材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/67 20060101AFI20230718BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20230718BHJP
   C08F 299/06 20060101ALI20230718BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
C08G18/67 010
C08G18/10
C08F299/06
C08J5/24 CFF
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022003349
(22)【出願日】2022-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000230364
【氏名又は名称】日本ユピカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 博行
(72)【発明者】
【氏名】諸岩 哲治
(72)【発明者】
【氏名】相原 宏次
(72)【発明者】
【氏名】清水(石根)希望
(72)【発明者】
【氏名】大門 宏規
(72)【発明者】
【氏名】古木 秀明
【テーマコード(参考)】
4F072
4J034
4J127
【Fターム(参考)】
4F072AA02
4F072AA07
4F072AB10
4F072AD09
4F072AD43
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4F072AH42
4F072AH49
4F072AJ04
4F072AJ21
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4F072AL04
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4J127BG05Z
4J127BG281
4J127BG28Z
4J127FA48
(57)【要約】
【課題】
本発明は、染み出しを抑制し目付の精度の良い中間基材を作ることが可能な、優れたFRP機械物性を与える繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明の繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物は、組成物(A)と、組成物(B)と、を含有する繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物であって、前記組成物(A)がイソシアネート基を少なくとも2個以上有する化合物(a1)および、(a1)と2個以上の第一のイソシアネート反応性基含有化合物(b2)とを予め反応させた末端イソシアネート基ポリウレタン化合物(a2)の組成物であり、前記組成物(B)が少なくとも、エチレン性不飽和基含有モノアルコール化合物(b1)を含む組成物であることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物(A)と、組成物(B)と、を含有する繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物であって、前記組成物(A)がイソシアネート基を少なくとも2個以上有する化合物(a1)および、(a1)と2個以上の第一のイソシアネート反応性基含有化合物(b2)とを予め反応させた末端イソシアネート基ポリウレタン化合物(a2)の組成物であり、前記組成物(B)が少なくともエチレン性不飽和基含有モノアルコール化合物(b1)を含む組成物であることを特徴とする繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物。
【請求項2】
前記組成物(B)は、第二のイソシアネート反応性基含有化合物(b2)を含むことを特徴とする繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物。
【請求項3】
重合禁止剤(b3)が、前記組成物(A)及び/又は(B)に配合された請求項1~2記載の液状組成物。
【請求項4】
重合開始剤(C)、及び/又はウレタン化触媒(D)が、前記組成物(A)及び/又は(B)に配合された請求項1~3のいずれか一項に記載の液状組成物。
【請求項5】
前記組成物(A)中のイソシアネート基モル数に対する前記組成物(B)中のイソシアネート反応性基モル数の比(B/A)が0.75~1.2である請求項1~4のいずれか一項に記載の液状組成物。
【請求項6】
前記組成物(A)と前記組成物(B)の少なくともどちらか一方に、イソシアネート反応性基を含まない重合性単量体(E)を含むことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の液状組成物。
【請求項7】
前記組成物(A)と(B)の合計質量に対して前記重合性単量体(E)の含有量は0~40質量%である請求項1~6のいずれか一項に記載の液状組成物。
【請求項8】
B型粘度計で測定された10~50℃における粘度が200~2000mPa・sであることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の液状組成物。
【請求項9】
前記第一及び/又は第二のイソシアネート反応性基含有化合物(b2)が、水酸基当量が30~140g/eqである1分子中に2つ以上のアルコール基を含有する化合物である請求項2~8のいずれか一項に記載の液状組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の液状組成物を繊維材料に含浸してなる繊維強化プラスチック中間基材。
【請求項11】
請求項10記載の繊維強化プラスチック中間基材の製造方法であって、請求項1~9のいずれか一項に記載の液状組成物を任意の組成で前記繊維材料に含浸させる工程と、含浸させて得られた繊維強化プラスチック中間基材を熟成させる工程とを含むことを特徴とする繊維強化プラスチック中間基材の製造方法。
【請求項12】
前記熟成温度は、30~80℃である請求項11記載の方法。
【請求項13】
請求項10に記載の繊維強化プラスチック中間基材を硬化させてなる繊維強化複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物、繊維強化プラスチック中間基材、及び前記繊維強化プラスチック中間基材の製造方法に関し、特に硬化性に優れる繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物、繊維強化プラスチック中間基材、及び前記繊維強化プラスチック中間基材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化プラスチック(Fiber reinforced plastic : FRP)は軽量で高強度であることから、様々な構造部材に使用されている。それらの分野は、住宅設備、自動車、船舶、土木、スポーツ用具等多岐にわたるが、近年特に軽量化を要する自動車や輸送関連機器分野でFRPの使用が増加している。
【0003】
FRPの製造には樹脂と繊維が用いられるが、液状の樹脂と繊維(又は織物)を使用して成形する方法とあらかじめ樹脂を繊維に含浸させBステージ化した中間基材(SMC(Sheet molding compound),プリプレグ)を使用する方法がある。中間基材を用いて成形する方法としてはオートクレーブ成形、シートワインディング成形、オーブン成形、プレス成形などがある。これらの成形においては、中間基材をカットし、目標の厚みまで積層し熱をかけて硬化させる成形法である。
【0004】
一方、ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、炭素繊維との密着性に優れることは従来から知られており、炭素繊維のサイジング剤として用いられている(例えば特許文献1)。また、ウレタン(メタ)アクリレート化合物は強化繊維との接着性が良好であるため、強化繊維との接着性の劣る樹脂と混合して用いることが提案されている(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-200252号公報
【特許文献2】特開昭62-292839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の特許文献1及び2に記載のウレタン(メタ)アクリレート化合物は、強化繊維との複合材料としたときに十分な機械特性を得ることができないため、実用的な機械的強度を有する成形品を得られないという課題があった。
【0007】
また、プリプレグシートのマトリックス樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂などがあるが、FRP機械物性、硬化性、表面性などをバランスよく満たすマトリックス樹脂が無いのが現状である。例えばエポキシ樹脂をマトリックスとするプリプレグシートは、機械物性に優れるが、硬化の際、高温で且つ長時間を要すること、保管性に乏しいことが課題としてあり、ビニルエステル樹脂や不飽和ポリエステル樹脂は、硬化性、保管性に優れるが機械物性が不十分であるという問題点を有する。
【0008】
さらに、従来の中間基材を用いて成形する方法においては、成形品中のボイドを完全に無くすことができない問題がある。成形品中にボイドが残存すると欠陥部位となり強度低下を招いてしまう。このボイドを極力減らすには積層枚数を減らす、すなわち単位面積質量が大きい中間基材を使用することが解決策となるが、現状の製法には限界がある。Bステージ化の手法としては、粘度の高い半固形の樹脂をホットメルトして高温で繊維に含浸させる方法、粘度の高い半固形の樹脂を溶剤に希釈して、常温で含浸させて溶剤を除去する方法、反応性希釈剤にオリゴマーを溶解させた樹脂に増粘剤を加え、常温で含浸させ化学的に増粘させる方法があるが、いずれの方法も中間基材の単位面積質量に限界がある。反応性希釈剤にオリゴマーを溶解させた樹脂を用いる方法においては、反応性希釈剤の量を増量して含浸時の粘度を低くすることもできるが、硬化収縮が大きくなるため寸法安定性の高いFRPを得ることができない問題がある。
【0009】
また、液状組成物によっては、中間基材作成時に含浸させた繊維からの液状組成物の染み出しが生じ、液状組成物による周囲汚損、設計目付からのずれ、などが生じる問題がある。
【0010】
目付のずれは中間基材を用いて成形物を作成する際に、型に賦形するために一定の大きさに切り出した中間基材の質量が変わってしまうため、本来あるべき賦形状態から逸脱し、成形物の製造上問題となる。そのため、中間基材製造において設計目付の管理は重要であり、繊維からの染み出し、目付のずれは解決すべき問題である。また、エポキシ樹脂硬化剤に用いられるアミンなどの化合物は、中間基材製造工程中における刺激物暴露という問題がある。
【0011】
そこで、本発明は、上記問題点を解決し、染み出しを抑制し目付の精度の良い中間基材を作ることが可能な、優れたFRP機械物性を与える繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、ラジカル重合性化合物を少なくとも含む組成物について種々の観点から多角的に検討を重ねた結果、本発明の繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物を見出すに至った。
【0013】
すなわち、本発明の繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物は、組成物(A)と、組成物(B)と、を含有する繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物であって、前記組成物(A)がイソシアネート基を少なくとも2個以上有する化合物(a1)および、(a1)と2個以上の第一のイソシアネート反応性基含有化合物(b2)とを予め反応させた末端イソシアネート基ポリウレタン化合物(a2)の組成物であり、前記組成物(B)が少なくともエチレン性不飽和基含有モノアルコール化合物(b1)を含む組成物であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物の好ましい実施態様において、前記組成物(B)は、第二のイソシアネート反応性基含有化合物(b2)を含むことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物の好ましい実施態様において、重合禁止剤(b3)が、前記組成物(A)及び/又は(B)に配合されたことを特徴とする。
【0016】
また、本発明の繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物の好ましい実施態様において、重合開始剤(C)、及び/又はウレタン化触媒(D)が、前記組成物(A)及び/又は(B)に配合されたことを特徴とする。
【0017】
また、本発明の繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物の好ましい実施態様において、前記組成物(A)中のイソシアネート基モル数に対する前記組成物(B)中のイソシアネート反応性基モル数の比(B/A)が0.75~1.2であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物の好ましい実施態様において、前記組成物(A)と前記組成物(B)の少なくともどちらか一方に、イソシアネート反応性基を含まない重合性単量体(E)を含むことを特徴とする。
【0019】
また、本発明の繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物の好ましい実施態様において、前記組成物(A)と(B)の合計質量に対して前記重合性単量体(E)の含有量は0~40質量%であることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物の好ましい実施態様において、B型粘度計で測定された10~50℃における粘度が200~2000mPa・sであることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物の好ましい実施態様において、前記第一及び/又は第二のイソシアネート反応性基含有化合物(b2)が、水酸基当量が30~140g/eqである1分子中に2つ以上のアルコール基を含有する化合物であることを特徴とする。
【0022】
また、本発明の繊維強化プラスチック中間基材は、本発明の液状組成物を繊維材料に含浸してなることを特徴とする。
【0023】
また、本発明の繊維強化プラスチック中間基材の製造方法は、本発明の繊維強化プラスチック中間基材の製造方法であって、本発明の液状組成物を任意の組成で前記繊維材料に含浸させる工程と、含浸させて得られた繊維強化プラスチック中間基材を熟成させる工程とを含むことを特徴とする。
【0024】
また、本発明の繊維強化プラスチック中間基材の製造方法の好ましい実施態様において、前記熟成温度は、30~80℃であることを特徴とする。
【0025】
また、本発明の繊維強化複合材は、本発明の繊維強化プラスチック中間基材を硬化させてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明の繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物によれば、前記液状組成物が基材への含浸性に優れ、硬化時の収縮が小さく寸法安定性に優れる中間基材を与えることが可能であるという有利な効果を奏する。また、本発明によれば、得られた中間基材は機械物性に優れ、ボイドや見含浸部位がほとんど無い信頼性の高い複合材料を与えることが可能であるという有利な効果を奏する。また、本発明の中間基材は硬化性と保管性に優れるという有利な効果も奏する。
【0027】
また、本発明によれば、予めアルコール化合物の一部または全部と2個以上イソシアネート基を有する化合物とを反応させたイソシアネート末端プレポリマーを含む2個以上イソシアネート基を有する化合物からなる液状組成物とアルコール化合物とからなる特定の粘度を有する含浸性に優れた液状組成物を用いる本発明により、単位面積の大きい中間基材を製造することができるという有利な効果を奏する。さらに、本発明によれば、単位面積質量の大きい中間基材に関し、積層回数を減らしボイドの極力少ない高強度なFRP、寸法安定性に優れるFRPを提供することが可能であるという有利な効果を奏する。
【0028】
また、本発明によれば、特定の粘度を有する液状組成物を用いる場合、繊維又は繊維上で樹脂成形する際の繊維又は繊維上からの染み出しを抑制することが可能となり、樹脂成形装置のメンテナンス、作業性が向上し、かつ一般に皮膚刺激性を有するイソシアネート化合物との不要な接触を低減させることが出来る。
【0029】
また、本発明によれば、特定の粘度を有する液状組成物を用いる場合、繊維又は繊維上で樹脂成形する際の目付のコントロールが容易となるという有利な効果も奏する。
【0030】
また、本発明によれば、予めイソシアネート基を有する化合物の一部をアルコール化合物と反応させたイソシアネート末端プレポリマーを含むイソシアネート基を有する化合物とアルコール化合物とからなる液状組成物を用いることにより、従来繊維又は繊維上で樹脂成形する際の繊維又は繊維上からの染み出しが原因で、使用量の限られていた低分子量、低粘度のイソシアネート基を有する化合物やアルコール化合物の使用量制約を緩和することが可能となるという有利な効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、何ら以下の説明に限定されるものではない。本発明において「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」を示す。同様に「(メタ)アクリル酸エステル」は、「アクリル酸エステル」及び「メタクリル酸エステル」を示す。
【0032】
本発明の繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物は、下記組成物(A)と組成物(B)とを配合してなる繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物であって、前記組成物を繊維又は繊維上で樹脂成形するための液状組成物であることを特徴とする。すなわち、2個以上のイソシアネート基を有する化合物(a1)および、(a1)と1分子中に2個以上の第一のイソシアネート反応性基含有化合物(b2)とを反応させた末端イソシアネート基ポリウレタン化合物(a2)を含む組成物(A)、及びエチレン性不飽和基含有モノアルコール化合物(b1)成分を必須成分とし、さらに(b2)を含むことができる組成物(B)とを配合してなる繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物である。
【0033】
まず、組成物(A)について記載する。組成物(A)は、含浸性の確保と染み出し防止の両立という観点から、2個以上のイソシアネート基を有する化合物(a1)および(a1)と1分子中に2個以上のイソシアネート反応性基含有化合物(b2)とを予め反応させた末端イソシアネート基ポリウレタン化合物(a2)を含む組成物とすることができる。
【0034】
2個以上のイソシアネート基を有する化合物(a1)としては、例えば、1,3-キシリレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4‘-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、4,4’―ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、m-テトラメチルキシレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート化合物、水添キシリレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水添メチレンビスフェニレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、等の脂環族イソシアネート化合物、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート化合物、2官能イソシアネート化合物が3量化されたイソシアヌレート環を有する3官能イソシアネート、ポリオールで変性されたイソシアネートプレポリマー等を挙げることができる。これらのイソシアネート化合物は、単独で用いられることも、2種以上を併用することもできる。
【0035】
(a2)について記載する。(a2)は上述の(a1)と後述する(b2)とを反応させた末端イソシアネート基ポリウレタン化合物である。(b2)を組成物(A)に配合してもよく、(b2)を組成物(A)及び(B)の両方に配合しても良い。また、(b2)の配合量の一部または全部を(A)に配合し、組成物(B)と混合する前に(b2)が持つイソシアネート反応性基を(a1)と予め反応させることによって(a2)を得てもよい。この場合、組成物(A)について部分的にプレポリマー化させた末端イソシアネート基を有する反応物を含むことができる。また、(b2)の配合量の一部を(A)に配合し、(b2)の配合量の一部を組成物(B)に配合する場合、組成物(B)と混合する前に(b2)が持つイソシアネート反応性基を(a1)と予め反応させることによって(a2)を得ることができる。反応条件には特に制約はなく、ウレタン化合物の合成に於ける公知の反応条件を任意に選択することができる。
【0036】
次いで組成物(B)について記載する。本発明の繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物の好ましい実施態様において、前記組成物(B)は、含浸性の確保と染み出し防止の両立という観点から、第二のイソシアネート反応性基含有化合物(b2)を含むことを特徴とする。また、組成物(A)に含まれる(a2)の程度、量等によって、組成物(B)に(b2)を含まないようにし、又は含むようにすることができる。
【0037】
本発明において、組成物(B)は、エチレン性不飽和基含有モノアルコール化合物(b1)、2個以上のイソシアネート反応性基含有化合物(b2)、及び、後述するように、重合禁止剤(b3)を含むことができる組成物とすることができる。組成物(B)は、エチレン性不飽和基含有モノアルコール化合物(b1)が必須成分であり、好ましくは、一分子中に2個以上のイソシアネート反応性基含有化合物(b2)を含むことができ、後述するように重合禁止剤は必要に応じて配合することができる組成物である。
【0038】
また、本発明の繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物の好ましい実施態様において、前記第一及び/又は第二のイソシアネート反応性基含有化合物(b2)が、含浸性の付与という観点から、水酸基当量が30~140g/eqである1分子中に2つ以上のアルコール基を含有する化合物であることを特徴とする。
【0039】
組成物(B)に配合されるエチレン性不飽和基含有モノアルコール化合物(b1)、2個以上のイソシアネート反応性基を有する化合物(b2)は、混合の作業性という観点から、繊維への含浸温度(10~50℃の範囲で任意の温度)で液状のものが好ましいが、組成物(B)として該液状組成物となるのであれば固形の材料を用いてもよい。
【0040】
エチレン性不飽和基含有モノアルコール化合物(b1)とは水酸基を含有する(メタ)アクリル酸エステルのことであり、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジアクリル化イソシアヌレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチル-フタル酸などが挙げられる。
【0041】
これらのエチレン性不飽和基含有モノアルコール化合物(b1)は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。又、これらエチレン性不飽和基含有モノアルコール化合物(b1)のうち、液状組成物の粘度や硬化物の機械物性の点から2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましい。又、耐熱性を必要とする場合は、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0042】
2個以上のイソシアネート反応性基を有する化合物(b2)としては、脂肪族アルコール、及びポリエステルポリオール、アミノ基含有化合物等が挙げられる。
【0043】
脂肪族アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,4-ブテンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-2-メチルプロパン-1,3-ジオール、2-ブチル-2-エチルプロパン-1,3-ジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,4-ジメチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,7-へプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。環状脂肪族アルコールとしては、水添ビスフェノールA、トリシクロデカンジメタノール、スピログリコールなどが挙げられる。このうち、液状組成物の粘度や増粘性、硬化物の機械物性の点から、水酸基当量が30~140g/eqである1分子中に2つ以上のアルコール基を含有するアルコールが好ましく、更には炭素数2~4のポリオールとして、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオールが挙げられ、1,3-プロパンジオールが好適に用いられる。
【0044】
ポリエステルポリオールとしては、不飽和及び又は飽和酸と、前述の脂肪族アルコールとを重縮合させたものが挙げられる。不飽和酸としては、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸が挙げられる。飽和酸としては、オルソフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、コハク酸、セバシン酸、アルキルコハク酸、アルケニルコハク酸、イタコン酸、ビフェニルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、5-tert-ブチル-1,3-ベンゼンジカルボン酸及びこれらの酸無水物、低級アルキルエステル、酸ハロゲン化物などのようなエステル形成性誘導体が挙げられる。
【0045】
アミノ基含有化合物としては、アルカノールアミン、ポリアミンが挙げられる。アルカノールアミンとしては、炭素数2~20のジ-及びトリ-アルカノールアミンが挙げられ、具体的にはジエタノールアミン、トリエタノールアミン及びイソプロパノールアミンなどが挙げられる。ポリアミンとしては、脂肪族アミンとして、炭素数2~6のアルキレンジアミンや炭素数4~20のポリアルキレンポリアミンが挙げられ、具体的には、エチレンジアミン、プロピレンジアミン及びヘキサメチレンジアミン、アルキレン基の炭素数が2~6のジアルキレントリアミン~ヘキサアルキレンヘプタミン、例えば、ジエチレントリアミン及びトリエチレンテトラミンなどが挙げられる。又、炭素数6~20の芳香族ポリアミンとして、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、メチレンジアニリン及びジフェニルエーテルジアミン、炭素数4~20の脂環式ポリアミンとして、イソホロンジアミン、シクロヘキシレンジアミン及びジシクロヘキシルメタンジアミンなども挙げられる。
【0046】
これら2個以上のイソシアネート反応性基を有する化合物(b2)として、脂肪族アルコール、及びポリエステルポリオール、アミノ基含有化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0047】
また、本発明の繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物の好ましい実施態様において、重合禁止剤(b3)が、前記組成物(A)及び/又は(B)に配合されたことを特徴とする。すなわち、重合禁止剤(b3)は、前記組成物(A)のみに含まれていても良く、また、前記組成物(B)のみに含まれていても良く、さらに、前記組成物(A)及び(B)の両方に含まれていても良い。
【0048】
重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、パラベンゾキノン、メチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、トルハイドロキノン等の公知の多価フェノール系重合禁止剤が使用できる。
【0049】
また、本発明の繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物の好ましい実施態様において、さらに、重合開始剤(C)、及び/又はウレタン化触媒(D)が、前記組成物(A)又は(B)に配合されていることを特徴とする。
【0050】
また、本発明の繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物の好ましい実施態様において、前記組成物(A)、(B)の少なくともいずれか一方にイソシアネート反応性基を含まない重合性単量体(E)を含むことを特徴とする。すなわち、前記組成物(A)、又は(B)の少なくともいずれか一方にイソシアネート反応性基を含まない重合性単量体(E)を含んでいれば良く、組成物(A)及び(B)の両方にイソシアネート反応性基を含まない重合性単量体(E)を含んでいてもよい。
【0051】
まず、重合開始剤(C)、ウレタン化触媒(D)及びイソシアネートを含まない重合性単量体(E)について記載する。これらの成分はそれぞれ、組成物(A)又は(B)のどちらにも配合できる。重合開始剤(C)は、後述する繊維強化複合材料化において、ラジカル重合により中間基材を硬化する際に、必須成分とすることができる。
【0052】
ウレタン化触媒(D)及びイソシアネートを含まない重合性単量体(E)は必要に応じて配合することができる。
【0053】
重合開始剤(C)としては有機過酸化物系重合開始剤が挙げられ、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド系、ベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド系、t-ブチルパーオキシベンゾエートなどのパーオキシエステル系、クメンハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド系、ジクミルパーオキサイドなどジアルキルパーオキサイド系、ビス(4-ターシャリーブチロイルヘキシル)パーオキシジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート系などが挙げられる。
【0054】
又、中間基材に光硬化性を付与する場合は、光硬化用の開始剤を使用することが可能で、例えばアセトフェノン、p-ジメチルアミノアセトフェノン、p-ジメチルアミノプロピオフェノンなどのアセトフェノン系、α-アルキルアミノベンゾフェノンなどのアミノベンゾフェノン系、ベンゾフェノン、2-クロロベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系、ベンゾインメチルエーテルなどのベンゾインエ-テル系、ベンジルジメチルケタールなどのベンジルケタール系、2-エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノンなどのアントラキノン系、クメンパーオキシドなどの有機過酸化物、2-メルカプトベンゾイミダールなどのチオール化合物、アセトフェノンo-ベンゾイルオキシムなどのo-アシルオキシム系などが挙げられる。
【0055】
これらは中間基材の熟成温度、成型温度、保管温度から適宜に選択することができ、単独又は2種以上混合して使用することができる。
【0056】
重合開始剤(C)の添加量は、液状組成物100質量部に対して、0.05~5質量部である。重合開始剤(C)は、組成物(B)に配合することができるが、組成物(B)にはエチレン性不飽和基を有する化合物が配合されるため、組成物(B)としての貯蔵安定性を考慮すると、組成物(A)に配合するほうが好ましい。
【0057】
ウレタン化触媒(D)には酸性触媒、塩基性触媒が使用できるが、活性の高いジブチル錫ジラウリレートやジブチル錫ジアセテートなどのスズ化合物が好ましい。触媒の添加量は、選択する他の原料によって異なるが、熟成時の発熱及びウレタンアクリレート形成の速度、中間基材の貯蔵安定性、硬化物の機械物性の観点から、液状組成物質量に対して、0~800ppmである。
【0058】
イソシアネート反応性基を含まない重合性単量体(E)としては、イソシアネート基と常温で反応しないものが好ましく、イソシアネート基と常温で反応しない重合性単量体(E)としては、ビニルモノマーや単官能(メタ)アクリル酸エステル、多官能(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。イソシアネート基と反応する重合性単量体を配合すると保管時に反応して粘度が上昇し作業性が悪くなる虞や十分な機械物性を得ることができない虞がある。
【0059】
重合性単量体(E)としては、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、酢酸ビニルなどが挙げられ、又、単官能(メタ)アクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、ベンジル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレートなど、多官能(メタ)アクリル酸エステルとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレンジ(メタ)アクリレート、ノルボルネンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレートなどが挙げられる。これらの重合性単量体(E)は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。中間基材としてのタック性や臭気、その硬化物の機械物性の点からジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレンジ(メタ)アクリレート、ベンジルメタクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートの適用が好ましい。
【0060】
また、本発明の繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物の好ましい実施様態において、前記組成物(A)と(B)の合計質量に対して重合性単量体(E)の含有量が0~40質量%であることを特徴とする。すなわち、重合性単量体(E)の配合量は、中間基材として目標とする粘度特性やタック性に対し、熟成で得られるウレタンアクリレートに合わせて、液状組成物中に0~40質量%の範囲で調整されることができる。中間基材の硬化収縮を小さくする観点からすると、重合性単量体(E)の配合量は、0~20質量%が好ましい。
【0061】
また、本発明の繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物の好ましい実施態様において、優れたFRP機械物性を与えるという観点から、さらに、前記組成物(A)中のイソシアネート基モル数に対する前記組成物(B)中のイソシアネート反応性基モル比(B/A)が0.75~1.2、好ましくは、0.9~1.1であることを特徴とする。
【0062】
また、本発明の繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物の好ましい実施態様において、B型粘度計で測定された10~50℃における前記組成物(A)と(B)の混合物である液状組成物の粘度が200~2000mPa・sであることを特徴とする。すなわち、本発明の液状組成物の粘度は、前記組成物(A)と(B)を混合した時点で、10~50℃で目的とする中間基材の単位面積質量にもよるが、特に200~2000mPa・sが好ましい。粘度が2000mPa・sを越えると基材への含浸が悪くなり、得られた中間基材中に液状組成物の未含浸部位が出来てしまい好ましくない。
【0063】
本発明の液状組成物は熟成により、ウレタン(メタ)アクリレートへと変化するが、そのウレタン(メタ)アクリレートのエチレン性不飽和基当量は、特に限定はしないが、1000g/eq未満が好ましい。1000g/eq以上となると、機械物性(曲げ強さ、引張り強さ、圧縮強さ、層間せん断強さ)のバランスが悪くなり、成形品の耐熱性が低くなる虞がある。
【0064】
本発明の液状組成物には、粘弾性の調整や機械物性の向上を目的に無機粒子やゴム粒子を配合してもよい。無機粒子としては、特に限定されないが炭酸カルシウム、アルミナ、タルク、酸化チタン、シリカ等が挙げられる。ゴム成分としては、特に限定されないが架橋ゴム粒子、ゴム成分が架橋ポリマーに包まれたコアシェルゴム粒子が挙げられる。これらの配合量は液状樹脂組成物の粘度にもよるが2~80質量%、好ましくは2~75質量%である。
【0065】
更に本発明の液状組成物には、FRPのさらなる機械強度、衝撃性向上のためにカーボンナノチューブを配合することができる。カーボンナノチューブは液状組成物の粘度、塗工性の観点から単層のカーボンナノチューブが好適で、その配合量はFRP中の単層カーボンナノチューブが0.05~0.5質量%となるようにするのが好ましい。
【0066】
更に本発明の液状組成物には必要に応じて低収縮剤、内部離型剤、成分分散剤などを配合することができる。これらの配合物は、溶解性の観点から液状のものが好ましいが、熱を加えて組成物に溶解すれば固形のものでも良い。
【0067】
また、本発明の繊維強化プラスチック中間基材は、本発明の繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物を繊維材料に含浸してなることを特徴とする。
【0068】
本発明の中間基材に用いられる繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ザイロン繊維、ボロン繊維、バサルト繊維、セルロース等が挙げられるが、これらには限定されない。又、強化繊維含有率は10~90質量%、機械特性と成形性の面から、好ましくは30~80質量%が望ましい。強化繊維の表面処理剤、形状(一方向、クロス、NCF、不織布等)については限定されない。又、繊維基材と繊維基材の間にコア材を挟み込むことも可能である。コア材の例としては、発泡不織布、ハニカムコアマットなどが挙げられる。
【0069】
また、本発明の繊維強化プラスチック中間基材の製造方法は、本発明の液状組成物を任意の組成で繊維材料に含浸させる工程と、前記含浸させて得られた繊維強化プラスチック中間基を熟成させる工程と、を含むことを特徴とする。本発明において、特に限定されないが、例えば、10~50℃までの温度で前記液状組成物を任意の組成で繊維材料に含浸させることができる。また、本発明において、必要に応じて、さらにフィルムで挟み、ローラー圧力で前記液状組成物を前記繊維材料に含浸させて、ロール状、又は、綴り状にしてもよい。その後、前記含浸させて得られた繊維強化プラスチック中間基材を熟成させることができる。すなわち、本発明においては、熟成の間に液状組成物が繊維又は織物に含浸した状態でウレタンアクリレートが形成されることが可能となる。従来においては、一度ウレタンアクリレートを形成させた上で、繊維等に含浸させていたが、驚くべきことに、本発明の液状組成物は、繊維又は織物等に含浸した状態で、熟成という工程を経てウレタンアクリレートが形成されることを本発明者らは見出したものである。これにより、本発明においては、液状組成物と繊維とをより強固に結合させることが可能となり、後述する実施例により明らかなように、より良好な含浸性、硬化性、及び機械物性等を発揮し得るという有利な効果を奏するものである。
【0070】
好ましい実施様態において、ウレタンアクリレート化の促進とラジカル重合反応抑制の観点から、前記熟成の温度は、30~80℃とすることができる。このように、液状組成物をフィルム上に塗工し、その塗工面に繊維又は織物をのせ更にフィルムで挟み、ローラーで圧力をかけ液状組成物を繊維又は織物に含浸させることができる。なお、塗工場所から塗布物が繊維又は織物に接触がするまでは、塗布物が一定の幅を保つために防波堤状の治具があるのが好ましい。もしくは、繊維又は織物に液状組成物を滴下又は噴霧し更にフィルムで挟み、ローラーで圧力をかけ液状組成物を繊維又は織物に含浸させることができる。これらの方法で含浸させたものをシート状、ロール状、又は綴ら状にし、炉(30~80℃)にて熟成させることができる。
【0071】
また、本発明の繊維強化複合材料は、本発明の繊維強化プラスチック中間基材を硬化させてなることを特徴とする。
【0072】
ウレタンアクリレートが繊維上に形成された本発明の中間基材の硬化物は、熱と圧力を加えて加熱硬化させることにより得られる。すなわち、ラジカル重合による硬化を行うことが可能である。熱と圧力を加える成形方法としては、オートクレーブ成形、オーブン成形、シートワインディング成形、プレス成形等がある。液状組成物中の重合開始剤の種類にもよるが成形温度は、70~180℃、好ましくは100~150℃で時間は3~60分であることが好ましく、圧力は0.1~15MPaが好ましい。
【実施例0073】
以下に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。本実施例において「部」は特に断らない限り質量部である。実施例では、中間基材の例として、C-SMC(カーボンSMC)を作成した。
【0074】
[末端イソシアネート基アダクト体を含む組成物Aの合成]
合成例(A-1)
温度計、撹拌機、気体導入管、及び還流冷却器を備えた5つ口フラスコに メチレンジフェニルジイソシアネート(カルボジイミド変性体、イソシアネート当量143g/eq)を547質量部、トリプロピレングリコール93質量部仕込み、空気流下(0.2L/min)、温度75~85℃に保持し4時間反応させ、末端イソシアネート基アダクト体含有組成物(A-1)を得た。得られた組成物のイソシアネート当量は224g/eqであった。
【0075】
合成例(A-2)
温度計、撹拌機、気体導入管、及び還流冷却器を備えた5つ口フラスコに メチレンジフェニルジイソシアネート(カルボジイミド変性体、イソシアネート当量143g/eq)を554質量部、トリプロピレングリコール63質量部仕込み、空気流下(0.2L/min)、温度75~85℃に保持し4時間反応させ、末端イソシアネート基アダクト体含有組成物(A-2)を得た。得られた組成物のイソシアネート当量は 264g/eqであった。
【0076】
合成例(A-3)
温度計、撹拌機、気体導入管、及び還流冷却器を備えた5つ口フラスコに メチレンジフェニルジイソシアネート(カルボジイミド変性体、イソシアネート当量143g/eq)を554質量部、トリプロピレングリコール63質量部仕込み、空気流下(0.2L/min)、温度75~85℃に保持し4時間反応させ、末端イソシアネート基アダクト体含有組成物(A-3)を得た。得られた組成物のイソシアネート当量は 264g/eqであった。
【0077】
合成例(A-4)
温度計、撹拌機、気体導入管、及び還流冷却器を備えた5つ口フラスコに イソホロンジイソシアネート603質量部、1,3-プロパンジオール54質量部、ジブチル錫ジラウレート0.20質量部を仕込み、空気流下(0.2L/min)、温度105~115℃に保持し4時間反応させ、末端イソシアネート基アダクト体含有組成物(A-4)を得た。得られた組成物のイソシアネート当量は 164g/eqであった。
【0078】
合成例(A-5)
温度計、撹拌機、気体導入管、及び還流冷却器を備えた5つ口フラスコに イソホロンジイソシアネート519質量部、1,3-プロパンジオール73質量部、ジエチレングリコールジメタクリレート140質量部を仕込み、2,6-ジターシャリーブチル-4-メチルフェノール0.17質量部、トルハイドロキノン0.04質量部、ジブチル錫ジラウレート0.17質量部仕込み、空気流下(0.2L/min)、温度105~115℃に保持し4時間反応させ、末端イソシアネート基アダクト体含有組成物(A-5)を得た。得られた組成物のイソシアネート当量は 216g/eqであった。
【0079】
合成例(A-6)
温度計、撹拌機、気体導入管、及び還流冷却器を備えた5つ口フラスコに メチレンジフェニルジイソシアネート(カルボジイミド変性体、イソシアネート当量143g/eq)を480質量部、トリプロピレングリコール105質量部、ジエチレングリコールジエメタクリレート140質量部、2,6-ジターシャリーブチル-4-メチルフェノール0.17質量部、トルハイドロキノン0.04質量部仕込み、空気流下(0.2L/min)、温度75~85℃に保持し4時間反応させ、末端イソシアネート基アダクト体含有組成物(A-6)を得た。得られた組成物のイソシアネート当量は258g/eqであった。
【0080】
[組成物Bの調製]
組成物(B-1)の調製
容器に 2-ヒドロキシプロピルメタクリレート360質量部を配合した。
【0081】
組成物(B-2)の調製
容器に 2-ヒドロキシプロピルメタクリレート320質量部、トリプロピレングリコール62質量部を配合した。
【0082】
組成物(B-3)の調製
容器に 2-ヒドロキシプロピルメタクリレート320質量部、トリプロピレングリコール62質量部、2,6-ジターシャリーブチル-4-メチルフェノール0.3質量部、トルハイドロキノン0.05質量部を配合した。
【0083】
組成物(B-4)の調製
容器に 2-ヒドロキシエチルメタクリレート289質量部、1,3-プロパンジオール54質量部、2,6-ジターシャリーブチル-4-メチルフェノール0.3質量部、トルハイドロキノン0.05質量部を配合した。
【0084】
組成物(B-5)の調製
容器に 2-ヒドロキシエチルメタクリレート249質量部、1,3プロパンジオール19質量部を配合した。
【0085】
組成物(B-6)の調製
容器に 2-ヒドロキシプロピルメタクリレート360質量部を配合した。
【0086】
[中間基材用液状組成物の作成]
調製した組成物Aと組成物Bの混合物100質量部に対して1.5質量部の重合開始剤パーブチルE(日油社製物置紙カーボネート系有機過酸化物)を配合し均一溶液になるまで撹拌し、中間基材用液状組成物を得た。
【0087】
さらに、組成物(A)中のイソシアネート基モル数に対する組成物(B)中のイソシアネート反応性基モル比(A/B)、熟成後に形成されたウレタン(メタ)アクリレートの理論エチレン性不飽和基当量、調製した中間基材用液状組成物の粘度を表1に記載した。
【0088】
表1は、実施例組成物一覧を示す。
【0089】
【表1】
【0090】
〔比較例樹脂調製〕
比較例として下記の組成物を調整した。
組成物(X-1)の調整
容器にイソホロンジイソシアネート520質量部、ジブチル錫ジラウレート0.17質量部を配合した。
【0091】
組成物(X-2)の調整
容器にメチレンジフェニルジイソシアネート(カルボジイミド変性体)480質量部を配合した。
【0092】
組成物(X-3)の調整
温度計、撹拌機、気体導入管、及び還流冷却器を備えた5つ口フラスコに メチレンジフェニルジイソシアネート(カルボジイミド変性体、イソシアネート当量143g/eq)を382質量部、ポリプロピレングリコール(水酸基当量500g/eq)202質量部、ジエチレングリコールジエメタクリレート140質量部、2,6-ジターシャリーブチル-4-メチルフェノール0.17質量部、トルハイドロキノン0.04質量部仕込み、空気流下(0.2L/min)、温度75~85℃に保持し4時間反応させ、末端イソシアネート基アダクト体含有組成物(X-3)を得た。得られた組成物のイソシアネート当量は258g/eqであった
【0093】
組成物(Y-1)
容器に2-ヒドロキシエチルメタクリレート249質量部、1,3-プロパンジオール92質量部、2,6-ジターシャリーブチル-4-メチルフェノール0.26質量部、トルハイドロキノン0.04質量部、ジエチレングリコールジメタクリレート140質量部を配合した。
【0094】
組成物(Y-2)
容器に2-ヒドロキシエチルメタクリレート140質量部、1,3-プロパンジオール143質量部、2,6-ジターシャリーブチル-4-メチルフェノール0.26質量部、トルハイドロキノン0.04質量部、ジエチレングリコールジメタクリレート140質量部を配合した。
【0095】
組成物(Y-3)
容器に2-ヒドロキシプロピルメタクリレート105質量部を配合した。
【0096】
[中間基材用液状組成物の作成]
調製した組成物Xと組成物Yの混合物100質量部に対して1.5質量部の重合開始剤パーブチルE(日油社製物置紙カーボネート系有機過酸化物)を配合し均一溶液になるまで撹拌し、中間基材用液状組成物を得た。
【0097】
さらに、組成物(X)中のイソシアネート基モル数に対する組成物(Y)中のイソシアネート反応性基モル比(Y/X)、熟成後に形成されたウレタン(メタ)アクリレートの理論エチレン性不飽和基当量、調製した中間基材用液状組成物の粘度を表2に記載した。
【0098】
表2は、比較例組成物一覧を示す。
【0099】
【表2】
【0100】
〔中間基材作成〕
C-SMC(S-1~6、Z-1~3)の作成
30マイクロメートル厚さのポリエチレンフイルムを敷き、表―1および表―2で示した液状組成物を、長さ25mmにカットして25cm角又は35cm角に均一に分散させた炭素繊維(三菱ケミカル社製TR50S 12L)に含浸させ、前記30マイクロメートル厚さのポリエチレンフイルムを被せてその後熟成させることにより、C-SMCを得た。得られたC-SMCの設定目付と実測値を表3および表4に示した。
【0101】
〔中間基材(プリプレグ、C-SMC)の含浸性評価〕
目視にて含浸の具合を確認した。
◎:非常に良い 〇:良好 ×:未含浸部あり
【0102】
〔中間基材のはみだし評価〕
熟成後に中間基材の炭素繊維の端部よりオリゴマーが染み出した距離cmを評価した。
【0103】
〔中間基材の目付の評価〕
C-SMCの寸法と質量を測り、C-SMCの質量を面積で除した値をg/mの単位で示した。
【0104】
表3は、実施例C-SMCの評価を示す。
【0105】
【表3】
【0106】
表4は、比較例C-SMCの評価を示す。
【0107】
【表4】
【0108】
〔中間基材の成形〕
C-SMCの成形
作成したC-SMC(S-1~6、Z-1~3)を用いて、プレス((株)東邦プレス製作所社製100トンプレス機使用)により成形し、成形板(T-1~6,W-1~3)を得た。プレス成形時の温度は130℃、成形圧は8MPa、成形時間7分で成形を行った。
【0109】
〔成形板物性測定〕
得られた成形板(T-1~6、W-1~3)に対して、曲げ試験、層間せん断試験を実施した。
【0110】
曲げ試験
JISK7017に準拠された方法で測定を行った。
【0111】
層間せん断試験
JISK7078に準拠した方法で測定を行った。曲げ試験、層間せん断試験、物性評価試験結果を表5及び表6に示した。表5は、実施例の成形板物性を示す。
【0112】
【表5】
【0113】
表6は、比較例の成形板物性を示す。
【0114】
【表6】
【0115】
実施例については表1に示す通り、該液状組成物が比較例組成物と比較して、表3に示すように含浸性を損なうことなく染み出しの少ないC-SMCを得ることができた。これにより熟成後のC-SMCの目付も設定目付に近似しており中間基材としての精度が向上した。そして表5に示す通り成形して得られた平板の物性についても優れた性能を示した。
【0116】
しかしながら表2に示した比較例については表4、6が示すようにC-SMCの繊維への含浸状態、染み出し、設計目付の少なくとも何れかが満たされなかった。
【0117】
一方、本発明を用いることによって染み出しの少ない目付精度に優れたC-SMCを得ることができ、そのC-SMCを用いた成形物は優れた物性を持つFRPを提供することが可能となった。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明のラジカル重合性樹脂組成物及び中間基材は、軽量で高強度であるため、輸送機器や産業資材、土木補強材、スポーツ用具など、応用範囲はこれらに限られるものではなく、多岐に渡り使用できる。