(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102691
(43)【公開日】2023-07-25
(54)【発明の名称】排気浄化装置
(51)【国際特許分類】
F01N 3/08 20060101AFI20230718BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20230718BHJP
F01N 5/04 20060101ALI20230718BHJP
F01N 1/08 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
F01N3/08 B
F01N3/24 N
F01N5/04 Z
F01N1/08 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022003353
(22)【出願日】2022-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】大菅 史貴
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智也
【テーマコード(参考)】
3G004
3G091
【Fターム(参考)】
3G004BA06
3G004DA22
3G091AA18
3G091AB04
3G091BA14
3G091CA17
3G091FA01
3G091FB02
3G091FC07
3G091HA46
(57)【要約】
【課題】排気浄化装置において還元剤由来の白色析出物の析出を抑制するための技術を提供する。
【解決手段】内燃機関からの排気を浄化する排気浄化装置は、流路部材と、触媒と、噴射部と、貯留部材と、を備える。流路部材は、排気の流路を形成する。触媒は、排気の流路に設けられる。噴射部は、排気の流路における触媒よりも上流側に還元剤を噴射する。貯留部材は、排気の流路における噴射部による還元剤の噴射位置と触媒との間に設けられる。また、貯留部材は、貯留部と、案内部と、を有する。貯留部は、流路部材の内面から離間して配置され、液状の還元剤を貯留する。案内部は、流路部材の内面から貯留部まで液状の還元剤を案内する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関からの排気を浄化する排気浄化装置であって、
前記排気の流路を形成する流路部材と、
前記流路に設けられた触媒と、
前記流路における前記触媒よりも上流側に還元剤を噴射する噴射部と、
前記流路における前記噴射部による前記還元剤の噴射位置と前記触媒との間に設けられた貯留部材と、
を備え、
前記貯留部材は、
前記流路部材の内面から離間して配置され、液状の前記還元剤を貯留する貯留部と、
前記流路部材の内面から前記貯留部まで液状の前記還元剤を案内する案内部と、
を有する、排気浄化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の排気浄化装置であって、
前記貯留部は、前記流路の中心軸に沿って下流側に向かう方向から鉛直方向下向きの方向までの範囲における所定の方向に凹んでいる、排気浄化装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の排気浄化装置であって、
前記案内部は、前記流路の下流側へ延びた形状である、排気浄化装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の排気浄化装置であって、
前記案内部には、前記貯留部に向けて延びる、液状の前記還元剤を案内するための溝が形成されている、排気浄化装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の排気浄化装置であって、
前記案内部は、前記流路部材の内面における少なくとも鉛直方向下側の部分と、前記貯留部と、を繋ぐ部分である、排気浄化装置。
【請求項6】
請求項5に記載の排気浄化装置であって、
前記案内部は、前記流路部材の内面における前記流路の中心軸回りの全周と、前記貯留部と、を繋ぐ部分である、排気浄化装置。
【請求項7】
請求項6に記載の排気浄化装置であって、
前記流路における前記貯留部材よりも上流側に設けられ、前記排気に旋回流を生じさせる拡散部材を更に備える、排気浄化装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の排気浄化装置であって、
前記流路部材は、
前記流路の一部を形成する第1筒部と、
前記流路における、前記第1筒部により形成される部分よりも下流側且つ流路断面積が大きい部分を形成し、内部に前記触媒を収容する第2筒部と、
前記第1筒部と前記第2筒部との間において、前記流路における下流側に向かって流路断面積を拡大する部分を形成する連結部と、
を有し、
前記貯留部は、前記連結部の内部に配置される、排気浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内燃機関からの排気を浄化する排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排気には、大気汚染物質である窒素酸化物(NOX)が含まれている。このような排気を浄化する排気浄化装置では、特許文献1に記載のように、SCR(Selective Catalytic Reduction:選択触媒還元)方式の触媒が用いられる場合がある。当該触媒よりも上流側の排気に例えば還元剤としての尿素水が噴射されると、尿素水は排気の熱により気化し、加水分解されてアンモニアになる。そして、このアンモニアが排気と共に触媒へ供給されると、触媒の作用により排気中の窒化酸化物がアンモニアと反応して還元浄化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような排気浄化装置では、例えば排気の温度が高くないときに、気化しきらなかった還元剤が液体の状態で排気管の内面や触媒等に付着して、還元剤由来の白色析出物(いわゆるデポジット)が析出することがあった。
【0005】
本開示の一局面は、排気浄化装置において還元剤由来の白色析出物の析出を抑制するための技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、内燃機関からの排気を浄化する排気浄化装置であって、流路部材と、触媒と、噴射部と、貯留部材と、を備える。流路部材は、排気の流路を形成する。触媒は、排気の流路に設けられる。噴射部は、排気の流路における触媒よりも上流側に還元剤を噴射する。貯留部材は、排気の流路における噴射部による還元剤の噴射位置と触媒との間に設けられる。また、貯留部材は、貯留部と、案内部と、を有する。貯留部は、流路部材の内面から離間して配置され、液状の還元剤を貯留する。案内部は、流路部材の内面から貯留部まで液状の還元剤を案内する。
【0007】
このような構成によれば、流路部材の内面から離間した、排気浄化装置の外気温の影響を受けにくい位置に、液状の還元剤が貯留されるため、還元剤由来の白色析出物の析出を抑制することができる。
【0008】
本開示の一態様では、貯留部は、排気の流路の中心軸に沿って下流側に向かう方向から鉛直方向下向きの方向までの範囲における所定の方向に凹んでいてもよい。
液状の還元剤は、排気の流れの影響及び重力の影響を受けて、貯留部における下流側及び鉛直方向下側の部分に集まりやすいため、上記のような構成によれば、液状の還元剤をより多く貯留部に貯留することができる。
【0009】
本開示の一態様では、案内部は、排気の流路の下流側へ延びた形状であってもよい。
液状の還元剤は排気の流れの影響を受けて下流側へ移動するため、上記のような構成によれば、液状の還元剤を貯留部に集めやすくすることができる。
【0010】
本開示の一態様では、案内部には、貯留部に向けて延びる、液状の還元剤を案内するための溝が形成されていてもよい。
このような構成によれば、液状の還元剤が案内部の途中で案内部から零れてしまうことを抑制することができるため、液状の還元剤を貯留部に集めやすくすることができる。
【0011】
本開示の一態様では、案内部は、流路部材の内面における少なくとも鉛直方向下側の部分と、貯留部と、を繋ぐ部分であってもよい。
液状の還元剤は、液滴としての大きさが大きくなって重力の影響が相対的に大きくなると、流路部材の内面における鉛直方向下側に集まりやすくなる。このため、上記のような構成によれば、液状の還元剤を効率よく貯留部に集めることができる。
【0012】
本開示の一態様では、案内部は、流路部材の内面における流路の中心軸回りの全周と、貯留部と、を繋ぐ部分であってもよい。
このような構成によれば、流路部材の内面を伝ってきた液状の還元剤を漏れなく貯留部に集めることも可能になる。
【0013】
本開示の一態様は、流路における貯留部材よりも上流側に設けられ、排気に旋回流を生じさせる拡散部材を更に備えてもよい。
【0014】
本開示の一態様では、流路部材は、第1筒部と、第2筒部と、連結部と、を有してもよい。第1筒部は、流路の一部を形成する。第2筒部は、流路における、第1筒部により形成される部分よりも下流側且つ流路断面積が大きい部分を形成し、内部に触媒を収容する。連結部は、第1筒部と第2筒部との間において、流路における下流側に向かって流路断面積を拡大する部分を形成する。貯留部は、連結部の内部に配置されてもよい。
このような構成によれば、貯留部を排気の流路に設けることによる圧力損失を生じにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態の排気浄化装置を示す断面図である。
【
図2】第1実施形態の拡散部材を示す斜視図である。
【
図3】第1実施形態の貯留部材を示す正面図である。
【
図5】第1実施形態の貯留部材を示す斜視図である。
【
図6】第2実施形態の排気浄化装置を示す断面図である。
【
図7】第2実施形態の貯留部材を示す正面図である。
【
図9】第2実施形態の貯留部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1に示す排気浄化装置1は、内燃機関からの排気を浄化する装置である。本実施形態の排気浄化装置1は、内燃機関としてディーゼルエンジンを搭載する車両において用いられる。以下の説明及び図面における水平方向及び鉛直方向は、排気浄化装置1が車両に搭載された状態における水平方向及び鉛直方向を意味する。図面では、水平方向をH、鉛直方向をVと表記している。
【0017】
排気浄化装置1は、流路部材2、触媒3、マット4、噴射部5、拡散部材6、及び貯留部材7を備える。流路部材2は、排気の流路を形成する。流路部材2は、筒状である。流路部材2は、金属製である。以下では、排気の流路の上流側を単に上流側、排気の流路の下流側を単に下流側ともいう。
【0018】
流路部材2は、第1筒部21、第2筒部22、及び連結部23を有する。第1筒部21、第2筒部22及び連結部23は、それぞれ、排気の流路の一部を形成する。本実施形態の第1筒部21、第2筒部22及び連結部23は、同軸に配置され、排気の流路における水平方向に直線状に延びる部分を形成する。
【0019】
第2筒部22は、排気の流路における、第1筒部21により形成される部分よりも下流側且つ流路断面積が大きい部分を形成する。流路断面積とは、排気の流路の中心軸Aと垂直な断面における当該流路の面積である。本実施形態では、第1筒部21及び第2筒部22は、径が一定の円筒状である。第2筒部22の径は、第1筒部21の径よりも大きい。
【0020】
連結部23は、第1筒部21と第2筒部22との間において、排気の流路における下流側(つまり第2筒部22側)に向かって流路断面積を拡大する部分を形成する。連結部23は、第1筒部21の下流端と第2筒部22の上流端とを連結する。本実施形態では、連結部23は、第2筒部22側に向けて径を漸次拡大する円錐台状の筒状である。
【0021】
触媒3は、排気に含まれる窒化酸化物(NOX)を還元剤の存在下で還元浄化するSCR方式の触媒である。SCRとは、Selective Catalytic Reductionの略であって、選択触媒還元を意味する。触媒3は、排気の流路に設けられる。本実施形態では、触媒3は、第2筒部22の内部に収容される。
【0022】
マット4は、弾性変形可能な部材である。マット4は、所定の厚みを有する。マット4は、流路部材2(本実施形態では第2筒部22)と触媒3との間に配置されている。具体的には、マット4は、触媒3の周方向に沿って触媒3の外面を覆うように配置されている。
【0023】
噴射部5は、排気の流路における触媒3よりも上流側に還元剤を噴射する。具体的には、噴射部5は、第1筒部21の内部に還元剤としての尿素水を噴射する。噴射部5は、鉛直方向上方から第1筒部21の内部に尿素水を噴射する。噴射部5により噴射された尿素水は排気の熱により気化し、加水分解されてアンモニアになる。そして、このアンモニアが排気と共に触媒3へ供給されると、触媒3の作用により排気中の窒化酸化物がアンモニアと反応し、窒素へ還元浄化される。
【0024】
拡散部材6は、排気の流路における、噴射部5による還元剤の噴射位置から触媒3の手前までの範囲内に設けられる。本実施形態では、拡散部材6は、排気の流路における噴射部5による還元剤の噴射位置に設けられる。拡散部材6は、噴射部5により噴射された還元剤を排気中に拡散しやすくするための部材である。拡散部材6は、排気の流路の中心軸Aに沿って(具体的には当該中心軸Aと平行に)延びる平板状である。拡散部材6は、金属製である。
図2に示すように、拡散部材6は、第1筒部21の軸方向に沿って見て、第1筒部21の内部を上下に両分するように設けられている。第1筒部21の軸方向に沿って見たときの拡散部材6の両端面の少なくとも一方(本実施形態では両方)は、第1筒部21の内面に溶接等により接合されている。
図1に示すように、拡散部材6における第1筒部21の軸方向に沿って延びる面に向けて、鉛直方向上方から噴射部5により還元剤が噴射される。なお、拡散部材の形状は、本実施形態のような平板状に限定されず、例えば、円弧状に湾曲した形状であってもよい。
【0025】
貯留部材7は、還元剤が液体の状態のまま触媒3に到達してしまうことを抑制するための部材である。貯留部材7は、排気の流路における、噴射部5による還元剤の噴射位置と、触媒3と、の間に設けられる。本実施形態では、貯留部材7は、第1筒部21の内部における連結部23側の端部から連結部23の内部にまたがって配置される。貯留部材7は、貯留部71と、案内部72と、を有する。貯留部71は、流路部材2の内面から離間して配置され、液状の還元剤を貯留する部分である。案内部72は、流路部材2の内面から貯留部71まで液状の還元剤を案内する部分である。なお、貯留部71及び案内部72は、一体の部品として形成されてもよいし別個の部品として形成されてもよい。
【0026】
図1,
図3~
図5に示すように、貯留部材7は、第1板部7aと、第2板部7bと、を有する。第1板部7aは、鉛直方向下向きに湾曲しつつ下流側へ帯状に延びる部分である。本実施形態の第1板部7aは、排気の流路の中心軸Aに沿って(より詳細には当該中心軸Aと平行に)下流側へ延びている。第1板部7aの延伸方向と垂直な断面形状は、鉛直方向上側が開口したC字状である。第1板部7aは、このようなC字状の断面が下流側へ連なっている形状である。つまり、第1板部7aには、溝が形成されている。本実施形態では、第1板部7aの延伸方向と垂直な断面形状は、第1筒部21よりも一回り小さい円弧状であり、第1板部7aの延伸方向に一定である。また、第1板部7aの少なくとも一部の外面の形状は、第1筒部21の内面における鉛直方向下側の部分の形状と同一である。本実施形態では、第1板部7aの外面の曲率は、第1筒部21の内面の曲率と同一である。
【0027】
第1板部7aは、上流側の端部が流路部材2の内面に接すると共に、上流側の端部以外の部分が流路部材2の内面から離間するように、流路部材2の内部に配置される。第1板部7aの上流側の端部は、流路部材2の内面に溶接等により接合されている。本実施形態では、第1板部7aの上流側の端部は、第1筒部21における鉛直方向下側の部分に接合されている。第1板部7aにおける下流側の端部は、連結部23の内部に位置している。
【0028】
第2板部7bは、第1板部7aにおける下流側の端部に、排気の流路の中心軸Aと交わる向きで設けられた、板状の部分である。本実施形態では、第2板部7bは、排気の流路の中心軸Aと垂直に設けられている。言い換えれば、第2板部7bは、第1板部7aと垂直に設けられている。第2板部7bは、平板状である。第2板部7bは、第1板部7aのC字状の端部を閉塞している。第1板部7aにおける下流側の端部が連結部23の内部に位置していることから、第2板部7bもまた連結部23の内部に位置している。
【0029】
噴射部5により噴射された還元剤が気化しきらなかった場合には、この気化しきらなかった還元剤が液体の状態で拡散部材6の表面や流路部材2の内面に付着する。そして、この液状の還元剤は、排気の流れの影響及び重力の影響を受けて、流路部材2における第1筒部21の内面を下流側及び鉛直方向下側へ伝いやすい。液状の還元剤は、貯留部材7に達すると、貯留部材7の第1板部7aにおける鉛直方向上側の面を下流側へ更に伝い、第2板部7bまで至る。
【0030】
すなわち、貯留部材7における、第1板部7aの最も下流側且つ最も鉛直方向下側の部分を少なくとも含み、流路部材2の内面から離間した部分が、前述した貯留部71に該当する。言い換えれば、貯留部材7における、第1板部7aと第2板部7bとにより形成された角部における最も鉛直方向下側の部分を少なくとも含み、流路部材2の内面から離間した部分が、貯留部71に該当する。流路部材2の内面から離間していることとは、流路部材2の内面に直接的には連続していないこと、言い換えれば流路部材2の内面に直接的に連続している部分を有しないことを意味する。
【0031】
また、第1板部7aにおける、貯留部71に該当する部分よりも上流側の部分が、前述した案内部72に該当する。前述したように、第1板部7aにおける上流側の端部は、流路部材2(具体的には、第1筒部21)の内面に接合されている。つまり、案内部72は、流路部材2の内面に直接的に連続している部分を有する。案内部72は、流路部材2と貯留部71とを繋ぐ部分である。本実施形態では、案内部72は、第1筒部21の内面における鉛直方向下側の部分と、貯留部71と、を繋いでいる。
【0032】
貯留部71は、排気の流路の中心軸Aに沿って下流側に向かう方向から鉛直方向下向きの方向までの範囲における所定の方向に凹んでいる。所定の方向に凹んでいる形状とは、
図4に示すように、当該所定の方向Bと垂直な仮想平面Cによって閉塞された場合に、仮想平面Cとの間に密閉空間Dが形成される形状を意味する。密閉空間Dは、貯留部71と仮想平面Cとにより閉じられた空間である。例えば、排気の流路の中心軸Aに沿って下流側に向かう方向に凹んでいる形状の場合、貯留部71は、排気の流れの影響を受けて下流側へ移動する液状の還元剤を貯留しやすくなる。また例えば、鉛直方向下向きの方向に凹んでいる形状の場合、貯留部71は、重力の影響を受けて鉛直方向下側へ移動する液状の還元剤を貯留しやすくなる。実際には、液状の還元剤は、排気の流れと重力との双方の影響を受け、下流側且つ鉛直方向下側へ移動し得ることから、本実施形態の貯留部71は、排気の流路の中心軸Aに沿って下流側に向かう方向と鉛直方向下向きの方向との間の方向に凹んでいる。貯留部71は、前述したように流路部材2の内面から離間して配置された部分であるため、仮想平面Cにより形成される密閉空間Dも流路部材2の内面から離間している。
【0033】
[1-2.作用]
噴射部5により排気の流路に還元剤としての尿素水が噴射されると、前述したように、噴射された尿素水は、排気の熱により気化され加水分解によりアンモニアとなり、排気の流れに乗って触媒3へ供給される。そして、触媒3において、アンモニアとの反応により排気中の窒化酸化物が窒素へ還元浄化される。
【0034】
ただし、例えば、内燃機関の始動直後など排気の温度が高くないときには、噴射された還元剤が気化しきらない場合もある。気化しきらなかった還元剤は、前述したように液体の状態で拡散部材6の表面や流路部材2の内面に付着する。そして、この液状の還元剤は、排気の流れの影響及び重力の影響を受けて、流路部材2における第1筒部21の内面を下流側及び鉛直方向下側へ伝いやすい。液状の還元剤が第1筒部21の内面を伝う方向は、排気の流れの影響と重力の影響との兼ね合いで異なり得るが、例えば第1筒部21の内面を伝っている間に他の液滴と合体して液滴としての大きさが大きくなると、液状の還元剤は重力の影響を受けやすくなり、第1筒部21の内面における鉛直方向下側の部分に集まりやすくなる。このような液状の還元剤が、第1筒部21の内面における鉛直方向下側の部分から案内部72における鉛直方向上側の面を伝って貯留部71まで案内され、貯留部71に貯留される。
【0035】
ここで、液状の還元剤からは、還元剤由来の白色析出物(いわゆるデポジット)が析出することがある。この白色析出物は、温度が低い環境で析出しやすく、反対に温度が高い環境では析出しにくい。本実施形態では、上記のとおり貯留部71に液状の還元剤が貯留される。貯留部71は流路部材2の内面から離間しているため、貯留部71に液状の還元剤が貯留されることで、排気浄化装置1の外気温の影響を受けにくく、液状の還元剤が冷やされにくい状態を実現することができる。つまり、還元剤由来の白色析出物が析出しにくい状態を実現することができる。
【0036】
そして、例えば排気が十分に高温になると、貯留部71に貯留された液状の還元剤も気化し、加水分解によりアンモニアとなって排気と共に触媒3へ供給され、排気中の窒化酸化物の還元浄化に寄与する。
【0037】
[1-3.効果]
以上詳述した第1実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1a)排気浄化装置1では、排気の流路における噴射部5による還元剤の噴射位置と、触媒3と、の間に、貯留部材7が設けられる。貯留部材7は、貯留部71と案内部72とを有する。貯留部71は、流路部材2の内面から離間して配置され、液状の還元剤を貯留する。案内部72は、流路部材2の内面から貯留部71まで液状の還元剤を案内する。
【0038】
このような構成によれば、噴射部5により排気の流路に噴射された還元剤が気化しきらなかった場合に、気化しきらなかった還元剤の少なくとも一部が液体の状態で貯留部71まで案内され、貯留部71に貯留される。つまり、液状の還元剤は、流路部材2の内面から離間した、排気浄化装置1の外気温の影響を受けにくい位置に貯留される。したがって、還元剤由来の白色析出物の析出を抑制することができる。
【0039】
(1b)貯留部71は、排気の流路の中心軸Aに沿って下流側に向かう方向から鉛直方向下向きの方向までの所定の方向に凹んでいる。
気化しきらなかった液状の還元剤は、流路部材2(本実施形態では第1筒部21)の内面及び案内部72の鉛直方向上側の面を伝って貯留部71に案内される。このとき、液状の還元剤は、排気の流れの影響及び重力の影響を受けて、下流側及び鉛直方向下側へ移動する。つまり、液状の還元剤は、貯留部71における下流側及び鉛直方向下側の部分に集まりやすい。このため、上記のような構成によれば、液状の還元剤をより多く貯留部71に貯留することができる。
【0040】
(1c)案内部72は、排気の流路の下流側へ延びた形状である。
液状の還元剤は排気の流れの影響を受けて下流側へ移動する。このため、上記のような構成によれば、案内部72に至った液状の還元剤は、排気の流れにより下流側、つまり貯留部71側へ案内されやすい。したがって、液状の還元剤を貯留部71に集めやすくすることができる。
【0041】
(1d)案内部72には、貯留部71に向けて延びる、液状の還元剤を案内するための溝が形成されている。具体的には、案内部72は、鉛直方向下向きに湾曲しつつ貯留部71に向けて帯状に延びている。
【0042】
このような構成によれば、第1筒部21の内面から伝ってきた液状の還元剤が案内部72の途中で案内部72から零れてしまうことを抑制することができる。したがって、第1筒部21の内面から案内部72に至った液状の還元剤を案内部72から漏らしにくい状態で貯留部71に集めることも可能になる。
【0043】
(1e)案内部72は、流路部材2(具体的には第1筒部21)の内面における鉛直方向下側の部分と、貯留部71と、を繋ぐ部分である。
例えば、第1筒部21の内面にて他の液滴と合体する等して液滴としての大きさが大きくなると、液状の還元剤は重力の影響を受けやすくなり、第1筒部21における鉛直方向下側の部分に集まりやすくなる。上記のような構成によれば、案内部72が第1筒部21の内面における鉛直方向下側の部分から貯留部71に繋がっているため、液状の還元剤を効率よく貯留部71に集めることができる。
【0044】
(1f)流路部材2は、第1筒部21、第2筒部22及び連結部23を有する。連結部23は、第1筒部21と第2筒部22との間において、排気の流路の下流側に向かって流路断面積を拡大する部分である。貯留部材7における少なくとも貯留部71は、連結部23の内側に配置される。
このような構成によれば、貯留部71を排気の流路に設けることによる圧力損失を生じにくくすることができる。
【0045】
(1g)また、上記のような構成によれば、本実施形態のように、案内部72を排気の流路の中心軸Aと平行に配置し、且つ、貯留部71を流路部材2の内面から離間して配置することも可能になる。案内部72を排気の流路の中心軸Aと平行に配置することにより、排気の流れを活かしやすい方向且つ重力に逆らわない方向に液状の還元剤を案内することになるため、よりスムースに液状の還元剤を移動させることができる。このため、液状の還元剤を貯留部71に集めやすくすることができる。
【0046】
[2.第2実施形態]
[2-1.構成]
第2実施形態は、第1実施形態と基本的な構成は同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態と同一の符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0047】
図6に示すように、第2実施形態の排気浄化装置10は、前述した流路部材2、拡散部材6及び貯留部材7のそれぞれに代えて、流路部材20、拡散部材8及び貯留部材9を備える。
【0048】
流路部材20は、基本的には、前述した流路部材2と同様の構成である。ただし、流路部材20は、前述した第1筒部21に代えて第1筒部24を有する。第1筒部24は、直筒部24aと、曲筒部24bと、を有する。
【0049】
直筒部24aは、前述した第1筒部21と同様の構成である。すなわち、直筒部24aは、排気の流路における水平方向に直線状に延びる部分を形成する。また、直筒部24aの下流端は、連結部23の上流端に連結されている。
【0050】
曲筒部24bは、直筒部24aの上流側において、排気の流路におけるS字状に湾曲する部分を形成する。曲筒部24bは、中心軸がS字状に湾曲した円筒状である。曲筒部24bの径は一定である。第1実施形態では、第1筒部21の内部に鉛直方向上方から還元剤が噴射されるのに対して、第2実施形態では、曲筒部24bの内部に水平方向に沿って下流側へ還元剤が噴射される。
【0051】
拡散部材8は、前述した拡散部材6と同様に、噴射部5により噴射された還元剤を排気中に拡散しやすくするための部材である。拡散部材8も、排気の流路における、噴射部5による還元剤の噴射位置から触媒3の手前までの範囲内に設けられる。本実施形態では、拡散部材8は、排気の流路における噴射部5による還元剤の噴射位置の直後、より詳細には直筒部24aの内部に設けられる。拡散部材8は、金属製である。拡散部材8は、下流側へ延びる複数の羽根81を有する。複数の羽根81は、例えば周方向に向かって折れるように配置されている。これにより、拡散部材8は、排気に旋回流を生じさせる。すなわち、拡散部材8を通過する排気は、排気の流路において流路部材20の内面付近の圧力(つまり排気の密度)が高くなっている。
【0052】
貯留部材9は、前述した貯留部材7と同様に、還元剤が液体の状態のまま触媒3に到達してしまうことを抑制するための部材である。貯留部材9も、排気の流路における、噴射部5による還元剤の噴射位置と、触媒3と、の間に設けられる。本実施形態では、貯留部材9は、排気の流路における拡散部材8と触媒3との間、より詳細には連結部23の内部に設けられる。貯留部材9は、金属製である。貯留部材9は、貯留部91と、案内部92と、を有する。貯留部91及び案内部92は、前述した貯留部71及び案内部72とそれぞれ同様の機能を有する。
【0053】
図6~
図9に示すように、貯留部材9は、全体的に環状の部材である。貯留部材9は、中央部9a、外周部9b、及び複数の脚部9cを有する。なお、本実施形態の貯留部材9は一体成形品であり、中央部9a、外周部9b及び複数の脚部9cは、1つの板材から成形される。
【0054】
中央部9aは、排気の流路における中央部分、すなわち排気の流路の中心軸Eと重なる部分に配置された板状の部分である。中央部9aは、回転対称の形状である。本実施形態の中央部9aは、その対称軸に沿って見て円形状である。また、本実施形態の中央部9aは、その対称軸が排気の流路の中心軸Eと平行になるように(より詳細には一致するように)配置されている。中央部9aは、連結部23の内部に収まる大きさである。中央部9aは、連結部23の内面から離間している。
【0055】
外周部9bは、中央部9aよりも上流側において、流路部材2(具体的には連結部23)の内面に全周にわたって接合された筒状の部分である。本実施形態の外周部9bは、円筒状である。外周部9bは、例えば溶接により連結部23の内面に接合される。外周部9bの中心軸は、排気の流路の中心軸Eと一致している。すなわち、本実施形態では、外周部9bの中心軸は、中央部9aの対称軸とも一致している。外周部9bの軸方向に沿って見たとき、中央部9aは外周部9bの内側に収まる大きさである。なお、
図6では、流路部材2と貯留部材9との位置関係を模式的に示しているが、実際には、外周部9bが連結部23の内面に接合されることにより、流路部材2に対する貯留部材9の位置が固定される。
【0056】
複数の脚部9cは、外周部9bの下流端から中央部9aに向けてそれぞれ延びる板状の部分である。複数の脚部9cのそれぞれは、外周部9bの下流端から内側へ傾斜して延び、中央部9aに達している。本実施形態では、複数の脚部9cのそれぞれは、外周部9bの下流端から中央部9aまで径方向内側へ直線状に延びている。複数の脚部9cのそれぞれは、外周部9bと中央部9aとを繋いでいる。脚部9cの数は特に限定されないが、本実施形態の脚部9cは、計8本である。この8本の脚部9cは、いずれも同一の形状及び大きさである。また、外周部9bの中心軸回りにおける複数の脚部9cの配置も特に限定されないが、本実施形態の8本の脚部9cは、外周部9bの中心軸回りに均等な角度間隔で配置されている。
【0057】
貯留部材9には、隣り合う脚部9cと外周部9bと中央部9aとにより囲まれた部分に、開口部9dが形成されている。貯留部材9の上流側の面における開口部9dを囲む部分には、突条が形成されている。すなわち、外周部9bの内面における開口部9dに面する部分(言い換えれば、脚部9cに連続する部分同士の間の部分)に、突条が形成されている。また、脚部9cの上流側の面、すなわち排気の流路の中心軸E側に面する面における、開口部9dに面する部分(言い換えれば、外周部9bから中央部9aに向けて延びる両縁)にも、突条が形成されている。さらに、中央部9aの上流側の面における開口部9dに面する部分(言い換えれば、脚部9cから連続している部分同士の間)にも、突条が形成されている。このように、開口部9dが突条で囲まれている。したがって、流路部材20の内面から外周部9bの内面まで液状の還元剤が伝ってきたときに、この液状の還元剤は開口部9dから零れずに更に下流側の脚部9c及び中央部9aへ伝っていくことが可能になる。
【0058】
具体的には、外周部9bの内面を伝ってきた液状の還元剤は、開口部9dの手前の突条に沿って脚部9cに案内される。脚部9cにおける排気の流路の中心軸Eに面する面には、前述したように、外周部9bから中央部9aに向けて延びる両縁に突条が形成されている。反対に言えば、脚部9cにおける排気の流路の中心軸Eに面する面は、突条に挟まれた部分が相対的に凹んでいる。脚部9cはこのような凹みが下流側に連なっている形状であることから、脚部9cには、排気の流路の中心軸Eに面する面に、外周部9bから中央部9aに向けて延びる溝が形成されているとも言い換えられる。この溝は、外周部9bの内面から段差なく続いている。これにより、液状の還元剤は、外周部9bから脚部9cにおける溝に導かれ、この溝を通って中央部9aまで案内される。脚部9cにおける両縁の突条、言い換えれば溝の両側壁は、液状の還元剤を中央部9aまで案内するガイドとして機能する。脚部9cにおける溝は、中央部9aの上流側の面に段差なく続いている。これにより、脚部9cの溝を通ってきた液状の還元剤が中央部9aに達する。
【0059】
このように、気化しきらなかった還元剤は、液体の状態で流路部材20(具体的には、第1筒部24及び連結部23)の内面を下流側へ伝いやすい。この液状の還元剤は、貯留部材9に至ると、外周部9bの内面を下流側へ更に伝う。そして、液状の還元剤は、開口部9dを囲む突条に沿って複数の脚部9cに導かれ、各脚部9cにおける排気の流路の中心軸Eに面する面を下流側へ更に伝って、中央部9aまで至る。
【0060】
すなわち、貯留部材9における中央部9aが、前述した貯留部91に該当する。貯留部91は、流路部材20の内面から離間している。また、貯留部材9における外周部9b及び複数の脚部9cが、前述した案内部92に該当する。外周部9bは、流路部材20(具体的には、連結部23)の内面に接合されている。つまり、案内部92は、流路部材20の内面と直接的に連続している部分を有する。案内部92は、流路部材20の内面と貯留部91とを繋ぐ部分である。本実施形態では、案内部92は、連結部23の内面における排気の流路の中心軸E回りの全周と、貯留部91と、を繋いでいる。
【0061】
貯留部91も、前述した貯留部71と同様に、排気の流路の中心軸Eに沿って下流側に向かう方向から鉛直方向下向きの方向までの範囲における所定の方向に凹んでいる。本実施形態の貯留部91は、
図8に示すように、排気の流路の中心軸Eに沿って下流側に向かう方向(より詳細には当該中心軸Eと平行方向)に凹んでいる。すなわち、本実施形態の貯留部91は、排気の流路の中心軸Eと垂直な仮想平面Fにより密閉空間Gが形成される形状である。貯留部91が流路部材20の内面から離間して配置されていることから、仮想平面Fにより形成される密閉空間Gもまた流路部材20の内面から離間している。
【0062】
[2-2.作用]
噴射部5により排気の流路に還元剤としての尿素水が噴射されると、噴射された尿素水は、排気の熱により気化され加水分解によりアンモニアとなり、排気の流れに乗って、拡散部材8における複数の羽根81の間及び貯留部材9の開口部9dを通り、触媒3へ供給される。そして、触媒3において、アンモニアとの反応により排気中の窒化酸化物が窒素へ還元浄化される。
【0063】
ただし、噴射された還元剤が気化しきらなかった場合には、気化しきらなかった還元剤が液体の状態で拡散部材8の表面や流路部材20の内面に付着する。そして、この液状の還元剤は、排気の流れの影響を受けて、流路部材20(具体的には第1筒部24の直筒部24a及び連結部23)の内面を下流側へ伝いやすい。このとき、液状の還元剤は、排気の流れの影響に加えて重力の影響も受け得るが、本実施形態では、拡散部材8が排気に旋回流を生じさせるため、排気の流れの影響が相対的に大きくなりやすい。また、排気の流路において、流路部材20の内面近くに排気が流れやすい。したがって、液状の還元剤は、流路部材20の内面における鉛直方向下側の部分に必ずしも集まらずに、排気の流れに押されて下流側へ移動していく。そして、液状の還元剤は、流路部材20(具体的には連結部23)の内面から貯留部材9の案内部92を伝って貯留部91に案内され、貯留部91に貯留される。より詳細には、液状の還元剤は、案内部92を構成する外周部9bの内面を下流側へ伝い、開口部9dの手前に位置する突条により、案内部92を構成する複数の脚部9cに案内される。そして、液状の還元剤は、複数の脚部9cにおける溝を通って、貯留部91を構成する中央部9aまで案内され、中央部9aに貯留される。
【0064】
第1実施形態で述べたように、液状の還元剤からは還元剤由来の白色析出物が析出することがあるが、本実施形態では、上記のとおり貯留部91に液状の還元剤が貯留される。貯留部91は流路部材20の内面から離間しているため、貯留部91に液状の還元剤が貯留されることで、排気浄化装置10の外気温の影響を受けにくく、液状の還元剤が冷やされにくい状態を実現することができる。つまり、還元剤由来の白色析出物が析出しにくい状態を実現することができる。
【0065】
なお、中央部9aにおいて他の液滴と合体する等して液滴としての大きさが大きくなった場合には、液状の還元剤に対する重力の影響が相対的に大きくなる。これにより、液状の還元剤が、中央部9aから、中央部9aの鉛直方向下側に繋がっている脚部9cを経由して、外周部9bの内面における鉛直方向下側の部分に至ることも有り得る。このような場合でも、例えば流路部材20の内面に液状の還元剤が付着している状態と比較すると、液状の還元剤が排気浄化装置10の外気温の影響を受けにくい状態を実現することができる。
【0066】
第1実施形態と同様に、例えば排気が十分に高温になると、貯留部91に貯留された液状の還元剤も気化し、加水分解によりアンモニアとなって排気と共に触媒3へ供給され、排気中の窒化酸化物の還元浄化に寄与する。
【0067】
[2-3.効果]
以上詳述した第2実施形態によれば、第1実施形態の効果のうち上記(1a)~(1f)と同様の効果を奏し、更に以下の効果を奏する。
【0068】
(2a)案内部92は、流路部材20(具体的には連結部23)の内面における排気の流路の中心軸E回りの全周と、貯留部91と、を繋ぐ部分である。
このような構成によれば、流路部材20の内面を伝ってきた液状の還元剤を漏れなく貯留部91に集めることも可能になる。
【0069】
(2b)特に本実施形態のように、排気の流路における貯留部材9よりも上流側に、排気に旋回流を生じさせる拡散部材8が設けられている場合には、拡散部材8により生じた旋回流の影響により、流路部材20において液状の還元剤が特定の部分に集まりにくい。このため、上記のような構成が一層有用である。
【0070】
[3.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0071】
(3a)上記実施形態では、案内部72,92は、流路部材2,20の内面における少なくとも鉛直方向下側の部分と、貯留部71,91と、を繋いでいる。具体的には、上記第1実施形態の案内部72は、流路部材2の内面における鉛直方向下側の部分と、貯留部71と、を繋いでいる。上記第2実施形態の案内部92は、流路部材20の内面における排気の流路の中心軸E回りの全周と、貯留部91と、を繋いでいる。
【0072】
案内部により貯留部と繋がれる、流路部材の内面における部分は、必ずしも鉛直方向下側の部分でなくてもよい。すなわち、案内部は、流路部材の内面における、鉛直方向下側の部分以外の部分、例えば鉛直方向に対して横側、斜め上又は下側、あるいは上側の部分と、貯留部と、を繋いでもよい。
【0073】
また例えば、案内部は、流路部材の内面における排気の流路の中心軸回りの単一の部分ではなく複数の部分と、貯留部と、を繋ぐ部分であってもよい。具体例として、第1実施形態の貯留部材7を、第1実施形態のように1つのみではなく複数設けることにより、このような構成を実現してもよい。また、第2実施形態の貯留部材9において、複数の脚部9cのそれぞれを流路部材20に直接接合することにより、このような構成を実現してもよい。
【0074】
案内部が、流路部材の内面における排気の流路の中心軸回りの複数の部分と、貯留部と、を繋ぐ部分である場合、排気の流路の中心軸回りにおける当該複数の部分の配置は、一様であってもよいし偏りがあってもよい。例えば、上記のように第1実施形態の貯留部材7を複数設ける構成の場合、この複数の貯留部材7が、排気の流路の中心軸回りに均等な角度間隔で配置されてもよいし、不均等な角度間隔で配置されもよい。
【0075】
(3b)上記第1実施形態では、案内部72は、排気の流路の中心軸Aと平行に配置されている。すなわち、案内部72は、排気の流路の中心軸Aと平行に延びる部分であるが、案内部72の延伸方向は特に限定されない。例えば、上記第1実施形態において、案内部72が鉛直方向下側に斜めに延びるように配置されてもよい。このような構成によれば、重力に従う方向に液状の還元剤を案内することになるため、貯留部71に液状の還元剤を一層集めやすくすることができる。
【0076】
(3c)上記実施形態では、案内部72,92に、貯留部71,91に向けて延びる、液状の還元剤を案内するための溝が形成されている。このように案内部に溝が形成される場合、溝の形状(例えば長さ)や数は、特に限定されない。また、案内部には、必ずしもこのような溝が形成されなくてもよい。
【0077】
(3d)上記実施形態では、貯留部材7,9は、流路部材2,20と別体として成形されて流路部材2,20に接合されるが、流路部材2,20の少なくとも一部の部分と一体に成形されてもよい。例えば、上記第1実施形態の貯留部材7は、流路部材2における第1筒部21と一体に成形されてもよい。このような構成によれば、貯留部材7における案内部72を第1筒部21と面一にすることができるため、よりスムースに液状の還元剤を移動させることができる。
【0078】
(3e)上記実施形態では、貯留部71,91は、排気の流路の中心軸A,Eに沿って下流側に向かう方向から鉛直方向下向きの方向までの範囲における所定の方向に凹んでいる。しかし、貯留部は、必ずしも当該所定の方向に凹んだ形状でなくてもよい。この場合、貯留部に、例えば複数の小径の孔が形成されてもよい。具体例として、貯留部に複数の小径のパンチング孔が形成されてもよいし、貯留部の少なくとも一部がワイヤメッシュ等のメッシュ材により構成されてもよい。このような構成によれば、表面張力により貯留部に液状の還元剤を貯留しやすくすることができる。
【0079】
(3f)上記実施形態のように排気浄化装置に拡散部材が設けられる場合、この拡散部材は、上記第1実施形態の拡散部材6のような排気に旋回流を生じさせないものであってもよいし、上記第2実施形態の拡散部材8のような排気に旋回流を生じさせるものであってもよい。例えば、上記第1実施形態において、拡散部材6を上記第2実施形態の拡散部材8に代えてもよいし、上記第2実施形態において、拡散部材8を上記第1実施形態の拡散部材6に代えてもよい。
【0080】
(3g)上記実施形態では、貯留部材7,9の少なくとも一部が連結部23の内部に配置されている。しかし、貯留部材は、連結部23のような排気の流路における下流側に向かって流路断面積を拡大する部分を形成する部材内に配置されなくてもよく、例えば、排気の流路における流路断面積が一定の部分を形成する部材内に配置されてもよい。
【0081】
(3h)例えば、貯留部と流路部材の内面との間に、金属よりも伝熱しにくい部材を設けてもよい。
(3i)上記実施形態では、流路部材2,20の形状として軸方向と垂直な断面形状が円形状の筒状を例示したが、流路部材の形状は特に限定されない。例えば、上記第1実施形態において、第1筒部21及び第2筒部22が、円筒状ではなく角筒状であってもよい。また例えば、連結部23が、径を漸次拡大する円錐台状の筒状ではなく、流路断面積を階段状に拡大する円筒状や角筒状であってもよい。
【0082】
(3j)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。
【符号の説明】
【0083】
1,10…排気浄化装置、2,20…流路部材、21,24…第1筒部、22…第2筒部、23…連結部、3…触媒、4…マット、5…噴射部、6,8…拡散部材、7,9…貯留部材、71,91…貯留部、72,92…案内部。